(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に関わらず車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行う制御手段を備えた車両停止維持制御装置であって、
路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、
前記制御手段は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときに前記ブレーキホールド制御を行い
前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され、
前記ブレーキ圧下限値は、路面勾配に応じた車両の停止状態を維持する所定の停止維持限界ブレーキ圧より大きく設定され、
前記制御手段は、アクセルペダルの踏込み操作が行われたときに前記ブレーキホールド制御を終了する、
ことを特徴とする車両停止維持制御装置。
前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両停止維持制御装置。
前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が所定の第1勾配以上で前記第1勾配より大きい所定の第2勾配以下である路面が平坦路であると判定される場合には前記第1勾配と前記第2勾配とを含む前記第1勾配と前記第2勾配との間の前記ブレーキ圧下限値が一定であるように設定され、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が前記第1勾配より小さい場合に降坂路であると判定される前記第1勾配であるときのブレーキ圧下限値と、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が前記第2勾配より大きい場合に登坂路であると判定される前記第2勾配であるときのブレーキ圧下限値とが同一に設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両停止維持制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブレーキホールド制御を行う車両停止維持制御装置を備えた車両では、車両の停止時にブレーキ装置に供給されるブレーキ圧が一定のブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を実行することが行われているが、坂路、特に路面勾配が大きい坂路に車両を停止したときに、前記ブレーキ圧下限値以上で車両の停止状態を維持する停止維持限界ブレーキ圧近傍のブレーキ圧をブレーキ装置に供給するブレーキペダルの踏込み操作が行われていた場合、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキペダルの踏込み解除操作が行われた後にブレーキ装置に供給されるブレーキ圧、具体的には車両のブレーキ力を発生させるホイールシリンダのブレーキ圧が時間の経過と共に漏れて停止維持限界ブレーキ圧より低下し、車両が下方へ移動し出すおそれがある。
【0007】
これに対し、ブレーキペダルの踏込み操作によってブレーキ圧が供給されると共に液圧ポンプ用の電動モータを駆動させて液圧ポンプによってブレーキ圧の増圧制御が行われるブレーキ装置を備えた車両では、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動し出したときに電動モータを駆動させてブレーキ圧の増圧制御を行うことで車両を停止させることができるものの、ブレーキホールド制御の実行時に意図しない車両の移動及び停止や電動モータの駆動音などによる違和感を運転者に与えるおそれがあることからブレーキ圧の増圧制御を行うことなくブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することが望まれる。
【0008】
また、車輪、具体的には後輪にブレーキ力を発生させる電動パーキングブレーキ装置を備えた車両において、電動パーキングブレーキ装置を作動させて車両の停止状態を維持させているときに、ブレーキホールド制御を実行するためのブレーキ圧下限値以上でブレーキペダルの踏込み操作が行われると共に電動パーキングブレーキ装置の作動を終了してブレーキホールド制御を実行する場合がある。
【0009】
前記車両では、坂路、特に路面勾配が大きい坂路に電動パーキングブレーキ装置の作動によって車両の停止状態を維持させている場合、前記ブレーキ圧下限値以上でブレーキペダルの踏込み操作が行われると電動パーキングブレーキ装置の作動を終了してブレーキホールド制御が実行されるが、ブレーキ装置に供給されるブレーキ圧が停止維持限界ブレーキ圧より低下しているときには車両が下方へ移動し出すおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる車両停止維持制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に関わらず車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行う制御手段を備えた車両停止維持制御装置であって、路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、前記制御手段は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときに前記ブレーキホールド制御を行い、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定さ
れ、前記ブレーキ圧下限値は、路面勾配に応じた車両の停止状態を維持する所定の停止維持限界ブレーキ圧より大きく設定され、前記制御手段は、アクセルペダルの踏込み操作が行われたときに前記ブレーキホールド制御を終了することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、
前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が所定の第1勾配以上で前記第1勾配より大きい所定の第2勾配以下である路面が平坦路であると判定される場合には前記第1勾配と前記第2勾配とを含む前記第1勾配と前記第2勾配との間の前記ブレーキ圧下限値が一定であるように設定され、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が前記第1勾配より小さい場合に降坂路であると判定される前記第1勾配であるときのブレーキ圧下限値と、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配が前記第2勾配より大きい場合に登坂路であると判定される前記第2勾配であるときのブレーキ圧下限値とが同一に設定されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、
