特許第6658470号(P6658470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658470
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】昇降装置の保守作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20200220BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B66B3/00 R
   B66B5/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-229086(P2016-229086)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83704(P2018-83704A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
(72)【発明者】
【氏名】若林 正一
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 文隆
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−044667(JP,A)
【文献】 特開2013−207693(JP,A)
【文献】 特開2010−095359(JP,A)
【文献】 特開2011−057308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントコードを蓄積及び出力する制御マイコンであって故障信号を出力する制御マイコンを有する昇降装置と、
前記イベントコードに対応した保守作業情報が記憶された記憶部と、
前記制御マイコンからのイベントコードに対応した前記保守作業情報を出力する技術員携帯端末と、
前記制御マイコンと電話回線を介して通信可能に接続される遠隔監視ユニットと、
前記制御マイコンと前記遠隔監視ユニット及び電話回線を介して通信可能に接続されるとともに、前記昇降装置と通信可能に接続され、且つ、前記技術員携帯端末と通信可能なサーバーと、
を備え、
前記制御マイコンから故障信号が出力されたとき、前記制御マイコンに蓄積されたイベントコードは前記サーバーにより取得され、前記サーバーは、前記昇降装置からの該昇降装置の状況情報を取得するとともに、取得したイベントコードと状況情報に基づいて、前記取得したイベントコードの発生原因を推定し、且つ、前記制御マイコンからのイベントコードに対応した保守作業情報を前記記憶部から抽出し、
前記技術員携帯端末は、前記サーバーによる抽出結果及び推定された発生原因を出力する、ことを特徴とする昇降装置の保守作業支援システム。
【請求項2】
記記憶部は、イベントコードと前記保守作業情報とを対応させた情報に関するデータベースを記憶し、
前記サーバーは、前記データベースを用いて前記制御マイコンからのイベントコードに対応した保守作業情報を抽出する、請求項1に記載の昇降装置の保守作業支援システム。
【請求項3】
前記制御マイコンは、故障信号を前記サーバーに向けて発報可能であり、
前記サーバーは、発報時に対応するイベントコードを取得する、請求項1又は2に記載の昇降装置の保守作業支援システム。
【請求項4】
前記技術員携帯端末は、前記状況情報を出力する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降装置の保守作業支援システム。
【請求項5】
前記制御マイコンは、前記昇降装置の異常の有無を判断可能であり、
前記サーバーは、前記制御マイコンの前記判断の結果を取得し、
前記技術員携帯端末は、前記サーバーが取得した前記制御マイコンの前記判断の結果を出力する、請求項のいずれか1項に記載の昇降装置の保守作業支援システム。
【請求項6】
前記記憶部は、前記保守作業情報と対応するチェックリストを記憶し、
前記技術員携帯端末は、前記チェックリストを出力する、請求項1〜のいずれか1項に記載の昇降装置の保守作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータやエスカレータ等の昇降装置に対する保守作業を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇降装置の動作状況を監視する保守作業支援システムが提供されている。保守作業支援システムは、自身の動作を制御するための制御マイコンを含む昇降装置と、昇降装置の制御マイコンに対して端末装置を介して通信可能に接続され、且つ、昇降装置の動作状況を遠隔で監視するための端末とを備える(特許文献1参照)。
