特許第6659303号(P6659303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659303
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】土工資材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20200220BHJP
   E01C 3/00 20060101ALI20200220BHJP
   E02D 3/08 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   C02F11/00 CZAB
   C02F11/00 M
   E01C3/00
   E02D3/08
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-208121(P2015-208121)
(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公開番号】特開2017-80642(P2017-80642A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】小早川 真
(72)【発明者】
【氏名】岡村 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】生田 考
(72)【発明者】
【氏名】武田 隼一
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 義夫
(72)【発明者】
【氏名】森澤 友博
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−123385(JP,A)
【文献】 特開2015−131262(JP,A)
【文献】 特開2008−87468(JP,A)
【文献】 特開2015−120124(JP,A)
【文献】 特開2015−67510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0139871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
E01C 3/00
E02D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣と、石炭灰とを含む混合物からなる造粒物を焼結してなる粒状の土工資材を製造するための方法であって、上記残渣と上記石炭灰を混合して、混合物を得る混合工程と、上記混合物を造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を1,150〜1,300℃で焼結して、上記粒状の土工資材を得る焼結工程、を含むことを特徴とする粒状の土工資材の製造方法
【請求項2】
上記残渣(含水比100%換算値)と上記石炭灰の合計量100質量部に対する上記石炭灰の配合量が、10〜85質量部である請求項に記載の粒状の土工資材の製造方法。
【請求項3】
上記造粒物が、3〜40mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上の割合で含むものである請求項1又は2に記載の粒状の土工資材の製造方法。
【請求項4】
上記造粒物中の水分の含有率が、15〜50質量%である請求項1〜3のいずれか1項 に記載の粒状の土工資材の製造方法。
【請求項5】
上記粒状の土工資材が、埋め戻し材、埋め立て材、盛り土材、路盤材、路盤の下方の緩衝層用の緩衝材、サンドコンパクションパイル工法におけるサンドコンパクション材、または、骨材である請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状の土工資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レアアースを含有する泥を原料として用いた、土工資材(例えば、埋め戻し材等)、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レアアースは、ネオジム・鉄・ボロン磁石、LED電球、燃料電池等に用いられる原料として、最先端技術産業に不可欠な元素であり、近年、その需要も急増している。一方、レアアースの寡占的産出国であった中国が、輸出奨励政策から規制強化政策へと方針を変更するなどの事情下において、レアアースの供給不足や価格高騰が懸念されており、レアアースの新たな供給源の確保が課題となっている。
このような状況下において、太平洋の広範囲に分布しているレアアースを高含有率で含む深海の泥が、レアアースの新たな供給源として注目されている。
レアアースを高含有率で含む泥(例えば、太平洋の深海の泥)は、その資源量が膨大であること、希酸中に1〜3時間浸漬するという簡易な方法で抽出することができること、トリウムやウラン等の放射性元素をほとんど含まないこと、等の数々の利点を有している。
【0003】
一方、レアアースを含有する泥の乾燥質量中のレアアースの質量の割合は、レアアースの含有率が高いことで知られる太平洋の深海底であっても、0.3質量%以下にすぎない。このため、レアアースを含有する泥から、希酸を用いてレアアースを抽出する際に、多量の酸性の泥が発生するという問題がある。
