(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0033】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として
図1及び
図2に示すレンズ体12を備えた車両用灯具10について説明する。なお、
図1は、車両用灯具10の概略構成を示す側面図である。
図2は、車両用灯具10の光源14からレンズ体12に入射した光Lの光路を示す光路図である。また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具10(レンズ体12)の前後方向、Y軸方向を車両用灯具10(レンズ体12)の左右方向、Z軸方向を車両用灯具10(レンズ体12)の上下方向として、それぞれ示すものとする。
【0034】
車両用灯具10は、
図1及び
図2に示すように、本発明を適用したレンズ体12と、レンズ体12の入射部となる入射面12aに向けて光Lを照射する光源14とを備えている。
【0035】
レンズ体12は、水平方向(X軸方向)に延びる第1基準軸AX1に沿って延びた形状の多面レンズ体である。具体的に、このレンズ体12は、水平方向に延びる第1基準軸AX1に沿って、入射面12aと、反射面12bと、反射面12bの前端部12cと、出射面12dとが、この順で配置された構成を有している。なお、レンズ体12については、例えば、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。また、レンズ体12に透明樹脂を用いた場合は、金型を用いた射出成形によってレンズ体12を形成することが可能である。
【0036】
入射面12aは、レンズ体12の後端部(後面)に位置して、この入射面12a近傍に配置される光源14(正確には、光学設計上の基準点F)からの光Lが屈折してレンズ体12の内部に入射するレンズ面(例えば、光源14に向かって凸となる自由曲面)を構成している。
【0037】
入射面12aは、少なくとも鉛直方向(Z軸方向)に関し、この入射面12a近傍に配置される光源14からの光Lが、光源14の中心(基準点F)と反射面12bの前端部12c近傍の点(出射面12d側の焦点F
12d)とを通過し、且つ、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜した第2基準軸AX2寄りに集光するように、その面形状が調整されている。
【0038】
また、入射面12aは、水平方向(Y軸方向)に関し、レンズ体12の内部に入射した光源14からの光Lが、反射面12bの前端部12cに向かって第1基準軸AX1寄りに集光するように、その面形状が構成されている。なお、入射面12aは、水平方向(Y軸方向)に関し、レンズ体12の内部に入射した光源14からの光が、第1基準軸AX1に対して平行な光となるように、その面形状が構成されていてもよい。また、入射部については、このような入射面12aに限らず、レンズ体12の後端側に入射凹部を設け、この入射凹部の内側に光源14を配置した構成とすることもできる。
【0039】
反射面12bは、入射面12aの下端縁から前方(+X軸方向)に向かって延びた平面形状を有している。反射面12bは、レンズ体12の内部に入射した光源14からの光Lのうち、この反射面12bに入射した光L1をレンズ体12の内部で前方の出射面12dに向けて内面反射(全反射)する。これにより、レンズ体12では、金属蒸着による金属反射膜を用いることなく、反射面12bを形成できるため、コストアップや反射率の低下等を防ぐことが可能である。
【0040】
また、反射面12bは、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜している。この場合、反射面12bで反射した光L1の一部が出射面12dに入射しない方向に進む光(迷光)となることを抑制しながら、反射面12bで反射した光の利用効率を高めることができる。
【0041】
反射面12bの前端部12cは、光源14からレンズ体12の内部に入射した光Lのカットオフラインを規定している。
【0042】
ここで、反射面12bの前端部12cの形状について、
図3(a)〜(d)を参照して説明する。なお、
図3(a)は、反射面12bの前端部12cの正面視形状(入射面12a側(+X軸方向)から見たときの形状)を示す模式図である。
図3(b)〜(d)は、反射面12bの前端部12cの側面視形状(側面側(+Y軸方向)から見たときの形状)の例を示す模式図である。
【0043】
反射面12bの前端部12cは、
図1、
図2及び
図3(a)に示すように、反射面12bの先端部において、レンズ体12の左右方向(Y軸方向)に延びるように形成されている。具体的に、この反射面12bの前端部12cは、左水平カットオフラインに対応した辺e1と、右水平カットオフラインに対応した辺e2と、これら左水平カットオフラインと右水平カットオフラインとの間を接続する斜めカットオフラインに対応した辺e3とを含む段差形状を有している。
