(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザには、当該ユーザに関係する様々な要因が作用し、これによってユーザの集中度は左右される。そのため、撮像した画像のみからでは、作業者の集中度を精度良く把握することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの集中度合いを精度良く把握することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、ユーザ(U1,U2,U3)を撮像する撮像部(26)と、複数の上記ユーザ(U1,U2,U3)が居る室内(r1)の環境に関する室内環境情報を検知する検知部(13)と、上記撮像部(26)が撮像した上記ユーザ(U1,U2,U3)の画像と上記検知部(13)が検知した上記室内環境情報とに基づいて、上記室内(r1)に存在する複数の上記ユーザ(U1,U2,U3)それぞれの集中度合いを推定する推定部(66)と、複数の上記ユーザ(U1,U2,U3)それぞれについての、上記ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び/または上記ユーザ(U1,U2,U3)の状態と、該動作及び/または該状態時の上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いとが対応づけられたユーザ情報(63)、を記憶する記憶部(62)と、を備え、上記推定部(66)は、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び/または各上記ユーザ(U1,U2,U3)の状態を上記画像から抽出し、抽出結果と上記ユーザ情報(63)とを用いて、複数の上記ユーザ(U1,U2,U3)それぞれの上記集中度合いを推定することを特徴とする集中度推定装置である。
【0007】
室内環境情報としては、室内のCO2濃度、温度等が挙げられる。このような室内環境情報は、ユーザの集中度合いに影響を及ぼす要因となり得る。ここでは、ユーザが撮像されると、その画像と上記室内環境情報とに基づいてユーザの集中度合いが推定される。これにより、個々のユーザの集中度合いを、精度良く把握することができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、上記画像には、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを表す上記ユーザ(U1,U2,U3)の動作、及び/または、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを表す上記ユーザ(U1,U2,U3)の状態が写し出されており、上記推定部(66)は、上記画像から各上記ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び/または各上記ユーザ(U1,U2,U3)の状態を抽出して各上記ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定することを特徴とする集中度推定装置である。
【0009】
これにより、ユーザがどの程度集中しているかの集中度合いが、より精度良く推定される。
【0010】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、上記推定部(66)は、上記画像から各上記ユーザ(U1,U2,U3)の性別及び/または年齢を算出し、算出した各上記ユーザ(U1,U2,U3)の性別及び/または年齢に更に基づいて各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを推定することを特徴とする集中度推定装置である。
【0011】
これにより、ユーザの集中度合いの推定精度はより向上する。
【0012】
第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、上記室内(r1)に居る各上記ユーザ(U1,U2,U3)の表面温度を測定する表面温度測定部(128)、を更に備え、上記推定部(66)は、更に上記表面温度測定部(128)の測定結果に基づいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを推定することを特徴とする集中度推定装置である。
【0013】
これにより、ユーザの集中度合いの推定精度はより向上する。
【0014】
第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、空気調和装置(10)が、上記室内(r1)の天井に設置されており、上記撮像部(26)は、上記空気調和装置(10)に設けられていることを特徴とする集中度推定装置である。
【0015】
これにより、撮像部(26)は、障害物により遮られる可能性が低い状態で、室内に居るユーザを撮像することができる。
【0016】
第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを表す集中度情報の該ユーザ(U1,U2,U3)による入力を受け付けることが可能な受け付け部(30)と、上記撮像部(26)が撮像した上記画像及び/または上記受け付け部(30)が受け付けた上記集中度情報に基づいて、上記集中度合いの推定に用いる推定モデル(67)を学習させるモデル更新部(68)と、を更に備えることを特徴とする集中度推定装置である。
【0017】
これにより、学習後の推定モデルを用いてユーザの集中度合いの推定動作が行われることにより、ユーザの集中度合いの推定精度はより向上する。
【0018】
第7の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、上記推定部(66)の推定結果に基づいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いが上昇するように、上記室内(r1)を空調対象とする空気調和装置(10)の第1空調動作を制御する制御部(14)、を更に備えることを特徴とする集中度推定装置である。
【0019】
これにより、室内に居るユーザの集中度合いは向上する。
【0020】
第8の態様は、第7の態様において、上記推定部(66)の推定結果に基づく上記第1空調動作が行われた後の上記撮像部(26)が撮像した上記画像から各上記ユーザ(U1,U2,U3)の実際の上記集中度合いを把握し、その把握結果に基づいて、上記集中度合いの推定に用いる推定モデル(67)を学習させるモデル更新部(68)と、を更に備えることを特徴とする集中度推定装置である。
【0021】
これにより、推定モデルの推定結果が実際となるべく合致するように、推定モデルの精度は更に向上する。学習後の推定モデルを用いてユーザの集中度合いの推定動作が行われることにより、ユーザの集中度合いの推定精度はより向上する。
【0022】
第9の態様は、第7の態様または第8の態様において、上記推定部(66)の推定結果に基づく上記第1空調動作が行われた後の上記撮像部(26)が撮像した画像から、上記撮像部(26)が上記第1空調動作前に撮像した画像と比較して各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを判断していた行動および状態の変化に基づいて、上記集中度合いの推定に用いる推定モデル(67)を学習させるモデル更新部(68)と、を更に備えることを特徴とする集中度推定装置である。
【0023】
これにより、推定モデルの推定結果が実際となるべく合致するように、推定モデルの精度は更に向上する。学習後の推定モデルを用いてユーザの集中度合いの推定動作が行われることにより、ユーザの集中度合いの推定精度はより向上する。
【0024】
第10の態様は、第9の態様において、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを判断していた行動および状態の変化とは、上記行動及び上記状態の頻度が減少するか、または、上記行動及び上記状態が現れなくなることであることを特徴とする集中度推定装置である。
【0025】
これにより、推定モデルの推定結果が実際と合致しているか否かが、より正確に判断される。
