特許第6658648号(P6658648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658648
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20200220BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20200220BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20200220BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   G03F7/038 501
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
   C08F2/48
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-63499(P2017-63499)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165799(P2018-165799A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年9月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/125806(WO,A1)
【文献】 特開2012−133364(JP,A)
【文献】 特開2010−205127(JP,A)
【文献】 特開2006−335807(JP,A)
【文献】 特開2015−011265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/027
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A−1)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が150℃以上である(メタ)アクリル共重合体、
(A−2)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下である(メタ)アクリル共重合体、
(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材、
(C)光重合開始剤、及び
(D)エポキシ樹脂、を含有する感光性樹脂組成物であって、
(A−1)成分及び(A−2)成分の重量平均分子量が、それぞれ30000以下であり、
(B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、60質量%以上85質量%以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A−3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂、をさらに含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A−3)成分が、ナフタレン骨格を有する、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A−3)成分が、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートである、請求項2又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(A−1)成分の含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とし、(A−3)成分の含有質量をA3とした場合、(A1+A2)/A3が、0.1以上0.8以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A−1)成分の含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とした場合、A1/A2が、0.2以上3.5以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(D)成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂及びテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂の少なくともいずれかを含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(B)成分が、シリカを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
【請求項10】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
【請求項12】
絶縁層が、ソルダーレジストである、請求項11に記載のプリント配線板。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。さらには、当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板では、はんだが不要な部分へ付着するのを防止するとともに、回路基板が腐食するのを防止するための永久保護膜として、ソルダーレジストを設けることがある。ソルダーレジストとしては、例えば特許文献1に記載されているような感光性樹脂組成物を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−164304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物は、一般的に、解像性、絶縁性、半田耐熱性、金めっき耐性、耐湿熱特性、クラック耐性(TCT耐性)、及び微細配線間での超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対するHAST耐性が要求されている。近年、プリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジストにも作業性やさらなる高性能化が要求されている。特にクラック耐性に関する要求は年々上がっており、さらなる耐久性を持たせることが重要になっている。
【0005】
クラック耐性を上げるためには、例えば、無機充填材を感光性樹脂組成物に高充填させる方法が考えられるが、被着体との密着性が低下したり、光の透過が十分ではないためビア底の感度が悪化してアンダーカットが生じたり、光のハレーションなどにより、十分に開口しない可能性がある。
【0006】
また、作業性、生産性の観点から、ソルダーレジストを作製するにあたって、感光性フィルムの外観性が高いこと、取り扱う際に割れを抑制すること、及び、ソルダーレジストを切断する際にクラックや樹脂の飛散を抑制することが要求されている。
【0007】
さらに、クラック耐性を上げるとともに、感光性フィルムに柔軟性を付与することも要求されてきている。柔軟性を上げるには、一般にガラス転移温度が低く、重量平均分子量が大きい樹脂を使用することが考えられるが、耐熱性が大幅に低下する可能性がある。一方、ガラス転移温度が高い樹脂を使用すると、耐熱性に優れるが、アルカリ可溶性が大幅に低下する可能性がある。
【0008】
本発明の課題は、平均線熱膨張率が低く、ガラス転移温度が高く、クラック耐性に優れる硬化物を得ることができる、タック性、柔軟性及び解像性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、平均粒径が大きい無機充填材を多く含有させると、光反射してしまうので解像性が劣ってしまう。このため、従来は平均粒径が0.5μm未満の無機充填材を感光性樹脂組成物に多く含有させていた。しかし、本発明者らは、ガラス転移温度が高い所定の(メタ)アクリル共重合体、及びガラス転移温度が低い所定の(メタ)アクリル共重合体を含有させることで、従来使用してきた無機充填材の平均粒径よりも大きい無機充填材を多く含有させても、光反射が抑制され解像性等が向上し、クラック耐性に優れる硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A−1)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が150℃以上である(メタ)アクリル共重合体、
(A−2)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下である(メタ)アクリル共重合体、
(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材、
(C)光重合開始剤、及び
(D)エポキシ樹脂、を含有する感光性樹脂組成物であって、
(A−1)成分及び(A−2)成分の重量平均分子量が、それぞれ30000以下であり、
(B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、60質量%以上85質量%以下である、感光性樹脂組成物。
[2] (A−3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂、をさらに含有する、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] (A−3)成分が、ナフタレン骨格を有する、[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] (A−3)成分が、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートである、[2]又は[3]に記載の感光性樹脂組成物。
