(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記杭打設工程で前記支持層に打設された前記杭と前記導材兼用仮設梁の前記一端部との間で力の伝達がなされるようにワイヤを取り付け、前記杭を支点にして、前記配置工程で前記地盤に配置された前記ジャケットに、前記ワイヤおよび前記導材兼用仮設梁を介して前記調整工程で力を加えて、前記ジャケットの傾きを調整することを特徴とする請求項6に記載の杭式構造物の施工方法。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電設備の基礎構造は、水深や地盤等の条件に応じて最適な構造形式が選定されるが、選定される構造形式は、「着床式」と「浮体式」に大別することができる。「着床式」または「浮体式」のいずれを選択するかは、主に水深を条件に選定される。
【0003】
「着床式」の主たる基礎形式には、杭式基礎および重力式基礎がある(例えば、非特許文献1、2参照)。杭式基礎の構造にはいくつかの種類があるが、水深30m程度までで地盤がやや固い場合にはモノパイル構造が用いられることが多く、水深60m程度までで地盤が軟弱な場合にはジャケット構造が用いられることが多い。重力式基礎は、比較的浅い水深(水深30m程度まで)で海底の地盤が固く、杭の打設が困難な場合に用いられることが多い。
【0004】
ただし、モノパイル構造の適用が妥当とされている水深が浅い海域でも、地盤条件によっては口径の大きいモノパイル構造では施工が困難な場合がある。また、重量の大きい重力式基礎の施工には大型の起重機船が必要であり、その手配が困難な場合がある。
【0005】
これらのような場合には、モノパイル構造や重力式基礎と比較して、ジャケット構造の方が施工性および経済性の観点から有利となり、採用されることがある。
【0006】
ジャケット構造は、港湾や沿岸域において、桟橋、岸壁、防波堤として多くの実績がある。ここで、本願において、ジャケット構造とは、鋼製部材を主体とした骨組構造のことであり、ジャケット構造を備えた構造物を、本願においては単にジャケットと記すことがある。
【0007】
ジャケットの標準的な設置方法として、ジャケット先行法および杭先行法があるが、港湾や沿岸域において設置されるジャケットでは、精度よく設置するために仮受け工を設けている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
仮受け工には、海底面で仮受けする方法(マッドマットを取り付ける場合がある)、仮受け杭で支持する方法、および本杭を先行して支持層に打ち込み、本杭に取り付けたストッパでジャケットを仮受けする方法がある(例えば、非特許文献3参照)。
【0009】
ここで、港湾や沿岸域において設置されるジャケットの据え付け精度は、±1/50(±1.15°)以内の傾きにすることが基準となっている(例えば、非特許文献4参照)。
【0010】
一方、洋上風車においては、これよりも厳しい据え付け精度が基準となっており(例えば、非特許文献5参照)、洋上風力発電設備の基礎の据え付けにおいては、風車の性能を確保するべく、風車タワーと接合する基礎上端の接合フランジ面の水平度について厳しい精度管理が求められている。
【0011】
このため、洋上風車の基礎としてジャケットを用いる場合、高い据え付け精度でジャケットを設置する必要がある。
【0012】
高い据え付け精度を確保するためには、仮受け杭で支持する方法が適している(例えば、非特許文献6参照)。
【0013】
しかしながら、仮受け杭で支持する方法では、本杭以外に仮受け杭が必要となるため、コストが高くなる。
【0014】
他方、ジャケットを基礎構造に用いた洋上風車以外の杭式構造物であっても、高い据え付け精度を実現できることは好ましいことであり、高い据え付け精度の実現は、杭式構造物全般に要求されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0040】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象
図1は、本発明の第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法において、主要な工程である調整工程の状況を模式的に示す側面図であり、
図2は、
図1の右上部を拡大して示す拡大側面図であり、
図3は、
図2の上部をさらに拡大して示す拡大側面図であり、
図4は、前記調整工程の状況を模式的に示す上方から見た平面図であり、
図5は、
図4の右上部を拡大して示す拡大平面図である。本発明の第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の調整工程は、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が管理値内に入るように、ジャケット14の傾きを調整する工程である。
【0041】
以下の説明においては、本第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象として、水域の水底80に設置される杭式構造物10を取り上げる。
【0042】
この杭式構造物10は、杭12と、ジャケット14とを有してなる。
【0043】
杭12は、水底80の下の支持層84(
図6〜
図12参照)まで打ち込まれていて、杭式構造物10の全体を支持する。杭12は、鋼管杭であるが、本第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象となる杭式構造物の杭は、鋼管杭に限定されるわけではなく、所定の性能を有すれば鋼管杭以外の杭でもよく、例えばコンクリート杭や合成杭を用いてもよい。
【0044】
ジャケット14は、杭式構造物10の本体部であり、杭12に支持されて供用に供される。ジャケット14は、鋼製部材を主体とした骨組構造であり、水底80に配置される前に事前に組み立てられている。