【0026】
第11の態様は、第7の態様から第10の態様のいずれか1つにおいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いを表す集中度情報の該ユーザ(U1,U2,U3)による入力を受け付けることが可能な受け付け部(30)を更に備え、上記制御部(14)は、上記推定部(66)の推定結果に基づく上記第1空調動作が行われた後に上記受け付け部(30)が受け付けた上記集中度情報に基づいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いが上昇するように上記第1空調動作の制御の内容を学習することを特徴とする集中度推定装置である。
【0027】
これにより、次回行われる第1空調動作は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いをより上昇させ易いものとなる。
【0028】
第12の態様は、第7の態様から第11の態様のいずれか1つにおいて、上記制御部(14)は、上記推定部(66)の推定結果に基づく上記第1空調動作が行われた後の上記撮像部(26)が撮像した上記画像に基づいて、各上記ユーザ(U1,U2,U3)の上記集中度合いが上昇するように上記第1空調動作の制御の内容を学習することを特徴とする集中度推定装置である。
【0029】
これにより、次回行われる第1空調動作は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いをより上昇させ易いものとなる。
【0030】
第13の態様は、第11の態様または第12の態様において、上記第1空調動作の制御の内容には、上記空気調和装置(10)に含まれる室内ファン(12)の回転速度、上記空気調和装置(10)から吹き出される風向を調節するフラップ(16)の位置、上記空気調和装置(10)の設定温度、上記室内(r1)の目標CO2濃度、の少なくとも1つを調整することが含まれることを特徴とする集中度推定装置である。
【0031】
これにより、次回行われる第1空調動作は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いをより確実に低下させ易いものとなる
。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ユーザの集中度合いを、精度良く把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0035】
≪第1実施形態≫
<概要>
図1は、本実施形態に係る空調制御装置(50)(集中度推定装置に相当)を備えた空調システム(100)の外観図である。
図1及び
図2に示すように、空調制御装置(50)は、空気調和装置(10)の構成要素の一部と、リモートコントローラ(30)(受け付け部に相当)と、演算装置(60)とを有する。
【0036】
図1に示すように、空気調和装置(10)は、空調対象である室内(r1)に設けられ、室内(r1)に対し空調を行う。リモートコントローラ(30)は、空気調和装置(10)の目標温度及び目標湿度の設定の他、空気調和装置(10)の運転モード、運転のオン及びオフを、ユーザ(U1,U2,U3)がリモートコントローラ(30)を操作して直接的に空気調和装置(10)に指示を与える際に、用いられる。
【0037】
空調制御装置(50)は、空気調和装置(10)の空調動作を制御する。特に、本実施形態に係る空調制御装置(50)は、室内(r1)に居るユーザ(U1,U2,U3)が写し出された画像を用いて、当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定し、推定した集中度合いに基づいて空気調和装置(10)の空調動作(第1空調動作に相当)を制御することにより、例えば事務作業を行っているユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが改善するような環境を提供する。
【0038】
<空気調和装置の構成>
空気調和装置(10)は、天井設置タイプの空調機であって、本体部(11)が室内(r1)の天井に埋め込まれて設置されている。本体部(11)の下面(21)は室内(r1)に露出しており、下面(21)には本体部(11)内への空気の吸い込み口(23)と、本体部(11)から室内(r1)への空気の吹き出し口(24)とが形成されている。
【0039】
本体部(11)の下面(21)には、カメラ(26)(撮像部に相当)が設けられている。
【0040】
カメラ(26)は、レンズ(図示せず)が空気調和装置(10)の下方を向いており、室内(r1)に居るユーザ(U1,U2,U3)を撮像する。画像は、ユーザ(U1,U2,U3)を撮像した動画像であってもよいし、ユーザ(U1,U2,U3)の静止画像を連続して撮像したものであってもよいが、ここでは動画である場合を例示する。カメラ(26)が撮像した画像には、各ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態(表情を含む)が写し出されている。ユーザ(U1,U2,U3)は、集中している場合、手のみが動いているが体の動き量が少ない、瞬き回数が少ない、瞳孔が開き気味である等といった動作及び状態をとる。逆に、ユーザ(U1,U2,U3)は、集中していない場合、体の動き量が大きい、頬杖を付く、背伸びをする、瞬き回数が多い等といった動作及び状態をとる。カメラ(26)は、ユーザ(U1,U2,U3)のこれらの動作等を、各ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを示唆する画像として撮像する。
【0041】
空気調和装置(10)の本体部(11)の内部には、吸い込み口(23)から本体部(11)内部に吸い込まれた空気を冷媒と熱交換させる熱交換器(図示せず)、及び、冷媒と熱交換した後の空気を吹き出し口(24)を介して室内(r1)に供給する室内ファン(12)、吹き出し口(24)に設けられた風向調節用のフラップ(16)、フラップ(16)の回転軸に接続されフラップ(16)の向きを動かす際の駆動源となるモータ(16a)等が含まれている(
図2参照)。
【0042】
更に、本体部(11)の内部には、室内環境情報センサ(13)(検知部に相当)、及び制御部(14)が含まれている。
【0043】
室内環境情報センサ(13)は、室内(r1)の環境に関する室内環境情報を検知するセンサであって、吸い込み口(23)付近に設けられた吸い込みセンサである。室内環境情報としては、吸い込み口(23)から吸い込まれた室内(r1)の空気の温度、湿度、CO2の濃度等が挙げられる。
【0044】
制御部(14)は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータで構成されている。制御部(14)は、室内ファン(12)、フラップ(16)のモータ(16a)、室内環境情報センサ(13)、カメラ(26)等と電気的に接続されている。また、制御部(14)は、リモートコントローラ(30)及び演算装置(60)とも、通信可能に接続されている。
【0045】
制御部(14)は、室内環境情報センサ(13)の検知結果に基づく室内ファン(12)及びフラップ(16)のモータ(16a)等の駆動制御により、空気調和装置(10)の空調動作を制御する。
【0046】
特に、本実施形態に係る制御部(14)は、演算装置(60)によって推定されたユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いに基づいて、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが上昇するように、室内(r1)の空気調和装置(10)の空調動作(第1空調動作)を制御する。集中度合いの推定結果に基づく空調動作の詳細については後述する。
【0047】
なお、制御部(14)は、以下に述べる演算装置(60)の推定部(66)と同様、予めニューラルネットワークが構築されたものであることが好ましい。空調動作をよりきめ細かく調整するためである。
【0048】
<リモートコントローラ>
