(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MPTCPでは、TCP以外のデータ通信に適応することができないため、UDP(User Datagram Protocol)のような他のプロトコルを用いた通信の信頼性向上は見込めない。また、MPTCPでは、複数の経路に同様のデータを転送することもできないため、無線通信などを切り替えるタイミングで通信が遮断される可能性が高い。加えて、MPTCPを用いた技術では、TCPヘッダのオプションフィールドを用いているので、パケットを送信及び受信する通信装置は、TCPヘッダのオプションフィールドを認識可能な通信装置を用いなければならない。つまり、MPTCPを用いてパケットを授受するためにはMPTCPによる通信を可能とする通信環境に変更する必要がある。一方、ネットワークに接続された通信装置には、TCPヘッダのオプションフィールドを認識しないものもある。TCPヘッダのオプションフィールドを認識しない通信装置は、TCP/IPを用いたネットワーク通信環境でMPTCPを用いることができず、通信遮断が生じる場合がある。従って、通信遮断を抑制しつつパケットを授受することができる通信装置を提供することには改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮してなされたもので、通信環境に変更を加えることに比べて、簡単な構成で、通信遮断を抑制しつつパケットを授受することができるパケット受信装置、パケット送信装置、パケット通信装置、パケット受信方法、パケット送信方法、及び通信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のパケット受信装置は、移動体に設置されたパケット受信装置であって、各々無線通信により外部と広域通信網のアクセスポイントに接続し、かつ各々を示す情報が設定された複数の無線通信部を含み、前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが付与された狭域通信網用パケットに、前記複数の無線通信部の何れかを示す情報を含む広域通信網用ヘッダが付与されてカプセル化された広域通信網用パケットを、前記複数の無線通信部の何れかにより広域通信網を介して受信する広域受信部と、前記広域受信部で
、広域通信網用パケットを受信した場合に、前記広域通信網用パケットの内容を一時的に記憶するメモリと、前記広域受信部で、前記メモリに記憶された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットが受信された場合に、
前記広域受信部で受信され、かつ前記メモリに記憶された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを削除する削除部と、前記広域受信部で
、前記メモリの記憶内容と異なる内容の広域通信網用パケット
が受信された場合に、前記広域受信部で受信された広域通信網用パケットから、前記広域通信網用ヘッダを除去し、狭域通信網用パケットに復帰させる復帰部と、前記復帰部で復帰された狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信先に送信する狭域送信部と、を備えている。
【0009】
本発明のパケット受信装置によれば、広域受信部は、狭域通信網用ヘッダが各々付与された複数の狭域通信網用パケット各々に、広域通信網用ヘッダが付与されて各々カプセル化された複数の広域通信網用パケットを広域通信網を介して受信する。受信された複数の広域通信網用パケット各々は、復帰部によって、付与された広域通信網用ヘッダが除去され、複数の狭域通信網用パケットに復帰される。復帰された複数の狭域通信網用パケット各々は、狭域送信部によって、狭域通信網を介して狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信先に送信される。従って、狭域通信網用パケットを広域通信網を介してそのまま変更を加えることなく受信可能になる。
【0010】
前記パケット受信装置は、前記広域受信部で受信された複数の広域通信網用パケット各々について、狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信元と広域通信網用ヘッダに含まれる外部送信元とが対応されて記録部に記録されるように制御する記録制御部を含むことができる。このように、前記パケット受信装置が記録制御部を含むことで、広域通信網から受信された広域通信網用パケットについて、内部送信元と外部送信元とを対応づけて記録可能になる。
【0011】
前記パケット受信装置は、前記広域受信部で既に受信された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットが受信された場合に、既に受信された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを削除する削除部を含むことができる。このように、既に受信された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを削除することにより、同じ内容の広域通信網用パケットが重複して流通することを抑制することが可能になる。
【0012】
前記広域通信網用パケットは、コネクションレスプロトコルに基づいてカプセル化されたパケットを用いることができる。コネクションレスプロトコルに基づいてカプセル化することにより、特別なプロトコル及び特別な仕組みを用いる必要はない。
【0013】
また、本発明のパケット送信装置は、移動体に設置されたパケット送信装置であって、前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが付与された狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して受信する狭域受信部と、前記狭域受信部で受信された狭域通信網用パケットを複製する複製部と、前記複製部で複製された複数の狭域通信網用パケットの各々に、無線通信部を示す情報を含む広域通信網用ヘッダを付与して各々広域通信網用パケットとしてカプセル化するカプセル化部と、各々無線通信により広域通信網のアクセスポイントに接続し、かつ各々を示す情報が設定された複数の無線通信部を含み、前記カプセル化部でカプセル化された広域通信網用パケットの各々を、前記複数の無線通信部によって広域通信網を介して前記広域通信網用ヘッダに含まれる外部送信先に送信する広域送信部と、
を備え、前記広域送信部は、前記広域通信網のアクセスポイントの電波強度を示す情報を取得する電波強度情報取得部、移動体の位置情報を取得する位置情報取得部、および前記位置情報取得部で取得された移動体の位置情報と、前記電波強度情報取得部で取得された電波強度とを対応づけたログを記録し、かつ記録されたログに基づいて、移動体の現在位置で接続するアクセスポイントの候補を解析するログ解析部と、を含み、前記ログ解析部は、前記電波強度情報取得部で予め定めた閾値を超える電波強度のアクセスポイントが複数取得された場合に、移動体の移動軌跡又は電波強度の分散に基づいて、接続するアクセスポイントを決定する。
【0014】
本発明のパケット送信装置によれば、狭域受信部によって受信された複数の狭域通信網用パケット各々は、カプセル化部によって、記録部に記録された内容に基づいて定めた外部送信先を示す情報を含む広域通信網用ヘッダを付与して広域通信網用パケットとしてカプセル化される。カプセル化された複数の広域通信網用パケット各々は、広域送信部によって、広域通信網を介して外部送信先に送信される。従って、狭域通信網用パケットは広域通信網を介してそのまま変更を加えることなく受信できるように送信することが可能になる。
【0015】
前記パケット送信装置では、前記記録部は、狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信元と広域通信網用ヘッダに含まれる外部用送信元とが対応されて記録された記録部であり、前記カプセル化部は、前記記録部に記録された内容に基づいて、記録された前記内部送信元に対応する外部用送信元を外部送信先として定めることができる。このように、記録部に記録された内容から外部送信先を定めることで、外部用送信元を記録することで、外部用送信元への返信を容易に実行することが可能になる。
【0016】
