特許第6658701号(P6658701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658701
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】磁気アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20200220BHJP
   H01F 7/08 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   H02K33/16 B
   H01F7/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-168214(P2017-168214)
(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公開番号】特開2019-47619(P2019-47619A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英滋
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥宏
【審査官】 大島 等志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−135110(JP,A)
【文献】 特開昭54−034013(JP,A)
【文献】 特開2013−258793(JP,A)
【文献】 特開2014−093833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
H02K 51/00
H01F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻き回される巻胴部と、前記巻胴部の中心軸方向両端に設けられ前記巻胴部よりも拡径された一対のフランジを有するボビンと、
前記ボビンの径方向外側に離間して設けられ、円環形状の第一ヨークと、前記第一ヨークの内周面に設けられ周方向に沿って磁極が反転された複数の永久磁石と、を有する磁石ロータと、
前記ボビンの前記一対のフランジの少なくとも一方と前記磁石ロータとの間に、両者とは離間して設けられ、円環形状の第二ヨークと、前記第二ヨークの外周面に突設された突極とを有する、突極ロータと、
を備え、
前記磁石ロータの内周面及び前記突極ロータの外周面には、前記突極と前記永久磁石の中心位置が径方向に沿って整列する正対配置を防ぐ角度リミッタ機構が設けられる、磁気アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気アクチュエータであって、
前記角度リミッタ機構は、
前記突極ロータの外周面に設けられ相対的に縮径された溝部と、
前記磁石ロータの内周面から前記溝部内まで突設されるプレートと、
を備える、磁気アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気アクチュエータであって、
前記溝部及び前記プレートは周方向に沿って複数設けられ、
隣接する一対の前記溝部の間に一つの前記突極が設けられ、
隣接する一対の前記プレートの間に一対の前記永久磁石が設けられる、
磁気アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気アクチュエータであって、
前記溝部の周方向に沿った溝幅は、前記一対の永久磁石の周方向に沿った中心位置間のピッチ未満である、磁気アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部材の相対位置を変更可能な、磁気アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁石を用いて二部材の相対位置を変更可能な、磁気アクチュエータが知られている。例えば特許文献1には、自己保持型ロータリーソレノイドが開示されている。このソレノイドのロータには永久磁石が設けられる。例えば周回りに磁極が反転するように複数の永久磁石が設けられる。ロータと対向するステータには磁性体の突極とこれに巻き回されるコイルが設けられる。コイルに通電することで磁性体が磁化して、ロータ上のいずれかの永久磁石と引き合う。その後、コイルの通電を切っても、磁性体の突極と永久磁石とが引き合い、相対位置が保持される。さらに通電方向を逆にすると、突極はそれまで引き合っていた永久磁石とは他の磁極の永久磁石に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−17160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁極が反転するようにして複数の永久磁石を設けた場合、突曲の移動制御が困難になるおそれがある。図16に示す磁気アクチュエータは、ステータ100(外周リング)の内周面に、周方向に沿って磁極が反転するようにして複数の永久磁石102A〜102Eが設けられる。また、これに対向して、ロータ104(内周リング)の外周面に突極106が設けられる。
