(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの面配向度(ΔP)が0.04以上0.098以下であり、且つ、複屈折率(ΔNxy)が0.11以上0.145以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、市場においては、液晶表示装置の一層の薄型が求められており、単に、リタデーションを3000〜30000nmに制御しただけでは、虹斑の発生により視認性の悪化は解消できるものの、フィルムの厚みを薄くすると機械的強度が顕著に低下するため、薄型化の要望への対応することが困難であった。そこで、本発明は、良好な視認性を維持しつつ、液晶表示装置の更なる薄型化を可能にする、偏光子保護フィルム、偏光板、及びそれが実現された液晶表示装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、ポリエステルフィルムの面配向度を一定以下に制御することにより、リタデーションの値を3000以上30000以下に維持し、良好な視認性を保ちながら、フィルムの機械的強度を高め、フィルムの厚みをより薄くすることが可能であることを見出した。斯かる知見に基づき、更なる検討と改良を重ね、本発明者等は、本発明を完成するに至った。
【0007】
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
バックライト光源、2枚の偏光板、前記2枚の偏光板の間に配置される液晶セルを有し、前記バックライト光源は、連続的な発光スペクトルを有する白色光源であり、
前記偏光板は、偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された構造を有し、
前記偏光子保護フィルムのうち、少なくとも1枚は、下記の物性(a)〜(c):
(a)3000nm以上30000nm以下であるリタデーション(Re);
(b)1.0以上であるリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth);及び
(c)0.12以下である面配向度(ΔP);
を満たすポリエステルフィルムである、
液晶表示装置。
項2.
前記ポリエステルフィルムが下記の物性(d):
(d)0.1以上である複屈折率(ΔNxy)
を満たす、項1に記載の液晶表示装置
項3.
前記ポリエステルフィルムが、前記液晶セルよりも視認側に位置する偏光板を構成する偏光子保護フィルムである、項1又は2に記載の液晶表示装置。
項4.
前記ポリエステルフィルムの厚みが、20μm以上90μm以下である、項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。
項5.
前記ポリエステルフィルムの引裂強度が、50mN以上である、項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
項6.
下記の物性(a)〜(c):
(a)3000nm以上30000nm以下であるリタデーション(Re);
(b)1.0以上であるリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth);及び
(c)0.12以下である面配向度(ΔP);
を満たすポリエステルフィルムが偏光子の少なくとも1つの面に積層された構造を有する、偏光板。
項7.
前記ポリエステルフィルムが下記の物性(d):
(d)0.1以上である複屈折率(ΔNxy)
を満たす、項6に記載の偏光板。
項8.
前記ポリエステルフィルムの厚みが、20μm以上90μm以下である、項6又は7に記載の偏光板。
項9.
前記ポリエステルフィルムの引裂強度が、50mN以上である、項6〜8のいずれかに記載の偏光板。
項10.
下記の物性(a)〜(c):
(a)3000nm以上30000nm以下であるリタデーション(Re);
(b)1.0以上であるリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth);及び
(c)0.12以下である面配向度(ΔP);
を満たすポリエステルフィルムである、偏光子保護フィルム。
項11.
前記ポリエステルフィルムが下記の物性(d):
(d)0.1以上である複屈折率(ΔNxy)
を満たす、項10に記載の偏光子保護フィルム。
項12.
前記ポリエステルフィルムの厚みが、20μm以上90μm以下である、項10又は11に記載の偏光子保護フィルム。
項13.
前記ポリエステルフィルムの引裂強度が、50mN以上である、項10〜12のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。
項14.
ポリエステルフィルムを、延伸方向と直交する方向に対して緩和処理を行いながら、同時に延伸する工程を含む、
下記の物性(a)〜(c):
(a)3000nm以上30000nm以下であるリタデーション(Re);
(b)1.0以上であるリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth);及び
(c)0.12以下である面配向度(ΔP);
を満たすポリエステルフィルムである、偏光子保護フィルムの製造方法。
項15.
連続的な発光スペクトルを有する白色光源を有する液晶表示装置用である、項6〜9のいずれかに記載の偏光板。
項16.
連続的な発光スペクトルを有する白色光源を有する液晶表示装置用である、項10〜13のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。
項17.