[5] (A−1)成分の含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とし、(A−3)成分の含有質量をA3とした場合、(A1+A2)/A3が、0.1以上0.8以下である、[2]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6] (A−1)成分の含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とした場合、A1/A2が、0.2以上3.5以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] (D)成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂及びテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂の少なくともいずれかを含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8] (B)成分が、シリカを含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
[10] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]〜[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
[11] [1]〜[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
[12] 絶縁層が、ソルダーレジストである、[11]に記載のプリント配線板。
[13] [11]又は[12]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平均線熱膨張率が低く、ガラス転移温度が高く、及びクラック耐性に優れる硬化物を得ることができる、タック性、柔軟性及び解像性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0013】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A−1)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が150℃以上である(メタ)アクリル共重合体、(A−2)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下である(メタ)アクリル共重合体、(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材、(C)光重合開始剤、及び(D)エポキシ樹脂、を含有する感光性樹脂組成物であって、(A−1)成分及び(A−2)成分の重量平均分子量が、それぞれ30000以下であり、(B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、60質量%以上85質量%以下である。
【0014】
(A−1)成分〜(A−2)成分、(B)成分〜(D)成分を含有することにより、平均線熱膨張率が低く、ガラス転移温度が高く、クラック耐性に優れる硬化物を得ることができ、また、タック性、柔軟性及び解像性にも優れる。また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(A−3)成分、(E)反応性希釈剤、(F)有機溶剤を含み得る。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。ここで、(A−1)成分、(A−2)成分、及び(A−3)成分をまとめて「(A)成分」ということもある。
【0015】
<(A−1)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が150℃以上である(メタ)アクリル共重合体>
感光性樹脂組成物は、(A−1)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が150℃以上であって、重量平均分子量が30000以下である(メタ)アクリル共重合体を含有する。(A−1)成分を含有することで、フィルムの塗膜性、性及びクラック耐性を向上させることができるとともに、平均線熱膨張率を低くすることができ、ガラス転移温度を高くすることができる。「(メタ)アクリル共重合体」とは、アクリル共重合体及びメタクリル共重合体を指す。
【0016】
エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。「(メタ)アクリル基」とは、メタクリル基及びアクリル基を指す。
【0017】
(A−1)成分は、主鎖のガラス転移温度が150℃以上であって、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有し、光ラジカル重合を可能とするとともにアルカリ現像を可能とする化合物であれば特に制限はないが、1分子中にカルボキシル基と2個以上のエチレン性不飽和基とを併せ持つ(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0018】
(A−1)成分としては、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させた、酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。詳細は、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得、不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体と酸無水物とを反応させることで酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得ることができる。エポキシ基含有共重合体のエポキシ基は、通常(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を指す。
【0019】
(A−1)成分を得る際に用いるエポキシ基含有共重合体は、エポキシ基含有モノマー及び必要に応じて任意のモノマーを重合させることによって得ることができる。
【0020】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。エポキシ基含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
任意のモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。任意のモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の解像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
【0023】
酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得るにあたって、触媒存在下、エポキシ基含有共重合体と不飽和カルボン酸とを反応させ不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得た後、不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体と酸無水物とを反応させてもよい。また、必要に応じて、溶剤、重合阻害剤を用いてもよい。
【0024】
(A−1)成分の主鎖のガラス転移温度は、耐熱性を向上させる観点から、150℃以上であり、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上、165℃以上である。上限は、アルカリ溶解性を向上させる観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
【0025】
(A−1)成分の主鎖のガラス転移温度とは、(A−1)成分の主鎖の理論上のガラス転移温度であり、この理論上のガラス転移温度は以下に示すFOXの式により算出することができる。FOXの式により求められるガラス転移温度は、示差走査熱量測定(TMA、DSC、DTA)により測定したガラス転移温度とほぼ一致するので、示差走査熱量測定により(A−1)成分の主鎖のガラス転移温度を測定してもよい。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wm/Tgm)
W1+W2+・・・+Wm=1
Wmは(A−1)成分を構成する各モノマーの含有量(質量%)を表し、Tgmは、(A−1)成分を構成する各モノマーのガラス転移温度(K)を表す。
【0026】
(A−1)成分の重量平均分子量としては、現像性の観点から、30000以下であり、好ましくは28000以下、より好ましくは25000以下である。下限としては、塗膜性の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは15000以上である。重量平均分子量は、後述する((A)成分の重量平均分子量(Mw)の測定)の記載に従って測定することができる。
【0027】
