特許第6659243号(P6659243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化スタイロンポリカーボネート株式会社の特許一覧

特許6659243ポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られる樹脂シート
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659243
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られる樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20200220BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200220BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K3/22
   C08K5/5317
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-116942(P2015-116942)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-2169(P2017-2169A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 圭哉
(72)【発明者】
【氏名】谷村 博之
【審査官】 本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−137060(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/037905(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/041452(WO,A1)
【文献】 特表2009−518515(JP,A)
【文献】 特開2001−341223(JP,A)
【文献】 Technical Information Sheet - Black 411 [online],The Shepherdcolor Company,2002年 4月 1日,URL,[retrieved on 2018-12-20]. Retrieved from the Internet:<URL: http://www.shepherdcolor.com/techds/BK0411_full.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と酸化防止剤(C)とを必須成分として含有してなる樹脂組成物であって、
該近赤外線反射顔料(B)が、クロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料であり、
該近赤外線反射顔料(B)の平均粒径が、0.9〜2μmであり、
該近赤外線反射顔料(B)の量が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜0.30重量部であり、
該樹脂組成物をプレス成形して得られる厚み0.8mmのプレスシートの380nm〜780nmの波長領域にて測定した可視光透過率(測定方法は、JIS R3106−1998に準拠)が25%以上であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記近赤外線反射顔料(B)が、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)(Fe,Cr)、(Zn,Fe)Fe、(Ti,Sb,Ni)O、(Ti,Sb,Cr)O、FeTiO:Al、(Zn,Fe)(Fe,Cr)、(Co,Ni,Zn)TiO、または、CoAlの組成式で表される顔料である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤(C)が、以下の一般式(1)で表される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤である、請求項1または2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1):
【化1】
(1)
(式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記酸化防止剤(C)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜0.5重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物をプレス成形して得られる厚み0.8mmのプレスシートの300nm〜2500nmの波長領域にて測定した日射反射率(測定方法は、JIS K5675−2011に準拠)が10%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して得られる樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射反射性に優れるポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られる樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形品に赤外線や近赤外線などの熱線を反射させる特性、すなわち日射反射性を付与する場合には、酸化チタン、雲母、酸化アルミニウムなどのフィラーを成形品の表面に薄く積層する方法(特許文献1、特許文献2)、顔料を溶剤に分散させた塗料を成形品の表面に塗布する方法が知られている(特許文献3)。
【0003】
また、他の方法として成形品の表面に金属蒸着や金属層を積層するなどの二次加工を施す方法も利用されてきた(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、フィラーを用いる特許文献1や特許文献2の場合には、良好なフィラー分散性を得るのが難しいため成形品の外観が損なわれることがあった。また、顔料を分散させた塗料を塗布する特許文献3の場合には、有機溶剤を用いる必要があるため環境に負荷が掛かる場合があった、さらに、金属蒸着等を行う特許文献4の場合には、金属蒸着等のための特別な工程が必要であるためコスト上昇の要因となる場合があった。
【0005】
このように特許文献1〜4に記載の従来技術は、いずれも良好な外観で日射反射性を備える安価材料としての要求を充分に満足し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−13987
【特許文献2】特開平6−144874
【特許文献3】米国特許第6174360号
【特許文献4】特開2010−64295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する、耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性に優れるポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られる樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に近赤外線反射顔料と酸化防止剤とを必須成分として特定割合配合することによって、驚くべきことに、ポリカーボネート樹脂が本来有する良好な機械物性を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と酸化防止剤(C)とを必須成分として含有してなる樹脂組成物であって、近赤外線反射顔料(B)の量が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られる樹脂シートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性に極めて優れる。このため、インテリア、エクステリア、建装材、産業資材、農業資材、車両用部材、船舶用部材、航空機用部材等の様々な用途の樹脂シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態1:ポリカーボネート樹脂組成物)
実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、近赤外線反射顔料(B)と、酸化防止剤(C)とを必須成分として含有してなるものである。
【0014】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)として、2,2―ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、分岐剤およびホスゲンから製造された分岐状ポリカーボネート樹脂や、植物由来のイソソルバイド(イソソルビド)が主原料のバイオポリカーボネート樹脂等も挙げられる。上記のポリカーボネート樹脂を単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0015】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
【0017】
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、特に制限はないが、シートにする際の成形加工性、機械物性の面より通常10000〜100000であり、好ましくは15000〜35000、特に好ましくは18000〜30000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。また、予め分子量の異なるポリカーボネート樹脂を2種以上準備しておき、それらをブレンドして所望の分子量に調整しても何ら差し支えない。
