(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一ショルダ部と、第二ショルダ部と、前記第一ショルダ部と前記第二ショルダ部との間に形成された攪拌ピンとで構成されたボビンツールを用いて一対の金属部材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
一対の前記金属部材の端面同士を突き合わせて本突合せ部を形成する突合せ工程と、
一対の前記金属部材の各側面に開始タブ材の一の側面を突き合わせて開始タブ突合せ部を形成するタブ材突合せ工程と、
前記開始タブ材の他の側面から回転する前記ボビンツールを突入させ、前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを相対移動させて前記本突合せ部を摩擦攪拌接合する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、一対の前記金属部材の端面同士と前記開始タブ材の一の側面とが突き合わされて構成された第一中間点と前記ボビンツールとが接触せず、かつ、前記開始タブ材の被膜及び前記一対の金属部材の側面の被膜が前記本突合せ部に形成される塑性化領域に巻き込まれないように前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
前記本接合工程では、前記攪拌ピンが前記本突合せ部に到達した後、前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを前記開始タブ材側に相対移動させ、前記第一中間点と前記ボビンツールとが接触しない範囲で前記ボビンツールを折り返し、前記開始タブ材とは離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法。
第一ショルダ部と、第二ショルダ部と、前記第一ショルダ部と前記第二ショルダ部との間に形成された攪拌ピンとで構成されたボビンツールを用いて一対の金属部材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
一対の前記金属部材の端面同士を突き合わせて本突合せ部を形成する突合せ工程と、
一対の前記金属部材の各側面に終了タブ材の一の側面を突き合わせて終了タブ突合せ部を形成するタブ材突合せ工程と、
前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを相対移動させて前記本突合せ部を摩擦攪拌接合した後、前記終了タブ材の他の側面から前記ボビンツールを離脱させる本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、一対の前記金属部材の端面同士と前記終了タブ材の一の側面とが突き合わされて構成された第二中間点と前記ボビンツールとが接触せず、かつ、前記終了タブ材の被膜及び前記一対の金属部材の側面の被膜が前記本突合せ部に形成される塑性化領域に巻き込まれないように前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
前記本接合工程では、前記本突合せ部から前記終了タブ材に向けて前記ボビンツールを相対移動させる際に、前記ボビンツールと前記終了タブ突合せ部とが接触しないように前記本突合せ部から離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させた後、
一方又は他方の前記金属部材から前記終了タブ材に前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする請求項4に記載の摩擦攪拌接合方法。
前記本接合工程では、前記第二中間点と前記ボビンツールとが接触しない範囲で前記ボビンツールを折り返し、前記本突合せ部をなぞるように前記終了タブ材とは離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させた後、前記終了タブ材に向けて前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の摩擦攪拌接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の摩擦攪拌接合方法であると、一方のタブ材から本突合せ部にボビンツールを相対移動させる際、及び、本突合せ部から他方のタブ材にボビンツールを相対移動させる際に、本突合せ部の両端において、タブ材の被膜及び金属部材の側面の被膜が塑性化領域内に巻き込まれるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、本突合せ部において、タブ材の被膜及び金属部材の側面の被膜が塑性化領域に巻き込まれるのを防ぐことができる摩擦攪拌接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、第一ショルダ部と、第二ショルダ部と、前記第一ショルダ部と前記第二ショルダ部との間に形成された攪拌ピンとで構成されたボビンツールを用いて一対の金属部材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、一対の前記金属部材の端面同士を突き合わせて本突合せ部を形成する突合せ工程と、一対の前記金属部材の各側面に開始タブ材の一の側面を突き合わせて開始タブ突合せ部を形成するタブ材突合せ工程と、前記開始タブ材の他の側面から回転する前記ボビンツールを突入させ、前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを相対移動させて前記本突合せ部を摩擦攪拌接合する本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、一対の前記金属部材の端面同士と前記開始タブ材の一の側面とが突き合わされて構成された第一中間点と前記ボビンツールとが接触せず、かつ、前記開始タブ材の被膜及び前記一対の金属部材の側面の被膜が前記本突合せ部に形成される塑性化領域に巻き込まれないように前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする。
また、本発明は、第一ショルダ部と、第二ショルダ部と、前記第一ショルダ部と前記第二ショルダ部との間に形成された攪拌ピンとで構成されたボビンツールを用いて一対の金属部材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、一対の前記金属部材の端面同士を突き合わせて本突合せ部を形成する突合せ工程と、一対の前記金属部材の各側面に終了タブ材の一の側面を突き合わせて終了タブ突合せ部を形成するタブ材突合せ工程と、前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを相対移動させて前記本突合せ部を摩擦攪拌接合した後、前記終了タブ材の他の側面から前記ボビンツールを離脱させる本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、一対の前記金属部材の端面同士と前記終了タブ材の一の側面とが突き合わされて構成された第二中間点と前記ボビンツールとが接触せず、かつ、前記終了タブ材の被膜及び前記一対の金属部材の側面の被膜が前記本突合せ部に形成される塑性化領域に巻き込まれないように前記ボビンツールを相対移動させることを特徴とする。
【0007】
かかる接合方法によれば、開始タブ材及び終了タブ材の被膜や金属部材の側面の被膜が本突合せ部の両端に巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0008】
また、前記本接合工程では、前記開始タブ材から一方の前記金属部材に前記ボビンツールを突入させた後、前記本突合せ部に向けて前記ボビンツールを相対移動させる際に、前記ボビンツールと前記開始タブ突合せ部とが接触しないように前記ボビンツールを相対移動させることが好ましい。
また、前記本接合工程では、前記本突合せ部から前記終了タブ材に向けて前記ボビンツールを相対移動させる際に、前記ボビンツールと前記終了タブ突合せ部とが接触しないように前記本突合せ部から離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させた後、一方又は他方の前記金属部材から前記終了タブ材に前記ボビンツールを相対移動させることが好ましい。
【0009】
かかる接合方法によれば、第一金属部材及び第二金属部材の端部に被膜が巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0010】
また、前記本接合工程では、前記攪拌ピンが前記本突合せ部に到達した後、前記本突合せ部をなぞるように前記ボビンツールを前記開始タブ材側に相対移動させ、前記第一中間点と前記ボビンツールとが接触しない範囲で前記ボビンツールを折り返し、前記開始タブ材とは離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させることが好ましい。
また、前記本接合工程では、前記第二中間点と前記ボビンツールとが接触しない範囲で前記ボビンツールを折り返し、前記本突合せ部をなぞるように前記終了タブ材とは離間する方向に前記ボビンツールを相対移動させた後、前記終了タブ材に向けて前記ボビンツールを相対移動させることが好ましい。
【0011】
かかる接合方法によれば、開始タブ材及び終了タブ材の被膜の巻き込みをより確実に防ぐとともに、長い範囲に亘って本突合せ部を接合することができる。
【0012】
また、前記第一ショルダ部は、第一大径部と、第一テーパー部と、第一端面とを備えており、当該第一テーパー部は前記第二ショルダ部側に向けて徐々に縮径しており、前記第二ショルダ部は、第二大径部と、第二テーパー部と、第二端面とを備えており、当該第二テーパー部は前記第一ショルダ部側に向けて徐々に縮径しており、前記第一端面及び前記第二端面の直径を同一に形成することが好ましい。
【0013】