【0044】
なお、
図3(a)に示す反射面12bの前端部12cの形状は、車両が右側通行の場合を例示している。一方、車両が左側通行の場合、反射面12bの前端部12cの形状は、左水平カットオフラインに対応した辺e1と右水平カットオフラインに対応した辺e2との高さを逆転した段差形状となる。また、反射面12bの前端部12cの形状については、これらの形状に限らず、水平方向に直線状に延びる水平カットオフラインに対応した辺のみからなる形状としてもよい。
【0045】
反射面12bの前端部12cの側面視形状については、
図3(b)に示すように、反射面12bの先端部から上方(+Z軸方向)に向かって直線状に延びる形状を有している。また、反射面12bの前端部12cの側面視形状については、
図3(c)に示すように、前方斜め上方に向かって直線状に延びる形状であってもよく、
図3(c)に示すように、前方斜め上方に向かって湾曲して延びる形状であってもよい。
【0046】
なお、反射面12bの前端部12cについては、上述した形状に必ずしも限定されるものではなく、カットオフラインが規定可能な範囲で、適宜変更を加えることが可能である。また、反射面12bの前端部12cについては、上述した段差形状に限らず、カットオフラインに対応した溝部によって形成することも可能である。
【0047】
出射面12dは、
図1及び
図2に示すように、レンズ体12の前端部(前面)に位置して、レンズ体12の内部に入射した光源14からの光Lのうち、出射面12dに向かって進行する光(以下、直進光という。)L2と、反射面12bで反射された後、出射面12dに向かって進行する光(以下、反射光という。)L1とをレンズ体12の外部に出射するレンズ面(例えば、前方に向かって凸となる自由曲面)を構成している。また、出射面12d側の焦点F
12dは、反射面12bの前端部12c近傍(例えば、反射面12bの前端部12cの左右方向(Y軸方向)の中心近傍)に設定されている。
【0048】
光源14には、例えば、白色発光ダイオード(LED)や白色レーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いることができる。本実施形態では、1つの白色LEDを用いている。なお、光源14の種類については、特に限定されるものではなく、上述した半導体発光素子以外の光源を用いてもよい。また、光源14の数については、1つ限らず、複数であってもよい。
【0049】
光源14は、その発光面を前方斜め下方に向けた状態、すなわち、この光源14の光軸が第2基準軸AX2に一致した状態で、レンズ体12の入射面12aの近傍(基準点Fの近傍)に配置されている。また、光源14は、この光源14の光軸が第2基準軸AX2に一致していない状態(例えば、光源14の光軸が第1基準軸AX1に平行に配置された状態)で、レンズ体12の入射面12aの近傍(基準点Fの近傍)に配置されていてもよい。
【0050】
本実施形態の車両用灯具10では、入射面12aからレンズ体12の内部に入射した光源14からの光Lのうち、反射面12bで反射された後、出射面12dに向かって進行する反射光L1と、出射面12dに向かって進行する直進光L2とが、出射面12dからレンズ体12の外部へと出射される。
【0051】
これにより、レンズ体12の前方に照射される光(以下、ロービーム(LB)光L
LOWという。)は、出射面12d側の焦点F
12d近傍に形成される光源像を反転投影して、上端縁に反射面12bの前端部12cによって規定されるカットオフラインを含む所定のロービーム(LB)用配光パターンを形成する。
【0052】
ここで、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、LB光L
LOWを投影したときの光源像を
図4に示す。なお、
図4は、仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたLB用配光パターンP
LOWを示す光度分布図である。また、仮想鉛直スクリーンは、レンズ体12の出射面12dから約25m前方に配置されている。
【0053】
LB光L
LOWによる光源像は、
図4に示す仮想鉛直スクリーンの面上において、上端縁に反射面12bの前端部12cの各辺e1〜e3に対応した各カットオフラインCL1〜CL3を含むLB用配光パターンP
LOWを形成する。
【0054】
なお、LB用配光パターンP
LOWの水平方向(Y軸方向)の拡散の程度は、入射面12aの面形状(例えば、入射面12aの水平方向(Y軸方向)の曲率)を調整することで自在に調整することが可能である。また、LB用配光パターンP
LOWの水平方向(Y軸方向)及び鉛直方向(Z軸方向)の拡散の程度は、出射面12dの面形状を調整することで自在に調整することが可能である。
【0055】
ところで、本実施形態のレンズ体12は、
