(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記電源制御部は、上記入力電圧の検出値と比較閾値とを比較し、上記入力電圧の検出値が上記比較閾値以上の時は、上記比較閾値より小さい時に比べて、上記スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるように上記スイッチング素子のオンタイミングを決定する請求項1に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号を出力する零電流信号生成部および上記スイッチング素子に加わる電圧が零になるタイミングを示す零電圧信号を出力する零電圧信号生成部のうちいずれか一方と、上記零電流信号および上記零電圧信号のうちいずれか一方の回数をカウントし、カウント数が所定回数に達したタイミングを上記スイッチング素子のオンタイミングとして決定するオンタイミング生成部と、上記オンタイミング生成部で決定した上記オンタイミングで上記スイッチング素子をターンオンするスイッチング駆動部を備え、
上記入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、上記入力電圧の検出値が上記直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、上記所定回数を大きくする制御を行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号を出力する零電流信号生成部、上記スイッチング素子に加わる電圧が零になるタイミングを示す零電圧信号を出力する零電圧信号生成部、および上記スイッチング素子がオンまたはオフするタイミングを検出するスイッチング検出部のうちいずれか一つと、上記零電流信号、上記零電圧信号、および上記スイッチング素子のオンまたはオフするタイミングのうちいずれか一つから所定時間経過したタイミングを上記スイッチング素子のオンタイミングとして決定するオンタイミング生成部と、上記オンタイミング生成部で決定した上記オンタイミングで上記スイッチング素子をターンオンするスイッチング駆動部を備え、
上記入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、上記入力電圧の検出値が上記直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、上記所定時間を長くする遅延制御を行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記負荷への供給電力が低い場合は、上記負荷への供給電力が高い場合に比べて、上記スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるように上記スイッチング素子のオンタイミングを決定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記負荷への供給電力が大きい場合、上記入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、上記入力電圧の検出値が上記直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、上記スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるように上記スイッチング素子のオンタイミングを決定して、上記スイッチング素子をスイッチング制御し、
上記負荷への供給電力が小さい場合、上記スイッチング素子を一定のスイッチング周期でスイッチング制御する制御法、および、上記入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分によらずに、上記リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号の回数をカウントし、カウント数が定められた回数に達したタイミングを上記スイッチング素子のオンタイミングとして決定して、上記スイッチング素子をスイッチング制御する制御法のうち少なくとも一つの制御を行う請求項1に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記電源主回路部の出力電圧検出値と目標電圧値に基づいて上記スイッチング素子のオン時間を決定する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記電源制御部は、上記電源主回路部の出力電流検出値と目標電流値に基づいて上記スイッチング素子のオン時間を決定する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記電源主回路部は、上記負荷として、LED、有機エレクトロルミネッセンスおよびレーザーダイオードのうちいずれか一つが接続されている請求項11に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電力変換装置1を示す回路ブロック図である。本実施の形態1の電力変換装置1は、電源主回路部2と、電源制御部3とを備えている。電源主回路部2は、スイッチング素子11、ダイオード13、リアクトル12を有するコンバータ6と、コンバータ6の出力電圧を平滑化するコンデンサCoを備えている。電源主回路部2は、コンバータ6の入力側に入力電源4が、コンデンサCoの出力側に負荷5がそれぞれ接続される。