【0045】
ジャケット14は、
図4に示すように、レグ14Aを4本備えている。レグ14Aの下端にはマッドマット14A1が取り付けられている。また、ジャケット14は、パイルスリーブ14Bをレグ14Aの外側(上方から見て、ジャケット14の外周部)に備えている。パイルスリーブ14Bは、水平方向に配置された鋼板であるブラケット14D1およびブラケット14D2ならびに鉛直方向に配置された鋼板であるブラケット14Eを介してレグ14Aと連結されている。ブラケット14D1およびブラケット14D2は、レグ14Aおよびパイルスリーブ14Bの外形に合わせた貫通孔を有していて、この貫通孔をレグ14Aおよびパイルスリーブ14Bが挿通しており、ブラケット14D1およびブラケット14D2はレグ14Aおよびパイルスリーブ14Bの外周面に溶接により取り付けられている。また、ブラケット14Eも、レグ14Aおよびパイルスリーブ14Bの外周面ならびにブラケット14D1の下面およびブラケット14D2の上面に溶接により取り付けられている。このようにして、レグ14Aとパイルスリーブ14Bとは、ブラケット14D1およびブラケット14D2ならびにブラケット14Eを介して連結されている。
【0046】
パイルスリーブ14Bは、内径が杭12の外径よりも大きい鋼製の管状体であり、パイルスリーブ14Bの内部空間を杭12が挿通できるようになっており、杭12はパイルスリーブ14Bの内部空間を挿通して、水底80の下の支持層84に打ち込まれている。したがって、パイルスリーブ14Bはテンプレートとしての役割も果たしている。なお、パイルスリーブ14Bの内面と挿通された杭12の外面とのクリアランスは50mm程度になるようにすればよい。
【0047】
前述したように、
図1は調整工程の状況を模式的に示す側面図であり、
図1の段階では、杭12とパイルスリーブ14Bとは一体化されていないが、ジャケット14の傾きの調整が終わった後には、パイルスリーブ14Bの内面と杭12の外面との間にはグラウトを充填して、パイルスリーブ14Bと杭12との一体化を行って、ジャケット14と杭12との一体化を行う。また、杭12の上部(パイルスリーブ14Bよりも上方の部位)の余分な部位の切除も必要に応じて行う。
【0048】
(1−2)ジャケット14の傾き調整用の治具
本第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、ジャケット14の傾きの調整は、仮設梁30と、手動ウィンチ32と、転向シーブ34と、ワイヤ36と、を用いて行い、タワージャケット接合部14Cの上端部のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を計測して、その傾斜角が所定の基準値以内に入るように調整する。
【0049】
仮設梁30は、
図2〜
図5に示すように、一端部30Aが杭12の上方に配置されるようにし、他端部30Bがタワージャケット接合部14Cの上フランジ14C2の上に配置されるように配置する。なお、
図4および
図5において、パイルスリーブ14Bおよびブラケット14D1、14D2、14Eは描いていない。
【0050】
仮設梁30の他端部30Bは、仮設梁固定用治具30Cによって上部を、スペーサ30Dを介して押えられている。仮設梁固定用治具30Cは、円板上の鋼板であり、ボルト30Eによってタワージャケット接合部14Cのタワー接続フランジ14C1に取り付けられている。
【0051】
仮設梁30は、
図5に示すように、本体鋼材30Pと、連結鋼材30Qとを有してなる棒状の鋼材であり、本体鋼材30Pおよび連結鋼材30Qは溝形鋼である。仮設梁30は、2つの本体鋼材(溝形鋼)30Pのウェブ同士を所定の間隔で向い合せて配置(ウェブの面のうちフランジが位置する側とは反対側の面(外面)同士が向かい合うように配置)し、そのウェブの外面同士の間を連結鋼材30Qで連結している構成であり、2つの本体鋼材(溝形鋼)30Pのウェブの外面同士の間の間隔に相当する開口部30Sを備えている。
【0052】
仮設梁30をタワージャケット接合部14Cに取り付ける際には、本体鋼材(溝形鋼)30Pのフランジが上下に配置されるような向きで取り付ける。このため、仮設梁30の他端部30Bにおいては、仮設梁固定用治具30Cの下面とタワージャケット接合部14Cの上フランジ14C2の上面とが、本体鋼材(溝形鋼)30Pの上下のフランジにそれぞれ接触するようにして、仮設梁30を上下に(スペーサ30Dを介して)挟み込んでいる。また、仮設梁30の上(本体鋼材(溝形鋼)30Pのフランジの上)に手動ウィンチ32および転向シーブ34を取り付けることができるようになっている。
【0053】
なお、本願明細書に記載した仮設梁30の構成は、本発明の実施に際して仮設梁を用いる場合に用いる仮設梁の一例であり、必要な性能を備えるのであれば、本願明細書に記載した構成以外の仮設梁を用いてもよい。また、仮設梁30に用いる本体鋼材30Pおよび連結鋼材30Qは溝形鋼に限定されるわけではなく、必要な性能を有するのであれば、H形鋼やビルドアップで製作したI形断面の鋼材等を用いてもよい。
【0054】
また、
図4に示すように、仮設梁30は4つ取り付ける。具体的には、上方から見たとき、4本の杭12のそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形(4つのパイルスリーブ14Bのそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形と同一)の対角線上に配置されるように仮設梁30をそれぞれ取り付ける。この正方形の2つの対角線は、
図4において、対角A方向および対角B方向として記載している。
【0055】
そして、取り付けた仮設梁30の上に、手動ウィンチ32を仮設梁30の他端部30B側に取り付け、転向シーブ34を仮設梁30の一端部30A側に取り付ける。なお、