偏光子保護フィルムが、連続的な発光スペクトルを有する白色光源を有する液晶表示装置用である、項14に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光子保護フィルムは、機械的強度(引裂強度)に優れているため、薄型化に適している。また、本発明の偏光子保護フィルム及びそれを積層した偏光板は、それを用いて液晶表示装置を作製することにより、画像を眺めた場合に、画像を眺める角度に依存して生じ得る虹斑の発生を抑制することができる。従って、本発明により、視認性に優れ、且つ、より薄型の液晶表示装置を提供することが可能となる。尚、本書において、「虹斑」とは、「色斑」、「色ずれ」及び「干渉色」を含む概念である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
液晶表示装置は、バックライト光源、2枚の偏光板、及び前記2枚の偏光板の間に配置される液晶セルを含む。本書では、液晶表示装置のバックライト光源が位置する側を人が画像を視認する側に対して「光源側」と称し、人が画像を視認する側を「視認側」と称する。前記液晶表示装置の構成部材の配置順序は、通常、光源側から視認側に向かって、バックライト光源、偏光板(「光源側偏光板」とも称する)、液晶セル、及び偏光板(「視認側偏光板」とも称する)の順である。
【0011】
バックライト光源は、画像を視認した場合に虹斑が生じることを抑制するという観点から、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源であることが好ましい。「連続的で幅広い発光スペクトル」とは、少なくとも450〜650nmの波長領域、好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長領域が存在しない発光スペクトルを意味する。可視光領域とは、例えば、400〜760nmの波長領域であり、360〜760nm、400〜830nm、又は360〜830nmであり得る。
【0012】
連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源の方式や構造を特に制限されず、虹斑の発生を抑制可能である限り、任意の白色光源を使用することができるが、好ましい光源は、白色発光ダイオード(LED)である。白色LEDには、蛍光体方式のもの(即ち、化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子)及び有機発光ダイオード(Organic light−emitting diode:OLED)等が含まれる。一実施形態において、好ましい白色LEDは、蛍光体方式の白色LEDであり、より好ましくは化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDである。
液晶セルは、液晶表示装置において使用され得る任意の液晶セルを適宜選択して使用することができ、その方式や構造は特に制限されない。例えば、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の液晶セルを適宜選択して使用できる。よって、液晶セルは、公知の液晶材料及び今後開発され得る液晶材料で作製された液晶を適宜選択して使用することができる。一実施形態において好ましい液晶セルは、透過型の液晶セルである。
【0013】
偏光板は、フィルム状の偏光子の両側を2枚の保護フィルム(「偏光子保護フィルム」とも称する)で挟んだ構造を有する。偏光子は、当該技術分野において使用される任意の偏光子(又は偏光フィルム)を適宜選択して使用することができる。代表的な偏光子としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等にヨウ素等の二色性材料を染着させたものを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、公知及び今後開発され得る偏光子を適宜選択して用いることができる。
【0014】
偏光子として用いるPVAフィルムは、市販品を用いることができ、例えば、「クラレビニロン((株)クラレ製)」、「トーセロビニロン(東セロ(株)製)]、「日合ビニロン(日本合成化学(株)製)]等を用いることができる。二色性材料としてはヨウ素、ジアゾ化合物、ポリメチン染料等を挙げることができる。
【0015】
液晶表示装置には、通常2枚の偏光板が含まれ、偏光板は、通常2枚の偏光子とその両側に積層された偏光子保護フィルムで構成されるため、液晶表示装置には、4枚の偏光子保護フィルムが含まれ得る。本発明において、4枚の偏光子保護フィルムのうち、少なくとも1枚が下記の(a)〜(c)の物性を満たすポリエステルフィルムであることが好ましい。
(a)3000nm以上30000nm以下であるリタデーション(Re)
(b)1.0以上であるリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth)
(c)0.12以下である面配向度(ΔP)
【0016】
偏光子保護フィルムとして用いるポリエステルフィルムのリタデーションは、虹斑を低減するという観点から、3000nm以上30000nm以下であることが好ましい。リタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、より好ましくは5000nm以上、更に好ましくは6000nm以上、より更に好ましくは8000nm以上、一層好ましくは10000nm以上である。一方、リタデーションの上限は、それ以上リタデーションを高くしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られず、またリタデーションの高さに応じては配向フィルムの厚みも上昇する傾向があるため、薄型化への要請に反し得るという観点から、30000nmと設定されるが、更に高い値とすることもできる。尚、本書において、単に「リタデーション」と記載する場合は、面内リタデーションを意味する。
【0017】
リタデーションは、フィルム面(x−y平面)に入射する光によって生じる複屈折(ΔNxy)と厚み(d)との積で表される。よって、ΔNxyの値が大きくなるほど高いリタデーションが得られる。一方、フィルムの厚みが薄くなるほど相対的にリタデーションは小さくなるため、厚みを薄くしつつ、一定以上のリタデーションの値を維持するためには、ΔNxyの値は大きいことが望ましい。しかしながら、ΔNxyの値を大きくし過ぎると、フィルムの引裂強度が低下する傾向にある。よって、ポリエステルフィルムのΔNxyの値は、好ましくは0.1以上0.3未満である。より具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、ΔNxyの値は0.1以上0.16以下が好ましく、より好ましくは0.105以上0.15以下、更に好ましくは0.11以上0.145以下である。また、ポリエチレンナフタレートフィルムの場合、ΔNxyの値は0.3未満が好ましく、より好ましくは0.27未満、更に好ましくは0.25未満、より更に好ましくは0.24未満である。一方、複屈折率ΔNxyが低いとリタデーションを大きくするためにフィルム厚さを大きくする必要性が生じるので、ポリエチレンナフタレートフィルムの場合、複屈折率ΔNxyは、0.15以上が好ましく、より好ましくは0.16以上、更に好ましくは0.17以上、より更に好ましくは0.18以上、特に好ましくは0.20以上である。