リモートコントローラ(30)は、室内(r1)の壁面に取り付けられている。リモートコントローラ(30)は、図示してはいないが、各種画面を表示するディスプレイと、ユーザ(U1,U2,U3)の操作を受け付ける複数の操作ボタンとを有する。ユーザ(U1,U2,U3)が操作ボタンを操作することにより、ディスプレイには、ユーザ(U1,U2,U3)の操作に応じた各種画面が表示される。ディスプレイには、室内(r1)の設定温度、設定湿度等が通常画面として表示される。
【0049】
本実施形態に係るリモートコントローラ(30)は、ユーザ(U1,U2,U3)の実際の集中度合いを表す集中度情報、即ち集中していない等である情報の、ユーザ(U1,U2,U3)による入力を受け付けることが可能となっている。入力された集中度情報から、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定結果がユーザ(U1,U2,U3)の実際の集中度合いに合致したものであるか否かを、演算装置(60)は判定することができる。ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定結果に基づいて空気調和装置(10)の空調動作が行われることに鑑みると、上記入力は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定結果に伴って空気調和装置(10)が空調動作を行っている間になされることが好ましいが、必ずしもこれに限定されることはない。また、上記入力は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定結果に応じて実行される空気調和装置(10)の空調制御の内容を補正するために(例えば、室内ファン(12)の回転速度を実際の集中度合いに応じて調整するために)、用いられても良い。
【0050】
<空調制御装置の構成>
空調制御装置(50)は、
図2に示すように、空気調和装置(10)の構成要素の一部である室内環境情報センサ(13)、制御部(14)及びカメラ(26)に加えて、受け付け部に相当するリモートコントローラ(30)と、演算装置(60)とを有する。
【0051】
室内環境情報センサ(13)、制御部(14)、カメラ(26)、及びリモートコントローラ(30)は、上記にて説明したため、以下では演算装置(60)について説明する。
【0052】
<演算装置>
演算装置(60)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定動作を主に行うものであって、記憶部(62)及びCPU(65)を備えたコンピュータである。演算装置(60)は、クラウドサーバ、ローカルサーバ等であることができる。
【0053】
演算装置(60)は、空気調和装置(10)及びリモートコントローラ(30)と有線または無線で通信可能に接続されている。これにより、演算装置(60)は、室内(r1)の温度等である室内環境情報センサ(13)の検知結果及びカメラ(26)の撮像した画像を空気調和装置(10)から取得することができ、リモートコントローラ(30)がユーザ(U1,U2,U3)から実際の集中度合いを表す集中度情報の入力を受け付けた場合、これを取得することができる。また、演算装置(60)は、自身が推定した推定結果である集中度合いを、空気調和装置(10)の制御部(14)に出力することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、演算装置(60)が空気調和装置(10)とは別の装置である場合を例示しているが、演算装置(60)は、制御部(14)と同様、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータで構成され、空気調和装置(10)内に組み込まれていてもよい。
【0055】
記憶部(62)は、フラッシュメモリ及びハードディスク等の不揮発性記憶装置で構成される。記憶部(62)には、主に、ユーザ情報(63)が格納されている。
【0056】
図3に示すように、ユーザ情報(63)は、個々のユーザ(U1,U2,U3)についての、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態(表情を含む)と、その動作及び状態を採っている時のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いとが対応づけられた情報である。集中している時と集中していない時とでユーザ(U1,U2,U3)が自ずと行う行動や表情等は、ユーザ(U1,U2,U3)毎に異なる場合がある。即ち、集中度合いに対する行動や表情等には、ユーザ(U1,U2,U3)毎に癖があると考えられる。それ故、その癖を、いわばユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを指し示す基準として定義したものが、ユーザ情報(63)である。
【0057】
CPU(65)は、記憶部(62)や当該記憶部(62)以外の他のメモリに記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより、推定部(66)及びモデル更新部(68)として機能する。
【0058】
−ユーザの集中度合いの推定−
推定部(66)は、カメラ(26)が撮像したユーザ(U1,U2,U3)の画像と室内環境情報センサ(13)の検知結果である室内環境情報とに基づいて、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する。このような推定部(66)は、推定モデル(67)を有する。
【0059】
推定モデル(67)は、撮像された画像等からユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを、ディープラーニング等の手法を用いた演算にて求める専用モデルであって、ニューラルネットワークとして予め構築されている。本実施形態の推定モデル(67)は、
図4の破線に示すように、主として、カメラ(26)が撮像した画像のデータに画像処理を施す画像処理ニューラルネットワーク(67a)、及び、画像処理の結果と室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報とからユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する集中度推定ニューラルネットワーク(67b)の、言わば2層構造のニューラルネットワークとなっている。
【0060】
推定部(66)は、先ず、カメラ(26)が撮像した画像のデータを画像処理ニューラルネットワーク(67a)に入力する。画像処理ニューラルネットワーク(67a)では、画像データ(ここでは動画データ)の同時化処理等の他、エッジ検出やコントラスト処理等を駆使して、背伸びをしている等のユーザ(U1,U2,U3)の動作の抽出、瞬き回数が少ない等のユーザ(U1,U2,U3)の状態の抽出、ユーザ(U1,U2,U3)の性別の算出、ユーザ(U1,U2,U3)の年齢の算出が行われる。即ち、画像処理ニューラルネットワーク(67a)では、集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の特定の動作及び状態が抽出され、集中度合い関連する性別及び年齢が演算される。
【0061】
図5(a)では、年齢の高低と集中度合いとの関係の一例を概念的に表し、
図5(b)では、性別と集中に関する事柄との関係の一例を概念的に表している。室内(r1)がとある温度で均一とした場合、
図5(a)では、年齢が低い程、集中度合いが高く集中力の持続時間が長い傾向にあり、年齢が高い程、集中度合いが低く集中力の持続時間が短くなる傾向にあることを表している。
図5(b)では、同年齢にて比較すると、女性は、複数の事象を同時並行する性質を有し、男性は一事象に集中する傾向にあることを表している。このように、求めた性別及び年齢は、集中度合いを左右する(または関連する)指標の1つとなる。
【0062】
図4に示すように、画像処理ニューラルネットワーク(67a)から出力された上記抽出結果及び上記演算結果と、例えば室内(r1)の温度、湿度、CO2の濃度である室内環境情報センサ(13)の検知結果(室内環境情報)に関する情報とが、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に入力される。本実施形態では、室内環境情報センサ(13)の検知結果は、推定モデル(67)における演算ニューラルネットワーク(67c)にて、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)が扱えるタイプのデータとするための所定の演算を施された後に、室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報として集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に入力される場合を例示しているが、演算ニューラルネットワーク(67c)を介さずに、直接集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に入力されてもよい。
【0063】
集中度推定ニューラルネットワーク(67b)では、入力された各種情報のうち、集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の特定の動作及び状態である抽出結果と室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報とから、
図3に係るユーザ情報(63)を基準として、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが求められる。この際、入力された演算結果、即ちユーザ(U1,U2,U3)の性別及び年齢が、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの算出において加味される。
【0064】
例えば室内(r1)の温度が約25度を超える程、またCO2の濃度が高い程、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いは低下する。そこで、ユーザ(U1,U2,U3)の特定の動作及び状態と共に、室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報が、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定に利用される。また、
図5(a)(b)で示した性別や年齢と集中度合いとの関係性を考慮することで、ユーザ(U1,U2,U3)各個人の集中度合がよりきめ細かく推定される。
【0065】
推定部(66)は、このようにして求めたユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを、集中度合いの推定結果として、空気調和装置(10)の制御部(14)に送信する。
【0066】
−推定モデルの更新−
図6に示すように、モデル更新部(68)は、カメラ(26)が撮像した画像のデータ及びリモートコントローラ(30)が受け付けたユーザ(U1,U2,U3)の実際の集中度合いを表す集中度情報に基づいて上記推定モデル(67)を学習させる。
【0067】
集中度合いの推定後にカメラ(26)が新たに撮像した画像に、例えばそれまで多かった瞬き回数が減少した等の、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態に所望の変化が現れる可能性がある。この場合は、集中度合いの推定動作が比較的良好であって、その推定結果に基づく空調動作(即ち第1空調動作)がユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを上昇させる方向へと向かわせていると判断することができる。しかし、このような所望の変化が見られない場合は、集中度合いの推定動作が実際の集中度合いと乖離している可能性がある。そこで、モデル更新部(68)は、カメラ(26)が新たに撮像した画像を用いて推定モデル(67)を更新する。
【0068】
なお、集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態には、瞬き回数以外に、既に述べたように、手や体の動き量、瞳孔の開閉度、頬杖を付いているか否か、背伸びをするか否か、等が含まれる。これらの各動作及び状態についても、集中度合いの改善を表す所望の変化が見られた場合、推定結果に基づく空調動作(即ち第1空調動作)がユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを上昇させる方向へと向かわせていると判断することができ、モデル更新部(68)は、推定モデル(67)を更新する。
【0069】
上記の動作及び状態毎の、集中度合いが改善(上昇)していると判断できる具体例は、以下の通りである。
(I)空調動作前は、一定時間あたりの体の動き量が多かったが、空調動作後は、当該体の動き量が少なくなると共に手の動き量が多くなった。
(II)空調動作前は頬杖をついていたが、空調動作後には頬杖をつかなくなった。
(III)空調動作前は背伸びをしていたが、空調動作後には背伸びをしなくなった。
(IV)空調動作後は、空調動作前よりも瞳孔が開き気味になった。
【0070】
上記具体例にて示すように、集中度合いが改善(上昇)しているか否かは、何らかの動作及び状態の有無のみならず、何らかの行動及び状態の頻度の増減によっても判断することができ、これらを総じて“所望の変化”と言う。このような所望の変化がカメラ(26)の画像から把握された場合は、集中度合いの推定動作が実際の集中度合いと概ね一致していると判断することができ、推定モデル(67)の更新は行われない。
【0071】
また、リモートコントローラ(30)を介してユーザ(U1,U2,U3)が入力した集中度情報には、ユーザ(U1,U2,U3)の実際の集中度合いが表れている。それ故、モデル更新部(68)は、リモートコントローラ(30)が受け付けた集中度情報も用いて推定モデル(67)を更新する。
【0072】
このような更新動作により、推定モデル(67)(具体的には、集中度推定ニューラルネットワーク(67b))は、より実際の集中度合いに近い推定結果を算出できるようなモデルに更新されていく。
【0073】
なお、モデル更新部(68)は、前回撮影した画像におけるユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態と、新たに撮像した画像におけるユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態とを比較した結果、所望の変化がある場合、及び/または、リモートコントローラ(30)が受け付けた集中度情報が、集中度合いが前回よりも所定レベル以上上昇したことを表す内容である場合は、推定モデル(67)の更新動作は不要と判定し、推定モデル(67)の更新動作を行わずともよい。つまり、推定モデル(67)の更新動作は、前回撮像した画像と新たに撮像した画像との間でユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態に所望の変化がなかった場合、及び/または、リモートコントローラ(30)が受け付けた集中度情報が所望するレベル以上である場合に行われると良い。CPU(65)が不必要な処理を行うことで高負荷となることを和らげるためである。
【0074】
なお、本実施形態では、推定モデル(67)のうち更新対象となるものは、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)であるが、画像処理ニューラルネットワーク(67a)や演算ニューラルネットワーク(67c)が更に更新対象であってもよい。
【0075】
なお、
図6に示すように、推定モデル(67)を更新する際には、更に室内環境情報センサ(13)の検知結果も利用されてもよいが、利用されずともよい。
【0076】
<推定したユーザの集中度合いに伴う空調動作>
図7は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定動作、及び、推定した集中度合いに伴う空調動作の流れを示す図である。
【0077】
カメラ(26)は、ユーザ(U1,U2,U3)の画像を撮像する(St11)。カメラ(26)が撮像した画像は、演算装置(60)に送信される。