また、前記パケット送信装置は、前記複数の狭域通信網用パケット各々を複製する複製部を含み、前記カプセル化部は、複製された複数の狭域通信網用パケット各々に前記広域通信網用ヘッダを付与してカプセル化することができる。このように、狭域通信網用パケットを複製することで、狭域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを複数送信することができ、多重送信が可能になる。
【0017】
さらに、前記パケット送信装置は、前記狭域受信部、カプセル化部、及び広域送信部は、移動体に設置され、前記広域送信部は、外部送信元を示す情報が設定され、かつ無線通信により前記広域通信網のアクセスポイントに接続する無線通信部を含み、前記カプセル化部は、前記無線通信部に設定された内容に基づいて外部送信元を定めることができる。このように、パケット送信装置を移動体に設置し、無線通信により広域通信網のアクセスポイントに接続することで、移動体から広域通信網側に設置された各種電子機器へ、広域通信網用パケットを送信することが可能になる。
【0018】
この場合、前記広域送信部は、前記広域通信網のアクセスポイントの電波強度を示す情報を取得する電波強度情報取得部を含み、前記電波強度情報取得部で予め定めた閾値を超える電波強度のアクセスポイントが複数取得された場合に、複数のアクセスポイント各々の電波強度に基づいて、接続するアクセスポイントを決定することができる。例えば、アクセスポイントの電波強度が大きくなるのに従って通信品質が安定する場合に、電波強度が最大のアクセスポイントを接続先に決定することで、安定したパケット送信が可能になる。
【0019】
また、前記広域送信部は、移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部で取得された移動体の位置情報と、前記電波強度情報取得部で取得された電波強度とを対応づけたログを記録し、かつ記録されたログに基づいて、移動体の現在位置で接続するアクセスポイントの候補を解析するログ解析部と、を含み、前記ログ解析部で解析されたアクセスポイントの候補を、接続するアクセスポイントとして決定することもできる。移動体の移動に応じて電波強度が変化する場合があるので、移動体の位置と電波強度とを対応付けたログを記録することで、記録されたログから、接続するのに好ましいアクセスポイントを決定することが可能になる。
【0020】
さらに、前記パケット送信装置は、前記ログ解析部に記録されたログに基づいて、前記位置情報取得部で取得された移動体の位置情報による位置における電波強度に応じて、前記複製部で複製するパケット数が増減されるように制御するパケット数制御部を含むことができる。このパケット数制御部によって、複製されるパケット数が増減されるので、電波強度に応じた電波状況に対応する個数だけパケットを複製することができ、余分な複製及び過剰な複製を抑制することが可能なる。
【0021】
なお、前記パケット送信装置でも、前記広域通信網用パケットとして、コネクションレスプロトコルに基づいてカプセル化されたパケットを用いることができる。
【0022】
本発明のパケット通信装置は、
移動体に設置されたパケット通信装置であって、外部と広域通信網用パケットを通信する複数の外部通信部、前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが
付与された狭域通信網用パケットに、
前記複数の外部通信部の何れかを示す情報を含む広域通信網用ヘッダが付与されて
カプセル化された広域通信網用パケットを
、前記複数の外部通信部の何れかにより広域通信網を介して受信する広域受信部、
前記広域受信部で既に受信された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットが受信された場合に、既に受信された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを削除する削除部、前記広域受信部で受信され
、かつ既に受信された広域通信網用パケットと異なる内容の広域通信網用パケットから、
前記広域通信網用ヘッダを除去し
、狭域通信網用パケットに復帰させる復帰部、及び、前記復帰部で復帰された
狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信先に送信する狭域送信部、を備えたパケット受信部と、
前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが
付与された狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して受信する狭域受信部、前記狭域受信部で受信された狭域通信網用パケット
を複製する複製部、前記複製部で複製された複数の狭域通信網用パケットの各々に、記録部に記録された内容に基づいて定めた
前記複数の外部通信部の何れかを示す情報を含む広域通信網用ヘッダを付与して
各々広域通信網用パケットとしてカプセル化するカプセル化部、及び、前記カプセル化部でカプセル化された
広域通信網用パケットの各々を、
前記複数の外部通信部によって広域通信網を介して前記広域通信網用ヘッダに含まれる外部送信先に送信する広域送信部、を備えたパケット送信部と、を含む。
【0023】
また、本発明のパケット通信装置は、前記パケット受信装置と、前記パケット送信装置と、狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信元と広域通信網用ヘッダに含まれる外部用送信元とが対応されて記録された記録部と、を備えて構成することもできる。
【0024】
本発明のパケット受信方法は、移動体に設置されたコンピュータが、各々無線通信により外部と広域通信網のアクセスポイントに接続し、かつ各々を示す情報が設定された複数の無線通信部を含み、前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが付与された狭域通信網用パケットに、前記複数の無線通信部の何れかを示す情報を含む広域通信網用ヘッダが付与されてカプセル化された広域通信網用パケットを、前記複数の無線通信部の何れかにより広域通信網を介して受信し、
前記広域通信網用パケットを受信した場合に、前記広域通信網用パケットの内容を一時的にメモリに記憶し、前記メモリに記憶された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットが受信された場合に、
前記メモリに記憶された広域通信網用パケットと同じ内容の広域通信網用パケットを削除し、
前記メモリの記憶内容と異なる内容の広域通信網用パケット
が受信された場合に、受信された広域通信網用パケットから、前記広域通信網用ヘッダを除去し、狭域通信網用パケットに復帰させ、復帰された狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して狭域通信網用ヘッダに含まれる内部送信先に送信する。
【0025】
本発明のパケット送信方法は、移動体に設置されたコンピュータが、前記移動体における内部送信元及び内部送信先を示す情報を含む狭域通信網用ヘッダが付与された狭域通信網用パケットを狭域通信網を介して受信し、受信された狭域通信網用パケットを複製し、複製された複数の狭域通信網用パケットの各々に、無線通信部を示す情報を含む広域通信網用ヘッダを付与して各々広域通信網用パケットとしてカプセル化し、各々無線通信により広域通信網のアクセスポイントに接続し、かつ各々を示す情報が設定された複数の無線通信部によって、前記カプセル化された広域通信網用パケットの各々を、前記複数の無線通信部によって広域通信網を介して前記広域通信網用ヘッダに含まれる外部送信先に送信する
場合に、前記カプセル化された広域通信網用パケットの各々を送信する場合、前記広域通信網のアクセスポイントの電波強度を示す情報を取得し、移動体の位置情報を取得し、前記取得された移動体の位置情報と、前記取得された電波強度とを対応づけたログを記録し、かつ記録されたログに基づいて、移動体の現在位置で接続するアクセスポイントの候補を解析することを含み、前記接続するアクセスポイントの候補を解析する場合、予め定めた閾値を超える電波強度のアクセスポイントが複数取得された場合に、移動体の移動軌跡又は電波強度の分散に基づいて、接続するアクセスポイントを決定する。
【0026】
本発明の通信プログラムは、コンピュータを、前記パケット受信装置、又は前記パケット送信装置、若しくは前記パケット通信装置として機能させる。
【0027】