(A−1)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンが現像により溶け出す事を抑制し、絶縁信頼性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A−1)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式により酸価を算出する。
式:A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
【0028】
なお、上記式中、Aは酸価(mgKOH/g)を表し、VfはKOHの滴定量(mL)を表し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を表す。
【0029】
(A−1)成分の製造では、保存安定性の向上という観点から、エポキシ基含有共重合体のエポキシ基のモル数と、不飽和カルボン酸と酸無水物との合計のカルボキシル基のモル数との比が、1:0.8〜1.3の範囲であることが好ましく、1:0.9〜1.2の範囲であることがより好ましい。
【0030】
(A−1)成分は、耐熱性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましく、1.5質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、アルカリ現像性の向上という観点から、15質量%以下とすることが好ましく、14質量%以下とすることがより好ましく、12質量%以下とすることが更に好ましい。
【0031】
<(A−2)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下である(メタ)アクリル共重合体>
感光性樹脂組成物は、(A−2)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下であって、重量平均分子量が、30000以下である(メタ)アクリル共重合体を含有する。(A−2)成分を含有することで、感光性フィルムの外観、柔軟性及び解像性を向上させることができる。
【0032】
(A−2)成分の主鎖のガラス転移温度は、柔軟性を向上させる観点から、−20℃以下であり、好ましくは−23℃以下、より好ましくは−25℃以下である。上限は、アルカリ溶解性を向上させる観点から、好ましくは−300℃以上、より好ましくは−200℃以上、さらに好ましくは−100℃以上、−80℃以上である。
【0033】
(A−2)成分の主鎖のガラス転移温度とは、(A−2)成分の主鎖の理論上のガラス転移温度であり、この理論上のガラス転移温度は、(A−1)成分のガラス転移温度と同様の方法により算出することができる。
【0034】
エチレン性不飽和基としては、(A−1)成分におけるエチレン性不飽和基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0035】
(A−2)成分は、主鎖のガラス転移温度が−20℃以下であって、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有し、光ラジカル重合を可能とするとともにアルカリ現像を可能とする化合物であれば特に制限はないが、1分子中にカルボキシル基と2個以上のエチレン性不飽和基とを併せ持つ(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0036】
(A−2)成分としては、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させた、酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。詳細は、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得、不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体と酸無水物とを反応させることで酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得ることができる。エポキシ基含有共重合体のエポキシ基は、通常(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。
【0037】
この酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体は、(A−1)成分における酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体の製造方法と同様に製造することができる。
【0038】
(A−2)成分を得る際に用いるエポキシ基含有共重合体は、エポキシ基含有モノマー及び任意のモノマーを重合させることによって得られるエポキシ基含有共重合体であることが好ましい。エポキシ基含有モノマーは、(A−1)成分を得る際に用いるエポキシ基含有モノマーと同様のものを用いることができる。
【0039】
任意のモノマーとしては、n−ブチルメタクリレート、及び(A−1)成分の製造に用い得る任意のモノマーと同様の任意のモノマー等が挙げられる。任意のモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
(A−2)成分の好ましい一実施態様としては、エポキシ基含有モノマー及び任意のモノマーを重合させることによって得たエポキシ基含有共重合体、(メタ)アクリル酸及び酸無水物を反応させた化合物であって、エポキシ含有モノマーがグリシジルメタクリレートであり、任意のモノマーがブチルアクリレートであり、酸無水物が無水テトラヒドロフタル酸である化合物である。
【0041】
(A−2)成分の重量平均分子量としては、現像性の観点から、30000以下であり、好ましくは28000以下、より好ましくは25000以下である。下限としては、塗膜性の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは15000以上である。重量平均分子量は、後述する((A)成分の重量平均分子量(Mw)の測定)の記載に従って測定することができる。
【0042】
(A−2)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンが現像により溶け出す事を抑制し、絶縁信頼性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価は、(A−1)成分における酸価と同様の方法により算出することができる。
【0043】
(A−2)成分は、柔軟性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を0.5質量%以上とすることが好ましく、0.8質量%以上とすることがより好ましく、1質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、耐熱性の向上という観点から、10質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが更に好ましい。
【0044】
(A−1)成分の含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とした場合、A1/A2は、耐熱性と柔軟性とを両立する観点から、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上である。下限は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.4以下、さらに好ましくは3.3以下である。
【0045】
<(A−3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂>
感光性樹脂組成物は、(A−3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し得る。(A−3)成分を含有させることで、現像性、密着性等の効果を奏するようになる。但し、ここでいう(A−3)成分は、(A−1)成分及び(A−2)成分は含めない。
【0046】
エチレン性不飽和基としては、(A−1)成分におけるエチレン性不飽和基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
(A−3)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有し、光ラジカル重合を可能とするとともにアルカリ現像を可能とする化合物であれば特に制限はないが、1分子中にカルボキシル基と2個以上のエチレン性不飽和基とを併せ持つ樹脂が好ましい。(A−3)成分としては、例えばエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有し、主鎖のガラス転移温度が−20℃を超え150℃未満以上である(メタ)アクリル共重合体、又は、後述する酸変性不飽和エポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0048】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂の一態様としては、エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させて得られる。詳細は、エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ不飽和エポキシエステル樹脂を得、不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させることで酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を得ることができる。酸無水物は、(A−1)成分を得る際に用いる酸無水物と同様のものを用いることができる。
