特許第6658823号(P6658823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658823
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】磁気センサおよび磁気センサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20200220BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20200220BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   G01R33/02 V
   G01R33/02 W
   G01R33/09
   G01D5/245 110B
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-156882(P2018-156882)
(22)【出願日】2018年8月24日
(65)【公開番号】特開2020-30155(P2020-30155A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年7月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−072026(JP,A)
【文献】 特開2018−004618(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081197(WO,A1)
【文献】 特開2015−141329(JP,A)
【文献】 特開2018−163023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界変換部と、磁界検出部と、軟磁性体よりなり互いに分離された複数のシールドとを備えた磁気センサであって、
前記磁界変換部は、軟磁性体よりなる1つ以上のヨークを含み、
前記1つ以上のヨークの各々は、前記磁気センサに対する入力磁界を受けて、出力磁界を発生するように構成され、
前記入力磁界は、第1の方向に平行な方向の入力磁界成分を含み、
前記1つ以上のヨークの各々は、前記第1の方向に平行な方向に見たときに、前記第1の方向と交差する第2の方向に長い形状を有し、
前記出力磁界は、前記第1の方向および第2の方向と交差する第3の方向に平行な方向の出力磁界成分であって前記入力磁界成分に応じて変化する出力磁界成分を含み、
前記磁界検出部は、前記出力磁界成分に依存する検出信号を生成し、
前記磁界検出部は、1つ以上の磁気検出素子を含み、
前記1つ以上の磁気検出素子の各々は、前記出力磁界を受ける位置に配置され、前記出力磁界を受けて、前記出力磁界成分に応じて変化する検出値を生成し、
前記検出信号は、前記検出値に依存し、
前記複数のシールドは、前記第1の方向に平行な方向に見たときに、前記第2の方向に並び、
前記複数のシールドの各々は、前記第1の方向に平行な方向に見たときに、前記磁界変換部の一部および前記磁界検出部の一部と重なるように配置され、且つ前記第2の方向における最大の寸法が前記第3の方向における最大の寸法よりも小さい形状を有していることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記磁界検出部は、前記1つ以上の磁気検出素子として、複数の磁気検出素子を含み、
前記第1の方向に平行な方向に見たときに、前記複数の磁気検出素子の各々は、その全体が、前記複数のシールドのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記磁界変換部は、前記1つ以上のヨークとして、複数のヨークを含み、
前記第1の方向に平行な方向に見たときに、前記複数のヨークの各々は、その全体が、前記複数のシールドのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置することを特徴とする請求項2記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記複数の磁気検出素子は、1つ以上の素子列を構成し、
前記1つ以上の素子列の各々は、前記1つ以上のヨークに沿って前記第2の方向に並び直列に接続された、前記複数の磁気検出素子のうちの2つ以上を含むことを特徴とする請求項2または3記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記1つ以上の素子列は、複数の素子列であり、
前記磁界検出部は、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、出力ポートと、前記電源ポートと前記出力ポートの間に設けられた第1の抵抗部と、前記出力ポートと前記グランドポートの間に設けられた第2の抵抗部とを含み、
前記第1および第2の抵抗部の各々は、前記複数の素子列のうちの1つ以上を含み、
前記検出信号は、前記出力ポートの電位に依存することを特徴とする請求項4記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記1つ以上の素子列は、4つ以上の素子列であり、
前記磁界検出部は、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートと、前記電源ポートと前記第1の出力ポートの間に設けられた第1の抵抗部と、前記第1の出力ポートと前記グランドポートの間に設けられた第2の抵抗部と、前記電源ポートと前記第2の出力ポートの間に設けられた第3の抵抗部と、前記第2の出力ポートと前記グランドポートの間に設けられた第4の抵抗部とを含み、
前記第1ないし第4の抵抗部の各々は、前記4つ以上の素子列のうちの1つ以上を含み、
前記検出信号は、前記第1の出力ポートと前記第2の出力ポートの電位差に依存することを特徴とする請求項4記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第1の方向、第2の方向および第3の方向は、互いに直交することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記1つ以上の磁気検出素子の各々は、磁気抵抗効果素子であり、
前記磁気抵抗効果素子は、所定の方向の磁化を有する磁化固定層と、印加される磁界に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層とを含み、
前記検出値は、前記自由層の磁化の方向が前記磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて変化することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁化固定層の磁化の方向は、前記第3の方向に平行な方向であることを特徴とする請求項8記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記入力磁界は、前記入力磁界成分の他に、前記第2の方向に平行な方向の磁界成分を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載の磁気センサと、
所定の磁界を発生する磁界発生部とを備えた磁気センサシステムであって、
前記磁気センサと前記磁界発生部は、前記所定の磁界の一部である部分磁界が前記磁気センサに印加されるように構成され、
前記部分磁界は、前記第1の方向に平行な方向の第1の磁界成分と、前記第2の方向に平行な方向の第2の磁界成分とを含み、
前記入力磁界は、前記部分磁界であり、
前記入力磁界成分は、前記第1の磁界成分であることを特徴とする磁気センサシステム。
【請求項12】
前記磁気センサと前記磁界発生部は、前記磁気センサに対する前記磁界発生部の相対的な位置が変化すると、前記第1の磁界成分が変化するように構成されていることを特徴とする請求項11記載の磁気センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサおよびこれを含む磁気センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途で、磁気センサが利用されている。磁気センサとしては、基板上に設けられたスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子を用いたものが知られている。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、印加磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを有している。基板上に設けられたスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、基板の面に平行な方向の磁界に対して感度を有するように構成される場合が多い。
【0003】
一方、磁気センサを含むシステムでは、基板上に設けられた磁気抵抗効果素子によって、基板の面に垂直な方向の磁界を検出したい場合がある。これを実現する磁気センサとしては、軟磁性体よりなる1つ以上の磁界変換素子を備えた磁気センサが知られている。磁界変換素子は、基板の面に垂直な方向の磁界を、基板の面に平行な方向の磁界に変換して、磁気抵抗効果素子に与える。このような磁気センサは、例えば特許文献1,2に記載されている。
【0004】
特許文献1には、基板と、複数の磁気抵抗検出素子と、少なくとも1つの磁束ガイドとを備えた磁気抵抗センサが記載されている。磁束ガイドは、Z軸方向の外部磁界をX軸方向の磁界成分に変換する。各磁気抵抗検出素子は、磁束ガイドからのX軸方向の磁界成分を検出する。磁束ガイドは、Y軸に平行な長軸と、X軸に平行な短軸を有している。磁束ガイドは、前述の磁界変換素子に対応する。特許文献1には、磁束ガイドがY軸方向の外部磁界を遮蔽することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、Z軸方向の異なる位置に配置された第1の軟磁性層および第2の軟磁性層と、第1の軟磁性層と第2の軟磁性層との間に設けられた磁気検出素子とを含む磁場検出装置が記載されている。第1の軟磁性層は、XY平面に平行な第1の平坦面を含み、第2の軟磁性層は、XY平面に平行な第2の平坦面を含み、第1の平坦面と第2の平坦面は互いに対向している。第1の平坦面と第2の平坦面の少なくとも一方には、1つ以上の凸部が形成されている。凸部は、Z軸方向の外部磁場成分による磁束を、磁気検出素子の感磁方向であるXY平面に沿うように曲げて、磁気検出素子に導く。凸部は、前述の磁界変換素子に対応する。第1および第2の軟磁性層は、XY平面に沿った方向の外部磁場成分に対してシールド効果を発揮する。
【0006】
また、特許文献2には、第1および第2の軟磁性層の各々のX軸方向の寸法とY軸方向の寸法をそれぞれLX,LYとしたときに、LX/LYを1以上4以下とすることにより、第1および第2の軟磁性層によって、Y軸方向の外部磁場が磁気検出素子に及ぶのをより効果的に防止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2016−531300号公報
【特許文献2】特開2018−72026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の磁界変換素子を備えた磁気センサでは、基板の面に平行な方向の磁界が印加されると、この磁界に起因して、磁気センサの検出信号に誤差が生じたり、磁気センサの感度が低下したりするという問題点がある。
【0009】
特許文献1には、前述の通り、磁束ガイドがY軸方向の外部磁界を遮蔽することが記載されている。しかし、特にY軸方向の外部磁界の強度が大きい場合には、磁束ガイドだけでY軸方向の外部磁界を十分に遮蔽することは困難な場合がある。
【0010】
そこで、磁界変換素子を備えた磁気センサに、特許文献2に記載された軟磁性層のようなシールドを追加することが考えられる。
【0011】
