特許第6658705号(P6658705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658705
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20200220BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20200220BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20200220BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   H01Q23/00
   H01Q21/06
   H01Q21/24
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-179890(P2017-179890)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-57775(P2019-57775A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】原 康之
(72)【発明者】
【氏名】外間 尚記
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−303640(JP,A)
【文献】 特開昭59−169203(JP,A)
【文献】 特開2013−016949(JP,A)
【文献】 実開平05−021514(JP,U)
【文献】 特開2002−261503(JP,A)
【文献】 米国特許第09130278(US,B1)
【文献】 特開2004−342949(JP,A)
【文献】 特開平06−232627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H01P 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射導体を有するアンテナ層と、
第1のスロットを有する第1のグランドパターンと、
前記第1のグランドパターンを介して前記アンテナ層に積層され、前記第1のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合する第1のフィードパターンを有するフィード層と、
前記第1のフィードパターン又は前記放射導体と電磁界結合する第1のカプラパターンと、
前記アンテナ層及び前記フィード層に積層され、フィルタ回路を有する回路層と、
前記回路層と前記フィード層との間に設けられた第2のグランドパターンと、を備え、
前記第2のグランドパターンは、前記第1のスロットと重なる第2のスロットを有し、
前記第1のカプラパターンは前記回路層に設けられ、前記第2のスロットを介して前記第1のフィードパターンと電磁界結合することを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項2】
前記第1のグランドパターンは、第3のスロットをさらに有し、
前記第1のカプラパターンは、前記第3のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合することを特徴とする請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
放射導体を有するアンテナ層と、
第1のスロットを有する第1のグランドパターンと、
前記第1のグランドパターンを介して前記アンテナ層に積層され、前記第1のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合する第1のフィードパターンを有するフィード層と、
前記第1のフィードパターン又は前記放射導体と電磁界結合する第1のカプラパターンと、を備え、
前記第1のグランドパターンは、第3のスロットをさらに有し、
前記第1のカプラパターンは、前記第3のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合することを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1のスロットは前記積層方向から見て前記放射導体の第1の辺と重なり、
前記第3のスロットは前記積層方向から見て前記放射導体の前記第1の辺と対向する第2の辺と重なることを特徴とする請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記アンテナ層及び前記フィード層に積層され、フィルタ回路を有する回路層と、
前記回路層と前記フィード層との間に設けられた第2のグランドパターンと、をさらに備え、
前記第2のグランドパターンは、前記第3のスロットと重なる第4のスロットを有し、
前記第1のカプラパターンは前記回路層に設けられ、前記第3及び第4のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合することを特徴とする請求項4に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記第1及び第2のグランドパターンは、前記積層方向から見て少なくとも一部が互いに重なる第5及び第6のスロットと、前記積層方向から見て少なくとも一部が互いに重なる第7及び第8のスロットとをそれぞれ有し、