【0005】
例えば突極106の、ステータ100との対向極をN極に磁化してステータ100のS極102Cと対向させる。さらにこの後、コイル(図示せず)の通電方向を反転させて突極106の、ステータ100との対向極をS極に反転した場合、突極106は、S極102Cに隣接するN極に移動する。このとき、S極102Cと突極106とが正対する、つまり両者の中心軸が径方向に沿って整列している場合に、突極106は隣接するN極102B,102Dのどちらにも移動する可能性があり、そのため突極106の移動制御が困難になるおそれがある。そこで本発明は、従来よりも励磁対象である突極の移動制御を高精度に行うことの可能な、磁気アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は磁気アクチュエータに関する。当該アクチュエータは、ボビン、磁石ロータ、及び突極ロータを備える。ボビンは、コイルが巻き回される巻胴部と、巻胴部の中心軸方向両端に設けられ巻胴部よりも拡径された一対のフランジを有する。磁石ロータは、ボビンの径方向外側に離間して設けられ、円環形状の第一ヨークと、第一ヨークの内周面に設けられ周方向に沿って磁極が反転された複数の永久磁石と、を有する。突極ロータは、ボビンの一対のフランジの少なくとも一方と磁石ロータとの間に、両者とは離間して設けられ、円環形状の第二ヨークと、第二ヨークの外周面に突設された突極とを有する。磁石ロータの内周面及び突極ロータの外周面には、突極と永久磁石の中心位置が径方向に沿って整列する正対配置を防ぐ角度リミッタ機構が設けられる。
【0007】
また上記発明において、角度リミッタ機構は、突極ロータの外周面に設けられ相対的に縮径された溝部と、磁石ロータの内周面から溝部内まで突設されるプレートと、を備えてもよい。
【0008】
また上記発明において、溝部及びプレートは周方向に沿って複数設けられ、隣接する一対の溝部の間に一つの突極が設けられ、隣接する一対のプレートの間に一対の永久磁石が設けられてもよい。
【0009】
また上記発明において、溝部の周方向に沿った溝幅は、一対の永久磁石の周方向に沿った中心位置間のピッチ未満であってよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも励磁対象である突極の移動制御を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る磁気アクチュエータを例示する一部断面斜視図である。
図2】本実施形態に係る磁気アクチュエータの一部を例示する側面図である。
図3】本実施形態に係る磁気アクチュエータをクラッチ機構に搭載したときの図(解放時)である。
図4】本実施形態に係る磁気アクチュエータをクラッチ機構に搭載したときの図(係合時)である。
図5】コイル通電(負通電)時の突極ロータの磁極を説明する図である。
図6】コイル通電(正通電)時の突極ロータの磁極を説明する図である。
図7】角度リミッタ機構により突極ロータの反時計回りの移動が止められたときの様子を例示する図である。
図8】角度リミッタ機構により突極ロータの時計回りの移動が止められたときの様子を例示する図である。
図9】コイル正通電時初期における磁気アクチュエータの挙動を説明する図である。
図10】コイル正通電時終期における磁気アクチュエータの挙動を説明する図である。
図11】コイル無通電時における磁気アクチュエータの挙動を説明する図である。
図12】コイル負通電時初期における磁気アクチュエータの挙動を説明する図である。
図13】コイル負通電時終期における磁気アクチュエータの挙動を説明する図である。
図14】本実施形態に係る磁気アクチュエータの、無通電、正通電、負通電時におけるトルク及び相対角度変化を示すグラフである。
図15】本実施形態に係る磁気アクチュエータの、無通電時における磁束の流れを説明する図である。
図16】従来技術に係る磁気アクチュエータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本実施形態に係る磁気アクチュエータ10の斜視断面図を例示する。図2には磁気アクチュエータ10の一部側面図が例示される。なお、図1図13図15には互いに直交する3軸が示されている。これらの3軸のうち、X軸は磁気アクチュエータ10の中心軸に平行な軸とする。またY軸及びZ軸はともにX軸に直交する。X軸が磁気アクチュエータの中心軸と一致する場合、Y軸及びZ軸は径方向に延伸する。