【0011】
入力電源4は、交流電圧成分および直流電圧成分を含む電圧Vin(以降、入力電圧Vin若しくは脈動電圧Vinと称す)を出力する装置である。入力電源4は脈動電圧Vinを出力するものであればよく、
図2に示すように、交流電源41が出力する交流電圧Vacをダイオードブリッジ回路42により全波整流し、その後、PFC(Power Factor Correction)回路43により電力変換を行うという構成としてもよい。なお、
図2において、C1、C2はコンデンサを示す。
また、入力電源4として、PFC回路43を用いずに交流電圧Vacをダイオードブリッジ回路42で全波整流した電圧を出力する構成としてもよい。
さらに、入力電源4として、ダイオードブリッジ回路42を用いずに交流電圧Vacを直接直流電圧に変換する交流/直流コンバータ(図示せず)を用いる構成としてもよい。
なお、実施の形態1では、
図1に示すように、脈動電圧Vinを発生させる入力電源4を、交流電源4Aと直流電源4Bが直列接続された回路図として示す。
【0012】
コンバータ6は、入力電圧(脈動電圧)Vinを入力し、目標とする出力電圧Voに直流/直流電力変換する電力変換器であり、例えばスイッチング素子11、リアクトル12、ダイオード13を備える降圧チョッパ回路から構成される。なお、コンバータ6はスイッチング素子とリアクトルを有し、直流/直流電力変換を行う回路であればよく、例えば、昇圧チョッパ回路、昇降圧チョッパ回路、Hブリッジ型昇降圧回路、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)コンバータ、フライバックコンバータ、またはCukコンバータであってもよい。また、スイッチング素子11は、後述する電源制御部3で生成したスイッチング素子駆動信号Ga(以下、ゲート信号Gaと称す)により駆動されるFET(Field Effect Trnsistor)素子、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子などである。また、ダイオード13を、FET素子またはIGBT素子などのスイッチング素子Q1(図示せず)に変更し、スイッチング素子11およびスイッチング素子Q1のオンオフを逆論理で動作させる同期整流方式としてもよい。
【0013】
電源主回路部2は、入力電圧検出部7、出力電圧検出部8、零電流検出部9を備える。入力電圧検出部7は、入力電圧(脈動電圧)Vinの大きさを入力電圧検出値Vinsenとして検出するものであり、例えば
図1に示すように、2つ以上の直列に接続された分圧抵抗を備える。出力電圧検出部8は、直流化された出力電圧voの大きさを出力電圧検出値Vosenとして検出するものであり、例えば
図1に示すように、2つ以上の直列に接続された分圧抵抗を備える。零電流検出部9は、リアクトル12に流れる電流の零点を検出するためのものであり、例えば
図1に示すように、リアクトル12に対して逆極性の補助巻線が設けられている。零電流検出部9の補助巻線から得られる電圧VLsenは後述する電源制御部3の零電流信号生成部31に出力され、零電流信号生成部31はリアクトル12の電流の零点を検出して零電流信号ZCDを出力する。
【0014】
なお、零電流検出部9は、リアクトル12に流れる電流の零点を検出できる構成であれば、補助巻線を用いる方法でなくてもよく、例えば、リアクトル12のローサイドに電流検出抵抗を設置し、電流検出抵抗の両端に発生する電圧からリアクトル12の電流の零点を検出する方法でもよい。
【0015】
次に、電源制御部3について説明する。電源制御部3は、零電流信号生成部31と、オン時間生成部32と、オンタイミング生成部33と、スイッチング駆動部34を備える。零電流信号生成部31は、前述のように、零電流検出部9から得られる電圧VLsenに基づいて、リアクトル12に流れる電流が零になるタイミングを表す零電流信号ZCDを出力する。オン時間生成部32は、出力電圧検出値Vosenおよび目標電圧値Vorefに基づいて、ゲート信号GaをHigh(以下、“H”と記す)に維持する時間、すなわちスイッチング素子11のオン時間を導出する。オンタイミング生成部33は、零電流信号ZCD、入力電圧検出値Vinsenおよび出力電圧検出値Vosenに基づいてカウント可変ZCS制御を行い、ゲート信号Gaを“H”とするタイミング、すなわちスイッチング素子11のオンタイミングを決定する。カウント可変ZCS制御は、入力電圧(脈動電圧)Vinに重畳している交流電圧成分に基づいてゲート信号Gaを“H”とするタイミングを決定する制御である。カウント可変ZCS制御については後に詳述する。スイッチング駆動部34は、オン時間生成部32からのオン時間と、オンタイミング生成部33からのオンタイミングを入力し、スイッチング素子11を動作させるゲート信号Gaを生成する。