しかし、複数の磁気抵抗効果素子と1つ以上の磁界変換素子を備えた磁気センサでは、全ての磁気抵抗効果素子および磁界変換素子を覆うようにシールドを設けても、このシールドが十分なシールド効果を発揮できない場合があることが分かった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁界検出部と、入力磁界のうちの所定の方向の入力磁界成分を出力磁界成分に変換して磁界検出部に与える磁界変換部とを備えた磁気センサであって、入力磁界が、入力磁界成分の他に、入力磁界成分の方向以外の方向の磁界成分を含む場合における問題の発生を抑制できるようにした磁気センサ、ならびにこの磁気センサを含む磁気センサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の磁気センサは、磁界変換部と、磁界検出部と、軟磁性体よりなり互いに分離された複数のシールドとを備えている。磁界変換部は、軟磁性体よりなる1つ以上のヨークを含んでいる。1つ以上のヨークの各々は、磁気センサに対する入力磁界を受けて、出力磁界を発生するように構成されている。入力磁界は、第1の方向に平行な方向の入力磁界成分を含んでいる。1つ以上のヨークの各々は、第1の方向に平行な方向に見たときに、第1の方向と交差する第2の方向に長い形状を有している。出力磁界は、第1の方向および第2の方向と交差する第3の方向に平行な方向の出力磁界成分であって入力磁界成分に応じて変化する出力磁界成分を含んでいる。
【0014】
磁界検出部は、出力磁界成分に依存する検出信号を生成する。磁界検出部は、1つ以上の磁気検出素子を含んでいる。1つ以上の磁気検出素子の各々は、出力磁界を受けて、出力磁界成分に応じて変化する検出値を生成する。検出信号は、磁気検出素子の検出値に依存する。
【0015】
複数のシールドは、第1の方向に平行な方向に見たときに、第2の方向に並び、且つ磁界変換部および磁界検出部と重なるように配置されている。複数のシールドの各々は、第1の方向に平行な方向に見たときに、第2の方向における最大の寸法が第3の方向における最大の寸法よりも小さい形状を有している。
【0016】
本発明の磁気センサにおいて、磁界検出部は、1つ以上の磁気検出素子として、複数の磁気検出素子を含んでいてもよい。第1の方向に平行な方向に見たときに、複数の磁気検出素子の各々は、複数のシールドのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置していてもよい。
【0017】
また、磁界変換部は、1つ以上のヨークとして、複数のヨークを含んでいてもよい。第1の方向に平行な方向に見たときに、複数のヨークの各々は、複数のシールドのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置していてもよい。
【0018】
また、複数の磁気検出素子は、1つ以上の素子列を構成していてもよい。1つ以上の素子列の各々は、1つ以上のヨークに沿って第2の方向に並び直列に接続された、複数の磁気検出素子のうちの2つ以上を含んでいてもよい。
【0019】
また、1つ以上の素子列は、複数の素子列であってもよい。また、磁界検出部は、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、出力ポートと、電源ポートと出力ポートの間に設けられた第1の抵抗部と、出力ポートとグランドポートの間に設けられた第2の抵抗部とを含んでいてもよい。この場合、第1および第2の抵抗部の各々は、複数の素子列のうちの1つ以上を含んでいてもよい。また、検出信号は、出力ポートの電位に依存してもよい。
【0020】
また、1つ以上の素子列は、4つ以上の素子列であってもよい。また、磁界検出部は、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートと、電源ポートと第1の出力ポートの間に設けられた第1の抵抗部と、第1の出力ポートとグランドポートの間に設けられた第2の抵抗部と、電源ポートと第2の出力ポートの間に設けられた第3の抵抗部と、第2の出力ポートとグランドポートの間に設けられた第4の抵抗部とを含んでいてもよい。この場合、第1ないし第4の抵抗部の各々は、4つ以上の素子列のうちの1つ以上を含んでいてもよい。また、検出信号は、第1の出力ポートと第2の出力ポートの電位差に依存してもよい。
【0021】
また、本発明の磁気センサにおいて、第1の方向、第2の方向および第3の方向は、互いに直交していてもよい。
【0022】
また、本発明の磁気センサにおいて、1つ以上の磁気検出素子の各々は、磁気抵抗効果素子であってもよい。磁気抵抗効果素子は、所定の方向の磁化を有する磁化固定層と、印加される磁界に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層とを含んでいる。磁気検出素子の検出値は、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて変化する。磁化固定層の磁化の方向は、第3の方向に平行な方向であってもよい。
【0023】
また、本発明の磁気センサにおいて、入力磁界は、入力磁界成分の他に、第2の方向に平行な方向の磁界成分を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の磁気センサシステムは、本発明の磁気センサと、所定の磁界を発生する磁界発生部とを備えている。磁気センサと磁界発生部は、所定の磁界の一部である部分磁界が磁気センサに印加されるように構成されている。部分磁界は、第1の方向に平行な方向の第1の磁界成分と、第2の方向に平行な方向の第2の磁界成分とを含んでいる。入力磁界は、部分磁界である。入力磁界成分は、第1の磁界成分である。
【0025】
本発明の磁気センサシステムにおいて、磁気センサと磁界発生部は、磁気センサに対する磁界発生部の相対的な位置が変化すると、第1の磁界成分が変化するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の磁気センサおよび磁気センサシステムによれば、複数のシールドを備えたことにより、入力磁界が、入力磁界成分の他に、入力磁界成分の方向以外の方向の磁界成分を含む場合における問題の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムを含むカメラモジュールを示す斜視図である。
図2図1に示したカメラモジュールの内部を模式的に示す説明図である。
図3図1に示したカメラモジュールの駆動装置を示す斜視図である。
図4図1における駆動装置の複数のコイルを示す斜視図である。
図5図1における駆動装置の要部を示す側面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの要部を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサを示す斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサにおける複数の素子列の接続関係を示す平面図である。
図10】本発明の第1の実施の形態における磁界検出部の回路構成を示す回路図である。
図11】本発明の第1の実施の形態における配線部の一部と磁気抵抗効果素子を示す斜視図である。
図12】本発明の第1の実施の形態における磁気抵抗効果素子を示す斜視図である。
図13】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの一部を示す側面図である。
図14】本発明の第1の実施の形態における検出対象位置と入力磁界との関係を説明するための説明図である。
図15】本発明の第1の実施の形態における検出対象位置と入力磁界との関係を説明するための説明図である。
図16】本発明の第1の実施の形態における検出対象位置と入力磁界との関係を説明するための説明図である。
図17】比較例の磁気センサを示す斜視図である。
図18】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサにおける第2の効果を示す説明図である。
図19】本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサを示す斜視図である。
図20】本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。
図21】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサを示す斜視図である。
図22】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。
図23】シミュレーションにおける第1のモデルを示す斜視図である。
図24】第1のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示す特性図である。
図25】シミュレーションにおける第2のモデルを示す斜視図である。
図26】第2のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示す特性図である。
図27】シミュレーションにおける第3のモデルを示す斜視図である。
図28】第3のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示す特性図である。
図29】シミュレーションの結果を示す特性図である。
図30】本発明の第1ないし第3の実施の形態に係る磁気センサについて行った実験の内容を示す説明図である。
図31】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサについての実験結果を示す特性図である。
図32】本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサについての実験結果を示す特性図である。
図33】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサについての実験結果を示す特性図である。
図34】本発明の第1ないし第3の実施の形態に係る磁気センサの第1のヒステリシスパラメータの値の分布を示す特性図である。
図35】本発明の第1ないし第3の実施の形態に係る磁気センサの第2のヒステリシスパラメータの値の分布を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムを含むカメラモジュールの構成について説明する。図1は、カメラモジュール100を示す斜視図である。図2は、カメラモジュール100の内部を模式的に示す説明図である。なお、図2では、理解を容易にするために、カメラモジュール100の各部を、図1における対応する各部とは異なる寸法および配置で描いている。カメラモジュール100は、例えば、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構とを備えたスマートフォン用のカメラの一部を構成するものであり、CMOS等を用いたイメージセンサ200と組み合わせて用いられる。
【0029】
カメラモジュール100は、駆動装置3と、レンズ5と、筐体6と、基板7とを備えている。駆動装置3は、レンズ5を移動させるものである。駆動装置3は、本実施の形態に係る磁気センサシステムを含んでいる。磁気センサシステムについては、後で説明する。筐体6は、駆動装置3を保護するものである。基板7は、上面7aを有している。なお、図1では基板7を省略し、図2では筐体6を省略している。
【0030】
ここで、図1および図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、基板7の上面7aに垂直な一方向(図2では上側に向かう方向)をZ方向とする。X方向とY方向は、いずれも、基板7の上面7aに対して平行な方向である。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。また、以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。
【0031】
レンズ5は、その光軸方向がZ方向に平行な方向に一致するような姿勢で、基板7の上面7aの上方に配置されている。また、基板7は、レンズ5を通過した光を通過させる図示しない開口部を有している。図2に示したように、カメラモジュール100は、レンズ5および図示しない開口部を通過した光がイメージセンサ200に入射されるように、イメージセンサ200に対して位置合わせされている。
【0032】
次に、図2ないし図5を参照して、駆動装置3について詳しく説明する。図3は、駆動装置3を示す斜視図である。図4は、駆動装置3の複数のコイルを示す斜視図である。図5は、駆動装置3の要部を示す側面図である。
【0033】
駆動装置3は、第1の保持部材14と、第2の保持部材15と、複数の第1のワイヤ16と、複数の第2のワイヤ17とを備えている。第2の保持部材15は、レンズ5を保持するものである。図示しないが、第2の保持部材15は、例えば、その内部にレンズ5を装着できるように構成された筒状の形状を有している。
【0034】
第2の保持部材15は、第1の保持部材14に対して一方向、具体的にはレンズ5の光軸方向すなわちZ方向に平行な方向に位置変更可能に設けられている。本実施の形態では、第1の保持部材14は、その内部にレンズ5と第2の保持部材15を収容できるように構成された箱状の形状を有している。複数の第2のワイヤ17は、第1の保持部材14と第2の保持部材15とを接続し、第2の保持部材15が第1の保持部材14に対してZ方向に平行な方向に移動できるように、第2の保持部材15を支持している。