【0049】
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を有する化合物であれば使用可能であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて3官能以上に変性した変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型等のビフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂);ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族骨格とは、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む概念である。なかでも、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、分子の剛性が高くなるので分子の動きが抑制され、その結果、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度がより高くなり、硬化物の平均線熱膨張率がより低下する観点から、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましく、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂が、さらに好ましい。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,3−ジグリシジルオキシナフタレン、1,4−ジグリシジルオキシナフタレン、1,5−ジグリシジルオキシナフタレン、1,6−ジグリシジルオキシナフタレン、2,3−ジグリシジルオキシナフタレン、2,6−ジグリシジルオキシナフタレン、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
【0052】
ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’−ビ−(2−グリシジルオキシ)ナフチル、1−(2,7−ジグリシジルオキシ)−1’−(2’−グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’−ビ−(2,7−ジグリシジルオキシ)ナフチル等が挙げられる。
【0053】
ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1’−(2’−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−ビス(2−グリシジルオキシナフチル)メタンが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも1分子中にナフタレン骨格を2個以上有する、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、特に1分子中にエポキシ基を3個以上有する1,1’−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1’−(2’−グリシジルオキシナフチル)メタン、1−(2,7−ジグリシジルオキシ)−1’−(2’−グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’−ビ−(2,7−ジグリシジルオキシ)ナフチルが平均線熱膨張率に加えて耐熱性に優れる点で好ましい。
【0055】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させる観点から好ましい。なお、本明細書において、上記のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシエステル樹脂を「エポキシ(メタ)アクリレート」と記載する場合があり、ここでエポキシ化合物のエポキシ基は、通常(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。
【0056】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を得るにあたって、触媒存在下で不飽和カルボン酸とエポキシ樹脂とを反応させ不飽和エポキシエステル樹脂を得た後、不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させてもよい。また、必要に応じて、溶剤、重合阻害剤を用いてもよい。
【0057】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂としては、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。酸変性不飽和エポキシエステル樹脂における「エポキシ」とは、上記したエポキシ化合物由来の構造を表す。例えば、「酸変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物としてビスフェノール型エポキシ樹脂を使用し、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸を使用して得られる酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を指す。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの好ましい範囲はエポキシ化合物の好ましい範囲に由来する。即ち、酸変性不飽和エポキシエステル樹脂は、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を高くし、平均線熱膨張率を低くする観点から、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートとは、ナフタレン型エポキシ樹脂と(メタ)アクリレートとの反応物に、無水コハク酸又は無水テトラヒドロフタル酸等の酸無水物を反応させて得られる化合物である。
【0058】
このような酸変性不飽和エポキシエステル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、日本化薬社製の「ZAR−2000」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、「ZFR−1491H」、「ZFR−1533H」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物)、昭和電工社製の「PR−300CP」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物は、例えば、グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基に酸無水物を反応させることも可能である。酸無水物としては上記した酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。(A−3)成分としては、主鎖のガラス転移温度が−20℃を超え150℃未満以上である(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0060】
このような不飽和変性(メタ)アクリル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、昭和電工社製の「SPC−1000」、「SPC−3000」、ダイセル・オルネクス社製「サイクロマーP(ACA)Z−250」、「サイクロマーP(ACA)Z−251」、「サイクロマーP(ACA)Z−254」、「サイクロマーP(ACA)Z−300」、「サイクロマーP(ACA)Z−320」等が挙げられる。
【0061】
(A−3)成分の重量平均分子量としては、製膜性の観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、7500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0062】
(A−3)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンが現像により溶け出す事を抑制し、絶縁信頼性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価は、(A−1)成分における酸価と同様の方法により算出することができる。
【0063】
(A−3)成分の製造では、保存安定性の向上という観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数と、不飽和カルボン酸と酸無水物との合計のカルボキシル基のモル数との比が、1:0.8〜1.3の範囲であることが好ましく、1:0.9〜1.2の範囲であることがより好ましい。
【0064】
感光性樹脂組成物が(A−3)成分を含有する場合、(A−3)成分は、アルカリ現像性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、15質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、耐熱性の向上という観点から、35質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることがより好ましく、25質量%以下とすることが更に好ましい。