【0003】
かかるシステムでは、昇降装置(制御マイコン)からの信号(いわゆる、イベントコード)を基に、監視センターの端末がセンターの監視員に昇降装置の動作状況(運転停止等)を報知する。この報知内容が昇降装置の異常を示すものである場合、監視員は、技術員に現場への出向を要請し、現場に出向した技術員は、報知された昇降装置の動作状況に対応した保守作業を行う。
【0004】
ところで、昇降装置の保守作業において、経験値の少ない未熟な技術員が保守作業を行う場合、非効率な作業を行うことがあり、昇降装置の復帰が遅れてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−212447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、技術員の習熟度に関係なく、技術員が適正且つ迅速に保守作業を行うことのできる保守作業支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保守作業支援システムは、イベントコードを蓄積及び出力する制御マイコンであって故障信号を出力する制御マイコンを有する昇降装置と、前記イベントコードに対応した保守作業情報が記憶された記憶部と、前記制御マイコンからのイベントコードに対応した前記保守作業情報を出力する技術員携帯端末と、前記制御マイコンと電話回線を介して通信可能に接続される遠隔監視ユニットと、前記制御マイコンと前記遠隔監視ユニット及び電話回線を介して通信可能に接続されるとともに、前記昇降装置と通信可能に接続され、且つ、前記技術員携帯端末と通信可能なサーバーと、を備え、前記制御マイコンから故障信号が出力されたとき、前記制御マイコンに蓄積されたイベントコードは前記サーバーにより取得され、前記サーバーは、前記昇降装置からの該昇降装置の状況情報を取得するとともに、取得したイベントコードと状況情報に基づいて、前記取得したイベントコードの発生原因を推定し、且つ、前記制御マイコンからのイベントコードに対応した保守作業情報を前記記憶部から抽出し、前記技術員携帯端末は、前記サーバーによる抽出結果及び推定された発生原因を出力する
【0008】
上記保守作業支援システムでは、記憶部が記憶しているイベントコードに対応した保守作業情報に基づいて、技術員携帯端末が制御マイコンから出力されたイベントコードに対応した保守作業情報を出力する。そのため、技術員携帯端末を所持する技術員は、取得した保守作業情報に基づき、技術員の習熟度に関係なく、適正且つ迅速に昇降装置の保守作業を行うことができる。
しかも、かかる構成では、サーバーが、イベントコード及び昇降装置の状況情報を取得し、これらに基づいて取得したイベントコードの発生原因を推定し、技術員携帯端末がサーバーにより推定されたイベントコードの発生原因を出力するため、技術員携帯端末を所持する技術員は、サーバーにより推定されたイベントコードの発生原因を確認することができる。そのため、この技術員は、保守作業情報に加えてイベントコードの発生原因に基づき、昇降装置の保守作業を行うことができる。
【0009】
前記保守作業支援システム、前記記憶部は、イベントコードと前記保守作業情報とを対応させた情報に関するデータベースを記憶し、前記サーバーは、前記データベースを用いて前記制御マイコンからのイベントコードに対応した保守作業情報を抽出してもよい。
【0010】
かかる構成では、記憶部がイベントコードと保守作業情報とを対応させた情報に関するデータベースを記憶し、サーバーがこの記憶部に記憶されているデータベースから抽出した制御マイコンが出力するイベントコードに対応した保守作業情報を、技術員携帯端末が出力する。このため、技術員携帯端末がデータベースを記憶している必要が無く、技術員携帯端末のメモリ容量を抑えることができる。
【0011】
前記保守作業支援システムでは、前記制御マイコンが、故障信号を前記サーバーに向けて発報可能であり、前記サーバーは、発報時に対応するイベントコードを取得してもよい。
【0012】
かかる構成では、サーバーが、制御マイコンから故障信号を受けた時点で、発報時に対応するイベントコードを取得するため、技術員携帯端末を所持する技術員は、昇降装置の故障時(発報時)のイベントコードに対応した保守作業情報を確認することができる。そのため、この技術員は、昇降装置の故障時のイベントコードに適した保守作業情報に基づき、昇降装置の保守作業を行うことができる。