【0018】
ポリエステルフィルムのリタデーションの値は観察角度に依存して変化する。ここで、観察角度とはポリエステルフィルムの平面に対して垂直方向を基準(ゼロ度)とし、その方向と観察者がポリエステルフィルムを眺める方向とのズレ(θ)を意味する(
図1)。観察角度が大きくなるほど、その角度におけるリタデーションの値は低くなる。そのため、表示装置の正面(即ち、垂直方向)から観察すると虹斑が認められない場合でも、斜め方向から観察すると虹斑が認められることがあり得る。よって、斜め方向から表示装置を観察した場合にも良好な視認性を確保するためには、観察角度の増大によるリタデーションの低下を考慮することが好ましい。特に、厚みが薄いポリエステルフィルムの場合は、比較的リタデーションが低いため、観察角度の増大に伴ったリタデーションの低下による視認性への影響が比較的大きい。観察角度の増大に伴うリタデーションの低下度合いを表す指標として、ポリエステルフィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が用いられる。Re/Rthが大きくなるほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度の増大によるリタデーションの低下度合が小さくなるため、観察角度による虹斑は発生し難くなると考えられる。このような観点から、Re/Rthは、1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.25以上、更に好ましくは1.3以上である。厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz及び△Nyzにそれぞれフィルム厚み(d)を掛けて得られるリタデーションの平均値を意味する。
【0019】
Re/Rth比の最大値は2.0(即ち、完全な1軸対称性フィルム)であるが、1.0を超え完全な1軸対称性フィルムに近づくにつれて配向主軸方向と直交する方向の機械的強度が低下する場合があり、その場合には後述する面配向度が特定数値以下になるよう調整することが好ましい。Re/Rth比は、薄膜化、視野角特性向上の観点から高いほうが好ましいが、その上限値は、最大値の2.0まで必要ではなく、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下である。
【0020】
配向フィルムのリタデーションは、公知の手法に従って測定することができる。具体的には、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることができる。また、商業的に入手可能な自動複屈折測定装置(例えば、KOBRA−21ADH:王子計測機器株式会社製)を用いて求めることもできる。いずれの測定においても、測定波長をナトリウムD線の波長である589nmとして行う。
【0021】
虹斑を抑制するためのリタデーション及びRe/Rth比を満たしつつ、且つ、工業的な液晶表示装置の製造に耐え得る機械的強度(引裂強度)を維持しながら、フィルムの厚みをより薄くするという観点から、面配向度(ΔP)は、0.12以下であることが好ましい。面配向度は、フィルムの縦方向の屈折率(Nx)と幅方向の屈折率(Ny)との平均値と、厚み方向の屈折率(Nz)の値との差であり、次の式で表すことができる:ΔP=((Nx+Ny)/2)−Nz。
【0022】
面配向度の上限は、より好ましくは0.11以下であり、更に好ましくは0.102以下であり、より更に好ましくは0.1以下であり、一層好ましくは0.098以下であり、より一層好ましくは0.095以下であり、更に一層好ましくは0.09以下である。一方、面配向度の下限は、好ましくは0.04以上であり、より好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.06以上である。
【0023】
面配向度が0.04未満の場合は、フィルムの機械強度が低すぎるため加工性などの点で好ましくない。また、面配向度が0.12を超える場合、薄膜条件においてリタデーションと機械強度との両立が難しくなり、いずれか一方で不具合が生じる場合が出てくるため好ましくない。
【0024】
偏光子保護フィルムとして用いるポリエステルフィルムの厚み(d)は、特に制限されないが、より薄い偏光子保護フィルム、偏光板、及び液晶表示装置を提供するという観点から、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは90μm以下、より更に好ましくは80μm以下、一層好ましくは60μm以下、より一層好ましくは50μm以下、更により一層好ましくは45μm以下、特に好ましくは40μm以下である、最も好ましくは35μm以下である。ポリエステルフィルムの厚みの下限値は、十分な引裂強度を維持することが困難であるという観点から、10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上である。
【0025】
偏光子保護フィルムとして用いるポリエステルフィルムは、厚みが薄い場合であっても工業的な液晶表示装置の製造において取り扱いに耐え得る機械的強度を保持していることが好ましい。この観点から、当該ポリエステルフィルムは、50mN以上の引裂強度を有することが好ましい。好ましくは、引裂強度は、100mN以上であり、より好ましくは130mN以上である。フィルムの引裂強度は、後述する実施例に示す通り、JIS P−8116の方法に従って測定することが出来る。
【0026】
偏光子保護フィルムとして用いるポリエステルフィルムは、工業的な液晶表示装置の取り扱いに耐え得る耐熱性を有していることが好ましい。この観点から、当該ポリエステルフィルムは、−5.0%〜5.0%の熱収縮率を有することが好ましく、より好ましくは−3.0%〜3.0%であり、さらにより好ましくは−2.0%〜2.0%である。フィルムの熱収縮率は、後述する実施例に示す通り、JIS C−2318の方法に従って測定することが出来る。
【0027】
ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制することを目的として、偏光子保護フィルムとして用いるポリエステルフィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。本書において、透過率は、フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。更に、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等も本発明の効果を妨げず、かつ、透明性を損なわない範囲で添加することが可能である。
【0028】