【0019】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)は、特に限定されるものでもないが、クロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料が好ましく用いられる。当該複合酸化物顔料としては、クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系顔料、亜鉛、鉄、チタン、アンチモン、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黄色系顔料、チタン、アンチモン、クロム、鉄、アルミニウム、および亜鉛から選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む茶色系顔料、コバルト、ニッケル、亜鉛、およびチタンから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む緑色系顔料、ならびにコバルトおよびアルミニウムを含む青色の青色系顔料などが挙げられる。
【0020】
クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系複合酸化物顔料としては、例えば、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、42−703A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−706A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−707A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−708A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株)))、Black27(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Black3500(複合酸化物顔料、アサヒ化成工業製)等が挙げられる。
【0021】
また、亜鉛、鉄、チタン、アンチモン、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黄色系複合酸化物顔料としては、(Zn,Fe)Fe、(Ti,Sb,Ni)Oの組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Yellow119(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Yellow53(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Yellow5150(複合酸化物顔料、アサヒ化成工業製)等が挙げられる。
【0022】
さらに、チタン、アンチモン、クロム、鉄、アルミニウム、および亜鉛から選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む茶色系複合酸化物顔料としては、(Ti,Sb,Cr)O、FeTiO:Al、(Zn,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Brown24(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Brown48(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Brown33(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0023】
コバルト、ニッケル、亜鉛、およびチタンから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む緑色系複合酸化物顔料としては、(Co,Ni,Zn)TiO等が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Green50(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0024】
コバルト、およびアルミニウムを含む青色系複合酸化物顔料としては、CoAl等の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Blue28(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0025】
これらの複合酸化物顔料の中でも、クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系複合酸化物顔料(例えば、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物)である42−703A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−706A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−707A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−708A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))が、得られるシートの透明性の観点から好ましく用いられる。
【0026】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)の量は、ポリカーボネート樹脂100重量あたり、0.01重量部〜20重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部である。近赤外線反射顔料(B)の量が0.01重量部よりも少ないと、得られる樹脂シートの日射反射性が十分に得られない場合があり、近赤外線反射顔料(B)の量が20重量部より多い場合は、コストアップに繋がるので好ましくない。
【0027】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)の平均粒径は、特に制限はないが、2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。平均粒径が2μmより大きいと、得られる樹脂シートの可視光透過性が悪化する場合がある。
【0028】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)は、ポリカーボネート樹脂(A)へ配合する際、近赤外線反射顔料(B)を高濃度に含有するマスターバッチを作製し希釈して用いてもよい。このマスターバッチのベースとなるビヒクル(マトリクス樹脂)は、ポリカーボネート樹脂でもよいし、他の樹脂を用いてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0029】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)を使用する際、ポリカーボネート樹脂組成物の色相調整に限界がある場合には、赤外線透過性粉体を用いることもできる。
【0030】
このような赤外線透過粉体としては、特に制限がなく、一般的な無機顔料や有機顔料が用いられるが、無機顔料としてはチタンホワイト、有機顔料としてはペリレン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、銅フタロシアニン系(ブルー)顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が好適である。無機系顔料のチタンホワイトとして、具体的に市販にて入手可能な商品としては、タイピユアR706(酸化チタン、デュポン製)、TITANIX JR−1000(酸化チタン、テイカ(株)製)、PCF105(酸化チタン、石原産業(株)製)等が挙げられる。
【0031】
