特許第6659139号(P6659139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659139
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】鉄鋼プロセスライン用溶接機
(51)【国際特許分類】
   B23D 15/02 20060101AFI20200220BHJP
   B23K 31/10 20060101ALI20200220BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20200220BHJP
   B23D 15/08 20060101ALI20200220BHJP
   B23D 31/00 20060101ALI20200220BHJP
   B23K 11/06 20060101ALI20200220BHJP
   B23K 9/025 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B23D15/02
   B23K31/10
   B23K26/21 F
   B23D15/08 Z
   B23D31/00 A
   B23K11/06 320
   B23K9/025 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-351(P2016-351)
(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公開番号】特開2017-121669(P2017-121669A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591041369
【氏名又は名称】多田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】安達 茂
(72)【発明者】
【氏名】山中 慧
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−322023(JP,A)
【文献】 特開昭59−169709(JP,A)
【文献】 特開2001−030069(JP,A)
【文献】 特開昭53−057580(JP,A)
【文献】 特開平7−164016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/02
B23D 15/08
B23D 31/00
B23K 9/025
B23K 11/06
B23K 26/21
B23K 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行金属板と後行金属板を溶接する加工ヘッドと、
上側クランパーと下側クランパーを有し、前記先行金属板を保持する出側クランプ装置と、
上側クランパーと下側クランパーを有し、前記後行金属板を保持する入側クランプ装置と、
前記先行金属板と前記後行金属板の溶接が進行する方向に延在し、前記出側クランプ装置と前記入側クランプ装置が取り付けられているベースと、
一対の下向きシャー刃を有する上部シャーホルダと、
一対の上向きシャー刃を有する下部シャーホルダと、
前記下部シャーホルダの一端側に配設された第1の下部シャーホルダ上下機構と、
前記下部シャーホルダの他端側に配設された第2の下部シャーホルダ上下機構と、
第1の上向き傾斜面を有し、前記ベースの長手方向に延在している第1の傾斜ブロックと、
第2の上向き傾斜面を有し、前記ベースの長手方向に延在している第2の傾斜ブロックと、
前記第1の傾斜ブロックと前記第2の傾斜ブロックに取り付けられているアクチュエータと、を備え、
前記第1の傾斜ブロックと前記第2の傾斜ブロックは、前記アクチュエータによって、前記ベースの長手方向と垂直な向きに、離反または近接し、
前記下部シャーホルダが前記第1の下部シャーホルダ上下機構と前記第2の下部シャーホルダ上下機構によって上昇すると、
前記第1の傾斜ブロックと前記第2の傾斜ブロックは、前記アクチュエータによって移動し、前記下部シャーホルダの下部に挿入されることを特徴とする鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項2】
前記先行金属板と前記後行金属板は、突き合わせられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項3】
前記先行金属板と前記後行金属板は、重ね合わせられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項4】
前記加工ヘッドは、レーザ発振器と接続されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項5】
前記加工ヘッドは、アーク溶接機トーチを備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項6】
前記加工ヘッドは、抵抗溶接電極を備えていることを特徴とする請求項3に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項7】
