【文献】
Viology Journal, 2010, Vol. 7, Issue 117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
増幅試薬が逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを含み;工程eと工程fとの間に、反応槽内で、精製された核酸を1種以上の増幅試薬と共に、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼによるRNAの転写が起こるのに適切な時間および条件でインキュベートする工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載の第1の側面は、配列番号1の配列を有する単離されたオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドは、配列番号4の配列を含む対照核酸の検出を改善するためのプローブとして用いることができる。
したがって、本明細書に記載の別の側面は、配列番号4を含む対照核酸を検出するための、配列番号1を有するプローブの使用である。
【0012】
配列番号4の配列は、天然に存在するいかなる配列とも有意な相同性を示さないスクランブル配列であるため、欧州特許出願公開第2759604号に記載されるように、複数の標的核酸の定性的検出および/または定量的検出のための非競合的な内部対照核酸配列として機能することができる。
【0013】
たとえばリアルタイムPCR分析などのPCR分析のような核酸増幅分析では、配列番号2を有する第1のプライマーと配列番号3を有する第2のプライマーとを含む特定のプライマーセットを用いて配列番号4を効率的に増幅することができる。
【0014】
したがって、本明細書に記載の一側面は、配列番号1、2、および3を有する三種のオリゴヌクレオチドを含む組成物である。
これらの核酸は、適切な増幅および検出の標的、すなわち配列番号4の配列を有する対照核酸をさらに含む部品キットとして当業者に提供してもよい。
【0015】
したがって、本明細書に記載のさらなる側面は、複数の標的核酸の検出を制御するためのキットであって、配列番号1を有する検出プローブと、配列番号2を有する増幅プライマーと配列番号3を有する増幅プライマーの組み合わせと、配列番号4を含む対照核酸とを含む、キットである。
【0016】
本明細書に記載の、配列番号1を有するプローブによって検出が改善された、配列番号4の配列を含む対照核酸を使用すれば、同じ内部対照核酸配列を異なるパラメータおよび/または異なる種類の核酸に対して使用しながら、前記複数のパラメータおよび/または複数種の核酸に関する改善された同時分析の開発が容易になる。したがって、このような対照核酸を使用することによって、対応する実験全体の複雑さが様々なレベルで軽減される。たとえば、1種の内部対照核酸配列のみを設計してそれぞれの増幅混合物に添加すればよいため、複数の対照核酸配列の設計と合成または購入のための時間と費用が節約できる。単数または複数の分析を合理化することができ、取扱い上のミスのリスクが低減される。また、1つの分析または同じ条件下で同時に行われ得る並列分析に採用する異なる対照核酸配列が多くなるほど、それぞれの条件の調整は複雑になり得る。さらに、複数の核酸に適した単一の対照を用いる場合、前記対照を単一の供給源から、前記異なる標的核酸を含む異なる槽へ分配することができる。一部の態様では、その単一の対照核酸配列はさらに定性対照および定量対照として機能し得る。
【0017】
本明細書に記載の実施例に示すように、配列番号1の配列を有するプローブを用いることにより配列番号4を含む対照核酸の検出が改善する。この改善によって、欧州特許出願公開第2759604号に記載の方法に従って行われる測定の信頼性が高まる。配列番号1の配列を有するプローブは、欧州特許出願公開第2759604号に開示されているいずれのオリゴヌクレオチド配列とも重複せず、特に配列番号5の配列(欧州特許出願公開第2759604号では配列番号52として開示されている)を有するプローブと重複しない。最新の実施例では、配列番号5と配列番号1の比較試験をした。
【0018】
配列番号1を有するプローブによって検出が改善された配列番号4の配列を含む対照核酸の使用を有利に適用できる方法は以下のとおりである。
1種以上の液体試料に存在し得る第1の標的核酸と第2の標的核酸に対する内部制御された単離と同時増幅のための方法であって、以下の自動化された工程:
a.配列番号4の配列を含む内部対照核酸を液体試料のそれぞれに添加する工程、
b.1つ以上の槽内で、固相担体材料と1種以上の液体試料とを、標的核酸を含む核酸が1種以上の液体試料中に存在する場合、標的核酸を含む核酸と内部対照核酸とが固相担体材料上に固定されるのに十分な時間と条件で化合する工程、
c.分離ステーション内で、固相担体材料を液体試料中に存在する他の物質から単離する工程、
d.分離ステーション内で核酸を精製し、固相担体材料を洗浄緩衝液で1回以上洗浄する工程、
e.少なくとも2つの反応槽内で、精製された標的核酸と精製された内部対照核酸を、標的核酸のそれぞれに対する異なるプライマーセットおよびプローブを含む増幅試薬、ならびに内部対照核酸に対する配列番号2を有する第1のプライマーと配列番号3を有する第2のプライマーを含むプライマーセットと配列番号1を有するプローブとを含む増幅試薬と接触させる工程であって、第1の反応槽は第1の標的核酸に対するプライマーおよびプローブを含み、少なくとも第2の反応槽は第2の標的核酸に対するプライマーおよびプローブを含み、第1の標的核酸に対するプライマーおよびプローブは第2の反応槽には存在せず、第2の標的核酸に対するプライマーおよびプローブは第1の反応槽には存在しない、
f.反応槽内で、精製された標的核酸と精製された内部対照核酸を増幅試薬と共に、標的核酸の有無を示す増幅反応が起こるのに十分な時間および条件でインキュベートする工程、および、
g.標的核酸の増幅産物が発する標的核酸の濃度に比例するシグナルを検出して測定し、内部対照核酸が発するシグナルを検出し測定する工程、
を含み、ここで、d〜gの工程の増幅および検出の条件は、第1の反応槽と第2の反応槽に対して同一であり、標的核酸と内部対照核酸に対しても同一である、前記方法。
【0019】
本明細書に記載の方法の利点のひとつとして、異なる核酸の増幅の制御に配列番号4を含む対照を用いることができるため、後に実施される可能性のある実験では他の核酸についてある特定の生体試料を試験する場合に、異なる内部対照核酸の添加による別のサンプル調製手順を含む必要がない。このように、内部対照核酸を一度添加すれば、他のパラメータについても同じ試料中で同じ条件で試験することができる。
【0020】
上記内部対照核酸は非競合的である。
「非競合的な内部対照核酸」は、標的とは異なるプライマー結合部位を有するため、異なるプライマーに結合する。このような構成の利点としては、特に、反応混合物中の異なる核酸の一回の増幅事象が互いに独立して起こり、競合作用がないということが含まれる。したがって、分析の検出限界に関して、競合的な構成の場合に生じ得るような有害作用は発生しない。
【0021】