かかる接合方法によれば、一対の金属部材と接触する第一端面及び第二端面は、第一大径部及び第二大径部よりも縮径しているため、摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、第一端面及び第二端面の直径が同一であるため、バランス良く接合することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る摩擦攪拌接合方法によれば、本突合せ部において、タブ材の被膜及び金属部材の側面の被膜が塑性化領域に巻き込まれるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について図面を参照して詳細に説明する。まずは、
図1に示すように、本発明で用いるボビンツールGについて説明する。ボビンツールGは、金属部材を摩擦攪拌接合するための回転ツールである。ボビンツールGは、第一ショルダ部G1と、第二ショルダ部G2と、攪拌ピンG3とで主に構成されている。ボビンツールGは、例えば、工具鋼で形成されている。
【0017】
第一ショルダ部G1は、第一大径部10と、第一テーパー部11と、第一端面12とを含んで構成されている。第一大径部10は円柱状を呈し、図示せぬ摩擦攪拌装置の回転軸に取り付けられる部位である。第一テーパー部11は、第二ショルダ部G2に向けて縮径している。第一端面12は円形を呈する。
【0018】
第二ショルダ部G2は、第二大径部13と、第二テーパー部14と、第二端面15とを含んで構成されている。第二大径部13は円柱状を呈する。第二テーパー部14は、第一ショルダ部G1に向けて縮径している。第二端面15は円形を呈する。第一ショルダ部G1と、第二ショルダ部G2とは同形状、同寸法からなる。つまり、第一端面12及び第二端面15の直径は同一寸法になっている。
【0019】
攪拌ピンG3は、第一ショルダ部G1と第二ショルダ部G2とを連結するピンである。攪拌ピンG3の外周面には螺旋溝が刻設されている。攪拌ピンG3の距離、つまり、第一ショルダ部G1と第二ショルダ部G2の距離は、後記する第一金属部材1及び第二金属部材2(
図1も参照)の板厚寸法と同等か、板厚寸法よりも若干小さく形成することが好ましい。これにより、摩擦攪拌接合の際に、第一ショルダ部G1と第二ショルダ部G2とで塑性流動材を押えることができるため、バリの発生を抑制することができる。
【0020】
次に、第一実施形態にかかる摩擦攪拌接合について説明する。第一実施形態に係る摩擦攪拌接合では、突合せ工程と、タブ材突合せ工程と、本接合工程と、を行う。
図2に示すように、突合せ工程は、接合する第一金属部材1と第二金属部材2とを突き合わせる工程である。
【0021】
第一金属部材1及び第二金属部材2は、少なくとも突き合わされる部分が同形状、同寸法からなる板状の金属部材である。第一金属部材1及び第二金属部材2は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等から形成されている。突合せ工程では、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の端面2aとを突き合わせて本突合せ部J1を形成する。第一金属部材1及び第二金属部材2の表面及び裏面は面一にする。また、第一金属部材1の側面1bと第二金属部材2の側面2bのとを面一にするとともに、第一金属部材1の側面1cと第二金属部材2の側面2cとを面一にする。
【0022】
タブ材突合せ工程は、本突合せ部J1の両端に開始タブ材20、終了タブ材30をそれぞれ配置する工程である。開始タブ材20は本接合工程においてボビンツールGの開始位置となる部位であり、終了タブ材30は終了位置となる部位である。開始タブ材20及び終了タブ材30は、同形状、同寸法からなる板状の金属部材である。開始タブ材20及び終了タブ材30は、第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ板厚からなり、第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料で形成されている。
【0023】
タブ材突合せ工程では、開始タブ材20の側面20aと、第一金属部材1の側面1b及び第二金属部材2の側面2bとを突き合わせ、開始タブ突合せ部J2を形成する。開始タブ材20の表面及び裏面は、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2)の表面及び裏面とそれぞれ面一になっている。開始タブ突合せ部J2を溶接又は摩擦攪拌によって仮接合する。
【0024】
さらに、タブ材突合せ工程では、終了タブ材30の側面30aと、第一金属部材1の側面1c及び第二金属部材2の側面2cを突き合わせ、終了タブ突合せ部J3を形成する。終了タブ材30の表面及び裏面は、被接合金属部材の表面及び裏面とそれぞれ面一になっている。終了タブ突合せ部J3を溶接又は摩擦攪拌によって仮接合する。タブ材突合わせ工程が終了したら、固定治具等を用いて被接合金属部材を架台にクランプする。
【0025】
ここで、
