(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応生成物(X)を含む溶液(a)を調製する工程と、前記(C)成分と、前記(D)成分又はこれを含む溶液とを混合して溶液(b)を調製する工程と、該溶液(a)と溶液(b)とを混合する工程とを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
前記反応生成物(X)を含む溶液(a)を調製する工程と、前記(C)成分と前記非球状無機粒子又はその分散液とを混合し、次いで前記(D)成分又はこれを含む溶液を添加して溶液(b’)を調製する工程と、該溶液(a)と溶液(b’)とを混合する工程とを有する、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分との反応生成物(X):
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜13のアラルキル基を表す。)、
(C)グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基と、エチレン性不飽和結合含有基とを有する化合物、及び、
(D)エチレン性不飽和結合含有基を有するリン酸誘導体、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は上記構成を有することにより、製造が容易であり、ガスバリア性に優れ、無機薄膜層への接着性が良好な硬化物を形成することができ、且つ、調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下が少なく経時安定性に優れる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物となる。その理由については定かではないが、以下のように推察される。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分と(B)成分との反応生成物(X)(以下、単に「反応生成物(X)」ともいう)を含むことにより、優れたガスバリア性、接着性及び成膜性を発現する。例えば本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、無機薄膜層を有する従来のガスバリア性フィルムに適用すると、ガスバリア性をさらに向上させることができる。
前記(C)成分はエチレン性不飽和結合含有基を有する活性エネルギー線硬化性化合物である。当該(C)成分はグリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有しており、これらの基は反応生成物(X)中のアミノ基と反応し得る。この反応生成物(X)と(C)成分との反応が進行すれば、反応生成物(X)にエチレン性不飽和結合含有基が導入され、より硬化性及び成膜性に優れる樹脂組成物が形成されると考えられる。
前記(D)成分もエチレン性不飽和結合含有基を有する活性エネルギー線硬化性化合物であるとともに、リン酸残基を有することで、無機薄膜層に対する接着性及び経時安定性を高めていると考えられる。本発明者らは、接着性向上成分として公知であるシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤を用いても本発明の効果を得ることができず、前記所定の(D)成分を用いることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下を抑制できることを見出した。
【0016】
本明細書において「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」とは、可視光線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により硬化する樹脂組成物を意味する。これらの中でも、紫外線硬化性樹脂組成物又は電子線硬化性樹脂組成物であることが好ましく、紫外線硬化性樹脂組成物であることがより好ましい。
以下に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0017】
<反応生成物(X)>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分との反応生成物(X)を含む。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化4】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜13のアラルキル基を表す。)
当該反応生成物(X)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物はガスバリア性、接着性及び成膜性に優れるものとなる。
【0018】
(A)成分はガスバリア性の観点から用いられ、ガスバリア性の点からメタキシリレンジアミンが好ましい。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類を混合して用いてもよい。
【0019】
(B)成分は前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。ガスバリア性の観点から、式(1)におけるR
1は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
また、ガスバリア性の観点から、式(1)におけるR
2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
【0020】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば当該不飽和カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、良好な反応性を得る観点から当該アルキル炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。
【0021】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、α−プロピルアクリル酸、α−イソプロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、α−t−ブチルアクリル酸、α−ペンチルアクリル酸、α−フェニルアクリル酸、α−ベンジルアクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、4−メチル−2−ヘキセン酸、5−メチル−2−ヘキセン酸、4,4−ジメチル−2−ペンテン酸、4−フェニル−2−ブテン酸、桂皮酸、o−メチル桂皮酸、m−メチル桂皮酸、p−メチル桂皮酸、2−オクテン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物等が挙げられる。
上記の中でも、良好なガスバリア性を得る観点から、前記(B)成分はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、アクリル酸のアルキルエステルがよりさらに好ましく、アクリル酸メチルがよりさらに好ましい。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記(A)成分と(B)成分との反応は、前記(B)成分として不飽和カルボン酸、エステル、アミドを使用する場合には、0〜100℃、より好ましくは0〜70℃の条件下で(A)と(B)とを混合し、100〜300℃、好ましくは130〜250℃の条件下でマイケル付加反応及び脱水、脱アルコール、脱アミンによるアミド基形成反応を行うことにより実施される。
この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらに脱水剤、脱アルコール剤として、亜リン酸エステル類などの触媒を添加することもできる。
【0023】
一方、前記(B)成分として不飽和カルボン酸の酸無水物、酸塩化物を使用する場合には、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の条件下で混合後、マイケル付加反応及びアミド基形成反応を行うことにより実施される。この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらにピリジン、ピコリン、ルチジン、トリアルキルアミンなどの3級アミンを添加することもできる。
【0024】
前記(A)成分と前記(B)成分との反応により形成されるアミド基部位は高い凝集力を有しているため、当該(A)成分と(B)成分との反応生成物(X)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、高いガスバリア性と、後述する基材フィルム等に対する良好な接着性とを発現する。
【0025】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]は、0.3〜1.0の範囲であることが好ましい。上記反応モル比が0.3以上であれば、反応生成物(X)中に十分な量のアミド基が生成し、高いレベルのガスバリア性及び接着性が発現する。一方、上記反応モル比が1.0以下の範囲であれば、耐熱性に優れ、有機溶剤や水に対する溶解性にも優れる。
得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びその硬化物の高いガスバリア性、優れた硬化物性能を特に考慮する場合には、前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]が0.6〜1.0の範囲であることがより好ましい。
【0026】