図1及び
図2に示すように、反射面12bに入射する光L1の一部を透過させる導光凸部16を有している。導光凸部16は、反射面12bから下方(−Z軸方向)に突出して設けられている。導光凸部16は、レンズ体12と一体に形成することができる。また、導光凸部16は、レンズ体12と同じ材質(屈折率)又はレンズ体12よりも高い屈折率を有する材質のものをレンズ体12とは別体に形成し、反射面12bに取り付けることも可能である。
【0056】
本実施形態のレンズ体12は、導光凸部16の前面に位置するオーバーヘッド(OH)用出射面16aと、出射面12dの焦点F
12dよりも下方に位置するオーバーヘッド(OH)用入射面12eとを含む。OH用出射面16aとOH用入射面12eとは、空間Kを隔てて対向している。
【0057】
OH用出射面16aは、導光凸部16の前面により形成され、後方斜め下方に向かって直線状に延びた平面形状を有している。なお、OH用出射面16aについては、反射面12bから下方(−Z軸方向)に向かって直線状に延びた平面形状であってもよい。また、OH用出射面16aの面形状については、このような平面形状に限らず、水平方向(Y軸方向)に湾曲した曲面形状や、鉛直方向(Z軸方向)に湾曲した曲面形状、水平方向(Y軸方向)及び鉛直方向(Z軸方向)に湾曲した曲面形状とすることも可能である。
【0058】
OH用入射面12eは、反射面12bの先端部から下方(−Z軸方向)に向かって延びた平面形状を有している。また、OH用入射面12eは、出射面12d側の焦点F
12dから鉛直方向(Z軸方向)に延びる延長線V上に位置している。
【0059】
本実施形態の車両用灯具10では、反射面12bに入射する光Lのうち、一部の光(以下、透過光という。)L3が導光凸部16を透過した後、OH用出射面16aから導光凸部16の外部(空間K)へと透過光L3が出射される。そして、透過光L3は、空間Kを通過しながら、OH用入射面12eからレンズ体12の内部に入射した後、出射面12dからレンズ体12の外部へと出射される。
【0060】
これにより、レンズ体12の前方に照射される光(以下、オーバーヘッド(OH)光という。)L
OHは、オーバーヘッド(OH)用配光パターンを形成する。また、OH光L
OHは、LB光L
LOWよりも上向き(+Z軸方向)に出射面12dからレンズ体12の外部へと出射される。
【0061】
ここで、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、OH光L
OHを投影したときの光源像を
図5に示す。なお、
図5は、仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたOH用配光パターンP
OHを示す光度分布図である。
【0062】
OH光L
OHによる光源像は、
図5に示す仮想鉛直スクリーンの面上において、OH用配光パターンP
OHを形成する。また、
図5に示すOH用配光パターンP
OHは、
図4に示すLB用配光パターンP
LOWのカットオフラインCL1〜CL3よりも上方に位置することになる。
【0063】
車両用灯具10では、上述したレンズ体12の前方に照射されるLB光L
LOW及びOH光L
OHによって、LB用配光パターンP
LOW及びOH用配光パターンP
OHが合成された配光パターンを形成する。
【0064】
ここで、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、LB光L
LOW及びOH光L
OHを投影したときの光源像を
図6に示す。なお、
図6は、仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンPを示す光度分布図である。
【0065】
LB光L
LOW及びOH光L
OHによる光源像は、
図6に示す仮想鉛直スクリーンの面上において、LB用配光パターンP
LOW及びOH用配光パターンP
OHが合成(重畳)された配光パターンPを形成する。
【0066】
OH用配光パターンP
OHを形成するOH光L
OHは、LB用配光パターンP
LOWを形成するLB光L
LOWとは別に、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって配光される光である。
【0067】
したがって、本実施形態のレンズ体12では、OH用出射面16a及びOH用入射面12eを調整することによって、グレアやボケ等の発生を防ぎつつ、OH用配光パターンP
OHを自在に形成することが可能である。
【0068】
具体的には、OH用配光パターンP
OHの幅や高さ、光度、配光位置などを自由に設定することができる。また、OH用配光パターンP
OHを変更するためのパラメータとしては、例えば下記(1)〜(7)等を挙げることができる。
(1)導光凸部16の位置(焦点F
12dからOH用出射面16aまでの長さ)
(2)導光凸部16の長さ(導光凸部16の前後方向(X軸方向)における長さ)