図2に示すように、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の端面2aと、開始タブ材20の側面20aとが突き合わされて構成される点を第一中間点X1とする。また、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の端面2aと、終了タブ材30の側面30aとが突き合わされて構成される点を第二中間点X2とする。
【0026】
本接合工程は、
図3に示すように、回転するボビンツールGを用いて本突合せ部J1を接合する工程である。本接合工程では、開始タブ材20の側面20bに設定された開始位置SpからボビンツールGを突入させ、被接合金属部材上に設定した通過点s1,s2,s3,s4をこの順番で通って、終了タブ材30の側面30bに設定された終了位置EpまでボビンツールGを相対移動させる。ボビンツールGの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。
図1を参照するように、本接合工程では、第一金属部材1及び第二金属部材2の表面及び裏面に、第一端面12及び第二端面15をそれぞれ数ミリ程度押し込み、本突合せ部J1をなぞるようにして摩擦攪拌接合を行う。なお、
図1に示すように、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2のうち、第一金属部材1の表面及び第二金属部材2の裏面と接触する部位の直径を「直径R」とする。直径Rは、押し込み量に応じ適宜変動する。
【0027】
通過点s1は、
図4に示すように、第一金属部材1の内部において、本突合せ部J1から離間し、かつ、開始タブ突合せ部J2の近傍に設定されている。本突合せ部J1から通過点s1までの距離及び開始タブ突合せ部J2から通過点s1までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、開始位置Spから通過点s1までボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と第一中間点X1とが接触しないように移動ルートを設定している。本実施形態では、開始位置Spと通過点s1とを結んだ線分は、本突合せ部J1と平行になっている。
【0028】
通過点s2は、
図4に示すように、本突合せ部J1上であって、開始タブ突合せ部J2の近傍に設定されている。開始タブ突合せ部J2(第一中間点X1)から通過点s2までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、通過点s1から通過点s2を通って本突合せ部J1上にボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と、第一中間点X1及び開始タブ突合せ部J2とが接触しないように移動ルートを設定している。言い換えると、通過点s1から通過点s2を通って本突合せ部J1を摩擦攪拌接合する際に、開始タブ材20の被膜(例えば、酸化被膜)が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wに巻き込まれないようにボビンツールGの移動ルート(通過点s1,s2)を設定している。本実施形態では、通過点s1と通過点s2とを結んだ線分は、開始タブ突合せ部J2(開始タブ材20の側面20a)と平行になっている。
【0029】
通過点s3は、
図5に示すように、本突合せ部J1上であって、終了タブ突合せ部J3の近傍に設定されている。終了タブ突合せ部J3(第二中間点X2)から通過点s3までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、通過点s3から通過点s4までボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と、第二中間点X2及び終了タブ突合せ部J3とが接触しないように移動ルートを設定している。言い換えると、本突合せ部J1から通過点s3、通過点s4を通る際に、終了タブ材30の被膜(例えば、酸化被膜)や、第一金属部材1の側面1c及び第二金属部材2の側面2cの被膜が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wに巻き込まれないようにボビンツールGの移動ルートを設定している。本実施形態では、通過点s3と通過点s4とを結んだ線分は、終了タブ突合せ部J3(終了タブ材30の側面30a)と平行になっている。
【0030】
通過点s4は、
図5に示すように、第一金属部材1の内部において、本突合せ部J1から離間し、かつ、終了タブ突合せ部J3の近傍に設定されている。本突合せ部J1から通過点s4までの距離及び終了タブ突合せ部J3から通過点s4までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、通過点s4から終了位置EpまでボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と第二中間点X2とが接触しないように移動ルートを設定している。本実施形態では、通過点s4と終了位置Epとを結んだ線分は、本突合せ部J1と平行になっている。
