(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側ステータに設けられている複数のノズルが、それぞれ独立した原料溶液供給装置に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置。
前記外側ステータに設けられている複数のノズルが、前記ローターの回転軸に対して直交する同一の面内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置。
前記ノズルと前記原料溶液供給装置とを接続している流路に、前記原料溶液が滞留する空間を持たないことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置。
前記ノズルと前記原料溶液供給装置とを接続している各流路には、それぞれ独立した圧力検出装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の超微粒子の製造装置において、超微粒子の製造途中で原料溶液の供給とローターの回転を一旦停止すると、数分後に再開した場合でも、原料供給用ノズルの内部でゲル状の沈殿物が析出するという問題があること、また、超微粒子の製造を数時間継続した場合にも、原料供給用ノズルの内部でゲル状の沈殿物が析出するという問題があることを本発明者らは見出した。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、超微粒子の製造途中で一旦停止した原料溶液の供給とローターの回転を再開した場合や超微粒子の製造を継続的に実施した場合でも、原料供給用ノズル内部でのゲル状の沈殿物の析出が抑制され、超微粒子又は超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を継続的に安定して製造することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも2種類の原料溶液を混合して該原料溶液中の原料に由来する超微粒子を製造する装置であって、高速回転可能なローターと、前記ローターとの間に所定のギャップの領域が形成されるように配置されたステータとを備えたホモジナイザーであり、所定の高剪断速度となっている領域を形成することが可能な高速攪拌装置と、前記領域に前記各原料溶液を独立して直接導入することが可能なノズルと、前記ノズルに接続された原料溶液供給装置と、を備える超微粒子の製造装置において、前記ステータとして、前記ローターの外周との間に形成される所定のギャップの領域において前記所定の高剪断速度となっている領域が形成されるように外側ステータを配置し、前記ノズルとして分岐のないノズルを使用し、前記各ノズルを前記外側ステータにおける前記ローターに対向する面に設け、前記ノズルと前記原料溶液供給装置とを分岐のない流路で接続し、さらに、前記ローターの内側に、前記ローターの内周との間に所定のギャップの領域を形成することにより液体の流れを阻害する部材を配置しないことによって、前記ノズル内部でのゲル状の沈殿物の析出が抑制され、超微粒子又は超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を継続的に安定して製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置は、少なくとも2種類の原料溶液を混合して該原料溶液中の原料に由来する超微粒子又は超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を製造する装置であって、
高速回転可能なローターと、前記ローターの外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された外側ステータとを備えたホモジナイザーであり、前記ギャップの領域において30000sec
−1以上の剪断速度となっている領域を形成することが可能であり、かつ、
前記ローターの内側に、部材が配置されていない状態、若しくは、前記ローターの内周との間に形成される領域のギャップの大きさが2.5mmを超えるように部材が配置されている状態で使用される高速攪拌装置と、
前記ローターの外周と前記外側ステータとの間の領域に前記各原料溶液を独立して直接導入することが可能な分岐のないノズルであって、それぞれ前記外側ステータにおける前記ローターに対向する面に設けられているノズルと、
前記ノズルに接続された原料溶液供給装置と、
前記ノズルと前記原料溶液供給装置とを接続している分岐のない流路と、
を備えることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明において「分岐のないノズル」とは、1つの入口と1つの出口を有し、前記入口から供給される原料溶液を、途中で分岐させることなく、前記出口から吐出させることが可能なノズルのことをいう。また、「分岐のない流路」とは、1つの原料溶液供給装置と1つのノズルとを接続している1本の流路であって、1つの原料溶液供給装置から送り出される原料溶液を、途中で分岐させることなく、1つのノズルに供給することが可能な流路のことをいう。
【0009】
本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、前記外側ステータに設けられている複数のノズルが、それぞれ独立した原料溶液供給装置に接続されていることが好ましく、また、前記ローターの回転軸に対して直交する同一の面内に配置されていることも好ましい。
【0010】
また、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置は、前記ノズルと前記原料溶液供給装置とを接続している流路に、前記原料溶液が滞留する空間を持たないことが好ましく、また、前記各流路には、それぞれ独立した圧力検出装置が設けられていることが好ましい。
【0011】