上記のような物性を満たすポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造条件において、延伸条件等を制御することによって得ることが出来る。ポリエステルフィルムは、一般的に、次の手順で製造される。即ち、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度で、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施すて得られる。縦方向及び横方向への延伸は、各方向について別個に行う方法と、テンターに導いた後にクリップ幅を拡げながらロールの速度を変更することにより、縦方向と横方向を同時に延伸する方法とがある。
【0029】
上述する物性を満たすポリエステルフィルムを得るためには、単純な一軸延伸を行うことが好ましく、任意の方向への延伸と同時に延伸方向と垂直な方向にリラックス(緩和)処理を行なうことがより好ましい。より具体的には、一般に同時二軸延伸機と呼称される設備を使用し、縦方向の延伸と横方向のリラックス処理、又は横方向の延伸と縦方向のリラックス処理を行なってから熱処理を施す方法が例示できる。延伸とリラックス処理の順序は同時に行うことが好ましいが、延伸後にリラックス、もしくはリラックスの後に延伸という順序でも実施しても良い。より好ましい方法は、横方向の延伸と縦方向のリラックス処理を同時に行う方法である。熱処理の過程でリラックスを施すことも可能ではあるが、リラックス率が大きくなると熱シワが発生するため留意すべきである。
【0030】
逐次二軸延伸機を用いて製造することも可能である。その場合は、縦方向へ緩和する際に、外部ヒーター等により加熱しながら延伸前のロールより延伸後のロールを遅くすることにより縦方向にリラックスを施した後にテンターに導いて横方向に延伸することにより実施することができる。また、横方向へ緩和する場合、通常の二軸延伸で用いる方式により縦延伸を施した後に、テンター内で加熱しながら横方向のクリップ幅を徐々に狭めていくことにより実施すことができる。尚、逐次二軸延伸機を用いる場合、一軸延伸の方向は横方向への延伸が好ましい。縦方向への延伸も可能であるが、縦延伸の際にフィルム表面に微小なキズが発生しやすい、延伸ムラが生じやすいなどの課題があり、留意が必要である。更に、上記と同様の原理を用いて、一軸延伸フィルムを同時二軸延伸機、テンター、ロールのいずれかの設備により、リラックス処理を加えて実施することも可能である。
【0031】
ポリエステルフィルムの製膜条件(特に、延伸条件)をより具体的に説明する。延伸温度は、80〜130℃が好ましく、特に好ましくは90〜120℃である。延伸倍率は0.4〜6倍が好ましく、特に好ましくは0.6倍〜5倍である。緩和する方向の延伸倍率は0.4〜0.97倍となるように、緩和する方向に対して垂直な方向の延伸倍率は3〜6倍となるように設定することが好ましい。更に、一方向を0.6〜0.9倍に緩和し、それと垂直方向について3.5〜5.5倍に延伸することがより好ましい。
【0032】
緩和する方向と延伸する方向の倍率に関しては、上記の範囲内であれば任意に設定することができるが、延伸倍率を高くするほど一軸性が高くなるため、より緩和の程度を大きくすることが好ましい。一方で、延伸倍率を低くする場合、大きく緩和させると皺の影響が無視できなくなることから、緩和率を下げることが好ましい。
【0033】
リタデーションを上記範囲に制御するためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率を制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとリタデーション高くすることが難しくなり好ましくない。また、緩和する方向の倍率が低すぎると皺などの発生が避けられず好ましくない。更に、延伸する方向の倍率が高すぎると破断が生じ易くなるため好ましくない。延伸温度を低く設定することもリタデーションを高くする上では好ましい対応である。続く熱処理においては、処理温度は100〜250℃が好ましく、特に好ましくは180〜245℃である。
【0034】
フィルム上でのリタデーションの変動は、小さいことが好ましく、変動を抑制する為には、フィルムの厚み斑を制御することが好ましい。延伸温度、延伸倍率はフィルムの厚み斑に大きな影響を与えることから、厚み斑を抑える観点から製膜条件の最適化を行うことが好ましい。特にリタデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑が悪くなることがある。縦厚み斑は延伸倍率のある特定の範囲で悪化する場合があることから、そのような範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
【0035】
上記の観点から、ポリエステルフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。
【0036】
ポリエステルフィルムのリタデーションを特定範囲に制御する為には、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚みを適宜設定することにより行なうことができる。例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど高いリタデーションを得やすくなる。逆に、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど低いリタデーションを得やすくなる。但し、フィルムの厚みを厚くすると、厚さ方向位相差が大きくなりやすい。そのため、フィルム厚みは後述の範囲に適宜設定することが望ましい。また、リタデーションの制御に加えて、加工に必要な物性等を勘案して最終的な製膜条件を設定する必要がある。
【0037】
上記の物性を満たすポリエステルフィルムを得るためのポリエステル樹脂は、当該分野で使用される任意のポリエステル樹脂であり得る。即ち、任意のジカルボン酸とジオールとを縮合させて得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等を挙げることができる。
【0038】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。
【0039】
ポリエステルフィルムを構成するジカルボン酸成分とジオール成分はそれぞれ1種又は2種以上を用いても良い。ポリエステルフィルムを構成する具体的なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル樹脂は他の共重合成分を含んでも良く、機械強度の点からは共重合成分の割合は3モル%以下が好ましく、好ましくは2モル%以下、更に好ましくは1.5モル%以下である。
【0040】
上記の物性を満たすポリエステルフィルムは、液晶表示装置で使用される4つの偏光子保護フィルムのうちの任意の偏光子保護フィルムとして使用することができる。好ましくは、当該ポリエステルフィルムは、光源側偏光板を構成する光源側の偏光子保護フィルム、及び/又は視認側偏光板を構成する視認側偏光子保護フィルムとして用いられる。より好ましくは、当該ポリエステルフィルムは、視認側偏光板の視認側に配置される偏光子保護フィルムである。