<(C)成分:グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基と、エチレン性不飽和結合含有基とを有する化合物>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(C)成分として、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基と、エチレン性不飽和結合含有基とを有する化合物を含む。(C)成分は反応生成物(X)中のアミノ基と反応し得る、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、かつ、エチレン性不飽和結合含有基を有する活性エネルギー線硬化性化合物である。
【0027】
(C)成分は、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有していてもよいが、グリシジル基又はイソシアネート基をいずれか1つのみ有する化合物であることが好ましい。
【0028】
(C)成分が有するエチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、活性エネルギー線硬化性の観点からは(メタ)アクリロイル基が好ましい。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。(C)成分はエチレン性不飽和結合含有基を少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有していてもよいが、エチレン性不飽和結合含有基を1つのみ有する化合物であることが好ましい。
【0029】
(C)成分の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−イソシアネートエチロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
上記の中でも、反応生成物(X)との反応性、及びガスバリア性向上の観点から、(C)成分としてはグリシジル(メタ)アクリレート及び2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、反応生成物(X)との反応性が過度に高すぎず取り扱い性が良好で、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の経時安定性に優れるという観点からはグリシジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0030】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(C)成分中のグリシジル基及びイソシアネート基の合計に対する、反応生成物(X)中のアミン活性水素のモル比[反応生成物(X)中のアミン活性水素数/(C)成分中のグリシジル基及びイソシアネート基の合計数]が好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜5となる量である。当該モル比が0.5以上であれば高いガスバリア性が発現し、また、10以下であれば、硬化収縮が小さく、活性エネルギー線硬化性が良好である。
【0031】
<(D)成分:エチレン性不飽和結合含有基を有するリン酸誘導体>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(D)成分として、エチレン性不飽和結合含有基を有するリン酸誘導体を含む。(D)成分を含むことで、活性エネルギー線硬化性及び得られる硬化物の無機薄膜層に対する接着性が良好になる。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下を抑制できる。
【0032】
(D)成分が有するエチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、活性エネルギー線硬化性の観点からは(メタ)アクリロイル基が好ましい。(D)成分はエチレン性不飽和結合含有基を少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有していてもよいが、エチレン性不飽和結合含有基を1つのみ有する化合物であることが好ましい。
【0033】
(D)成分は、より具体的には、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
(式(2)中、R
11は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は−(C
mH
2m)
p−OH(mは1〜6、pは1〜10の数である。)で表される1価の基である。R
12は水素原子又はメチル基である。Zは−(C
rH
2rO)
q−(rは1〜6、qは1〜20の数である。)、又は−R
13−COO−(C
rH
2rO)
q−(R
13は炭素数1〜12のアルキレン基であり、r、qは前記と同じである)で表される2価の基である。nは0、1、又は2の数である。)
【0034】
一般式(2)において、R
11は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は−(C
mH
2m)
p−OH(mは1〜6、pは1〜10の数である。)で表される1価の基であり、好ましくは水素原子である。
R
11における炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、及び各種ドデシル基(ラウリル基)が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
R
11における、−(C
mH
2m)
p−OHで表される1価の基において、mは1〜6、pは1〜10の数である。mは好ましくは1〜4であり、pは好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
【0035】
一般式(2)において、R
12は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。nが0又は1である場合、複数のR
12は同一でも異なっていてもよい。
【0036】
一般式(2)において、Zは−(C
rH
2rO)
q−(rは1〜6、qは1〜20の数である。)、又は−R
13−COO−(C
rH
2rO)
q−(R
13は炭素数1〜12のアルキレン基であり、r、qは前記と同じである)で表される2価の基である。rは好ましくは1〜4、より好ましくは2〜3であり、qは好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。
R
13における炭素数1〜12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、エチルへキシレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、及びヘキサメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0037】
一般式(2)において、nは0、1、又は2の数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。なお、(D)成分として、前記一般式中のnの数が異なる化合物の混合物を用いてもよい。(D)成分がnの数が異なる化合物の混合物である場合、一般式中のnは当該混合物中の平均値を示すことがある。
【0038】
好ましい(D)成分の具体例として、下記一般式(2−1)及び下記一般式(2−2)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
(式中、nは前記と同じである。)
【0039】
(D)成分として市販品を用いることもできる。例えば、共栄社化学(株)製の「ライトエステルP−1M」、「ライトエステルP−2M」、日本化薬(株)製の「KAYAMER PM−2」、「KAYAMER PM−21」等が挙げられる。
【0040】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、反応生成物(X)100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜8.0質量部、さらに好ましくは0.5〜8.0質量部、よりさらに好ましくは0.5〜5.0質量部、よりさらに好ましくは1.5〜5.0質量部、よりさらに好ましくは2.5〜5.0質量部、よりさらに好ましくは3.0〜5.0質量部、よりさらに好ましくは3.5〜5.0質量部である。(D)成分の含有量が反応生成物(X)100質量部に対し0.1質量部以上であれば、活性エネルギー線硬化性及び得られる硬化物の無機薄膜層に対する接着性が良好になる。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下を抑制できる。また、(D)成分の含有量が反応生成物(X)100質量部に対し10質量部以下であれば、樹脂組成物中において反応生成物(X)と(D)成分とから形成される塩の析出等が起こり難く、安定性が良好である。
【0041】
(光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が紫外線硬化性樹脂組成物である場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、ミヒラーズケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも、硬化性及び得られる硬化物の低着色性の観点からは、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、及びアシルホスフィンオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、硬化性及び得られる硬化物の低着色性、並びに、得られる硬化物の無機薄膜層に対する接着性の観点からはα−ヒドロキシアルキルフェノン類がより好ましい。