上記の有機顔料であるペリレン系顔料としては、具体的に市販にて入手可能な商品としては、Lumogen Black FK4280(BASFジャパン(株)製)、Lumogen Black FK4281(BASFジャパン(株)製)、Paliogen Black S0084(BASFジャパン(株)製)、Paliogen Black L0086(BASFジャパン(株)製)が挙げられる。ベンズイミダゾロン系顔料としては、SYMULERFAST YELLOW4192(DIC(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2080(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2081(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2085(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW3700LD(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW3701(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。アゾ系顔料としては、SYMULERFAST YELLOW10GH(DIC(株)製)、SYMULERFAST YELLOW8GTF(DIC(株)製)、CHOMOFINEYELLOW5910(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2700L(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2054(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2700(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2035(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOWA−3(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。キナクリドン系顔料としては、SYMULERSUPER RED7100Y(DIC(株)製)、SYMULERSUPER MAGENTAR(DIC(株)製)、SYMULERSUPER MAGENTARH(DIC(株)製)、CHOMOFINE RED6820(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED6821(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED6830(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA6891N(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA6887(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。銅フタロシアニン系(ブルー)顔料としては、SYMULERBULERS(DIC(株)製)、SYMULERBULERSK(DIC(株)製)、SYMULERBULE5380(DIC(株)製)、SYMULERBULE5485(DIC(株)製)、CHOMOFINE BULES−2100(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4927B(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4940(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4930PK(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4982(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4966(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5191(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5192(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5195N(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5165(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)等が挙げられる。
【0032】
実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、近赤外線反射顔料(B)と酸化防止剤(C)とが必須成分として配合されている。このように近赤外線反射顔料(B)と酸化防止剤(C)とを必須成分として同時に配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する機械的強度等の特性や得られる樹脂シートの外観を損なうことなく、熱安定性と日射反射性とに優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0033】
本発明にて使用される酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤が好ましく用いられる。リン系酸化防止剤としては、下記一般式(1)で表される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤が特に好ましい。
一般式(1):
【0034】
【化1】
(1)
(式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0035】
一般式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0036】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0037】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0038】
前記Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0039】
一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0040】
一般式(1)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−で表される基を示す。ここで、式:−CHR−中のRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0041】
一般式(1)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR−におけるRは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0042】
一般式(1)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0043】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0044】
本発明にて使用される酸化防止剤としては、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤の他にも例えば、一般式(2)や一般式(3)で表される亜リン酸エステル系酸化防止剤、または一般式(4)で表されるリン酸エステル系酸化防止剤も好適に用いることができる。これらの酸化防止剤を併用してもよい。
一般式(2):
【0045】
【化2】
(式中、R8は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す。)
【0046】
前記一般式(2)において、R8は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0047】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0048】
一般式(3):
【0049】
【化3】
(式中、R9及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)で表される化合物が挙げられる。)
【0050】
前記一般式(3)において、R9及びR10は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
【0051】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
【0052】
一般式(4):
【0053】
【化4】
(式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
【0054】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP−EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
【0055】
本発明にて使用される酸化防止剤(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部であり、さらに0.05〜0.2重量部であることが好ましい。酸化防止剤(C)の量が0.01重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。逆に酸化防止剤(C)の量が0.5重量部を超える場合も、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。
【0056】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、この樹脂組成物をプレス成形して得られる厚み0.8mmのプレスシートの300nm〜2500nmの波長領域にて測定した日射反射率(測定方法は、JIS K5675−2011に準拠)が10%以上であることが好ましい。より好ましくは、12%以上である。日射反射率が10%以上であると、各種建築物や車両の窓材として用いた場合に、室内温度の上昇を抑制させることができる。10%を下回ると、シート材を透過する近赤外線が増加し各種建築物や車両の窓材として用いた場合に、室内温度を上昇させる恐れが有り好ましくない。
【0057】
また、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、この樹脂組成物をプレス成形して得られる厚み0.8mmのプレスシートの380nm〜780nmの波長領域にて測定した可視光線透過率(測定方法は、JIS R3106−1998に準拠)が25%以上であることが好ましい。より好ましくは、30%以上である。可視光線透過率が25%以上であると、各種建築物や車両の窓材として用いた場合可視光を十分に取り入れることができ明るさを維持することができる。25%を下回ると、可視光を十分に取り入れることができず明るさが低下する恐れが有り好ましくない。