このような、パケット受信方法、パケット送信方法及び通信プログラムによっても、狭域通信網用パケットを広域通信網を介してそのまま変更を加えることなく送受信可能になる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、通信環境に変更を加えることに比べて、簡単な構成で、通信遮断を抑制しつつパケットを授受することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明に係る第1実施形態を説明する。
【0031】
図1に、第1実施形態に係る車両等の移動体に搭載された電子機器を含む複数の電子機器間で、無線通信により情報を授受する無線通信システム10の構成の一例を示す。
【0032】
図1に示すように、無線通信システム10は、移動体20に搭載された電子機器、及びクラウド部30に設置された電子機器とを備え、移動体20側の電子機器とクラウド部30側の電子機器との間で、相互に情報を授受する。
【0033】
移動体20は、移動体側コンピュータ(Vehicle-side Computer。以下、VPCという。)22及び移動体側ルータ(Vehicle-side Programmable Router。以下、VPRという。)26を備えている。VPC22及びVPR26は、移動体20側の狭域通信網としての移動体20内に装備された機器間で相互にデータ及びコマンドを授受可能なネットワーク(Vehicle-side Local Area Network。以下、移動体側LANという)24に接続されている。
【0034】
VPC22は、移動体20における各種の制御を行うものであり、移動体20の外部機器と情報授受する際には、移動体側LAN24を介してVPR26と情報(パケット)を授受する。なお、VPC22には、VPC22を識別するための識別番号であるIPアドレス(Internet Protocol Address)が予め設定されている。
【0035】
VPR26は、パケット送受信機能を有しており、広域通信網用としての無線通信網37と通信するための無線LANアダプタを複数備えている。
図1では、一例として2つの無線LANアダプタの各々に含まれる無線通信アンテナ28、29を表記して、2つの無線通信アンテナ28、29の各々を介して無線通信網37と通信する場合を一例として示しているが、2つに限定されるものでなく、1つでもよく、また3つ以上でもよい。このVPR26は、VPC22と狭域通信網用パケットとしてのパケットを授受するために、移動体側LAN24上に設けられる所謂ゲートウェイ(Gateway)として機能する電子機器である。VPR26は、VPC22から送信されたパケットを無線通信網37で処理可能な広域通信網用パケットとしての外部パケットにして送信する機能、及び無線通信網37から送信された外部パケットをVPC22(移動体側LAN24)で処理可能なパケットにして送信する機能を有している(詳細は後述)。なお、VPR26には、IPアドレス(Internet Protocol Address)が予め設定されている。また、無線LANアダプタの各々にも、IPアドレス(Internet Protocol Address)が予め設定されている。
【0036】
クラウド部30は、無線通信網37、クラウド側ルータ(Server-side Programmable Router。以下、SPRという。)36、及びクラウド側コンピュータ(Server -side Computer。以下、SPCという。)32を備えている。無線通信網37は、SPR36を介してSPC32に接続されている。なお、
図1では、SPR36が1つのSPC32に接続された場合を模式的に示したものである。つまり、クラウド31は、所謂クラウドと呼ばれるサーバ等の電子機器及びそれらの電子機器と通信する通信機器の集合体であり、少なくともSPC32を複数備えているが、
図1では、1つのSPC32の接続を代表的に示したものである。
【0037】
無線通信網37は、アクセスポイント(AP)38、39を含んでおり、SPR36に接続されている。なお、
図1では、無線通信するための機器の一例として、2つのアクセスポイント(AP)38、39を示しているが、アクセスポイント(AP)の個数は2つに限定されるものでなく、1つでもよく、また、3つ以上でもよい。無線通信網37は、アクセスポイント(AP)38、39を介して移動体20(無線通信アンテナ28、29)に対して無線通信により情報を授受する。
【0038】
また、SPR36は、パケット送受信機能を有しており、SPC32に接続されている。SPC32及びSPR36は、クラウド部30側の狭域通信網としてのクラウド31内に設置された機器間で相互にデータ及びコマンドを授受可能なネットワーク(Server-side Local Area Network。以下、クラウド側LANという)34に接続されている。なお、SPC32及びSPR36の各々には、IPアドレス(Internet Protocol Address)が予め設定されている。
【0039】
SPR36は、無線通信網37とクラウド31のSPC32(クラウド側LAN34)との境界に設けられた所謂ゲートウェイ(Gateway)として機能する電子機器である。SPR36は、SPC32から送信されたパケットを無線通信網37で処理可能な外部パケットにして送信する機能、及び無線通信網37から送信された外部パケットをSPC32(クラウド側LAN34)で処理可能なパケットにして送信する機能を有している(詳細は後述)。
【0040】
SPC32は、クラウド31側における各種の制御を行うコンピュータであり、移動体20と情報授受する際には、クラウド側LAN34を介してSPR36と情報(パケット)を授受する。
【0041】
図2に、移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各構成の一例をブロック図で示す。移動体20に設置されたVPR26は、移動体20側のLAN通信部261、パケット重複部262、カプセル化部263、無線通信部267S、267R、及びカプセル化除去部269を備えている。
【0042】
(移動体20側からクラウド部30側へのパケット送信)
・VPR26
まず、VPR26について、移動体20側からクラウド部30側へパケットを送信する際における機能を主として、LAN通信部261、パケット重複部262、カプセル化部263、及び無線通信部267S、267Rを用いて説明する。
【0043】
移動体20側のLAN通信部261は、移動体側LAN24と、パケット重複部262及びカプセル化部263を介して、無線通信網37と通信するための無線LANアダプタとして機能する無線通信部267S、267Rに接続されている。
【0044】
移動体20側からクラウド部30側へパケットを送信する場合、移動体20側のLAN通信部261は、VPC22から送信された移動体20内で処理される情報を示すパケット(Internal Network Packet:以下、内部パケットという。)を移動体側LAN24から受け取り、パケット重複部262へ送信する機能を有している。パケット重複部262は、LAN通信部261から送信されたパケットを予め定めた個数だけ複製し、複製したパケット各々をカプセル化部263へ送信する機能を有している。カプセル化部263は、パケット重複部262で複製されたパケット各々を無線通信網37で処理可能なパケット(External Network Packet:以下、外部パケットという。)に変換して無線通信部267S、267Rへ送信する機能を有している。無線通信部267S、267Rは、無線通信により、カプセル化部263から送信された複数の外部パケットを無線通信網37へ送信する機能を有している。なお、無線通信部267S、267Rの各々には、IPアドレス(Internet Protocol Address)が予め設定されている。
【0045】
ここで、カプセル化部263においてカプセル化されるパケットについて説明する。
【0046】
図3に、カプセル化部263においてカプセル化するパケットのパケットフォーマットの一例を示す。なお、第1実施形態では、パケットは、コネクションレスプロトコルに基づいてカプセル化される。また、第1実施形態では、カプセル化部263において、コネクションレスプロトコルの一例として、インターネットプロトコルスイート(Internet Protcol Suite)として一般的に用いられている通信プロトコルであるTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)をベースとしたUDP(User Datagram Protocol)を用いた場合を説明する。
【0047】
図3に示すように、移動体側LAN24から受け取るVPC22から送信された内部パケットは、移動体側LAN24を介して処理されるデータ(