【0065】
感光性樹脂組成物が(A−3)成分を含有する場合、含有質量をA1とし、(A−2)成分の含有質量をA2とし、(A−3)成分の含有質量をA3とした場合、(A1+A2)/A3は、現像性と耐熱性、柔軟性とを両立する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上、さらにより好ましくは0.25以上である。上限は、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0066】
<(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材>
感光性樹脂組成物は、(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材を含有する。(B)成分を含有することで、平均線熱膨張率が低い硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供可能となる。
【0067】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
無機充填材の平均粒径は、平均線熱膨張率が低い硬化物を得るために無機充填材を多く含む必要があり、その充填性の観点から、0.5μm以上であり、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1μm以上である。該平均粒径の上限は、優れた解像性を得る観点から、2.5μm以下であり、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.3μm以下である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、アドマテックス社製「SC4050」、「アドマファイン」、電気化学工業社製「SFPシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP(H)シリーズ」、堺化学工業社製「Sciqasシリーズ」、日本触媒社製「シーホスターシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製の「AZシリーズ」、「AXシリーズ」、堺化学工業社製の「Bシリーズ」、「BFシリーズ」等が挙げられる。
【0069】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
【0070】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0071】
無機充填材の含有量は、平均線熱膨張率が低い硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、好ましくは61質量%以上、より好ましくは62質量%以上である。上限は、光反射を抑制する観点から、85質量%以下、好ましくは83質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0072】
<(C)光重合開始剤>
感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。(C)成分を含有させることにより、感光性樹脂組成物を効率的に光硬化させることができる。
【0073】
(C)成分は、特に制限されないが、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサンド等が挙げられ、また、スルホニウム塩系光重合開始剤等も使用できる。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0074】
さらに、感光性樹脂組成物は、(C)成分と組み合わせて、光重合開始助剤として、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類を含んでいてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を含んでいてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0075】
(C)成分の具体例としては、IGM社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」、BASF社製の「IrgacureOXE−01」、「IrgacureOXE−02」、ADEKA社製の「N−1919」等が挙げられる。
【0076】
(C)成分の含有量は、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。一方、感度過多による解像性の低下を抑制するという観点から、上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0077】
<(D)エポキシ樹脂>
感光性樹脂組成物は、(D)エポキシ樹脂を含有する。(D)成分を含有させることにより、絶縁信頼性を向上させることができる。但し、ここでいう(D)成分は、(A)成分に該当する樹脂は含めない。
【0078】
(D)成分としては、例えば、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられ、密着性を向上させるという観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がよりに好ましい。また、耐熱性を向上させる観点からはナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂がより好ましい。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(E)成分は、密着性及び耐熱性を向上させる観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。(E)成分としては、2以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0080】
エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」、「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、新日鉄住金化学社製「YD−8125G」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、ダイキン工業社製の「E−7432」、「E−7632」(パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂)、DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「YSLV−80XY」(テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「1010」、(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0081】
(D)成分の含有量は、良好な引張破壊強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0082】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0083】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0084】
<(E)反応性希釈剤>
感光性樹脂組成物は、更に(E)反応性希釈剤を含有し得る。(E)成分を含有させることにより、光反応性を向上させることができる。(E)成分としては、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。室温とは、25℃程度を表す。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
【0085】
代表的な感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε−カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N',N'−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0086】
(E)成分を配合する場合の含有量は、光硬化を促進させ、かつ硬化物としたときにべたつきを抑制するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、8質量%以上である。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0087】
<(F)有機溶剤>
感光性樹脂組成物は、更に(F)有機溶剤を含有し得る。(F)成分を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(F)有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0088】
<(G)その他の添加剤>
感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(G)その他の添加剤を更に含有し得る。(G)その他の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、有機充填材、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0089】