【0016】
次に、
図3を用いて電源主回路部2の回路動作、特にZCS制御の回路動作を説明する。
図3は、スイッチング駆動部34が出力するゲート信号Ga、リアクトル12に流れるリアクトル電流iL、零電流信号生成部31が出力する零電流信号ZCDの関係を横軸を時間として表している。
ゲート信号Gaが“H”となり、スイッチング素子11がオンすると、
図1において、入力電源4、スイッチング素子11、リアクトル12、負荷5、入力電源4の順に電流が流れ、リアクトル電流iLは増加する。リアクトル電流iLが増加する期間は零電流信号ZCDが“H”となる。
【0017】
ゲート信号GaがLow(以下、“L”と記す)となり、スイッチング素子11がオフとなると、リアクトル12、負荷5、ダイオード13、リアクトル12の順に電流が流れ、リアクトル電流iLは零まで減少する。リアクトル電流iLが零まで減少する期間は零電流信号ZCDが“L”となる。
【0018】
ここで、上記リアクトル電流iLが増加する期間と上記リアクトル電流iLが零まで減少する期間は、負荷5に供給する電力が小さくなるほど短くなる。
【0019】
リアクトル電流iLが零まで立ち下がると、リアクトル12のインダクタンス成分とスイッチング素子11の寄生容量とによりLC共振が発生し、このLC共振による共振電流がリアクトル電流iLに流れる。リアクトルに共振電流が流れる期間において、リアクトル電流iLが零となりかつ立ち上がるタイミングで零電流信号ZCDは“H”となる。零電流信号ZCDが“H”となるタイミングでゲート信号を“H”とすることで、スイッチング素子11のスイッチングで発生するスイッチング損失を低減することができる。
【0020】
次に、カウント可変ZCS制御の概要を説明する。カウント可変ZCS制御では、リアクトル12に共振電流が流れる期間において零電流信号ZCDの“H”への立上りをカウントし、カウント数が所定の回数に達したタイミングでゲート信号Gaを“H”とする。このとき、脈動電圧Vinに重畳した交流電圧成分に基づいてゲート信号Gaを“H”とするまでのカウント数を可変させる。具体的には、脈動電圧Vinの電圧値が重畳する交流電圧成分により大きくなる時はゲート信号Gaを“H”とするまでのカウント数を増加させる。また、脈動電圧Vinの電圧値が重畳する交流電圧成分により小さくなる時はゲート信号Gaを“H”とするまでのカウント数を減少させる。
【0021】
図4および
図5はカウント可変ZCS制御の動作説明図である。
図4は、零電流信号ZCDをカウントして、カウント数が2回となったタイミングでゲート信号Gaを“H”としている。
図5は、零電流信号ZCDをカウントして、カウント数が3回となったタイミングでゲート信号Gaを“H”としている。零電流信号ZCDのカウント数を多くしてゲート信号Gaを“H”とする
図5に示す方が、零電流信号ZCDのカウント数を少なくしてゲート信号Gaを“H”とする
図4に示す方に比べ、ゲート信号Gaを“L”とする期間が増え、ゲート信号Gaのデューティ比が小さくなっていることがわかる。つまり、脈動電圧Vinが重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、零電流信号ZCDのカウント数を大きくすることで、ゲート信号Gaのデューティ比を小さくし、出力電圧の増大を抑える。また、脈動電圧Vinが重畳する交流電圧成分により小さくなる時は、零電流信号ZCDのカウント数を小さくすることで、ゲート信号Gaのデューティ比を大きくし、出力電圧の減少を抑える。以上の動作により、出力電圧に発生するリップル成分を低減することができる。
【0022】
また、カウント可変ZCS制御は負荷5に供給する電力に応じて、零電流信号ZCDのカウント数を可変する。具体的には、軽負荷時は、高負荷時に比べて零電流信号ZCDのカウント数を増加させる。これにより、負荷5に供給する電力が小さくなり、上記リアクトル電流iLが増加する期間および減少する期間が短くなっても、スイッチング周波数が高周波化することを防止することができる。なお、零電流信号ZCDのカウント数は、スイッチング周波数が高周波化しないように設定すればどのように設定してもよく、例えば負荷5の電力によらずにスイッチング周波数がほとんど同じとなるように設定してもよいし、例えば負荷5に供給する電力が小さい時は負荷に供給する電力が大きい時よりスイッチング周波数が低減されるように設定してもよい。
【0023】
次に、電源制御部3の詳細について説明する。なお、電源制御部3は、全部がIC(Interted Circuit)を用いない一般のデジタル制御回路(デジタル制御回路と同機能をもつソフトウェアによる回路も含まれる)でもよく、またその構成要素の一部がデジタル制御回路であっても良い。さらに、全部がデジタル制御回路を用いないアナログ制御回路であっても良い。本実施の形態では、マイコンを用いるデジタル制御回路とした構成について記述する。
【0024】