前記第5及び第6のスロットは前記積層方向から見て前記放射導体の前記第1及び第2の辺と隣接する第3の辺と重なり、
前記第7及び第8のスロットは前記積層方向から見て前記放射導体の前記第3の辺と対向する第4の辺と重なり、
前記フィード層は、前記第5のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合する第2のフィードパターンをさらに有し、
前記回路層は、前記第7及び第8のスロットを介して前記放射導体と電磁界結合する第2のカプラパターンをさらに有することを特徴とする請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記回路層は、前記フィルタ回路を構成する素子が配置された複数の回路ブロック領域と、前記積層方向から見て前記複数の回路ブロック領域間に位置するクリアランス領域とを含み、
前記第1のスロットは、前記積層方向から見て前記クリアランス領域と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項、5又は6に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記アンテナ層は、積層方向から見て前記放射導体と重なる別の放射導体をさらに有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記放射導体がアレイ状に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナモジュールに関し、特に、アンテナ信号の電力を検出するためのカプラパターンを有するアンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
放射導体を含むアンテナ層とフィルタ回路を含む回路層が一体化されたアンテナモジュールとしては、特許文献1に記載されたアンテナモジュールが知られている。特許文献1に記載されたアンテナモジュールは、アンテナ層と回路層を積層するとともに、両者間にグランドパターンを介在させることによって、アンテナ層と回路層の相互干渉を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−040597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナモジュールにおいては、放射導体から出力されるアンテナ信号の電力を検出することが困難であった。
【0005】
したがって、本発明は、アンテナ信号の電力を検出するためのカプラパターンを有するアンテナモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるアンテナモジュールは、放射導体を有するアンテナ層と、第1のスロットを有する第1のグランドパターンと、第1のグランドパターンを介してアンテナ層に積層され、第1のスロットを介して放射導体と電磁界結合する第1のフィードパターンを有するフィード層と、第1のフィードパターン又は放射導体と電磁界結合する第1のカプラパターンとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1のフィードパターンと放射導体が第1のスロットを介して電磁界結合することから、アンテナ層に給電ラインなどを設ける必要がない。これにより、アンテナ層の構成をシンプルにすることができる。また、第1のフィードパターン又は放射導体と電磁界結合する第1のカプラパターンを備えていることから、アンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0008】
本発明によるアンテナモジュールは、アンテナ層及びフィード層に積層され、フィルタ回路を有する回路層と、回路層とフィード層との間に設けられた第2のグランドパターンとをさらに備え、第2のグランドパターンは、第1のスロットと重なる第2のスロットを有し、第1のカプラパターンは回路層に設けられ、第2のスロットを介して第1のフィードパターンと電磁界結合するものであっても構わない。これによれば、第1のフィードパターンから出力されるアンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1のグランドパターンは第3のスロットをさらに有し、第1のカプラパターンは、第3のスロットを介して放射導体と電磁界結合するものであっても構わない。これによれば、放射導体から放射されるアンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0010】
本発明において、第1のスロットは積層方向から見て放射導体の第1の辺と重なり、第3のスロットは積層方向から見て放射導体の第1の辺と対向する第2の辺と重なるものであっても構わない。これによれば、放射導体から放射されるアンテナ信号の電力をより正確に検出することが可能となる。
【0011】