一端が解放され、前記加工ヘッドを保持し、前記ベースの上を走行するキャリッジフレームを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項8】
溶接された先行金属板と後行金属板を加圧するスエージングロールを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【請求項9】
前記下部シャーホルダは、前記ベースの長手方向に延在している第1の下向き傾斜面および第2の下向き傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼プロセスライン用溶接機に関わり、特に、先行金属板と後行金属板との溶接に備えて、先行金属板の尾端と後行金属板の先端を切断する切断機を備えた鉄鋼プロセスライン用溶接機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プロセスライン用溶接機では、先行金属板の尾端と後行金属板の先端を、レーザビームなどを供給する加工ヘッドを用いて溶接し、先行金属板と後行金属板を一体化する。先行金属板の尾端と後行金属板の先端は、溶接を行う前に、上向きシャー刃と下向きシャー刃を備えた切断装置で切断される。上向きシャー刃および下向きシャー刃は、切断装置の下部シャーホルダおよび上部シャーホルダでそれぞれ支えられている。鉄鋼プロセスライン用溶接機は、下部シャーホルダの支えとして、リンク機構を使用している(例えば特許文献1〜4を参照)。
【0003】
鉄鋼プロセスライン用溶接機のリンク機構は、切断機が先行金属板の尾端と後行金属板の先端とを上向きシャー刃と下向きシャー刃で切断する際、切断力に対する下部シャーホルダの支えとして機能する。リンク機構を使用している切断機では、先行金属板の尾端と後行金属板の先端とを切断する時に、リンク機構の軸部の隙間やリンク機構の機械的なたわみによって下部シャーホルダが大きく変位する。下部シャーホルダに取り付けられている上向きシャー刃には揺動が生じるため、切断精度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−322023号公報
【特許文献2】特開2001−30069号公報
【特許文献3】特開昭59−166409号公報
【特許文献4】特開昭62−27347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク機構の代わりに、下部シャーホルダを上昇させた後、下部シャーホルダの下部に四角のブロックを挿入して下刃を固定する方法が考えられている。この方法では、先行金属板の尾端と後行金属板の先端とを切断後、挿入されたブロックを引き抜く。下部シャーホルダと上記ブロックとの間には隙間を作る必要があるため、下部シャーホルダを隙間分、上昇させる。この時、金属板(ストリップ)が変形し、先行金属板または後行金属板が折れることが生じる。
【0006】
さらに、リンク機構の代わりに、下部シャーホルダの下部に、傾斜を持った傾斜ブロックを水平方向に動作させる方法も考えられている。ここでは、シリンダを用いて、下部シャーホルダを上昇および下降させている。この方法では、傾斜ブロックが水平方向に移動する場合、下部シャーホルダの上下ストロークを、大きく取ることは困難である。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものである。先行金属板と後行金属板との溶接に備えて、先行金属板の尾端と後行金属板の先端を切断する切断機を備えた鉄鋼プロセスライン用溶接機において、切断中に下部シャーホルダの高さを一定に保つことを課題にしている。このことにより、鉄鋼プロセスライン用溶接機の切断機における切断精度の向上を目指している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機は、先行金属板と後行金属板を溶接する加工ヘッドと、上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、前記先行金属板と前記後行金属板の溶接が進行する方向に延在し、出側クランプ装置と入側クランプ装置が取り付けられているベースと、一対の下向きシャー刃を有する上部シャーホルダと、一対の上向きシャー刃を有する下部シャーホルダと、下部シャーホルダの一端側に配設された第1の下部シャーホルダ上下機構と、下部シャーホルダの他端側に配設された第2の下部シャーホルダ上下機構と、第1の上向き傾斜面を有し、ベースの長手方向に延在している第1の傾斜ブロックと、第2の上向き傾斜面を有し、ベースの長手方向に延在している第2の傾斜ブロックと、第1の傾斜ブロックと第2の傾斜ブロックに取り付けられているアクチュエータと、を備え、前記第1の傾斜ブロックと前記第2の傾斜ブロックは、前記アクチュエータによって、前記ベースの長手方向と垂直な向きに、離反または近接し、下部シャーホルダが第1の下部シャーホルダ上下機構と第2の下部シャーホルダ上下機構によって上昇すると、第1の傾斜ブロックと第2の傾斜ブロックは、アクチュエータによって移動し、下部シャーホルダの下部に挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機では、下部シャーホルダが下降しないように、下から支える、傾斜を持った傾斜ブロックを下部シャーホルダの下部に挿入することにより、切断中に下部シャーホルダが下降せず、高さが固定される。このため、切断精度を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明を実施するための実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の概略外観を示す図である。