なお、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置において、原料供給用ノズル内部でのゲル状の沈殿物の析出が抑制される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ローターの外周と外側ステータとの間に所定の高剪断速度となっている領域(以下、「所定の高剪断速度領域」という。)が形成されている。このような所定の高剪断速度領域の中でも、外側ステータに近い領域では、特に高い剪断速度勾配が形成される。そして、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、前記外側ステータにおける前記ローターに対向する面に原料供給用ノズルが設けられており、原料溶液が、先ず、前記の特に高い剪断速度勾配が形成されている領域に導入されるため、微小時間での急速な原料溶液の混合が可能となる。また、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ローターの内側に、液体の流れを阻害する部材が存在しないため、循環している原料溶液と反応後の原料溶液の混合溶液(反応液)の流束が大きくなる。このため、反応場では、超微粒子の生成反応に比べて、原料溶液と反応液との急速な混合による原料成分の過飽和度の急峻な上昇と大きな流束の反応液による急速な希釈による過飽和度の急峻な低下が起こり、微小時間で急速に反応する原料溶液と中和剤等の反応液との反応制御、すなわち、核生成と結晶成長の分離が可能となる。このように、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、前記所定の高剪断速度領域で原料溶液が微小時間で急速に混合されるため、混合効率を高めるための分岐ノズルが不要となる。その結果、本発明にかかる原料供給用ノズル内部においては、分岐部が存在しないため、原料溶液の滞留が起こりにくくなり、ゲル状の沈殿物の析出が抑制されると推察される。
【0012】
また、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、混合効率を高めるために、原料溶液供給装置からの流路を分岐して多数のノズルに接続することも不要となるため、ノズルと原料溶液供給装置とを接続している流路においても、分岐部が存在しないため、原料溶液の滞留が起こりにくくなり、ゲル状の沈殿物の析出が抑制されると推察される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超微粒子の製造途中で一旦停止した原料溶液の供給とローターの回転を再開した場合や超微粒子の製造を継続的に実施した場合でも、原料供給用ノズル内部でのゲル状の沈殿物の析出が抑制され、超微粒子又は超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を継続的に安定して製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付す。
【0016】
図1は、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【0017】
図1に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置は、高速撹拌装置としてアウターノズル型ホモジナイザー10を備えており、アウターノズル型ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。アウターノズル型ホモジナイザー10の先端部は、
図2に示すように、ローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された外側ステータ12とを備えているが、ローター11の内側には、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域を形成することにより液体の流れを阻害する部材(例えば、ステータ)は存在しない。これにより、分岐ノズルが不要となり、原料供給用ノズルの内部に分岐部が存在しないため、原料溶液の滞留が起こりにくくなり、ゲル状の沈殿物の析出が抑制される。さらに、ローター11は、回転シャフト13を介してモーター14に接続されており、高速回転することが可能となっている。
【0018】
そして、
図1に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、
図2及び
図3に示すように、原料溶液Aを導入するための分岐のないノズル15Aと原料溶液Bを導入するための分岐のないノズル15Bと原料溶液Cを導入するための分岐のないノズル15Cとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面に設けられている。分岐のないノズルを用いることによって、ノズル内部に分岐部が存在しないため、原料溶液の滞留が起こりにくくなり、ゲル状の沈殿物の析出が抑制される。また、
図3に示すように、ローター11及び外側ステータ12には、スリット11a及び12aが設けられている。ただし、外側ステータ12のノズル15Aとノズル15Bとの間及びノズル15Aとノズル15Cとの間にはスリットは設けられていない。このようにローター11及び外側ステータ12にスリットを設けることによって、スリットによる反応液の循環が促進されるとともに、ノズル間にスリットが設けられていないことにより原料溶液や反応液等の混合が効率よく達成される。
【0019】
図1〜