オン時間生成部32は、出力電圧検出値Vosenと目標電圧値Vorefの差分を演算し、その差分が零になるようにスイッチング素子11のオン時間を決定する。オン時間の演算は、PI制御(比例積分制御)、PID制御(比例微分積分制御)等の古典制御、あるいはH∞(H−infinity)制御等の現代制御など、出力電圧検出値Vosenと目標電圧値Vorefの差分を零とするように制御する方法であればどんな制御を用いてもよい。オン時間生成部32のオン時間の演算により、出力電圧Voを任意の目標電圧値Vorefに調整することができる。
【0025】
オンタイミング生成部33は、零電流信号ZCD、入力電圧検出値Vinsenおよび出力電圧検出値Vosenを用いて、カウント可変ZCS制御を行い、ゲート信号Gaのオンタイミングを生成する。
【0026】
オンタイミング生成部33の動作を
図6のフローチャートを用いて説明する。なお、
図6において符号Sは処理ステップを意味する。
【0027】
まず、オンタイミング生成部33は制御処理を開始すると、電源主回路部2の入力電圧検出部7により入力電圧(脈動電圧)Vinを検出して得られる入力電圧検出値Vinsen、および出力電圧検出部8により出力電圧Voを検出して得られる出力電圧検出値Vosenを取り込む(ステップS1)。
【0028】
次に、出力電圧検出値Vosenとあらかじめ分かっている負荷5の抵抗値から負荷5の供給電力を算出し、負荷5の供給電力に基づいて基準カウントcntを決定する(ステップS2)。基準カウントcntは1以上の整数であり、負荷5の供給電力が小さい時ほど数値が大きくなるように設定する。なお、当該ステップS2の実施位置は
図6に示した位置でなくてもよく、後述するステップS3、またはステップS4の後にステップS2を実施してもよい。なお、負荷5に流れる電流の電流検出回路を追加して、負荷5に流れる電流の検出値と出力電圧検出値Vosenを用いて負荷5の供給電力を算出する構成としてもよい。
【0029】
次に、入力電圧検出値Vinsenの平均値を算出することにより、入力電圧検出値Vinsenの直流電圧成分を算出し、算出した結果を比較閾値Vcompと設定する(ステップS3)。なお、ステップS3はオンタイミング生成部33の制御周期ごとに行う必要はなく、比較閾値Vcompを一度設定した後はステップS3を省略してもよい。また、比較閾値Vcompは入力電圧検出値Vinsenから算出する必要はなく、入力電源4の直流電圧成分の大きさが予めわかっている場合は、その値を比較閾値Vcompに設定しておいても良い。例えば、入力電源4がAC/DCコンバータである場合は、AC/DCコンバータの目標出力電圧を比較閾値Vcompとしてあらかじめ設定しておいてもよい。
【0030】
次に、ステップS4において、ステップS3で算出した比較閾値Vcompと入力電圧検出値Vinsenとの大小比較を行う。
図7は比較閾値Vcompと入力電圧検出値Vinsenとの大小比較を説明するための図である。
図7において、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp以上の期間T1を斜線を付して表し、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcompより小さい期間T2と区別している。
【0031】
ステップS4における比較閾値Vcompと入力電圧検出値Vinsenとの大小比較により、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcompより小さい期間T2は、基準カウントcntから減少補正値x1を減算した値をターンオンカウントZCDcntに設定する(ステップS5)。入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp以上の期間T1は、基準カウントcntに増加補正値x2を加算した値をターンオンカウントZCDcntに設定する(ステップS6)。ここで、減少補正値x1と増加補正値x2はともに0以上の整数であるが、減少補正値x1と増加補正値x2が同時に0となることはない。また、減少補正値x1は基準カウントcnt未満の値をもつ。そのため、ターンオンカウントZCDcntが零および負の値となることはない。
【0032】
次に、電源制御部3の零電流信号生成部31はリアクトル電流iLが零となるタイミングを表す零電流信号ZCDを出力して、オンタイミング生成部33は零電流信号ZCDを検出する(ステップS7)。そして、零電流信号ZCDの検出をカウントして、カウント数がターンオンカウントZCDcntに達したタイミングでゲート信号Gaを“H”とするタイミング、すなわちスイッチング素子11のオンタイミングを決定する(ステップS8)。
以上の説明が、オンタイミング生成部33の動作(
図6のフローチャート)の説明である。以上のように、動作させることによりカウント可変ZCS制御を実現することができる。
【0033】
実際に、Mywayプラス社の回路シミュレーションを使用して、本実施の形態のカウント可変ZCS制御の効果確認を行った。今回のシミュレーションでは、直流電圧300Vと交流電圧20V(100Hz)を直列接続し、入力電圧とした。また、比較閾値Vcompを300V、基準カウントcntを3、減少補正値x1を1、増加補正値x2を1、目標電圧値Vorefを200Vと設定した。
【0034】
図8および