図2】実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン溶接機用の下部切断装置の構成図である。
図3】実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の構成図である。
図4】実施の形態1に係る下部シャーホルダを上下させる下部シャーホルダ上下機構の詳細図である。
図5】実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の下部シャーホルダ上昇時の動作説明図である。
図6】実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の傾斜ブロック挿入時の動作説明図である。
図7】この発明を実施するための実施の形態2に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の概略外観を示す図である。
図8】先行金属板と後行金属板を突き合わせた状態(図8A)と先行金属板と後行金属板を重ね合わせた状態(図8B)を示している図である。
図9】実施の形態3に係る下部シャーホルダを上下させる下部シャーホルダ上下機構の詳細図である。
図10】実施の形態3に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の下部シャーホルダ上昇時の動作説明図である。
図11】実施の形態3に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の傾斜ブロック挿入時の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機について、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズや縮尺はそれぞれ独立している。例えば構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズや縮尺が異なっている場合もある。また、鉄鋼プロセスライン用溶接機の構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機100の概略外観を示す図である。鉄鋼プロセスラインでは、コイル状の金属板(ストリップ)が、同図に示す金属板進行方向に、走行装置(図示せず)に駆動されて連続的に走行している。実施の形態1に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機100は、先行金属板(先行ストリップ)21の後端部(尾端部)と後行金属板(後行ストリップ)22の先端部との突き合わせ部をレーザビーム溶接によって接合する。接合された金属板は、次工程で、圧延処理、熱処理、鍍金処理等が連続して施される。
【0013】
鉄鋼プロセスライン用溶接機100のベース54には、キャリッジフレーム56、出側クランプ装置23、入側クランプ装置24などが配置されている。キャリッジフレーム56は、片持ち支持構造を有し、一端が解放されている。先行金属板21は出側クランプ装置23によって保持されている。後行金属板22は入側クランプ装置24によって保持されている。入側クランプ装置24は出側クランプ装置23に向かって移動することができる。加工ヘッド52とスエージングロール53と切断装置55は、C形形状を有するキャリッジフレーム56に取り付けられている。
【0014】
レーザ発振器50は、個体レーザの一種である、ファイバーレーザやデイスクレーザなどのレーザ光を発振する。スエージングロール53は、下部スエージングロールと上部スエージングロールから構成され、キャリッジフレーム56の解放端側に取り付けられている。レーザ発振器50は、ファイバーケーブル51を通してレーザビームを加工ヘッド52に供給している。ベース54にはレール溝54aが形成されている。キャリッジフレーム56は、このレール溝54aに沿って水平に、溶接方向および反溶接方向に移動する。切断装置55は、下部シャーホルダ1、上部シャーホルダ2を備えている。ベース54の長手方向に、突き合わされた金属板の溶接が進行する。切断装置55は、同時に、先行金属板21の後端部と後行金属板22の先端部を切断する。
【0015】