図1〜3および
図5に示すように、手動ウィンチ32は、タワージャケット接合部14Cの上フランジ14C2の上方に位置するように取り付ける。
【0056】
また、ワイヤ36の一端を手動ウィンチ32に取り付け、ワイヤ36の他端を吊りピース12Aを介して杭12の上端部に取り付けるとともに、ワイヤ36を転向シーブ34に架け渡して進行方向を約90°変更させるようにする。
【0057】
ここで、仮設梁30には、仮設梁30を構成する2つの本体鋼材(溝形鋼)30Pのウェブの外面同士の間の間隔に相当する開口部30S(
図5参照)が設けられており、仮設梁30の一端部30Aにおいて、ワイヤ36はこの開口部30Sを上下に挿通するようになっている。
【0058】
タワージャケット接合部14Cの上端部のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が所定の基準値以内に入るように調整する際には、4つの手動ウィンチ32によって、4つのワイヤ36の巻き取りまたは送り出しを行うことで行う。
【0059】
例えば、
図1において、ジャケット14を右側に傾けようとするときには、右側の手動ウィンチ32はワイヤ36を巻き取るように操作し、左側の手動ウィンチ32は必要に応じてワイヤ36を送り出すように操作すればよい。このように操作すると、右側の杭12を支点としてジャケット14が水底80に押し込まれるため、右側の杭12の方へジャケット14が傾くことになる。
【0060】
このときの力の伝達状況は次のようになる。即ち、
図1において、右側の杭12は支持層84(
図11参照)に打ち込まれていて固定されているので、右側の手動ウィンチ32でワイヤ36を巻き取るように操作すると、ワイヤ36に張力が生じ、右側の転向シーブ34はワイヤ36から下方向に力が加えられ、この下方向の力は右側の仮設梁30に伝達され、さらにジャケット14に伝達され、ジャケット14の右側のレグ14Aは下方向に押し込まれることになる。
【0061】
実際の調整においては、水平面内の2方向についてタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を調整する必要があるので、
図4に示す対角A方向と対角B方向の2方向について、手動ウィンチ32によるワイヤ36の巻き取り操作および必要に応じて送り出し操作を行って、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を調整する。なお、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を調整すれば、ジャケット14の傾きを調整することになるので、本明細書の記載においては、「タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角の調整」と「ジャケット14の傾きの調整」は、実質的に同じ内容を意味している。
【0062】
タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角の計測方法は特には限定されないが、例えば、デジタル傾斜計をタワー接続フランジ14C1の上面に配置して、傾斜角を直接計測する方法を採用してもよいし、タワー接続フランジ14C1の上面の標高をレベル(水準儀)にて計測し、タワー接続フランジ14C1の上面が所定の傾斜角以内となっているかどうか確認する方法を採用してもよい。
【0063】
なお、手動ウィンチ32は、ワイヤ36を巻き取るタイプの手動ウィンチでも、ワイヤ36を巻き取らないタイプの手動ウィンチ(例えばチルホール(登録商標))でも、必要な牽引力に応じて適宜に用いることができる。また、手動ウィンチ32に替えて、油圧式や電動式の牽引装置を用いてもよく、必要な牽引力に応じて適宜に用いることができる。
【0064】
また、転向シーブ34は、ワイヤ36の進行方向の変更を、牽引抵抗の増加を抑えて行うことができるが、牽引抵抗の増加が問題とならなければ、転向シーブ34に替えて、例えば、単にパイプを配置しただけの簡易なものを用いてもよい。
【0065】
また、ワイヤ36として用いることができるワイヤは、必要な性能を備えているワイヤであれば特には限定されない。必要な性能を備えていれば、ワイヤ36として、例えばワイヤロープ(鋼線をより合わせてストランドとし、そのストランドをさらに繊維芯のまわりに数本より合わせて作ったロープ)を用いることができる。
【0066】
(1−3)第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順
図6〜
図12は、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順の各工程を模式的に示す側面図である。
図6は、ジャケット14を水底80に配置する配置工程が終了した段階を示す図で、
図7〜
図10は、杭12を支持層84に打設する杭打設工程の各段階を示す図で、
図11は、ジャケット14の傾きを調整する調整工程を示す図で、
図12は、ジャケット14と杭12とを一体化する一体化工程も完了して、杭式構造物10が完成した状態を示す図である。
【0067】
なお、杭式構造物10を設置する地点は、水域の水底80で、その地点の地盤は、水底80から一定の深さまで表層地盤82が存在し、その下に支持層84が存在するものとして、以下、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順についての説明を行う。
【0068】
第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法を用いて施工を行う際には、まず、杭式構造物10を設置する地点の水底80を均す。そして、その後、