図3に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ノズル15Aには分岐のない流路16Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル15Bには分岐のない流路16Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)が、ノズル15Cには分岐のない流路16Cを介して原料溶液Cの供給装置(図示せず)が、それぞれ独立に接続されており、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bと原料溶液Cとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となっている。分岐のない流路を介してノズルと原料溶液供給装置とを接続することによって、流路内部に分岐部が存在しないため、原料溶液の滞留が起こりにくくなり、ゲル状の沈殿物の析出が抑制される。また、各ノズルがそれぞれ独立に原料溶液供給装置と接続されており、流路に個別の流量モニターや圧力検出が不可能な分岐部が存在しないため、原料溶液供給装置からの送液圧力を各ノズルに独立に印加することができ、高圧での送液も可能となる。その結果、原料溶液がノズルの開口部から内部への逆流を防ぐことができ、ゲル状の沈殿物の析出を抑制することが可能となる。また、ゲル状の沈殿物が析出した場合でも、流路やノズルに個別の流量モニターや圧力検出が不可能な分岐部が存在しないため、流路毎に原料溶液供給装置からの流量や送液圧力をモニタリングすることによって、異物による不測の流路の閉塞に対して即時に対応することができる。さらに、析出したゲル状の沈殿物等で流路やノズルが詰まる可能性は低いが、分散性の低い析出物を合成した場合には、ノズル出口が詰まる可能性があり、それも即時に検出することが可能となる。
【0020】
また、
図1〜
図3に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置は、流路16A、流路16B及び流路16Cに、それぞれ原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cが滞留する空間を持っていないことが好ましい。これにより、ゲル状の沈殿物の析出が抑制される。また、洗浄液を流通させることによって、流路内を容易に洗浄することができるため、異なる組成の超微粒子を製造する場合でも、製造装置を分解洗浄する必要がない。また、流路16A、流路16B及び流路16Cには、個別の流量モニターや圧力検出が不可能な分岐部が存在しないため、それぞれ独立した圧力検出装置(図示せず)を設けることができ、流路毎に送液圧力を検出することによって、各流路及び各ノズルでの詰まりを未然に把握することが可能となる。
【0021】
さらに、
図1に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置において、各ノズルは外側ステータ12におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸に対して直交する同一の面内に配置されていなくてもよいが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、
図2及び
図3に示すように、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cが、ローター11の回転軸Xに対して直交する同一の面Y内に配置されていることが好ましい。なお、
図3は、
図2中の面Yにおけるアウターノズル型ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)の横断面である。また、各ノズルは外側ステータ12におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸に対して直交する複数の面の外側ステータ12の内周に沿った方向に複数列で配置されていてもよいが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、
図2及び
図3に示すように、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cからなる少なくとも1組のノズルセットが、ローター11の回転軸Xに対して直交する同一の面Yの外側ステータ12の内周に沿った方向に一列に配置されていることが好ましい。
【0022】
なお、
図1〜
図3に示す超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、3個のノズルからなる1組のノズルセットが設けられているが、ノズルの数は原料溶液の数に応じて適宜設定することができ、例えば、原料溶液の数と同数の分岐のないノズルを設置することが好ましい。また、前記ノズルセットは少なくとも1組設けられていればよいが、外側ステータのサイズが十分に大きい場合には、2組以上のノズルセットを設けることも可能である。これにより、装置の処理能力を向上させることができる。
【0023】
このようなノズルの開口部の大きさ(円形の場合には直径、楕円形の場合には短軸の長さ)は、特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.4〜2mmであることが好ましい。また、隣接するノズルとの間隔は、特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、隣接するノズル孔同士の間の距離で0〜10mmであることが好ましく、前記範囲の中でもより小さい値が特に好ましい。
【0024】
また、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ノズル15Aとノズル15Bとノズル15Cとから原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cがそれぞれ導入される領域、すなわち
図1〜
図3においてはローター11の外周と外側ステータ12の内周との間の領域において、30000sec
−1以上の剪断速度となることが必要であり、100000sec