【0035】
第1の保持部材14は、基板7の上面7aの上方において、基板7に対してX方向に平行な方向とY方向に平行な方向に位置変更可能に設けられている。複数の第1のワイヤ16は、基板7と第1の保持部材14とを接続し、第1の保持部材14が基板7に対してX方向に平行な方向とY方向に平行な方向に移動できるように、第1の保持部材14を支持している。基板7に対する第1の保持部材14の相対的な位置が変化すると、基板7に対する第2の保持部材15の相対的な位置も変化する。
【0036】
駆動装置3は、更に、磁石31A,31B,32A,32B,33A,33B,34A,34Bと、コイル41,42,43,44,45,46を備えている。磁石31Aは、レンズ5の−Y方向の先に配置されている。磁石32Aは、レンズ5のY方向の先に配置されている。磁石33Aは、レンズ5の−X方向の先に配置されている。磁石34Aは、レンズ5のX方向の先に配置されている。磁石31B,32B,33B,34Bは、それぞれ、磁石31A,32A,33A,34Aの上方に配置されている。また、磁石31A,31B,32A,32B,33A,33B,34A,34Bは、第1の保持部材14に固定されている。
【0037】
図3に示したように、磁石31A,31B,32A,32Bは、それぞれX方向に長い直方体形状を有している。磁石33A,33B,34A,34Bは、それぞれY方向に長い直方体形状を有している。磁石31A,32Bの磁化の方向は、Y方向である。磁石31B,32Aの磁化の方向は、−Y方向である。磁石33A,34Bの磁化の方向は、X方向である。磁石33B,34Aの磁化の方向は、−X方向である。図1および図3では、磁石31A,31B,32B,33B,34A,34Bの磁化の方向を、各磁石に重なるように描かれた矢印で示している。また、図5では、磁石31A,31Bの磁化の方向を、磁石31A,31B内に描かれた矢印によって示している。
【0038】
磁石31Aは、磁石31AのX方向の端に位置する端面31A1を有している。磁石34Aは、磁石34Aの−Y方向の端に位置する端面34A1を有している。
【0039】
コイル41は、磁石31Aと基板7の間に配置されている。コイル42は、磁石32Aと基板7との間に配置されている。コイル43は、磁石33Aと基板7との間に配置されている。コイル44は、磁石34Aと基板7との間に配置されている。コイル45は、磁石31A,31Bとレンズ5との間に配置されている。コイル46は、磁石32A,32Bとレンズ5との間に配置されている。また、コイル41,42,43,44は、基板7に固定されている。コイル45,46は、第2の保持部材15に固定されている。
【0040】
コイル41には、主に、磁石31Aから発生される磁界が印加される。コイル42には、主に、磁石32Aから発生される磁界が印加される。コイル43には、主に、磁石33Aから発生される磁界が印加される。コイル44には、主に、磁石34Aから発生される磁界が印加される。
【0041】
また、図2図4および図5に示したように、コイル45は、磁石31Aに沿ってX方向に延びる第1の導体部45Aと、磁石31Bに沿ってX方向に延びる第2の導体部45Bと、第1および第2の導体部45A,45Bを接続する2つの第3の導体部とを含んでいる。また、図2および図4に示したように、コイル46は、磁石32Aに沿ってX方向に延びる第1の導体部46Aと、磁石32Bに沿ってX方向に延びる第2の導体部46Bと、第1および第2の導体部46A,46Bを接続する2つの第3の導体部とを含んでいる。
【0042】
コイル45の第1の導体部45Aには、主に、磁石31Aから発生される磁界のY方向の成分が印加される。コイル45の第2の導体部45Bには、主に、磁石31Bから発生される磁界の−Y方向の成分が印加される。コイル46の第1の導体部46Aには、主に、磁石32Aから発生される磁界の−Y方向の成分が印加される。コイル46の第2の導体部46Bには、主に、磁石32Bから発生される磁界のY方向の成分が印加される。
【0043】
駆動装置3は、更に、コイル41,42の一方の内側において基板7に固定された磁気センサ30と、コイル43,44の一方の内側において基板7に固定された磁気センサ30を備えている。ここでは、2つの磁気センサ30は、それぞれコイル41の内側とコイル44の内側に配置されているものとする。後で説明するように、この2つの磁気センサ30は、手振れの影響を低減するためにレンズ5の位置を変化させる際に用いられる。
【0044】
コイル41の内側に配置された磁気センサ30は、磁石31Aから発生される磁界を検出し、磁石31Aの位置に対応した検出信号を出力する。コイル44の内側に配置された磁気センサ30は、磁石34Aから発生される磁界を検出し、磁石34Aの位置に対応した検出信号を出力する。磁気センサ30の構成については、後で説明する。
【0045】
駆動装置3は、更に、磁石13と、磁気センサ20とを備えている。磁気センサ20は、自動的に焦点合わせを行う際にレンズ5の位置を検出するために用いられる。磁気センサ20は、磁石31Aの端面31A1と磁石34Aの端面34A1の近傍において基板7に固定されている。磁気センサ20は、例えば、磁気抵抗効果素子等の磁界を検出する素子によって構成されている。
【0046】
磁石13は、磁気センサ20の上方において、第2の保持部材15に固定されている。磁石13は、直方体形状を有している。第1の保持部材14に対する第2の保持部材15の相対的な位置がZ方向に平行な方向に変化すると、第1の保持部材14に対する磁石13の相対的な位置もZ方向に平行な方向に変化する。
【0047】
ここで、図2ないし図5を参照して、駆動装置3の動作について説明する。始めに、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構について簡単に説明する。駆動装置3は、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構の一部を構成する。駆動装置3、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構は、カメラモジュール100の外部の図示しない制御部によって制御される。
【0048】
光学式手振れ補正機構は、例えば、カメラモジュール100の外部のジャイロセンサ等によって、手振れを検出できるように構成されている。光学式手振れ補正機構が手振れを検出すると、図示しない制御部は、手振れの態様に応じて基板7に対するレンズ5の相対的な位置が変化するように、駆動装置3を制御する。これにより、レンズ5の絶対的な位置を安定化させて、手振れの影響を低減することができる。なお、基板7に対するレンズ5の相対的な位置は、手振れの態様に応じて、X方向に平行な方向またはY方向に平行な方向に変化する。
【0049】
オートフォーカス機構は、例えば、イメージセンサ200またはオートフォーカスセンサ等によって、被写体に焦点が合った状態を検出できるように構成されている。図示しない制御部は、被写体に焦点が合った状態になるように、駆動装置3によって、基板7に対するレンズ5の相対的な位置をZ方向に平行な方向に変化させる。これにより、自動的に被写体に対する焦点合わせを行うことができる。
【0050】
次に、光学式手振れ補正機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。図示しない制御部によってコイル41,42に電流が流されると、磁石31A,32Aから発生される磁界とコイル41,42から発生される磁界との相互作用によって、磁石31A,32Aが固定された第1の保持部材14は、Y方向に平行な方向に移動する。その結果、レンズ5も、Y方向に平行な方向に移動する。また、図示しない制御部によってコイル43,44に電流が流されると、磁石33A,34Aから発生される磁界とコイル43,44から発生される磁界との相互作用によって、磁石33A,34Aが固定された第1の保持部材14は、X方向に平行な方向に移動する。その結果、レンズ5も、X方向に平行な方向に移動する。図示しない制御部は、2つの磁気センサ30によって生成される磁石31A,34Aの位置に対応した信号を測定することによって、レンズ5の位置を検出する。
【0051】
次に、オートフォーカス機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。基板7に対するレンズ5の相対的な位置をZ方向に移動させる場合、図示しない制御部は、第1の導体部45AではX方向に電流が流れ、第2の導体部45Bでは−X方向に電流が流れるように、コイル45に電流を流し、第1の導体部46Aでは−X方向に電流が流れ、第2の導体部46BではX方向に電流が流れるように、コイル46に電流を流す。これらの電流と磁石31A,31B,32A,32Bから発生される磁界によって、コイル45の第1および第2の導体部45A,45Bとコイル46の第1および第2の導体部46A,46Bに、Z方向のローレンツ力が作用する。これにより、コイル45,46が固定された第2の保持部材15は、Z方向に移動する。その結果、レンズ5も、Z方向に移動する。
【0052】
基板7に対するレンズ5の相対的な位置を−Z方向に移動させる場合には、図示しない制御部は、コイル45,46に、Z方向に移動させる場合とは逆方向に電流を流す。
【0053】
基板7に対するレンズ5の相対的な位置がZ方向に平行な方向に変化すると、磁気センサ20に対する磁石13の相対的な位置もZ方向に平行な方向に変化する。磁気センサ20は、少なくとも磁石13が発生する磁界を検出し、磁石13の位置に対応した信号を生成する。図示しない制御部は、磁気センサ20によって生成される信号を測定することによって、レンズ5の位置を検出する。
【0054】
次に、図1および図5を参照して、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサシステムは、本実施の形態に係る磁気センサと、所定の磁界を発生する磁界発生部とを備えている。本実施の形態では、コイル41の内側に配置された磁気センサ30、または、コイル44の内側に配置された磁気センサ30が、本実施の形態に係る磁気センサに対応する。コイル41の内側に配置された磁気センサ30を備えた磁気センサシステムでは、磁石31Aが、磁界発生部に対応する。コイル44の内側に配置された磁気センサ30を備えた磁気センサシステムでは、磁石34Aが、磁界発生部に対応する。
【0055】
以下、図6を参照して、コイル41の内側に配置された磁気センサ30を備えた磁気センサシステム101について説明する。図6は、磁気センサシステム101の要部を示す斜視図である。なお、図6では、理解を容易にするために、コイル41を省略し、磁石31Aを図1ないし図3図5とは異なる寸法および配置で描いている。以下の説明では、コイル41の内側に配置された磁気センサ30を、本実施の形態に係る磁気センサ30とも言う。
【0056】
磁気センサ30と、磁界発生部である磁石31Aは、磁石31Aが発生する磁界の一部である部分磁界が磁気センサ30に印加されるように構成されている。この部分磁界は、Z方向に平行な第1の磁界成分Hzと、Y方向に平行な第2の磁界成分Hyとを含んでいる。Z方向は、本発明における第1の方向に対応する。Y方向は、本発明における第2の方向に対応する。
【0057】
図6に示したように、本実施の形態では、磁石31Aの磁化の方向はY方向であり、第2の磁界成分Hyの方向は−Y方向である。なお、図6では、磁石31Aが図5に示した位置からY方向に移動したときの第1の磁界成分Hzを示している。
【0058】
前述のように、磁気センサ30は、基板7に固定され、磁石31Aは、第1の保持部材14に固定されている(図2参照)。基板7に対する第1の保持部材14の位置が、Y方向に平行な方向に変化すると、磁気センサ30に対する磁石31Aの相対的な位置も、Y方向に平行な方向に変化する。磁気センサ30の検出信号は、Y方向に平行な方向についての、磁気センサ30に対する磁石31Aの相対的な位置に対応する。以下、Y方向に平行な方向についての、磁気センサ30に対する磁石31Aの相対的な位置を、検出対象位置とも言う。磁気センサシステム101は、この検出対象位置を検出するための位置検出装置である。
【0059】
また、磁気センサ30と磁石31Aは、検出対象位置が変化すると、第1の磁界成分Hzが変化するように構成されている。本実施の形態では、第1の保持部材14がY方向に平行な方向に移動して、検出対象位置が変化すると、第1の磁界成分Hzが変化する。第1の磁界成分Hzの変化の態様については、後で説明する。