【0041】
上記の物性を満たすポリエステルフィルムを使用しない偏光子保護フィルムには、従来から偏光子保護フィルムとして使用される任意のフィルムを使用することができる。好ましくは、TACフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム等に代表されるリタデーションが無いフィルムを用いることが好ましい。リタデーションが無いフィルムは、例えば、光源側偏光板を構成する視認側の偏光子保護フィルム及び/又は視認側偏光板を構成する光源側の偏光子保護フィルムとして使用され得る。
【0042】
上述する偏光子及び偏光子保護フィルムによって構成される偏光板は、写り込み防止、ギラツキ抑制、及び/又はキズ抑制等を目的として、種々の機能層(例えば、ハードコート層)を表面に有していても良い。
【0043】
偏光子保護フィルムは、偏光子との接着性を良好にするため、少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、又は、ポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。
【0044】
偏光子保護フィルムに形成される易接着層の塗布液は、水溶性、または、水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及び、ポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましく、これらの塗布液としては、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性、または、水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が例示される。
【0045】
偏光子保護フィルムに形成される易接着層は、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などの公知の方法を単独、又は組み合わせて塗布することができる。
【0046】
偏光子保護フィルムの視認側の任意の位置に積層する機能層としては、例えば、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、帯電防止層、シリコーン層、粘着層、防汚層、撥水層、及びブルーカット層等からなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【0047】
種々の機能層を設けるに際して、偏光子保護フィルムの表面に易接着層を有することが好ましい。その際、反射光による干渉を抑える観点から、易接着層の屈折率を、機能層の屈折率と基本フィルムの屈折率の相乗平均近傍になるように調整することが好ましい。易接着層の屈折率の調整は、公知の方法を採用することができ、例えば、バインダー樹脂に、チタンやジルコニウム、その他の金属種を含有させることで容易に調整することができる。
【0048】
(ハードコート層)
ハードコート層は、硬度及び透明性を有する層であれば良く、通常、紫外線又は電子線で代表的には硬化させる電離放射線硬化性樹脂、熱で硬化させる熱硬化性樹脂等の各種の硬化性樹脂の硬化樹脂層として形成されたものが利用される。これら硬化性樹脂に、適宜柔軟性、その他物性等を付加する為に、熱可塑性樹脂等も適宜添加してもよい。硬化性樹脂のなかでも、代表的であり且つ優れた硬質塗膜が得られる点で好ましいのが電離放射線硬化性樹脂である。
【0049】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の樹脂を適宜採用すれば良い。なお、電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性二重結合を有するラジカル重合性化合物、エポキシ化合物等の様なカチオン重合性化合物等が代表的に用いられ、これら化合物はモノマー、オリゴマー、プレポリマー等としてこれらを単独で、或いは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。代表的な化合物は、ラジカル重合性化合物である各種(メタ)アクリレート系化合物である。(メタ)アクリレート系化合物の中で、比較的低分子量で用いる化合物としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0050】
モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー;或いは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等も適宜用いられる。(メタ)アクリレートとは、アクリレート或いはメタクリレートを意味する。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂を電子線で硬化させる場合、光重合開始剤は不要であるが、紫外線で硬化させる場合は、公知の光重合開始剤を用いる。例えば、ラジカル重合系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることができる。カチオン重合系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合して用いることができる。
【0052】
ハードコート層の厚みは、適宜の厚さとすればよく、例えば0.1〜100μmであるが、通常は1〜30μmとする。また、ハードコート層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。
【0053】
電離放射線硬化性樹脂には、適宜物性調整等の為に、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等も適宜添加することができる。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、各々、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0054】
ハードコート層に耐光性を付与し、日光等に含まれる紫外線による変色、強度劣化、亀裂発生等を防止する為には、電離放射線硬化性樹脂中に紫外線吸収剤を添加することも好ましい。紫外線吸収剤を添加する場合、該紫外線吸収剤によってハードコート層の硬化が阻害されることを確実に防ぐ為、電離放射線硬化性樹脂は電子線で硬化させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機系紫外線吸収剤、或いは粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤等、公知の物の中から選択して用いれば良い。紫外線吸収剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中に0.01〜5質量%程度である。耐光性をより向上させる為に、紫外線吸収剤と併用して、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を添加するのが好ましい。なお、電子線照射は加速電圧70kV〜1MV、照射線量5〜100kGy(0.5〜10Mrad)程度である。