図2は、この発明の実施の形態に係る切断装置55を示す全体構成図である。切断装置55は、下部シャーホルダ1、上部シャーホルダ2、リンク機構40、油圧シリンダ41などを備えている。リンク機構40は、支点40aと支点40bが、固定されている。油圧シリンダ41は、キャリッジフレーム56に取り付けられており、切断時に上部シャーホルダ2を押圧する。下部シャーホルダ1(下刃ホルダ)と上部シャーホルダ2(上刃ホルダ)には、それぞれシャー刃が取り付けられている。下部シャーホルダ1の両端(一端側および他端側)には下部シャーホルダ上下機構70(第1の下部シャーホルダ上下機構および第2の下部シャーホルダ上下機構)が取り付けられている。2つの下部シャーホルダ上下機構70は、協同して下部シャーホルダ1を上下方向に動作できるようになっている。各々の下部シャーホルダ上下機構70には、下部シャーホルダ上下用シリンダ4などが設置されている。
【0016】
下部シャーホルダ1の下部には、ベース54の長手方向に延在する、傾斜ブロック5(第1の傾斜ブロック)および傾斜ブロック6(第2の傾斜ブロック)が取り付けられている。アクチュエータ60は、プーリ10、チェーン11(あるいはタイミングベルト)、傾斜ブロック駆動モータ12などから構成され、傾斜ブロック5と傾斜ブロック6を離反移動または近接移動する。チェーン11は3か所のプーリ10に巻き回されている。そのうちの一つのプーリ10が、傾斜ブロック駆動モータ12の軸に取り付けられている。下部シャーホルダ1には、アクチュエータ60との衝突を避けるために、貫通孔1cが2か所に形成されている。
【0017】
図3は、下部シャーホルダ1を上下させる下部シャーホルダ上下機構70(第1の下部シャーホルダ上下機構および第2の下部シャーホルダ上下機構)の詳細図である。下部シャーホルダ上下用シリンダ4のロッド4aは、先端にブロック13が取り付けられている。ホルダ15は、ブロック13およびバネ14を収容している。ホルダ15は、下部シャーホルダ1に、直接、固定されている。下部シャーホルダ上下用シリンダ4は、下端がキャリッジフレーム56に固定されている。ロッド4aが下部シャーホルダ上下用シリンダ4から伸びると、下部シャーホルダ1が上昇する。
【0018】
図4は、本実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機の切断装置の構成図である。出側クランプ装置23は、上側クランパー23aと下側クランパー23bを備えている。入側クランプ装置24は、上側クランパー24aと下側クランパー24bを備えている。先行金属板21は、出側クランプ装置23(上側クランパー23aおよび下側クランパー23b)によって保持されている。後行金属板22は、入側クランプ装置24(上側クランパー24aおよび下側クランパー24b)によって保持されている。上部シャーホルダ2には、切り刃が下向きに配置されている、下向きシャー刃3cおよび下向きシャー刃3dが設けられている。下部シャーホルダ1には、切り刃が上向きに配置されている、上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3bが設けられている。先行金属板21の尾端と後行金属板22の先端は、切断装置の上刃(下向きシャー刃3cおよび下向きシャー刃3d)と下刃(上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3b)で同時に切断されたあと、突き合わせ溶接される。
【0019】
アクチュエータ60は、ボールネジ7、ボールネジ8、カップリング9、プーリ10、チェーン11、傾斜ブロック駆動モータ12などから構成されている。プーリ10は、ボールネジ8の軸および傾斜ブロック駆動モータ12の軸に取り付けられている。チェーン11(あるいはタイミングベルト)は、プーリ10を連結している。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、上部に、下部シャーホルダ1に向かって傾斜している、上向き傾斜面5aおよび上向き傾斜面6aが形成されている。傾斜ブロック5にはボールネジ7のナット7aが取り付けられている。傾斜ブロック6には、ボールネジ8のナット8aが取り付けられている。ボールネジ7およびボールネジ8は、左右向きの異なったネジからなり、カップリング9にて連結されている。下部シャーホルダ1は、下端に、下向き傾斜面1a(第1の下向き傾斜面)と下向き傾斜面1b(第2の下向き傾斜面)が形成されている。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、平行状態を保ったまま、アクチュエータ60によって、ベースの長手方向と垂直な向きに、離反または近接する。
【0020】
本実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機は、所定の間隔を開けて互いに対向にて配置され、先行ストリップの尾端を固定する出側クランプ装置と後行ストリップの先端を固定する入側クランプ装置と、上記出側クランプ装置と上記入側クランプ装置との間に、先行ストリップと後行ストリップの移動方向と直角方向に移動可能に配置され、上記先行ストリップの尾端と後行ストリップの先端とを同時に上刃と下刃で切断する切断装置と、先行ストリップの尾端と後行ストリップの先端とを突き合わせて、上記突き合わせ部を溶接する。この装置において、上記切断装置に下刃を支える下部シャーホルダと上記下部シャーホルダを上下させるアクチュエータと上記先行ストリップの尾端と後行ストリップの先端とを切断する時の切断力により上記下部シャーホルダが下降しないように支える傾斜を持った傾斜ブロックと上記傾斜ブロックを上記下部シャーホルダの下部に挿入するためのアクチュエータと上記傾斜ブロックを挿入する時、上記下部シャーホルダが上昇するストロークを吸収する手段を設けたことを特徴とする。