【0060】
次に、本実施の形態に係る磁気センサ30について説明する。図7は、磁気センサ30を示す斜視図である。図8は、磁気センサ30を示す平面図である。磁気センサ30は、磁界変換部50と、磁界検出部60と、複数のシールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dを備えている。なお、図8では、シールド71A,71B,71C,71Dを省略している。
【0061】
磁界変換部50は、軟磁性体よりなる1つ以上のヨーク51を含んでいる。1つ以上のヨーク51の各々は、Z方向に平行な方向に見たとき、例えば上方から見たときに、Y方向に長い形状を有している。また、1つ以上のヨーク51の各々は、Z方向に平行な方向の入力磁界成分を含む入力磁界を受けて、出力磁界を発生するように構成されている。
【0062】
本実施の形態では、入力磁界は、前述の部分磁界である。また、入力磁界成分は、前述の第1の磁界成分Hz(図6参照)である。出力磁界は、X方向に平行な方向の出力磁界成分であって入力磁界成分(第1の磁界成分Hz)に応じて変化する出力磁界成分を含んでいる。X方向は、本発明における第3の方向に対応する。また、本実施の形態では、第1の方向(Z方向)、第2の方向(Y方向)および第3の方向(X方向)は、互いに直交する。また、入力磁界は、入力磁界成分(第1の磁界成分Hz)の他に、Y方向に平行な方向の磁界成分である第2の磁界成分Hyを含んでいる。
【0063】
図7および図8に示したように、本実施の形態では、磁界変換部50は、1つ以上のヨーク51として、複数のヨーク51を含んでいる。複数のヨーク51の各々は、例えば、Y方向に長い直方体形状を有している。複数のヨーク51の形状は同じである。
【0064】
本実施の形態では特に、ヨーク51の数は8である。以下、8個のヨーク51を、符号51A,51B,51C,51D,51E,51F,51G,51Hを用いて区別する。8個のヨーク51A,51B,51C,51D,51E,51F,51G,51Hは、X方向にこの順に並ぶように配置されている。
【0065】
磁界検出部60は、出力磁界を受けて、出力磁界成分に依存する検出信号を生成する。この検出信号は、前述の磁気センサ30が出力する検出信号と同じである。また、前述のように、出力磁界成分は入力磁界成分(第1の磁界成分Hz)に応じて変化する。従って、検出信号は、入力磁界成分(第1の磁界成分Hz)に依存する。
【0066】
磁界検出部60は、1つ以上の磁気検出素子90を含んでいる。1つ以上の磁気検出素子90の各々は、出力磁界を受けて、出力磁界成分に応じて変化する検出値を生成する。磁界検出部60の検出信号は、この検出値に依存する。
【0067】
本実施の形態では特に、磁界検出部60は、1つ以上の磁気検出素子90として、複数の磁気検出素子90を含んでいる。また、複数の磁気検出素子90は、1つ以上の素子列を構成している。1つ以上の素子列の各々は、1つ以上のヨーク51に沿ってY方向に並び直列に接続された、複数の磁気検出素子90のうちの2つ以上を含んでいる。
【0068】
本実施の形態では特に、複数の磁気検出素子90の各々は磁気抵抗効果素子である。以下、磁気抵抗効果素子をMR素子と記す。また、以下、磁気検出素子90をMR素子90とも記す。本実施の形態では、磁気検出素子90の検出値は、MR素子90の抵抗値である。
【0069】
本実施の形態では、1つ以上の素子列は、複数の素子列、特に4つ以上の素子列である。図7および図8に示した例では、素子列の数は16である。また、1つの素子列を構成するMR素子90の数は4である。1つのヨーク51に対して2つの素子列が対応している。1つのヨーク51に対応する2つの素子列は、1つのヨーク51の−Z方向の端部の近傍において、X方向における1つのヨーク51の両側に配置されている。
【0070】
図9は、複数の素子列の接続関係を示している。図9では、磁界変換部50の構成要素を破線で示している。図8および図9において、符号T1〜T16が16個の素子列を示している。素子列T1,T2は、ヨーク51Aに対応している。素子列T3,T4はヨーク51Bに対応している。素子列T5,T6は、ヨーク51Cに対応している。素子列T7,T8はヨーク51Dに対応している。素子列T9,T10は、ヨーク51Eに対応している。素子列T11,T12はヨーク51Fに対応している。素子列T13,T14は、ヨーク51Gに対応している。素子列T15,T16はヨーク51Hに対応している。1つの素子列を構成する4つのMR素子90は、直列に接続されている。
【0071】
素子列T1,T3,T5,T7,T9,T11,T13,T15は、それぞれヨーク51A,51B,51C,51D,51E,51F,51G,51Hの−X側に配置されている。素子列T2,T4,T6,T8,T10,T12,T14,T16は、それぞれヨーク51A,51B,51C,51D,51E,51F,51G,51HのX側に配置されている。
【0072】
次に、図9および図10を参照して、磁界検出部60の回路構成について説明する。図10は、磁界検出部60の回路構成を示す回路図である。図10に示したように、磁界検出部60は、所定の電圧が印加される電源ポートVと、グランドに接続されるグランドポートGと、第1の出力ポートE1と、第2の出力ポートE2と、第1の抵抗部61と、第2の抵抗部62と、第3の抵抗部63と、第4の抵抗部64を含んでいる。
【0073】
第1の抵抗部61は、電源ポートVと第1の出力ポートE1との間に設けられている。第2の抵抗部62は、第1の出力ポートE1とグランドポートGとの間に設けられている。第3の抵抗部63は、電源ポートVと第2の出力ポートE2との間に設けられている。第4の抵抗部64は、第2の出力ポートE2とグランドポートGとの間に設けられている。磁界検出部60の検出信号は、第1の出力ポートE1と第2の出力ポートE2との間の電位差に依存する。
【0074】
第1ないし第4の抵抗部61〜64の各々は、1つ以上の素子列を含んでいる。本実施の形態では特に、第1ないし第4の抵抗部61〜64の各々は、直列に接続された4つの素子列を含んでいる。より具体的に説明すると、第1の抵抗部61は、直列に接続された素子列T1,T3,T5,T7を含んでいる。第2の抵抗部62は、直列に接続された素子列T9,T11,T13,T15を含んでいる。第3の抵抗部63は、直列に接続された素子列T2,T4,T6,T8を含んでいる。第4の抵抗部64は、直列に接続された素子列T10,T12,T14,T16を含んでいる。
【0075】
磁界検出部60は、複数のMR素子90を電気的に接続する配線部80を含んでいる。ここで、図11を参照して、配線部80について説明する。図11は、配線部80の一部とMR素子90を示す斜視図である。配線部80は、各素子列を構成する4つのMR素子90を電気的に接続するための複数の下部電極81と複数の上部電極82とを含んでいる。複数のMR素子90は、複数の下部電極81の上に配置されている。複数の上部電極82は、複数のMR素子90の上に配置されている。
【0076】
複数のMR素子90と下部電極81および上部電極82との接続関係は、以下の通りである。複数の下部電極81の各々は、Y方向に細長い形状を有している。Y方向に隣接する2つの下部電極81の間には、間隙が形成されている。下部電極81の上面上において、Y方向の両端の近傍に、MR素子90が配置されている。複数の上部電極82の各々は、Y方向に隣接する2つの下部電極81上に配置されて隣接する2つのMR素子90を電気的に接続する。これにより、各素子列を構成する4つのMR素子90が直列に接続される。
【0077】
配線部80は、更に、複数の接続電極を含んでいる。第1ないし第4の抵抗部61〜64の各々において、複数の接続電極は、複数の素子列が直列に接続されるように複数の下部電極81を電気的に接続する。
【0078】
次に、図12を参照して、MR素子90の構成の一例について説明する。図12は、MR素子90を示す斜視図である。この例では、MR素子90は、所定の方向の磁化を有する磁化固定層92と、印加される磁界に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層94と、磁化固定層92と自由層94の間に配置されたギャップ層93と、反強磁性層91とを含んでいる。反強磁性層91、磁化固定層92、ギャップ層93および自由層94は、下部電極81側からこの順に積層されている。反強磁性層91は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層92との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層92の磁化の方向を固定する。
【0079】
MR素子90は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、磁気的信号検出用のセンス電流を、MR素子90を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプのGMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層93はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層93は非磁性導電層である。
【0080】
MR素子90の抵抗値は、自由層94の磁化の方向が磁化固定層92の磁化の方向に対してなす角度に応じて変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値になり、角度が180°のときに抵抗値は最大値になる。
【0081】
本実施の形態では、磁化固定層92の磁化の方向は、X方向に平行な方向である。また、本実施の形態では、第1の抵抗部61における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向と、第2の抵抗部62における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向は、互いに反対方向である。第3の抵抗部63における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向は、第1の抵抗部61における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向と同じである。第4の抵抗部64における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向は、第2の抵抗部62における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向と同じである。
【0082】
本実施の形態では特に、第1の抵抗部61と第3の抵抗部63の各々における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向は、X方向である。第2の抵抗部62と第4の抵抗部64の各々における複数のMR素子90の磁化固定層92の磁化の方向は、−X方向である。
【0083】
本実施の形態では、複数のMR素子90の各々は、Y方向に平行な方向に長い形状を有している。これにより、複数のMR素子90の各々の自由層94は、磁化容易軸方向がY方向に平行な方向となる形状異方性を有している。そのため、印加される磁界が存在しない状態では、自由層94の磁化の方向は、Y方向に平行な方向になっている。出力磁界成分が存在する場合には、出力磁界成分の方向および強度に応じて、自由層94の磁化の方向が変化する。従って、自由層94の磁化の方向が磁化固定層92の磁化の方向に対してなす角度は、複数のMR素子90の各々が受けた出力磁界成分の方向および強度によって変化する。そのため、複数のMR素子90の各々の抵抗値は、出力磁界成分に対応したものとなる。
【0084】
本実施の形態では、第2の抵抗部62における複数のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向は、第1の抵抗部61における複数のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向と同じである。一方、第3の抵抗部63における複数のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向と、第4の抵抗部64における複数のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向は、第1の抵抗部61における複数のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向とは反対である。
【0085】