図9は、カウント可変ZCS制御適用時および不適用時のシミュレーション結果を表す図である。
図8および
図9において、上段の図は入力電圧検出値Vinsenと比較閾値Vcompの波形を表し、中段の図は出力電圧Voの波形を表し、下段の図はターンオンカウントZCDcntを表している。
図8は入力電圧検出値Vinsenと比較閾値Vcompを比較し、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp以上(Vinsen>=Vcomp)時はターンオンカウントZCDcntが4に、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcompより小さい(Vinsen<Vcomp)時はターンオンカウントZCDcntが2になっていることが確認できる。また、
図9は入力電圧検出値の大きさに関係なく常にターンオンカウントZCDcntを2となるように設定した場合のシミュレーション結果である。
【0035】
図8のシミュレーション結果は、
図9のシミュレーション結果より、出力電圧Voの脈動が小さくなっていることが確認できる。出力電圧Voの最大値と最小値の差を出力電圧Voの平均値で割ることで算出される出力電圧Voのリップル率は、
図8のシミュレーション結果では0.068、
図9のシミュレーション結果では0.131である。したがって、カウント可変ZCS制御の出力電圧リップル低減効果が確認できた。
【0036】
なお、本実施の形態では、
図7に示すように、入力電圧検出値Vinsenと入力電圧検出値Vinsenにより算出される比較閾値Vcompの比較により、ターンオンカウントZCDcntを決定した。しかしながら、ターンオンカウントZCDcntは、入力電圧(脈動電圧)の直流電圧成分に重畳する交流電圧成分に基づいて決定すればどのように定めてもよい。例えば、
図10に示すように、比較閾値としてVcomp1とVcomp2を設けて、これら比較閾値Vcomp1、Vcomp2と、入力電圧検出値Vinsenを比較しても良い。
図10に示す例の場合、ターンオンカウントZCDcntは脈動電圧Vinの1周期間に3つで可変となる。すなわち、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp1より小さい期間T30、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp2より小さくかつ比較閾値Vcomp1以上の期間T20、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp2以上の期間T10において、それぞれターンオンカウントZCDcntが順に大きくなるように決定する。
【0037】
また、本実施の形態ではコンバータ6として
図1に示す降圧チョッパ回路を用いる構成で説明を行ったが、コンバータ6はスイッチング素子とリアクトルを有し、DC/DC変換を行う回路であればどのような回路を用いてもよい。例えば、
図11に示すようにコンバータ6として昇圧チョッパ回路を用いる構成としてもよい。
【0038】
図11に示すように、コンバータ6として昇圧チョッパ回路を用いる構成とした場合も、これまで説明したコンバータ6に降圧チョッパ回路を用いる構成と同様にカウント可変ZCS制御を行うことができる。すなわち、入力電圧(脈動電圧)Vinに重畳する交流電圧成分に応じてターンオンカウントZCDcntを可変することで出力電圧Voのリップルを低減することができる。
【0039】
コンバータ6として、
図11の昇圧チョッパ回路を用いる構成とした場合について、Mywayプラス社の回路シミュレーションを使用して、本実施の形態のカウント可変ZCS制御の効果確認を行った。今回のシミュレーションは直流電圧100Vと交流電圧20V(100Hz)を直列接続し、入力電圧とした。また、比較閾値Vcompを100V、基準カウントcntを3、減少補正値x1を1、増加補正値x2を1、目標電圧値Vorefを200Vと設定した。
【0040】
図12および
図13は、コンバータ6として
図11の昇圧チョッパ回路を用いた場合の、カウント可変ZCS制御適用時および不適用時のシミュレーション結果である。
図12および
図13において、上段の図は入力電圧検出値Vinsenと比較閾値Vcompの波形を表し、中段の図は出力電圧Voの波形を表し、下段の図はターンオンカウントZCDcntを表している。
【0041】
図12はカウント可変ZCS制御適用時のシミュレーション波形であり、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcomp以上(Vinsen>=Vcomp)の時はターンオンカウントZCDcntが4に、入力電圧検出値Vinsenが比較閾値Vcompより小さい(Vinsen<Vcomp)時はターンオンカウントZCDcntが2になっていることが確認できる。また、
図13は入力電圧検出値Vinsenに関わらず、常にターンオンカウントZCDcntを2と設定した時のシミュレーション波形である。
図12のカウント可変ZCS制御適用時の方が