(3)導光凸部16の幅(導光凸部16の水平方向(Y軸方向)における長さ)
(4)OH用出射面16aの角度(鉛直方向(Z軸方向)に対して為す角度)
(5)導光凸部16の高さ(OH用出射面16aの鉛直方向(Z軸方向)における長さ)
(6)OH用出射面16aの曲率(水平方向(Y軸方向)に湾曲させたときの曲率)
(7)OH用入射面12eの高さ(焦点F
12dからOH用入射面12eの下端部までの鉛直方向(Z軸方向)における距離)
【0069】
本実施形態のレンズ体12では、
図1に示すように、OH用出射面16aの鉛直方向(Z軸方向)における高さ(導光凸部16の高さ)t
1によって、OH用配光パターンP
OHの配光量(光強度)を調整し、OH用入射面12eの鉛直方向(Z軸方向)における高さ(OH用入射面12eの高さ)t
2によって、カットオフラインから上方に延びるOH用配光パターンP
OHの高さ(形状)を調整することが好ましい。
【0070】
この場合、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって、OH用配光パターンP
OHの配光量(光強度)と、OH用配光パターンP
OHの高さ(形状)とを容易に調整することができる。
【0071】
また、OH用入射面12eは、
図1及び
図2に示すように、上述した出射面12d側の焦点F
12dから鉛直方向(Z軸方向)に延びる延長線V上に位置することが好ましい。この場合、OH用入射面12eからレンズ体12の内部に入射した光L3が出射面12d側の焦点F
12dよりも下方を通過するため、LO用配光パターンP
LOWを形成するLO光L
LOWとは別に、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって、OH光L
OHの配光(光度分布)を容易に調整することができる。
【0072】
なお、OH用入射面12eは、延長線Vよりも前方(+X軸側)に位置していてもよい。この場合、OH用入射面12eからレンズ体12の内部に入射した光L3は、出射面12d側の焦点F
12dよりも下方を通過するが、延長線V上にOH用入射面12eが位置する場合よりも、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによるOH光L
OHの配光調整が複雑となる。
【0073】
一方、延長線Vよりも後方(−X軸側)にOH用入射面12eが位置する場合、OH用入射面12eからレンズ体12の内部に入射した光L3の一部が出射面12d側の焦点F
12d又は焦点F
12dよりも上方(+Z軸方向)を通過する場合が考えられる。この場合、LB用配光パターンP
LOWを形成するLB光L
LOWの配光(光度分布)に影響を与える可能性があるため、好ましくない。
【0074】
なお、上記レンズ体12を構成する面のうち、入射面12aの上端縁と出射面12dの上端縁とを接続する面12fと、OH用入射面12eの下端縁と出射面12dの下端縁とを接続する面12gについては、特に説明していないが、これらの面12f,12gについては、上述したレンズ体12の内部を通過する光L1〜L4に悪影響(例えば、遮蔽するなど。)を与えない範囲で自由に設計することが可能である。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として
図7及び
図8に示すレンズ体12Aを備えた車両用灯具10Aについて説明する。なお、
図7は、車両用灯具10Aの概略構成を示す側面図である。
図8は、車両用灯具10Aの光源14からレンズ体12Aに入射した光Lの光路を示す光路図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具10(レンズ体12)と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0076】
車両用灯具10は、
図7及び
図8に示すように、本発明を適用したレンズ体12Aと、レンズ体12Aの入射面12aに向けて光Lを照射する光源14とを備えている。すなわち、この車両用灯具10は、上記車両用灯具10が備えるレンズ体12の代わりに、レンズ体12Aを備えた構成である。
【0077】
レンズ体12Aは、第1入射面12a、反射面12b及び第1出射面12A1aを含む第1レンズ部12A1と、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2bを含む第2レンズ部12A2とを有している。また、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とは、連結部12A3によって連結されている。
【0078】
