特許第6659207号(P6659207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6659207-水洗式便器 図000002
  • 特許6659207-水洗式便器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659207
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   E03D11/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-65003(P2014-65003)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-187351(P2015-187351A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年7月21日
【審判番号】不服2018-14395(P2018-14395/J1)
【審判請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 悠
(72)【発明者】
【氏名】樋口 健
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎介
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 小林 俊久
【審判官】 西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−313925(JP,A)
【文献】 特開2012−127135(JP,A)
【文献】 特開2007−46308(JP,A)
【文献】 特開2009−150125(JP,A)
【文献】 特開2010−59725(JP,A)
【文献】 特開2006−241728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
この便鉢部の下流側に連通しており、前記便鉢部から排出された便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する便器排水路と、
前記便器排水路の一部を形成して後壁面から後方に突出する排水管部と、が一体に形成された便器本体を備え、
前記便器排水路における前記便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する境界部よりも上方に設けた空間を介して、手洗排水管から前記便器排水路に手洗排水が流入し、前記便器排水路の、前記排水管部より上側で前記後壁面より前側に、手洗排水が流入するように流入口が設けられていることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記便鉢部と前記便器排水路とによって、便器排水トラップが形成されており、
前記便器排水路に形成された前記便器排水トラップの頂部よりも下流側に前記流入口から手洗排水が流入する請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記手洗排水は前記便器排水の流れ方向に沿って前記流入口から流入する請求項1又は2記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記手洗排水管とは別体であり、前記手洗排水管に接続されて前記流入口を形成するノズルを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記ノズルは前記手洗排水の流れる方向が前記便器排水の流れ方向に沿うように変更するように屈曲している請求項4記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記ノズルは空気孔が貫設されている請求項4又は5記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器設備を開示している。この便器設備は、水洗式便器、排水接続管、及び手洗装置を備えている。水洗式便器は、便鉢部、及び便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有している。排水接続管は、便器排水路の下流端に開口した排出口に上流端部が接続され、トイレルーム内に引き出された排水管の上流端に開口した流入口に下流端部が接続されている。また、排水接続管は手洗装置から排出される手洗排水が流入する流入口を中間側面に設けている。手洗装置は、吐水装置、手洗鉢部、及び手洗鉢部の下流側に連通し、排水接続管に設けられた流入口に連通する手洗排水路を有している。この便器設備は、便器排水の排水経路の一部を構成する排水接続管に設けた流入口に手洗排水を流入させて排水することができるため、手洗排水の排水経路を容易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−88770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の排水接続管は、中間側面に流入口を設けているため、便器排水路の排出口に接続するための上流端部と、排水管の流入口に接続するための下流端部の他に、流入口を設けるための長さが最低限必要になる。このため、流入口が設けられていない排水接続管に比べてその長さが長くなるおそれがある。この場合、排水接続管の長さが長くなると、排水接続管を便器排水路の排出口と排水管の流入口との間に接続するためのスペースが狭い場合、排水接続管を便器排水路の排出口と排水管の流入口との間に接続することが困難になり、便器排水及び手洗排水の排水経路を形成することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、狭いスペースでも、手洗排水を便器排水の排水経路に流入させて、良好に排水することができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水洗式便器は、便鉢部と、