α−ヒドロキシアルキルフェノン類としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure 184」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF製「Irgacure 1173」)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure 2959」)、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン(BASF製「Irgacure 127」)等が挙げられる。
α−アミノアルキルフェノン類としては、2−メチル−1−[4−[メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF製「Irgacure 907」)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルフォリノブチロフェノン(BASF製「Irgacure 369」「Irgacure 369E」)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(BASF製「Irgacure 379EG」)等が挙げられる。
α−アシルオキシムエステル類としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)(BASF製「Irgacure OXE01」)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASF製「Irgacure OXE02」)等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製「Irgacure TPO」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF製「Irgacure 819」)等が挙げられる。
チオキサントン類としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
上記光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記光重合開始剤の中でも、得られる硬化物の低着色性の観点からは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure 184」)、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF製「Irgacure 819」)からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。また、得られる硬化物の無機薄膜層に対する接着性の観点からは、α−ヒドロキシアルキルフェノン類が好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure 184」)、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure 2959」)からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
得られる硬化物の低着色性及び無機薄膜層に対する接着性の観点から、さらに好ましくは1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure 184」)である。
【0043】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は、反応生成物(X)100質量部に対し、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.8〜8質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0044】
(非球状無機粒子)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、さらに、非球状無機粒子を含有することができる。非球状無機粒子を含有すると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下が起こり難くなる。また、無機薄膜層を有するガスバリア性フィルムの無機薄膜層面に当該非球状無機粒子を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成した場合、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させることもできる。さらに、当該樹脂組成物の硬化物からなる層に起因するブロッキングの発生も抑制することができる。
非球状無機粒子の形状は、球状(略真円球状)以外の三次元形状であればよく、例えば、板状、鱗片状、柱状、鎖状、繊維状等が挙げられる。板状、鱗片状の無機粒子は複数積層されて層状になっていてもよい。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点からは、板状、鱗片状、柱状、又は鎖状の無機粒子が好ましく、板状、鱗片状、又は柱状の無機粒子がより好ましく、板状又は鱗片状の無機粒子がさらに好ましい。
【0045】
非球状無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、雲母(マイカ)、タルク、アルミニウム、ベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させる観点からはシリカ、アルミナ、及び雲母からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
上記非球状無機粒子は、樹脂組成物への分散性を高め、得られる硬化物及びガスバリア性フィルムの透明性を向上させることを目的として、必要に応じ表面処理されていてもよい。中でも、非球状無機粒子は有機系材料でコーティングされていることが好ましく、ガスバリア性及び耐屈曲性、透明性を向上させる観点からは有機系材料でコーティングされたシリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。ガスバリア性及び耐屈曲性の観点からは、有機系材料でコーティングされたシリカがさらに好ましく、透明性の観点からは、有機系材料でコーティングされたアルミナがさらに好ましい。
【0046】
非球状無機粒子の平均粒径は、好ましくは1〜2,000nm、より好ましくは1〜1,500nm、さらに好ましくは1〜1,000nm、よりさらに好ましくは1〜800nm、よりさらに好ましくは1〜500nm、よりさらに好ましくは5〜300nm、よりさらに好ましくは5〜200nm、よりさらに好ましくは5〜100nm、よりさらに好ましくは8〜70nmの範囲である。当該平均粒径が1nm以上であれば無機粒子の調製が容易であり、2,000nm以下であればガスバリア性、耐屈曲性、及び透明性がいずれも良好になる。なお、当該平均粒径は一次粒子の平均粒径である。
【0047】
非球状無機粒子が板状、鱗片状、柱状、又は繊維状である場合、非球状無機粒子のアスペクト比は好ましくは2〜700、より好ましくは3〜500である。当該アスペクト比が2以上であると良好なガスバリア性が発現しやすい。非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、3箇所以上の測定値の平均から求められる。なお、硬化物中に存在する非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比については、例えばガスバリア性フィルムをエポキシ樹脂で包埋した後、イオンミリング装置を用いてフィルム断面のイオンミリングを行って断面観察用試料を作製し、得られた試料の断面を上記と同様の方法で観察、測定することにより求めることができる。
非球状無機粒子の平均粒径が100nm未満であって上記方法による平均粒径の測定が困難である場合は、当該平均粒径は例えばBET法により測定することもできる。
【0048】
非球状無機粒子の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
非球状無機粒子の調製しやすさ、樹脂組成物への配合容易性並びに分散性の観点から、本発明においては非球状無機粒子の分散液を調製し、該分散液を樹脂組成物に配合することが好ましい。非球状無機粒子分散液の分散媒には特に制限はなく、水又は有機溶剤のいずれも用いることができる。有機溶剤としては非球状無機粒子の分散性の観点から極性溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール等のプロトン性極性溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
非球状無機粒子の分散性の観点からは、分散媒は水及びプロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、粒子の分散性、並びに分散液と樹脂組成物との混和性の観点からはプロトン性極性溶剤がより好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び2−プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0049】