また、この酸性の泥は、大きな水分含有率を有し、扱い難いという問題もある。
【0004】
上述の事情下において、レアアースを含む泥を処理して、埋め立て等の用途に利用可能な土工資材を得るための方法が知られている。
例えば、特許文献1に、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する酸性の残渣と、アルカリ性固化材(例えば、セメント)を混合して、固化体(例えば、埋め立て資材として利用可能なもの)を得ることを特徴とするレアアースを含有する残渣の固化処理方法が記載されている。
また、特許文献2に、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する酸性の残渣及び/又は該酸性の残渣の中和物を、コンクリートまたはモルタルの原料の一部(例えば、セメントの原料の一部)として使用して、コンクリート構造物を構築するコンクリート構造物構築工程を含むことを特徴とする、レアアースを含有する泥の処理方法が記載されている。
さらに、特許文献3に、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する酸性の残渣を含む焼成物製造用原料を加熱してなる、圧壊強度が1,000N以上の人工骨材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−120124号公報
【特許文献2】特開2015−131262号公報
【特許文献3】特開2015−123385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣は、上述のとおり、大きな水分含有率を有するため、埋め戻し材等の土工資材の原料として用いる際に、脱水して、水分含有率を低下させることが望ましい。
しかし、脱水後の残渣は、非常に粘性が高く、ハンドリング性(例えば、造粒等の作業時における取扱いの容易性および成形性)が悪いという問題がある。
また、脱水後の残渣を、他の原料を添加せずに単独で造粒し、得られた造粒物を加熱して、埋め戻し材等の土工資材として用いるための焼成物を得る場合、焼成中に造粒物が爆裂することがあり、また、好ましい性状(例えば、圧壊強度等)を有する焼成物を得るための焼成温度の幅が狭いという問題もある。
本発明の目的は、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣を用いた土工資材であって、該土工資材の製造過程において、ハンドリング性(例えば、造粒等の作業時における取扱いの容易性および成形性)が良好であり、また、焼成中に造粒物(製造過程の粒状の土工資材)が爆裂することがなく、さらには、好ましい性状を有する土工資材(焼成物)を得るための焼成温度の幅が広いため、焼成が容易である土工資材、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣と、石炭灰とを含む混合物からなる造粒物を焼結してなる粒状の土工資材によれば、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣と、石炭灰とを含む混合物からなる造粒物を焼結してなることを特徴とする粒状の土工資材。
[2] 上記[1]に記載の粒状の土工資材を製造するための方法であって、上記残渣と上記石炭灰を混合して、混合物を得る混合工程と、上記混合物を造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を1,150〜1,300℃で焼結して、上記粒状の土工資材を得る焼結工程、を含むことを特徴とする粒状の土工資材の製造方法。
[3] 上記残渣(含水比100%換算値)と上記石炭灰の合計量100質量部に対する上記石炭灰の配合量が、10〜85質量部である、上記[2]に記載の粒状の土工資材の製造方法。
[4] 上記造粒物が、3〜40mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上の割合で含むものである、上記[2]または[3]に記載の粒状の土工資材の製造方法。
[5] 上記造粒物中の水分の含有率が、15〜50質量%である、上記[2]〜[4]のいずれかに記載の粒状の土工資材の製造方法。
[6] 上記粒状の土工資材が、埋め戻し材、埋め立て材、盛り土材、路盤材、路盤の下方の緩衝層用の緩衝材、サンドコンパクションパイル工法におけるサンドコンパクション材、または、骨材である、上記[2]〜[5]のいずれかに記載の粒状の土工資材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石炭灰を用いているため、土工資材の製造過程において、ハンドリング性(例えば、造粒等の作業時における取扱いの容易性および成形性)が良好であり、所望の形状を有する土工資材を容易にかつ効率的に製造することができる。
また、本発明によれば、好ましい性状(例えば、圧壊強度等)を有する土工資材(焼成物)を得るための焼成温度の幅が広いため、製造条件に外れていないかを常時監視する必要がなく、好ましい性状を有する土工資材を確実に製造することができる。