本発明によるアンテナモジュールは、アンテナ層及びフィード層に積層され、フィルタ回路を有する回路層と、回路層とフィード層との間に設けられた第2のグランドパターンとをさらに備え、第2のグランドパターンは、第3のスロットと重なる第4のスロットを有し、第1のカプラパターンは回路層に設けられ、第3及び第4のスロットを介して放射導体と電磁界結合するものであっても構わない。これによれば、放射導体と第1のカプラパターンとの結合を抑えることが可能となる。
【0012】
本発明において、第1及び第2のグランドパターンは、積層方向から見て少なくとも一部が互いに重なる第5及び第6のスロットと、積層方向から見て少なくとも一部が互いに重なる第7及び第8のスロットとをそれぞれ有し、第5及び第6のスロットは積層方向から見て放射導体の第1及び第2の辺と隣接する第3の辺と重なり、第7及び第8のスロットは積層方向から見て放射導体の第3の辺と対向する第4の辺と重なり、フィード層は、第5のスロットを介して放射導体と電磁界結合する第2のフィードパターンをさらに有し、回路層は、第7及び第8のスロットを介して放射導体と電磁界結合する第2のカプラパターンをさらに有するものであっても構わない。これによれば、例えば、第1のフィードパターンを用いて放射導体に水平偏波信号を給電し、第2のフィードパターンを用いて放射導体に垂直偏波信号を給電することができる。
【0013】
本発明において、回路層は、フィルタ回路を構成する素子が配置された複数の回路ブロック領域と、積層方向から見て複数の回路ブロック領域間に位置するクリアランス領域とを含み、第1のスロットは、積層方向から見てクリアランス領域と重なる位置に設けられていても構わない。これによれば、クリアランス領域を有効活用することが可能となる。
【0014】
本発明において、アンテナ層は、積層方向から見て放射導体と重なる別の放射導体をさらに有するものであっても構わない。これによれば、より広帯域化することが可能となる。
【0015】
本発明によるアンテナモジュールは、放射導体がアレイ状に複数設けられているものであっても構わない。これによれば、いわゆるフェーズドアレイを構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、出力電力を検出するためのカプラパターンを有するアンテナモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナモジュール100の模式的な透視斜視図である。
図2図2は、アンテナモジュール100の模式的な透視平面図である。
図3図3は、図2に示すA−A線に沿った略断面図である。
図4図4は、図2に示すB−B線に沿った端面を示す略端面図である。
図5図5は、複数のアンテナモジュール100をアレイ状にレイアウトしてなるアンテナモジュール100Aの構成を説明するための略斜視図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態によるアンテナモジュール200の模式的な透視斜視図である。
図7図7は、アンテナモジュール200の模式的な透視平面図である。
図8図8は、図7に示すC−C線に沿った端面を示す略端面図である。
図9図9は、本発明の第3の実施形態によるアンテナモジュール300の模式的な透視斜視図である。
図10図10は、アンテナモジュール300の模式的な透視平面図である。
図11図11は、本発明の第4の実施形態によるアンテナモジュール400の模式的な透視斜視図である。
図12図12は、アンテナモジュール400の模式的な透視平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナモジュール100の模式的な透視斜視図である。また、図2はアンテナモジュール100の模式的な透視平面図であり、図3図2に示すA−A線に沿った略断面図であり、図4図2に示すB−B線に沿った端面を示す略端面図である。
【0020】
本実施形態によるアンテナモジュール100は、ミリ波帯を利用して無線通信を行うモジュールであり、図1図4に示すように、下層に位置する回路層10と、上層に位置するアンテナ層20と、回路層10とアンテナ層20の間に位置するフィード層30とを備えている。回路層10、アンテナ層20及びフィード層30は、いずれも誘電体層Dの内部又は表面に種々の導体パターンが形成された構成を有している。特に限定されるものではないが、誘電体層Dの材料としてはLTCCなどのセラミック材料や樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、アンテナ層20にある放射導体21とフィード層30にあるフィードパターンF1が電磁界結合するため、回路層10とアンテナ層20を互いに異なる材質で構成する事が可能である。例えば、一方をLTCCによって構成し、他方を樹脂によって構成することができる。
【0021】
回路層10は、バンドパスフィルタBPFなどのフィルタ回路が形成された層であり、回路層10の上面はグランドパターンG2で覆われ、回路層10の下面はグランドパターンG3で覆われている。グランドパターンG2とグランドパターンG3は、z方向(積層方向)に延在する多数のピラー導体11によって互いに短絡され、これによってグランド電位の安定化が図られている。また、グランドパターンG2は、後述する開口部G2aやスロットSL2などの一部を除いて、当該xy平面のほぼ全面に形成されており、これにより回路層10の上方における電磁波シールドとして機能する。また、グランドパターンG3は、外部端子12の形成位置などの一部を除いて、当該xy平面のほぼ全面に形成されており、これにより回路層10の下方における電磁波シールドとして機能する。