感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A)〜(D)成分を混合し、任意成分として上記(E)〜(G)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより、樹脂ワニスとして製造することができる。
【0090】
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
本発明の感光性樹脂組成物は、(A−1)成分及び(A−2)成分を含有するので、(B)成分の含有量が多くても解像性に優れるという特性を示す。このため、通常、未露光部に樹脂等の残渣が存在しない。また、解像性に優れることから、L/S(ライン/スペース)の間には樹脂埋まりや剥離が通常存在しない。残渣がない最小開口ビア径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、70μm以下である。下限は特に限定されないが、1μm以上等とし得る。解像性の評価は、後述する<解像性の評価>に記載の方法に従って評価することができる。
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物を、光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、平均線熱膨張率が低いという特性を示す。即ち平均線熱膨張率が低い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。平均線熱膨張率は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは45ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下である。下限は特に限定されないが、10ppm以上等とし得る。平均線熱膨張率の測定は、後述する<平均線熱膨張率、ガラス転移温度の測定、及びクラック耐性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物を、光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、ガラス転移温度が高いという特性を示す。即ちガラス転移温度が高い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。ガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度の測定は、後述する<平均線熱膨張率、ガラス転移温度の測定、及びクラック耐性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物を、光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、クラック耐性に優れるという特性を示す。即ちクラック耐性に優れる絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。−65℃と150℃との間の昇温試験を500回繰り返しても、クラック及び剥離は認められない。クラック耐性の評価は、後述する<平均線熱膨張率、ガラス転移温度の測定、クラック耐性の評価>に記載の方法に従って評価することができる。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、感光性樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)として好適に使用することができる。
【0095】
[感光性フィルム]
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂ワニス状態で支持基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることで感光性樹脂組成物層を形成して、感光性フィルムとすることができる。また、予め支持体上に形成された感光性フィルムを支持基板に積層して用いることもできる。感光性フィルムは様々な支持基板に積層させることができる。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0096】
[支持体付き感光性フィルム]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き感光性フィルムの形態で好適に使用することができる。つまり、支持体付き感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂組成物層を含む。
【0097】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0098】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA−410」、「E−200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS−25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、感光性樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm〜50μmの範囲であることが好ましく、10μm〜25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0099】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS K6714で規格化されているヘーズ)が0.1〜5であるものが好ましい。さらに感光性樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0100】
支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、感光性樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm〜40μmの範囲であることが好ましく、5μm〜30μmの範囲であることがより好ましく、10μm〜30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0101】
本発明の支持体付き感光性フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で感光性樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより支持体付き感光性フィルムを製造することができる。具体的な乾燥条件は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80℃〜120℃で3分間〜13分間で乾燥させることができる。感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、感光性樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。感光性樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、5μm〜500μmの範囲とすることが好ましく、10μm〜200μmの範囲とするのがより好ましく、15μm〜150μmの範囲とするのが更に好ましく、20μm〜100μmの範囲とするのが更に一層好ましく、20μm〜60μmの範囲とするのが殊更好ましい。
【0102】
感光性樹脂組成物の塗布方式としては、たとえば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0103】
本発明の支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層は、タック性に優れるという特性を示す。感光性樹脂組成物層の表面を指で強く押さえつけても、わずかに指紋跡が残る程度であることが好ましく、指紋跡がないことがより好ましい。タック性は、後述する<フィルム外観とタック性の評価>の記載に従って測定することができる。
【0104】
本発明の支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層は、柔軟性に優れるという特性を示す。感光性樹脂組成物層をカッターナイフで切り出しても、感光性樹脂組成物の飛散やクラックが見受けられないことが好ましく、また、感光性樹脂組成物層を180°折り曲げても、感光性樹脂組成物の飛散やクラックが見受けられないことが好ましい。柔軟性は、後述する<柔軟性の評価>の記載に従って測定することができる。
【0105】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、ソルダーレジストとして使用することが好ましい。
【0106】
詳細には、本発明のプリント配線板は、上述の感光性フィルム、又は支持体付き感光性フィルムを用いて製造することができる。以下、絶縁層がソルダーレジストである場合について説明する。
【0107】
<塗布及び乾燥工程>
感光性樹脂組成物を樹脂ワニス状態で直接的に回路基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより、回路基板上に感光性フィルムを形成する。