【0013】
磁気アクチュエータ10は、ボビン12、磁石ロータ14、突極ロータ16、及び制御部18を備える。後述するように、磁気アクチュエータ10は、磁石ロータ14及び突極ロータ16の相対位置(相対角度)を変更可能となっている。なお図1図15では、ボビン12に対して突極ロータ16及び磁石ロータ14を離間状態に維持しつつ、また突極ロータ16と磁石ロータ14とを離間状態に維持しつつ、ボビン12に対してこれらのロータを回転可能とする軸受等の機構の図示を省略している。
【0014】
ボビン12は、コイル20が巻き回される円環形状の巻胴部22と、その中心軸方向両端に設けられた円環形状の一対のフランジ24A,24Bを備える。ボビン12はコイル20の通電によって生じる磁束の通るヨークとしても機能を備えるため、例えば低炭素鋼や珪素鋼板等の高透磁性材料から構成される。また、ボビン12は図示しないケース等の固定部材によって固定される。
【0015】
一対のフランジ24A,24Bは巻胴部22より拡径される。ここで、図1に例示されているように、一対のフランジ24Bは他方のフランジ24Aよりも拡径幅が大きく取られている。例えばフランジ24Bの径方向幅は、フランジ24Aの径方向幅と突極ロータ16の第二ヨーク26の径方向幅の和と略等しくなるように構成される。
【0016】
コイル20はボビン12の巻胴部22に巻き回される。例えばコイル20は図5に例示されるように、複数の素線からなる撚線から構成される。さらにコイル20からボビン12を経由して磁気アクチュエータ10の外部に配線が引き出され、制御部18に接続される。
【0017】
磁石ロータ14は、ボビン12の径方向外側に、ボビン12とは離間して設けられる。磁石ロータ14は、円環形状の第一ヨーク28、複数の永久磁石30、及びプレート32(ストッパプレート)を備える。
【0018】
第一ヨーク28は円環形状の部材であって、コイル20の通電に伴って発生する磁束の経路(磁路)としての機能を備える。第一ヨーク28は例えば低炭素鋼や珪素鋼板等の高透磁性材料から構成される。
【0019】
第一ヨーク28の内周面には永久磁石30及びプレート32が設けられる。図2に示すように、永久磁石30は周方向に沿って磁極が反転するように、第一ヨーク28の内周面に設けられる。
【0020】
なお図2以降では、これらの永久磁石30N1,30S1,30N2,30S2に、突極ロータ16の外周面と対向する磁極を表記している。以下では適宜、この突極ロータ16の外周面と対向する磁極を、単に永久磁石30の対向磁極と記載する。例えば永久磁石30S1,30S2の対向磁極はS極となり、永久磁石30N1,30N2の対向磁極はN極となる。
【0021】
プレート32は、複数の永久磁石30の間に設けられる。プレート32は磁石ロータ14の内周面から径方向内側に突設される。さらにプレート32は、突極ロータ16の溝部34の内部まで入り込むように突設されてよい。このような構成を可能とするために、プレート32の突設長さL1は、突極ロータ16の突極36の径方向長さL2及び磁石ロータ14と突極ロータ16とのギャップ幅L3を超過するものであってよい(L1 > L2+L3)。後述するように、プレート32と溝部34とが、突極ロータ16の突極36と磁石ロータ14の永久磁石30との正対配置を防ぐ角度リミッタ機構として機能する。
【0022】
プレート32は磁石ロータ14の内周面に、周方向に沿って複数設けられる。ここで、隣接する一対のプレート32,32の間に、一対の永久磁石30N,30Sが設けられていてよい。このように、互いに反転磁極である一対の永久磁石30N,30Sをプレート32で区切ることで、磁石ロータ14及び突極ロータ16の相対移動制御を確実に行うことができる。
【0023】
突極ロータ16は、ボビン12と磁石ロータ14の間に設けられた略円環形状の部材である。より詳細には、ボビン12のフランジ24Aと磁石ロータ14との間に、両者とは離間して突極ロータ16が設けられる。
【0024】
突極ロータ16は、第二ヨーク26、突極36、及び溝部34を備える。第二ヨーク26は、コイル20の通電に伴って発生する磁束の経路(磁路)としての機能を備える円環形状の部材である。第二ヨーク26は例えば低炭素鋼や珪素鋼板等の高透磁性材料から構成される。また、第二ヨーク26を突極36と一体成形するときには、例えば鉄やフェライトなどの強磁性体材料からこれらを構成してもよい。
【0025】
突極36は第二ヨーク26の外周面に、周方向に沿って複数形成される。突極36は第二ヨーク26の外周面から径方向外側に突設される。後述するように、突極36はコイル20の通電が遮断されているときにも永久磁石30N,30Sの一方と引き合う。突極36は例えば鉄やフェライト等の強磁性体から構成される。
【0026】