図6に示すように、杭式構造物10を設置する地点の水底80にジャケット14を配置する。ジャケット14のレグ14Aの下端部に取り付けられたマッドマット14A1が水底80から反力を受け、ジャケット14は水底80で仮受けされる。
【0069】
次に、
図7に示すように、ジャケット14のパイルスリーブ14B内に杭12の下端部を配置する。この段階では、杭12の下端が水底80に接触した状態である。
【0070】
なお、ジャケット14のパイルスリーブ14Bによって、杭12を配置すべき地点が明確となっているので、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、テンプレートを用いる必要はない。
【0071】
次に、
図8に示すように、杭12を表層地盤82に打ち込んでいき、杭12の下端が支持層84に接触した状態になるようにする。この状態になれば、ジャケット14および杭12は一定の安定性が得られる。杭12の表層地盤82への打ち込みは容易であり、作業を迅速に行うことができるので、早期に
図8の状態(杭12の下端が支持層84に接触した状態)を実現することが可能である。
図8の状態(杭12の下端が支持層84に接触した状態)を早期に実現することは、施工時の安全性を早期に確保するという点で重要である。
【0072】
次に、
図9に示すように、杭12を支持層84に所定の深さまで、1本ずつ順次打ち込んでいく。杭12の支持層84への打ち込みには必要に応じてウォータージェットを併用し、最終根入れまで打設する。
図10は、全ての杭12について、支持層84への打ち込み(最終根入れ)が完了した状態を示している。
【0073】
次に、
図11に示すように、ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(仮設梁30、手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)を所定の位置に取り付ける。そして、タワージャケット接合部14Cの上端部のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を計測した結果に基づき、その傾斜角が所定の基準値以内に入るようにジャケット14の傾きを調整する。ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(仮設梁30、手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)の取り付けおよび取り外しの手順ならびにジャケット14の傾きの調整手順は、後に
図13のフローチャートを用いてさらに説明する。
【0074】
タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角(ジャケット14の傾き)の調整が完了したら、杭12の外面とパイルスリーブ14Bの内面との間にグラウトを充填して、杭12とパイルスリーブ14Bとの一体化を行い、その後、ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(仮設梁30、手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)を取り外す。また、杭12の上部(パイルスリーブ14Bよりも上の部位)の余分な部位の切除も必要に応じて行う。このようにして、
図12に示すように、杭式構造物10を完成させる。
【0075】
図13(第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法における調整工程の手順および一体化工程を行う時期を示すフローチャート)を用いて、調整工程(ジャケット14の傾きの調整を行う工程)の手順および一体化工程(ジャケット14と杭12とを一体化する工程)を行う時期についてさらに説明する。具体的には、ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(仮設梁30、手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)の取り付けおよび取り外しの手順ならびにジャケット14の傾きの調整手順ならびにジャケット14と杭12とを一体化させる一体化工程を行う時期について説明する。
【0076】
全ての杭12について、支持層84への打ち込みが完了した状態(
図10に示す状態)において、まず、仮設梁30をジャケット14の上端部(タワージャケット接合部14C)に取り付ける(ステップS1)。その際、仮設梁30の一端部30Aが杭12の上方に配置されるようにし、仮設梁30の他端部30Bがタワージャケット接合部14Cの上フランジ14C2の上に配置されるように仮設梁30を配置する。
【0077】
仮設梁30の他端部30Bは、仮設梁固定用治具30Cによって上部を、スペーサ30Dを介して押えるようにする。仮設梁固定用治具30Cは、円板上の鋼板であり、ボルト30Eによってタワージャケット接合部14Cのタワー接続フランジ14C1に取り付ける。
【0078】
また、
図4に示すように、仮設梁30は4つ取り付ける。具体的には、上方から見たとき、4本の杭12のそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形(4つのパイルスリーブ14Bのそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形と同一)の対角線上に、即ち、
図4に示す対角A方向および対角B方向に、仮設梁30をそれぞれ取り付ける。
【0079】