【0058】
更に本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤や樹脂を配合することができる。例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、導電性フィラー、無機フィラー、充填材、離型剤、帯電防止剤、軟化材、展着剤(流動パラフィン、エポキシ大豆油等)、難燃剤、難燃助剤、ゴム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、近赤外線反射顔料(B)及び酸化防止剤(C)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。
【0060】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0061】
(実施の形態2:ポリカーボネート樹脂組成物より得られる樹脂シート)
実施の形態2にかかる樹脂シートは、前記のごとく得られる実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物を押出成形してなるものである。押出成形としてはTダイやサーキュラーダイによる押出成形法等が挙げられる。また、射出成形としては二色成形法や射出圧縮成形法等が挙げられる。
【0062】
本発明の樹脂シートの成形する温度は、通常、220〜380℃であり、250℃〜320℃が好ましい。
【0063】
本発明の樹脂シートの厚みは、5μm〜100mmである。樹脂シートは、厚みが5〜200μmの場合は、樹脂フィルムと呼ぶケースもある。樹脂フィルムと特別に区別する場合の樹脂シートの厚みとしては、200μm〜100mmである。
【0064】
本発明の樹脂シートは、単層でもよいし、他のポリカーボネート樹脂が積層された積層シートであってもよい。他のポリカーボネート樹脂は、市販のものを用いてもよいし(例えば、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、製品名:カリバーシリーズ、SDポリカシリーズ)、或いは公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、離型剤、帯電防止剤、熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)、強化材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ等)、熱線吸収剤等が一般的な方法で配合、混練されたものを用いてもよい。
【0065】
また、本発明の樹脂シートを積層シートとする場合に使用される他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。更に表面硬度、難燃性、撥水性、ガスバリア性等の機能を付与することを目的として本発明の樹脂シートにコーティング剤をコートしてもよい。
【0066】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0067】
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0068】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
住化スタイロン ポリカーボネート(株)製 カリバー200―13
粘度平均分子量(Mv):20700 (以下、A−1と略記)
住化スタイロン ポリカーボネート(株)製 カリバー200―3
粘度平均分子量(Mv):28300 (以下、A−2と略記)
住化スタイロン ポリカーボネート(株)製 カリバー200―30
粘度平均分子量(Mv):17400 (以下、A−3と略記)
【0069】
2.近赤外線反射顔料(B):
2−1.黒色の複合酸化物顔料
(組成式:Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)
(Fe,Cr)
東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製 42―707A
平均粒径:0.9μm (以下、B−1と略記)
【0070】
2−2.黄色の複合酸化物顔料
(組成式:(Zn,Fe)Fe、(Ti,Sb,Ni)O
東罐マテリアル・テクノロジー(株)製 Yellow53
平均粒径:1.0μm (以下、B−2と略記)
【0071】
2−3.茶色の複合酸化物顔料
(組成式:Ti,Sb,Cr)O、FeTiO:Al、(Zn,Fe)
(Fe,Cr)4)
東罐マテリアル・テクノロジー(株)製 Brown24
平均粒径:0.9μm (以下、B−3と略記)
【0072】
3.酸化防止剤(C):
3−1.環状亜リン酸エステル系酸化防止剤
以下の式で表される、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
【0073】
【化5】
住友化学(株)製 スミライザーGP (以下、C−1と略記)
【0074】
3−2.リン系エステル系酸化防止剤
以下の式で表される、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]
クラリアントジャパン(株)製 SANDSTAB P−EPQ(以下、C−2と略記)
【0075】
【化6】
【0076】
4.熱線吸収剤(D):
平均粒径70nmのLaB6微粒子約20重量%、ZrO2約24重量%および樹脂バインダーからな熱線吸収剤
住友金属鉱山(株)製 KHDS−06(以下、D−1と略記)
【0077】
実施例1〜9、比較例1、2
(a)ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの作成
前述の各種配合成分を表1〜表3に示す配合比率にて、タンブラーミキサーを用いて混合した後、二軸押出機TEX−30α(JSW(株)製)を用いて溶融温度260℃で造粒しポリカーボネート樹脂ペレットを得た。
【0078】
(b)プレスシートの作成
上記(a)で作製したポリカーボネート樹脂ペレットを、圧力100kgf/cm、温度260℃の条件下、圧縮成形機(神藤金属工業所(株)製)を用いて厚み0.8mmのプレスシートを作製した。得られたプレスシートの物性測定結果を表1〜表3に示した。
【0079】
(c)可視光透過率の測定(単位:%)
得られた各プレスシートを分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 UH−4150形分光光度計)を用いてD65光源で380nm〜780nmの波長範囲において1nm間隔で透過率を測定して、得られた透過率の値を用い、JIS R3106−1998に準じて可視光透過率を算出した。表1〜3に測定で得られた可視光透過率の測定値を示した。この可視光透過率の値は、本発明のシートの可視光透過性を表す値であり、大きい値ほど透明性が良好であり、肉眼で見た際、向こう側が見えやすいことを意味する。尚、可視光透過性が25%以上を良好とした。
【0080】
(d)日射反射率の測定(単位:%)
(b)で得られた各プレスシートを分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 UH−4150形分光光度計)を用いてD65光源で300nm〜2500nmの波長範囲において1nm間隔で反射率を測定して、得られた反射率の値を用い、JIS K5675−2011に準じて日射反射率を算出した。測定に際しては積分球側面の試料ホルダーを使用して白色板を外して試験片を固定して測定を行った。表1〜3に測定で得られた日射透過率の測定値を示した。この日射反射率の値は、本発明のシートの日射反射率を表す値であり、値が大きいほど、近赤外線領域の反射性が良好であることを意味する。なお、日射反射率が10以上を良好とした。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
表1及び表2で示した通り、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の要件を満足する場合(実施例1〜9)は、いずれのプレスシートも良好な日射反射率を示した。
【0085】
一方、表3に示す通り、本発明の構成を満足しない場合(比較例1及び2)には、いずれの場合にも欠点を有していた。
【0086】
比較例1は、近赤外線反射顔料(B)の配合量が少なかったことにより、プレスシートの日射反射率が劣っていた。
【0087】
比較例2は、近赤外線反射顔料(B)の代わりに熱線を反射するのではなく熱線を吸収する素材として公知の熱線吸収剤(D)を用いた場合であるが、この場合も日射反射率は劣っていた。
【0088】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0089】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0090】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械物性、等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性に極めて優れる。このため、インテリア、エクステリア、建装材、産業資材、農業資材、車両用部材、船舶用部材、航空機用部材等の様々な用途の樹脂シートとして好適に用いることができ極めて産業上の利用価値は高い。