図13の不適用時の場合より、出力電圧Voの脈動が小さくなっていることが確認できる。出力電圧Voの最大値と最小値の差を出力電圧Voの平均値で割ることで算出される出力電圧Voのリップル率は、
図12の場合は0.043、
図13の場合は0.069であった。したがって、コンバータ6として昇圧チョッパ回路を用いる構成とした場合も、カウント可変ZCS制御による出力電圧リップル低減効果が確認できた。
【0042】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、零電流検出部9および零電流信号生成部31を用いてリアクトル12に流れる電流の零点を零電流信号ZCDとして検出し、カウント可変ZCS制御を行ったが、これに限らない。すなわち、スイッチング素子11に加わる電圧が零となるタイミングを零電圧信号ZVDとして検出し、零電流信号ZCDの替わりに零電圧信号ZVDを使用してもよい。この場合、
図1に示す零電流検出部9および零電流信号生成部31の替わりに、
図14に示すように、スイッチング素子11に加わる電圧を検出する零電圧検出部90およびスイッチング素子11に加わる電圧が零となるタイミングを零電圧信号ZVDとして出力する零電圧信号生成部310を用いることになる。その他の構成および動作は、上記の説明と同様である。
【0043】
さらに、本実施の形態では、スイッチング素子のオンタイミングを零電流信号ZCDのカウント数を用いて決定する制御法について説明したが、入力電圧に重畳する交流電圧成分に応じてスイッチング素子のオンタイミングを決定しさえすれば、零電流信号ZCDをカウントしない構成で実現してもよい。例えば、スイッチング素子のオンタイミングを所定時間が経過したタイミングに設定すると共に、入力電圧に重畳する交流電圧成分により当該所定時間を可変にする制御法で実現してもよい。
【0044】
以下、入力電圧に重畳する交流電圧成分により所定時間を可変にする制御について、
図15の電力変換装置の回路図および
図16の回路動作図に基づいて説明する。
図15において、電力変換装置1の電源主回路部2および電源制御部3の構成は
図1の構成と基本的に同じであるが、電源制御部3の制御動作、特にオンタイミング生成部33Aの動作が異なる。
【0045】
図15において、電源制御部3は、零電流検出部9から得られる電圧VLsenに基づいてリアクトル12に流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号ZCDを出力する零電流信号生成部31と、出力電圧検出値Vosenおよび目標電圧値Vorefに基づいてスイッチング素子11のオン時間を導出するオン時間生成部32と、零電流信号ZCDに基づいて所定時間経過したタイミングをスイッチング素子11のオンタイミングとして決定するオンタイミング生成部33Aと、オン時間生成部32からのオン時間とオンタイミング生成部33Aからのオンタイミングを入力してスイッチング素子11を動作させるゲート信号Gaを生成するスイッチング駆動部34を備えている。
【0046】
図16において、オンタイミング生成部33Aは、スイッチング素子11がオフした後の1回目の零電流信号ZCDの立上りタイミングt1から時間測定を開始し、測定した時間が所定時間Tdに達したタイミングによりスイッチング素子11をオンするオンタイミングを決定する。スイッチング素子11のオンタイミングを決定するための所定時間Tdは入力電圧に重畳される交流電圧成分により決定する。すなわち、入力電圧の検出値Vinsenが直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、入力電圧の検出値Vinsenが直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、所定時間Tdを長くする遅延制御を行う。
【0047】
図15および
図16により説明した遅延制御を行うことにより、零電流信号ZCDを用いる構成と同様の動作を実現できるとともに、出力電圧リップルの低減効果を得ることができる。なお、時間測定を開始するタイミングは零電流信号ZCDに基づくものでなく、例えば、
図14で説明した零電圧信号ZVDに基づくものであっても良い。また、スイッチング素子11がオンするタイミングまたはスイッチング素子11がオフするタイミングとしても良い。
【0048】
スイッチング素子11がオンまたはオフするタイミングから時間測定を開始する電力変換装置の例を
図17に示す。
図17において、スイッチング検出部35は、スイッチング駆動部34からのゲート信号Gaに基づいてスイッチング素子11のオンまたはオフのタイミングを検出する。オンタイミング生成部33Bは、スイッチング素子11のオンまたはオフしたタイミングから時間測定を開始し、測定した時間が所定時間に達したタイミングでスイッチング素子11をオンするオンタイミングを決定する。その他の動作は
図15および
図16で説明した内容と同様である。
【0049】
以上のように、実施の形態1によれば、スイッチング素子と、リアクトルとを有し、直流電圧成分に交流電圧成分が重畳した入力電圧を電力変換して負荷に出力する電源主回路部と、入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるようにスイッチング素子のオンタイミングを決定する電源制御部を備えたので、出力電圧に発生するリップルを低減することができる。