非球状無機粒子を用いる場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の前記非球状無機粒子の含有量は、前記反応生成物(X)100質量部に対し、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部、さらに好ましくは0.2〜2.0質量部、よりさらに好ましくは0.4〜1.5質量部である。樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量が前記反応生成物(X)100質量部に対し0.05質量部以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下が起こり難くなる。また、これを用いて得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性及び耐屈曲性向上効果が良好であり、かつ、ブロッキングの発生も抑制できる。また、当該含有量が5.0質量部以下であると透明性が良好になる。
【0050】
(カップリング剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。これらのカップリング剤の中でも、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性の観点からはシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性の観点からは、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0051】
カップリング剤を用いる場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性の観点から、前記反応生成物(X)100質量部に対し、好ましくは0.05〜20質量部、より好ましくは1.0〜15質量部、さらに好ましくは3.0〜10質量部、よりさらに好ましくは5.0〜10質量部である。
【0052】
(溶媒)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、粘度調整及び作業性向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに溶媒を含有してもよい。溶媒としては、樹脂組成物中の成分を溶解、又は分散させる観点からアルコール系溶媒及びエステル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、その具体例は「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法」において後述する。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の溶媒の含有量は特に制限されず、所望の粘度に調整し得る範囲で適宜選択することができるが、作業性向上の観点から、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%である。
【0053】
<その他の成分>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて熱硬化性樹脂、湿潤剤、粘着付与剤、消泡剤、硬化促進剤、防錆添加剤、顔料、酸素捕捉剤等の添加剤を配合してもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中のこれら添加剤の合計含有量は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。
【0054】
本発明の効果を得る観点から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の固形分中の前記反応生成物(X)、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上であり、上限は100質量%である。「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の固形分」とは、樹脂組成物中の水及び有機溶剤を除いた成分を意味する。
【0055】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、前記反応生成物(X)、前記(C)成分、前記(D)成分、及び必要に応じ用いられる光重合開始剤、非球状無機粒子の分散液、添加剤並びに溶媒をそれぞれ所定量配合した後、公知の方法及び装置を用いて攪拌、混合することにより調製できる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法としては、該樹脂組成物の調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下を起こり難くする観点から、前記反応生成物(X)を含む溶液(a)を調製する工程と、前記(C)成分と、前記(D)成分又はこれを含む溶液とを混合して溶液(b)を調製する工程と、該溶液(a)と溶液(b)とを混合する工程とを有することが好ましい(製造方法1)。
【0056】
前記溶液(a)に用いる溶媒は、前記反応生成物(X)の溶解性の観点から、アルコール系溶媒及びエステル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルコール系溶媒がより好ましい。
アルコール系溶媒としては、炭素数1〜4の1価アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びn−ブチルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタノール及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、メタノールがさらに好ましい。
エステル系溶媒としては、炭素数4〜8のエステル化合物が好ましく、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0057】
前記溶液(b)は、(C)成分と、(D)成分又はこれを含む溶液とを混合することにより調製する。溶液(b)の調製においては、(D)成分を含む溶液を用いることが好ましい。当該溶液に用いる好ましい溶媒は、前記溶液(a)に用いる溶媒において例示したものと同じであり、アルコール系溶媒及びエステル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルコール系溶媒がより好ましい。中でも、メタノール及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、メタノールがよりさらに好ましい。
【0058】
また、前記非球状無機粒子を用いる場合は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法としては、前記反応生成物(X)を含む溶液(a)を調製する工程と、前記(C)成分と前記非球状無機粒子又はその分散液とを混合し、次いで前記(D)成分又はこれを含む溶液を添加して溶液(b’)を調製する工程と、該溶液(a)と溶液(b’)とを混合する工程とを有することが好ましい(製造方法2)。この方法を採用することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下を起こり難くすることができる。
製造方法2において、溶液(a)に用いる溶媒としては、アルコール系溶媒及びエステル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、その具体例は前記製造方法1において例示したものと同じである。
製造方法2においては、溶液(a)においてアルコール系溶媒及びエステル系溶媒を併用することがより好ましい。好ましい溶媒の組み合わせは、メタノールと酢酸エチルの混合溶媒である。アルコール系溶媒とエステル系溶媒とを併用する場合、その混合比は特に制限されないが、アルコール系溶媒とエステル系溶媒の質量比として、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。
【0059】
製造方法2においては、溶液(b’)の調製の際、非球状無機粒子の分散性の観点から、(C)成分と非球状無機粒子の分散液とを混合することが好ましい。非球状無機粒子の分散液の好ましい態様は前記の通りである。
また、溶液(b’)の調製においては(D)成分又はこれを含む溶液を使用する。溶液(b’)の調製の際、非球状無機粒子の分散液を用いる場合は、(C)成分と非球状無機粒子の分散液とを混合し、次いで(D)成分を添加して溶液(b’)を調製することが好ましい。
溶液(b’)の調製において(D)成分を含む溶液を使用する場合、該溶液に用いる好ましい溶媒は前記製造方法1と同じである。
【0060】
また製造方法2において、溶液(b’)は、粘度が上昇し、ゲル状になるまで静置してから溶液(a)と混合することが好ましい。溶液(b’)の静置温度は、好ましくは10〜35℃であり、静置時間は好ましくは3〜48時間である。これにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製後、時間が経過してから用いても、得られる硬化物の無機薄膜層への接着性低下が起こり難くなる。
【0061】
本発明において「樹脂組成物の調製後」とは、製造方法1においては溶液(a)と溶液(b)とを混合した後、製造方法2においては溶液(a)と溶液(b’)とを混合した後、であることを意味する。
【0062】
[硬化物]