レンズ体12Aは、水平方向(X軸方向)に延びる第1基準軸AX1に沿って延びた形状の多面レンズ体である。具体的に、このレンズ体12は、水平方向に延びる第1基準軸AX1に沿って、第1入射面12aと、反射面12bと、第1出射面12A1aと、第2入射面12A2aと、第2出射面12A2bとが、この順で配置された構成を有している。また、第1出射面12A1aと第2入射面12A2aとは、第1レンズ部12A1、第2レンズ部12A2及び連結部12A3で囲まれた空間Sを挟んで対向している。
【0079】
レンズ体12Aを構成する面のうち、第1入射面12a、反射面12b及び反射面12bの前端部12cは、上記レンズ体12の入射面12a、反射面12b及び反射面12bの前端部12cに相当する面である。一方、レンズ体12Aを構成する面のうち、第1出射面12A1a、第2入射面12A2aは、上記レンズ体12とは異なった面を構成している。これら第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2bの形状を
図9(a),(b)に示す。
【0080】
第1出射面12A1aは、第1レンズ部12A1の前端部(前面)に位置して、第1方向となる水平方向(Y軸方向)に関し、この第1出射面12A1aから出射される光L4を集光させるように、その面形状が調整されている。具体的に、この第1出射面12A1aは、
図9(a)に示すように、その円柱軸が鉛直方向(Z軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面として構成されている。また、第1出射面12A1aの焦線は、反射面12bの前端部12c近傍において鉛直方向(Z軸方向)に延びている。
【0081】
第2入射面12A2aは、第2レンズ部12A2の後端部(後面)に位置して、第1出射面12A1aから出射した光L4が入射する面として、平面を構成している。なお、第2入射面12A2aの形状については、このような平面に限らず、曲面(レンズ面)とすることも可能である。
【0082】
第2出射面12A2bは、上記レンズ体12の出射面12dに相当する面であり、第2レンズ部12A2の前端部(前面)に位置して、第2方向となる鉛直方向(Z軸方向)に関し、この第2出射面12A2bから出射される光L4を集光させるように、その面形状が調整されている。具体的に、この第2出射面12A2aは、
図9(a)に示すように、その円柱軸が水平方向(Y軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面として構成されている。また、第2出射面12A2bの焦線は、反射面12bの前端部12c近傍において水平方向(Y軸方向)に延びている。
【0083】
また、
図7及び
図8に示すように、第1出射面12A1a及び第2レンズ部12A2(第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)からなる合成レンズ12A4の合成焦点F
12A4(上記出射面12d側の焦点F
12dに相当する。)は、反射面12bの前端部12c近傍(例えば、反射面12bの前端部12cの左右方向の中心近傍)に設定されている。
【0084】
連結部12A3は、空間Sを挟んで第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2との間の上部を連結している。レンズ体12Aについては、上記レンズ体12と同様の材料を用いて、金型を用いた射出成形によって形成することが可能である。
【0085】
ここで、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aには、レンズ体12Aの成形後に金型からレンズ体12Aを抜き取る方向(+Z軸方向)に合わせて、それぞれ抜き角(抜き勾配とも言う。)α,βが設定されている。抜き角α,βは、概ね2°以上に設定することが望ましい。これにより、レンズ体12Aは、成形時の型抜きが可能となり、一度の型抜きで(スライドを使用することなく)安価に製造することができる。
【0086】
なお、レンズ体12Aでは、上述した抜き角α,βの設定によって、第2出射面12A2bから出射される光L4の向きが第1基準軸AX1に対して斜め上向きとなるが、この光L4がグレアの原因とならないように(具体的には、第1基準軸AX1に対して平行となるように)、第2出射面12A2bの面形状が調整されている。
【0087】
ところで、本実施形態のレンズ体12Aは、上記レンズ体12と同様に、反射面12bに入射する光L1の一部を透過させる導光凸部16を有している。また、レンズ体12Aは、導光凸部16の前面に位置するOH用出射面16aと、合成焦点F
12A4よりも下方に位置するOH用入射面12eとを含む。
【0088】
以上のような構成を有する車両用灯具10Aでは、上記車両用灯具10と同様に、入射面12aからレンズ体12Aの内部に入射した光源14からの光Lのうち、反射面12bで反射された後、第1出射面12A1aに向かって進行する光(反射光)L1と、第1出射面12A1aに向かって進行する光(直進光)L2とが、上記光L4として第1出射面12A1aから第1レンズ部12A1の外部(空間S)へと出射される。そして、この光L4は、空間Sを通過しながら、第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2の内部に入射した後、第2出射面12A2bから第2レンズ部12A2の外部へと出射される。