そして、取り付けた仮設梁30の上に、手動ウィンチ32を仮設梁30の他端部30B側に取り付け(ステップS2)、転向シーブ34を仮設梁30の一端部30A側に取り付ける(ステップS3)。なお、手動ウィンチ32および転向シーブ34を仮設梁30に取り付ける順番は特には限定されず、転向シーブ34を仮設梁30に取り付けてから手動ウィンチ32を仮設梁30に取り付けてもよい(ステップS3を先に行ってから、ステップS2を行ってもよい。)。また、予め仮設梁30の上に手動ウィンチ32および/または転向シーブ34を取り付けておき、仮設梁30の取り付けと同時に手動ウィンチ32および/または転向シーブ34の取り付けを行うようにしてもよい。
【0080】
次に、ワイヤ36の一端を手動ウィンチ32に取り付け、ワイヤ36の他端を吊りピース12Aを介して杭12の上端部に取り付けるとともに、ワイヤ36を転向シーブ34に架け渡して、ワイヤ36の進行方向が約90°変更されるように、ワイヤ36の取り付けを行う(ステップS4)。
【0081】
次に、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を対角A方向と対角B方向について計測する(ステップS5)。そして、その計測結果に基づき、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が、対角A方向と対角B方向について管理値内に入っているかどうか判断する(ステップS6)。
【0082】
ステップS6で管理値内に入っていると判断した場合には、ステップS11に進んで、杭12の外面とパイルスリーブ14Bの内面との間にグラウトを充填して、杭12とパイルスリーブ14Bとの一体化を行う(一体化工程)。次にステップS12に進んでワイヤ36を取り外し、次にステップS13に進んで転向シーブ34を撤去し、次にステップS14に進んで手動ウィンチ32を撤去し、次にステップS15に進んで仮設梁30を撤去する。ステップS1〜S15の全工程が終了すれば、調整工程および一体化工程が終了する。なお、手動ウィンチ32および転向シーブ34を取り外す順番は特には限定されず、手動ウィンチ32を先に取り外してから転向シーブ34を取り外してもよい(ステップS14を先に行ってから、ステップS13を行ってもよい。)。あるいは、手動ウィンチ32および/または転向シーブ34を仮設梁30の上に取り付けたままにしておき、仮設梁30の取り外しと同時に、手動ウィンチ32および/または転向シーブ34の取り外しを行うようにしてもよい。
【0083】
ステップS6で管理値内に入っていないと判断した場合には、ステップS7に進んで対角A方向のワイヤ36の調整を行い、次にステップS8に進んで対角B方向のワイヤ36の調整を行い、次にステップS9に進んで、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を対角A方向と対角B方向について再計測する。
【0084】
そして、ステップS9の再計測結果に基づき、タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が、対角A方向と対角B方向について管理値内に入っているかどうか判断する(ステップS10)。
【0085】
ステップS10で管理値内に入っていると判断した場合には、ステップS11に進んで、以下、前述した手順と同様の手順を行って、ステップS1〜S15の全工程が終了すれば、調整工程および一体化工程が終了する。
【0086】
ステップS10で管理値内に入っていないと判断した場合には、再度ステップS7〜S9の工程を行い、再度ステップS10で管理値内に入っているかどうか判断する。ステップS10で管理値内に入っていると判断できるまで、再度ステップS7〜S10の工程を繰り返す。
【0087】
以上説明したように、本第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、ジャケット14のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が、対角A方向と対角B方向について管理値内に入るまで、ジャケット14の傾きの調整操作を行うので、仮受け杭を用いなくても、高い設置精度でジャケット14の据え付けを行うことができる。
【0088】
(2)第2実施形態
(2−1)第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象
本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象は、水域の水底80に設置される杭式構造物10であり、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象と同一である。したがって、第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象についての説明は省略する。
【0089】
(2−2)ジャケット14の傾き調整用の治具
図14は、本発明の第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法において、主要な工程である杭打設工程の状況を模式的に示す側面図であり、
図15は、
図14の右上部を拡大して示す拡大側面図であり、
図16は、前記杭打設工程の状況を模式的に示す上方から見た平面図であり、
図17は、
図16の右上部を拡大して示す拡大平面図である。
図18は、本発明の第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法において、主要な工程である調整工程の状況を模式的に示す側面図であり、
図19は、
図18の右上部を拡大して示す拡大側面図であり、
図20は、前記調整工程の状況を模式的に示す上方から見た平面図であり、
図21は、
図20の右上部を拡大して示す拡大平面図である。なお、
図16および
図17ならびに
図20および
図21において、パイルスリーブ14Bおよびブラケット14D1、14D2、14Eは描いていない。
【0090】