本発明は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。当該硬化物はガスバリア性に優れ、後述する無機薄膜層への接着性が良好である。例えば当該硬化物からなる樹脂硬化層は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層として機能する。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて当該硬化物を形成する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。より詳細には、ガスバリア性フィルムの製造方法において説明する。
【0063】
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、無機薄膜層を有する基材フィルム(以下、単に「基材フィルム」ともいう)と、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層(以下、単に「樹脂硬化層」ともいう)とを有する。
当該ガスバリア性フィルムは、前記基材フィルムと、少なくとも1層の前記樹脂硬化層とを有していればよいが、基材フィルムの無機薄膜層側の面に樹脂硬化層を有することが好ましい。これにより、ガスバリア性が高く、無機薄膜層を有していても耐屈曲性に優れるフィルムとなる。以下、本発明のガスバリア性フィルムを構成する材料について説明する。
【0064】
<基材フィルム>
本発明のガスバリア性フィルムを構成する基材フィルムは、ベースフィルムと、少なくとも1層の無機薄膜層とから構成されるフィルムである。基材フィルムは少なくとも一方の面に無機薄膜層を有していればよいが、ガスバリア性フィルムの耐屈曲性や生産性の観点から、当該基材フィルムは片面のみに無機薄膜層を有していることが好ましい。
【0065】
(ベースフィルム)
基材フィルムを構成するベースフィルムとしては、透明プラスチックフィルムが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシレンアジパミド(N−MXD6)等のポリアミド系フィルム;ポリイミド系フィルム;ポリ乳酸等の生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明性、強度及び耐熱性の点から、ベースフィルムとしてはポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、及びポリイミド系フィルムからなる群から選ばれるフィルムが好ましく、ポリエステル系フィルムがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。
上記フィルムは一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0066】
(無機薄膜層)
無機薄膜層は、ガスバリア性フィルムにガスバリア性を付与するために設けられる。無機薄膜層は厚みが薄くても高いガスバリア性を発現することができ、透明性も良好である。無機薄膜層は、蒸着法により形成された無機蒸着層であることが好ましい。
無機薄膜層を構成する無機物は、蒸着法によりベースフィルム上にガスバリア性の薄膜を形成しうる無機物であれば特に制限はないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ジルコニウム、炭素、又はこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸窒化物等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の点からはケイ素酸化物(シリカ)及びアルミニウム酸化物(アルミナ)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガスバリア性の点からはケイ素酸化物がより好ましい。一方で、従来接着性が発現し難かったアルミニウム酸化物からなる無機薄膜層に対しても、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化層は良好な接着性を発現する。したがって本発明の効果の有効性の観点からは、無機薄膜層を構成する無機物はアルミニウム酸化物であることが好ましい。上記無機物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
無機薄膜層の厚みは、高いガスバリア性を得る観点から、好ましくは5nm以上である。また、透明性及び耐屈曲性の観点からは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。上記厚みは、無機薄膜層の1層あたりの厚みである。
【0067】
無機薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、あるいはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法等の公知の蒸着法が挙げられる。
【0068】
上記ベースフィルムと少なくとも1層の無機薄膜層とから構成される基材フィルムの厚みは、ガスバリア性や強度の点から、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは8〜50μm、よりさらに好ましくは10〜40μmである。
【0069】
<樹脂硬化層>
本発明のガスバリア性フィルムが有する樹脂硬化層は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。
樹脂硬化層の厚みは、ガスバリア性及び耐屈曲性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、よりさらに好ましくは1.0μm以上である。また、ガスバリア性フィルムの透明性の観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、よりさらに好ましくは5.0μm以下、よりさらに好ましくは3.5μm以下である。上記厚みは、樹脂硬化層の1層あたりの厚みである。
【0070】
<ガスバリア性フィルムの層構成>
本発明のガスバリア性フィルムは、無機薄膜層を有する前記基材フィルムと、少なくとも1層の前記樹脂硬化層とを有する構成であればよい。本発明の効果を得る観点からは、本発明のガスバリア性フィルムは前記基材フィルムが片面のみに無機薄膜層を有し、樹脂硬化層を1層のみ有する構成が好ましい。また、無機薄膜層と樹脂硬化層とは隣接していることが好ましい。
ガスバリア性フィルムの好ましい層構成として、例えば
図1の構成が挙げられる。
図1は本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す断面模式図であり、ガスバリア性フィルム100は、片面に無機薄膜層12を有する基材フィルム1と、その無機薄膜層12側の面に樹脂硬化層2が設けられた構成である。基材フィルム1は、ベースフィルム11の片面に無機薄膜層12が形成されたものである。
図1においては、無機薄膜層12と樹脂硬化層2とが隣接している。また
図1に示すように、本発明のガスバリア性フィルムは基材フィルム以外のフィルムを有さないことが好ましい。
但し本発明のガスバリア性フィルムは
図1の層構成のものに限定されず、例えば樹脂硬化層を2層以上有してもよい。また、例えば
図1のガスバリア性フィルムにおいて、基材フィルム1と樹脂硬化層2との間、又は、樹脂硬化層2の上面(基材フィルム1と隣接していない面)側に、プライマー層や保護層等を有する構成でもよい。
【0071】
<ガスバリア性フィルムの製造方法>
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば
図1の構成のガスバリア性フィルムの製造方法としては、ベースフィルムの片面に無機薄膜層が形成された基材フィルムの無機薄膜層側の面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を所望の厚みとなるよう塗布して未硬化組成物層を形成し、次いで紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させ、樹脂硬化層を形成する方法が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布する際の塗布方法としては、例えば、バーコート、メイヤーバーコート、エアナイフコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、マイクロリバースグラビアコート、ダイコート、スロットダイコート、バキュームダイコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、はけ塗り等が挙げられる。これらの中でもバーコート、ロールコート又はスプレーコートが好ましく、工業的にはグラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、又はマイクロリバースグラビアコートが好ましい。
【0072】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて溶剤を揮発させる工程(乾燥工程)を行う。乾燥工程における条件は適宜選択できるが、例えば、乾燥温度60〜180℃、乾燥時間5〜180秒の条件で行うことができる。
乾燥工程を行った後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させ、樹脂硬化層を形成する。例えば紫外線照射により硬化する場合、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、50〜2000mJ/cm
2、好ましくは100〜1000mJ/cm
2照射すれば良好な硬化物が得られる。活性エネルギー線照射は、空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0073】