本明細書に記載の方法は標的核酸のそれぞれと内部対照核酸に対して異なるプライマーセットを含むことから、当該方法は非常に柔軟である。この非競合的な構成では、競合的な構成の場合のように標的に特異的な結合部位を対照核酸に導入する必要がなく、競合的な構成のもつ増幅試薬に対する競合などの欠点を回避できる。非競合的な構成では、標的配列のプライマーおよび/またはプローブに対して競合しないように、内部対照核酸はいずれの標的配列とも異なる配列を有する。内部対照核酸の配列は、液体試料に含まれるそれ以外の核酸配列とは異なる。例として、液体試料がヒトに由来する場合、内部対照核酸は、同じくヒトに内因的に存在するような配列は有しない。このように、配列の違いは、少なくともプライマーおよび/またはプローブがストリンジェントな条件下で内因性の核酸または酸のそれぞれと結合することによって構成が競合的になるのを阻止するのに十分に有意な違いである。配列番号4は、元は天然に存在するゲノムに基づくスクランブル配列である。当技術分野で既知のように、「スクランブル」とは、配列に複数の塩基変異を導入することを意味する。配列番号4の場合、本発明で用いる内部対照核酸の配列は、その配列の由来元である天然に存在する遺伝子に対して実質的に改変された配列である。
【0022】
本明細書に記載の自動システムを含む方法は、他にも多様な利点を示す。
単一の反応槽内で行う多重分析では、異なる標的核酸の数が適切な標識の数によって限定されることが従来技術の課題であった。リアルタイムPCR分析では、たとえば、蛍光色素のスペクトルの潜在的な重複が分析の性能に大きく影響する(偽陽性の結果のリスクや精度の低下など)。したがって、診断試験の所望の性能を保証するためには、各蛍光色素分子は慎重に選択され、十分にスペクトルが分離されたものでなければならない。一般的に、使用可能な異なる蛍光色素分子の数は、PCR装置の蛍光チャネルの数(1桁)に対応する。
【0023】
対照的に、本明細書に記載の方法では、少なくとも第1の標的核酸と第2の標的核酸の内部制御された増幅が少なくとも2つの異なる反応槽で起こり、異なる反応槽でのシグナルを互いに独立して検出することができるため、多数の異なる標的核酸の同時増幅が可能になる。さらに、本明細書には、複数の反応槽のうち1つ以上の反応槽で多重反応を行うことによって同時に同じ条件で増幅できる標的数を増やす態様が包含される。このような態様では、内部対照核酸は、1つの槽内の異なる標的核酸についても、別の槽内の異なる標的核酸についても対照として機能する。
【0024】
したがって、本明細書に記載の一部の態様では、少なくとも2種の標的核酸が同じ反応槽内で増幅される。
特に、液体試料が異なる生物に由来する標的核酸を含むと考えられる場合や異なる生物自体さえも含むと考えられる場合、または異なる核酸または生物のうちのどれが前記試料中に存在し得るかが明らかでない場合、態様は、第1の標的核酸および第2の標的核酸が異なる生物に由来する、本明細書に記載の方法である。
【0025】
本明細書に記載の方法の一態様では、第1の標的核酸および/または第2の標的核酸はウイルスの核酸である。
本明細書に記載の方法のさらなる態様では、第1の標的核酸および/または第2の標的核酸はウイルス由来でない核酸である。
【0026】
本明細書に記載の方法のさらに別の態様では、第1の標的核酸および/または第2の標的核酸は細菌の核酸である。
先に記載したように、本明細書に記載の方法は少なくとも第1の標的核酸および第2の標的核酸の増幅を定性的または定量的に制御するために有用である。
【0027】
生体試料中の核酸の定性的な検出は、たとえば、個体の感染を認識するために非常に重要である。そのため、微生物感染を検出するための分析に対する1つの重要な要件は、偽陰性または偽陽性の結果を回避することである。これらの結果は各患者の治療に関して深刻な結果をほぼ必然的にもたらすためである。そのため、特にPCRに基づく方法では、定性的内部対照核酸を検出混合物に添加する。前記対照は、試験結果の有効性を確認するために特に重要である。少なくともそれぞれの標的核酸に関して陰性の結果の場合、定性的内部対照反応は、所定の設定の範囲内で反応が見られなければならない。すなわち、定性的内部対照が検出されなければならない。そうでなければ、試験自体が無効であるとみなされる。しかし、定性的な構成では、陽性の結果の場合には前記定性的内部対照が必ずしも検出される必要はない。定性試験については、反応の感度が保証され、ひいては厳密に制御されていることが特に重要である。結果として、定性的内部対照の濃度は、わずかでも阻害のある状況であれば定性的内部対照が検出されずに試験が無効となるように、比較的低くなければならない。
【0028】
したがって、本明細書に記載の方法の一部の態様では、前記内部対照核酸の増幅産物の存在は、1種以上の標的核酸の増幅産物が存在しなくても反応混合物中で増幅が起こっていることを示す。
【0029】
一方、試料中の核酸の有無を単に検出するだけでなく、前記核酸の量の測定が重要になる場合が多い。たとえば、ウイルス性疾患の病期および重症度をウイルス負荷に基づいて評価することができる。さらに、任意の治療のモニタリングでは、治療の成功を評価するためには個体中に存在する病原体の量に関する情報が必要である。定量分析には、標的核酸の絶対量を測定するための基準として機能する定量標準核酸を導入する必要がある。定量化は、外部較正を参照するか内部定量標準法を行うかのいずれかによって実施できる。
【0030】
外部較正の場合、既知量の同一の核酸または同等の核酸を用いた別個の反応で標準曲線を作成する。次に、分析した試料について得られた結果と前記標準関数とを比較することによって標的核酸の絶対量を決定する。しかし、外部較正には、可能性のある抽出方法やその変動する効率、ならびに可能性があり予測不可能な場合が多い増幅反応および/または検出反応を阻害する物質の存在が対照に反映されないという欠点がある。
【0031】
この状況は試料に関するあらゆる効果にあてはまる。そのため、抽出方法が成功しなかったことまたは試料に基づくその他の要因により試料が陰性と判断されたにもかかわらず、検出および定量の対象である標的核酸が実際にはその試料中に存在する場合があり得る。
【0032】
このような理由および他の理由のため、試験反応自体に添加される内部対照核酸が役に立つ。定量標準として機能する場合、前記内部対照核酸は、定量試験で少なくとも以下の2つの機能を有する:
i)反応の有効性をチェックする。
ii)力価計算の基準として機能することによって阻害による影響を補正し、調製手順および増幅手順を制御し、より正確な定量を可能にする。したがって、定性試験における定性的内部対照核酸が陽性を示さなければならないのは標的に陰性を示す反応のみであるのに対し、定量試験における定量対照核酸は反応対照と反応較正という2つの機能を有するため、標的に陰性を示す反応と標的に陽性を示す反応の両方で陽性かつ有効でなければならない。
【0033】
前記内部対照核酸はさらに、高濃度の核酸量の計算に対する信頼性の高い基準値となるのに適していなければならない。したがって、内部定量対照核酸の濃度は比較的高い必要がある。
【0034】
したがって、一部の態様では、本明細書に記載の方法はさらに以下の工程を含む:
h.標的核酸の1つ以上の量を決定する工程。
本明細書に記載の内部制御された方法は、たとえば従来技術で用いられるリアルタイムPCR法に比べて操作時間が非常に短く、試験をはるかに簡単に実施できる。当該方法は、並行実験においてDNAウイルスやRNAウイルス、細菌、および/またはその他の病原体などの数種のウイルスに由来する核酸の並行増幅を可能にするため、臨床ウイルス学の分野で主な利点を提供する。当該方法は、ウイルスモニタリングを頻繁に行う必要がある移植後の患者の管理に特に有用である。そのため、当該方法はコスト効率の良い診断を促進し、抗ウイルス剤の使用やウイルスによる合併症と入院を減らすことに寄与する。このことは臨床微生物学の分野にも同様に当てはまる。一般に、所要時間が短縮され、試験の柔軟性が向上すると効率は高くなる。この結果、診断のために患者に必要な試験数が減り、可能性のある入院期間が短縮される(たとえば、診断をより早く提供できれば、抗菌治療が必要な患者はその治療をより早く受けることによってより早期に回復する)。また、患者の示す病的状態がより軽度となるため、支持治療(たとえば敗血症の診断の遅れに関連する集中治療)に関連して発生する費用がより少なくなる。陰性の結果をより早く提供することは、抗生物質の過剰処方に関して重要な意味を持つ可能性がある。たとえば、本発明の方法によって得られた試験結果によって標準のリアルタイムPCR法を用いた場合よりも早く病原体を除外することができれば、臨床医は経験から判断した抗生物質の使用を強いられずにすむ。あるいは、経験から判断した抗生物質を使用する場合、各治療の期間を短縮できる。