さらに、本発明によれば、焼成中に造粒物(製造過程の土工資材)が爆裂することがなく、不良品の発生率を低く維持しつつ、土工資材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粒状の土工資材は、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣と、石炭灰とを含む混合物からなる造粒物を焼結してなるものである。
本明細書中、「焼結」とは、焼成が進んで、造粒物の圧壊強度が高まるとともに、完全な溶融に至らずに、焼成物がその形状を維持していることをいう。
本発明において、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣(以下、「残渣」と略すことがある。)とは、レアアースを含有する泥を酸(例えば、希塩酸)で処理して、レアアースを液中に抽出した後に発生する酸性の残渣である。
また、レアアースとは、周期律表の第3族のランタロイド(La(ランタン)からLu(ルテチウム))に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)を加えた17元素をいう。
【0011】
レアアースを含有する泥の一例として、深海底(例えば、海の深さとして、3,500〜6,000mの領域)に層状(例えば、海底から、深さが数10m程度までの地盤)に分布する、レアアースの含有率が大きい泥が挙げられる。
本発明において、レアアースを含有する泥(乾燥状態のもの;固形分)の中のレアアースの含有率(質量基準)は、資源であるレアアースを採掘する際の経済性の観点から、好ましくは1,000ppm以上、より好ましくは2,000ppm以上である。
【0012】
残渣の含水比(残渣の乾燥質量100質量%に対する残渣の水分の割合)は、特に限定されないが、加熱炉等の加熱手段の負荷を軽減する観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは150質量%以下、特に好ましくは100質量%以下である。
残渣の含水比を低減させる方法(方式)としては、泥をタンク等の容器に貯留して、泥の固形分を沈澱させ、その上澄みを除去する沈澱方式や、スクリューデカンター等の装置を用いる遠心分離方式や、フィルタープレス等の装置を用いる加圧脱水方式等が挙げられる。
中でも、低コストで簡易に脱水することができる点で、沈澱方式及び遠心分離方式が好ましく、沈澱方式が、より好ましい。
なお、脱水の程度は、沈澱方式、遠心分離方式、加圧脱水方式の順に大きくなる。
【0013】
本発明で用いる石炭灰の例としては、フライアッシュ(「JIS A 6201」に規定するフライアッシュI種、II種、III種、及びIV種)や、火力発電所での微粉炭の燃焼によって生じる石炭灰を分級または粉砕したもの等が挙げられる。中でも、入手容易および本発明の粒状の土工資材の強度発現性の向上の観点から、フライアッシュが好ましい。
石炭灰のブレーン比表面積は、残渣と石炭灰の混合時の作業性等の観点から、好ましくは1,000〜8,000cm/g、より好ましくは2,000〜6,000cm/g、特に好ましくは3,000〜4,500cm/gである。
【0014】
石炭灰の配合量は、混合時における残渣(含水比100%換算値)と石炭灰の合計量100質量部に対して、好ましくは10〜85質量部、より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜70質量部、さらに好ましくは20〜60質量部、特に好ましくは20〜50質量部である。
該量が10質量部以上であると、造粒をより容易に行なうことができる。また、土工資材として利用可能な粒体(造粒物)を得るための焼成温度の幅が、より広くなる。
該量が85質量部以下であると、石炭灰と混合される残渣の量が大きくなり、残渣を原料として用いて土工資材を製造するという本発明の目的を十分に達成することができる。また、土工資材として利用可能な粒体(造粒物)を得るための焼成温度を、より低くすることができ、加熱に要するエネルギーの節減の観点から、好ましい。
なお、石炭灰は、単独で造粒しようとすると、造粒性(成形性)が劣るうえに、造粒のための好ましい水量の幅が狭いという欠点がある。この点、本発明では、石炭灰と残渣を併用することによって、このような欠点が解消される。
【0015】
本発明で製造される粒状の土工資材の圧壊強度は、好ましくは1,000N以上、より好ましくは1,300N以上、さらに好ましくは1,600N以上、さらに好ましくは2,000N以上、さらに好ましくは2,400N以上、特に好ましくは2,800N以上である。
圧壊強度は、「JIS Z 8841−1993」(造粒物−強度試験方法)の「3.1 圧壊強度試験方法」に準拠して測定することができる。
粒状の土工資材は、埋め戻し材、埋め立て材、盛り土材、路盤材、路盤の下方の緩衝層用の緩衝材、サンドコンパクションパイル工法におけるサンドコンパクション材、骨材(コンクリート用の細骨材もしくは粗骨材、または、アスファルト用の骨材)等として用いることができる。
【0016】
次に、本発明の粒状の土工資材の製造方法について説明する。
本発明の粒状の土工資材の製造方法は、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣と、石炭灰を混合して、混合物を得る混合工程と、該混合物を造粒して、造粒物を得る造粒工程と、該造粒物を1,150〜1,300℃で焼結して、上記土工資材を得る焼結工程、を含む。