図3では、Payloadとして示される)及び狭域通信網用ヘッダとしてのIP(Internet Protocol)のフィールドを含んでいる。内部パケットのIPフィールドには、送信元IPアドレス(Src IP)としてVPC22のIPアドレスが設定される。カプセル化される外部パケットは、内部パケットに、UDP/IPにタイムスタンプ(Timestamp:
図3ではTSとして示される)を付与した広域通信網用ヘッダとしてのヘッダが取り付けられる。このように、外部パケットは、カプセル化部263において、内部パケットにヘッダが付与されてカプセル化される。
【0048】
このカプセル化される外部パケットのヘッダのIPフィールドには送信先IPアドレス(Dst IP)及び送信元IPアドレス(Src IP)が含まれる。このIPフィールドの送信先IPアドレス(Dst IP)にはクラウド部30側のSPR36のIPアドレスが設定され、また送信元IPアドレス(Src IP)には外部パケットを転送する無線LANアダプタのIPアドレスが設定される。また、UDPフィールドには、送信元ポート(Src Port)及び送信先ポート(Dst Port)が含まれる。UDPフィールドの送信元ポート(Src Port)にはVPR26でカプセル化パケットを処理する予め定めたポート番号(例えは、0xaaaa)が設定され、送信先ポート(Dst Port)にはSPR36でカプセル化パケットを処理する予め定めたポート番号(例えば、0xffff)が設定される。これらのIPアドレス及びポートの設定が、カプセル化部263で実行される。なお、ここでは、IPフィールドの送信先IPアドレス(Dst IP)として設定されるクラウド部30側のSPR36のIPアドレスは、予めカプセル化部263に設定されているものとする。
【0049】
従って、VPC22から内部パケットが送信された場合には、VPR26では、LAN通信部261で内部パケットを受け取り、パケット重複部262で内部パケットが複数に複製され、カプセル化部363でUDP/IPにタイムスタンプTSを付け加えたヘッダが取り付けられる(カプセル化される)。そして、カプセル化された外部パケットは無線LANアダプタ各々からSPR36へ向けて送信される。
【0050】
なお、上記では、
図2に示すVPR26のLAN通信部261は、狭域受信部の一例である。また、パケット重複部262は、複製部の一例である。カプセル化部263は、復帰部の一例である。無線アダプタとしての無線通信部267S、267Rは、広域送信部の一例である。
【0051】
・SPR36
次、SPR36について、移動体20側から送信された外部パケットを受け取る際における機能を主として説明する。
【0052】
図2に示すように、クラウド部30側に設置されたSPR36は、LAN通信部361、パケット重複部362、カプセル化部363、WAN通信部364、IP更新部366、及びカプセル化除去部369を備えている。SPR36のWAN通信部364は、IP更新部366、及びカプセル化除去部369を介してLAN通信部361に接続されている。
【0053】
WAN通信部364は、無線通信網37から送信された外部パケットを受信してIP更新部366へ送信する機能を有している。IP更新部366は、無線通信網37から送信された外部パケットをカプセル化除去部369へ送信する機能を有している。また、IP更新部366は、メモリ366Mを備えており、その外部パケットを送信する際に外部パケットに含まれる送信元IPアドレス等のデータを抽出してメモリ366Mにデータテーブルとして記録する機能を有している。カプセル化除去部369は、IP更新部366から送信された外部パケットから、ヘッダを削除することにより外部パケットに対するカプセル化を除去し、カプセル化が除去されたパケットをLAN通信部361へ送信する機能を有している。
【0054】
ここで、IP更新部366で記録されるデータテーブルについて説明する。
SPR36のIP更新部366は、外部パケットにおける送信先IPアドレス(Dst IP)がSPR36のIPアドレスで送信先ポート(Dst Port)が所定ポート(例えば、0xffff)である場合に、受け取った外部パケットはVPR26でカプセル化されたパケットと判断して、外部パケットに含まれる移動体20側のデータを記録する。ここでは、移動体20側のデータの一例として、VPC22のIPアドレス(Internal Network PacketのSrc IP)とタイムスタンプTS(Timestamp)、及び無線LAN子機としての無線通信部267S、267Rの何れかのIPアドレス(External PacketのSrc IP)が挙げられる。
【0055】
以下の説明では、IP更新部366が、VPC22のIPアドレス(Src IP)とタイムスタンプTS(Timestamp)、及び無線LAN子機としての無線通信部267S、267Rの何れかのIPアドレス(外部パケットのSrc IP)を抽出し、データテーブルとして第1データテーブル42及び第2データテーブル44の2つのデータテーブルを構築してメモリ366Mに格納する場合を一例として説明する。
【0056】
図4に、第1データテーブル42の一例を示し、
図5に、第2データテーブル44の一例を示す。
【0057】
図4に示すように、第1データテーブル42はVPC22のIPアドレス(
図4では、VPC IPと表記)をキーとし、タイムスタンプTS(
図4では、Time Stampと表記)のキューをバリューとした辞書型データテーブル(IP-TS辞書)である。また、
図5に示すように、第2のデータテーブル44はVPC22のIPアドレスをキーとしてVPC22が接続されるVPR26の複数の無線LANアダプタのIPアドレス(
図5では、Wifi Adapter1、Wifi Adapter2と表記)をバリューとした辞書型データテーブル(IP-IP辞書)である。
【0058】
従って、
図2に示すWAN通信部364で受信したパケットがカプセル化された外部パケットであった場合、IP更新部366は、外部パケットに含まれる送信元IPアドレス等のデータを抽出してデータテーブルとして記録してカプセル化除去部369へ送信する。カプセル化除去部369は、IP更新部366から送信された外部パケットから、ヘッダ削除により外部パケットのカプセル化を除去し、LAN通信部361へ送信する。
【0059】
なお、上記では、
図2に示すSPR36のWAN通信部364は、広域受信部の一例である。また、IP更新部366は、記録制御部の一例であり、メモリ366M、第1データテーブル42及び第2データテーブル44は、記録部の一例である。カプセル化除去部369は、復帰部の一例である。LAN通信部361は、狭域送信部の一例である。
【0060】
(クラウド部30側から移動体20側へのパケット送信)
次に、クラウド部30側から移動体20側へパケット送信する場合を説明する。
【0061】
・SPR36
まず、SPR36について、移動体20側へ外部パケットを送信する際における機能を主として説明する。
SPR36のLAN通信部361は、クラウド側LAN34接続され、かつパケット重複部362及びカプセル化部363を介してWAN通信部364に接続されている。また、カプセル化部363は、IP更新部366にも接続されている。また、WAN通信部364は、無線通信網37に接続されている。
【0062】
SPR36のLAN通信部361は、VPR26のLAN通信部261と同様に、SPC32つまりクラウド31から送信されたパケットをクラウド側LAN34から受け取り、パケット重複部362へ送信する機能を有している。パケット重複部362は、VPR26のパケット重複部262と同様に、LAN通信部361から送信されたパケットを予め定めた個数だけ複製し、複製したパケット各々をカプセル化部363へ送信する機能を有している。なお、パケット重複部362は、IP更新部366にも接続されており、第2データテーブル44を参照し、送信先が複数の場合に、複数の送信先各々へパケットが送信されるように、複製することができる。
【0063】
カプセル化部363は、VPR26のカプセル化部263と同様に、パケット重複部362で複製されたパケット各々を無線通信網37で処理可能な外部パケットにしてWAN通信部364へ送信する機能を有している。なお、SPR36のカプセル化部363は、IP更新部366に記録されたデータテーブルに基づいて、カプセル化を行う。詳細には、カプセル化する外部パケットの送信先アドレス(Dst IP)として、第2データテーブル44(IP-IP 辞書)に記録された無線通信部267S、267Rの複数のIPアドレスが設定される。WAN通信部364は、カプセル化部363から送信された複数の外部パケットを無線通信網37へ送信する機能を有している。