【0035】
本明細書に記載の方法に基づく具体的な試験の設計に関して、当業者は以下の利点による利益を得る。
●ソフトウェアの複雑性が軽減される(結果としてプログラミングのミスのリスクが低減される)
●分析法の開発努力を化学と装置の制御パラメータではなく化学の最適化に集中させることができる
●常に単一の方法を用い、ハードウェアをこのプロトコルを実行するように最適に設計できるため、はるかに信頼性の高いシステムである
●上記の内部制御された方法を実施する当業者は複数の異なる分析を同方法の一部として並行して行う柔軟性を得られる
●コストを削減できる。
【0036】
本明細書の記載では、本明細書中の「固相担体」という用語は、分析物が結合できる任意の種類の固相担体に関連する。結合は吸着による直接的かつ特異的な結合、または間接的かつ特異的な結合である。間接的な結合は、目的の標的核酸配列に相同な捕捉核酸プローブへの結合による結合であり得る。このように、固相担体に結合した捕捉プローブを用いて、標的核酸を標的以外の物質または標的以外の核酸から分離することができる。このような捕捉プローブは固相担体に固定される。固相担体材料は、ポリマーまたは複数のポリマーの複合物であり得る。その他の種類の固相担体材料としては、磁性シリカ粒子、金属粒子、磁性ガラス粒子、ガラス繊維、ガラス繊維フィルター、濾紙などを含むが、固相支持体材料はこれらの材料に限定されない。
【0037】
本明細書中、「固定する」とは、核酸などの対象物を可逆的または不可逆的に捕捉することを意味する。特に、「固相担体材料に固定される」とは、1種以上の対象物が任意の周囲媒体からの分離を目的として固相担体材料と結合しており、たとえば固相担体材料から分離することによって後に回収できることを意味する。この意味で、「固定化」には、たとえば上記のようなガラスまたは他の適切な固体材料表面への核酸の吸着が包含され得る。さらに、核酸は、捕捉プローブへの結合によって特異的に「固定する」ことができる。この場合、核酸は、固相支持体に結合した本質的に相補的な核酸と塩基対形成によって結合する。後者の場合、このような特異的固定によって標的核酸の優位な結合が起こる。
【0038】
本明細書中、核酸の「精製」、「単離」または「抽出」は、以下に関する:一般的に、核酸が増幅による診断分析で分析できるようになるには、異なる成分の複雑な混合物を含む生体試料から精製、単離または抽出しなければならない。第1の工程には、核酸を濃縮できる方法を用いることができる。標的核酸を含む核酸を天然の環境から精製または単離した後、本明細書に記載の同時増幅および検出によって分析を行うことができる。
【0039】
本明細書中、「同時に」とは、第1の核酸と第2の核酸、またはそれ以上の核酸の増幅などの2つの作用が同じ物理的条件下で同時に行なわれることを意味する。一態様では、少なくとも第1および第2の標的核酸の同時増幅は1つの槽内で行なわれる。別の態様では、同時増幅は、少なくとも1つの核酸は1つの槽内で、少なくとも第2の核酸は第2の槽内で、特に温度とインキュベーション時間に関して同じ物理的条件下で同時に行なわれる。ここで、上記内部対照核酸は前記槽のそれぞれに存在する。
【0040】
本明細書中、「標的核酸」は、試料中の分析すべき核酸、すなわち試料中の有無および/または量を決定すべき核酸を意味する。
前記「第1の標的核酸」と「第2の標的核酸」は異なる核酸である。
【0041】
「液体試料」は、目的の分析物を含む可能性のある物質を指す。試料は任意の由来源、特に生理液などの任意の生体由来源から得ることができる。生理液の例としては、血液、唾液、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、乳汁、腹水(ascites fluid)、粘液、滑液、腹水(peritoneal fluid)、羊水、組織、培養細胞などが挙げられる。本明細書に記載の方法で分析する液体試料は、血液から血漿を調製する、粘性流体を希釈する、溶解するなどの前処理を使用前に行うことができる。処理方法には、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活化、試薬の添加などを含むことができる。液体試料は、由来源から得たものをそのまま用いてもよいし、試料の性質を変える前処理の後に用いてもよい。一部の態様では、初めは固体または半固体である物質を適切な液状の媒体に溶解または懸濁することによって液体にする。液体試料は何らかの標的核酸を含むと考えられる試料である。
【0042】
「反応槽」という用語には、液体試料の分析のための反応(たとえば逆転写またはポリメラーゼ連鎖反応など)が起こる、チューブ、またはマイクロウェルプレート、ディープウェルプレートあるいは他の型のマルチウェルプレートなどのプレートのウェルが包含されるが、これらに限定されるものではない。このような槽の外側の境界すなわち壁は、内部で起こっている分析反応を妨げないように化学的に不活性である。また、上記の核酸の単離はマルチウェルプレート内で行なわれることが好ましい。
【0043】
このことに関連して、分析システムのマルチウェルプレートでは、複数の試料を並行して分離し分析または保存することが可能である。最大限に液体を入れることができるよう、または最大限の熱伝達を得られるよう、マルチウェルプレートを最適化することができる。本発明と関連して使用するのに好ましいマルチウェルプレートは、自動分析器で分析物をインキュベートまたは分離するために最適化される。このマルチウェルプレートは、磁性装置および/または加熱装置と接触するように構成され配置されることが好ましい。
【0044】
「分離ステーション」は分析システムの装置または構成要素であり、液体試料中に存在する他の物質から固相担体材料を単離することができる。このような分離ステーションには、たとえば、遠心分離機、濾過管と試験管立て、磁石、または他の適切な構成要素が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい態様では、分離ステーションは1つ以上の磁石を含む。固相担体としての磁性粒子(磁性ガラス粒子が好ましい)を分離するために1つ以上の磁石を使用するのが好ましい。たとえば、液体試料と固相担体材料をマルチウェルプレートのウェル中で化合させる場合、磁性粒子を引きつけ、続いて周囲の液体から分離するために、分離ステーションに含まれる1つ以上の磁石を、たとえば磁石をウェルに導入することによって液体試料自体と接触させてもよいし、あるいは、前記1つ以上の磁石をウェルの外壁に接近させてもよい。
【0045】
「洗浄緩衝液」は、特に精製手順において望ましくない成分を除去するように設計された液体である。このような緩衝液は当技術分野で周知である。核酸の精製に関して、洗浄緩衝液は、固定した核酸を任意の望ましくない成分から分離するために固相担体材料を洗浄するのに適している。洗浄緩衝液は、たとえば、エタノールおよび/またはカオトロピック剤を含まない1種または複数の酸性pHの緩衝液中にエタノールおよび/またはカオトロピック剤を含んでもよい。洗浄液またはその他の溶液は、使用前に希釈しなければならない原液として提供される場合が多い。