【0055】
(防眩層)
画像表示装置の最視認側には防眩層が設けられていることが好ましい形態の一つである。防眩層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に防眩剤を分散した層として形成される。防眩剤としては、無機系又は有機系の微粒子が用いられる。これら微粒子の形状は、真球状、楕円状等である。微粒子は、好ましくは透明性のものが良い。この様な微粒子は、例えば、無機系微粒子としてはシリカビーズ、有機系微粒子としては樹脂ビーズが挙げられる。樹脂ビーズとしては、例えば、スチレンビーズ、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリルースチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒドビーズなどが挙げられる。微粒子は、通常、樹脂分100質量部に対し、2〜30質量部、好ましくは10〜25質量部程度添加することができる。
【0056】
防眩剤を分散保持する上記樹脂は、ハードコート層と同じ様に、なるべく硬度が高い方が好ましい。よって、上記樹脂として、例えば、上記ハードコート層で述べた電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等を用いることができる。
【0057】
防眩層の厚みは、適宜の厚さとすればよく、通常は1〜20μm程度とする。防眩層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。なお、防眩層を形成する為の塗液中には、防眩剤の沈殿を防ぐ為に、シリカ等の公知の沈降防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0058】
(反射防止層)
画像表示装置の最表面側、各フィルムの空気との界面には反射防止層が設けられていることも好ましい形態の一つである。反射防止層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良い。一般に、反射防止層は少なくとも低屈折率層からなり、更に低屈折率層と(該低屈折率層よりも屈折率が高い)高屈折率層とを交互に隣接積層し且つ表面側を低屈折率層とした多層の層からなる。低屈折率層及び高屈折率層の各厚みは、用途に応じた適宜厚みとすれば良く、隣接積層時は各々0.1μm前後、低屈折率層単独時は0.1〜1μm程度であることが好ましい。
【0059】
低屈折率層としては、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質を樹脂中に含有させた層、フッ素系樹脂等の低屈折率樹脂の層、低屈折率物質を低屈折率樹脂中に含有させた層、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質からなる層を薄膜形成法(例えば、蒸着、スパッタ、CVD、等の物理的又は化学的気相成長法)で形成した薄膜、酸化ケイ素のゾル液から酸化ケイ素ゲル膜を形成するゾルゲル法で形成した膜、或いは、低屈折率物質として空隙含有微粒子を樹脂中に含有させた層等が挙げられる。
【0060】
上記空隙含有微粒子とは、内部に気体を含む微粒子、気体を含む多孔質構造の微粒子等のことであり、微粒子固体部分の本来の屈折率に対して、該気体による空隙によって微粒子全体としては、見かけ上屈折率が低下した微粒子を意味する。この様な空隙含有微粒子としては、特開2001−233611号公報に開示のシリカ微粒子等が挙げられる。また、空隙含有微粒子としては、シリカの様な無機物以外に、特開2002−805031号公報等に開示の中空ポリマー微粒子も挙げられる。空隙含有微粒子の粒径は、例えば5〜300nm程度である。
【0061】
高屈折率層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の高屈折率物質を樹脂中に含有させた層、フッ素非含有樹脂等の高屈折率樹脂の層、高屈折率物質を高屈折率樹脂中に含有させた層、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の高屈折率物質からなる層を薄膜形成法(例えば、蒸着、スパッタ、CVD、等の物理的乃至は化学的気相成長法)で形成した薄膜等が挙げられる。
【0062】
(防汚層)
防汚層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等の珪素系化合物;フッ素系界面活性剤、フッ素系樹脂等のフッ素系化合物;ワックス等の防汚染剤を含む塗料を用いて公知の塗工法で形成することができる。防汚層の厚みは、適宜厚さとすればよく、通常は1〜10μm程度とすることが出来る。
【0063】
(帯電防止層)
帯電防止層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に帯電防止層を含有させた層として形成される。帯電防止層としては、有機系や無機系の化合物が用いられる。例えば、有機系化合物の帯電防止層としては、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、有機金属系帯電防止剤等が挙げられ、またこれら帯電防止剤は低分子化合物として用いられるほか、高分子化合物としても用いられる。また、帯電防止剤としては、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性ポリマー等も用いられる。また、帯電防止剤として例えば金属酸化物からなる導電性微粒子等も用いられる。導電性微粒子の粒径は透明性の点で、例えば平均粒径0.1nm〜0.1μm程度である。なお、該金属酸化物としては、例えば、ZnO、CeO
2、Sb
2O
2、SnO
2、ITO(インジウムドープ酸化錫)、In
2O
3、Al
2O
3、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0064】
帯電防止層を含有させる上記樹脂としては、例えば、上記ハードコート層で述べた様な、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等が使用される他、帯電防止層を中間層として形成して帯電防止層自体の表面強度が不要な場合には、熱可塑性樹脂等も使用される。帯電防止層の厚みは、適宜厚さとすればよく、通常は0.01〜5μm程度とする。帯電防止層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。
【0065】
本発明の液晶表示装置は、上述するバックライト光源、2枚の偏光板、及び前記2枚の偏光板の間に配置される液晶セルを有するが、任意に他の部材を更に有していても良い。例えば、カラーフィルター、レンズフィルム、拡散シート、反射防止フィルム等を更に備えていても良い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限されるものではなく、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更を加えることが可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