【0022】
回路層10は、バンドパスフィルタBPFなどのフィルタ回路を構成する素子が配置された複数の回路ブロック領域CBと、z方向から見て複数の回路ブロック領域CB間に位置するクリアランス領域CLとを含む。クリアランス領域CLは、フィルタ回路を構成する素子が配置されていない、或いは、回路ブロック領域CBよりも素子の形成密度の低い領域である。このようなクリアランス領域CLが存在する理由は、回路層10に必要な平面サイズよりもアンテナ層20に必要な平面サイズの方が大きいからである。回路ブロック領域CBの周囲は複数のピラー導体11によって囲まれており、これにより、クリアランス領域CLは回路ブロック領域CBからシールドされている。本実施形態においては、z方向から見てアンテナモジュール100の中心点を通過するよう、クリアランス領域CLが十字型にレイアウトされており、これにより対称性が確保されている。
【0023】
アンテナ層20は、放射導体21を有する層である。放射導体21は積層方向から見て(z方向から見た平面視で)アンテナモジュール100の略中央部に設けられた矩形状の導体パターンである。放射導体21は、他の導体パターンに接続されておらず、直流的にはフローティング状態である。アンテナ層20の上面は開放されている一方、下面はグランドパターンG1で覆われている。グランドパターンG1は、後述するスロットSL1などの一部を除いて、当該xy平面のほぼ全面に形成されており、これによりパッチアンテナの基準導体として機能する。また、グランドパターンG1とグランドパターンG2は、z方向(積層方向)に延在する多数のピラー導体31によって互いに短絡され、これによってグランド電位の安定化が図られている。
【0024】
フィード層30は、回路層10とアンテナ層20の間に位置する。フィード層30と回路層10の間にはグランドパターンG2が存在し、フィード層30とアンテナ層20の間にはグランドパターンG1が存在する。フィード層30には、フィードパターンF1が設けられている。フィードパターンF1は、y方向に延在する帯状の導体パターンであり、本実施形態においては、フィードパターンF1の全体が放射導体21と重なりを有している。フィードパターンF1の一端は、グランドパターンG2に設けられた開口部G2aを介して、回路層10のバンドパスフィルタBPFに接続されている。
【0025】
フィードパターンF1の先端部近傍は、z方向から見て、グランドパターンG1に設けられたスロットSL1及びグランドパターンG2に設けられたスロットSL2と重なりを有している。スロットSL1,SL2は、それぞれグランドパターンG1,G2に設けられた切り欠き部であり、本実施形態においてはx方向を長手方向とする形状を有している。スロットSL1とスロットSL2はz方向から見て互いに重なっており、放射導体21のy方向に延在する辺E1を横断するよう配置されている。
【0026】
フィードパターンF1は、スロットSL1を介して放射導体21と電磁界結合する。これにより、バンドパスフィルタBPFからフィードパターンF1に供給されたアンテナ信号は、スロットSL1を介して放射導体21に供給され、空間に放射される。このように、本実施形態においては、ピラー状の導体を用いて放射導体21に直接給電するのではなく、スロットSL1を介した電磁界結合によって給電していることから、アンテナ層20の構成が非常にシンプルとなり、製造プロセスを簡素化することができる。
【0027】
一方、フィードパターンF1から放射される電磁波は、スロットSL2を介して回路層10に放射されるが、スロットSL2と重なる位置にはクリアランス領域CLが割り当てられていることから、回路層10に含まれるフィルタ回路とフィードパターンF1が相互干渉することがない。尚、スロットSL2は、フィードパターンF1と放射導体21がスロットSL1を介して十分に電磁界結合するために必要な要素であり、スロットSL1と重なる位置にスロットSL2が存在しない場合、フィードパターンF1と放射導体21の電磁界結合が不十分となる。
【0028】
このように、本実施形態によるアンテナモジュール100は、スロットSL1を介した電磁界結合により給電されることから、アンテナ層20の構成を簡素化することができる。しかも、回路層10のうちスロットSL1,SL2と重なる位置にはクリアランス領域CLが割り当てられていることから、回路層10の利用効率を高めつつ、フィードパターンF1とフィルタ回路の相互干渉を防止することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態においては、回路ブロック領域CBが4つに分割され、クリアランス領域CLがアンテナモジュール100の中心点を通過するよう十字型にレイアウトされていることから、放射導体21の対称性を高めることも可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態によるアンテナモジュール100は、回路層10にカプラパターンC1が設けられている。カプラパターンC1は、y方向に延在する帯状の導体パターンであり、スロットSL2を介してフィードパターンF1と重なる位置に設けられている。かかる構成により、フィードパターンF1とカプラパターンC1がスロットSL2を介して電磁界結合することから、フィードパターンF1から出力されるアンテナ信号の一部がカプラパターンC1に給電される。このため、カプラパターンC1に接続された外部端子13をアンプなどに接続することによって電力をモニタすれば、フィードパターンF1から出力されるアンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0031】