【0015】
前記保守作業支援システムでは、前記技術員携帯端末は、前記状況情報を出力してもよい。
【0016】
かかる構成では、技術員携帯端末は、イベントコードの発生原因と共に、昇降装置の状況情報を出力するため、技術員携帯端末を所持する技術員は、サーバーにより推定されたイベントコードの発生原因と共に、昇降装置の状況情報を確認することができる。そのため、この技術員は、保守作業情報及びイベントコードの発生原因に加えて、昇降装置の状況情報に基づき、昇降装置の保守作業を行うことができる。
【0017】
前記保守作業支援システムでは、前記制御マイコンは、前記昇降装置の異常の有無を判断可能であり、前記サーバーは、前記制御マイコンの前記判断の結果を取得し、前記技術員携帯端末は、前記サーバーが取得した前記制御マイコンの前記判断の結果を出力してもよい。
【0018】
かかる構成では、制御マイコンが昇降装置の異常の有無を判断すると、サーバーがこの判断結果を取得し、技術員携帯端末が、この制御マイコンの判断の結果を出力することで、技術員携帯端末を所持する技術員は、昇降装置の異常の有無を確認することができる。
【0019】
前記保守作業支援システムでは、前記記憶部は、前記保守作業情報と対応するチェックリストを記憶し、前記技術員携帯端末は、前記チェックリストを出力してもよい。
【0020】
かかる構成では、記憶部が保守作業情報と対応するチェックリストを記憶し、技術員携帯端末が、保守作業情報と共に該保守作業情報と対応するチェックリストを出力するため、技術員携帯端末を所持する技術員は、保守作業情報と該保守作業情報に対応するチェックリストとを取得できる。そのため、この技術員は、保守作業情報に加えて、チェックリストに基づき、昇降装置の保守作業を行うことができる。その結果、保守作業における作業漏れを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、技術員の習熟度に関係なく、技術員が適正且つ迅速に保守作業を行うことのできる保守作業支援システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る保守作業支援システムのブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係る保守作業支援システムの処理を示すフローチャート図である。
図3図3は、本発明の変形例に係る保守作業支援システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る昇降装置の保守作業支援システム(以下、単に保守作業支援システムという)について説明する。保守作業支援システムは、技術員による技術員携帯端末(以下、単に携帯端末という)を用いた昇降装置の保守作業を支援するシステムである。この保守作業支援システムは、技術員により携帯端末を用いた昇降装置の保守作業が開始される前段として行われる。保守作業支援システムでは、昇降装置から故障信号が出力された場合、携帯端末は、このイベントコードに対応した保守作業情報を出力する。これにより、携帯端末を所持する技術員は、保守作業情報に基づいて昇降装置の保守作業を行うことができる。
尚、昇降装置にはエレベータ、エスカレータ等があるが、以下では、エレベータを保守する携帯端末を含む保守作業支援システムを説明する。また、エレベータの保守作業は、例えば、ガイドレールの点検やかごドアの整備等の保守対応と、かごドアの修理等の故障対応とを含む。
【0024】
保守作業支援システムは、図1に示すように、イベントコードを出力する制御マイコン21を有するエレベータ2と、制御マイコン21に接続されたサーバー4と、サーバー4に対して接続可能な携帯端末3と、を備える。尚、本実施形態の保守作業支援システム1では、サーバー4は、第一サーバー5と、第一サーバー5に接続され、且つ、記憶部60を備えた第二サーバー6と、を備える。
【0025】
エレベータ2は、昇降路内を移動するかご等を有する動作部20と、故障信号及びイベントコードを出力する制御マイコン21と、かご内を撮影するカメラ等の撮影機22等とを有する。
【0026】
具体的に、制御マイコン21から出力される故障信号は、エレベータ2に故障が生じたときに制御マイコン21から出力され且つ前記故障を示す信号である。ここでいうエレベータ2の故障とは、かごドアや乗り場ドアの故障、かご照明の寿命等である。以下、故障信号を出力したエレベータ2を、発報エレベータという。