車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に関わらず車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行う制御手段を備えた車両停止維持制御装置であって、路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、前記制御手段は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときに前記ブレーキホールド制御を行い、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定され、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が降坂路であると判定される場合には登坂路であると判定される場合よりも路面勾配の大きさの増加に対する前記ブレーキ圧下限値の増加の割合が大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、
車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に関わらず車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行う制御手段を備えた車両停止維持制御装置であって、路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、前記制御手段は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときに前記ブレーキホールド制御を行い、前記ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され、前記制御手段は、車両の停止時に前記ブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定の第1ブレーキ圧下限値以上であるときに前記ブレーキホールド制御を行うと共に、車両の停止時に前記ブレーキ手段に供給されるブレーキ圧が所定の第2ブレーキ圧下限値以上であることを含む所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるアイドルストップ制御を行い、前記第1ブレーキ圧下限値は、前記路面勾配検出手段によって検出される路面勾配に基づいて路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され、前記第2ブレーキ圧下限値は、前記第1ブレーキ圧下限値より所定量大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項1に記載の発明によれば、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され
、路面勾配に応じた車両の停止状態を維持する所定の停止維持限界ブレーキ圧より大きく設定され、アクセルペダルの踏込み操作が行われたときにブレーキホールド制御を終了する。
【0018】
これにより、平坦路に停止した場合と坂路に停止した場合とでブレーキ圧下限値が一定に設定される場合に比して、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧が低下する場合においても、坂路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動することを防止することができる。従って、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
【0019】
車両停止維持装置に、電動パーキングブレーキ装置が備えられ、ブレーキホールド制御の実行時に10分などの所定時間が経過するとブレーキホールド制御を終了して電動パーキングブレーキ装置が作動される場合、ブレーキ圧下限値を前記所定時間におけるブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0020】
坂路に停止する場合には平坦路に停止する場合よりもブレーキ圧下限値を大きく設定することで、坂路に停止した場合にはブレーキホールド制御を実行するために運転者にブレーキ圧を大きくするブレーキペダルの踏込み操作を行わせ、ブレーキホールド制御の実行時には車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
【0021】
また、平坦路に停止する場合においても、トルクコンバータを備えた自動変速機を搭載した車両において前進走行レンジが選択された状態で車両が停止した場合には、平坦路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮してクリープ現象による車両の移動に対する停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されることにより、路面勾配に応じてブレーキ圧下限値を設定することができ、路面勾配が大きい場合についてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、
ブレーキ圧下限値は、路面が平坦路であると判定される場合には第1勾配と第2勾配とを含む第1勾配と第2勾配との間のブレーキ圧下限値が一定であるように設定され、路面勾配が第1勾配より小さい場合に降坂路であると判定される第1勾配であるときのブレーキ圧下限値と路面勾配が第2勾配より大きい場合に登坂路であると判定される第2勾配であるときのブレーキ圧下限値とが同一に設定される。これにより、車両の停止時に、平坦路では少なくとも所定のブレーキ圧を供給するようにブレーキペダルの踏込み操作を行うことでブレーキホールド制御を実行することができ、坂路では路面勾配に応じて前記所定のブレーキ圧より大きいブレーキ圧を供給するようにブレーキペダルの踏込み操作を行うことでブレーキホールド制御を実行することができ、前記効果を有効に得ることができる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、
請求項1に係る発明と同様に、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定される。