以下に、実施例において採用した物性の測定方法を示す。
(1)厚み(d)
JIS K 7130「プラスチックフィルム及びシートの厚さ測定方法(A法)」に準拠して、厚み(d)を求めた。
【0068】
(2)屈折率(Nx、Ny、Nz)
JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法(A法)」に準拠して、MDの屈折率(Nx)、TDの屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を求めた。通常波長589nmのナトリウムD線を用いて測定した。
【0069】
(3)複屈折率(ΔNxy)及びリタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム面に対して厚さ方向をz軸とし、z軸と直行し、且つ、相互にも直行する2つの軸方向をx軸及びy軸とした場合に、これらの各軸方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)によって生じる複屈折とフィルム厚みdの積で示される位相差である。ここでは、縦方向(MD)をx軸、幅方向(TD)をy軸とし、フィルム面(x−y平面)に入射する光によって生じる複屈折率(ΔNxy)と厚み(d)との積である面内リタデーションをリタデーション(Re)とした。従って、複屈折率(Δxy)及びリタデーション(Re)は、それぞれについて下記の式で求めた。各屈折率は、アッベ屈折率計を用いて測定した。リタデーションの単位はnmである。
【0070】
ΔNxy =|Nx−Ny|
Re =ΔNxy×d
【0071】
(4)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションは、厚さ方向から入射する光よって生じるリタデーションを示すものである。ここでは、x−z平面とy−z平面の2つの複屈折率の平均とフィルム厚み(d)の積として、次式より求めた。単位はnmである。
【0072】
Rth =(|Nx−Nz|+|Ny−Nz|)/2×d
【0073】
(5)面配向度(ΔP)
フィルムの縦方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)の値を用いて、下記式に従って面配向度(ΔP)を算出した。
【0074】
ΔP =((Nx+Ny)/2)−Nz
【0075】
(6)虹斑観察
市販の偏光子フィルムの片面に、後述する各実施例及び比較例のフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸(NxとNyの高い方)とが垂直になるように貼り付け、その反対の面に市販のTACフィルムを貼り付けて偏光板を作製した。次に、白色LEDをバックライトとして有し、2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする2つの偏光板、及び液晶セルを有する市販の液晶表示装置の視認側の偏光板を取り外し、前記の通り作製した偏光板を交換した。この際、作製した偏光板の視認側の偏光子保護フィルムが、実施例又は比較例のフィルムとなるように当該偏光板を設置した。このようにして作製した液晶表示装置に白色画像を表示させ、ディスプレイの正面、及び、斜め方向から目視観察を行なって、虹斑の発生について、以下のように判定した。なお、観察角度は、ディスプレイの画面の中心から法線方向(垂直)に引いた線と、ディスプレイ中心と観察時の眼の位置とを結ぶ線とで成す角である。 ◎:いずれの方向からも虹斑の発生無し ○:観察角度が0°から55°の範囲の時場合に、虹斑の発生無し。観察角度が55°を超えた範囲で一部に極薄い虹斑が観察される。 ×:観察角度が0°から55°の範囲で虹斑が観察される。
【0076】
(7)引裂き強度
東洋精機製作所製エレメンドルフ引裂試験機を用いて、JIS P−8116に従い、各フィルムの引裂き強度を測定した。引裂き方向はフィルムの配向主軸方向と平行となるように行い、下記の基準に従って評価した。配向主軸方向の測定は分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定した。
【0077】
○:引裂き強度が50mN以上
×:引裂き強度が50mN未満
【0078】
(8)透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として各フィルムの波長300〜500nm領域の光線透過率を測定し、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0079】
(9)150℃における熱収縮率
JISC2318−19975.3.4(寸法変化)に準拠し、長手方向及び幅方向の寸法変化率(%)を測定した。測定すべき方向に対し、フィルムを幅10mm、長さ250mmに切り取り、200mm間隔で印を付け、5gfの一定張力下で印の間隔(A)を測定した。次いで、フィルムを150℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で150±3℃で30分間加熱処理した後、5gfの一定張力下で印の間隔(B)を測定した。これらの測定値を用いて、以下の式より熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(A−B)/A×100
【0080】
(製造例1−ポリエステル樹脂A)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。更に、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0081】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルタで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られた樹脂の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。以下、このようにして得られたポリエチレンテレフタレート樹脂をPET(A)と略す。
【0082】
(製造例2−ポリエステル樹脂B)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有する樹脂を得た。このようにして得られたポリエチレンテレフタレート樹脂をPET(B)と略す。
【0083】