【0078】
演算装置(60)では、推定部(66)は、推定モデル(67)における画像処理ニューラルネットワーク(67a)を用いて、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態の抽出、性別及び年齢の演算を行う(St12)。推定部(66)は、推定モデル(67)における集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に、ステップSt12における抽出結果及び演算結果と、室内環境情報センサ(13)の検知結果である室内環境情報(ここでは、検知結果に関する情報)とを入力して、各ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する(St13)。集中度合いの推定結果は、空気調和装置(10)の制御部(14)に送信される。
【0079】
上記推定結果は、図示していないが、演算装置(60)が有するデータベースに格納される(St14)。この際、推定結果と共に、室内(r1)の温度を含む室内環境情報、現在の空気調和装置(10)の風向及び風量が、データベースに対応づけて格納される。データベースは、集中度合いの推定動作の精度向上のため、推定モデル(67)の更新時に用いられても良い。また、データベースは、以下の“閾値”を最適な値に補正するために用いられると更に好ましい。
【0080】
空気調和装置(10)の制御部(14)は、推定された集中度合いが閾値以上に上昇するように、個々のユーザ(U1,U2,U3)に適した空調制御内容を算出し(St15)、算出した空調制御を実行させる(St16)。例えば、制御部(14)は、集中度合いと閾値との差が大きい程、当該集中度合いであるユーザ(U1,U2,U3)に対し、揺らぎ気流を供給するための空調制御内容を実行する。揺らぎ気流とは、時間の経過と共に風量を上げ下げしつつ、吹き出し口(24)に設けられた風向変更羽根を上下させることで生成される気流である。揺らぎ気流が供給されたユーザ(U1,U2,U3)は、不快よりもむしろ快適と感じることができる。逆に、制御部(14)は、集中度合いと閾値との差が小さい程、当該集中度合いであるユーザ(U1,U2,U3)に対しては現在の空気の供給を維持する空調制御内容を実行する。
【0081】
また、制御部(14)は、集中度合いと閾値との差が所定差よりも大きいユーザ(U1,U2,U3)の人数が多い程、室内(r1)の温度を、集中し易い18度〜25度の範囲内にするように、供給空気の加熱冷却度合い等を調節する空調制御内容を実行してもよい。
【0082】
このように、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いと閾値との差の大きさに応じて、そのユーザ(U1,U2,U3)への風向及び風量を変化させる空調制御内容が算出されて実行される。このような空調制御内容は、集中度合いが低いユーザ(U1,U2,U3)に対してはリラックス状態を促進させて集中し易い環境を提供する内容であり、集中度合いが高いユーザ(U1,U2,U3)に対しては引き続き現在の状態を維持するように作用させるための内容と言える。これにより、各個人の集中度合いは、空調制御によって改善または維持されるため、室内(r1)内のユーザ(U1,U2,U3)全体の集中度合いの平均は改善され、ユーザ(U1,U2,U3)の作業性は向上する。
【0083】
<効果>
室内の環境は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いに影響を及ぼす。そこで、演算装置(60)の推定部(66)は、カメラ(26)が撮像したユーザ(U1,U2,U3)の画像と共に、室内環境情報センサ(13)の検知結果である室内環境情報(室内(r1)の温度等)に基づいて、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する。これにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを、精度良く把握することができる。
【0084】
上記画像には、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態が写し出されている。そこで、推定部(66)は、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態を画像から抽出してユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する。これにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度は向上する。
【0085】
また、年齢及び性別の違いは、人の集中し易さ及び集中し難さに影響を及ぼすことがある。そこで、推定部(66)は、画像からユーザ(U1,U2,U3)の年齢及び性別を演算し、その演算結果を更に用いてユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定する。これにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度はより向上する。
【0086】
また、カメラ(26)は、天井に設置されている空気調和装置(10)に設けられている。そのため、カメラ(26)は、室内(r1)に居るユーザ(U1,U2,U3)を、障害物により遮られる可能性が軽減された状態で、撮像することができる。
【0087】
また、推定部(66)は、室内(r1)に居る複数のユーザ(U1,U2,U3)それぞれの集中度合いを推定する。即ち、本実施形態では、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定することができる。
【0088】
ところで、ユーザ(U1,U2,U3)は、自身の集中度合いに応じた動作及び状態を自然と採ることがある。その動作及び状態の詳細は、ユーザ(U1,U2,U3)毎に異なることがある。そこで、推定部(66)は、個々のユーザ(U1,U2,U3)が自身の集中度合いに応じて自ずと採る動作及び状態を表すユーザ情報(63)を、実際に撮像した画像におけるユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態との照合に用いる。これにより、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度はより向上する。
【0089】
空気調和装置(10)の制御部(14)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが上昇するように、演算装置(60)の推定部(66)が推定した集中度合いに基づいて空調動作(第1空調動作)を制御する。これにより、ユーザ(U1,U2,U3)がリモートコントローラ(30)等を操作して集中が増すような空調動作の実行指示を空気調和装置(10)に与えずとも、空気調和装置(10)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの改善を促すのに適した空調動作を自動的に行う。従って、ユーザ(U1,U2,U3)の利便性は向上し、ユーザ(U1,U2,U3)は集中し易くなる。
【0090】
特に、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度が向上しているため、推定された集中度合いに応じた空調動作がなされることにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いはより改善し易くなる。
【0091】
特に、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定し、個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いに適した空調動作がなされることにより、室内(r1)に居るユーザ(U1,U2,U3)全体の集中度合いを改善することができる。
【0092】