このように、本実施形態によるアンテナモジュール100は、フィードパターンF1と電磁界結合するカプラパターンC1を備えていることから、フィードパターンF1から出力されるアンテナ信号の電力を検出することができる。フィードパターンF1とカプラパターンC1の結合度は、両者間のz方向における距離や、カプラパターンC1の平面サイズなどによって調整することが可能である。
【0032】
図5は、複数のアンテナモジュール100をアレイ状にレイアウトしてなるアンテナモジュール100Aの構成を説明するための略斜視図である。図5に示す例では、9個のアンテナモジュール100がxy平面にアレイ状にレイアウトされている。このように、複数のアンテナモジュール100をアレイ状にレイアウトすれば、いわゆるフェーズドアレイを構成することができる。これによれば、ビームの方向を任意に変化させることが可能となる。
【0033】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態によるアンテナモジュール200の模式的な透視斜視図である。また、図7はアンテナモジュール200の模式的な透視平面図であり、図8図7に示すC−C線に沿った端面を示す略端面図である。
【0034】
図6図8に示すように、第2の実施形態によるアンテナモジュール200は、グランドパターンG1,G2にそれぞれ別のスロットSL3,SL4が設けられているとともに、スロットSL3,SL4と重なる位置にカプラパターンC2が設けられている点において、第1の実施形態によるアンテナモジュール100と相違している。本実施形態においてはカプラパターンC1が省略されているが、第1の実施形態によるアンテナモジュール100と同様に、カプラパターンC1を設けても構わない。その他の構成は、第1の実施形態によるアンテナモジュール100と基本的に同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
スロットSL3,SL4はx方向を長手方向とする形状を有している。スロットSL3とスロットSL4はz方向から見て互いに重なっており、放射導体21のy方向に延在する辺E2を横断するよう配置されている。辺E2は、辺E1と対向する辺である。
【0036】
カプラパターンC2は、回路層10に設けられたy方向に延在する帯状の導体パターンであり、スロットSL3,SL4を介して放射導体21と重なる位置に設けられている。かかる構成により、放射導体21とカプラパターンC2がスロットSL3,SL4を介して電磁界結合することから、放射導体21の放射エネルギーの一部がカプラパターンC2に給電される。したがって、カプラパターンC2に接続された外部端子13をアンプなどに接続することによって電力をモニタすれば、放射導体21から出力されるアンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0037】
このように、本実施形態によるアンテナモジュール200は、放射導体21と電磁界結合するカプラパターンC2を備えていることから、放射導体21から出力されるアンテナ信号の電力を検出することができる。本実施形態において、カプラパターンC2をグランドパターンG1とグランドパターンG2の間、つまりフィード層30に配置しても構わないが、この場合、放射導体21とカプラパターンC2の結合が強くなりすぎ、アンテナ効率が低下する可能性がある。このため、カプラパターンC2は、フィード層30に配置するよりも回路層10に配置する方が好ましい。放射導体21とカプラパターンC2の結合度は、両者間のz方向における距離、カプラパターンC2の平面サイズ、スロットSL3,SL4のサイズなどによって調整することが可能である。
【0038】
さらに、カプラパターンC2に加えて、スロットSL3,SL4と重なるフィード層30に別のフィードパターンを設けても構わない。この場合、スロットSL1,SL2と重なるフィードパターンF1と、スロットSL3,SL4と重なる別のフィードパターンに相補の差動アンテナ信号を供給すれば、バルントランスなどを用いて差動アンテナ信号をシングルエンドのアンテナ信号に変換する必要がなくなる。
【0039】
<第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態によるアンテナモジュール300の模式的な透視斜視図である。また、図10は、アンテナモジュール300の模式的な透視平面図である。
【0040】
図9及び図10に示すように、第3の実施形態によるアンテナモジュール300は、グランドパターンG1にスロットSL5,SL7が設けられ、グランドパターンG2にスロットSL6,SL8が設けられている。さらに、スロットSL5,SL6と重なる位置に別のフィードパターンF2が設けられるとともに、スロットSL7,SL8と重なる位置に別のカプラパターンC3が設けられている。その他の構成は、第2の実施形態によるアンテナモジュール200と基本的に同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