これにより、平坦路に停止した場合と坂路に停止した場合とでブレーキ圧下限値が一定に設定される場合に比して、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧が低下する場合においても、坂路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動することを防止することができる。従って、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
また、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されることにより、路面勾配に応じてブレーキ圧下限値を設定することができ、路面勾配が大きい場合についてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
また、ブレーキ圧下限値は、路面が降坂路であると判定される場合には路面が登坂路であると判定される場合よりも路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合が大きくなるように設定される。これにより、トルクコンバータを備えた自動変速機を搭載した車両において前進走行レンジが選択された状態で車両が停止した場合、登坂路では車両の自重とクリープ現象とによる車両の移動方向が反対であるのに対して降坂路では同一であることから登坂路に比して車両が移動し易くなるが、降坂路においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、
請求項1に係る発明と同様に、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ手段に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定される。
これにより、平坦路に停止した場合と坂路に停止した場合とでブレーキ圧下限値が一定に設定される場合に比して、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧が低下する場合においても、坂路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動することを防止することができる。従って、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
また、車両の停止時にブレーキ圧が第1ブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を行うと共に、車両の停止時にブレーキ圧が第2ブレーキ圧下限値以上であることを含むエンジン停止条件が成立したときにアイドルストップ制御を行い、第2ブレーキ圧下限値は、第1ブレーキ圧下限値より大きく設定される。これにより、ブレーキホールド制御及びアイドルストップ制御を行う車両において、車両の停止時に第1ブレーキ圧下限値以上で第2ブレーキ圧下限値未満のブレーキ圧を供給するブレーキペダルの踏込み操作を行うことで、アイドルストップ制御を実行させずにブレーキホールド制御を実行させることができ、運転者が急発進したいという意図を有する場合にエンジンを停止させることなく車両の停止状態を維持させて運転者の意図に追従して車両を急発進させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両停止維持制御装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る車両停止維持制御装置1は、自動車等の車両に備えられ、
図1に示すように、エンジン11と、エンジン11の出力軸に連結されたトルクコンバータと該トルクコンバータの出力軸に連結されてトルクコンバータからの動力が入力される変速機構とを有する自動変速機12と、ブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ力を発生させるブレーキ装置13とを備えている。
【0029】
自動変速機12の変速機構は、トルクコンバータの出力軸に連結される入力軸と、該入力軸の軸線上に配置された複数のプラネタリギヤセットとクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素とを有すると共に、該変速機構からの動力を車両の駆動輪へ出力する出力ギヤを有している。
【0030】
自動変速機12は、これに限定されるものではないが、複数のプラネタリギヤセットとして3つのプラネタリギヤセットを有し、複数の摩擦締結要素としてロークラッチ、ハイクラッチ、LRブレーキ、26ブレーキ及びR35ブレーキを有し、ロークラッチは、1速、2速、3速及び4速で締結され、ハイクラッチは、4速、5速及び6速で締結され、LRブレーキは、1速及び後退速で締結され、26ブレーキは、2速及び6速で締結され、R35ブレーキは、3速、5速及び後退速で締結されるようになっている。自動変速機12の摩擦締結要素はそれぞれ、該摩擦締結要素に供給される油圧に応じて解放状態から締結状態まで締結度合いが制御されるようになっている。
【0031】
ブレーキ装置13は、ブレーキペダルの踏込み操作に応じてマスタシリンダに発生したブレーキ圧がホイールシリンダに供給されて車両のブレーキ力を発生させるようになっている。ブレーキ装置13はまた、後述するブレーキホールド制御によって車両の停止時に前記ブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ装置13、具体的にはホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持するようになっている。
【0032】
ブレーキ装置13はまた、車両が移動したときに停止させるためにブレーキペダルの踏込み操作とは別に液圧ポンプ用の電動モータを駆動させて液圧ポンプによってホイールシリンダに供給されるブレーキ圧の増圧制御を行うようになっている。
【0033】
車両停止維持制御装置1はまた、運転者の操作により選択されたシフトレバーのレンジを検出するレンジセンサ21、車両の速度を検出する車速センサ22、運転者によるアクセルペダルの踏込み量を検出するアクセル開度センサ23、運転者によるブレーキペダルの踏込み量に応じてマスタシリンダに発生するブレーキ圧を検出するブレーキ圧センサ24、車両が走行する路面の路面勾配を検出する勾配角センサ25、車両の停止時に車両のブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を開始するためのブレーキホールド制御スイッチ26などを備えている。
【0034】
また、エンジン11、自動変速機12及びブレーキ装置13などを制御するコントロールユニット30を備え、コントロールユニット30には、レンジセンサ21、車速センサ22、アクセル開度センサ23、ブレーキ圧センサ24、勾配角センサ25、ブレーキホールド制御スイッチ26などからの信号が入力されるようになっている。