また、ユーザ(U1,U2,U3)の画像及びリモートコントローラ(30)が受け付けたユーザ(U1,U2,U3)の集中度情報に基づいて、推定モデル(67)が学習される。従って、推定部(66)が学習後の推定モデル(67)を用いて集中度合いの推定動作を行うことにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度はより向上する。
【0093】
また、推定モデル(67)は、推定部(66)の推定結果に基づく空調動作が行われた後のカメラ(26)が撮像した画像からユーザ(U1,U2,U3)の実際の集中度合いが把握され、その把握結果に基づいて学習される。より具体的には、推定モデル(67)は、推定部(66)の推定結果に基づく空調動作(第1空調動作)が行われた後のカメラ(26)の撮像画像から、カメラ(26)が空調動作(第1空調動作)前に撮像した画像と比較してユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを判断していた行動および状態の変化に基づいて学習される。ここで、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを判断していた行動および状態の変化とは、行動及び状態の頻度が減少するか、または、行動及び状態が現れなくなることである。これにより、推定モデルの推定結果が実際と合致しているか否かが、より正確に判断され、推定モデル(67)の推定結果が実際となるべく合致するように、推定モデル(67)の精度は更に向上する。学習後の推定モデル(67)を用いてユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定動作が行われることにより、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度はより向上する。
【0094】
≪第2実施形態≫
本実施形態では、上記第1実施形態において、空調制御装置(50)が更にサーモグラフィセンサ(128)(表面温度測定部に相当)を備え、推定部(66)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定動作に更にサーモグラフィセンサ(128)の検知結果を用いる場合について説明する。
【0095】
図8は、第1実施形態の
図4に対応する図であって、本実施形態に係る集中度合いの推定時の推定モデル(67)の入力及び出力を表す概念図である。
図8の破線に示すように、推定部(66)における推定モデル(67)は、上記第1実施形態と同様、撮像された画像のデータと室内環境情報とからユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを演算によって求める専用のニューラルネットワークとして予め構築されている。具体的には、推定モデル(67)は、主として、画像処理ニューラルネットワーク(67a)と集中度推定ニューラルネットワーク(67b)の、言わば2層構造のニューラルネットワークとなっている。
【0096】
上記第1実施形態と同様、室内環境情報センサ(13)の検出結果である室内環境情報は、推定モデル(67)における演算ニューラルネットワーク(67c)にて、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)が扱えるタイプのデータとするための所定の演算を施された後に、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に入力される場合を例示している。
【0097】
画像処理ニューラルネットワーク(67a)の入力と出力は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
集中度推定ニューラルネットワーク(67b)には、画像処理ニューラルネットワーク(67a)の抽出結果及び演算結果、室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報に加え、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果が入力される。
【0099】
サーモグラフィセンサ(128)は、室内(r1)に居る各ユーザ(U1,U2,U3)の表面温度を測定する。サーモグラフィセンサ(128)の室内(r1)での取り付け位置は、特に限定されることはなく、例えばリモートコントローラ(30)に組み込まれても良いし、空気調和装置(10)の下面(21)に取り付けられてもよい。
【0100】
なお、
図8に示すように、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果は、室内環境情報センサ(13)の検知結果が演算ニューラルネットワーク(67c)にて演算処理されるのと同様、別途演算ニューラルネットワーク(67d)にて所定の演算が施された後に、集中度推定ニューラルネットワーク(67b)に入力されても良い。
【0101】
集中度推定ニューラルネットワーク(67b)では、上記第1実施形態と同様、画像処理ニューラルネットワーク(67a)の抽出結果及び室内環境情報に基づいて個々のユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが求められる。この際、上記第1実施形態と同様、ユーザ情報(63)は基準として用いられる。画像処理ニューラルネットワーク(67a)の演算結果(年齢及び性別)に加えて、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果(表面温度)が、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの算出において加味される。
【0102】
サーモグラフィセンサ(128)の検知結果は、
図9に示すように、推定モデル(67)の更新動作においても、画像処理ニューラルネットワーク(67a)の抽出結果及び演算結果、室内環境情報センサ(13)の検知結果に関する情報に加えて用いられてもよい。
【0103】
図8及び
図9を用いて説明した以外、具体的には、空調制御装置(50)を用いた空調システム(100)の構成、ユーザ情報(63)、推定結果を用いた空調動作の詳細は、上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
このように、本実施形態では、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定に、ユーザ(U1,U2,U3)の実際の表面温度が更に用いられる。従って、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定精度はより向上する。また、空気調和装置(10)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度の改善を促すのに適した空調動作を行うことができる。
【0105】
なお、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果は、更に、空気調和装置(10)からユーザ(U1,U2,U3)に供給される空気がユーザ(U1,U2,U3)にとって適切な温度及び風量であるのかを制御部(14)が判断するために利用されてもよい。例えば、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの改善のためと云えども、ユーザ(U1,U2,U3)にとっては過剰な空気の供給であると、ユーザ(U1,U2,U3)の表面温度が過度に低下または上昇してしまい、かえってユーザ(U1,U2,U3)に対し刺激の与えすぎとなり、やがては集中の妨げの要因となる可能性がある。そのため、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果から、空気調和装置(10)がユーザ(U1,U2,U3)に供給する空気がユーザ(U1,U2,U3)にとって適切な温度及び風量ではないと判断した時は、制御部(14)は、サーモグラフィセンサ(128)の検知結果に基づいて供給する空気の温度及び風量を和らげるように空調制御内容を調整することが好ましい。
【0106】
≪その他の実施形態≫