【0031】
なお、本接合工程が終了したら、開始タブ材20及び終了タブ材30を第一金属部材1及び第二金属部材2からそれぞれ切除する。
【0032】
以上説明した第一実施形態に係る摩擦攪拌接合によれば、開始タブ材20の被膜(酸化被膜等)や、第一金属部材1の側面1b及び第二金属部材2の側面2bの被膜が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wの一方の端部に巻き込まれるのを防ぐことができる。また、終了タブ材30の被膜や、第一金属部材1の側面1c及び第二金属部材2の側面2cの被膜が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wの他方の端部に巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0033】
また、本接合工程では、開始タブ材20から第一金属部材1にボビンツールGを突入させた後、本突合せ部J1に向けてボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と開始タブ突合せ部J2とが接触しないようにボビンツールGを相対移動させる。
また、本接合工程では、本突合せ部J1から終了タブ材30に向けてボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と終了タブ突合せ部J3とが接触しないように本突合せ部J1から離間する方向にボビンツールGを移動させた後、第一金属部材1から終了タブ材30にボビンツールGを相対移動させる。
【0034】
例えば、通過点s1から通過点s2までの間に、開始タブ突合せ部J2を含むようにボビンツールGの移動ルートを設定すると、第一金属部材1に形成される塑性化領域内に側面1bの被膜及び開始タブ材20の被膜が巻き込まれるおそれがある。
しかし、前記した構成によれば、
図3に示す塑性化領域Wのうち、開始タブ突合せ部J2を横断する部位Z1及び終了タブ突合せ部J3を横断する部位Z2については被膜が巻き込まれるおそれがあるものの、通過点s1からs2の間、及び通過点s3からs4の間については開始タブ突合せ部J2又は終了タブ突合せ部J3から塑性化領域Wが離間するように移動ルートを設定している。そのため、第一金属部材1の端部(側面1b,1c)に被膜が巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0035】
また、本突合せ部J1上の通過点s2を、開始タブ突合せ部J2から近い位置に設定するとともに、通過点s3を、終了タブ突合せ部J3から近い位置に設定する。これにより、本突合せ部J1を長い距離に亘って接合できるため、接合強度を高めることができる。
【0036】
また、開始タブ材20及び終了タブ材30を設けることにより、本接合工程の開始位置及び終了位置を容易に設定することができる。また、ボビンツールGで摩擦攪拌接合をする場合、
図3の開始位置Sp及び終了位置Epに示すように端部がえぐれてしまうおそれがあるが、開始タブ材20及び終了タブ材30を用いることで第一金属部材1の側面1b,1cと、第二金属部材2の側面2b,2cをきれいに仕上げることができる。
【0037】
また、ボビンツールGの第一端面12及び第二端面15は、第一大径部10及び第二大径部13よりも縮径しているため、摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、第一端面12及び第二端面15の直径が同一であるため、バランス良く接合することができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。第二実施形態では、本接合工程におけるボビンツールGの移動ルートが第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。第二実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ工程と、タブ材突合せ工程と、本接合工程と、を行う。突合せ工程及びタブ材突合せ工程は、第一実施形態と同一であるから説明を省略する。
【0039】
本接合工程は、
図6に示すように、回転するボビンツールGを用いて本突合せ部J1を接合する工程である。本接合工程では、開始タブ材20の側面20bに設定された開始位置SpからボビンツールGを突入させ、被接合金属部材上に設定した通過点t1,t2、折返し点t3,t4、通過点t5、t6を通って、終了タブ材30の側面30bに設定された終了位置EpまでボビンツールGを相対移動させる。より詳しくは、開始位置Spから通過点t1を通り、通過点t2から開始タブ材20側に向かい、折返し点t3で折り返した後、本突合せ部J1をなぞるように開始タブ材20から離間する方向にボビンツールGを相対移動させる。続いて、折返し点t4で折り返して通過点t5に達したら、通過点t6を通って、終了位置EpまでボビンツールGを相対移動させる。第二実施形態では、折返し点t3,t4でボビンツールGを折り返す点で第一実施形態と大きく相違する。ボビンツールGの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。