【0035】
そして、コントロールユニット30は、これらの信号に基づいて、エンジン11の制御、具体的にはスロットル弁及び燃料噴射弁などの制御、自動変速機12の制御、具体的に摩擦締結要素に供給する油圧などの制御、ブレーキ装置13の制御、具体的にはホイールシリンダ等に供給されるブレーキ圧などの制御を行うようになっている。なお、コントロールユニット30は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0036】
コントロールユニット30はまた、車両の停止時に車両が停止する路面の路面勾配に基づいて路面が平坦路であるか坂路であるかを判定し、坂路である場合には降坂路であるか登坂路であるかを判定し、平坦路、降坂路又は登坂路のいずれであるかを判定する。
【0037】
具体的には、路面勾配が、例えば0度などの所定の第1勾配以上且つ例えば10度などの第1勾配より大きい所定の第2勾配以下である場合は平坦路であると判定し、前記第1勾配より小さい場合又は前記第2勾配より大きい場合は坂路であると判定し、前記第1勾配より小さい場合は降坂路であると判定し、前記第2勾配より大きい場合は登坂路であると判定する。
【0038】
コントロールユニット30は、ブレーキホールド制御スイッチ26からON信号が入力されている状態で、前進走行レンジでの車両の停止時に、ブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13、具体的にはホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を保持して車両のブレーキ力を保持し車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、アクセルペダルの踏込み操作が行われたときにブレーキホールド制御を終了してホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を低下させて車両のブレーキ力を解放するように制御する。
【0039】
本実施形態では、コントロールユニット30は、車両の停止時に車速がゼロでブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧、すなわちマスタシリンダに発生したブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定されている。
【0040】
コントロールユニット30には、車両の停止時における車両が走行する路面の路面勾配とブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧とに基づくブレーキホールド制御の実行領域が予め設定されて記憶されている。
【0041】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両停止維持制御装置におけるブレーキホールド制御の実行領域を示す図である。
図2では、路面勾配を横軸にとり、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置に供給されるブレーキ圧を縦軸にとって表示している。
【0042】
車両停止維持制御装置1では、ブレーキホールド制御の実行領域を規定するブレーキ圧下限値が路面勾配に応じて予め設定され、
図2に示すようなブレーキ圧下限値を示すブレーキ圧下限値ラインL1がコントロールユニット30に記憶されている。
【0043】
ブレーキ圧下限値ラインL1は、降坂路であると判定される例えば0度などの第1勾配α1より小さい下限値ラインL2と、登坂路であると判定される例えば10度などの第2勾配α2より大きい下限値ラインL3と、平坦路であると判定される第1勾配α1以上且つ第2勾配α2以下である下限値ラインL4とを有している。
【0044】
下限値ラインL4は、第1勾配α1から第2勾配α2まで、すなわち第1勾配α1と第2勾配α2とを含む第1勾配α1と第2勾配α2との間において所定の一定のブレーキ圧P1に設定され、第1勾配α1であるときのブレーキ圧下限値P1と第2勾配α2であるときのブレーキ圧下限値P1とが同一に設定されている。
【0045】
一方、下限値ラインL2は、路面勾配が第1勾配α1より小さくなるにつれてブレーキ圧下限値が大きくなるように設定され、路面勾配の大きさが大きくなるにつれてブレーキ圧下限値が大きくなるように設定されている。下限値ラインL2では、路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合を示す下限値ラインL2の傾斜角度がθ1に設定されている。
【0046】
下限値ラインL3は、路面勾配が第2勾配α2より大きくなるにつれてブレーキ圧下限値が大きくなるように設定され、路面勾配の大きさが大きくなるにつれてブレーキ圧下限値が大きくなるように設定されている。下限値ラインL3では、路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合を示す下限値ラインL3の傾斜角度がθ2に設定されている。
【0047】
下限値ラインL2の傾斜角度θ1は、下限値ラインL3の傾斜角度θ2より大きく設定され、下限値ラインL2における路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合が、下限値ラインL3における路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合より大きくなるように設定されている。
【0048】
車両停止維持制御装置1では、ブレーキ圧下限値は、路面勾配が第1勾配α1より小さく路面が降坂路である又は第2勾配α2より大きく路面が登坂路である路面が坂路であると判定される場合には路面勾配が第1勾配α1以上で第2勾配α2以下である平坦路であると判定される場合よりも大きく設定されている。
【0049】
ブレーキ圧下限値はまた、路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されると共に、路面が降坂路であると判定される場合には登坂路であると判定される場合よりも路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合が大きくなるように設定されている。
【0050】
図2にはまた、路面勾配に応じた車両の停止状態を維持する停止維持限界ブレーキ圧を示す停止維持限界ブレーキ圧ラインL21が示されている。停止維持限界ブレーキ圧ラインL21は、路面勾配が第1勾配α以上で第2勾配α2以下の所定の第3勾配α3近傍より小さい限界値ラインL22と、路面勾配が第3勾配α3近傍より大きい限界値ラインL23とを有している。