(製造例3−接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を利用して、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%及び5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した。そして、加熱撹拌し、77℃に達した時点で、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた。その後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0084】
(実施例1)
3層構造からなる基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給した。また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚みの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0085】
次いで、リバースロール法により、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m
2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0086】
この塗布層を形成した未延伸フィルムを同時二軸延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度90℃の熱風ゾーンに導き、縦方向に倍率0.8倍となるように緩和させ、同時に横方向に4.0倍延伸した。次に、温度170℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0087】
(実施例2)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約58μmとし、縦方向に0.9倍の倍率で緩和させたこと以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0088】
(実施例3)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約38μmとし、縦方向に0.7倍の倍率で緩和させ、180℃の温度で30秒間熱処理を施した以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0089】
(実施例4)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約25μmとし、横方向の延伸倍率を5.0倍とし、180℃の温度で30秒間で熱処理したこと以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0090】
(実施例5)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約80μmとし、縦方向に0.85倍の倍率で緩和させ、延伸時の温度を95℃とし、180℃の温度で30秒間熱処理を施した以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0091】
(実施例6)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約38μmとし、縦方向に0.6倍の倍率で緩和させたこと以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0092】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で作製した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約25μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0093】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で、走行方向に3.4倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約38μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0094】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で、走行方向に4.0倍、幅方向に1.0倍延伸して、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。縦一軸延伸フィルムのため、フィルム表面に微小なキズが観察された。
【0095】
(比較例4)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約38μmとし、縦方向の緩和処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0096】
(比較例5)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約38μmとし、縦方向の緩和処理を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0097】
(比較例6)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを約25μmとし、縦方向の緩和処理を行わなかったこと以外は実施例4と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0098】
以上の実施例及び比較例のフィルムについて評価した結果を下記の表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
上記の通り、実施例1〜6のフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、虹斑の発生が有意に抑制され、視認性に優れた液晶表示装置が得られることが確認された。また、実施例1〜6のフィルムは、視認性に優れた画像表示装置の提供を可能にするだけでなく、比較的厚みが薄いにも関わらず、十分な引裂強度を備えているため、工業的な画像表示装置の製造における使用に適していることが確認された。一方、比較例1、2及び6のフィルムは、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、正面から観察した際に虹斑を生じてしまい、良好な視認性を得ることは出来なかった。また、比較例3のフィルムは、偏光子保護フィルムとして用いた場合の視認性には問題ないものの、引裂強度が不十分であるため、工業的且つ安定的な液晶表示装置の製造には適していないことが判明した。これは、比較例3のフィルムは、Re値及びRe/Rth比は比較的高いものの、ΔPの値が高いことが原因であると考えられる。比較例4及び5のフィルムは、観察角度が0°から55°の範囲で観察したときに虹斑の発生は観察されなかったが、観察角度が55°を超えた範囲で一部に極薄い虹斑が観察された。これは、比較例4及び5のフィルムは、Reが比較的高いものの、Re/Rth比が低いことが原因であると考えられる。また、比較例6はΔPの値が高いことから引裂強度も不十分であった。