以下、工程毎に説明する。
[混合工程]
混合工程は、レアアースを含有する泥を酸で処理した後に発生する残渣(通常、酸性のもの)と、石炭灰を混合して、混合物を得る工程である。
残渣と石炭灰を混合するための混合手段としては、例えば、各種ミキサー(例えば、パン型ミキサー、パドルミキサー、オムニミキサー等)等が挙げられる。
なお、混合工程において、残渣と混合するための石炭灰以外の材料として、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤(酸を中和するための剤)を用いることができる。アルカリ剤を用いることによって、後工程である焼結工程において、揮発した酸による加熱設備の腐食を抑制することができる。
【0017】
[造粒工程]
造粒工程は、残渣と石炭灰を混合してなる混合物を造粒して、造粒物(ペレット)を得る工程である。
造粒物の大きさは、製造の目的である土工資材の種類(例えば、粗骨材)に応じて、適宜、定めればよい。
造粒方法としては、所望の形状及び大きさを有する造粒物を得ることができればよく、例えば、皿形造粒機や押出し成形機等を用いた造粒方法(成形方法)、型枠を用いた成型方法が挙げられる。
得られた造粒物は、次工程(焼結工程)における加熱の前に乾燥させてもよい。
【0018】
造粒物は、好ましくは、3〜40mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上(特に、70質量%以上)の割合で含むものであり、より好ましくは、7〜30mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上(特に、70質量%以上)の割合で含むものであり、特に好ましくは、10〜20mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上(特に、70質量%以上)の割合で含むものである。このような粒度分布を有することによって、好ましい性状(例えば、形状、圧壊強度等)を有する土工資材(焼成物)を容易に製造することができ、また、焼成中に造粒物(製造過程の粒状の土工資材)が爆裂することがない。
ここで、粒度とは、粒体における最大の寸法(例えば、断面が略楕円である場合、長軸の寸法)をいう。
本発明では、通常、造粒機や成形機や型枠を用いた造粒方法を採用するので、上述の好ましい粒度分布を有する造粒物は、容易に得ることができる。
造粒物の含水比(造粒物の乾燥質量100質量%に対する造粒物の水分の割合)は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは15〜75質量%、特に好ましくは18〜70質量%である。該値が10質量%以上であると、造粒時の作業性(特に、成形性)がより向上する。該値が80質量%以下であると、べたつきがより少なくなり、造粒時の作業性(特に、取り扱いの容易性)および成形性がより向上する。
【0019】
[焼結工程]
焼結工程は、造粒工程で得た造粒物を1,150〜1,300℃で焼結して、粒状の土工資材を得る工程である。
焼結のための加熱温度は、1,150〜1,300℃、好ましくは1,160〜1,280℃、さらに好ましくは1,170〜1,260℃、さらに好ましくは1,180〜1,240℃、特に好ましくは1,190〜1,220℃である。
該温度が1,150℃未満では、焼結が十分に進行しないことがあり、この場合、焼成物(粒状の土工資材)の圧壊強度が低下する。
該温度が1,300℃を超えると、溶融が過度に進行し、焼成物(粒状の土工資材)が溶融して、焼結に支障をきたすことがある。また、加熱に要するコストが増大する。
上述の加熱温度の保持時間は、好ましくは10〜60分間、より好ましくは15〜40分間、特に好ましくは20〜30分間である。該保持時間が10分間以上であると、焼結がより十分に行なわれ、得られる粒状物の圧壊荷重をより大きくすることができる。該保持時間が60分間以下であると、処理効率の点で好ましい。
【0020】
粒状の土工資材を得るための加熱手段としては、特に限定されるものではなく、連続式の手段とバッチ式の手段のいずれも用いることができる。
連続式の加熱手段としては、例えば、ロータリーキルン、トンネル炉等が挙げられる。
バッチ式の加熱手段としては、例えば、焼却炉(ガス等を燃料として用いるもの)、電気炉、マイクロ波加熱装置等が挙げられる。
中でも、処理の効率を高める観点から、ロータリーキルンを用いることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[材料]
以下の材料を使用した。
(1)レアアースを含有する泥(太平洋の水深4,000m以上の深海の泥;該泥の固形分中のレアアースの含有率:質量基準で2,000ppm以上)
(2)フライアッシュ(「JIS A6201−2008」に規定するフライアッシュII種;ブレーン比表面積:4,250cm/g)
(3)水(追加で必要な場合のみに使用;水道水)
【0022】
[実施例1]
レアアースを含有する泥を、0.1Nの塩酸に1時間浸漬し、次いで、含水比が100%になるように、遠心分離方式で脱水して、残渣を得た。
この残渣100gと、フライアッシュ100gを、合成樹脂製の透明な袋に入れた後、手で揉んで混合して、混合物を得た。