<ガスバリア性フィルムの特性>
本発明のガスバリア性フィルムは優れたガスバリア性を有する。例えば、ガスバリア性フィルムの23℃、相対湿度60%における酸素透過率は、使用する基材フィルムのバリア性によっても異なるが、好ましくは2.0cc/m
2・day・atm以下、より好ましくは1.5cc/m
2・day・atm以下、さらに好ましくは1.0cc/m
2・day・atm以下、よりさらに好ましくは0.8cc/m
2・day・atm以下である。
ガスバリア性フィルムの酸素透過率は、具体的には実施例に記載の方法で求められる。
【0074】
本発明のガスバリア性フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化後の黄変に起因する着色が少ないことが好ましい。具体的には、ガスバリア性フィルムのYI値が、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、よりさらに好ましくは1.8以下である。特にYI値が2.0以下であると、目視でも着色が認められ難く良好である。
ガスバリア性フィルムのYI値はJIS K7373:2006に準拠して測定され、具体的には実施例に記載の方法で求められる。
【0075】
[積層体]
本発明の積層体は、前述した本発明のガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層とを有するものである。その好ましい構成としては例えば、本発明のガスバリア性フィルムにおける樹脂硬化層側の面(
図1のガスバリア性フィルム100における樹脂硬化層2側の面(上面))、又はその反対面(
図1のガスバリア性フィルム100におけるベースフィルム11側の面(下面))に熱可塑性樹脂層を積層した構成が挙げられる。
当該積層体は、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層との間にさらにプライマー層やインキ層、接着剤層、表面保護層、蒸着層等の任意の層が積層されていてもよい。また本発明の積層体は、本発明のガスバリア性フィルム、及び熱可塑性樹脂層を、それぞれ2層以上有していてもよい。
【0076】
熱可塑性樹脂層としては、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。当該熱可塑性樹脂フィルムとしては、前記基材フィルムを構成するベースフィルムにおいて例示した透明プラスチックフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの表面処理が施されていてもよい。また熱可塑性樹脂フィルムとして、紫外線吸収剤や着色剤等を含むフィルムや、表面にプライマー層、インキ層、表面保護層、蒸着層等を有するフィルムを用いることもできる。
熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは10〜300μm、より好ましくは10〜100μmである。
【0077】
本発明の積層体の好ましい層構成としては、例えば、前記ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが直接積層された構成や、前記ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成等が挙げられる。中でも、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成が好ましい。
ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成である場合、ガスバリア性フィルムにおける樹脂硬化層側の面と熱可塑性樹脂フィルムとを対向させて積層することが好ましい。この場合、積層体の層構成は
図2に示す構成となる。
図2は本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
図2において、積層体200はガスバリア性フィルム100における樹脂硬化層2側の面と熱可塑性樹脂フィルム3とを対向させて、接着剤層4を介して積層したものであり、ベースフィルム11、無機薄膜層12、樹脂硬化層2、接着剤層4、及び熱可塑性樹脂フィルム3がこの順に積層された構成である。
【0078】
積層体の製造方法については特に制限されない。例えば、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが直接積層された積層体の製造方法としては、ガスバリア性フィルムを構成する基材フィルムの無機薄膜層側の面に前述した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布した後、直ちにその塗布面に熱可塑性樹脂フィルムをニップロール等により貼り合わせ、次いで、前述の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。この場合、樹脂硬化層を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、ガスバリア性フィルムにおける基材フィルムと上記熱可塑性樹脂フィルムとを接着させる役割も果たす。
ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された積層体の製造方法としては、前述の方法で製造したガスバリア性フィルムの片面、又は、熱可塑性樹脂フィルムの片面に接着剤層を構成する接着剤を塗布し、次いで他方のフィルムを貼付して積層する方法が挙げられる。
接着剤層を構成する接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等の公知の接着剤を用いることができる。また接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性と透明性とを両立させる観点からは、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜20μmである。
【0079】
<用途>
本発明のガスバリア性フィルム及び積層体は、ガスバリア性及び耐屈曲性に優れるため、食品、医薬品、化粧品、精密電子部品等を保護するための包装材料用途に好適である。包装材料として使用する場合には、本発明のガスバリア性フィルム及び積層体をそのまま包装材料として用いてもよく、他の層やフィルムをさらに積層して用いてもよい。
【実施例】
【0080】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
本実施例における測定及び評価は以下の方法で行った。
【0081】
<樹脂硬化層の厚み>
多層膜厚測定装置(グンゼ(株)製「DC−8200」)を用いて測定した。
【0082】
<積層体の剥離強度(g/15mm)>
JIS K6854−3:1999に準拠して、T型剥離試験により300mm/minの剥離速度で積層体の剥離強度を測定した。
【0083】
<酸素透過率(cc/m
2・day・atm)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製「OX−TRAN2/21」)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下でフィルムの酸素透過率を測定した。
【0084】
<YI値>
JIS K7373:2006に準拠し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業(株)製「COH400」)を用いて測定した。
【0085】
製造例1(メタキシリレンジアミンとアクリル酸メチルとの反応生成物(X1)の製造)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。固形分濃度が65%になるように、相当量のメタノールを1.5時間かけて滴下し、メタキシリレンジアミンとアクリル酸メチルとの反応生成物(X1)を得た。
【0086】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造、ガスバリア性フィルム及び積層体の作製、並びに接着性評価]
実施例1
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの製造)
製造例1で得られた反応生成物(X1)413g、及び光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)10.5gをメタノール505gに溶解させて溶液(a)を調製した。次に、(D)成分である2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製「ライトエステルP−1M」)10.5gをメタノール21.1gで希釈し、次いで、(C)成分であるグリシジルメタクリレート(GMA)81.3g(GMA中のグリシジル基に対する、反応生成物(X1)中のアミン活性水素のモル比が3となる量)を添加して溶解させて溶液(b)を調製した。この溶液(a)と溶液(b)を混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを調製した。
樹脂組成物の調製において、溶液(a)と溶液(b)を混合した時点を「組成物調製後0hr」とし、調製後0hr及び/又は2hr経過後の樹脂組成物を用いて、以下の要領でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、評価に用いた。
【0087】
(ガスバリア性フィルムの作製及び評価)