なお、MR素子90の構成は、図12を参照して説明した例に限られない。例えば、MR素子90は、反強磁性層91を含まない構成であってもよい。この構成は、例えば、反強磁性層91および磁化固定層92の代わりに、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層とを含む人工反強磁性構造の磁化固定層を含む構成であってもよい。
【0086】
次に、シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dについて説明する。シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dは、いずれも軟磁性体によって構成されている。
【0087】
シールド71A,71B,71C,71Dは、互いに分離されて、磁界変換部50および磁界検出部60の上方に配置されている。Z方向に平行な方向に見たとき、例えば上方から見たときに、シールド71A,71B,71C,71Dは、Y方向にこの順に並び、且つ磁界変換部50および磁界検出部60と重なるように配置されている。
【0088】
シールド72A,72B,72C,72Dは、互いに分離されて、磁界変換部50および磁界検出部60の下方に配置されている。Z方向に平行な方向に見たときに、シールド72A,72B,72C,72Dは、Y方向にこの順に並び、且つ磁界変換部50および磁界検出部60と重なるように配置されている。
【0089】
シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dの各々は、Z方向に平行な方向に見たときに、Y方向における最大の寸法がX方向における最大の寸法よりも小さい形状を有している。以下、シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dのうちの任意の1つを個別シールド70と言う。個別シールド70は、板状の形状を有していてもよい。Z方向に平行な方向に見たときの個別シールド70の形状は、X方向に長い矩形であってもよい。
【0090】
Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71Aはシールド72Aと重なり、シールド71Bはシールド72Bと重なり、シールド71Cはシールド72Cと重なり、シールド71Dはシールド72Dと重なる。
【0091】
図7ないし図9に示したように、Z方向に平行な方向に見たときに、複数のMR素子90の各々は、シールド71A,71B,71C,71Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置し、且つシールド72A,72B,72C,72Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置している。
【0092】
Z方向に平行な方向に見たときに、1つの素子列を構成する4つのMR素子90のうち、−Y方向の端に位置するMR素子90は、シールド71A,72Aの各々の外縁の内側に位置している。Z方向に平行な方向に見たときに、1つの素子列を構成する4つのMR素子90のうち、−Y方向の端から2番目に位置するMR素子90は、シールド71B,72Bの各々の外縁の内側に位置している。Z方向に平行な方向に見たときに、1つの素子列を構成する4つのMR素子90のうち、Y方向の端から2番目に位置するMR素子90は、シールド71C,72Cの各々の外縁の内側に位置している。Z方向に平行な方向に見たときに、1つの素子列を構成する4つのMR素子90のうち、Y方向の端に位置するMR素子90は、シールド71D,72Dの各々の外縁の内側に位置している。
【0093】
図8に示したように、本実施の形態では、ヨーク51は、4つの被シールド部分51a,51b,51c,51dと、3つの露出部分51e,51f,51gを含んでいる。
【0094】
被シールド部分51aは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71A,72Aの各々の外縁の内側に位置している。被シールド部分51bは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71B,72Bの各々の外縁の内側に位置している。被シールド部分51cは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71C,72Cの各々の外縁の内側に位置している。被シールド部分51dは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71D,72Dの各々の外縁の内側に位置している。
【0095】
露出部分51e,51f,51gは、いずれも、Z方向に平行な方向に見たときに、どの個別シールド70とも重なっていない。露出部分51eは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71Aとシールド71Bの間およびシールド72Aとシールド72Bの間に位置している。露出部分51fは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71Bとシールド71Cの間およびシールド72Bとシールド72Cの間に位置している。露出部分51gは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71Cとシールド71Dの間およびシールド72Cとシールド72Dの間に位置している。
【0096】
図13は、磁気センサ30の一部を示す側面図である。図13は、Y方向に平行な方向に見たときの、シールド71A,72Aと、ヨーク51A,51Bと、ヨーク51Aの近傍に位置する2つのMR素子90と、ヨーク51Bの近傍に位置する2つのMR素子90とを示している。
【0097】
本実施の形態では、入力磁界は、入力磁界成分(第1の磁界成分Hz)の他に、入力磁界成分の方向以外の方向の磁界成分である第2の磁界成分Hyを含んでいる。シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dの主な役割は、第2の磁界成分Hyに対応する磁束を吸収して、第2の磁界成分Hyに起因して磁界検出部60に印加される、Y方向に平行な方向の磁界の強度を小さくすることである。
【0098】
個別シールド70は、軟磁性材料によって構成されている。この軟磁性材料としては、例えばNiFeを用いることができる。NiFeを用いて個別シールド70を構成する場合には、個別シールド70の熱応力を低減するため、熱膨張係数が小さくなる組成である、Niの割合が35〜60重量%である組成のNiFeを用いることが好ましい。更に個別シールド70の磁気特性も考慮すると、Niの割合が40〜60重量%である組成のNiFeを用いることがより好ましい。
【0099】
個別シールド70に求められる性能の1つは、最大磁束吸収量が大きいことである。個別シールド70の最大磁束吸収量は、個別シールド70における飽和磁化と厚み(Z方向の寸法)の積にほぼ比例する。個別シールド70の性能を確保するために、個別シールド70における飽和磁化と厚みの積、すなわち単位面積当たりの磁気モーメントは、0.6emu/cm2以上であることが好ましい。
【0100】
図示しないが、磁気センサ30は、更に、センサ基板と絶縁部とを備えている。シールド72A,72B,72C,72Dは、センサ基板の上に配置されている。絶縁部は、絶縁材料よりなり、磁界変換部50と、磁界検出部60と、シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dを覆っている。
【0101】
以下、本実施の形態に係る磁気センサ30および磁気センサシステム101の作用および効果について説明する。始めに、磁界検出部60の作用について説明する。ここでは、入力磁界が入力磁界成分のみからなると仮定して説明する。入力磁界成分が存在せず、その結果、出力磁界成分も存在しない状態では、MR素子90の自由層94の磁化の方向は、Y方向に平行な方向になっている。入力磁界成分の方向がZ方向の場合、第1および第2の抵抗部61,62内のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向はX方向になり、第3および第4の抵抗部63,64内のMR素子90が受ける出力磁界成分の方向は−X方向になる。この場合、第1および第2の抵抗部61,62内のMR素子90の自由層94の磁化の方向は、Y方向に平行な方向からX方向に向かって傾き、第3および第4の抵抗部63,64内のMR素子90の自由層94の磁化の方向は、Y方向に平行な方向から−X方向に向かって傾く。その結果、出力磁界成分が存在しない状態と比べて、第1および第4の抵抗部61,64内のMR素子90の抵抗値は減少し、第1および第4の抵抗部61,64の抵抗値も減少する。また、出力磁界成分が存在しない状態と比べて、第2および第3の抵抗部62,63内のMR素子90の抵抗値は増加し、第2および第3の抵抗部62,63の抵抗値も増加する。
【0102】
入力磁界成分の方向が−Z方向の場合は、出力磁界成分の方向と、第1ないし第4の抵抗部61〜64の抵抗値の変化は、上述の入力磁界成分の方向がZ方向の場合とは逆になる。
【0103】
MR素子90の抵抗値の変化量は、MR素子90が受ける出力磁界成分の強度に依存する。出力磁界成分の強度が大きくなると、MR素子90の抵抗値は、その増加量またはその減少量がそれぞれ大きくなる方向に変化する。出力磁界成分の強度が小さくなると、MR素子90の抵抗値は、その増加量またはその減少量がそれぞれ小さくなる方向に変化する。出力磁界成分の強度は、入力磁界成分の強度に依存する。
【0104】
このように、入力磁界成分の方向と強度が変化すると、第1ないし第4の抵抗部61〜64のそれぞれの抵抗値は、第1および第4の抵抗部61,64の抵抗値が増加すると共に第2および第3の抵抗部62,63の抵抗値が減少するか、第1および第4の抵抗部61,64の抵抗値が減少すると共に第2および第3の抵抗部62,63の抵抗値が増加するように変化する。これにより、図9および図10に示した第1の出力ポートE1と第2の出力ポートE2との間の電位差が変化する。磁界検出部60は、第1の出力ポートE1と第2の出力ポートE2との間の電位差に依存する検出信号を生成する。検出信号は、MR素子90の抵抗値に依存する。MR素子90の抵抗値は、本発明における検出値に対応する。
【0105】
次に、図14ないし図16を参照して、検出対象位置と入力磁界との関係について説明する。図14ないし図16は、検出対象位置と入力磁界との関係を示している。図14ないし図16において、記号Hを付した矢印は、磁気センサ30に印加される部分磁界すなわち入力磁界を表している。また、記号Hzを付した矢印は、第1の磁界成分Hzすなわち入力磁界成分を表し、記号Hyを付した矢印は、第2の磁界成分Hyを表している。
【0106】
図14は、磁石31AのY方向の位置が、磁気センサ30のY方向の位置に一致した状態を示している。図15は、磁石31Aが、図14に示した位置からY方向に移動した状態を示している。図16は、磁石31Aが、図14に示した位置から−Y方向に移動した状態を示している。図14ないし図16に示したように、Y方向に平行な方向についての、磁気センサ30に対する磁石31Aの相対的な位置すなわち検出対象位置が変化すると、第1の磁界成分Hzすなわち入力磁界成分が変化する。
【0107】
前述の磁界検出部60の作用の説明では、入力磁界が入力磁界成分すなわち第1の磁界成分Hzのみからなると仮定した。しかし、本実施の形態に係る磁気センサシステム101では、図14ないし図16から理解されるように、入力磁界は、入力磁界成分の他に第2の磁界成分Hyを含んでいる。
【0108】
第2の磁界成分Hyが磁界検出部60に印加されると、MR素子90の自由層94に、X方向に平行な方向の出力磁界成分の他に、Y方向に平行な方向の第2の磁界成分Hyが印加される。この場合、入力磁界が入力磁界成分のみからなる場合に比べて、自由層94の磁化の方向が磁化固定層92の磁化の方向に対してなす角度が異なってしまい、その結果、MR素子90の抵抗値および磁界検出部60の検出信号が異なってしまう。そのため、第2の磁界成分Hyは、磁界検出部60の検出信号に誤差が生じたり、磁界検出部60の感度が低下したりする原因となる。
【0109】
本実施の形態では、シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dによって、第2の磁界成分Hyに対応する磁束を吸収して、第2の磁界成分Hyに起因して磁界検出部60に印加される、Y方向に平行な方向の磁界の強度を小さくすることができる。
【0110】