【0046】
単離された核酸の下流処理には、増幅に供する前に固相担体材料から核酸を分離することが有利となり得る。
本明細書中、「溶出緩衝液」は、固相担体から核酸を分離するのに適した液体である。このような液体は、蒸留水;またはTris HClなどのTris緩衝液やHEPESなどの塩類水溶液;または当業者に公知の他の適切な緩衝液であってもよい。この溶出緩衝液のpH値は一部の態様ではアルカリ性または中性である。当該溶出緩衝液は、EDTAのようなキレート剤など、単離された核酸を分解酵素の不活化によって安定させる成分をさらに含んでもよい。
【0047】
本発明に関して、「増幅試薬」は、核酸の増幅を可能にする化学成分または生化学成分である。このような試薬としては、核酸ポリメラーゼ、緩衝液、ヌクレオシド三リン酸などのモノヌクレオチド、たとえばオリゴヌクレオチドプライマーとしてのオリゴヌクレオチド、塩、それぞれの塩の溶液、検出プローブ、色素などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
「オリゴヌクレオチド」および「改変オリゴヌクレオチド」は、モノマー単位である複数のヌクレオチドから形成された成分をいう。リン酸基は一般に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成しているといわれる。RNAおよびDNAの通常の結合すなわち主鎖は、3’‐5’ホスホジエステル結合である。特定配列を有するオリゴマー化合物の調製方法は当技術分野で公知であり、たとえば、適切な配列のクローニングと制限、および直接的な化学合成が挙げられる。上記の方法では、オリゴヌクレオチドは化学的に改変されていてもよい。すなわち、プライマーおよび/またはプローブには、改変ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物が包含される。その場合、プローブまたはプライマーは改変オリゴヌクレオチドである。
【0049】
本明細書中、「プライマー」という用語は当業者に公知のとおりに用いられ、鋳型依存性DNAポリメラーゼによってDNA合成を開始することのできるオリゴマー化合物を指し、主にオリゴヌクレオチドを指すが改変オリゴヌクレオチドも指す。すなわち、プライマーの3’末端が遊離3’‐OH基を提供し、鋳型依存性DNAポリメラーゼによってこの基にさらにヌクレオチドが結合し得、デオキシヌクレオシド三リン酸を用いて3’‐5’ホスホジエステル結合が確立され、ピロリン酸が遊離する。
【0050】
「プローブ」も、天然または改変オリゴヌクレオチドを表す。当該技術分野で公知のように、プローブは分析物または増幅物を検出する目的を果たす。上記の方法の場合、プローブは標的核酸の増幅物を検出するために使用され得る。この目的のため、プローブは一般的に標識を有する。
【0051】
「標識」は、「レポーター基」と称されることも多く、一般的に、結合相手である核酸、特にオリゴヌクレオチドまたは改変オリゴヌクレオチド、および任意の核酸を、試料に含まれる残りの物質と識別できるようにする基である(標識が結合した核酸を標識核酸結合化合物、標識プローブまたは単にプローブと称する場合がある)。一部の態様では、標識は蛍光標識であり、フルオレセイン色素、ローダミン色素、シアニン色素、およびクマリン色素などの蛍光色素であり得る。有用な蛍光色素は、FAM、HEX、JA270、CAL635、Coumarin343、Quasar705、Cyan500、CY5.5、LC‐Red640、LC‐Red705である。
【0052】
任意のプライマーおよび/またはプローブは化学的に改変されていてもよい。すなわち、プライマーおよび/またはプローブには改変ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物が包含される。その場合、プローブまたはプライマーは改変オリゴヌクレオチドである。
【0053】
核酸増幅の方法はポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction(PCR))である。この方法は当業者に周知であり、参考文献の中でも特に米国特許第4,683,202号に開示されている。
【0054】
その他の増幅反応としては、特に、リガーゼ連鎖反応、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応、Gap‐LCR、修復連鎖反応、3SR、NASBA、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification(SDA))、転写増幅(Transcription Mediated Amplification(TMA))、Qβ増幅が含まれる。
【0055】
PCRに基づく自動分析システムでは、同じ反応槽内でPCR処理中に産物の増幅のリアルタイム検出を利用していることが多い。先に述べたように、このような方法にとって重要なのはレポーター基すなわち標識を担持した改変オリゴヌクレオチドを使用することである。
【0056】
本明細書に記載の配列番号4の配列を含む内部対照核酸は、その配列に関して以下の性質を示すことが好ましい:
‐融解温度が55℃〜90℃であることが好ましく、65℃〜85℃であることがより好ましく、70℃〜80℃であることがさらに好ましく、約75℃であることが最も好ましい。
‐長さが500塩基または塩基対までであることが好ましく、50〜300塩基または塩基対であることがより好ましく、100〜200塩基または塩基対であることがさらに好ましく、約180塩基または塩基対であることが最も好ましい。
‐GC含量が30%〜70%であることが好ましく、40%〜60%であることがより好ましく、約50%であることが最も好ましい。
【0057】
一部の態様では、内部対照核酸は配列番号4またはその相補体からなる。本明細書中、「配列」とは核酸の一次構造、すなわち、それぞれの核酸を構成する個々の核酸塩基の特定の配置である。「配列」という用語は、RNAまたはDNAなどの特定の型の核酸を表すのではなく、その両方およびPNAなどの他の型の核酸にも用いられることを理解しなければならない。関連技術分野で周知のように、核酸塩基が互いに対応する場合、特にウラシル(RNAに存在)とチミン(DNAに存在)の場合、これらの塩基をRNA配列とDNA配列の間で同等であるとみなすことができる。
【0058】
臨床的に重要な核酸は多くの場合DNAであり、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus(HBV))、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus(CMV))などのDNAウイルス、またはクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis(CT))、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae(NG))などの細菌に由来し得る。このような場合、標的核酸の特性を反映させるため、DNAからなる内部対照核酸を使用することが有利になり得る。
【0059】
したがって、一部の態様では、内部対照核酸はDNAである。