前述したように、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象は、水域の水底80に設置される杭式構造物10であり、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法の適用対象と同一である。
【0091】
しかしながら、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法で用いる調整用の治具(ジャケット14の傾き調整用の治具)が、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法で用いる調整用の治具(ジャケット14の傾き調整用の治具)とは一部異なる。
【0092】
本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、ジャケット14の傾きの調整は、導材兼用仮設梁50と、手動ウィンチ32と、転向シーブ34と、ワイヤ36と、を用いて行い、タワージャケット接合部14Cの上端部のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を計測して、その傾斜角が所定の基準値以内に入るように調整する。
【0093】
第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、仮設梁30を用いていたが、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、導材兼用仮設梁50を用いている点が相違する。第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法において用いる他の調整用の治具(手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)は、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法において用いる調整用の治具と同一であるので、説明は原則として省略する。
【0094】
第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法において用いていた仮設梁30は、前述したように、2つの本体鋼材(溝形鋼)30Pのウェブ同士を所定の間隔で向い合せて配置(ウェブの面のうちフランジが位置する側とは反対側の面(外面)同士が向かい合うように配置)し、そのウェブの外面同士の間を連結鋼材30Qで連結している構成であり、2つの本体鋼材(溝形鋼)30Pのウェブの外面同士の間の間隔に相当する開口部30Sを備えていたが、開口部30Sの間隔は大きくはなく、杭12が挿通できるような大きさではなかった。
【0095】
これに対して、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法において用いる導材兼用仮設梁50は、2つの本体鋼材(溝形鋼)50P(
図17参照)のウェブ同士を所定の間隔で向い合せて配置(ウェブの面のうちフランジが位置する側とは反対側の面(外面)同士が向かい合うように配置)し、そのウェブの外面同士の間を連結鋼材50Q(
図17参照)で連結している構成であり、2つの本体鋼材(溝形鋼)50Pのウェブの外面同士の間の間隔に相当する開口部50Sを備えているが、この開口部50Sの間隔は第1実施形態で用いた仮設梁30の開口部30Sの間隔よりも大きく、杭12が挿通できるような大きさである(
図17参照)。
【0096】
したがって、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法において用いる導材兼用仮設梁50の一端部50Aをパイルスリーブ14Bの上方に位置するように配置しても、杭12を、導材兼用仮設梁50の開口部50Sとパイルスリーブ14Bの両方に挿通させることができる。このため、杭12を打設する前に、導材兼用仮設梁50の一端部50Aがパイルスリーブ14Bの上方に位置するように、導材兼用仮設梁50をジャケット14のタワージャケット接合部14Cに取り付けても、導材兼用仮設梁50の開口部50Sとパイルスリーブ14Bの両方に挿通させて杭12を打設することができる。
【0097】
したがって、導材兼用仮設梁50には杭12を打設する際の導材としての役割も担わせることができ、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、導材兼用仮設梁50に、杭12を打設する際の導材としての役割も担わせており、後述するように、正方形状の貫通孔50S1を形成する2つの本体鋼材50Pと2つのガイド部材50Xによって、導材兼用仮設梁50は、導材としての役割も果たしている。
【0098】
また、導材兼用仮設梁50は、杭12を打設する前にジャケット14に取り付けても、杭12の打設の支障とならないので、施工上の不都合がなければ、予めジャケット14に取り付けておき、導材兼用仮設梁50が取り付けられた状態で、さらには、その導材兼用仮設梁50に手動ウィンチ32も取り付けた状態で、ジャケット14を、設置地点の水域の水底80に配置するようにしてもよい。
【0099】
導材兼用仮設梁50は、本体鋼材50Pと、連結鋼材50Qと、ガイド部材50Xとを有してなる棒状の鋼材であり、本体鋼材50Pおよび連結鋼材50Qならびにガイド部材50Xは溝形鋼である。導材兼用仮設梁50は、2つの本体鋼材(溝形鋼)50Pのウェブ同士を所定の間隔で向い合せて配置(ウェブの面のうちフランジが位置する側とは反対側の面(外面)同士が向かい合うように配置)し、そのウェブの外面同士の間を連結鋼材50Qで連結している構成であり、2つの本体鋼材(溝形鋼)50Pのウェブの外面同士の間の間隔に相当する開口部50Sを備えている。さらに、導材兼用仮設梁50の一端部50Aには、本体鋼材50Pの長手方向と直交するように2つのガイド部材50Xが、本体鋼材(溝形鋼)50Pの上側のフランジの上面に取り付けられていて、2つの本体鋼材50Pと2つのガイド部材50Xによって正方形状の貫通孔50S1が形成されている(