【0027】
制御マイコン21から出力されるイベントコードは、エレベータ2自身の動作状況に対応づけられたコードである。具体的に、イベントコードは、かごの位置情報、かごドアの開閉情報、モーターの駆動情報等を示す。尚、本実施形態の保守作業支援システム1では、動作部20の状況に応じて出力されるイベントコードは、制御マイコン21内のメモリに蓄積されている。この蓄積されたイベントコードは、携帯端末3やサーバー4により取得可能である。
【0028】
制御マイコン21は、通信系統R1を介して、サーバー4に接続されている。通信系統R1は、例えば、制御マイコン21から順に遠隔監視ユニット7と電話回線とを介してサーバー4に通信可能であり、且つ、サーバー4から逆に電話回線と遠隔監視ユニット7とを介して制御マイコン21に通信可能な通信系統である。制御マイコン21は、通信系統R1を介して、故障信号及びイベントコードをサーバー4に出力する。
【0029】
本実施形態の保守作業支援システム1では、撮影機22は、電話回線を介してサーバー4に接続されている。撮影機22は、エレベータ2の状況情報の一つとして、例えば、かご内等の画像情報をサーバー4に出力する。制御マイコン21は、エレベータ2の状況情報の一つとして、例えば、各種ログデータをサーバー4に出力する。
【0030】
携帯端末3は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノートパソコン等である。具体的に、携帯端末3は、技術員によりエレベータ2の保守作業を行う際に用いられる。尚、携帯端末3を所持する技術員は、エレベータ2の保守作業を行う際、この保守作業の対象となるエレベータ2の周辺に滞在している。図1では二台の携帯端末3として、携帯端末3A,3Bを示しているが、一台の携帯端末3のみが存在していてもよいし、三台以上の携帯端末3が存在してもよい。
【0031】
携帯端末3は、通信系統R2を介して、サーバー4(例えば、第一サーバー5)に接続可能である。通信系統R2は、例えば、携帯端末3からインターネットを介してサーバー4(例えば、第一サーバー5)に通信可能であり、且つ、サーバー4(例えば、第一サーバー5)からインターネットを介して携帯端末3に通信可能な通信系統である。
【0032】
携帯端末3は、サーバー4から出力された情報や、サーバー4に通信可能な状態では、サーバー4に記憶された情報(例えば、保守作業情報601やチェックリスト602)を出力する出力部30を有する。本実施形態の保守作業支援システム1では、出力部30が、画像情報を出力するため、ディスプレイのような表示部である。
【0033】
サーバー4は、上述のように、第一サーバー5と、第二サーバー6とを備える。サーバー4は、例えば、エレベータ2と離れた建物である監視センター等に設置されている。
【0034】
第二サーバー6は、データベース600、保守作業情報601、及び、チェックリスト602を記憶した記憶部60を有する。第二サーバー6は、第一サーバー5に有線、例えば、P2Pにより接続されている。また、第二サーバー6は、通信系統R3を介して、携帯端末3に接続されている。通信系統R3は、例えば、第二サーバー6から順に第一サーバー5とインターネットとを介して携帯端末3に通信可能であり、且つ、携帯端末3から逆にインターネットと第一サーバー5とを介して第二サーバー6に通信可能な通信系統である。
【0035】
ここでいう保守作業情報601は、一つの保守作業(例えば、かごドアの整備)を行う際に、行うべき作業を順に示した手順書である。チェックリスト602は、保守作業情報601に対応し、且つ、保守作業における作業漏れを防ぐためのチェックリストである。具体的に、チェックリスト602は、エレベータ2の保守作業を行う際に、保守作業情報601に記載された各作業を実施する毎にチェックを行うチェックリストである。尚、図1では、一つの保守作業情報601のみを示しているが、実際の記憶部60は複数の保守作業情報601を記憶している。チェックリスト602についても同様であり、実際の記憶部60は複数のチェックリスト602を記憶している。
【0036】