【0050】
また、電源制御部は、入力電圧の検出値と比較閾値とを比較し、入力電圧の検出値が比較閾値以上の時は、比較閾値より小さい時に比べて、スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるようにスイッチング素子のオンタイミングを決定するようにしたので、簡単な制御により出力電圧に発生するリップルを低減することができる。
【0051】
さらに、比較閾値を入力電圧の直流電圧成分としたので、簡単な制御により出力電圧に発生するリップルを低減することができる。
【0052】
また、電源制御部は、リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号を出力する零電流信号生成部およびスイッチング素子に加わる電圧が零になるタイミングを示す零電圧信号を出力する零電圧信号生成部のうちいずれか一方と、零電流信号および零電圧信号のうちいずれか一方の回数をカウントし、カウント数が所定回数に達したタイミングをスイッチング素子のオンタイミングとして決定するオンタイミング生成部と、オンタイミング生成部で決定したオンタイミングでスイッチング素子をターンオンするスイッチング駆動部を備え、入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、上記入力電圧の検出値が上記直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、上記所定回数を大きくするカウント可変ゼロクロススイッチング制御を行うようにしたので、出力電圧に発生するリップルを低減することができると共に、リアクトルに流れる電流が零となるタイミングまたはスイッチング素子に加わる電圧が零になるタイミングでスイッチング素子をオンするため、スイッチング損失の低減およびスイッチングノイズの低減を図ることができる。
【0053】
また、電源制御部は、リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号を出力する零電流信号生成部、スイッチング素子に加わる電圧が零になるタイミングを示す零電圧信号を出力する零電圧信号生成部、およびスイッチング素子がオンまたはオフするタイミングを検出するスイッチング検出部のうちいずれか一つと、零電流信号、零電圧信号、およびスイッチング素子のオンまたはオフするタイミングのうちいずれか一つから所定時間経過したタイミングをスイッチング素子のオンタイミングとして決定するオンタイミング生成部と、オンタイミング生成部で決定したオンタイミングでスイッチング素子をターンオンするスイッチング駆動部を備え、入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、所定時間を長くする遅延制御を行うようにしたので、簡単な制御により出力電圧に発生するリップルを低減することができる。
【0054】
また、電源制御部は、負荷への供給電力が低い場合は、負荷への供給電力が高い場合に比べて、スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるようにスイッチング素子のオンタイミングを決定する。また、負荷への供給電力が低い場合は、負荷への供給電力が高い場合に比べて、所定回数を大きくするカウント可変ゼロクロススイッチング制御を行う。さらに、負荷への供給電力が低い場合は、負荷への供給電力が高い場合に比べて、所定時間を長くする遅延制御を行う。その結果、負荷への供給電力が変動した場合においても、スイッチング周波数が高周波化することを防止し、スイッチング損失の増大を防ぐことができる。
【0055】
また、電源制御部は、負荷への供給電力が大きい場合は、(1)入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、入力電圧の検出値が上記直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、スイッチング素子のオンタイミングを遅らせるようにスイッチング素子のオンタイミングを決定して、スイッチング素子をスイッチング制御するとともに、
負荷への供給電力が小さい場合は、(2)スイッチング素子を一定のスイッチング周期でスイッチング制御する制御法、(3)入力電圧の検出値が直流電圧成分に重畳する交流電圧成分によらずに、リアクトルに流れる電流が零になるタイミングを示す零電流信号の回数をカウントし、カウント数が定められた回数に達したタイミングをスイッチング素子のオンタイミングとして決定して、スイッチング素子をスイッチング制御する制御法、のうち少なくとも一つの制御を行うようにしても良い。
これによれば、負荷への供給電力が大きい場合、出力電圧に発生するリップルを低減することができる。
【0056】
また、電源制御部は、電源主回路部の出力電圧検出値と目標電圧値に基づいてスイッチング素子のオン時間を決定するようにしたので、所望の出力電圧を得ることができる。
【0057】
実施の形態2.