−1以上の剪断速度となることが特に好ましい(以下、このような剪断速度となっている領域を「所定の高剪断速度領域」という。)。かかる領域の剪断速度が前記下限未満では、原料溶液を微小時間で急速に混合することが困難であり、十分に微細で且つ均一性の高い超微粒子やこの超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を得ることが困難となる。なお、前記剪断速度は、(株)ソフトウェアクレイドル製のSCRYU/Terta又はラージエディシミュレーション(LES)に基づくインハウスのプログラムを用いて数値流体解析(CFD解析)により求めた値である。
【0025】
このような高水準の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度及びローターと外側ステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくる。したがって、ローター11の回転速度の周速の下限及び上限も特に制限されないが、下限としては一般的には3m/sec以上であることが好ましく、上限としては一般的には100m/sec以下であることが好ましい。
【0026】
また、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、CFD解析によってギャップ間を流れる流体の挙動をシミュレーションしたところ、単にギャップが小さければよいというわけではなく、前記所定の高剪断速度領域に導入した原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cの微小時間での混合に支配的な影響を与える乱流エネルギーが、ギャップの大きさが0.25〜0.5mmの範囲内で最大となることが算出された。一方、ギャップの大きさが0.1mm以下になると、剪断速度勾配は大きいが、液の流れが層流となり、原料溶液の微小時間での混合という観点では、前記範囲と比べて好適な条件ではない。他方、ギャップの大きさが0.75mm以上になると、乱流エネルギーは減少する傾向にあり、前記範囲と比べて好適な条件ではない。
【0027】
さらに、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ノズル15Aとノズル15Bとノズル15Cとからそれぞれ供給された原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cが、前記所定の高剪断速度領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.3msec以内)に均質混合されるようにノズル15Aとノズル15Bとノズル15Cとが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記所定の高剪断速度領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、例えば、
図3においては、ノズル15Bから導入された原料溶液Bが隣接するノズル15Aの位置に到達し、ノズル15Aから導入された原料溶液Aと混合された後、さらに、隣接するノズル15Cの位置に到達し、ノズル15Cから導入された原料溶液Cと混合されるまでの時間をいう。
【0028】
また、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ローター11の内側に、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域を形成することにより液体の流れを阻害する部材が存在しない。すなわち、ローター11の内側に部材(例えば、ステータ)が存在する場合、装置の大きさによっても変わってくるが、この部材とローター11の内周との間のギャップの大きさが通常2.5mm以下であると、液体の流れが阻害されやすい。したがって、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ローター11の内側に部材が存在していない(例えば、ローター11の内側が空洞である)ことが好ましいが、ローター11の内側に部材が存在する場合には、前記部材とローター11の内周との間のギャップの大きさが2.5mmを超えていれば、液体の流れは阻害されにくい。また、ローター11の内側には、原料供給用ノズル(インナーノズル)が存在しないことが好ましい。
【0029】
以上説明した
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ローター11を高速回転させることによって、ローター11と外側ステータ12との間の領域を所定の高剪断速度となっている状態とし、このような所定の高剪断速度領域に、原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cをそれぞれノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cから独立して直接導入する。これにより、前記所定の高剪断速度領域において、原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cは、微小時間で急速に均質混合されて反応が進行し、前記原料溶液中の原料に由来する超微粒子又は超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を製造することが可能となる。また、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、原料供給用ノズルや流路の内部に分岐部が存在せず、ゲル状の沈殿物が析出しにくいため、超微粒子の製造を途中で一旦停止し、その後、再稼働させた場合でも、超微粒子を継続的に安定して製造することができる。さらに、原料供給用ノズルや流路の内部において、原料溶液の滞留が起こりにくく、超微粒子が凝集しても沈殿しにくいため、超微粒子の凝集体からなる多孔体の前駆体を継続的に安定して製造することができる。
【0030】
また、
図1〜