本実施形態の保守作業支援システム1では、データベース600は、イベントコードと保守作業情報とを対応させた情報に関するデータベースである。例えば、データベース600は、記憶部60におけるイベントコードに対応する保守作業情報601のアドレスと、記憶部60におけるイベントコードに対応する複数のチェックリスト602のアドレスと、を記憶している。尚、保守作業情報601のアドレスとは、記憶部60において保守作業情報601が保存されているアドレス、即ち、保守作業情報601の保存先アドレスである。チェックリスト602のアドレスも同様に、記憶部60におけるチェックリスト602の保存先アドレスである。
【0037】
例えば、一つのイベントコードに少なくとも一つの保守作業情報601が対応し、且つ、一つの保守作業情報601に一つのアドレスが対応しているため、データベース600では、一つのイベントコードに、少なくとも一つの保守作業情報601のアドレスが対応している。また、1つの保守作業情報601に一つのチェックリスト602が対応し、且つ、一つのチェックリスト602に一つのアドレスが対応しているため、データベース600では、1つのイベントコードに、少なくとも一つのチェックリスト602のアドレスが対応することとなる。
【0038】
さらに、データベース600は、一つのイベントコードに対応する少なくとも一つの保守作業情報601について、これらを適用する優先順位に関する情報と、一つのイベントコードに対応する少なくとも一つのチェックリスト602について、これらを適用する優先順位に関する情報を記憶している。
【0039】
第一サーバー5は、CPU(Central Processing Unit)等を有する。第一サーバー5では、CPUが所定のプログラムを実行することで、機能的に処理部50が形成される。
【0040】
処理部50は、制御マイコン21から故障信号が出力されたか否かを常時確認している。処理部50は、故障信号が出力されたことを確認すると、制御マイコン21から故障信号の出力時(発報時)のイベントコードを取得する。本実施形態の保守作業支援システム1では、処理部50は、イベントコードと共に、エレベータ2の状況情報を取得する。状況情報は、例えば、撮影機22で撮影される画像情報や、制御マイコン21により取得されるログデータである。
【0041】
処理部50は、取得したイベントコード及びエレベータ2の状況情報(例えば、画像情報及びログデータ)のそれぞれにより、このイベントコードの発生原因を推定する。そのため、推定されるイベントコードの発生原因は、イベントコードに基づく推定発生原因、画像情報に基づく推定発生原因、及びログデータに基づく推定発生原因である。
【0042】
具体的に、処理部50は、撮影機22から、エレベータ2の状況情報としてかご内等の画像情報を取得する。かご内等の画像情報に対して、画像認識を行うことにより、例えば、かご内の人の有無を判定することができる。かご内が有人である場合には、イベントコードの発生原因が、人為的なものであると推定できる場合がある。具体的に、かご内の画像情報に対して画像認識を行うことで、かごドアをこじ開ける人物が確認できた場合、イベントコードの発生原因が、人為的なかごドアのこじ開けであると推定することができる。
【0043】
また、制御マイコン21が取得するログデータは、例えば、かごの速度、かごの加速度、かごのブレーキのタイミング、昇降路内に設けられるモーターのトルク指令、及び、動力電源のリレー等のデータである。例えば、ログデータがかごの速度である場合、かごの速度の経時変化を示す波形が、規則的な波形(正常な波形)の範囲内からある程度以上ずれている場合、イベントコードの発生原因が、かごの速度異常であると推定することができる。ログデータがかごの加速度である場合、かごの加速度の経時変化を示す波形がなだらかでない場合、イベントコードの発生原因が、かごの加速度異常であると推定することができる。
【0044】
処理部50は、データベース600に基づき、制御マイコン21から取得したイベントコードに対応する保守作業情報601に関する情報、及び、チェックリスト602に関する情報を抽出する。具体的に、処理部50は、記憶部60のデータベース600から、取得したイベントコードと対応する保守作業情報601のアドレス、及び、チェックリスト602のアドレスを抽出する。さらに、処理部50は、これらのアドレスを携帯端末3Aに出力する。
【0045】
処理部50は、発報エレベータに対応する携帯端末3を指定する。本実施形態の保守作業支援システム1では、発報エレベータの保守作業を担当する技術員が携帯端末3Aを有するため、処理部50は、携帯端末3A,3Bから携帯端末3A(発報エレベータの保守作業を担当する技術員が所持する携帯端末3A)を指定する。具体的に、第一サーバー5内には、エレベータ2の保守作業を担当する技術員の情報及びこの技術員が所持する携帯端末3の情報が記憶され、処理部50は、この携帯端末3Aの情報を抽出可能である。本実施形態の保守作業支援システム1では、サーバー4と携帯端末3とがインターネットを介して接続されるため、携帯端末3の情報は、例えば、携帯端末3のIPアドレスである。