【0064】
従って、SPR36は、クラウド31からパケットを受け取ると、パケット重複部362でパケットを複製し、各々カプセル化部363でカプセル化を行う。このカプセル化する外部パケットの送信先アドレス(Dst IP)には、第2データテーブル44(IP-IP 辞書)に記録された無線通信部267S、267Rの複数のIPアドレスを用いる。このようにすることで、VPR26の無線通信部267S、267R各々に外部パケットが送信されるので、外部パケットを取得(ダウンロード)する際の無線多重化を実現することができる。
【0065】
なお、上記では、
図2に示すSPR36のLAN通信部361は、狭域受信部の一例である。また、パケット重複部362は、複製部の一例である。カプセル化部363は、復帰部の一例である。WAN通信部364は、広域送信部の一例である。
【0066】
・VPR26
次に、VPR26について、クラウド部30から移動体20側へパケットを送信する際における機能を主として、LAN通信部261、カプセル化除去部269、及び無線通信部267S、267Rを用いて説明する。
【0067】
VPR26の無線通信部267S、267R各々は、カプセル化除去部269を介して、LAN通信部261に接続されている。
【0068】
VPR26のカプセル化除去部269は、SPR36のカプセル化除去部と同様に、外部パケットから、ヘッダを削除することにより外部パケットに対するカプセル化を除去し、カプセル化が除去されたパケットをLAN通信部261へ送信する機能を有している。また、カプセル化除去部269は、外部パケットの送信先IPアドレス(Dst IP)がVPR26に含まれる無線通信部267S、267RのIPアドレスで、かつ送信先ポート(Dst Port)が所定ポート(例えば、0xaaaa)である場合に、カプセル化された外部パケットであると判定する機能を有している。
【0069】
従って、VPR26のカプセル化除去部269では、無線通信部267S、267Rで受信した外部パケットが、送信先IPアドレス(Dst IP)がVPR26に含まれる無線通信部267S、267RのIPアドレスで、かつ送信先ポート(Dst Port)が所定ポート(例えば、0xaaaa)である場合に、ヘッダを除去することで、カプセル化を除去し、カプセル化が除去されたパケットをVPC22に送信する。
【0070】
なお、上記では、
図2に示すVPR26の無線通信部267S、267Rは、広域受信部の一例である。また、カプセル化除去部269は、復帰部の一例である。LAN通信部261は、狭域送信部の一例である。
【0071】
このように、無線通信で同時に複数接続を実現できる。このため、移動体20側の複数の無線通信部の何れか1つでアクセスポイント(AP)を順次切り替えていくことによって、常に1つのの無線通信が確率できるのでハンドオーバによる通信遮断を回避することができる。
【0072】
第1実施形態に係る無線通信システム10に含まれる移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各々は、構成する各構成要素を、上記説明した各機能を有する電子回路等のハードウェアにより構築してもよく、構成する各構成要素の少なくとも一部を、コンピュータにより当該機能を実現するように構築してもよい。
【0073】
図6には、VPR26を、コンピュータにより実現する構成の一例が示されている。
図6に示すように、VPR26として動作するコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)52、RAM(Random Access Memory)54、およびROM(Read Only Memory)56を備えたコンピュータ本体50を含んで構成されている。ROM56は、上記説明した各機能を実現するための移動体側通信制御プログラム56Pを含んでいる。コンピュータ本体50は、入出力インタフェース(I/O)58を備えており、CPU52、RAM54、ROM56、及びI/O58は各々コマンド及びデータを授受可能にバス59を介して接続されている。また、I/O58には、無線通信部267S、267R、不揮発性メモリ57、及び移動体側LAN24が接続されている。
【0074】
コンピュータ本体50は、移動体側通信制御プログラム56PがROM56から読み出されてRAM54に展開され、RAM54に展開された移動体側通信制御プログラム56PがCPU52によって実行されることで、
図1及び
図2に示すVPR26として動作する。なお、移動体側通信制御プログラム56Pは、
図2に示すVPR26のLAN通信部261、パケット重複部262、カプセル化部263、及びカプセル化除去部269の各機能を実現するためのプロセスを含む。
【0075】
また、
図7には、SPR36を、コンピュータにより実現する構成の一例が示されている。
図7に示すように、SPR36として動作するコンピュータは、CPU62、RAM64、およびROM66を備えたコンピュータ本体60を含んで構成されている。ROM66は、上記説明した各機能を実現するためのクラウド側通信制御プログラム66Pを含んでいる。コンピュータ本体60は、入出力インタフェース(I/O)68を備えており、CPU62、RAM64、ROM66、及びI/O68は各々コマンド及びデータを授受可能にバス69を介して接続されている。また、I/O68には、WAN通信部364、不揮発性メモリ67、及びクラウド側LAN34が接続されている。
【0076】
コンピュータ本体60は、クラウド側通信制御プログラム66PがROM66から読み出されてRAM64に展開され、RAM64に展開されたクラウド側通信制御プログラム66PがCPU62によって実行されることで、
図1及び
図2に示すSPR36として動作する。なお、クラウド側通信制御プログラム66Pは、
図2に示すSPR36のLAN通信部361、パケット重複部362、カプセル化部363、IP更新部366、及びカプセル化除去部369の各機能を実現するためのプロセスを含む。
【0077】
図8には、コンピュータにより実現したVPR26における処理の流れの一例が示されている。
【0078】
まず、移動体20側からクラウド部30側へパケット送信する場合の処理について説明する。
【0079】
コンピュータ本体50では、ステップS100で、パケットの送受信判定を実行する。パケットの送受信判定は、例えば、無線通信部267S、267Rから外部パケットを受け取ったか、移動体側LAN24から内部パケットを受け取ったかによって判定することができる。移動体側LAN24から内部パケットを受け取った場合には、パケットの送信と判定する。一方、無線通信部267S、267Rから外部パケットを受け取った場合には、パケットの受信と判定する。次のステップS110では、ステップS100の判定結果が送信か否かを判断し、送信の場合には、肯定判断され、ステップS112へ処理を移行する。一方、受信の場合には、ステップS110で否定判断され、ステップS120へ処理を移行する。
ステップS112では、移動体側LAN24から受け取った内部パケットが一時的に記憶され、次のステップS114で、一時的に記憶された内部パケットが予め定めた個数だけ複製される。次のステップS116では、外部パケットとして、複製された複数の内部パケット各々にヘッダが付与されてカプセル化される。次のステップ118では、カプセル化された複数の外部パケットが無線通信部267S、267Rへ出力される。これによって、無線通信部267S、267Rから外部パケットが送信される。次に、ステップS130では、電源遮断等による終了指示がなされたかを判断し、否定判断された場合には、ステップS100へ処理を戻す。ステップS130で肯定判断された場合には、本処理ルーチンを終了する。
【0080】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS112の処理は、VPR26のLAN通信部261の機能に対応する。また、ステップS114の処理は、VPR26のパケット重複部262の機能に対応する。さらに、ステップS116の処理は、VPR26のカプセル化部263の機能に対応する。さらにまた、ステップS118の処理は、VPR26の無線通信部267S、267Rへ出力される外部パケット出力機能に対応する。
【0081】