スロットSL5〜SL8はy方向を長手方向とする形状を有している。スロットSL5とスロットSL6はz方向から見て互いに重なっており、放射導体21のx方向に延在する辺E3を横断するよう配置されている。辺E3は、辺E1及びE2と隣接する辺である。また、スロットSL7とスロットSL8はz方向から見て互いに重なっており、放射導体21のx方向に延在する辺E4を横断するよう配置されている。辺E4は、辺E3と対向し、且つ、辺1及び辺E2と隣接している。
【0042】
フィードパターンF2は、フィード層30に設けられたx方向に延在する帯状の導体パターンであり、本実施形態においては、フィードパターンF2の全体が放射導体21と重なりを有している。フィードパターンF2の一端は、グランドパターンG2に設けられた開口部G2bを介して、回路層10のバンドパスフィルタBPFに接続されている。
【0043】
フィードパターンF2の先端部近傍は、z方向から見て、グランドパターンG1に設けられたスロットSL5及びグランドパターンG2に設けられたスロットSL6と重なりを有している。
【0044】
カプラパターンC3は、回路層10に設けられたx方向に延在する帯状の導体パターンであり、z方向から見て、グランドパターンG1に設けられたスロットSL7及びグランドパターンG2に設けられたスロットSL8と重なりを有している。かかる構成により、放射導体21とカプラパターンC2がスロットSL7,SL8を介して電磁界結合することから、放射導体21の放射エネルギーの一部がカプラパターンC3に給電される。したがって、カプラパターンC3に接続された外部端子13をアンプなどに接続することによって電力をモニタすれば、放射導体21から出力されるアンテナ信号の電力を検出することが可能となる。
【0045】
このように、本実施形態によるアンテナモジュール300は、放射導体21と電磁界結合する2つのフィードパターンF1,F2を備えており、且つ、これら2つのフィードパターンF1,F2が放射導体21の互いに直交する辺E1,E3に沿って設けられていることから、2偏波アンテナとして機能する。例えば、フィードパターンF1を用いて放射導体21に水平偏波信号を給電し、フィードパターンF2を用いて放射導体21に垂直偏波信号を給電することができる。しかも、フィードパターンF1とフィードパターンF2は、給電位置が互いに90°異なるのみであり、その他の構成は互いに一致していることから、水平偏波信号と垂直偏波信号のバランスを容易に保つことができる。
【0046】
さらに、本実施形態によるアンテナモジュール300は、放射導体21と電磁界結合する2つのカプラパターンC2,C3を備えていることから、水平偏波信号及び垂直偏波信号の電力をそれぞれ検出することも可能である。さらに、フィード層30のスロットSL3,SL4と重なる位置に別のフィードパターンを設けるとともに、フィード層30のスロットSL7,SL8と重なる位置にさらに別のフィードパターンを設けることによって、水平偏波信号及び垂直偏波信号をいずれも差動形式とすることも可能である。
【0047】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態によるアンテナモジュール400の模式的な透視斜視図である。また、図12は、アンテナモジュール400の模式的な透視平面図である。
【0048】
図11及び図12に示すように、第4の実施形態によるアンテナモジュール400は、アンテナ層20に別の放射導体22が追加されている点において、第3の実施形態によるアンテナモジュール300と相違している。その他の構成は、第3の実施形態によるアンテナモジュール300と基本的に同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
放射導体22は、放射導体21と重なるよう、放射導体21の下部に設けられた矩形状の導体パターンである。放射導体22は、他の導体パターンに接続されておらず、直流的にはフローティング状態である。このように、アンテナ層20に複数の放射導体21,22を形成すれば、アンテナ帯域をより拡大することが可能となる。図11及び図12に示す例では、放射導体21よりも放射導体22のサイズが僅かに大きいが、放射導体21,22のサイズ、両者間の距離などは、要求されるアンテナ特性に応じて適宜調整すれば良い。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10 回路層
11,31 ピラー導体
12,13 外部端子
20 アンテナ層
21,22 放射導体
30 フィード層
100,100A,200,300,400 アンテナモジュール
BPF バンドパスフィルタ
C1〜C3 カプラパターン
CB 回路ブロック領域
CL クリアランス領域
D 誘電体層
E1〜E4 辺
F1,F2 フィードパターン
G1〜G3 グランドパターン
G2a,G2b 開口部
SL1〜SL8 スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12