【0046】
処理部50は、指定した携帯端末3Aに対し、イベントコード、推定した発生原因、保守作業情報601のアドレス、保守作業情報601を適用する優先順位、チェックリスト602のアドレス、チェックリスト602を適用する優先順位、及び、状況情報(例えば、画像情報及びログデータ)等の各種情報を出力する。
【0047】
通信系統R1,R2,R3、その他通信系統は、それぞれ一般的な構成の通信系統(モデム、DSU(Digital Service Unit)、有線回線、及び、無線回線等の一部又は全てを含む通信系統)である。尚、本実施形態の保守作業支援システム1では、通信系統R2,R3の一部(インターネット)が共通しているが、通信系統R2,R3は、いずれの部分も全く共通しない別の通信系統であってもよい。
【0048】
以下、図2のフローチャート図を用いて、保守作業支援システム1における処理の流れを説明する。
【0049】
処理部50は、制御マイコン21からの故障信号の出力(エレベータ2の発報)を常時監視し、制御マイコン21からの故障信号が無い場合(S01においてNo)、故障信号を確認するまで待機状態となっている。
【0050】
処理部50は、制御マイコン21からの故障信号があると(S01においてYes)、制御マイコン21からイベントコードを取得すると共に、エレベータ2の状況情報として、撮影機22からかご内等の画像情報を取得し且つ制御マイコン21からログデータを取得する(S02)。処理部50は、イベントコード及び状況情報(例えば、画像情報及びログデータ)から、イベントコードの発生原因を推定する(S03)。
【0051】
処理部50は、イベントコードの発生原因の推定が完了すると、データベース600を用いて保守作業情報601に関する情報及びチェックリスト602に関する情報を抽出する(S04)。具体的に、処理部50は、データベース600から、記憶部60における、イベントコードに対応した保守作業情報601及びチェックリスト602が記憶された領域のアドレスを抽出する。
【0052】
処理部50は、発報エレベータに対応する携帯端末3Aを指定し(S05)、この携帯端末3Aにイベントコード、推定した発生原因、保守作業情報601のアドレス、チェックリスト602のアドレス、及び状況情報(例えば、撮影機22から取得した画像情報、及び、制御マイコン21により取得されたログデータ)を出力する。携帯端末3Aは、処理部50からの保守作業情報601のアドレス及びチェックリスト602のアドレスの出力を受けて、通信系統R3を介して、第二サーバー6の記憶部60における出力されたアドレスに対応する保守作業情報601及びチェックリスト602を参照する。携帯端末3Aの出力部30は、処理部50から出力されたイベントコード、推定される発生原因、状況情報、保守作業情報601を適用する優先順位、及び、チェックリスト602を適用する優先順位と、参照先の保守作業情報601及びチェックリスト602とを出力する。
【0053】
以上のように、保守作業支援システム1では、記憶部60がイベントコードに対応した保守作業情報601を記憶しており、携帯端末3Aは制御マイコン21から出力されたイベントコードに対応した保守作業情報601を出力する。そのため、携帯端末3Aを所持する技術員は、技術員の習熟度に関係なく、出力された保守作業情報601に基づき、適正且つ迅速に、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0054】
また、保守作業支援システム1では、記憶部60がイベントコードと保守作業情報601とを対応させた情報に関するデータベース600を記憶しており、携帯端末3Aは、記憶部60に記憶されているデータベース600を用いて、制御マイコン21からのイベントコードに対応した保守作業情報601を抽出すると共に、この抽出結果を出力する。そのため、携帯端末3Aが保守作業情報601を記憶している必要が無く、携帯端末3Aのメモリ容量を抑えることができる。
【0055】