図18はこの発明の実施の形態2による電力変換装置を示す回路ブロック図である。
図18において、
図1と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付す。この実施の形態2は、実施の形態1に対して、負荷をLED(Light Emitting Diode)モジュール50とした場合であり、
図1の負荷5がLEDモジュール50に変更された点、出力電圧検出部8が出力電流検出部80に変更された点、出力電圧検出値Vosenが出力電流検出値Iosenに変更された点、オン時間生成部32に入力される目標電圧値Vorefが目標電流値Iorefに変更された点が異なる。なお、出力電流検出部80は、例えば、図示しない電流検出抵抗を設置し、電流検出抵抗の両端間に発生する電位差をLEDモジュール50に流れる電流に対応した電圧変換値Iosenとして検出する。また、LEDモジュール50は、
図18ではLEDチップを全て直列に接続した構成としているが、直列接続した場合に限らず並列接続や直並列接続としてもよく、1個のLEDであっても良い。さらに、ここでは負荷としてLEDを接続しているが、LEDでなく、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、レーザーダイオード等に変更しても良い。
【0058】
ここで、LEDは通常、その特性から電流制御が適している。そのため、本実施の形態では、出力電圧を目標電圧に調整する制御から出力電流を目標電流に調整する制御へと変更している。
図18において、オン時間生成部32は、出力電流検出値Iosenおよび目標電流値Iorefに基づいてスイッチング素子11のオン時間を導出する。すなわち、オン時間生成部32は、出力電流検出値Iosenと目標電流値Iorefの差分を演算し、その差分が零になるようにスイッチング素子11のオン時間を決定する。このように構成すれば、実施の形態1と同様の制御により、LEDモジュール50に流れる出力電流の制御を行うことができる。
【0059】
また、電源制御部3は、実施の形態1で説明した通り、入力電圧の検出値Vinsenが直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により大きくなる時は、入力電圧の検出値Vinsenが直流電圧成分に重畳する交流電圧成分により小さくなる時に比べて、スイッチング素子11のオンタイミングを遅らせるようにスイッチング素子11のオンタイミングを決定してスイッチング制御を行っているので、出力電流のリップルを低減することができる。
【0060】
特に、負荷をLEDとした場合、LEDに流れる電流に大きなリップルが重畳していると、防犯カメラやビデオカメラなどに光ちらつきが写りこむという問題が発生する。実施の形態2では、実施の形態1で説明したカウント可変ZCS制御または遅延制御により出力電流に発生するリップルの低減を実現できるので、光ちらつきの発生を防止することができる。また、電力変換装置がLEDの光量を調整するための調光機能を搭載する場合は、通常外部から入力される目標電流値Iorefを調光機能により可変可能な構成とすれば、調光機能が実現できる。
【0061】
以上のように、実施の形態2によれば、出力電流検出値と目標電流値に基づいてスイッチング素子のオン時間を決定するようにしたので、出力電流を目標電流に調整することができるとともに、実施の形態1で説明した効果と同様の効果を得ることができる。特に、出力電流に発生するリップルを低減することができる。
【0062】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせることや、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。