【0021】
次に、図5および図6に基づいて、鉄鋼プロセスライン用溶接機の切断装置の動作について説明する。図5は、鉄鋼プロセスライン用溶接機における下部シャーホルダの上昇時の動作説明図である。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、キャリッジフレーム56の上に配置されている。まず、下部シャーホルダ上下用シリンダ4にて下部シャーホルダ1を上昇させる。この際、上向きシャー刃3aと先行金属板21の間、および上向きシャー刃3bと後行金属板22の間には、傾斜ブロックの挿入時に下部シャーホルダ1が持ち上げられる量の隙間を設けている。傾斜ブロック駆動モータ12を回転させ、プーリ10およびチェーン11により、ボールネジ7およびボールネジ8を回転させると、傾斜ブロック5および傾斜ブロック6が同時に下部シャーホルダ1の下部に向かって移動する。
【0022】
図6は、鉄鋼プロセスライン用溶接機における傾斜ブロックの挿入時の動作説明図である。下部シャーホルダ1が傾斜ブロック5および傾斜ブロック6により上部へ持ち上げられた結果、先行金属板21および後行金属板22は上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3bで支えられている。一方、下部シャーホルダ上下用シリンダ4はストロークの上昇端にいるため、下部シャーホルダ1およびホルダ15は傾斜分持ち上げられている。バネ14が縮み、ブロック13と下部シャーホルダ1の間には隙間が生じる。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、2個のボールネジを使用することにより、平行に動作するため、下向き傾斜面1aおよび下向き傾斜面1bは、それぞれ、傾斜ブロック5の上向き傾斜面5aおよび傾斜ブロック6の上向き傾斜面6aと確実に当てることができる。
【0023】
従って、本発明に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機は、先行金属板と後行金属板を溶接する加工ヘッドと、上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、出側クランプ装置と入側クランプ装置が取り付けられているベースと、一対の下向きシャー刃を有する上部シャーホルダと、一対の上向きシャー刃を有する下部シャーホルダと、下部シャーホルダの一端側に配設された第1の下部シャーホルダ上下機構と、下部シャーホルダの他端側に配設された第2の下部シャーホルダ上下機構と、第1の上向き傾斜面を有し、ベースの長手方向に延在している第1の傾斜ブロックと、第2の上向き傾斜面を有し、ベースの長手方向に延在している第2の傾斜ブロックと、第1の傾斜ブロックと第2の傾斜ブロックに取り付けられているアクチュエータと、を備え、下部シャーホルダが第1の下部シャーホルダ上下機構と第2の下部シャーホルダ上下機構によって上昇すると、第1の傾斜ブロックと第2の傾斜ブロックは、アクチュエータによって移動し、下部シャーホルダの下部に挿入されるものである。
【0024】
この発明に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機では、下部シャーホルダが下降しないように、下から支える、傾斜を持った傾斜ブロックを下部シャーホルダの下部に挿入することにより、切断中に下部シャーホルダが下降せず、高さが固定される。このため、切断精度を向上することができるという効果がある。また、上記傾斜を持った傾斜ブロックの挿入の動作をボールネジなどのネジを使用し、平行に動作できるようにすることにより、スペースを削減できるという効果がある。
【0025】
このように、この発明の鉄鋼プロセスライン用溶接機においては、下部シャーホルダを上下させるアクチュエータと切断時に切断力により上記下部シャーホルダが下降しないように支える傾斜を持った傾斜ブロックと上記傾斜ブロックを上記下部シャーホルダの下部に挿入するためのアクチュエータと上記傾斜ブロック挿入時、上記下部シャーホルダが上昇するストロークを吸収する手段を設けたため、切断中に下部シャーホルダが下降せず固定され、切断精度を向上することができるという効果を奏する。
【0026】
本実施の形態は加工ヘッドの溶接方式について特に限定するものではない。両ストリップの対向した両端部を突き合わせて、その突合せ部にレーザ光を集光させる加工ヘッドの他に、アーク溶接機トーチを備えている加工ヘッドを適用することができる。アークを発生させる鉄鋼プロセスライン用溶接機は、先行金属板と後行金属板の突き合わせ部に沿って上記加工ヘッドを走行させ、この突き合わせ部をアーク溶接する。
【0027】
実施の形態2.