コンピュータ本体50の処理により、無線通信部267S、267Rから送信された外部パケットは、無線通信網37を介してSPR36で受け取られる。
【0082】
図9には、コンピュータにより実現したSPR36における処理の流れの一例が示されている。
【0083】
コンピュータ本体60では、ステップS200で、パケットの送受信判定を実行する。パケットの送受信判定は、例えば、WAN通信部364から外部パケットを受け取ったか、クラウド側LAN34から内部パケットを受け取ったかによって判定することができる。クラウド側LAN34から内部パケットを受け取った場合には、パケットの送信と判定する。一方、WAN通信部364から外部パケットを受け取った場合には、パケットの受信と判定する。次のステップS210では、ステップS200の判定結果が送信か否かを判断し、送信の場合には、肯定判断され、ステップS212へ処理を移行する。一方、受信の場合には、ステップS210で否定判断され、ステップS220へ処理を移行する。
【0084】
ここでは、移動体側から送信された外部パケットを受け取った受信判定の場合について説明する。
ステップS220では、WAN通信部364で受け取った外部パケットが一時的に記憶され、その外部パケットがカプセル化されたパケットか否かが判断される。この外部パケットがカプセル化されたパケットか否かの判断は、上述の通り、外部パケットにおける送信先IP(Dst IP)がSPR36のIPアドレスで、かつ送信先ポート(Dst Port)が所定ポート(例えば、0xffff)である場合に、VPR26でカプセル化されたパケットであると判断できる。
【0085】
ステップS221で肯定判断された場合には、ステップS222へ処理が移行される。ステップS222では、外部パケットに含まれる送信元IPアドレス等のデータを抽出してデータテーブル(第1データテーブル42及び第2データテーブル44)が記録される。次のステップS226では、カプセル化された外部パケットからヘッダを取り除く処理が実行され、次のステップS228で、カプセル化が除去された内部パケットがクラウド側LAN34へ出力される。一方、ステップS221で否定判断された場合には、通常のUDPによる処理によって、ステップS228で内部パケットが出力される。次に、ステップS230では、電源遮断等による終了指示がなされたかを判断し、否定判断された場合には、ステップS200へ処理を戻す。ステップS230で肯定判断された場合には、本処理ルーチンを終了する。
【0086】
なお、コンピュータ本体60で実行されるステップS222の処理は、SPR36のIP更新部366の機能に対応する。また、ステップS226の処理は、SPR36のカプセル化除去部369の機能に対応する。さらに、ステップS228の処理は、SPR36のLAN通信部361の機能に対応する。
【0087】
次、クラウド部30側から移動体20側へパケット送信する場合の処理について説明する。
【0088】
図9に示すように、クラウド部30側から移動体20側へパケット送信する場合、SPR36として動作するコンピュータ本体60では、ステップS210で、肯定判断され、ステップS212へ処理が移行される。
【0089】
ステップS212では、クラウド側LAN34から受け取った内部パケットが一時的に記憶され、次のステップS214で、一時的に記憶された内部パケットが予め定めた個数だけ複製される。次のステップS216では、外部パケットとして、複製された複数の内部パケット各々にヘッダが付与されてカプセル化される。なお、カプセル化される外部パケットは、予め記録されたデータテーブルに基づいて、カプセル化が行われる。つまり、上述のように、カプセル化する外部パケットの送信先アドレス(Dst IP)として、第2データテーブル44(IP-IP 辞書)に記録された無線通信部267S、267Rの複数のIPアドレスが設定される。次のステップ218では、カプセル化された複数の外部パケットがWAN通信部364へ出力される。これによって、WAN通信部364から外部パケットが送信される。
【0090】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS212の処理は、SPR36のLAN通信部361の機能に対応する。また、ステップS214の処理は、SPR36のパケット重複部362の機能に対応する。さらに、ステップS216の処理は、SPR36のカプセル化部363の機能に対応する。さらにまた、ステップS218の処理は、SPR36のWAN通信部364へ出力される外部パケット出力機能に対応する。
【0091】
コンピュータ本体60の処理により、WAN通信部364から送信された外部パケットは、無線通信網37を介してVPR26で受け取られる。
【0092】
図8に示すように、クラウド部30側から移動体20側へパケット送信された場合、VPR26として動作するコンピュータ本体50では、ステップS110で、否定判断され、ステップS120へ処理が移行される。
【0093】
ステップS120では、無線通信部267S、267Rで受け取った外部パケットが一時的に記憶され、その外部パケットがカプセル化されたパケットか否かが判断される。この外部パケットがカプセル化されたパケットか否かの判断は、上述の通り、外部パケットにおける送信先IP(Dst IP)が無線通信部267S、267RのIPアドレスで、かつ送信先ポート(Dst Port)が所定ポート(例えば、0xffff)である場合に、SPR36でカプセル化されたパケットであると判断できる。
【0094】
ステップS122で肯定判断された場合には、ステップS126へ処理が移行される。ステップS126では、カプセル化された外部パケットからヘッダを取り除く処理が実行され、次のステップS128で、カプセル化が除去された内部パケットが移動体側LAN24へ出力される。一方、ステップS122で否定判断された場合には、通常のUDPによる処理によって、ステップS128で内部パケットが出力される。
【0095】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS126の処理は、VPR26のカプセル化除去部269の機能に対応する。また、ステップS128の処理は、VPR26のLAN通信部261の機能に対応する。
【0096】
このように、第1実施形態の無線通信システムによれば、コネクションレスプロトコルに基づいてカプセル化、詳細にはUDPによりカプセル化された外部パケットにより移動体20とクラウド部30との間でデータ授受するので、移動体20のネットワーク及びクラウド部30のネットワークに特別な変更を加えることなく、パケットを送受信することができる。また、第1実施形態では、複製された複数のパケットを用いているので、無線多重化を実現することができる。
【0097】
[第2実施形態]
次、第2実施形態を説明する。第1実施形態では、複製された複数のパケットが移動体側LAN24またはクラウド側LAN34に出力されて、パケットが冗長的になる場合がある。そこで、第2実施形態では、パケットが冗長的になることを抑制する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下相違点を説明する。
【0098】
図10に、第2実施形態に係る、移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各構成の一例を示す。
図10に示すVPR26は、
図2に示すVPR26における無線通信部267S、267R、及びカプセル化除去部269の間に、重複パケット除去部268を設けたものである。また、
図10に示すSPR36は、
図2に示すSPR36におけるIP更新部366及びカプセル化除去部369の間に、重複パケット除去部368を設けたものである。
【0099】
図10に示すように、移動体20に設置されたVPR26は、重複パケット除去部268を備えている。VPR26の重複パケット除去部268は、受信された外部パケットを一時的に記憶するメモリ268Mを含んでいる。重複パケット除去部268は、既に受信された外部パケットと同じ内容の外部パケットを削除する機能を有している。詳細には、重複パケット除去部268は、外部パケットに含まれる送信元IPアドレス、送信先IPアドレス及びタイムスタンプTSをメモリ268Mに一時的に記憶しておき、記憶された外部パケットの内容(例えば、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス及びタイムスタンプTS)と、受信された外部パケットの内容とを比較する。そして、重複パケット除去部268は、受信された外部パケットの内容と同じ内容の外部パケットがメモリ268Mに記憶されている場合、受信された外部パケットを削除する。これによって、移動体20側で、パケットが冗長的になることを抑制することができる。なお、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス及びタイムスタンプTSにチェックサムを加えてもよい。