一方、臨床的診断に重要な多くの核酸は、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus(HIV))、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus(HCV))、西ナイルウイルス(West Nile Virus(WNV))、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus(HPV))、日本脳炎ウイルス(Japanese Encephalitis Virus(JEV))、セントルイス脳炎ウイルス(St. Louis Encephalitis Virus(SLEV))といったRNAウイルス由来の核酸などのリボ核酸である。本明細書に記載の方法は、このような核酸に容易に適用できる。この場合、標的核酸の特性を反映させるため、RNAからなる内部対照核酸を使用することが有利となり得る。内部対照核酸は、理想的には複数の標的が関与する分析の最も感度の高い標的に類似しているべきであり、通常はRNA標的をより厳密に制御しなければならないことから、RNAとDNAの両方を上記の方法で分析する場合、内部対照核酸はRNAであることが有利となり得る。
【0060】
したがって、一部の態様では、本明細書に記載の内部対照核酸はRNAである。
RNAはアルカリ性pH、リボヌクレアーゼなどの影響によりDNAよりも分解され易いため、RNAで作製した内部対照核酸は外装された(armored)粒子として提供されることが好ましい。特にアーマードRNAなどの外装粒子が欧州特許出願公開第910643号に記載されている。簡潔にいえば、化学生成が可能なRNA、または好ましくは大腸菌などの細菌によって異種生成が可能なRNAの少なくとも一部をウイルスコートタンパク質で被包したものである。後者の場合、外部からの影響(特にリボヌクレアーゼ)に対するRNAの抵抗性が付与される。内部対照DNAをファージパッケージングによって保護された粒子として提供することもできることを理解しなければならない。本明細書の記載に関しては、被包されたRNAおよびDNAはいずれも内部対照核酸として有用である。一部の態様では、RNA対照核酸は大腸菌のMS2コートタンパク質で外装されている。さらなる態様では、DNA対照核酸はλファージGT11を用いて外装されている。
【0061】
一般的に、増幅を利用した核酸診断では、増幅および検出の前にRNA鋳型をDNAに転写する。
したがって、本明細書に記載の方法の一部の態様では、増幅試薬は逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを含み、当該方法は工程eと工程fとの間に、「反応槽内で、精製された核酸を該1種以上の増幅試薬と共に、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼによるRNAの転写が起こるのに適切な時間および条件でインキュベートする工程」をさらに含む。
【0062】
「逆転写酵素活性を有するポリメラーゼ」は、RNA鋳型に基づいてDNAを合成することができる核酸ポリメラーゼである。このポリメラーゼは、RNAが一本鎖cDNAに逆転写されると二本鎖DNAを形成することもできる。一部の態様では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは熱に対して安定である。
【0063】
DNAポリメラーゼによるRNA分子の増幅では、第1伸長反応はRNA鋳型を用いた逆転写であり、DNA鎖が生成される。DNA鋳型を使用する第2伸長反応では二本鎖DNA分子が生成される。このように、DNAポリメラーゼによってRNA鋳型から相補DNA鎖を合成することにより、増幅のための出発材料が得られる。
【0064】
熱安定性DNAポリメラーゼは、1種の酵素を用いて同時に行う逆転写/増幅反応において使用できる。これに関連して、「ホモジニアス(homogeneous)」という用語は、RNA標的の逆転写および増幅のための二段階式の単一の付加反応をいう。「ホモジニアス」は、逆転写(reverse transcription(RT))工程後に反応槽を開けたり、増幅工程前に反応成分を調整したりする必要がないことを意味する。ホモジニアスでない(non-homogeneous)RT/PCR反応では、逆転写後と増幅前に、増幅試薬などの反応成分のうち1種以上が調整、添加または希釈され得るため、反応槽を開けなければならないか、少なくとも内容物を操作しなければならない。
【0065】
逆転写はRT/PCRにおいて重要な工程である。たとえば、RNA鋳型は、プライマー結合および/またはそれぞれの逆転写酵素によるcDNA鎖の伸長を妨害し得る二次構造を形成する傾向を示すことが当技術分野で公知である。したがって、転写の効率に関してRT反応には比較的高温が有利である。一方、インキュベーション温度を上げるということは特異性も高くなることを意味する。すなわち、RTプライマーは、予測される1つ以上の配列にミスマッチを示す配列にアニーリングしない。特に、複数の異なる標的RNAの場合、たとえば、液体試料中に未知または稀な亜系統または亜種の生物が存在する可能性がある場合、個々のミスマッチを有する配列も転写し、次いで増幅および検出を行うことが望ましい場合がある。
【0066】
上記の両方の利点、すなわち二次構造の減少と、ミスマッチを有する鋳型の逆転写による利益を得る、一部の態様では、複数の異なる温度でRTインキュベーションを行なうことが好ましい。
【0067】
したがって、一部の態様では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼのインキュベーションを30℃〜75℃、45℃〜70℃、または55℃〜65℃の異なる温度で行なわれる。
【0068】
逆転写のさらなる重要な側面として、RT工程が長くなると、液体試料中に存在し得るDNA鋳型が損傷される可能性がある。したがって、液体試料がRNA種およびDNA種の両方を含む場合、RT工程の継続時間を可能な限り短く保つと共に、後の増幅と、必要であれば増幅物の検出のため、十分な量のcDNA合成が確保されることが有利であり得る。
【0069】
したがって、一部の態様では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼのインキュベーション時間は、30分まで、20分まで、15分まで、12.5分まで、10分まで、5分まで、または1分までである。
【0070】
さらなる態様では、逆転写酵素活性を有し変異を含むポリメラーゼは、以下からなる群から選択される:
a)CS5 DNAポリメラーゼ;
b)CS6 DNAポリメラーゼ;
c)テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)DNAポリメラーゼ;
d)テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼ;
e)テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)DNAポリメラーゼ;
f)テルムス・フラーブス(Thermus flavus)DNAポリメラーゼ;
g)テルムス・フィリホルミス(Thermus filiformis)DNAポリメラーゼ;
h)テルムス種sps17 DNAポリメラーゼ;
i)テルムス種Z05 DNAポリメラーゼ;
j)テルモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)DNAポリメラーゼ;
k)テルモシフォ・アフリカヌス(Termosipho africanus)DNAポリメラーゼ;および
l)テルムス・カルドフィルス(Thermus caldophilus)DNAポリメラーゼからなる群から選択される。