【0108】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0109】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃〜120℃で3分間〜13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0110】
<ラミネート工程>
また、支持体付き感光性フィルムを用いる場合には、感光性樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、支持体付き感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて支持体付き感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、感光性樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。支持体付き感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0111】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃〜140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm〜11kgf/cm(9.8×10N/m〜107.9×10N/m)、圧着時間を好ましくは5秒間〜300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0112】
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性フィルムが設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2〜1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0113】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、解像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
【0114】
<現像工程>
露光工程後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0115】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0116】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液に添加することができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8〜12の範囲であることが好ましく、9〜11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%〜10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃〜50℃とすることが好ましい。
【0117】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0118】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%〜90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0119】
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa〜0.3MPaが好ましい。
【0120】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm〜10J/cm程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分間〜180分間の範囲、より好ましくは160℃〜200℃で30分間〜120分間の範囲で選択される。
【0121】
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0122】
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0123】
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0124】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0125】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0126】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃〜80℃に加熱した膨潤液に5分間〜10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間〜30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド−ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃〜50℃の中和液に3分間〜10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0127】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0128】
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
【0129】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0130】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0131】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0132】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0133】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0135】
((A)成分の主鎖のガラス転移温度の測定)
各(A)成分の主鎖のガラス転移温度は、以下に示したFOXの式により算出した。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wm/Tgm)
W1+W2+・・・+Wm=1
Wmは(A)成分を構成する各モノマーの含有量(質量%)を表し、Tgmは、(A)成分を構成する各モノマーのガラス転移温度(K)を表す。
【0136】
((A)成分の重量平均分子量(Mw)の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量を(A)成分の重量平均分子量とした。
【0137】
(合成例1:(A−1)成分の合成)
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、メチルイソブチルケトン350g、グリシジルメタクリレート71g、1−アダマンチルメタクリレート188gおよびアゾビスイソブチロニトリル16gを加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間加熱した。次に、得られた反応溶液に、アクリル酸36g、メトキノン4mgおよびトリフェニルホスフィン4mgを加え、空気を吹き込みながら100℃で24時間加熱した。得られた反応混合物に、テトラヒドロフタル酸無水物48gを加え、70℃で10時間加熱し、溶剤を加えてポリマー溶液を得た(ポリマーの主鎖の理論Tg値は172℃、固形分含量:25質量%、Mw:20000、酸価:52mgKOH/g)。
【0138】
(合成例2:(A−2)成分の合成)
合成例1において、1−アダマンチルメタクリレート188gをブチルアクリレート136gに変えた。以上の事項以外は合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た(ポリマーの主鎖の理論Tg値は−28℃、固形分含量:45質量%、Mw:18000、酸価:52mgKOH/g)。
【0139】
(合成例3)
合成例1において、アゾビスイソブチロニトリルの量を16gから42gに変えた。以上の事項以外は合成例2と同様にしてポリマー溶液を得た(ポリマーの主骨格の理論Tg値は172℃、固形分含量:25質量%、Mw:40000、酸価:52mgKOH/g)。
【0140】
(合成例4)
合成例1において、1−アダマンチルメタクリレート188gを、1−アダマンチルメタクリレート55g及びメチルメタクリレート25gに変え、アゾビスイソブチロニトリルの量を16gから8gに変えた。以上の事項以外は合成例2と同様にしてポリマー溶液を得た(ポリマーの主骨格の理論Tg値は111℃、固形分含量:25質量%、Mw:25000、酸価:75mgKOH/g)。
【0141】
(合成例5:(A−3)成分の合成)
エポキシ当量が162の1,1’−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン(「EXA−4700」、大日本インキ化学工業社製)162部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価が90mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%)を得た。