この便鉢部の下流側に連通しており、前記便鉢部から排出された便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する便器排水路と
前記便器排水路の一部を形成して後壁面から後方に突出する排水管部と
前記排水管部より上側で前記後壁面より前側に形成された上部空間と、
前記上部空間から前記便器排水路に手洗排水が流入するように設けられた流入口と、
が一体に形成された便器本体を備えていることを特徴とする。
【0007】
この水洗式便器は、便器排水路に手洗排水が流入する流入口を設けたため、流入口を設けるための部材を便器排水路に接続する必要がない。このため、手洗排水を便器排水の排水経路に流入させない水洗式便器と同様のスペースがあれば、水洗式便器を設置することができ、手洗排水を便器排水経路に流入させて、良好に排水することができる。
【0008】
また、この水洗式便器は、便鉢部から排出された便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する領域の上方から手洗排水が流入する。このように、手洗排水が流入する位置は、便器排水の排水経路の中で最も高い位置であるため、流入口から流入した手洗排水は、便器排水路内へ良好に流入し、便器排水経路の下流側へ排出させることができる。特に、水洗式便器が便器洗浄中であり、便器排水路内を便器排水が流れている状態では、流入口から流入した手洗排水は便器排水路内の便器排水の流れに乗って便器排水経路の下流側へ確実に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の水洗式便器を示す断面図である。
図2】実施例のノズルの取付状態を示す断面図である。
図3】実施例のノズルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の水洗式便器において、前記便鉢部と前記便器排水路とによって、便器排水トラップが形成されており、前記上部空間が、前記便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する領域の上方に形成され、前記便器排水路に形成された前記便器排水トラップの頂部よりも下流側に前記流入口から手洗排水が流入し得る。この場合、流入口から便器排水路に流入した手洗排水が便鉢部側に流れてしまうことを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の水洗式便器において、前記手洗排水は前記便器排水の流れ方向に沿って前記流入口から流入し得る。この場合、水洗式便器が便器洗浄中であり、便器排水路内を便器排水が流れている状態では、流入口から便器排水路に流入した手洗排水は便器排水路内の便器排水の流れに乗って便器排水経路の下流側へ確実に排出される。
【0013】
本発明の水洗式便器において、前記手洗排水が流れる手洗排水管とは別体であり、前記手洗排水管に接続されて前記流入口を形成するノズルを備えていることを特徴とする。また、前記ノズルは前記手洗排水の流れる方向が前記便器排水の流れ方向に沿うように変更するように屈曲し得る。この場合、ノズルによって、手洗排水を所望する方向に向けて流入させることができる。このため、便器排水トラップの頂部より下流側に手洗排水が流入するようにすれば、手洗排水を便鉢部側に流れてしまうことを確実に防止し、便器排水路の下流側へ確実に排出することができる。
【0014】
前記ノズルは空気孔が貫設され得る。この場合、手洗装置からノズルまでの手洗水の排水経路において、サイホン作用が発生することを防止し、手洗装置とノズルとの間に設けられた手洗排水トラップの封水切れを防止することができる。
【0015】
次に、本発明の水洗式便器を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1に示すように、便鉢部11と、便器排水路13とを有する便器本体10と、便器本体10の後部上面に固定され、便鉢部11に洗浄水を供給する洗浄タンク30とを備えている。洗浄タンク30及び便器本体10の後部は前板51で仕切られたキャビネット50A内に収納されている。便器本体10は前板51より前方で露出した上面に回動自在に軸支された便座71及び便蓋73を有する便座装置70を取り付けている。
【0017】
便器排水路13は、第1下降流路13A、上昇流路13B、及び第2下降流路13Cを有している。第1下降流路13Aは上下方向に開口した便鉢部11の下端開口に連続して後方へ傾斜しながら下降している。上昇流路13Bは第1下降流路13Aの下端に連続して後方へ傾斜しながら上昇している。第2下降流路13Cは、上昇流路13Bの下側面の上端13Xから下流側に向けて斜め下方に傾斜し、後方に向けて開口している。第2下降流路13Cは便器本体10の後壁面から後方に向けて突出した排水管部15によって形成されている。排水管部15の下流端に開口した便器排水路13の排出口13Dは、排水接続管90によって、トイレルームの壁面から引き出された排水管91の上流端に開口した流入口に接続されている。
【0018】
上昇流路13Bの下側面の上端13Xより下方に位置する便鉢部11の下端部、第1下降流路13A、及び上昇流路13Bの上流部に洗浄水が滞留して水封を形成する。このように、便鉢部11と便器排水路13とによって便器排水トラップが形成されている。上昇流路13Bの下側面の上端13Xが便器排水トラップの頂部13Xである。