【0071】
これらの要件に特に適しているのは、伸長速度を速くする点で逆転写効率を向上させるような変異をポリメラーゼドメイン内に有する酵素である。
したがって、一部の態様では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比べて改善した核酸伸長速度および/または改善した逆転写酵素活性を付与する変異を含むポリメラーゼである。
【0072】
一部の態様では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比べて改善した逆転写酵素活性を付与する変異を含むポリメラーゼである。
本発明に関して特に有用となる点変異を有するポリメラーゼは、国際公開第2008/046612号に開示されている。特に、一部の態様では、本発明に関して使用される好ましいポリメラーゼは、ポリメラーゼドメイン内に少なくとも以下のモチーフを含む変異DNAポリメラーゼである:
T‐G‐R‐L‐S‐S‐X
b7‐X
b8‐P‐N‐L‐Q‐N(配列番号15):(式中、X
b7は、SまたはTから選択されるアミノ酸であり、X
b8は、G、T、R、K、およびLから選択されるアミノ酸であり、ポリメラーゼは、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、野生型DNAポリメラーゼに比べて核酸伸長速度および/または逆転写効率が改善しており、野生型DNAポリメラーゼのX
b8は、D、E、またはNから選択されるアミノ酸である)。
【0073】
テルムス(Thermus)種Z05由来の熱安定性DNAポリメラーゼの変異体(たとえば米国特許出願公開第5,455,170号明細書に記載される)が特に有用であり、この変異体は、対応する野生型酵素であるZ05と比較するとポリメラーゼドメインに変異を含んでいる。580位のアミノ酸がG、T、R、KおよびLからなる群から選択されるZ05変異体のDNAポリメラーゼは特に有用である。
【0074】
熱安定性ポリメラーゼを使用する逆転写には、Mn
2+を二価陽イオンとして用いてもよい。Mn
2+は一般的に、たとえば塩化マンガン(MnCl
2)、酢酸マンガン(Mn(OAc)
2)、または硫酸マンガン(MnSO
4)などの塩として含まれる。50mMトリシン緩衝液を含む反応にMnCl
2が含まれる場合、MnCl
2は一般的に、たとえば0.5〜7.0mMの濃度で存在する。200mMのdGTP、dATP、dUTPおよびdCTPを個々に使用する場合、MnCl
2は0.8〜1.4mM存在し得る。MnCl
2は2.5〜3.5mM存在してもよい。さらに、一部の態様では、逆転写のための二価陽イオンとしてMg
2+を用いる。
【0075】
一部の態様として、DNA標的核酸を保存しながらRNA標的核酸をcDNAに逆転写するためcDNAおよびDNAの両方をその後の増幅に使用できることが含まれることから、本明細書に記載の内部制御された方法は、RNAゲノムを有する生物に由来する標的核酸とDNAゲノムを有する生物に由来する標的核酸との同時増幅および検出に特に有用である。この利点により、同一の物理的条件下で分析できる異なる生物、特に病原体の範囲がかなり増大する。
したがって、一部の態様では、第1および第2の標的核酸はRNAおよびDNAを含む。
【0076】
増幅工程の標的は、RNA/DNAハイブリッド分子であってもよい。標的は、一本鎖核酸でも二本鎖核酸でもよい。最も広く用いられているPCR手順では二本鎖標的が使用されるが、これは必須ではない。一本鎖DNA標的の第1増幅サイクル後、反応混合物には、一本鎖標的と新たに合成された相補鎖とからなる二本鎖DNA分子が含まれる。同様に、RNA/cDNA標的の第1増幅サイクルの後、反応混合物には二本鎖cDNA分子が含まれる。この時点で、上記と同じ増幅サイクルが引き続き進行する。
【0077】
一部の態様では、増幅された標的核酸と増幅された内部対照核酸を、分析結果を評価するために増幅反応中または増幅反応後に検出する。
増幅反応をリアルタイムでモニタリングすること、すなわち標的核酸および対照核酸の増幅中に増幅された標的核酸および増幅された対照核酸を検出することが有利となり得る。
【0078】
したがって、一部の態様では、プローブ、特に配列番号1を有するプローブを、供与体の蛍光部分および対応する受容体の蛍光部分で標識する。
上記の方法は、供与体の蛍光部分と受容体の蛍光部分との間の蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET))に基づくことが好ましい。代表的な供与体蛍光部分はフルオレセインであり、対応する代表的な受容体蛍光部分としては、LC-Red 640、LC-Red 705、Cy5およびCy5.5が挙げられる。一般的に、検出には、供与体蛍光部分により吸収される波長で試料を励起することと、対応する受容体蛍光部分により放出される波長を可視化および/または測定することが含まれる。本発明の方法では、検出後にFRETの定量を行うことが好ましい。検出を各サイクル工程後に実施することが好ましく、リアルタイムで行うことが最も好ましい。市販のリアルタイムPCR装置(たとえば、LightCycler(商標)またはTaqMan(登録商標))を使用することにより、PCR増幅と増幅産物の検出を単一の密閉キュベット内で同時に行うことができ、サイクル時間が劇的に短縮される。検出が増幅と同時に起こるために、リアルタイムPCR法では、増幅産物を操作する必要がなく、増幅産物間の相互汚染のリスクが低減される。リアルタイムPCRによって所要時間が大幅に短縮され、リアルタイムPCRは従来のPCR技術に代わる、臨床検査室では魅力的な方法である。
【0079】
LightCycler(商標)装置は、高品位の光学機器を利用した微量蛍光測定器を備えた高速サーマルサイクラーである。この高速熱サイクル技術では、反応槽として薄いガラスキュベットを使用する。加熱された空気と外気を交換することによって反応容器の加熱と冷却が制御される。空気の質量が小さく、キュベットの体積に対して表面積の割合が大きいため、加熱容器内で非常に速い温度交換速度を得ることができる。
【0080】
TaqMan(登録商標)技術では、2つの蛍光部分で標識した一本鎖の交雑プローブを利用する。第1の蛍光部分を適切な波長の光で励起すると、吸収されたエネルギーは、FRETの原理に従って第2の蛍光部分に移行される。一般的に、第2の蛍光部分はクエンチャー分子である。この方式に用いられる代表的な蛍光色素は、たとえば、特にFAM、HEX、CY5、JA270、CyanおよびCY5.5である。PCR反応のアニーリング工程の間、標識された交雑プローブは標的核酸(すなわち増幅産物)に結合し、その後の伸長期にTaqまたは別の適切なポリメラーゼの5’‐3’エキソヌクレアーゼ活性により分解される。結果的に、励起された蛍光部分およびクエンチャー部分は、空間的に互いに分離される。その結果、クエンチャーの非存在下で第1の蛍光部分を励起すると、第1の蛍光部分からの蛍光発光が検出できる。
【0081】
上記の両方の検出方式では、発光されたシグナルの強度を、元の標的核酸分子の数と相関させることができる。
FRETの代替法として、蛍光DNA結合色素(たとえばSYBRGREEN I(登録商標)またはSYBRGOLD(登録商標)(Molecular Probes))などの二本鎖DNA結合色素を使用して増幅産物を検出してもよい。このような蛍光DNA結合色素は、二本鎖核酸と相互作用させた後に適切な波長の光で励起すると、蛍光シグナルを発光する。核酸インターカレート色素などの二本鎖DNA結合色素を使用することもできる。二本鎖DNA結合色素を使用する場合、通常、増幅産物の存在を確認するために融解曲線分析を行う。