【0051】
限界値ラインL22は、路面勾配が第3勾配α3近傍より小さくなるにつれて停止維持限界ブレーキ圧が大きくなり、限界値ラインL23は、路面勾配が第3勾配α3近傍より大きくなるにつれて停止維持限界ブレーキ圧が大きくなっている。
【0052】
ブレーキ圧下限値ラインL1は、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧の漏れを考慮して、坂路及び平坦路の何れにおいても停止維持限界ブレーキ圧ラインL21よりも大きく設定されている。降坂路であるときのブレーキ圧下限値である下限値ラインL2は、降坂路であるときの車両停止維持限界ブレーキ圧の限界値ラインL22よりも大きく設定され、ブレーキ圧の漏れはブレーキ圧が大きいほど大きいことから路面勾配の大きさが増加するにつれてブレーキ圧下限値と停止維持限界ブレーキ圧との差が大きくなるように設定されている。
【0053】
登坂路であるときのブレーキ圧下限値である下限値ラインL3もまた、登坂路であるときの車両停止維持限界ブレーキ圧の限界値ラインL23よりも大きく設定され、ブレーキ圧の漏れはブレーキ圧が大きいほど大きいことから路面勾配の大きさが増加するにつれてブレーキ圧下限値と停止維持限界ブレーキ圧との差が大きくなるように設定されている。
【0054】
また、平坦路であるときのブレーキ圧下限値である下限値ラインL4についても、自動変速機12を搭載した車両ではクリープ現象によって車両が移動することから、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧の漏れを考慮して、平坦路であるときのクリープ現象による車両の移動に対する停止維持限界ブレーキ圧ラインL21よりも大きく設定されている。
【0055】
車両停止維持制御装置1にはまた、ブレーキペダルの操作に関係なく車輪、具体的には後輪にブレーキ力を発生させる電動パーキングブレーキ装置が備えられ、ブレーキホールド制御の実行時に10分などの所定時間が経過するとブレーキホールド制御を終了して電動パーキングブレーキ装置が作動されるようになっている。
【0056】
このため、ブレーキ圧下限値ラインL1は、前記所定時間におけるブレーキ圧の漏れを考慮してブレーキホールド制御の実行時に少なくとも前記所定時間が経過しても車両が移動しないように停止維持限界ブレーキ圧ラインL21よりもブレーキ圧が所定量大きく設定されている。
【0057】
ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧は、時間の経過と共に漏れて低下するが、ある時間が経過すると漏れが終了して一定となることから、前記所定時間として、ブレーキ圧の漏れが終了する時間、例えば10分などの時間が設定される。
【0058】
これにより、坂路、特に路面勾配が大きい坂路に電動パーキングブレーキ装置の作動によって車両の停止状態を維持させている場合に、ブレーキペダルの踏込み操作が行われると共に電動パーキングブレーキ装置の作動を終了してブレーキホールド制御が実行される場合においても、ブレーキ装置に供給されるブレーキ圧が停止維持限界ブレーキ圧より低下することなくブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0059】
このように、ブレーキホールド制御を実行するためのブレーキ圧下限値が、坂路である場合には平坦路である場合よりも大きく設定されることで、
図2のブレーキ圧下限値ラインL1´で示すように坂路及び平坦路において一定のブレーキ圧P1である場合に比べて、車両が坂路に停止する場合においても、坂路であるときのブレーキ圧下限値L2、L3をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧L22、L23よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0060】
車両の停止時にブレーキ装置に供給されるブレーキ圧が
図2のブレーキ圧下限値ラインL1´で示す一定のブレーキ圧P1である場合には、例えば、路面勾配が第4勾配α4であるときに、車両の停止時にブレーキ圧下限値P1以上で停止維持限界ブレーキ圧L21近傍のブレーキ圧P3をブレーキ装置13に供給するブレーキペダルの踏込み操作が行われていた場合、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキペダルの踏込み解除操作が行われた後にブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が漏れて停止維持限界ブレーキ圧P3より低下し、車両が下方へ移動し出すおそれがあるが、本実施形態では、坂路であるときのブレーキ圧下限値L2、L3をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧L22、L23よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0061】
本実施形態ではまた、アクセルペダルの踏込み操作が行われてブレーキホールド制御を終了してブレーキ圧を低下させる場合におけるブレーキ圧の低下による発進性の遅れを抑制するためなど、コントロールユニット30には、ブレーキホールド制御の実行時におけるブレーキ圧保持上限値が予め設定されて記憶されている。
【0062】
コントロールユニット30には、
図2に示すようなブレーキ圧保持上限値を示すブレーキ圧保持上限値ラインL11が記憶されている。ブレーキ圧保持上限値ラインL11は、ブレーキ圧下限値ラインL1よりブレーキ圧が大きく設定され、これに限定されるものではないが、例えば4度などの第3勾配α3以下の上限値ラインL12と、第3勾配α3以上の上限値ラインL13と有している。
【0063】
上限値ラインL12は、路面勾配が第3勾配α3より小さくなるにつれてブレーキ圧保持上限値が大きくなるように設定され、路面勾配の低下に対するブレーキ圧保持上限値の増加の割合を示すブレーキ圧保持上限値ラインL12の傾斜角度がθ3に設定されている。
【0064】
上限値ラインL13は、路面勾配が第3勾配α3より大きくなるにつれてブレーキ圧保持上限値が大きくなるように設定され、路面勾配の増加に対するブレーキ圧保持上限値の増加の割合を示すブレーキ圧保持上限値ラインL13の傾斜角度がθ4に設定されている。
【0065】
上限値ラインL12の傾斜角度θ3と上限値ラインL13の傾斜角度θ4とは同一に設定され、上限値ラインL12、L13の傾斜角度θ3、θ4は、下限値ラインL2、L3の傾斜角度θ1、θ2より大きく設定されている。なお、上限値ラインL12、L13の傾斜角度θ3、θ4と下限値ラインL2、L3の傾斜角度θ1、θ2とを同一に設定するようにしてもよい。