このように、本実施の形態によれば、磁気センサ30に印加される入力磁界が、入力磁界成分の他に、入力磁界成分の方向以外の方向の磁界成分である第2の磁界成分Hyを含む場合における問題の発生を抑制することができる。
【0111】
次に、本実施の形態における第1の特徴と、それによる第1の効果について説明する。第1の特徴は、複数のヨーク51およびシールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dの形状および配置に関する特徴である。
【0112】
第1の効果について説明する前に、比較例の磁気センサ130について説明する。図17は、比較例の磁気センサ130を示す斜視図である。比較例の磁気センサ130は、本実施の形態におけるシールド71A,71B,71C,71Dの代わりに1つのシールド171を備え、本実施の形態におけるシールド72A,72B,72C,72Dの代わりに1つのシールド172を備えている。シールド171は、磁界変換部50および磁界検出部60の上方に配置されている。シールド172は、磁界変換部50および磁界検出部60の下方に配置されている。Z方向に平行な方向に見たとき、シールド171,172の各々は、磁界変換部50および磁界検出部60と重なるように配置されている。シールド171,172の各々は、Z方向に平行な方向に見たときに、Y方向における最大の寸法がX方向における最大の寸法よりも大きい形状を有している。すなわち、シールド171,172の各々の長手方向は、Y方向に平行な方向に向いている。比較例の磁気センサ130のその他の構成は、本実施の形態に係る磁気センサ30と同じである。
【0113】
次に、比較例の磁気センサ130の問題点について説明する。ここで、仮に、比較例の磁気センサ130を、シールド171,172と複数のヨーク51の各々の長手方向がX方向に平行な方向に向く姿勢で配置した場合について考える。この場合、第2の磁界成分Hyの方向は、複数のヨーク51の長手方向および複数の素子列の長手方向に直交する。この場合、シールド171,172における第2の磁界成分Hyに対応する磁束の流入端の近傍と、シールド171,172における第2の磁界成分Hyに対応する磁束の流出端の近傍では、第2の磁界成分Hyに対応する磁束が大きく曲がる。しかも、磁束の流入端の近傍と磁束の流出端の近傍では、第2の磁界成分Hyに対応する磁束の方向が大きく異なる。そのため、素子列の位置によって、第2の磁界成分Hyから素子列が受ける影響が異なる。その結果、磁界検出部60の検出信号に誤差が生じる。
【0114】
次に、図17に示した通りに、磁気センサ130を、シールド171,172と複数のヨーク51の各々の長手方向がY方向に平行な方向に向く姿勢で配置した場合について考える。この場合、1つの素子列内の複数のMR素子90において、MR素子90の位置によって、第2の磁界成分HyからMR素子90が受ける影響が異なることが起こり得る。しかし、その場合でも、1つの素子列内において、第2の磁界成分Hyから複数のMR素子90が受けた影響を相殺することができる。そのため、磁界検出部60の検出信号に生じる誤差を低減することができる。
【0115】
しかし、比較例の磁気センサ130を、図17に示した通りに配置した場合には、以下のような問題が生じる。この場合、長手方向がX方向に平行な方向に向く姿勢でシールド171,172が配置された場合と比べて、第2の磁界成分Hyの方向についてのシールド171,172の寸法が大きくなる。これにより、シールド171,172の各々において、第2の磁界成分Hyに対する反磁界が小さくなる。その結果、シールド171,172による第2の磁界成分Hyの吸収能力が低下する。
【0116】
次に、本実施の形態における第1の特徴について説明する。第1の特徴の内容は、以下の通りである。本実施の形態では、Z方向に平行な方向に見たときに、互いに分離されたシールド71A,71B,71C,71DがY方向に並ぶように配置され、互いに分離されたシールド72A,72B,72C,72DがY方向に並ぶように配置されている。シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dの各々は、Z方向に平行な方向に見たときに、Y方向における最大の寸法がX方向における最大の寸法よりも小さい形状を有している。
【0117】
上記の第1の特徴により、本実施の形態によれば、以下の内容の第1の効果を奏する。本実施の形態によれば、個別シールド70において、第2の磁界成分Hyに対する反磁界が大きくなる。これにより、本実施の形態によれば、個別シールド70による第2の磁界成分Hyの吸収能力を向上させることができる。その結果、本実施の形態によれば、第2の磁界成分Hyに起因して磁気センサ30の検出信号に誤差が生じたり磁気センサ30の感度が低下したりすることを防止することができる。
【0118】
磁界検出部60が複数のMR素子90を含む場合、複数のMR素子90のレイアウト上、比較例の磁気センサ130のようにシールド171,172を設けるようとすると、Z方向に平行な方向に見たときのシールド171,172の各々の形状が、Y方向における最大の寸法がX方向における最大の寸法よりも大きい形状にならざるを得ない場合がある。そのような場合でも、本実施の形態によれば、Z方向に平行な方向に見たときの個別シールド70の形状を、Y方向における最大の寸法がX方向における最大の寸法よりも小さい形状にすることができる。
【0119】
第1の効果については、第3の実施の形態の説明の後で、シミュレーションの結果を参照して、更に説明する。
【0120】
次に、本実施の形態における第2の特徴と、それによる第2の効果について説明する。第2の特徴は、Z方向に平行な方向に見たときに、複数のMR素子90の各々は、シールド71A,71B,71C,71Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置し、且つシールド72A,72B,72C,72Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置していることである。
【0121】
第2の効果について説明する前に、磁気センサ30に対するZ方向に平行な方向の印加磁界に関するヨーク51の磁気ヒステリシスと、それに起因した磁界検出部60の検出信号のヒステリシスについて説明する。以下、磁気センサ30に対するZ方向に平行な方向の印加磁界に関するヨーク51の磁気ヒステリシスを、単に、ヨーク51の磁気ヒステリシスと言う。また、−Z方向の印加磁界の強度は負の値で表し、Z方向の印加磁界の強度は正の値で表す。ヨーク51の磁気ヒステリシスとは、印加磁界の強度が所定の値のときのヨーク51の磁化が、印加磁界の履歴によって、すなわち印加磁界の強度が増加して所定の値になったか、印加磁界の強度が減少して所定の値になったかによって異なる現象である。
【0122】
検出信号のヒステリシスとは、印加磁界の強度が所定の値のときの検出信号の値が、印加磁界の履歴によって、すなわち印加磁界の強度が増加して所定の値になったか、印加磁界の強度が減少して所定の値になったかによって異なる現象である。
【0123】
本実施の形態では、ヨーク51は、被シールド部分51a,51b,51c,51dと、露出部分51e,51f,51gを含んでいる。以下、これらの部分毎の磁気ヒステリシスについて考える。
【0124】
図18は、シールド71A,71B,72A,72Bと、ヨーク51Aの被シールド部分51a,51bおよび露出部分51eを示している。図18において、符号75Aは、印加磁界がZ方向であるときにシールド72Aおよびシールド71Aを通過する磁束の一部を示している。また、符号75Bは、印加磁界がZ方向であるときにシールド72Bおよびシールド71Bを通過する磁束の一部を示している。また、ヨーク51Aの内部に描かれた複数の矢印は、それらの位置における磁化の方向と大きさを表している。
【0125】
図18に示したように、シールド72Aおよびシールド71Aを通過する磁束の一部は、湾曲して露出部分51eを通過する。シールド72Bおよびシールド71Bを通過する磁束の一部も、湾曲して露出部分51eを通過する。そのため、印加磁界の強度が0以外のある値のとき、露出部分51eにおける磁化は、被シールド部分51a,51bの各々における磁化よりも大きくなる。1つのヨーク51の全体について言うと、印加磁界の強度が0以外のある値のとき、露出部分51e,51f,51gの各々における磁化は、被シールド部分51a,51b,51c,51dの各々における磁化よりも大きくなる。その結果、露出部分51e,51f,51gの各々では、被シールド部分51a,51b,51c,51dの各々に比べて、磁気ヒステリシスが顕著になる。
【0126】
磁気センサ30が第2の特徴を有していないと仮定すると、複数のMR素子90のうちの少なくとも1つは、露出部分51e,51f,51gのいずれかの近くに位置することになる。この場合には、検出信号のヒステリシスが顕著に現れて、検出信号の誤差が大きくなるおそれがある。
【0127】
これに対し、本実施の形態に係る磁気センサ30は、第2の特徴により、複数のMR素子90の全てが、露出部分51e,51f,51gのいずれかの近くではなく、被シールド部分51a,51b,51c,51dのいずれかの近くに位置している。そのため、本実施の形態によれば、検出信号のヒステリシスによる検出信号の誤差を低減することができる。これが、本実施の形態における第2の効果である。
【0128】
なお、ここまでは、コイル41(図1参照)の内側に配置された磁気センサ30と、コイル41の内側に配置された磁気センサ30を備えた磁気センサシステム101について説明してきた。以下、ここまで説明してきた磁気センサ30および磁気センサシステム101を第1の実施例の磁気センサおよび磁気センサシステムと言う。
【0129】
図1ないし図3に示したカメラモジュール100では、第1の実施例の磁気センサおよび磁気センサシステムだけではなく、コイル44(図1参照)の内側に配置された磁気センサ30と、この磁気センサ30を備えた磁気センサシステムも、本実施の形態に係る磁気センサおよび磁気センサシステムと言える。以下、コイル44の内側に配置された磁気センサ30と、この磁気センサ30を備えた磁気センサシステムを、第2の実施例の磁気センサおよび磁気センサシステムと言う。
【0130】
第2の実施例の磁気センサおよび磁気センサシステムの構成は、基本的には、第1の実施例の磁気センサおよび磁気センサシステムと同じである。ただし、第2の実施例では、X方向が本発明における第2の方向に対応し、Y方向が本発明における第3の方向に対応する。従って、第1の実施例の説明中の磁石31A、X方向およびY方向を、それぞれ磁石34A、Y方向およびX方向に置き換えれば、第2の実施例の説明になる。第2の実施例の磁気センサシステムは、X方向に平行な方向についての、磁気センサ30に対する磁石34Aの相対的な位置を検出するための位置検出装置である。
【0131】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図19は、本実施の形態に係る磁気センサを示す斜視図である。図20は、本実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。なお、図20では、シールド71A,71B,71C,71Dを省略している。
【0132】
以下、本実施の形態に係る磁気センサ30が第1の実施の形態に係る磁気センサ30と異なる点について説明する。本実施の形態では、磁界変換部50は、第1の実施の形態における8個のヨーク51の代わりに、16個のヨーク51を含んでいる。以下、16個のヨーク51を、符号51A1,51A2,51B1,51B2,51C1,51C2,51D1,51D2,51E1,51E2,51F1,51F2,51G1,51G2,51H1,51H2を用いて区別する。
【0133】
第1の実施の形態におけるヨーク51Aは、ヨーク51A1,51A2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Bは、ヨーク51B1,51B2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Cは、ヨーク51C1,51C2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Dは、ヨーク51D1,51D2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Eは、ヨーク51E1,51E2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Fは、ヨーク51F1,51F2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Gは、ヨーク51G1,51G2に替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Hは、ヨーク51H1,51H2に替えられている。