保守作業支援システム1では、第一サーバー5が、制御マイコン21から発報時に対応するイベントコードを取得する。そのため、携帯端末3Aを所持する技術員は、エレベータ2の故障時(発報時)のイベントコードに対応した保守作業情報601を確認することができる。その結果、この技術員は、エレベータ2の故障に対して適した保守作業情報601に基づき、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0056】
また、保守作業支援システム1では、サーバー4が、イベントコード及びエレベータ2の状況情報(例えば、撮影機22から出力された画像情報、及び、制御マイコン21により取得されたログデータ)を取得し、これらに基づいて取得したイベントコードの発生原因を推定する。携帯端末3Aは、このサーバーにより推定されたイベントコードの発生原因を出力するため、携帯端末3Aを所持する技術員は、サーバーにより推定されたイベントコードの発生原因を確認することができる。そのため、この技術員は、保守作業情報601に加えてイベントコードの発生原因に基づき、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0057】
保守作業支援システム1では、携帯端末3Aは、サーバー4により推定されたイベントコードの発生原因と共に、エレベータ2の状況情報(例えば、撮影機22から出力された画像情報、及び、制御マイコン21により取得されたログデータ)を出力するため、携帯端末3Aを所持する技術員は、サーバー4により推定されたイベントコードの発生原因と共に、エレベータ2の状況情報を確認することができる。そのため、携帯端末3Aを所持する技術員は、第一サーバー5により推定されたイベントコードの発生原因を確認することができる。その結果、この技術員は、保守作業情報601に加えて発生原因に基づき、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0058】
保守作業支援システム1では、記憶部60が保守作業情報601と対応するチェックリスト602を記憶し、携帯端末3Aは、保守作業情報601と共に、保守作業情報601と対応するチェックリスト602を出力するため、携帯端末3Aを所持する技術員は、保守作業情報601と対応するチェックリスト602を確認することができる。そのため、この技術員は、保守作業情報601に加えて、チェックリスト602に基づき、エレベータ2の保守作業を行うことができる。その結果、保守作業における作業漏れを防ぐことができる。
【0059】
本実施形態の保守作業支援システム1では、携帯端末3Aを所持する技術員は、保守作業情報601を適用する優先順位、及び、チェックリスト602を適用する優先順位を確認できるため、この優先順位に基づいた保守作業情報601及びチェックリスト602に基づいて、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0060】
尚、本発明の保守作業支援システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0061】
例えば、記憶部60は、サーバー4内に備えられていたが、携帯端末3内や別の端末内に備えられていてもよい。即ち、携帯端末3や別の端末が、保守作業情報601等を有していてもよい。
【0062】
通信系統R1は、電話回線を含んでいたが、電話回線の代わりにインターネットを含んでいてもよい。この場合、通信系統R1,R2,R3の一部(インターネット)は共通していてもよい。例えば、図3に示すように、通信系統R1は、エレベータ2からインターネットを介してサーバー4に通信可能な通信系統であり、且つ、サーバー4からインターネットを介してエレベータ2に通信可能な通信系統であってもよい。図3では、エレベータ2はインターネットに直接接続されているが、遠隔監視ユニットのような中継器を介してインターネットに接続されていてもよい。
【0063】
上記実施形態の保守作業支援システム1では、処理部50は、保守作業情報601のアドレス、及び、チェックリスト602のアドレスを携帯端末3Aに出力していたが、処理部50は、記憶部60からこれらのアドレスに対応した保守作業情報601及びチェックリスト602を抽出し、抽出した保守作業情報601及びチェックリスト602を携帯端末3Aに出力してもよい。
【0064】
また、処理部50は、データベース600を用いずに、イベントコードに対応した保守作業情報601等を抽出してもよい。具体的に、記憶部60にイベントコードに対応する保守作業情報601等が記憶されていれば、処理部50は、データベース600を用いずに、制御マイコン21から取得したイベントコードに対応する保守作業情報601等を抽出することができる。尚、この場合、記憶部60は、データベース600を有していなくてもよい。