図7は、この発明を実施するための実施の形態2に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機100の概略外観を示す図である。鉄鋼プロセスラインでは、コイル状の金属板(ストリップ)が、同図に示す金属板進行方向に、走行装置(図示せず)に駆動されて連続的に走行している。本実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機100は、先行金属板(先行金属板)21の後端部(尾端部)と後行金属板(後行金属板)22の先端部との重ね合わせ部を抵抗加熱によってマッシュシーム接合する。図8は、先行金属板と後行金属板を突き合わせた状態(図8A)と先行金属板と後行金属板を重ね合わせた状態(図8B)を示している。接合された金属板は、次工程で、圧延処理、熱処理、鍍金処理等が連続して施される。
【0028】
本実施の形態に係る加工ヘッド52は、電源57と接続されているアーク溶接機トーチまたは抵抗溶接電極を備えており、重ね合わせ部に電流を流すことができる。鉄鋼プロセスライン用溶接機100のキャリッジフレーム56は、先行金属板と後行金属板の重ね合わせ部に沿って加工ヘッド52を走行させ、加工ヘッド52が備えている抵抗溶接電極によって、この重ね合わせ部をマッシュシーム溶接する。マッシュシーム溶接は、溶接継手部に大電流を流し、ここに発生する抵抗熱によって溶接継手部を加熱し、圧力を加えて行う抵抗溶接のことである。シーム溶接は、ローラ電極を用いて加圧及び通電を行い、電極を回転しながら継手に沿って溶接を連続的に行う抵抗溶接の一種である。鉄鋼プロセスライン用溶接機100の加工ヘッド52は、アーク溶接機トーチを用いて、重ね合わせた状態の先行金属板と後行金属板をアーク溶接してもよい。
【0029】
上記傾斜を持った傾斜ブロック5,6の挿入の動作を、2個の傾斜ブロックの内側にリンク機構を設け、シリンダにて動作させることもできる。下部シャーホルダ下降時の傾斜ブロック待機位置を下部シャーホルダ内とし、スペースを小さくする場合には傾斜ブロックの間隔が狭く、リンクが設置できず、ボールネジなどのネジを使用し、平行に動作できるようにすることにより、スペースを削減できるという効果がある。
【0030】
上記説明では、傾斜ブロック5、6の動作として、傾斜ブロック駆動モータとボールネジを組み合わせたアクチュエータを例に説明したが、特にアクチュエータを限定するものではなく、下部シャーホルダ上下用シリンダとリンク機構などを組み合わせた場合においても同様な効果がある。
【0031】
本実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機は、所定の間隔を開けて互いに対向にて配置され、先行ストリップの尾端を固定する出側クランプ装置と後行ストリップの先端を固定する入側クランプ装置と、上記出側クランプ装置と上記入側クランプ装置との間に、先行ストリップと後行ストリップの移動方向と直角方向に移動可能に配置され、上記先行ストリップの尾端と後行ストリップの先端とを同時に上刃と下刃で切断する切断装置と、先行ストリップの尾端と後行ストリップの先端とを重ね合わせて、その重ね合わせ部に加圧、電流を流す電極を備え、上記重ね合わせ部に沿って電極を走行させ上記重ね合わせ部を溶接する。この装置において上記切断装置に下刃を支える下部シャーホルダと上記下部シャーホルダを上下させるアクチュエータと切断時に切断力により上記下部シャーホルダが下降しないように支える傾斜を持った傾斜ブロックと上記傾斜ブロックを上記下部シャーホルダの下部に挿入するためのアクチュエータと上記傾斜ブロック挿入時、上記下部シャーホルダが上昇するストロークを吸収する手段を設けたことを特徴とする。
【0032】
実施の形態3.
下部シャーホルダ1は、断面がH形状を有する。実施の形態1では、傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、下部シャーホルダ1よりも、外側に配置された状態で、待機しているが、実施の形態3に係る切断装置では、傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、下部シャーホルダ1の内側に配置されている。鉄鋼プロセスラインでは、コイル状の金属板(ストリップ)が、金属板進行方向に、走行装置(図示せず)に駆動されて連続的に走行している。接合された金属板は、次工程で、圧延処理、熱処理、鍍金処理等が連続して施される。
【0033】
図9は、本実施の形態に係る切断装置の構成図である。出側クランプ装置23は、上側クランパー23aと下側クランパー23bを備えている。入側クランプ装置24は、上側クランパー24aと下側クランパー24bを備えている。先行金属板21は、出側クランプ装置23(上側クランパー23aおよび下側クランパー23b)によって保持されている。後行金属板22は、入側クランプ装置24(上側クランパー24aおよび下側クランパー24b)によって保持されている。上部シャーホルダ2には、切り刃が下向きに配置されている、下向きシャー刃3cおよび下向きシャー刃3dが設けられている。下部シャーホルダ1には、切り刃が上向きに配置されている、上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3bが設けられている。先行金属板21の尾端と後行金属板22の先端は、切断装置の上刃(下向きシャー刃3cおよび下向きシャー刃3d)と下刃(上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3b)で同時に切断されたあと、突き合わせ溶接または重ね合わせ溶接される。