【0066】
コントロールユニット30は、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧が所定のブレーキ圧下限値以上で所定のブレーキ圧保持下限値以下である場合にはブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧を保持し、ブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定のブレーキ圧保持下限値より大きい場合にはブレーキペダルの踏込み解除操作が行われたときにブレーキ圧をブレーキ圧保持下限値に低下させて保持する。
【0067】
例えば、
図2に示すように、路面勾配が第4勾配α4である場合、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値P4以上であるときはブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧がブレーキ圧下限値P4以上でブレーキ圧保持下限値P5以下であるブレーキ圧P6である場合にはブレーキ圧P6を保持し、ブレーキ圧がブレーキ圧保持下限値P5より大きいブレーキ圧P7である場合にはブレーキペダルの踏込み解除操作が行われたときにブレーキ圧保持下限値P5に低下させて保持する。
【0068】
このようにして構成される車両停止維持制御装置1では、コントロールユニット30は、ブレーキホールド制御スイッチ26からON信号が入力された状態で、ブレーキペダルの非踏込み状態でアクセルペダルの踏込み操作が行われて前進走行レンジで走行しているときに、アクセルペダルの踏込み解除操作が行われた後にブレーキペダルの踏込み操作が行われて車速がゼロとなって停車したときにブレーキホールド制御を行う。
【0069】
車両の停止時に路面勾配に基づいて路面が平坦路であるか坂路であるかが判定され、坂路である場合には降坂路であるか登坂路であるかが判定され、降坂路、平坦路又は登坂路についてそれぞれ路面勾配とブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧とに基づいて、ブレーキ圧がブレーキ圧下限値ラインL1以上であるときはブレーキ圧を保持するブレーキホールド制御を行う。
【0070】
ブレーキ圧がブレーキ圧下限値ラインL1以上でブレーキ圧保持上限値ラインL11以下である場合にはブレーキ圧を保持するブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧がブレーキ圧保持上限値ラインL11より大きい場合には路面勾配に応じたブレーキ圧保持上限値ラインL11のブレーキ圧に低下させて該ブレーキ圧を保持するブレーキホールド制御を行う。
【0071】
前述したように、ブレーキ圧下限値は、路面勾配に基づいて坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定され、坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定され、降坂路であると判定される場合には登坂路であると判定される場合よりも路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合が大きくなるように設定されている。
【0072】
車両の停止時にはまた、エンジン11はアイドリング状態に制御されると共に自動変速機12は1速の変速段を達成するように制御されるが、1速の変速段で締結されるLRブレーキ及びロークラッチのうちロークラッチを締結状態にしたままLRブレーキをスリップ状態にするようにしてもよい。
【0073】
その後に、アクセルペダルの踏込み操作が行われて発進する場合、ブレーキホールド制御を終了してホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を低下させて車両のブレーキ力を解放するように制御する。また、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン11及び自動変速機12の通常制御を行う。
【0074】
一方、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値ラインL1未満であるときはブレーキホールド制御を実行することなく、車両の移動を防止するために、例えば車速やエンジン回転数などを表示する表示装置にブレーキペダル踏込み操作要求警報表示などを表示して運転者にブレーキペダルの踏込み操作を行わせるようにする。
【0075】
このように、本実施形態に係る車両停止維持制御装置1では、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧がブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定される。
【0076】
これにより、平坦路に停止した場合と坂路に停止した場合とでブレーキ圧下限値が一定に設定される場合に比して、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧が低下する場合においても、坂路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動することを防止することができる。従って、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
【0077】
車両停止維持制御装置に、電動パーキングブレーキ装置が備えられ、ブレーキホールド制御の実行時に10分などの所定時間が経過するとブレーキホールド制御を終了して電動パーキングブレーキ装置が作動される場合、ブレーキ圧下限値を前記所定時間におけるブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0078】
坂路に停止する場合には平坦路に停止する場合よりもブレーキ圧下限値を大きく設定することで、坂路に停止した場合にはブレーキホールド制御を実行するために運転者にブレーキ圧を大きくするブレーキペダルの踏込み操作を行わせ、ブレーキホールド制御の実行時には車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
【0079】
また、平坦路に停止する場合においても、トルクコンバータを備えた自動変速機12を搭載した車両において前進走行レンジが選択された状態で車両が停止した場合には、平坦路であるときのブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮してクリープ現象による車両の移動に対する停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0080】