【0040】
通過点t1は、
図7に示すように、第一金属部材1の内部において、本突合せ部J1から十分に離間し、かつ、開始タブ突合せ部J2からも十分に離間した位置に設定されている。本実施形態では、開始位置Spと通過点t1とを結んだ線分は、本突合せ部J1と平行になっている。
【0041】
通過点t2は、
図7に示すように、本突合せ部J1上であって、開始タブ突合せ部J2(第一中間点X1)から十分に離間する位置に設定されている。本実施形態では、通過点t1と通過点t2とを結んだ線分は、開始タブ突合せ部J2と平行になっている。
【0042】
折返し点t3は、
図7に示すように、本突合せ部J1上であって、開始タブ突合せ部J2の近傍に設定されている。開始タブ突合せ部J2(第一中間点X1)から折返し点t3までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、通過点t1,t2を通り、折返し点t3で折り返して開始タブ材20から離間する方向にボビンツールGを相対移動させる際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と、第一中間点X1及び開始タブ突合せ部J2とが接触しないように移動ルートを設定している。言い換えると、通過点t1,t2を通り、折返し点t3で折り返して本突合せ部J1を摩擦攪拌接合する際に、開始タブ材20の被膜(例えば、酸化被膜)や第一金属部材1の側面1b及び第二金属部材2の側面2bの被膜が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wに巻き込まれないようにボビンツールGの移動ルート(通過点t1,t2、折返し点t3)を設定している。
【0043】
折返し点t4は、
図8に示すように、本突合せ部J1上であって、終了タブ突合せ部J3の近傍に設定されている。終了タブ突合せ部J3(第二中間点X2)から折返し点t4までの距離は、少なくとも直径R(
図1参照)の半径よりも大きくなるように設定している。また、通過点t5を通過して折返し点t4で折返し、通過点t5に戻る際に、第一ショルダ部G1及び第二ショルダ部G2と、第二中間点X2及び終了タブ突合せ部J3とが接触しないように移動ルートを設定している。言い換えると、通過点t5を通過して折返し点t4で折返し、通過点t5に戻って本突合せ部J1を摩擦攪拌接合する際に、終了タブ材30の被膜や第一金属部材1の側面1c及び第二金属部材2の側面2cの被膜が本突合せ部J1に形成される塑性化領域Wに巻き込まれないようにボビンツールGの移動ルート(折返し点t4、通過点t5)を設定してる。
【0044】
通過点t5は、
図8に示すように、本突合せ部J1上であって、終了タブ突合せ部J3(第二中間点X2)から十分に離間する位置に形成されている。
【0045】
通過点t6は、
図8に示すように、第一金属部材1の内部において、本突合せ部J1から十分に離間し、かつ、終了タブ突合せ部J3からも十分に離間した位置に設定されている。本実施形態では、通過点t5と通過点t6とを結んだ線分は、終了タブ突合せ部J3と平行になっている。また、通過点t6と、終了タブ材30の側面30bに設定された終了位置Epとを結ぶ線分は、本突合せ部J1と平行になっている。
【0046】
以上説明した第二実施形態に係る摩擦攪拌接合方法によれば、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、折返し点t3,t4で折り返すようにすることで、本突合せ部J1を長い範囲で接合することができるとともに、開始タブ突合せ部J2及び終了タブ突合せ部J3から極力離れた位置にボビンツールGの移動ルートを設定することができる。これにより、開始タブ材20及び終了タブ材30の被膜や、第一金属部材1の側面1b、1c及び第二金属部材2の側面2b,2cの被膜が、本突合せ部J1の両端に巻き込まれるのを確実に防ぐことができる。
【0047】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本接合工程を行う前に、本突合せ部J1を仮接合してもよい。また、前記した実施形態では、第一金属部材1のみに通過点を設定したが、第二金属部材2のみに設定してもよいし、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に通過点を設定してもよい。つまり、例えば、第一金属部材1から突入して、本突合せ部J1を接合した後、第二金属部材2からボビンツールGを離脱してもよい。
【0048】
また、ボビンツールGの第一テーパー部11及び第二テーパー部14は省略してもよい。また、第一ショルダ部G1と第二ショルダ部G2とは異なる形状であってもよい。また、前記した本接合工程におけるボビンツールGの移動ルートはあくまで例示であって、他の移動ルートを設定してもよい。