【0065】
第一サーバー5は、制御マイコン21から故障信号が出力されたとき(発報があるとき)、イベントコード等を読み出し、携帯端末3Aに出力していたが、これに限らず、技術員の所望のタイミングでの携帯端末3の操作により、携帯端末3がイベントコード等を取得してもよい。この場合、技術員が、携帯端末3を操作して、取得したイベントコード等を第一サーバー5に入力することで、第一サーバー5は、保守作業情報601を記憶部60から抽出して携帯端末3に出力し、その結果、携帯端末3がこの保守作業情報601を出力することができる。
【0066】
上記実施形態の保守作業支援システム1では、処理部50が、保守作業情報601等を携帯端末3Aに出力していたが、これに限らず、携帯端末3Aが、処理部50に通信可能な状態にあるときに所定のタイミングで、処理部50から保守作業情報601等を取得してもよい。この場合であっても、携帯端末3Aが、保守作業情報601等を出力することができる。
【0067】
また、上記実施形態の保守作業支援システム1では、イベントコードの発生原因の推定(図2におけるS03)の後に、保守作業情報601及びチェックリスト602を抽出していた(S04)が、S03及びS04を同時に行ってもよい。尚、イベントコードの発生原因の推定自体を行わなくてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態の保守作業支援システム1では、第一サーバー5は、イベントコードと共に、エレベータ2の状況情報を取得していたが、イベントコードのみを取得してもよい。この場合であっても、第一サーバー5は、保守作業情報601を記憶部60から抽出し、携帯端末3が保守作業情報601を出力することができる。
【0069】
上記実施形態の保守作業支援システム1では、携帯端末3は、保守作業情報601に加えて、チェックリスト602を出力していたが、保守作業情報601のみを出力してもよい。
【0070】
このような場合であっても、技術員は、携帯端末3の出力部30により保守作業情報601を確認することができ、保守作業情報601に基づいて、エレベータ2の保守作業を適正且つ迅速に行うことができる。
【0071】
上記実施形態の保守作業支援システム1の処理に加えて、制御マイコン21がエレベータ2の異常の有無を判断し、第一サーバー5が、制御マイコン21による異常の判断の結果を取得し、携帯端末3Aに出力してもよい。具体的に、制御マイコン21は、エレベータ2の関連メモリ値を取得し、このメモリ値が正常である場合エレベータ2に異常が無いと判断し、このメモリ値が異常である場合エレベータ2に異常があると判断する。このメモリ値としては、例えば、かご速度やかご加速度が格納されているメモリの値がある。この場合、第一サーバー5が制御マイコン21からエレベータ2の異常の有無についての判断結果を取得し、携帯端末3がこの判断の結果を出力するため、携帯端末3を所持する技術員は、エレベータ2の異常の有無の判断の結果に基づいて、エレベータ2の保守作業を行うことができる。
【0072】
上記保守作業支援システム1では、エレベータ2は、技術員により携帯端末3を用いて保守されていたが、これに加えて、携帯端末3と異なる端末によりエレベータ2の動作状態を遠隔で監視されてもよい。この場合、通信系統R1は、エレベータ2の遠隔監視を行う通信網の一部であってもよい。
【0073】
携帯端末3の出力部30は、ディスプレイのような表示部であったが、音声アナウンス等の音声情報を出力する場合、スピーカー等であってもよい。また、携帯端末3は、出力部30として、ディスプレイ及びスピーカーの両方を有してもよい。
【0074】
サーバー4が第一サーバー5及び第二サーバー6を備えていたが、第一サーバー5及び第二サーバー6は、別体でもよいし、一体であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…保守作業支援システム、2…エレベータ(昇降装置)、20…動作部、21…制御マイコン、22…撮影機、3,3A,3B…携帯端末(技術員携帯端末)、30…出力部、4…サーバー、5…第一サーバー、50…処理部、6…第二サーバー、60…記憶部、600…データベース、601…保守作業情報、602…チェックリスト、遠隔監視ユニット7、R1,R2,R3…通信系統
図1
図2
図3