また、ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には路面勾配の大きさが大きくなるにつれて大きくなるように設定されることにより、路面勾配に応じてブレーキ圧下限値を設定することができ、路面勾配が大きい場合についてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0081】
また、ブレーキ圧下限値は、路面が降坂路であると判定される場合には路面が登坂路であると判定される場合よりも路面勾配の大きさの増加に対するブレーキ圧下限値の増加の割合が大きくなるように設定される。これにより、トルクコンバータを備えた自動変速機12を搭載した車両において前進走行レンジが選択された状態で車両が停止した場合、登坂路では車両の自重とクリープ現象とによる車両の移動方向が反対であるのに対して降坂路では同一であることから登坂路に比して車両が移動し易くなるが、降坂路においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0082】
また、ブレーキ圧下限値は、路面が平坦路であると判定される場合には第1勾配と第2勾配とを含む第1勾配と第2勾配との間のブレーキ圧下限値が一定であるように設定され、路面勾配が第1勾配より小さい場合に降坂路であると判定される第1勾配であるときのブレーキ圧下限値と路面勾配が第2勾配より大きい場合に登坂路であると判定される第2勾配であるときのブレーキ圧下限値とが同一に設定される。これにより、車両の停止時に、平坦路では少なくとも所定のブレーキ圧を供給するようにブレーキペダルの踏込み操作を行うことでブレーキホールド制御を実行することができ、坂路では路面勾配に応じて前記所定のブレーキ圧より大きいブレーキ圧を供給するようにブレーキペダルの踏込み操作を行うことでブレーキホールド制御を実行することができ、ブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止することができる。
【0083】
図3は、本発明の第2実施形態に係る車両停止維持制御装置の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る車両停止維持制御装置41は、第1実施形態に係る車両停止維持制御装置1において、アイドルストップ制御を行うようにしたものであり、車両停止維持制御装置1と同様の構成については説明を省略する。
【0084】
図3に示すように、第2実施形態に係る車両停止維持制御装置41では、車両の停止時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジン11を自動停止させるアイドルストップ制御を開始するためのアイドルストップ制御スイッチ47が備えられ、コントロールユニット30には、アイドルストップ制御スイッチ47からの信号が入力されるようになっている。
【0085】
車両停止維持制御装置41においても、コントロールユニット30は、ブレーキホールド制御スイッチ26からON信号が入力されている状態で、前進走行レンジでの車両の停止時に、ブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13、具体的にはホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を保持して車両のブレーキ力を保持し車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、アクセルペダルの踏込み操作が行われたときにブレーキホールド制御を終了してホイールシリンダに供給されるブレーキ圧を低下させて車両のブレーキ力を解放するように制御する。
【0086】
コントロールユニット30は具体的には、車両の停止時に車速がゼロでブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定の第1ブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を行い、第1ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定されている。
【0087】
本実施形態ではまた、コントロールユニット30は、アイドルストップ制御スイッチ47からON信号が入力されている状態で、前進走行レンジでの車両の停止時に、所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジン11を自動停止させるアイドルストップ制御を行い、エンジン11の自動停止中に所定のエンジン再始動条件が成立したときにアイドルストップ制御を終了してエンジン11を再始動して通常制御を行う。
【0088】
コントロールユニット30は、前進走行レンジでの車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定の第2ブレーキ圧下限値以上であることを含む所定のエンジン停止条件が成立したときに、具体的には前進走行レンジでの車両の停止時にアクセルペダルが非踏込み状態且つブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が所定の第2ブレーキ下限値以上であるエンジン停止条件が成立したときにエンジン11を自動停止させるアイドルストップ制御を行う。
【0089】
また、所定のエンジン再始動条件が成立したときに、具体的にはエンジン11の自動停止中にアクセルペダルの踏込み操作が行われるエンジン再始動条件が成立したときにアイドルストップ制御を終了してエンジン11を再始動して通常制御を行う。
【0090】
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両停止維持制御装置におけるブレーキホールド制御の実行領域を示す図である。
図4には、
図2に示すブレーキ圧下限値ラインL1及びブレーキ圧保持上限値ラインL11とそれぞれ同様に設定された第1ブレーキ圧下限値ラインL1及びブレーキ圧保持上限値ラインL11が示されると共に、停止維持限界ブレーキ圧ラインL21が示されている。
【0091】
車両停止維持制御装置41においても、ブレーキホールド制御の実行領域を規定するブレーキ圧下限値として第1ブレーキ圧下限値が路面勾配に応じて予め設定され、
図4に示すような第1ブレーキ圧下限値を示す第1ブレーキ圧下限値ラインL1がコントロールユニット30に記憶されている。コントロールユニット30にはまた、
図4に示すようなブレーキ圧保持上限値を示すブレーキ圧保持上限値ラインL11が記憶されている。
【0092】
本実施形態では、アイドルストップ制御を実行するためのブレーキ圧下限値である第2ブレーキ圧下限値が路面勾配に応じて予め設定され、