【0034】
アクチュエータ60は、ボールネジ7、ボールネジ8、カップリング9、プーリ10、チェーン11、傾斜ブロック駆動モータ12などから構成されている。プーリ10は、ボールネジ8の軸および傾斜ブロック駆動モータ12の軸に取り付けられている。チェーン11(あるいはタイミングベルト)は、プーリ10を連結している。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、上部に、下部シャーホルダ1に向かって傾斜している、上向き傾斜面5aおよび上向き傾斜面6aが形成されている。傾斜ブロック5にはボールネジ7のナット7aが取り付けられている。傾斜ブロック6には、ボールネジ8のナット8aが取り付けられている。ボールネジ7およびボールネジ8は、左右向きの異なったネジからなり、カップリング9にて連結されている。下部シャーホルダ1は、下端に、下向き傾斜面1a(第1の下向き傾斜面)と下向き傾斜面1b(第2の下向き傾斜面)が形成されている。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、平行状態を保ったまま、アクチュエータ60によって、ベースの長手方向と垂直な向きに、離反または近接する。下向き傾斜面1a(第1の下向き傾斜面)と下向き傾斜面1b(第2の下向き傾斜面)は、切断装置の中心に向かうほど高くなっている。同様に、上向き傾斜面5aおよび上向き傾斜面6aは、切断装置の中心に向かうほど高くなっている。
【0035】
次に、図10および図11に基づいて、鉄鋼プロセスライン用溶接機の切断装置の動作について説明する。図10は、鉄鋼プロセスライン用溶接機における下部シャーホルダの上昇時の動作説明図である。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、キャリッジフレーム56の上に配置されている。まず、下部シャーホルダ上下用シリンダ4にて下部シャーホルダ1を上昇させる。この際、上向きシャー刃3aと先行金属板21の間、および上向きシャー刃3bと後行金属板22の間には、傾斜ブロックの挿入時に下部シャーホルダ1が持ち上げられる量の隙間を設けている。傾斜ブロック駆動モータ12を回転させ、プーリ10およびチェーン11により、ボールネジ7およびボールネジ8を回転させると、傾斜ブロック5および傾斜ブロック6が同時に下部シャーホルダ1の下部に向かって移動する。
【0036】
図11は、鉄鋼プロセスライン用溶接機における傾斜ブロックの挿入時の動作説明図である。下部シャーホルダ1が傾斜ブロック5および傾斜ブロック6により上部へ持ち上げられた結果、先行金属板21および後行金属板22は上向きシャー刃3aおよび上向きシャー刃3bで支えられている。一方、下部シャーホルダ上下用シリンダ4はストロークの上昇端にいるため、下部シャーホルダ1およびホルダ15は傾斜分持ち上げられている。バネ14が縮み、ブロック13と下部シャーホルダ1の間には隙間が生じる。傾斜ブロック5および傾斜ブロック6は、2個のボールネジを使用することにより、平行に動作するため、下向き傾斜面1aおよび下向き傾斜面1bは、それぞれ、傾斜ブロック5の上向き傾斜面5aおよび傾斜ブロック6の上向き傾斜面6aと確実に当てることができる。
【0037】
この発明に係る鉄鋼プロセスライン用溶接機では、下部シャーホルダが下降しないように、下から支える、傾斜を持った傾斜ブロックを下部シャーホルダの下部に挿入することにより、切断中に下部シャーホルダが下降せず、高さが固定される。このため、切断精度を向上することができるという効果がある。また、上記傾斜を持った傾斜ブロックの挿入の動作をボールネジなどのネジを使用し、平行に動作できるようにすることにより、スペースを削減できるという効果がある。
【0038】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 下部シャーホルダ、1a 下向き傾斜面、1b 下向き傾斜面、1c 貫通孔、2 上部シャーホルダ、3a 上向きシャー刃、3b 上向きシャー刃、3c 下向きシャー刃、3d 下向きシャー刃、4 下部シャーホルダ上下用シリンダ、4a ロッド、5 傾斜ブロック、5a 上向き傾斜面、6 傾斜ブロック、6a 上向き傾斜面、7 ボールネジ、7a ナット、8 ボールネジ、8a ナット、9 カップリング、10 プーリ、11 チェーン、12 傾斜ブロック駆動モータ、13 ブロック、14 バネ、15 ホルダ、21 先行金属板、22 後行金属板、23 出側クランプ装置、23a 上側クランパー、23b 下側クランパー、24 入側クランプ装置、24a 上側クランパー、24b 下側クランパー、40 リンク機構、40a 支点、40b 支点、41 油圧シリンダ、50 レーザ発振器、51 ファイバーケーブル、52 加工ヘッド、53 エージングロール、54 ベース、54a レール溝、55 切断装置、56 キャリッジフレーム、60 アクチュエータ、70 下部シャーホルダ上下機構、100 鉄鋼プロセスライン用溶接機



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11