上記第1実施形態及び第2実施形態において、画像と室内環境情報におけるCO2濃度とを用いて、集中度合いを向上させるような空調制御が更に行われても良い。例えば、CO2濃度が高い程、人は眠くなり集中力は低下する。そこで、空気調和装置(10)の制御部(14)は、CO2の濃度を低下させるように換気を行う空調制御内容を実行してもよい。この空調制御内容は、集中度合いが低い人の数の人数が多い程、換気を長時間行うような内容であってもよい。
【0107】
また、時間帯に即して集中度合いを向上させるような空調制御が更に行われても良い。例えば、昼食後、人は眠くなり集中力は低下する。そこで、空気調和装置(10)の制御部(14)は、午後は室内(r1)の目標温度を午前中よりも一時的に下げると好ましい。更に、CO2の濃度に応じて、CO2の濃度に応じて目標温度の下げ幅が調整されてもよい。
【0108】
上記第1実施形態及び第2実施形態において、推定部(66)は、更に各ユーザ(U1,U2,U3)の心拍数及び脳波の検知結果を各ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの推定に用いても良い。
【0109】
その際、心拍数及び脳波の検知結果をディープラーニングにより解析することによって、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが求められても良い。これにより、各ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いはより細かく把握されるようになる。各ユーザ(U1,U2,U3)の心拍数及び脳波は、カメラ(26)が撮像した画像から、各ユーザ(U1,U2,U3)の状態を表す情報として算出されてもよいし、カメラ(26)とは別の心拍数及び脳波を検知するセンサによって検知されてもよい。各ユーザ(U1,U2,U3)の心拍数及び脳波は、推定モデル(67)の学習の際に用いられても良い。
【0110】
制御部(14)は、画像から演算されたユーザ(U1,U2,U3)の年齢及び性別を用いて、より個人の集中度合いが高まるような効果的な個別の空調動作が行われるように、空調動作を制御してもよい。
【0111】
上記第1実施形態及び第2実施形態において、吸い込みセンサとは別のセンサが室内環境情報センサ(13)として設けられても良い。室内環境情報センサ(13)が検知する室内に関する情報は、室内(r1)の温度、湿度、CO2の濃度に限定されることはなく、室内(r1)の環境に関する様々な情報が含まれる。また、室内環境情報センサ(13)の検知結果は、室内(r1)の温度のみ、CO2の濃度のみであってもよい。
【0112】
リモートコントローラ(30)を介して入力されたユーザ(U1,U2,U3)の集中度情報は、空調動作(第1空調動作に相当)の制御の微調整及び学習等に利用されてもよい。また、カメラ(26)が新たに撮像した画像も、上記集中度情報と同様、推定モデル(67)の更新のみならず、空調動作(第1空調動作に相当)の制御の微調整及び学習等に利用されてもよい。
【0113】
上記空調動作の制御の微調整および学習としては、主に室内ファン(12)の回転速度([具体例1])ユーザ(U1,U2,U3)にあてる空調空気の温度及びフラップ(16)の位置([具体例2])、CO2濃度([具体例3])それぞれの、集中度合いの改善(上昇)のための空調動作にて用いられる目標値を微調整および学習することが含まれる。以下、その具体例を説明する。
【0114】
[具体例1]
具体的に、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが所定値以下であって集中力を欠いた状態であると推定部(66)が推定したとする。このユーザ(U1,U2,U3)に対し、空気調和装置(10)の制御部(14)は、室内ファン(12)の回転速度及びフラップ(16)の位置を制御して、弱い風量での揺らぎ気流の供給を開始させる(揺らぎ運転)。
【0115】
その後、カメラ(26)は、新たに画像を撮像する。その画像を用いて、推定部(66)は、揺らぎ気流が供給されているユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定し直す。その結果、当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いがなおも所定値以下であって、集中力が改善されていない場合、制御部(14)は、室内ファン(12)の回転速度を今までよりも高める制御を行う。これにより、揺らぎ気流は、既に供給されている風量(弱い風量)よりも強い風量となる。
【0116】
なお、この場合、制御部(14)は、フラップ(16)の位置の制御を行わない。従って、風量は変更されたとしても、風向は変更されない。
【0117】
その後、カメラ(26)は、再度画像を新たに撮像する。その画像から、推定部(66)が当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを再度推定し直した結果、集中度合いが所定値以上となった場合、当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中力が向上し集中度合いは改善したと判断できる。この場合、制御部(14)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの改善(上昇)のために必要となった揺らぎ運転の制御を学習し、次回以降の空調動作(第1空調動作)に役立てるべく、目標値を、室内ファン(12)の回転速度の最終的な値に設定する(上昇させる)。即ち、次回からの揺らぎ運転では、当該学習後の風量で揺らぎ気流の供給が自動で開始される。そのため、次回行われる空調動作(第1空調動作)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いをより確実に上昇させ易いものとなっている。
【0118】
一方、風量をある程度強くした揺らぎ気流の供給によっても、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが所定値以下であった場合、制御部(14)は、揺らぎ運転を停止する。風量の強い空調空気が過剰にユーザ(U1,U2,U3)に供給されると、かえってユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが低下して所定値からより乖離してしまうからである。
【0119】
なお、この揺らぎ運転の停止制御は、例えば揺らぎ気流の風量を段階的に2回上げても(即ち、室内ファン(12)の回転速度を段階的に2回上げても)、なおもユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが所定値以下である場合に、行われることが好ましい。
【0120】
なお、制御部(14)は、上述した揺らぎ運転の制御に加え、上記第1実施形態で説明した室内の温度の調整及びCO2濃度の調整の少なくとも1つを、同時におこなってもよい。
【0121】
[具体例2]
集中度合いが閾値未満と推定部(66)が推定したユーザ(U1,U2,U3)に対し、空気調和装置(10)の制御部(14)は、冷房運転時であれば、空調空気の温度を目標値まで低下させると共にフラップ(16)の位置を調節する制御を行う。これにより、空気調和装置(10)は、それまでよりも冷たい空調空気を、集中度合いが閾値未満と推定部(66)が推定したユーザ(U1,U2,U3)めがけて供給する。空調空気の温度を目標値まで低下させる制御として、例えば、制御部(14)は、現在設定されている目標温度よりも2℃低い目標温度を一時的に設定して空気調和装置を制御することで、空調空気の温度を下げる制御を行う。
【0122】
その後、カメラ(26)は、新たに画像を撮像する。その画像を用いて、推定部(66)は、空調空気が供給されているユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを推定し直す。その結果、当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが閾値以上にならなかった場合、制御部(14)は、空調空気の温度を更に低下させる制御を行うと共に、ユーザ(U1,U2,U3)の位置に応じてフラップ(16)の位置を調整する制御を行う。その結果、空気調和装置(10)は、更に温度の低下した冷風である空調空気を、ユーザ(U1,U2,U3)めがけて供給する。具体的には、制御部(14)は、一時的に2℃低く設定された目標温度をさらに2度下げ、初めに設定されていた目標温度よりも4℃低い目標温度を一時的に設定して、空気調和装置(10)の空調動作を制御する。