【0100】
また、クラウド部30に設置されたSPR36も、重複パケット除去部368を備えている。重複パケット除去部368は、重複パケット除去部268と同様に、パケットが複数受信された場合に、既に受信された外部パケットと同じ外部パケットを削除する機能を有している。詳細には、重複パケット除去部368は、第1データテーブル42及び第2データテーブル44を参照し、記録されている送信元IPアドレス、送信先IPアドレス及びタイムスタンプTSと同じ外部パケットがWAN通信部364で受信されて入力された場合に、その同じ外部パケットを削除する。これによって、クラウド部30側で、パケットが冗長的になることを抑制することができる。なお、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス及びタイムスタンプTSにチェックサムを加えてもよい。
【0101】
なお、上記では、
図10に示すSPR36の重複パケット除去部368、及びVPR26の重複パケット除去部268は、削除部の一例である。
【0102】
図11には、第2実施形態に係るVPR26をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図11に示す処理の流れは、
図8に示す処理の流れにおけるステップS122で肯定判断された場合で、かつステップS126でカプセル化除去処理が実行される前に、ステップS124に示す重複パケット除去処理を追加したものである。
【0103】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS124の処理は、VPR26の重複パケット除去部268の機能に対応する。
【0104】
図12には、第2実施形態に係るSPR36をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図12に示す処理の流れは、
図9に示す処理の流れにおけるステップS222とステップS226との間に、ステップS224に示す重複パケット除去処理を追加したものである。
【0105】
なお、コンピュータ本体60で実行されるステップS224の処理は、SPR36の重複パケット除去部368の機能に対応する。
【0106】
従って、移動体20からクラウド部30へ同じ外部パケットが複数送信された場合、送信されてきた外部パケットのVPC22のIPアドレスとタイムスタンプTSが既に第1データテーブル42に記録されていると、VPR26で複製された外部パケットが重複して送信されたと判断し、その外部パケットが削除される。また、クラウド部30から移動体20へ同じ外部パケットが複数送信された場合も同様に、同じ外部パケットは削除される。
【0107】
このように、第2実施形態の無線通信システムによれば、外部パケットが複数送信された場合、既に受信された外部パケットと同じ外部パケットは削除されるので、無線多重化を実現した場合であっても、移動体20側及びクラウド部30側の少なくとも一方で、パケットが冗長的になることを抑制することができる。
【0108】
[第3実施形態]
次、第3実施形態を説明する。第3実施形態は、無線通信網37におけるアクセスポイント(AP)38、39の電波強度が所定強度以上である場合に、移動体20側のVPR26における無線通信部267S、267R(無線アダプタ)の各々が最適なアクセスポイントを決定するものである。なお、第3実施形態は、第2実施形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下相違点を説明する。
【0109】
図13に、第3実施形態に係る、移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各構成の一例を示す。
図13に示すVPR26は、
図2に示すVPR26における無線通信部267S、267Rの各々に接続された電波強度取得部266Aを設けたものである。なお、
図13に示すSPR36は、
図10に示すSPR36と同様のため、説明を省略する。
【0110】
図13に示すように、移動体20に設置されたVPR26は、電波強度取得部266Aを備えている。電波強度取得部266Aは、無線通信部267S、267Rの各々から無線通信網37におけるアクセスポイント(AP)38、39の電波強度を検出し、取得する機能を有している。また、電波強度取得部266Aは、取得した電波強度に基づいて、例えば電波強度が最大のアクセスポイントを接続するアクセスポイントに決定する機能を有している。無線通信部267S、267Rの各々は、決定されたアクセスポイントに接続する機能を有している。これによって、移動体20側で、無線通信網37における最適なアクセスポイントに接続することができる。
【0111】
図14には、第3実施形態に係るVPR26をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図14に示す処理の流れは、
図11に示す処理の流れにおけるステップS100で送受信判定処理が実行される前に、ステップS92に示す電波強度取得処理、及びステップS94に示す接続先決定処理を追加したものである。
【0112】
図14に示すように、移動体20側からクラウド部30側へパケット送信する場合、コンピュータ本体50では、ステップS100で、パケットの送受信判定を実行する前に、ステップS92で、アクセスポイントの電波強度を取得する。次に、ステップS94で、取得した電波強度に基づいて、例えば電波強度が最大のアクセスポイントを接続するアクセスポイントが決定される。無線通信部267S、267Rの各々では、ステップS94で決定されたアクセスポイントへの接続が実行される。
【0113】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS92及びステップS94の処理は、VPR26の電波強度取得部266Aの機能に対応する。
【0114】
このように、第3実施形態の無線通信システムによれば、接続可能なアクセスポイントが複数存在する場合(電波強度が所定強度以上である場合)であっても、アクセスポイントの電波強度から最適なアクセスポイントを決定することができる。
【0115】
[第4実施形態]
次、第4実施形態を説明する。
電波強度が略同じ複数のアクセスポイントが検出された場合、その何れのアクセスポイントに対しても接続が可能であるが、電波強度が略同じ複数のアクセスポイント間で、相対的に電波強度が変動した場合、複数のアクセスポイント間で頻繁に接続が切り替わることになる。そこで、第4実施形態は、移動体の位置履歴(ログ)及びアクセスポイントの電波強度を用いて、接続するのに最適なアクセスポイントを決定するものである。なお、第4実施形態は、第3実施形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下相違点を説明する。
【0116】
図15に、第4実施形態に係る、移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各構成の一例を示す。
図15に示すVPR26は、
図13に示すVPR26における電波強度取得部266Aに加えて、ログ解析部265、及び位置情報取得部266Bを設けたものである。なお、
図15に示すSPR36は、
図13に示すSPR36と同様のため、説明を省略する。
【0117】
図15に示すように、電波強度取得部266A、及び位置情報取得部266Bは、ログ解析部265に接続されている。ログ解析部265は、無線通信部267S、267Rの各々に接続されている。電波強度取得部266Aは、第3実施形態と同様に、無線通信部267S、267Rの各々から無線通信網37におけるアクセスポイント(AP)38、39の電波強度を検出し、取得する機能を有している。位置情報取得部266Bは、移動体20の現在位置を検出し、現在位置を示す情報を取得する機能を有している。ログ解析部265は、位置情報取得部266Bで取得された移動体20の現在位置に、電波強度取得部266Aで取得したアクセスポイントの電波強度を対応付けて位置履歴(ログ)として記録する機能を有している。また、ログ解析部265は、記録された位置履歴(ログ)を用いて接続するのに最適なアクセスポイントを決定する解析処理を行う機能を有している。