基材フィルムとして、PETの片面にアルミニウム酸化物(アルミナ)が蒸着されたアルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm)、及び、PETの片面にケイ素酸化物(シリカ)が蒸着されたシリカ蒸着PET(三菱樹脂(株)製「テックバリアL」、厚み:12μm)を用いた。基材フィルムのアルミナ蒸着面及びシリカ蒸着面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A(調製後0hr)をバーコーターNo.4を使用して塗布し、120℃で60秒乾燥させて未硬化組成物層を形成した。さらに、積算光量が200mJ/cm
2となるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置U−0303(GSユアサ(株)製、高圧水銀ランプ使用、ランプ出力80W/cm、コンベアスピード3m/min)を用いて紫外線照射し、未硬化組成物層を硬化させて、各基材フィルムの蒸着面に表1に示す厚みの樹脂硬化層を有する、
図1の構成のガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを用いて、前記方法で酸素透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(積層体の作製及び評価)
基材フィルムとして、前記と同じアルミナ蒸着PET及びシリカ蒸着PETを使用した。基材フィルムのアルミナ蒸着面及びシリカ蒸着面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A(調製後0hr及び2hr)をバーコーターNo.4を使用して塗布し、120℃で60秒乾燥させて未硬化組成物層を形成した。直後に、積算光量が200mJ/cm
2となるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置U−0303(GSユアサ(株)製、高圧水銀ランプ使用、ランプ出力80W/cm、コンベアスピード3m/min)を用いて紫外線照射し、未硬化組成物層を硬化させて、基材フィルムの蒸着面に樹脂硬化層を有するガスバリア性フィルムを得た。このガスバリア性フィルムの樹脂硬化層上に、ウレタン接着剤(東洋モートン(株)製「TOMOFLEX AD−502」)をバーコーターNo.12を使用して塗布し、80℃で10秒乾燥させて接着剤層を形成した。ウレタン接着剤は、主剤のAD−502 15gに、硬化剤のCAT−RT85 1.05gと、溶剤の酢酸エチル16.9gを加え、よく撹拌して調製したものを用いた。この上に、厚み50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製「P1146」)をニップロールにて貼り合わせ、
図2の構成の積層体を得た。
得られた積層体を用いて前記方法で積層体の剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例2
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bの製造)
製造例1で得られた反応生成物(X1)413g、及び光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)10.5gを、メタノール180gと酢酸エチル325gの混合溶剤に溶解させて溶液(a)を調製した。次に、(C)成分であるGMA81.3g(GMA中のグリシジル基に対する、反応生成物(X1)中のアミン活性水素のモル比が3となる量)を用意し、有機系コーティングが施された板状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS−A2EOK5−10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%、アルミナ粒子の平均一次粒子径:20nm)23.5gを加え、よく撹拌して分散させた。ここに、(D)成分である2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製「ライトエステルP−1M」)10.5gを添加して混合し、溶液(b’)を調製した。
溶液(b’)の粘度が上昇し、ゲル状になるまで23℃、60%R.H.環境下で約1日静置した後、溶液(a)と溶液(b’)を混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを調製した。樹脂組成物Bの調製においては、溶液(a)と溶液(b’)を混合した時点を「組成物調製後0hr」とし、調製後0hr及び/又は2hr経過後の樹脂組成物を用いてガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、評価に用いた。
【0090】
(ガスバリア性フィルム及び積層体の作製、評価)
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例3(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cの製造及び評価)
実施例2において、「ライトエステルP−1M」に代えて、(D)成分として、下記一般式(2−2)においてn=1.5である化合物(日本化薬(株)製「KAYAMER PM−21」)10.5gを用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを調製した。
【化7】
また、得られた樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
比較例1(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの製造及び評価)
実施例1において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」に代えて、シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE−403」)10.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを調製した。
また、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
比較例2(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bの製造及び評価)
実施例2において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」に代えて、シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE−403」)10.5gを用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを調製した。
また、得られた樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
比較例3(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cの製造及び評価)
実施例1において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」に代えて、チタネート系カップリング剤である(C
8H
17O)
4Ti・[P(OC
19H
39)
2OH]
2(味の素ファインテクノ(株)製「プレンアクト46B」)10.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを調製した。
また、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
比較例4(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Dの製造及び評価)
実施例2において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」に代えて、チタネート系カップリング剤である(C
8H
17O)
4Ti・[P(OC
19H
39)
2OH]
2(味の素ファインテクノ(株)製「プレンアクト46B」)10.5gを用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Dを調製した。
また、得られた樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
比較例5(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Eの製造及び評価)
実施例1において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Eを調製した。
得られた樹脂組成物を用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PETを用いて、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
実施例4(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Dの製造及び評価)
実施例1において、光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)に代えて、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure184」)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Dを調製した。
得られた樹脂組成物を用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PETを用いて、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