また、突極36の周方向幅W1は、一対の永久磁石30N,30Sを跨がないような幅であることが好適である。例えば突極36の幅W1は、一対の永久磁石30N,30Sの一端から他端までの幅W2未満となるように突極36が形成される。
【0027】
溝部34は突極ロータ16の外周面に設けられ、当該外周面に対して相対的に縮径される。溝部34は周方向に沿って複数形成される。また上述したように、溝部34内に磁石ロータ14のプレート32が入り込むように、溝部34とプレート32とが位置合わせされる。
【0028】
溝部34の周方向に沿った溝幅P2は、一対の永久磁石30N,30Sの周方向に沿った中心位置間のピッチP1未満となるように、溝部34が形成される。加えて隣接する一対の溝部34,34の中間に、一つの突極36が設けられてよい。このようにすることで、突極36と永久磁石30Nまたは永久磁石30Sとの正対を防止可能となる。
【0029】
なお上述したように、突極36と永久磁石30との正対とは、両者の周方向中心位置同士が、径方向に沿って整列する配置を示す。
【0030】
磁石ロータ14及び突極ロータ16は、図示しない軸受等の支持機構によって、固定部材であるボビン12に対して回転可能となっている。また磁石ロータ14及び突極ロータ16は、角度リミッタ機構であるプレート32及び溝部34の許容範囲内にて相対回転可能となっている。
【0031】
このような機構を備えた磁気アクチュエータ10は、例えば図3図4に例示するようなクラッチ機構に応用可能である。例えば磁石ロータ14の径方向外側に磁石ロータ14とは離間させて外周リング37を設ける。さらに磁石ロータ14の第一ヨーク28の外周面に切り欠きを設ける。切り欠きは周方向に沿う斜面となっている。このような構造に伴い、切り欠き周辺は時計回りに進むにつれて幅が狭くなるギャップ39が形成される。
【0032】
このギャップ39内にローラ38が設けられる。ローラ38はアーム40により突極ロータ16に連結される。ローラ38を径方向に移動可能とするために、アーム40に軸方向に切られたスリットを設けるとともに、このスリットにローラ38の回転支持シャフトを挿入させてローラ38を保持してもよい。
【0033】
例えば磁石ロータ14及び突極ロータ16が反時計回りに回転(同期回転)しているときに、後述する磁極反転により突極ロータ16を磁石ロータ14に対して遅れ位相側に(時計回りに)変位させる。これに伴って、図4に示すように、ローラ38が外周リング37と噛み合う(係合する)。その結果、外周リング37は磁石ロータ14及び突極ロータ16と同期回転する。
【0034】
図1に戻り、制御部18は、コイル20に流す電流を制御することで、磁石ロータ14と突極ロータ16の相対位置(相対角度)を制御する。制御部18は例えばコンピュータから構成されてよく、CPU、記憶部、機器・センサインターフェースが内部バスを介して互いに接続されている。例えば外部からの係合/解放指示に従い、制御部18はコイル20の通電有無(無通電可否)及びその通電方向(正通電/負通電)を決定する。
【0035】
図5図6には、図1にて示した磁気アクチュエータ10の断面平面における、磁束の流れについて説明する。図5に例示するように、コイル20に時計回りに電流が通電されたとき、図の矢印で示すような磁束がボビン12、突極ロータ16、及び磁石ロータ14を通過する。磁束の通過に伴い、突極ロータ16は外周側がN極となり、内周側がS極となる。
【0036】
図6には通電方向を逆転させたときの磁束が例示されている。このとき、図の矢印で示すような磁束がボビン12、磁石ロータ14、及び突極ロータ16を通過する。磁束の通過に伴い、突極ロータ16は外周側がS極となり、内周側がN極となる。
【0037】
図7には、突極36の対向磁極がN極であるときの磁石ロータ14及び突極ロータ16の挙動が例示されている。このとき、突極36は対向磁極がN極である永久磁石30N2から離間するとともに対向磁極がS極である永久磁石30S1と引き合う。これに伴って突極ロータ16が磁石ロータ14に対して反時計回りに移動する。
【0038】
このとき、上述した構成、すなわち、溝部34の溝幅P2を一対の永久磁石30N,30Sの中心位置間のピッチP1未満とし、隣接する溝部34,34の中間に突極36が設けるとの構成を採ることで、突極36が永久磁石30S1と正対する前に、永久磁石30S1の中心線C1及び突極36の中心線C2にて示すように、溝部34の側壁面がプレート32に当接してこれ以上の移動を防止する。
【0039】
このように、突極36が永久磁石30N2寄りにオフセットされていることから、突極36の対向磁極をN極からS極に反転させた際には、永久磁石30N2に専ら引き寄せられる。
【0040】
図8には、突極36の対向磁極がS極であるときの磁石ロータ14及び突極ロータ16の挙動が例示されている。このとき、突極36は対向磁極がS極である永久磁石30S1から離間するとともに対向磁極がN極である永久磁石30N2と引き合う。これに伴って突極ロータ16が磁石ロータ14に対して時計回りに移動する。