【0082】
本発明のリアルタイムPCR法を用いた増幅産物の存在の検出に、分子ビーコンをFRETと組み合わせて使用することもできる。分子ビーコン技術には、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分で標識した交雑プローブが使用される。一般的に第2の蛍光部分はクエンチャーであり、一般的に蛍光標識はプローブの両端に配置される。分子ビーコン技術には、二次構造(たとえばヘアピン)形成を可能にする配列を有するプローブオリゴヌクレオチドが使用される。プローブ内での二次構造形成の結果、プローブが溶液中にある場合は、両方の蛍光部分が空間的に近接している。増幅産物にハイブリダイゼーションした後、プローブの二次構造は崩れ、蛍光部分が互いに分離され、適切な波長の光で励起すると、第1の蛍光部分の発光が検出できる。
【0083】
したがって、一部の態様では、本明細書に記載の方法はFRETを使用する。ここで、プローブは、二次構造形成を可能にする核酸配列を含み、前記二次構造形成により、前記第1および第2の蛍光部分が空間的に近接する。
【0084】
蛍光部分が非常に接近している場合で、かつ供与体蛍光部分の発光スペクトルが受容体蛍光部分の吸収スペクトルと重複する場合にのみ、効率的なFRETが起こり得る。
したがって、一部の態様では、前記供与体蛍光部分と受容体蛍光部分は、プローブ上で互いから5ヌクレオチド以内の位置に存在する。
さらなる態様では、前記受容体蛍光部分はクエンチャーである。
【0085】
上記の方法の結果として生成される単位複製配列の長さを慎重に選択することがさらに有利である。一般的に、単位複製配列が比較的短い場合に増幅反応の効率が高まる。したがって、本発明の好ましい側面は、前記増幅断片が450塩基まで、好ましくは300塩基まで、さらに好ましくは200塩基まで、さらに好ましくは150塩基までを含む、上記の方法である。
【0086】
本明細書に記載の内部対照核酸は、定量、すなわち標的核酸の量を決定するための基準に適し、基準として使用される「定量標準核酸」として機能し得る。この目的のため、1種以上の定量標準核酸を標的核酸と共に、可能性のあるすべての試料調製工程に供する。さらに、定量標準核酸は、同一の反応混合物中で、方法の間ずっと処理される。定量標準核酸は、標的核酸が存在する場合にも存在しない場合にも、直接的または間接的に、検出可能なシグナルを生成しなければならない。この目的のため、定量標準核酸の濃度は、感度を妨害せずに、標的濃度が非常に高い場合にも検出可能なシグナルを生成するために、各試験で慎重に最適化されなければならない。それぞれの分析の検出限界(LOD、下記参照)に関して、「定量標準核酸」の濃度範囲は、一部の態様では20〜5000xLOD、さらなる態様では20〜1000xLOD、さらに別の態様では20〜5000xLODである。反応混合物中の定量標準核酸の最終濃度は、得られる定量測定範囲に依存する。
【0087】
「検出限界」、すなわち「LOD(limit of detection)」は、試料中の核酸の検出可能な最低量または最低濃度を意味する。「LOD」が低い場合は感度が高いということであり、「LOD」が高い場合は感度が低いということである。「LOD」は通常、単位「cp/ml」、または特に核酸がウイルスの核酸である場合にはIU/mlによって示される。「cp/ml」は「コピー/ミリリットル」を意味し、この場合、「コピー」とはそれぞれの核酸のコピーである。IU/mlは「国際単位/ml」を表し、WHO基準を参照する。
【0088】
LODの計算に広く使用されている方法は「プロビット分析」である。これは、刺激(用量)と計数的(全か無か)反応の間の関係を分析する方法である。典型的な計数的反応実験では、動物群に様々な用量の薬物を与える。各用量レベルでの死亡率を記録する。次いで、プロビット分析を用いてこれらのデータを分析することができる。プロビットモデルでは、反応の割合が累積正規分布として用量の対数と関連していると仮定する。すなわち、用量の対数を累積正規分布から死亡率を読み取るための変数として使用することができる。他の確率分布ではなくこの正規分布を用いると、可能性のある用量の上限側と下限側では予測される反応率は影響を受けるが、中央付近では、ほとんど影響を受けない。
【0089】
プロビット分析は、異なる「ヒット率」で適用することができる。当技術分野で公知のように、「ヒット率」は一般にパーセント[%]で示され、分析物の特定濃度での陽性結果の割合を示す。したがって、たとえば、LODをヒット率95%で計算することができる。これは、有効な結果の95%が陽性である状況でLODを計算することを意味する。
【0090】
定量標準核酸として機能する内部対照核酸に基づいてTaqMan方式の定量結果を計算する方法の例を以下に記載する。全PCR操作から得た、装置によって補正された蛍光値の入力データから力価を計算する。標的核酸と定量標準核酸として機能する内部対照核酸とを含む試料の組み合わせを、特定の温度プロファイルを用いてサーマルサイクラーでのPCRに供する。PCRプロファイル中、選択された温度および時間で、フィルタリングした光を試料に照射し、標的核酸および内部対照核酸について、それぞれの試料についてのフィルタリングした蛍光データを収集する。PCR操作を完了した後、蛍光の読取り値を処理し、内部対照核酸についての一組の色素濃度データのセットと標的核酸についての色素濃度データのセットを得る。色素濃度データの各セットを同じ方式で処理する。数回の妥当性チェックを行った後、内部対照核酸および標的核酸についてエルボー値(CT)を計算する。エルボー値は、標的核酸または内部対照核酸の蛍光が所定の閾値(蛍光濃度)と交差する点として定義される。力価の計算は、標的核酸と内部対照核酸が同じ効率で増幅されるという仮定と、計算されたエルボー値では等量のコピー数の標的核酸と内部対照核酸の単位複製配列が増幅され検出されるという仮定に基づく。したがって、(CTQS‐CT標的)は、log(標的濃度/QS濃度)に対して直線である。この文脈では、QSは定量標準核酸として機能する内部対照核酸を示す。次いで、たとえば、以下の式:
T’=10(a(CTQS‐CT標的)
2+b(CTQS‐CT標的)+c)
のような多項式による較正の公式を用いて力価Tを計算することができる。
【0091】
多項式定数および定量標準核酸の濃度は既知であるため、この等式中の唯一の変数は差(CTQS−CT標的)である。
さらに、一部の態様では、内部対照核酸は「定性的内部対照核酸」として機能し得る。「定性的内部対照核酸」は、定性検出分析の試験結果の有効性を確認するのに特に有用である。陰性結果の場合であっても、定性的内部対照が検出されなければならず、そうでなければ試験自体が無効と見なされる。しかし、定性的な構成では、陽性の結果の場合には必ずしも定性的対照が検出される必要はない。結果的に、定性的対照の濃度は比較的低くなければならない。定性的対照は、それぞれの分析やその感度に慎重に適合させなければならない。一部の態様では、定性的内部対照核酸の濃度範囲は、1回の反応につき1コピーから、1回の反応につき1000コピーまでの範囲を含む。それぞれの分析の検出限界(LOD)に関連して、定性的対照核酸の濃度は、一部の態様では分析のLOD〜LODの25倍の値、さらなる態様ではLOD〜10xLODである。さらに別の態様では、前記濃度は2x〜10xLODである。別の態様では、前記濃度は、5x〜10xLODである。一部の態様では、前記濃度は5xまたは10xLODである。
【0092】