【0134】
ここで、第1の実施の形態における1つのヨーク51の代わりとなる2つのヨークの組をヨーク列と言う。1つのヨーク列を構成する2つのヨークは、互いに分離されてY方向に並ぶように配置されている。1つのヨーク列を構成する2つのヨークは、第1の実施の形態における1つのヨーク51から露出部分51fを切り取ることによってできる2つの部分に相当する。本実施の形態では、1つのヨーク列に対して、2つの素子列が対応する。
【0135】
ヨーク51A1,51B1,51C1,51D1,51E1,51F1,51G1,51H1の各々は、第1の実施の形態において説明した2つの被シールド部分51a,51bと露出部分51eを含んでいる。ヨーク51A2,51B2,51C2,51D2,51E2,51F2,51G2,51H2の各々は、第1の実施の形態において説明した2つの被シールド部分51c,51dと露出部分51gを含んでいる。
【0136】
本実施の形態において、16個のヨーク51の各々は、例えば、Y方向に長い直方体形状を有している。また、16個のヨーク51の形状は同じである。
【0137】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0138】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図21は、本実施の形態に係る磁気センサを示す斜視図である。図22は、本実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。なお、図22では、シールド71A,71B,71C,71Dを省略している。
【0139】
以下、本実施の形態に係る磁気センサ30が第1の実施の形態に係る磁気センサ30と異なる点について説明する。本実施の形態では、磁界変換部50は、第1の実施の形態における8個のヨーク51の代わりに、32個のヨーク51を含んでいる。以下、32個のヨーク51を、符号51Aa,51Ab,51Ac,51Ad,51Ba,51Bb,51Bc,51Bd,51Ca,51Cb,51Cc,51Cd,51Da,51Db,51Dc,51Dd,51Ea,51Eb,51Ec,51Ed,51Fa,51Fb,51Fc,51Fd,51Ga,51Gb,51Gc,51Gd,51Ha,51Hb,51Hc,51Hdを用いて区別する。
【0140】
第1の実施の形態におけるヨーク51Aは、ヨーク51Aa,51Ab,51Ac,51Adに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Bは、ヨーク51Ba,51Bb,51Bc,51Bdに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Cは、ヨーク51Ca,51Cb,51Cc,51Cdに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Dは、ヨーク51Da,51Db,51Dc,51Ddに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Eは、ヨーク51Ea,51Eb,51Ec,51Edに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Fは、ヨーク51Fa,51Fb,51Fc,51Fdに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Gは、ヨーク51Ga,51Gb,51Gc,51Gdに替えられている。第1の実施の形態におけるヨーク51Hは、ヨーク51Ha,51Hb,51Hc,51Hdに替えられている。
【0141】
ここで、第1の実施の形態における1つのヨーク51の代わりとなる4つのヨークの組をヨーク列と言う。1つのヨーク列を構成する4つのヨークは、互いに分離されてY方向に並ぶように配置されている。1つのヨーク列を構成する4つのヨークは、第1の実施の形態における1つのヨーク51から3つの露出部分51e,51f,51gを切り取ることによってできる4つの部分に相当する。本実施の形態では、1つのヨーク列に対して、2つの素子列が対応する。
【0142】
ヨーク51Aa,51Ba,51Ca,51Da,51Ea,51Fa,51Ga,51Haは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71A,72Aの各々の外縁の内側に位置している。ヨーク51Ab,51Bb,51Cb,51Db,51Eb,51Fb,51Gb,51Hbは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71B,72Bの各々の外縁の内側に位置している。ヨーク51Ac,51Bc,51Cc,51Dc,51Ec,51Fc,51Gc,51Hcは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71C,72Cの各々の外縁の内側に位置している。ヨーク51Ad,51Bd,51Cd,51Dd,51Ed,51Fd,51Gd,51Hdは、Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71D,72Dの各々の外縁の内側に位置している。
【0143】
本実施の形態において、32個のヨーク51の各々は、例えば、Y方向に長い直方体形状を有している。また、32個のヨーク51の形状は同じである。
【0144】
本実施の形態に係る磁気センサ30は、第1の実施の形態と同様に、第1および第2の特徴を有している。本実施の形態に係る磁気センサ30は、更に、第3の特徴を有している。第3の特徴は、Z方向に平行な方向に見たときに、32個のヨーク51の各々は、シールド71A,71B,71C,71Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置し、且つシールド72A,72B,72C,72Dのうちのいずれか1つのシールドの外縁の内側に位置していることである。
【0145】
本実施の形態によれば、第2の特徴に加えて第3の特徴を有することにより、第1の実施の形態において説明した第2の効果がより効果的に発揮される。以下、その理由について、図18を参照して説明する。第1の実施の形態において説明したように、図18に示したヨーク51Aにおいて、印加磁界の強度が0以外のある値のとき、露出部分51eにおける磁化は、被シールド部分51a,51bの各々における磁化よりも大きくなる。被シールド部分51a,51bの各々の磁化は、露出部分51eにおける磁化の影響を受けて、露出部分51eが無い場合と比べると大きくなる。そのため、露出部分51eが無い場合と比べると、印加磁界の変化に対する被シールド部分51a,51bの各々における磁化の変化がスムーズに行われない。その結果、被シールド部分51a,51bの各々においても磁気ヒステリシスが現れる。このようにして、第1の実施の形態におけるヨーク51では、被シールド部分51a,51b,51c,51dの各々においても磁気ヒステリシスが現れる。
【0146】
本実施の形態では、第3の特徴により、ヨーク51は、露出部分51e,51f,51gに相当する部分を含んでいない。これにより、本実施の形態によれば、第2の効果がより効果的に発揮される。
【0147】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0148】
[シミュレーション結果]
次に、第1の実施の形態で説明した第1の効果について、以下のシミュレーションの結果を参照して、更に説明する。
【0149】
シミュレーションでは、第1ないし第3のモデルについて、複数のシールドによる第2の磁界成分Hyの吸収能力を比較した。第1ないし第3のモデルにおける複数のシールドは、同じ組成のNiFeによって構成されている。
【0150】
図23は、第1のモデルを示す斜視図である。図23に示したように、第1のモデルは、シールド171,172を備えている。第1のモデルにおけるシールド171,172は、図17に示した比較例の磁気センサ130におけるシールド171,172に対応する。第1のモデルにおけるシールド171,172は、同じ直方体形状を有している。シールド171,172の各々のX方向の寸法、Y方向の寸法およびZ方向の寸法は、それぞれ135μm、120μm、7μmである。シールド172は、シールド171に対して5μmの間隔を開けて、シールド171の下方に配置されている。
【0151】
ここで、図23に示したように、Y方向に延びる第1の直線L1を想定する。第1の直線L1は、シールド171,172の間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する線分を含んでいる。
【0152】
また、第1の直線L1上の任意の点の位置を、第1の測定位置と言い、上記線分の中心の点を第1の原点と言う。第1の測定位置は、第1の原点からの距離を絶対値とする値で表す。第1の測定位置は、第1の原点よりも−Y方向の先にある場合は負の値で表し、第1の原点よりもY方向の先にある場合は正の値で表す。
【0153】
シミュレーションでは、第2の磁界成分Hyの強度を変えて、第1のモデルに対して第2の磁界成分Hyを印加したときの第1の測定位置と第1の磁束通過率との関係を求めた。第1の磁束通過率は、第2の磁界成分Hyに対応する磁束密度Byの値に対する第1の測定位置における磁束密度の値の比である。
【0154】
図24は、第1のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示している。図24において、横軸は第1の測定位置を示し、縦軸は第1の磁束通過率を示している。図24において、符号181,182,183で示した線は、それぞれ、磁束密度Byの値が100mT、120mT、140mTのときの第1の測定位置と第1の磁束通過率との関係を表している。
【0155】
図25は、第2のモデルを示す斜視図である。図25に示したように、第2のモデルは、第1のモデルにおけるシールド171の代わりにシールド271A,271Bを備え、第1のモデルにおけるシールド172の代わりにシールド272A,272Bを備えている。シールド271A,271B,272A,272Bは、同じ直方体形状を有している。シールド271A,271B,272A,272Bの各々のX方向の寸法、Y方向の寸法およびZ方向の寸法は、それぞれ135μm、60μm、7μmである。
【0156】
シールド271Bは、シールド271Aに対して27μmの間隔を開けて、シールド271AのY方向の先に配置されている。シールド272Bは、シールド272Aに対して27μmの間隔を開けて、シールド272AのY方向の先に配置されている。シールド272Aは、シールド271Aに対して5μmの間隔を開けて、シールド271Aの下方に配置されている。シールド272Bは、シールド271Bに対して5μmの間隔を開けて、シールド271Bの下方に配置されている。
【0157】
ここで、図25に示したように、Y方向に延びる第2の直線L2を想定する。第2の直線L2は、シールド271A,272Aの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第1の線分と、シールド271B,272Bの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第2の線分とを含んでいる。
【0158】
また、第2の直線L2上の任意の点の位置を第2の測定位置と言う。また、第2の直線L2上の点であって、上記第1の線分と第2の線分との間における中心の点を第2の原点と言う。第2の測定位置は、第2の原点からの距離を絶対値とする値で表す。第2の測定位置は、第2の原点よりも−Y方向の先にある場合は負の値で表し、第2の原点よりもY方向の先にある場合は正の値で表す。
【0159】
シミュレーションでは、第2の磁界成分Hyの強度を変えて、第2のモデルに対して第2の磁界成分Hyを印加したときの第2の測定位置と第2の磁束通過率との関係を求めた。第2の磁束通過率は、第2の磁界成分Hyに対応する磁束密度Byの値に対する第2の測定位置における磁束密度の値の比である。
【0160】
図26は、第2のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示している。図26において、横軸は第2の測定位置を示し、縦軸は第2の磁束通過率を示している。図26において、符号281,282,283で示した線は、それぞれ、磁束密度Byの値が180mT、200mT、220mTのときの第2の測定位置と第2の磁束通過率との関係を表している。