図3に示すような本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、ホモジナイザーがアウターノズル型である(ノズルが外側ステータに設けられている)ため、外側ステータには、複数のノズルを任意の位置及び角度で設けることができる。
【0031】
例えば、
図1〜
図3に示すような超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置において、外側ステータ12には、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cの互いになす角が任意の角度で各ノズルを設けることができる。より具体的には、外側ステータ12には、ローター11の回転軸Xに対して直交する同一の面Y内において、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cの互いになす角が0°(最小角、
図4A)である状態からノズル15Bとノズル15Cとのなす角が180°(最大角、
図4B)である状態(ノズル15Aとノズル15Bとのなす角(又は、ノズル15Aとノズル15Cとのなす角)は任意)までの範囲内で各ノズルを設けることができる。
【0032】
また、
図1に示すような超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置において、各ノズルがローター11の回転軸に対して直交する同一の面内に配置されていない外側ステータ12としては、例えば、
図5A及び
図5Bに示すように、各ノズルがローター11の回転軸Xを含む面内(すなわち、ローター11の回転方向に直交する同一の面内)に配置されているものが挙げられる。この場合、原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cはローター11の回転方向に互いにずれることなく、所定の高剪断速度領域に導入される。また、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cは、各ノズルからそれぞれ導入される原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cの各流れが所定の高剪断速度領域内で互いに交わるように配置されていることが好ましく、各原料溶液の流れが所定の高剪断速度領域内の中心より外側で互いに交わるように配置されていることが好ましい。すなわち、
図5Bに示すように、所定の高剪断速度領域の幅(ローター11と外側ステータ12との間のギャップ)をd、原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cの各流れの交点Cと外側ステータ12の内周との距離をLとした場合に、Lが0<L≦d(より好ましくは、0<L≦d/2)で表される条件を満たすように各ノズルを配置することが好ましい。
【0033】
以上、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置の好適な実施形態について説明したが、本発明の装置は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては3種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、2種類の原料溶液を混合する場合には、2種類の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等の構成を変更してもよいし、上記実施形態において3個のノズルのうちの1個を塞いでもよい。また、本発明の超微粒子及び多孔体前駆体の製造装置においては、1個の原料溶液供給装置に1個のノズルを接続するため、外側ステータに設けられるノズルの個数が少なく、1種類の原料溶液に対して複数個の原料溶液供給装置とノズルを併用することが可能であり、また、4種類以上の原料溶液を混合する場合でも、原料溶液の個数に対応した個数のノズルや原料溶液供給装置等を容易に設置することが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
図1〜
図3に示す本発明の製造装置(アウターノズル型スーパーアジテーションリアクター)を用いてCeO
2−ZrO
2複合酸化物超微粒子を合成した。なお、ノズル15Cについてはキャップを取り付けて塞いだ。
【0036】
先ず、硝酸アンモニウムセリウム(IV)水溶液とオキシ硝酸ジルコニウム水溶液とを、Ce:Zr(モル比)が40:60、陽イオン濃度が0.1mol/Lとなるように混合し、原料溶液Aを調製した。この原料溶液AのpHは0.39であった。
【0037】
また、ポリエチレンイミン(数平均分子量:10000)0.68gを500mlのイオン交換水に溶解し、中和剤水溶液を調製した。この中和剤水溶液のpHは10.41であった。この中和剤水溶液と前記原料溶液Aとをそれぞれ2.8mlずつ採取して混合し、得られた混合水溶液のpHを測定したところ、1.04であった。また、この混合水溶液は黄色透明であり、沈殿は形成していなかった。次に、前記中和剤水溶液に、50%に希釈したエチレンジアミン8.41gを添加した。このエチレンジアミンを含有する中和剤水溶液と前記原料溶液Aとをそれぞれ2.8mlずつ採取して混合し、得られた混合水溶液のpHを測定したところ、1.21であった。また、この混合水溶液は、黄色透明であったが、上部に僅かに白色沈殿が生成していた。さらに、エチレンジアミンを含有する前記中和剤水溶液に、エチレンジアミンの合計含有量が12.38gとなるように、50%に希釈したエチレンジアミンを添加して原料溶液Bを調製した。この原料溶液Bと前記原料溶液Aとをそれぞれ2.8mlずつ採取して混合したところ、得られた混合水溶液の上部に白色沈殿が生成した。攪拌により白色沈殿を分散させた後、混合水溶液のpHを測定したところ、1.28であった。
【0038】