図17参照)。この貫通孔50S1は、杭12が上下方向に挿通できるような大きさに形成されている。なお、貫通孔50S1は、開口部50Sの一部である。
【0100】
導材兼用仮設梁50をタワージャケット接合部14Cに取り付ける際には、本体鋼材(溝形鋼)50Pのフランジが上下に配置されるような向きで取り付ける。このため、導材兼用仮設梁50の他端部50Bにおいては、仮設梁固定用治具30Cの下面とタワージャケット接合部14Cの上フランジ14C2の上面とが、本体鋼材(溝形鋼)50Pの上下のフランジにそれぞれ接触するようにして、導材兼用仮設梁50を上下に(スペーサ50Dを介して)挟み込んでいる。
【0101】
なお、本願明細書に記載した導材兼用仮設梁50の構成は、本発明の実施に際して導材兼用仮設梁を用いる場合に用いる導材兼用仮設梁の一例であり、必要な性能を備えるのであれば、本願明細書に記載した構成以外の導材兼用仮設梁を用いてもよい。また、導材兼用仮設梁50に用いる本体鋼材50Pおよび連結鋼材50Qは溝形鋼に限定されるわけではなく、必要な性能を有するのであれば、H形鋼やビルドアップで製作したI形断面の鋼材等を用いてもよい。
【0102】
また、
図20に示すように、導材兼用仮設梁50は4つ取り付ける。具体的には、上方から見たとき、4本の杭12のそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形(4つのパイルスリーブ14Bのそれぞれの中心を4つの頂点とする正方形と同一)の対角線上に配置されるように導材兼用仮設梁50をそれぞれ取り付ける。この正方形の2つの対角線は、
図20において、対角A方向および対角B方向として記載している。
【0103】
第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、杭12を支持層84に打設する杭打設工程が完了してから、仮設梁30をジャケット14に取り付けて、調整工程に入っていたが、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、杭12を支持層84に打設する杭打設工程の前に、導材兼用仮設梁50をジャケット14に取り付けており、この点が、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法との大きな相違点である。そして、本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、杭12を支持層84に打設する杭打設工程の前に、導材兼用仮設梁50をジャケット14に取り付けることにより、導材兼用仮設梁50に杭12の打設時の導材としての役割も担わせており、より正確な姿勢で杭12の打設が行えるようにしている。
【0104】
より具体的に言えば、導材兼用仮設梁50の一端部50Aの貫通孔50S1を挿通した状態で、杭12の打設を行うため、打設時に杭12が斜めに傾斜しても、導材兼用仮設梁50の貫通孔50S1を形成する鋼材である本体鋼材50Pとガイド部材50Xが杭12の側面に接触して、杭12の傾きが大きくなることを防ぐ。このため、より正確な姿勢で杭12の打設が行えるようになっている。
【0105】
なお、導材兼用仮設梁50の開口部50Sの幅は杭12の外径よりも大きいため、導材兼用仮設梁50の本体鋼材(溝形鋼)50P上に、そのままでは、手動ウィンチ32および転向シーブ34を取り付けることはできない。
【0106】
このため、
図17および
図21に示すように、手動ウィンチ32は、間隔を狭めた2つの連結鋼材50Q1の上に配置して取り付けるようにしている。また、転向シーブ34は、杭打設工程の終了後、一方のガイド部材50X(導材兼用仮設梁50の端部寄りのガイド部材50X)の位置を杭12の真上付近に移動させて(
図21参照)、2つのガイド部材50Xの間の間隔を狭めて、転向シーブ34を下方から支持できるようにしてから、
図21に示すように、間隔を狭めた2つのガイド部材50Xの上に転向シーブ34を配置して取り付けるようにしている。
【0107】
(2−3)第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順
図22〜
図28は、第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順の各工程を模式的に示す側面図である。
図22は、ジャケット14を水底80に配置する配置工程が終了した段階を示す図で、
図23〜
図26は、杭12を支持層84に打設する杭打設工程の各段階を示す図で、
図27は、ジャケット14の傾きを調整する調整工程を示す図で、
図28は、ジャケット14と杭12とを一体化する一体化工程も完了して、杭式構造物10が完成した状態を示す図である。
【0108】
なお、杭式構造物10を設置する地点は、水域の水底80で、その地点の地盤は、水底80から一定の深さまで表層地盤82が存在し、その下に支持層84が存在するものとして、以下、第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法の施工手順についての説明を行う。
【0109】
第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法を用いて施工を行う際には、まず、杭式構造物10を設置する地点の水底80を均す。そして、その後、
図22に示すように、杭式構造物10を設置する地点の水底80にジャケット14を配置する。ジャケット14のレグ14Aの下端部に取り付けられたマッドマット14A1が水底80から反力を受け、ジャケット14は水底80で仮受けされる。
【0110】
次に、
図23に示すように、導材兼用仮設梁50をジャケット14の上端部のタワージャケット接合部14C(