【0123】
その後、カメラ(26)は、再度画像を新たに撮像する。その画像から、推定部(66)が当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを再度推定し直した結果、集中度合いが閾値以上となった場合、当該ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いは改善したと判断できる。この場合、制御部(14)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いのために必要となった空調空気の冷たさ(即ち、空調空気の温度の低下度合い)を学習し、次回以降からはその温度の空調空気が供給されるように、目標値を、空調空気の最終的な温度に設定する(低下させる)。
【0124】
なお、制御部(14)は、フラップ(16)の位置の制御を行わず、室内(r1)全体の温度を下げるように空気調和装置(10)の空調動作を制御してもよい。空調空気の設定温度に代えて空調空気の湿度調整が行われてもよいし、空調空気の設定温度に加えて空調空気の湿度調整が行われてもよい。
【0125】
また、この具体例2に、上記具体例1を組み合わせて実現することは可能である。
【0126】
また、この具体例2は、暖房運転時にも応用できる。暖房運転時、制御部(14)は、設定温度を低下ではなく上昇させるように制御する。
【0127】
[具体例3]
また、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いに応じて、制御部(14)は、更に室内(r1)の換気扇(図示せず)の運転を調節することにより、室内(r1)のCO2濃度を調整してもよい。この調整は、上記具体例1,2の少なくとも1つに更に組み合わせて実現することができる。上記具体例1と組み合わせて実現する場合、「空調空気」は、冷風であってもよい。
【0128】
CO2濃度の調整としては、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが閾値未満の場合に、制御部(14)が上記具体例1,2の少なくとも1つに加えて更にCO2濃度を所定値以下にするように換気扇(図示せず)を運転させることが挙げられる。この場合、制御部(14)は、換気扇(図示せず)の運転を行わない場合(即ち単に具体例1,2の少なくとも1つのみを行った場合)に比して、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いが改善するまでの時間が早まったか、早まった場合はどの程度早まったのかなどを判断すると共に、集中度合いが改善した時のCO2濃度を目標値として学習する。
【0129】
これにより、次回以降からは、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いの改善のために、CO2濃度の状態も考慮して換気扇(図示せず)の運転が自動で行われるようになる。そのため、次回行われる空調動作(第1空調動作)は、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いをより改善させ易いものとなっている。
【0130】
その他、制御部(14)は、個々のユーザ(U1,U2,U3)に対しては集中度合いの改善のためにどのような空調運転を空気調和装置(10)が行うのか、室内(r1)のどの位置にいるユーザ(U1,U2,U3)に対しては、集中度合いの改善のためにどのような空調運転を空気調和装置(10)が行うのか、についても学習してもよい。
【0131】
また、このような空調制御の学習時、上記実施形態1,2で説明したユーザ(U1,U2,U3)によるリモートコントローラ(30)からの入力(集中度情報)が更に利用されてもよい。つまり、制御部(14)は、上記空調制御後に入力された集中度情報を用いて、現在の空調制御が、集中度合いの改善(上昇)に有効な内容となっているか否かを判断し、空調制御の内容を学習により更新してもよい。この場合、空調制御についても、その制御に用いる制御モデルが構築され、当該制御モデルを学習させるようになっていてもよい。
【0132】
上記第1実施形態及び第2実施形態において、画像には、ユーザ(U1,U2,U3)の集中度合いを表すユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態が写し出されていると説明したが、画像に写し出されているものは、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態のうち少なくとも1つであってもよい。この場合、画像処理ニューラルネットワーク(67a)の抽出結果は、ユーザ(U1,U2,U3)の動作及び状態のうち、少なくとも1つとなる。
【0133】
ユーザ(U1,U2,U3)の性別及び年齢の演算結果は、集中度合いの推定に利用されずとも良い。
【0134】
ユーザ(U1,U2,U3)の性別及び年齢を集中度合いの推定に用いる場合、ユーザ(U1,U2,U3)の性別及び年齢のいずれか一方が集中度合いの推定に用いられもよい。
【0135】
空気調和装置(10)は、室内(r1)の天井に設置されるタイプに限定されず、壁面設置タイプ、床置きタイプ等であることができる。
【0136】
カメラ(26)は、室内(r1)のユーザ(U1,U2,U3)を撮像できる位置にあればよく、空気調和装置(10)に設けられずとも良い。例えば、カメラ(26)は、ユーザ(U1,U2,U3)のパーソナルコンピュータが有するウェブカメラであってもよい。
【0137】
上記第1実施形態及び第2実施形態に係る空調制御装置(50)は、室内(r1)に居るユーザの人数が一人である場合にも適用することができる。
【0138】
また、空調制御装置(50)は、室内(r1)に居るユーザの人数が複数の場合、集中度合いの推定対象者は、全員ではなく、任意であってもよい。
【0139】
推定部(66)は、集中度合いの推定時に、ユーザ情報(63)を利用せずともよい。
【0140】
集中度合いの推定結果に基づいて空気調和装置(10)の空調動作を制御することは、必ずしも必須ではない。従って、集中度合いの推定動作のみを行う集中度推定装置であってもよい。
【0141】
推定モデル(67)の更新動作は行われなくても良い。
【0142】
推定モデル(67)の更新動作を行う場合、集中度合いの推定時と推定モデル(67)の更新動作時とで、使用するパラメータが同じであってもよいし、異なっていても良い。例えば、集中度合いの推定時のパラメータは、画像、室内の温度及び湿度、吹き出し口(24)から吹き出される空気の吹き出し温度及び湿度、風量、風向、空調能力のうち少なくとも1つであることができる。推定モデル(67)の更新動作時のパラメータは、画像、室内の温度及び湿度、風速、輻射温度、CO2の濃度のうち少なくとも1つであることができる。
【0143】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、ニューラルネットワークで構築された推定モデル(67)を利用して集中度合いの推定が行われる場合を説明したが、集中度合いの推定動作は、上記推定モデル(67)を利用することなく、例えばプログラムを実行することによってなされてもよい。
【0144】
空調動作の制御は、制御部(14)に代えて演算装置(60)が行っても良い。
【0145】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、集中度情報の入力を受け付ける受け付け部が“リモートコントローラ(30)”である場合を例示した。しかし、受け付け部は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの、リモートコントローラとは別の機器で構成されていてもよい。また、集中度情報を入力する手段は、音声入力などであってもよい。