次に、200mlビーカー20に、イオン交換水150mlに硝酸を添加してpHを1.28に調整したスタートアップ液を入れ、アウターノズル型ホモジナイザー10の先端を前記スタートアップ液中に浸るようにセットした。アウターノズル型ホモジナイザー10におけるローター11を3400rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ2.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル15A及びノズル15Bからローター11と外側ステータ12との間の領域に送液した。
【0039】
なお、ローター11の外径は18mm、ローター11の外周と外側ステータ12との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度はCFD解析の結果、40000sec
−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記所定の高剪断速度領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.8msecであった。
【0040】
ビーカー20からあふれて出てくる中和反応後の超微粒子分散液を、ビーカー20の下にセットした500mlビーカー(図示せず)で捕集した。得られた分散液中の超微粒子の粒度分布を、マルバーン社製ゼータサイザーナノZSPを用いてDLSモード(動的光散乱法)で測定した。その結果を
図10に示す。上記の超微粒子の製造を3回実施したが、
図10に示したように、いずれの場合にも、得られた超微粒子は、モード径が1nmの微細かつ単分散に近いものであった。
【0041】
また、原料溶液A及び原料溶液Bの送液を同時に停止し、さらにローター11の回転も停止して数分間保持した後、ローター11の回転を再開し、さらに原料溶液A及び原料溶液Bの送液も同時に再開した場合にも、ノズルや流路において詰まりは見られず、停止前と同様に、継続的に安定して超微粒子を得ることができた。
【0042】
さらに、上記の超微粒子の製造を3時間継続した場合にも、ノズルや流路において詰まりは見られず、停止前と同様に、継続的に安定して超微粒子を得ることができた。
【0043】
(比較例1)
図6〜
図9に示す従来の製造装置(インナーノズル型スーパーアジテーションリアクター)を用いてCeO
2−ZrO
2複合酸化物超微粒子を合成した。なお、内側ステータ43として、ノズル45A及びノズル45Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0044】
先ず、実施例1と同様にして原料溶液Aと原料溶液Bを調製した。次に、100mlビーカー20に、イオン交換水80mlに硝酸を添加してpHを1.28に調整したスタートアップ液を入れ、インナーノズル型ホモジナイザー40の先端を前記スタートアップ液中に浸るようにセットした。インナーノズル型ホモジナイザー40におけるローター41を3400rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ2.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル45A及びノズル45Bからローター41と内側ステータ43との間の領域に送液した。
【0045】
なお、ローター41の外径は18mm、ローター41の外周と外側ステータ42との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度はCFD解析の結果、6400sec
−1であった。また、ローター41の内径は12.5mm、ローター41の内周と内側ステータ43との間のギャップは0.25mmであり、それらの間の領域における剪断速度はCFD解析の結果、8500sec
−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記所定の高剪断速度領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.37msecであった。
【0046】
ビーカー20からあふれて出てくる中和反応後の超微粒子分散液を、ビーカー20の下にセットした500mlビーカー(図示せず)で捕集した。得られた分散液中の超微粒子の粒度分布を実施例1と同様に測定した。その結果を
図11に示す。上記の超微粒子の製造を3回実施したが、
図11に示したように、いずれの場合にも、得られた超微粒子は、モード径が1.5〜2nmの微細かつ単分散に近いものであった。
【0047】
また、原料溶液A及び原料溶液Bの送液を同時に停止し、さらにローター41の回転も停止して数分間保持した後、ローター41の回転を再開し、さらに原料溶液A及び原料溶液Bの送液も同時に再開したところ、一見、継続的に超微粒子を得ることができたように見られたが、製造終了後にホモジナイザー40の先端部を分解して観察したところ、ノズル45Bの内部においてゲル状の沈殿物が析出していた。
【0048】
さらに、上記の超微粒子の製造を3時間継続した後、ホモジナイザー40の先端部を分解して観察したところ、ノズル45Aの内部においてゲル状の沈殿物が析出していた。
【0049】
<超微粒子の組成>
実施例1及び比較例1で得られた超微粒子をそれぞれ乾燥した後、900℃で1時間焼成した。焼成後の超微粒子の粉末X線回折パターンを測定した。その結果を
図12に示す。
図12に示したように、実施例1及び比較例1で得られた超微粒子はいずれも311結晶面からの反射に起因するピークが2θ=58.35°の位置に見られた。この値を格子定数に換算すると、0.524nmとなった。特開平09−221304号公報に記載の
図13から、実施例1及び比較例1で得られた超微粒子の組成(モル比)はCeO
2:ZrO
2=40:60であることが確認された。すなわち、実施例1で用いたアウターノズル型スーパーアジテーションリアクター及び比較例1で用いたインナーノズル型スーパーアジテーションリアクターのいずれにおいても、原料仕込比(Ce:Zr)に相当する組成の均一なCeO
2−ZrO
2複合酸化物超微粒子が得られることが確認された。