図14および
図15参照)に取り付け、導材兼用仮設梁50の貫通孔50S1(
図16および
図17参照)を挿通させて、ジャケット14のパイルスリーブ14B内に杭12の下端部を配置する。この段階では、杭12の下端が水底80に接触した状態である。
【0111】
次に、
図24に示すように、杭12を表層地盤82に打ち込んでいき、杭12の下端が支持層84に接触した状態になるようにする。この状態になれば、ジャケット14および杭12は一定の安定性が得られる。杭12の表層地盤82への打ち込みは容易であり、作業を迅速に行うことができるので、早期に
図24の状態(杭12の下端が支持層84に接触した状態)を実現することが可能である。
図24の状態(杭12の下端が支持層84に接触した状態)を早期に実現することは、施工時の安全性を早期に確保するという点で重要である。
【0112】
次に、
図25に示すように、杭12を支持層84に所定の深さまで、1本ずつ順次打ち込んでいく。杭12の支持層84への打ち込みには必要に応じてウォータージェットを併用し、最終根入れまで打設する。本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、導材兼用仮設梁50をジャケット14の上端部のタワージャケット接合部14Cに取り付け、杭12を導材兼用仮設梁50の貫通孔50S1(
図16および
図17参照)に挿通させた状態で杭12を支持層84に打設していくので、杭12を打設するハンマ(図示せず)が導材兼用仮設梁50と干渉しないようにするため、杭12の上部にヤットコ60を配置して打設を進めていく。
図26は、全ての杭12について、支持層84への打ち込み(最終根入れ)が完了した状態である。
【0113】
次に、
図27に示すように、ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)を所定の位置に取り付ける。そして、タワージャケット接合部14Cの上端部のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角を計測した結果に基づき、その傾斜角が所定の基準値以内に入るようにジャケット14の傾きを調整する。タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角(ジャケット14の傾き)の調整手順は、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法と同様に行えばよい。
【0114】
タワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角(ジャケット14の傾き)の調整が完了したら、杭12の外面とパイルスリーブ14Bの内面との間にグラウトを充填して、杭12とパイルスリーブ14Bとの一体化を行い、その後、ジャケット14の傾きの調整を行う際に用いる治具(導材兼用仮設梁50、手動ウィンチ32、転向シーブ34、ワイヤ36)を取り外す。また、杭12の上部(パイルスリーブ14Bよりも上の部位)の余分な部位の切除も必要に応じて行う。このようにして、
図28に示すように、杭式構造物10を完成させる。
【0115】
本第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においても、第1実施形態に係る杭式構造物の施工方法と同様に、ジャケット14のタワー接続フランジ14C1の上面の傾斜角が、対角A方向と対角B方向について管理値内に入るまで、ジャケット14の傾きの調整操作を行うので、仮受け杭を用いなくても、高い設置精度でジャケット14の据え付けを行うことができる。
【0116】
(3)補足
以上説明した本発明の第1および第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、パイルスリーブ14Bを備えたジャケット14を適用対象とし、パイルスリーブ14Bをテンプレートとして活用すべく、ジャケット14の水底80への配置を杭12の打設よりも先行させたが、本発明に係る杭式構造物の施工方法は、杭の打設を本体部の設置よりも先行させる場合にも適用可能である。
【0117】
また、以上説明した本発明の第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、杭12を支持層84に打設する杭打設工程を終えた後に、ジャケット14の傾きを調整する調整工程(
図27)を行っているが、杭12の下端が支持層84に接触した状態(
図24)において、1段階目のジャケット14の傾きの調整を行ってもよい。この場合には、杭12と干渉しない位置に転向シーブ34を配置し、杭12の上端部から手動ウィンチ32までの間をワイヤ36で連結する。この場合の調整においては、ワイヤ36を巻き取った側のジャケット14が浮き上がることにより、ジャケット14の傾きを調整することができる。
【0118】
支持層84が岩盤など非常に硬い地質の場合、杭12を支持層84へ打設する際の衝撃等により、ジャケット14の傾きが想定よりも大きくなることがある。このような状況では、杭12の下端が支持層84に接触した段階と杭12の支持層84への打設が完了した段階(杭12を支持層84に最終根入れまで打設した段階)の2段階において、ジャケット14の傾きを調整することが有効となる場合がある。
【0119】
また、以上説明した本発明の第2実施形態に係る杭式構造物の施工方法においては、杭打設工程においてヤットコ60を用いているが、ヤットコ60を用いない方法もある。例えば、導材兼用仮設梁50の本体鋼材50Pの中間にヒンジ部を設けておき、杭12の打設がある程度の深さまで進んだ段階で、導材兼用仮設梁50の先端部のガイド部材50Xを取り外し、本体鋼材50Pをヒンジ部を基点として回転させて、他端部側へ折り曲げ、ハンマと導材兼用仮設梁50との干渉を回避する方法である。