【0161】
図27は、第3のモデルを示す斜視図である。図27に示したように、第3のモデルは、第1のモデルにおけるシールド171の代わりにシールド71A,71B,71C,71Dを備え、第1のモデルにおけるシールド172の代わりにシールド72A,72B,72C,72Dを備えている。第3のモデルにおけるシールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dは、第1ないし第3の実施の形態におけるシールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dに対応する。第3のモデルにおけるシールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dは、同じ直方体形状を有している。シールド71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72Dの各々のX方向の寸法、Y方向の寸法およびZ方向の寸法は、それぞれ135μm、25μm、7μmである。
【0162】
Z方向に平行な方向に見たときに、シールド71A,71B,71C,71DはY方向にこの順に並び、シールド72A,72B,72C,72DはY方向にこの順に並んでいる。Y方向に隣り合う2つのシールドの間隔は27μmである。シールド72A,72B,72C,72Dは、それぞれ、シールド71A,71B,71C,71Dに対して5μmの間隔を開けて、シールド71A,71B,71C,71Dの下方に配置されている。
【0163】
ここで、図27に示したように、Y方向に延びる第3の直線L3を想定する。第3の直線L3は、シールド71A,72Aの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第1の線分と、シールド71B,72Bの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第2の線分と、シールド71C,72Cの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第3の線分と、シールド71D,72Dの間の空間におけるZ方向の中心且つX方向の中心に位置する第4の線分とを含んでいる。
【0164】
また、第3の直線L3上の任意の点の位置を第3の測定位置と言う。また、第3の直線L3上の点であって、上記第2の線分と第3の線分との間における中心の点を第3の原点と言う。第3の測定位置は、第3の原点からの距離を絶対値とする値で表す。第3の測定位置は、第3の原点よりも−Y方向の先にある場合は負の値で表し、第3の原点よりもY方向の先にある場合は正の値で表す。
【0165】
シミュレーションでは、第2の磁界成分Hyの強度を変えて、第3のモデルに対して第2の磁界成分Hyを印加したときの第3の測定位置と第3の磁束通過率との関係を求めた。第3の磁束通過率は、第2の磁界成分Hyに対応する磁束密度Byの値に対する第3の測定位置における磁束密度の値の比である。
【0166】
図28は、第3のモデルに関するシミュレーションの結果の一部を示している。図28において、横軸は第3の測定位置を示し、縦軸は第3の磁束通過率を示している。図28において、符号381,382,383,384で示した線は、それぞれ、磁束密度Byの値が360mT、380mT、400mT、420mTのときの第3の測定位置と第3の磁束通過率との関係を表している。
【0167】
シミュレーションでは、第1ないし第3のモデル毎に、磁束密度Byと正規化磁束通過率との関係を求めた。第1のモデルに関する正規化磁束通過率は、以下のようにして求めた。まず、−6μmから6μmまでの第1の測定位置の範囲を第1の測定範囲とした。次に、磁束密度Byの値毎に、第1の測定範囲内における第1の磁束通過率の平均値を求めた。次に、磁束密度Byの値毎の上記平均値を、第1のモデルに関するシミュレーションにおける磁束密度Byの最小値に対応する上記平均値で割った値を、磁束密度Byの値毎の正規化磁束通過率とした。
【0168】
第2のモデルに関する正規化磁束通過率は、以下のようにして求めた。まず、−49μmから−37μmまでの第2の測定位置の範囲および37μmから49μmまでの第2の測定位置の範囲を第2の測定範囲とした。次に、磁束密度Byの値毎に、第2の測定範囲内における第2の磁束通過率の平均値を求めた。次に、磁束密度Byの値毎の上記平均値を、第2のモデルに関するシミュレーションにおける磁束密度Byの最小値に対応する上記平均値で割った値を、磁束密度Byの値毎の正規化磁束通過率とした。
【0169】
第3のモデルに関する正規化磁束通過率は、以下のようにして求めた。まず、−31μmから−19μmまでの第3の測定位置の範囲および19μmから31μmまでの第3の測定位置の範囲を第3の測定範囲とした。次に、磁束密度Byの値毎に、第3の測定範囲内における第3の磁束通過率の平均値を求めた。次に、磁束密度Byの値毎の上記平均値を、第3のモデルに関するシミュレーションにおける磁束密度Byの最小値に対応する上記平均値で割った値を、磁束密度Byの値毎の正規化磁束通過率とした。
【0170】
図29に、第1ないし第3のモデル毎の、磁束密度Byと正規化磁束通過率との関係を示す。図29において、横軸は磁束密度Byを示し、縦軸は正規化磁束通過率を示している。また、図29において、符号401は第1のモデルにおける磁束密度Byと正規化磁束通過率との関係を示し、符号402は第2のモデルにおける磁束密度Byと正規化磁束通過率との関係を示し、符号403は第3のモデルにおける磁束密度Byと正規化磁束通過率との関係を示している。
【0171】
図29に示したように、第1ないし第3のモデルのいずれにおいても、磁束密度Byの値がある値以下では正規化磁束通過率は1であるが、磁束密度Byの値がある値を超えると、正規化磁束通過率は1よりも大きくなり、且つ磁束密度Byの値が大きくなるほど正規化磁束通過率が大きくなっている。正規化磁束通過率が大きいほど、シールドによる第2の磁界成分Hyの吸収能力が低いと言える。正規化磁束通過率が1よりも大きくなり始める磁束密度Byの値は、第3のモデルにおいて最も大きく、次に第2のモデルにおいて大きく、第1のモデルにおいて最も小さくなっている。このことから、第1の実施の形態において説明した第1の特徴により、シールドによる第2の磁界成分Hyの吸収能力を向上させることができるという第1の効果が得られることが分かる。
【0172】
[実験結果]
次に、第1ないし第3の実施の形態に係る磁気センサ30について、検出信号のヒステリシスを比較した実験の結果について説明する。
【0173】
始めに、実験の内容について説明する。以下、磁気センサ30に対するZ方向に平行な方向の印加磁界の強度を印加磁界強度と言い、符号Bzで表す。また、磁界検出部60の検出信号の値を検出信号値と言い、符号DSで表す。印加磁界強度Bzは、−Z方向の印加磁界については負の値で表し、Z方向の印加磁界については正の値で表す。印加磁界強度Bzは、印加磁界が無いときを0とし、最大値を100とし、最小値を−100とした任意単位で表す。また、検出信号値DSも任意単位で表す。検出信号のヒステリシスが無い場合には、印加磁界強度Bzが0のとき、検出信号値DSは0である。また、強度Bzが100のときの検出信号値をDSHとし、強度Bzが−100のときの検出信号値をDSLとし、DSH−DSLの値をDDSとする。
【0174】
図30は、実験の内容を示す説明図である。図30に示したように、実験では、第1ないし第3の実施の形態に係る磁気センサ30を用いて、印加磁界強度Bzを、−100から100まで徐々に増加させ、その後100から0まで徐々に減少させ、その間における検出信号値DSを測定した。
【0175】
実験では、検出信号のヒステリシスを、第1のヒステリシスパラメータHP1と第2のヒステリシスパラメータHP2を用いて評価した。以下、第1および第2のヒステリシスパラメータHP1,HP2の定義について説明する。
【0176】
図30に示したように、印加磁界強度Bzを−100から徐々に増加させて、印加磁界強度Bzが0になったときの検出信号値DSをDS1とする。また、印加磁界強度Bzを100から徐々に減少させて、印加磁界強度Bzが0になったときの検出信号値DSをDS2とする。第1のヒステリシスパラメータHP1は、(DS2−DS1)/DDSを百分率で表した値である。
【0177】
また、図30に示したように、印加磁界強度Bzを−100から徐々に増加させて、印加磁界強度Bzが50になったときの検出信号値DSをDS3とする。また、印加磁界強度Bzを100から徐々に減少させて、印加磁界強度Bzが50になったときの検出信号値DSをDS4とする。第2のヒステリシスパラメータHP2は、(DS4−DS3)/DDSを百分率で表した値である。
【0178】
図31は、第1の実施の形態に係る1つの磁気センサ30についての実験結果を示している。図32は、第2の実施の形態に係る1つの磁気センサ30についての実験結果を示している。図33は、第3の実施の形態に係る1つの磁気センサ30についての実験結果を示している。図31ないし図33において、横軸は印加磁界強度Bzを示し、縦軸は検出信号値DSを示している。
【0179】
実験では、第1ないし第3の実施の形態の各々に関して、複数の磁気センサ30について第1および第2のヒステリシスパラメータHP1,HP2の値を求めた。図34は、第1のヒステリシスパラメータHP1の値の分布を示している。図35は、第2のヒステリシスパラメータHP2の値の分布を示している。図34および図35において、横軸は、ヨーク51の長さを表している。EB1は第1の実施の形態におけるヨーク51の長さを表し、EB2は第2の実施の形態におけるヨーク51の長さを表し、EB3は第3の実施の形態におけるヨーク51の長さを表している。従って、EB1,EB2,EB3は、それぞれ第1ないし第3の実施の形態に対応する。図34における縦軸は、第1のヒステリシスパラメータHP1の値を対数目盛で表している。図35における縦軸は、第2のヒステリシスパラメータHP2の値を対数目盛で表している。
【0180】
図34に示したように、第3の実施の形態における第1のヒステリシスパラメータHP1の値の分布は、第1および第2の実施の形態における第1のヒステリシスパラメータHP1の値の分布に比べて、0に近づいている。
【0181】
図35に示したように、第3の実施の形態における第2のヒステリシスパラメータHP2の値の分布も、第1および第2の実施の形態における第2のヒステリシスパラメータHP2の値の分布に比べて、0に近づいている。
【0182】
図34および図35に示した実験結果から、第3の実施の形態によれば、第2の効果がより効果的に発揮されることが分かる。
【0183】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、MR素子、ヨークおよび複数のシールドの形状、数および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。例えば、本発明の磁気センサは、シールド71A,71B,71C,71Dの組と、シールド72A,72B,72C,72Dの組の一方のみを備えていてもよい。
【0184】
また、本発明の磁気センサでは、X方向における1つのヨーク51の片側にのみ、1つ以上のMR素子90が配置されていてもよい。
【0185】
また、磁界検出部60は、電源ポートV、グランドポートG、第1の出力ポートE1、第1の抵抗部61および第2の抵抗部62を含むが、第2の出力ポートE2、第3の抵抗部63、第4の抵抗部64を含まない構成であってもよい。この場合、磁界検出部60の検出信号は、第1の出力ポートE1の電位に依存する。
【符号の説明】
【0186】
3…駆動装置、5…レンズ、6…筐体、7…基板、14…第1の保持部材、15…第2の保持部材、30…磁気センサ、31A…磁石、50…磁界変換部、51…ヨーク、60…磁界検出部、61…第1の抵抗部、62…第2の抵抗部、63…第3の抵抗部、64…第4の抵抗部、71A,71B,71C,71D,72A,72B,72C,72D…シールド、80…配線部、81…下部電極、82…上部電極、90…MR素子、100…カメラモジュール、101…磁気センサシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図20
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図22
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図31
図32
図33
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図35