次いで、混合物を、皿型造粒機を用いて造粒し、造粒物(粒度:15mm)を得た。
得られた造粒物の含水比(造粒物の乾燥質量100質量%に対する造粒物の水分の割合)は、33質量%であった。
【0023】
この造粒物を電気炉内で経時的に温度を上昇させて加熱した。
この加熱は、10℃/分の昇温条件で、後述の目的とする温度(例えば、1,050℃)まで昇温し、その後、20分間、この目的とする温度を保持することによって行なった。
目的とする温度は、1,050〜1,400℃の範囲内で、50℃の間隔を空けて、合計8つとした。
その結果、加熱された造粒物について、以下の状態が観察された。
1,050℃では、焼結がまだ生じなかった。
1,100℃で、焼結が進行し始めた。
1,150℃で、焼結がかなり進行した。
1,200℃で、造粒物の表面に、造粒物の内部の成分の揮発によると思われる泡が生じた。
1,250℃で、1,200℃における状態をほぼ維持していた。
1,300℃で、溶融が進行し始めた。
1,350℃、1,400℃で、溶融がさらに進行した。
なお、1,400℃でも、粒体(造粒物)の形状は消滅しなかった。
【0024】
次に、1,200℃の温度で取り出した造粒物に対して、直径方向に圧壊するまで荷重を加え、圧壊強度を測定した。
圧壊強度の測定は、「JIS Z 8841−1993」(造粒物−強度試験方法)の「3.1 圧壊強度試験方法」に準拠した。
その結果、造粒物の圧壊強度の値は、2,008Nであった。
【0025】
[実施例2]
残渣100gとフライアッシュ100gの組み合わせに代えて、残渣40gとフライアッシュ160gの組み合わせを採用し、かつ、造粒物の含水比が22質量%(内訳:残渣およびフライアッシュに由来する含水比として11質量%;追加した水に由来する含水比として11質量%)となるように水を加えた以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、加熱された造粒物について、以下の状態が観察された。
1,050℃では、焼結がまだ生じなかった。
1,100℃では、焼結がまだ生じなかった。
1,150℃で、焼結が進行し始めた。
1,200℃、1,250℃で、焼結が進んだ。
1,300℃で、造粒物の表面に、造粒物の内部の成分の揮発によると思われる泡が生じた。
1,350℃、1,400℃で、溶融が進行した。
なお、1,400℃でも、粒体(造粒物)の形状は消滅しなかった。
また、1,200℃の温度で取り出した造粒物の圧壊強度の値は、3,303Nであった。
【0026】
[実施例3]
残渣100gとフライアッシュ100gの組み合わせに代えて、残渣160gとフライアッシュ40gの組み合わせを採用した以外は実施例1と同様(ただし、1,400℃の加熱温度は、省略した。)にして実験した。造粒物の含水比は、66質量%であった。
その結果、加熱された造粒物について、以下の状態が観察された。
1,050℃では、焼結がまだ生じなかった。
1,100℃で、焼結が進行し始めた。
1,150℃で、焼結が進んだ。
1,200℃で、溶融が進行し始めた。また、造粒物の表面に、造粒物の内部の成分の揮発によると思われる泡が生じた。
1,250℃、1,300℃、1,350℃で、溶融がさらに進行した。
なお、1,350℃でも、粒体(造粒物)の形状は消滅しなかった。
また、1,200℃の温度で取り出した造粒物の圧壊強度の値は、1,353Nであった。
【0027】
[比較例1]
残渣100gとフライアッシュ100gの組み合わせに代えて、残渣200gとフライアッシュ0gの組み合わせ(残渣のみ)を採用した以外は実施例1と同様にして実験した。造粒物の含水比は、100質量%であった。
その結果、加熱された造粒物について、以下の状態が観察された。
1,050℃では、焼結がまだ生じなかった。
1,100℃で、焼結した。
1,150℃で、造粒物の表面に、造粒物の内部の成分の揮発によると思われる泡が生じた。
1,200℃で、溶融が進行した。
1,250℃で、完全に溶融して、粒体(造粒物)の形状が消滅した。
なお、1,250℃で完全に溶融したため、1,300℃、1,350℃、1,400℃の各加熱温度での実験は、行なわなかった。
また、1,100℃の温度で取り出した造粒物の圧壊強度の値は、1,545Nであった。
【0028】
実施例1〜3と比較例1を比較すると、以下のことがわかる。
実施例1〜3では、焼結が進行し始めるときの温度から、粒体(造粒物)の形状が消滅する温度(実施例1〜3では、この温度に不到達)までの温度差が、200℃を超え、粒状の土工資材として利用可能な粒体(造粒物)を得るための焼成温度の幅が広いことがわかる。このため、加熱温度の制御を高精度で行なわなくても、粒状の土工資材として利用することのできない粒体(造粒物)が大量に生じるおそれがない。
一方、比較例1では、焼結が進行し始めるときの温度(1,050℃を超え、1,100℃未満の温度)から、粒体(造粒物)の形状が消滅する温度(1,200℃を超え、1,250℃以下の温度)までの温度差が、200℃未満であり、粒状の土工資材として利用可能な粒体(造粒物)を得るための焼成温度の幅が狭いことがわかる。このため、加熱温度の制御を高精度で行なわないと、粒状の土工資材として利用することのできない粒体(造粒物)が大量に生じるおそれがある。