実施例5(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Eの製造及び評価)
実施例2において、光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)に代えて、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure184」)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Eを調製した。
調製後0hr、2hr、及び4hr経過後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Eを用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PETを用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
実施例6(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fの製造及び評価)
製造例1で得られた反応生成物(X1)413g、及び光重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure184」)10.5gをメタノール505gに溶解させて溶液(a)を調製した。次に、(D)成分である2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製「ライトエステルP−1M」)10.5gをメタノール21.1gで希釈した溶液に、シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE−403」)23.5gを添加し、(C)成分であるグリシジルメタクリレート(GMA)81.3g(GMA中のグリシジル基に対する、反応生成物(X1)中のアミン活性水素のモル比が3となる量)を混合して溶解させ、溶液(b)を調製した。この溶液(a)と溶液(b)を混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fを調製した。
調製後0hr、2hr、及び4hr経過後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fを用いて、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
比較例6(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fの製造及び評価)
実施例4において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」を用いなかったこと以外は、実施例4と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fを調製した。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
実施例7(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Gの製造及び評価)
実施例4において、(C)成分であるグリシジルメタクリレート(GMA)81.3gに代えて、2−イソシアネートエチルメタクリレート(IM)88.8g(2−イソシアネートエチルメタクリレート中のイソシアネート基に対する、反応生成物(X1)中のアミン活性水素のモル比が3となる量)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Gを調製した。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
実施例8(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Hの製造及び評価)
実施例5において、(C)成分であるグリシジルメタクリレート(GMA)81.3gに代えて、2−イソシアネートエチルメタクリレート88.8g(イソシアナートエチルメタクリレート中のイソシアネート基に対する、反応生成物(X1)中のアミン活性水素のモル比が3となる量)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Hを調製した。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例5と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
比較例7(比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Gの製造及び評価)
実施例7において、(D)成分である「ライトエステルP−1M」を用いなかったこと以外は、実施例7と同様の方法で比較用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Gを調製した。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例7と同様の方法でガスバリア性フィルム及び積層体を作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
参考例
基材フィルムであるアルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm)、及びシリカ蒸着PET(三菱樹脂(株)製「テックバリアL」、厚み:12μm)単独での酸素透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、無機薄膜層を有する基材フィルム上に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層を有するガスバリア性フィルムはガスバリア性に優れる。また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層を有する積層体は、無機薄膜層への接着性が良好であり、調製後2hr経過した樹脂組成物を用いた場合も接着性の低下が少ない。特に、実施例1と実施例2,3との対比、及び実施例4と実施例5との対比によれば、非球状無機粒子を含有する実施例2,3,5の樹脂組成物においては、調製後2hr経過した樹脂組成物を用いても無機薄膜層への接着性低下の度合いが低く、実施例2においては、調製後2hr経過した樹脂組成物を用いると当該接着性は低下せずに向上する。
【0107】
[ガスバリア性フィルムの着色性評価]
実施例2及び5で得られた調製後0hrの樹脂組成物を用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm)を用いて、前記方法でガスバリア性フィルムを作製し、YI値の測定を行った。
また参考例として、基材フィルムであるアルミナ蒸着PET単独でのYI値を測定した。以上の結果を表2に示す。YI値が小さいほど着色が少なく、特にYI値が2.0以下であれば目視でも着色が認められ難く良好である。
【0108】
実施例9(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Iの製造及び評価)
実施例2において、光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)に代えて、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF製「Irgacure819」)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Iを調製した。
調製後0hr経過した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Iを用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PETを用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記方法でYI値の測定を行った。結果を表2に示す。
【0109】
実施例10(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Jの製造及び評価)
実施例2において、光重合開始剤である1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF製「Irgacure2959」)に代えて、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン(BASF製「Irgacure379EG」)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Jを調製した。
調製後0hrの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Jを用い、基材フィルムとして前記アルミナ蒸着PETを用いて、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記方法でYI値の測定を行った。結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
表2より、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを用いた実施例5の樹脂組成物、及び、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドを用いた実施例9の樹脂組成物によれば、着色がより少ないガスバリア性フィルムの作製が可能である。