【0019】
便器排水路13は、上昇流路13Bと第2下降流路13Cとの境界部(便鉢部11から排出された便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する領域)の上方に、手洗排水が流入する流入口29を形成するノズル20を配置する上部空間Sを形成している。上部空間Sは、図2に示すように、便器本体10の排水管部15より上側の後壁面17によって、後側の壁面が形成されている。
【0020】
ノズル20は便器本体10の排水管部15より上側の後壁面17に貫設された取付孔17Aから上部空間S内に挿入されて取り付けられている。ノズル20は上流端部に手洗排水管45の下流端部が接続している。手洗排水管45は上流端部が手洗装置40の手洗器41の排水口41Aに接続している。手洗排水管45は途中に手洗排水トラップ47を形成している。手洗装置40は手洗器41と手洗器41に設けられた水栓金具43とを有している。手洗装置40はトイレルームの壁面に沿ったキャビネット50Bの天板53上に固定され、手洗排水管45は、キャビネット50A、50B内を通って、ノズル20に接続している。手洗排水は、手洗器41及び手洗排水管45を流れてノズル20に流入する。
【0021】
ノズル20は、図2及び図3に示すように、突出管部21、前端部23、傾斜片25、及び接続部27を有している。突出管部21は、略円筒状であり、上部空間S内で便器本体10の後壁面17から前方に延びている。前端部23は、突出管部21の前端に連続し、略半球面状の曲面で形成されている。傾斜片25は、上方に開口した半円筒状であり、前端部23の下端から後方に向けて斜め下方に傾斜している。接続部27は、取付孔17Aとの間にパッキンPを介装して、挿入されており、便器本体10の後壁面17から外部に延びて手洗排水管45が接続されている。傾斜片25は便器排水路13の第2下降流路13Cの上流端部の上側面14よりも僅か下方に向いて延びている。ノズル20の傾斜片25に沿って吐出した手洗排水は、第2下降流路13Cに向けて流れる便器排水の流れ方向に沿って流入する。
【0022】
このように、ノズル20は、後端部からノズル20内に流入した手洗排水が、前方に向けて流れ、ノズル20の前端部23の内面で流れる方向が変更され、後方の斜め下方に向けて流出する流入口29を形成している。このように、ノズル20によって、手洗排水を所望する方向(便器排水トラップの頂部13Xより下流側)に向けて流入させることができる。このため、流入口29から便器排水路13に流入した手洗排水が便鉢部11側に流れてしまうことを確実に防止し、手洗排水を便器排水路13へ確実に排出することができる。
【0023】
ノズル20は突出管部21の上端面に矩形状の空気孔21Aが貫設されている。このため、手洗排水管45(手洗排水経路)において、サイホン作用が発生することを防止し、手洗排水管45に設けられた手洗排水トラップ47の封水切れを防止することができる。
【0024】
この水洗式便器は、便器排水路13の上昇流路13Bと第2下降流路13Cとの境界部(便鉢部11から排出された便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する領域)の上方に形成した上部空間Sに配置したノズル20によって手洗排水が流入する流入口29を設けている。このため、この水洗式便器は、流入口を設けるための部材を便器排水路13に接続する必要がない。よって、手洗排水を便器排水の排水経路に流入させない水洗式便器と同様のスペースがあれば、水洗式便器を設置することができる。このように、この水洗式便器は、手洗排水を便器排水経路(便鉢部11より下流側で便鉢部11から排出された便器排水が流れる経路)に流入させて、良好に排水することができる。
【0025】
また、この水洗式便器は、手洗排水が流入する位置が、便器排水経路の中で最も高い位置であるため、流入口29から流入した手洗排水は、便器排水路13内へ良好に流入し、便器排水経路の下流側へ排出させることができる。特に、水洗式便器が便器洗浄中であり、便器排水路13内を便器排水が流れている状態では、流入口29から流入した手洗排水は便器排水路13内の便器排水の流れに乗って便器排水経路の下流側へ確実に排出される。
【0026】
また、この水洗式便器は、流入口29を形成するノズル20から流出した手洗排水は、便器排水トラップの頂部13Xよりも下流側に流入する。このため、便器排水路13に流入した手洗排水が便鉢部11側に流れてしまうことを確実に防止することができる。
【0027】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、便器排水トラップの頂部よりも下流側に手洗排水が流入するようにしたが、便器排水路において、便器排水の流れが上昇方向から下降方向に連続して変化する領域内であれば、便器排水トラップの頂部よりも上流側に手洗排水を流入させてもよい。
(2)実施例では、便器排水の流れ方向に沿って手洗排水を便器排水路に流入させたが、便器排水の流れ方向に沿わせずに手洗排水を便器排水路に流入させてもよい。
(3)実施例では、流入口をノズルで形成したが、ノズルを用いず便器排水路に臨むように流入口を設けてもよい。
(4)実施例では、ノズルが屈曲したが、屈曲させなくてもよい。
(5)実施例では、ノズルに空気孔を貫設したが、ノズルに空気孔を貫設しなくてもよい。
【符号の説明】
【0028】
11…便鉢部
13…便器排水路
13X…便器排水トラップの頂部
20…ノズル
21A…空気孔
29…流入口
図1
図2
図3