【0118】
ログ解析部265における解析処理の一例には、移動体20の移動軌跡から最適なアクセスポイントとして決定する解析処理がある。詳細には、例えば、複数のアクセスポイントが移動体から略等距離の場合、位置履歴(ログ)から移動体20の移動軌跡を示す情報を生成し、移動体20が接近しつつあるアクセスポイントを最適なアクセスポイントとして決定する。このようにすることで、 接続断が生じやすいアクセスポイントへの接続を回避することができる。
【0119】
また、ログ解析部265における解析処理の他例には、電波強度の分散から最適なアクセスポイントとして決定する解析処理がある。詳細には、例えば、複数のアクセスポイントが移動体20から略等距離で、かつ移動体20が複数のアクセスポイントへ接近しつつ移動している場合、位置履歴(ログ)に含まれる電波強度の分散を導出し、分散が小さいアクセスポイントを、電波強度が安定しているアクセスポイントとして決定する。このようにすることでも 接続断が生じやすいアクセスポイントへの接続を回避することができる。
【0120】
図16には、第4実施形態に係るVPR26をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図16に示す処理の流れは、
図14に示す処理の流れにおけるステップS92で電波強度取得処理が実行される前に、ステップS90に示す移動体20の位置情報取得処理を追加し、
図14に示すステップS94の接続先決定処理に代えて、ステップS95に示す位置履歴(ログ)に基づいて最適なアクセスポイントを決定する処理が実行されるものである。
【0121】
図16に示すように、移動体20側からクラウド部30側へパケット送信する場合、コンピュータ本体50では、ステップS90で移動体20の位置情報が取得されて記録され、次のステップS92で、アクセスポイントの電波強度が取得されて記録される。次に、ステップS95の解析処理で、取得した移動体20の位置情報及びアクセスポイントの電波強度に基づいて、例えば電波強度が最大のアクセスポイントを接続するアクセスポイントが決定される。無線通信部267S、267Rの各々では、ステップS94で決定されたアクセスポイントへの接続が実行される。
【0122】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS90の処理は、VPR26の位置情報取得部266Bの機能に対応する。また、ステップS92の処理は、VPR26の電波強度取得部266Aの機能に対応する。さらに、ステップS95の処理は、VPR26のログ解析部265の機能に対応する。
【0123】
このように、第4実施形態の無線通信システムによれば、接続可能なアクセスポイントが複数存在する場合(電波強度が所定強度以上である場合)であっても、移動体20の位置及びアクセスポイントの電波強度の対応が記録されたログを用いて最適なアクセスポイントを決定することができる。
【0124】
[第5実施形態]
次、第5実施形態を説明する。
無線通信網37への接続は無線通信網37におけるアクセスポイントによる電波強度の強弱に応じた電波状況によって安定したり、不安定になったりする。また、複数の外部パケットにより無線多重化する場合、重複させる外部パケットの個数は、少なすぎると接続断に繋がり、多すぎると、冗長的で余分なパケットの送受信に繋がる。そこで、第5実施形態では、無線通信網37の電波状況によって重複させる外部パケットの個数を増減させるものである。なお、第5実施形態は、第4実施形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下相違点を説明する。
【0125】
図17に、第5実施形態に係る、移動体20に設置されたVPR26、及びクラウド部30に設置されたSPR36の各構成の一例を示す。
図17に示すVPR26は、
図15に示すVPR26におけるパケット重複部262、カプセル化部263、及びログ解析部265に接続されたパケット数制御部264を設けたものである。
【0126】
第5実施形態のログ解析部265は、記録された移動体20の位置に対応づけられたアクセスポイントの電波強度を示すログにより、各地点における電波の安定性を解析する機能を有している。パケット数制御部264は、ログ解析部265で解析された各地点における電波の安定性に応じて、電波の安定性が高くなるに従って減少し、かる電波の安定性が低くなるに従って増加するように、パケット重複数を決定する機能を有している。また、パケット数制御部264は、決定したパケット重複数がクラウド部30へ送信されるように、パケット重複部262、及びカプセル化部263を制御する機能を有している。つまり、パケット数制御部264は、パケット重複部262、及びカプセル化部263にパケット重複数の指示命令を出力して、無線通信網37における電波状況が安定の場合にパケット重複数を減少させ、不安定の場合にはパケット重複数を増加させる。
【0127】
また、第5実施形態のカプセル化部263は、パケット重複数を示すデータを含めてカプセル化する機能を有している。
【0128】
図18に、第5実施形態のカプセル化部263においてカプセル化するパケットのパケットフォーマットの一例を示す。
する。
【0129】
図18に示すように、第5実施形態のカプセル化部263でカプセル化するパケットのパケットフォーマット41は、
図3に示すパケットフォーマット40に、パケット重複数を示すデータを格納するフィールド(
図18ではDupと表記している)が追加されたものである。つまり、第5実施形態のカプセル化部263でカプセル化される外部パケットは、内部パケットに、UDP/IPにタイムスタンプTS、及びパケット重複数を示すデータ(Dup)を付与したヘッダが取り付けられる。
【0130】
また、
図17に示すSPR36は、
図15に示すSPR36におけるIP更新部366に代えて、IP更新パケット数制御部367を備えている。
【0131】
IP更新パケット数制御部367は、外部パケットを受け取ると外部パケットのフィールド(Dup)を参照してパケット重複数を取得する機能を有している。また、IP更新パケット数制御部367は、パケット重複部362、及びカプセル化部363に、取得したパケット重複数を出力する機能を有している。これによって、パケット重複部362、及びカプセル化部363はパケット重複数を増減することができる。
【0132】
なお、上記では、
図17に示すVPR26のパケット数制御部264は、パケット数制御部の一例であり、SPR36のIP更新パケット数制御部367は、記録制御部及びパケット数制御部の一例である。
【0133】
図19には、第5実施形態に係るVPR26をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図19に示す処理の流れは、
図16に示す処理の流れにおけるステップS114で実行される内部パケットの複製処理に代えて、ステップS115に示す、記録されたログに基づいて、内部パケットを複製する処理が実行されるようにしたものである。
【0134】
なお、コンピュータ本体50で実行されるステップS115の処理は、VPR26のパケット数制御部264の機能に対応する。
【0135】
図20には、第5実施形態に係るSPR36をコンピュータにより実現した場合における処理の流れの一例が示されている。
図20に示す処理の流れは、
図12に示す処理の流れにおけるステップS214の処理に代えて、ステップS215に示すパケット重複数に基づいて内部パケットを複製する処理が実行されるようにしたものである。また、
図20に示す処理の流れは、
図12に示す処理の流れにおけるステップS224の処理に代えて、ステップS225に示す重複するパケットを除去する処理においてパケット重複数を記録する処理が実行されるようにしたものである。
【0136】
なお、コンピュータ本体60で実行されるステップS215及びステップS225の処理は、SPR36のIP更新パケット数制御部367の機能に対応する。
【0137】
このように、第5実施形態の無線通信システムによれば、移動体20側でパケット数を最適に変更し、移動体20側におけるパケット重複数の変更に基づいてクラウド部30側のパケット重複数も調整される。これによって、余分な通信を抑制し、かつ必要充分なパケット数でパケットを重複させることで、通信効率と共に信頼性も向上させることができる。
【0138】
なお、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。