図4に示すような第2ブレーキ圧下限値を示す第2ブレーキ圧下限値ラインL6がコントロールユニット30に記憶されている。
【0093】
第2ブレーキ圧下限値ラインL6は、降坂路であると判定される第1勾配α1より小さい下限値ラインL7と、登坂路であると判定される第2勾配α2より大きい下限値ラインL8と、平坦路であると判定される第1勾配α1以上且つ第2勾配α2以下である下限値ラインL9とを有している。
【0094】
第2ブレーキ圧下限値ラインL6は、第1ブレーキ圧下限値L1より所定量大きく設定され、第2ブレーキ圧下限値ラインL6の下限値ラインL7、L8、L9はそれぞれ、第1ブレーキ圧下限値ラインL1の下限値ラインL2、L3、L4より所定ブレーキ圧ΔP大きく設定されている。第2ブレーキ圧下限値ラインL6では、第1勾配α1から第2勾配α2まで所定の一定のブレーキ圧P2(=P1+ΔP)に設定されている。
【0095】
このようにして構成される車両停止維持制御装置41においても、コントロールユニット30は、前進走行レンジで走行しているときに、アクセルペダルの踏込み解除操作が行われた後にブレーキペダルの踏込み操作が行われて車速がゼロとなって車両が停止したときにブレーキホールド制御を行う。
【0096】
車両の停止時に路面勾配に基づいて路面が平坦路であるか坂路であるかが判定され、坂路である場合には降坂路であるか登坂路であるかが判定され、降坂路、平坦路又は登坂路についてそれぞれ路面勾配とブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧とに基づいて、ブレーキ圧が第1ブレーキ圧下限値ラインL1以上であるときはブレーキ圧を保持するブレーキホールド制御を行う。車両の停止時にはまた、エンジン11はアイドリング状態に制御されると共に自動変速機12は1速の変速段を達成するように制御される。
【0097】
また、コントロールユニット30は、アイドルストップ制御スイッチ47からON信号が入力されている状態で、前進走行レンジでの車両の停止時にアクセルペダルが非踏込み状態且つブレーキペダルの踏込み操作に応じてブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が第2ブレーキ下限値ラインL6以上であるエンジン停止条件が成立したときはエンジン11を自動停止させるアイドルストップ制御を行う。
【0098】
その後に、アクセルペダルの踏込み操作が行われて発進する場合、ブレーキホールド制御が行われている場合、ブレーキホールド制御を終了してブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧を低下させて車両のブレーキ力を解放するように制御する。
【0099】
また、アイドルストップ制御が行われている場合、エンジン11の自動停止中にアクセルペダルの踏込み操作が行われてエンジン再始動条件が成立したときにアイドルストップ制御を終了してエンジン11を再始動してアクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン11及び自動変速機12の通常制御を行う。
【0100】
本実施形態では、第2ブレーキ圧下限値ラインL6は、第1ブレーキ圧下限値L1より所定量大きく設定され、前進走行レンジでの車両の停止時にブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧を第1ブレーキ圧下限値ラインL1以上で第2ブレーキ圧下限値ラインL6未満となるようにブレーキペダルの踏込み操作を行うことで、アイドルストップ制御を実行することなくブレーキホールド制御を実行することが可能である。
【0101】
このように、本実施形態に係る車両停止維持制御装置41においても、車両の停止時にブレーキペダルの踏込み操作に応じて車両のブレーキ装置13に供給されるブレーキ圧が第1ブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキペダルの踏込み操作に関わらずブレーキ圧を保持して車両の停止状態を維持させるブレーキホールド制御を行い、第1ブレーキ圧下限値は、路面が坂路であると判定される場合には平坦路であると判定される場合よりも大きく設定される。
【0102】
これにより、平坦路に停止した場合と坂路に停止した場合とでブレーキ圧下限値が一定に設定される場合に比して、ブレーキホールド制御の実行時にブレーキ圧が低下する場合においても、坂路であるときの第1ブレーキ圧下限値をブレーキ圧の漏れを考慮して停止維持限界ブレーキ圧よりも高く設定することで、ブレーキホールド制御の実行時に車両が下方へ移動することを防止することができる。従って、車両が坂路に停止する場合においてもブレーキホールド制御の実行時に車両の移動を防止して車両の停止状態を維持することができる。
【0103】
また、車両の停止時にブレーキ圧が第1ブレーキ圧下限値以上であるときにブレーキホールド制御を行うと共に、車両の停止時にブレーキ圧が第2ブレーキ圧下限値以上であることを含むエンジン停止条件が成立したときにアイドルストップ制御を行い、第2ブレーキ圧下限値は、第1ブレーキ圧下限値より大きく設定される。これにより、ブレーキホールド制御及びアイドルストップ制御を行う車両において、車両の停止時に第1ブレーキ圧下限値以上で第2ブレーキ圧下限値未満のブレーキ圧を供給するブレーキペダルの踏込み操作を行うことで、アイドルストップ制御を実行させずにブレーキホールド制御を実行させることができ、運転者が急発進したいという意図を有する場合にエンジンを停止させることなく車両の停止状態を維持させて運転者の意図に追従して車両を急発進させることが可能である。
【0104】
本実施形態では、路面勾配に応じて路面勾配の大きさが大きくなるにつれてブレーキホールド制御を実行するためのブレーキ圧下限値が大きくなるように設定されているが、例えば路面勾配の大きさが30度より大きい場合にはブレーキホールド制御を実行しないようにすることも可能である。
【0105】
また、本実施形態では、自動変速機12を備えた車両に搭載される車両停止維持制御装置1、41について説明しているが、車両停止維持制御装置1、41は、手動変速機を備えた車両に搭載することも可能である。手動変速機を備えた車両に搭載される車両停止維持制御装置では、クリープ現象による車両の移動を考慮する必要がなく、ブレーキ圧下限値ラインL1の下限値ラインL2、L3がそれぞれ、自動変速機を備えた車両に搭載される車両停止維持制御装置の下限値ラインL2、L3よりも所定量低く設定されると共に、下限値ラインL2、L3の傾斜角度が同一に設定される。
【0106】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。