一部の態様では、異なる内部対照核酸を液体試料に添加しながらも、配列番号2を有するプライマーと配列番号3を有するプライマーと配列番号1を有するプローブのみを添加することによってそれらのうちの1種(少なくとも配列番号4の配列を有する内部対照核酸)のみを増幅および検出のために使用することが有利となり得る。
【0093】
本明細書に記載の方法の一部の態様では、すべての工程が自動化される。「自動化される」は、方法の工程が、外部制御をほとんどまたは全く有さず、もしくは個人による影響をほとんどもしくは全く受けずに作動できる装置または機械を用いて実行するのに適していることを意味する。当該方法のための調製工程のみ、手動で行う必要があってもよく、たとえば貯蔵容器の充填や設置をしなければならないし、試料の選択および当業者に公知のさらなる工程、たとえば制御コンピューターの操作は、ヒトによって実施されなければならない。装置または機械は、たとえば自動的に液体を添加したり、試料を混合したり、または特定の温度でのインキュベーションを実行したりすることができる。一般的に、このような機械または装置は、個々の工程およびコマンドが特定されたプログラムを実行するコンピューターによって制御されるロボットである。
【実施例】
【0094】
この実施例では、配列番号4を標的とする2種類の異なるオリゴヌクレオチドセット(配列番号2、3および5を含むセット2(MMx R2‐配列番号5中);ならびに配列番号2、3および1を含むセット3(MMx R2‐配列番号1中))と、配列番号9を標的とする配列番号6、7および8を有する基準セット1(MMx R2‐基準/配列番号6中)の性能の比較について記載する。
【0095】
簡潔にいえば、記載した態様において、RNAウイルス(HCV)に対し、配列番号4と配列番号9の両方を含む内部対照核酸を用いてリアルタイムPCRを行う。試料はすべて同一の試験で(すなわち同一のマルチウェルプレート上で)処理し、分析した。
以下の試料を調製した後、分析した。
【0096】
【表1】
【0097】
他の種類の適切な標準または標的が当業者に公知であり入手可能である。
以下の表に示す装置を、それぞれの製造業者の指示書に従って使用した。
【0098】
【表2】
【0099】
試料の調製のため、以下の試薬を希釈剤として使用した。
【0100】
【表3】
【0101】
以下の希釈液をあらかじめ調製し、一晩保存した(血漿希釈液:−60℃〜−90℃;BULK MP SPECIMEN DILUENT PMC希釈液:2℃〜8℃)。
【0102】
【表4】
【0103】
対応する各試料(500μl)と各試料希釈剤(350μl)を、ピペットを用いて手でディープウェルプレートに入れた。HCV試料を入れた各ウェルに、上記の定量対照核酸50μlを手で添加した(3000粒子/試料)。
各対照核酸を以下の緩衝液中で保存した:
【0104】
【表5】
【0105】
試料の調製は、
図1に示す模式図の作業の流れに従い、以下の試薬を用いてcobas(登録商標)6800/8800の処理装置(Roche Diagnostics AG, Rotkreuz, CH)で行った。
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
試料調製の最終工程(溶出液の冷却)で、増幅試薬MMx R1とMMx R2を含む実用的なマスターミックス(Master Mixes (MMx))をマイクロウェルプレートの各ウェルに手で添加した。次いで、装置によって溶出液(単離された核酸を含む)をpプレートからマイクロウェルプレートへ移し、MMxと混合した。次いでマイクロウェルプレートを自動で密閉し、増幅および検出のために独立型の分析サイクラーへ手で移動した。
【0112】
以下のマスターミックスを用いた(それぞれ2種類の試薬R1およびR2からなる)。
MMx R2‐基準/配列番号6について:
【0113】
【表11】
【0114】
MMx R2‐配列番号5について:
【0115】
【表12】
【0116】
MMx R2‐配列番号1について:
【0117】
【表13】
【0118】
増幅と検出のために、cobas(登録商標)6800/8800の処理装置(上記を参照)の自動プレート密閉装置を用いてマイクロウェルプレートを密閉し、プレートを手でcobas(登録商標)6800/8800の分析サイクラーへ移した(上記を参照)。
【0119】
表1に示す一般的なPCRプロファイルを用いて、3種類のマスターミックスに対して同じ条件で増幅および検出(リアルタイムPCR)を同時に行った。合計で増幅・検出プレート7枚分実施し、所望の複製物を得た。
表1:熱サイクルのプロファイル
【0120】
【表14】
【0121】
表2:サイクルの概要
【0122】
【表15】
【0123】
表3:積算時間
【0124】
【表16】
【0125】
PCR前のプログラムとして、最初に変性とインキュベーションを55℃、60℃、65℃で行い、逆転写によりRNA鋳型を得た。3つの温度でインキュベーションすることによって、高温でRNA二次構造の形成を抑えながら低温ではミスマッチの少ない標的配列(生物の遺伝子改変体など)を転写することもできるという有利な効果を組み合わせることによって、転写の効率が上がった。
【0126】
PCRサイクルを2回の測定に分けた。いずれの測定も一工程の構成(アニーリングと伸長を同時に行う)とした。最初の5サイクルを55℃で行い、ミスマッチの少ない標的配列を事前増幅することによって、包含性を高めた。第2の測定の45サイクルは、58℃でアニーリング/伸長することによって特異性を高めて行った。
【0127】
図2の成長曲線に示すように、このプロファイルを上記のマイクロウェルプレートのすべてのサンプルに用いて、すべてのサンプルについて増幅と検出を行った。
図2は、増幅前の試料の調製も成功したことを示している。
【0128】
定量HCV内部対照についての結果を、明確にするために個別に
図2に示す。対照の増幅もすべての場合において成功したことがわかる。定量的構成におけるHCV標的の定量を、定量標準として機能するそれぞれの内部対照核酸と比較することによって計算した。
【0129】
データ分析
分析サイクラーの生データファイル(xmlファイル)を、PARTSソフトウェアを用いて分析した。最新のcobas(登録商標)6800/8800のHCV分析テンプレートを用いてデータ計算し、チャネル4/JA270(HCVシグナル)とチャネル5/Cy5.5(定量対照シグナル)の3種類のマスターミックスについての陽性/陰性も照会した。HCV標的と定量的対照については、最新のcobas(登録商標)6800/8800のHCV分析テンプレートを用いて、ヒット率、CT値、RFI値、F値を計算した。
【0130】
結果
3種類のマスターミックスのヒット率、CT値、RFI値、F値を表4および表5に示す。使用した分析テンプレートは、オリゴヌクレオチドの各セットに最適化したものではない。
【0131】
表4:EDTA血漿液に試料500μlを添加して処理したときのHCV標的のCT値とRFI値
【0132】
【表17】
【0133】
表5:EDTA血漿液に試料500μlを添加して処理したときの内部対照のCT値とRFI値
【0134】
【表18】
【0135】
プローブ比較の概要:
3種類の内部対照オリゴヌクレオチドのセットを両側検定(side-by-side study)すると、ヒット率に有意差が示されなかった。MMx R2‐配列番号1(オリゴヌクレオチドセット3)については、より低いベースラインとRFI値が向上する傾向が同時に見られた。このことによって、配列番号4を含む対照核酸の検出の改善が可能になる。配列番号5の代わりに配列番号1を有するプローブを用いることより、配列番号4を含む内部対照核酸を用いた分析の信用性と頑健性がこのように向上する。