【0142】
<実施例1〜7、比較例1〜5>
下記表に示す配合割合で各成分を配合し、高速回転ミキサーを用いて樹脂ワニスを調整した。次に、支持体としてアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製、「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。調整した樹脂ワニスをかかる離型PETに乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが40μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で5分間乾燥することにより、離型PET上に感光性樹脂組成物層を有する支持体付き感光性フィルムを得た。
【0143】
物性評価における測定方法及び評価方法について説明する。
【0144】
<フィルム外観とタック性の評価>
実施例及び比較例で作製した支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層の外観を目視で評価した。また、25℃の恒温室内で支持体付き感光性フィルムのタック性をプローブタックテスター(TE−6002)にて評価した。測定条件は直径5mmのプローブ、荷重1kgf/cm、接触時間10秒、剥離速度0.1mm/secとし、以下のように評価した。
○:フィルムの外観が良好でかつ、プローブに跡が残らない。
△:フィルムの外観は良好だが、プローブに僅かに跡が残る。
×:フィルムにハジキやムラがあるか、プローブに樹脂が残り、フィルムが破れる。
【0145】
<柔軟性の評価>
実施例及び比較例で作製した支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を三か所においてカッターナイフで切り出した時の樹脂の飛散とクラックの発生を目視で評価した。さらに、三か所において180°折り曲げをした際のクラックの発生状況を目視で確認した。
〇:三か所において、感光性樹脂組成物の飛散やクラックが全く見受けられない。
△:三か所の内、いずれかの箇所で感光性樹脂組成物の飛散、クラックのいずれかが見受けられる。
×:三か所のいずれにおいても、感光性樹脂組成物の飛散もしくはクラックが見受けられる。
【0146】
<解像性の評価>
(評価用積層体の形成)
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次に実施例、比較例により得られた支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記感光性樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用いパターン形成装置を用いて、紫外線で露光を行った。露光パターンは開口:50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの丸穴、L/S(ライン/スペース):50μm/50μm、60μm/60μm、70μm/70μm、80μm/80μm、90μm/90μm、100μm/100μmのラインアンドスペース、1cm×2cmの四角形を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cmの紫外線照射を行い、さらに180℃、30分間の加熱処理を行い、開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体とした。
【0147】
(解像性の評価)
評価用積層体の1cm×2cmの部分の未露光部を目視で観察した。かかる未露光部に樹脂が残っていない場合は〇とし、樹脂が目視で確認できる場合は×とした。次に、形成したビアとL/SをSEMで観察(倍率1000倍)し、残渣が無い最小開口ビア径を測定した。また、任意の三点のL/Sの形状については下記の基準で評価した。
○:三点のL/Sの間に樹脂埋まりや剥離がない。
×:三点のL/Sの間に樹脂埋まりや剥離が見られる。
【0148】
<平均線熱膨張率、ガラス転移温度の測定、クラック耐性の評価>
(評価用硬化物の形成)
実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層に100mJ/cmの紫外線で露光を行い光硬化させた。その後、感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を行い、硬化物を形成した。その後、支持体を剥がし取って、評価用硬化物とした。
【0149】
(平均線熱膨張率の測定)
評価用硬化物を幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置(リガク社製、Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出した。
【0150】
(ガラス転移温度の測定)
評価用硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(EXSTAR6000、SIIナノテクノロジー社製)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて測定した。得られたtanδのピークトップをガラス転移温度(℃)として算出した。
【0151】
(クラック耐性の評価)
得られた評価用積層体を、−65℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、150℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルによる処理を500回繰り返す試験を行った。試験後、評価用基板のクラック及び剥離程度を光学顕微鏡(ニコン社製、「ECLIPSE LV100ND」)により観察し、次の基準で評価した。
○:クラック及び剥離が認められない。
×:クラック及び剥離が認められる。
【0152】
【表1】
【0153】
表中の略語等は以下のとおりである。
(A)成分
・合成例1:合成例1で合成した(A−1)成分
・合成例2:合成例2で合成した(A−2)成分
・合成例3:合成例3で合成した成分
・合成例4:合成例4で合成した成分
・合成例5:合成例5で合成した(A−3)成分
・ZFR−1491H:ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、固形分濃度約70%)
・ZAR−2000:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、固形分濃度約70%)
(B)成分
・SC2050:溶融シリカ(アドマテックス社製、平均粒径0.5μm)100質量部に対して、アミノシラン(信越化学社製、「KBM573」)0.5質量部で表面処理したもの
(C)成分
・IrgacureOXE−02:1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−、2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF製)
(D)成分
・NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量約272)
・1031S:テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、エポキシ当量約200)
(E)成分
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、アクリル当量約96)
(F)成分
・EDGAc:エチルジグリコールアセテート
・MEK:メチルエチルケトン
(A1):樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A−1)成分の含有量(質量%)
(A2):樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A−2)成分の含有量
(A3):樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A−3)成分の含有量
(B)成分の含有量:感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合の(B)成分の含有量
【0154】
上記表の結果から、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例ではフィルムの外観、柔軟性、解像性、及びクラック耐性を有し、平均線熱膨張率が低く、ガラス転移温度が高いことがわかった。
【0155】
一方、(A−1)成分を含有しない比較例1、比較例2は、柔軟性、解像性及びクラック耐性のいずれかが悪く、また、平均線熱膨張率が高く、ガラス転移温度が低く、感光性樹脂組成物として使用できるものではなかった。(A−2)成分を含有しない比較例3は、タック性、解像性が悪く、感光性樹脂組成物として使用できるものではなかった。また、(A−1)成分及び(A−2)成分を含有しない比較例4、比較例5は、フィルムの外観、解像性及びクラック耐性のいずれかが悪く、感光性樹脂組成物として使用できるものではなかった。なお、比較例1、比較例3、比較例5は、未露光部の残渣が多く、最小ビア径及びL/Sの剥離を測定することができなかった。
【0156】
各実施例において、(E)〜(F)成分等を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。