【0041】
このとき、図7と同様にして、永久磁石30N2の中心線C1及び突極36の中心線C2にて示すように、突極36が永久磁石30N2と正対する前に、溝部34の側壁面がプレート32に当接してこれ以上の移動を防止する。このように、突極36が永久磁石30S1寄りにオフセットされていることから、突極36の対向磁極をS極からN極に反転させた際には、永久磁石30S1に専ら引き寄せられる。
【0042】
図2図9図14を用いて、本実施形態に係る磁気アクチュエータ10の動作を説明する。図2図9図13には磁気アクチュエータ10の各動作が例示され、図14には各動作に伴うトルク及び磁石ロータ14と突極ロータ16との相対角度が示される。なお図14のグラフでは、横軸に相対角度を取り、縦軸にトルクを取る。また反時計回りのトルクを正に取り、時計回りの角度変化を正に取る。
【0043】
また、図14のグラフにはコイル20に電流が流れていない無通電時の特性曲線、図6の通電状態(正通電)の特性曲線、及び図5の通電状態(負通電)の特性曲線が例示されている。
【0044】
図2及び図14を参照して、永久磁石30S1寄りに突極36が配置されているとき、かつ、無通電時には、永久磁石30S1と突極36とが引き合い、トルクとしては突極ロータ16が(永久磁石30S1に)反時計回りの方向に付勢される。この付勢がプレート32によって留められている。この状態で磁石ロータ14及び突極ロータ16は同期回転可能となる。
【0045】
次に図9及び図14を参照して、コイル20に正通電を行うと、突極36の対向磁極がS極となる。これに伴って突極36は永久磁石30S1から離間し、永久磁石30N2に引き寄せられる。図14には負方向の(時計回りの)トルクが突極ロータ16に掛かり、磁石ロータ14に対して突極ロータ16が時計回りに進む様子が例示されている。
【0046】
図10には、正通電時のいわば終点を示すものであり、溝部34の側壁がプレート32と当接して、突極ロータ16の、磁石ロータ14に対するこれ以上の時計回りの進みが止められたときの様子が示されている。
【0047】
次に図11及び図14を参照して、永久磁石30N2寄りに突極36が配置されているとき、かつ、無通電時には、永久磁石30N2と突極36とが引き合い、トルクとしては突極ロータ16が時計回りの方向に付勢される。この付勢がプレート32によって留められている。この状態で磁石ロータ14及び突極ロータ16は同期回転可能となる。
【0048】
図12及び図14を参照して、コイル20に負通電を行うと、突極36の対向磁極がN極となる。これに伴って突極36は永久磁石30N2から離間し、永久磁石30S1に引き寄せられる。図14には正方向の(反時計回りの)トルクが突極ロータ16に掛かり、磁石ロータ14に対して突極ロータ16が反時計回りに進む様子が例示されている。
【0049】
図13には、負通電時のいわば終点を示すものであり、溝部34の側壁がプレート32と当接して、突極ロータ16の、磁石ロータ14に対するこれ以上の反時計回りの進みが止められたときの様子が示されている。この後、コイル20への通電が遮断され、図2に戻る。
【0050】
なお本実施形態に係る磁気アクチュエータ10では、通電時には磁束がボビン12を通過するのに対して、無通電時にはボビン12を介さずに、磁石ロータ14及び突極ロータ16との間で磁束が収束する(ループを形成する)ことが明らかとなった。図15は、シミュレーションの結果であり、無通電時における磁束の流れを矢印で示したものである。この図に示されているように、永久磁石30S,30Nによる磁束は突極ロータ16を通過するものの、ボビン12までには至らずに磁石ロータ14に戻る。つまり回転体(磁石ロータ14及び突極ロータ16)と固定体(ボビン12)とに跨って磁束が通過しない構造となっている。
【0051】
回転体と固定体との間に磁束が通過する場合、回転体と固定体とのギャップ変化に応じて磁束が変化して、渦電流が発生する。この渦電流が回転体の引き摺り損失に繋がるおそれがある。本実施形態に係る磁気アクチュエータ10では、回転体と固定体とに亘って磁束が通過しないような構成となっているため、上記のような引き摺り損失の発生を抑制可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 磁気アクチュエータ、12 ボビン、14 磁石ロータ、16 突極ロータ、18 制御部、20 コイル、22 巻胴部、24A,24B フランジ、26 第二ヨーク、28 第一ヨーク、30 永久磁石、32 プレート、34 溝部、36 突極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16