【0089】
これにより、レンズ体12Aの前方に照射される光(LB光)L
LOWは、合成焦点F
12A4近傍に形成される光源像を反転投影して、上端縁に反射面12bの前端部12cによって規定されるカットオフラインを含む所定のロービーム(LB)用配光パターン(図示せず。)を形成する。
【0090】
また、本実施形態の車両用灯具10Aでは、反射面12bに入射する光Lのうち、一部の光(透過光)L3が導光凸部16を透過した後、OH用出射面16aから導光凸部16の外部(空間K)へと透過光L3が出射される。そして、透過光L3は、空間Kを通過しながら、OH用入射面12eからレンズ体12Aの内部に入射した後、第1出射面12A1aから第1レンズ部12A1の外部(空間S)へと出射される。そして、この透過光L3は、空間Sを通過しながら、第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2の内部に入射した後、第2出射面12A2bから第2レンズ部12A2の外部へと出射される。
【0091】
これにより、レンズ体12Aの前方に照射される光(OH光)L
OHは、オーバーヘッド(OH)用配光パターン(図示せず。)を形成する。
【0092】
OH用配光パターンを形成するOH光L
OHは、LB用配光パターンを形成するLB光L
LOWとは別に、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって配光される光である。
【0093】
したがって、本実施形態のレンズ体12Aでは、上記レンズ体12と同様に、OH用出射面16a及びOH用入射面12eを調整することによって、グレアやボケ等の発生を防ぎつつ、OH用配光パターンを自在に形成することが可能である。具体的には、OH用配光パターンの幅や高さ、光度、配光位置などを自由に設定することができる。
【0094】
また、本実施形態のレンズ体12Aでは、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とのうち、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aが主に水平方向(Y軸方向)に集光する機能を有し、第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bが主に鉛直方向(Z軸方向)に集光する機能を有することで、第1出射面12A1aと第2出射面12A2bとで集光機能を分解しながら、水平方向及び鉛直方向に集光した所定の配光パターンを形成することができる。
【0095】
また、本実施形態のレンズ体12Aでは、上記レンズ体12と同様に、OH用出射面16aの鉛直方向(Z軸方向)における高さ(導光凸部16の高さ)によって、OH用配光パターンの配光量(光強度)を調整し、OH用入射面12eの鉛直方向(Z軸方向)における高さ(OH用入射面12eの高さ)によって、カットオフラインから上方に延びるOH用配光パターンの高さ(形状)を調整することが好ましい。
【0096】
この場合、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって、OH用配光パターンの配光量(光強度)と、OH用配光パターンの高さ(形状)とを容易に調整することができる。
【0097】
また、本実施形態のレンズ体12Aでは、上記レンズ体12と同様に、上述した合成焦点F
12A4から鉛直方向(Z軸方向)に延びる延長線(図示せず。)上にOH用入射面12eが位置することが好ましい。この場合、OH用入射面12eから第1レンズ部12A1の内部に入射した光L3が合成焦点F
12A4よりも下方を通過するため、LO用配光パターンを形成するLO光L
LOWとは別に、OH用出射面16a及びOH用入射面12eによって、OH光L
OHの配光(光度分布)を容易に調整することができる。
【0098】
なお、上記レンズ体12Aでは、上記
図9(a)に示すように、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aが水平方向(Y軸方向)に集光する機能を有し、第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bが鉛直方向(Z軸方向)に集光する機能を有した構成となっているが、それとは逆の構成とすることも可能である。すなわち、上記レンズ体12Aでは、
図9(b)に示すように、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aが鉛直方向(Z軸方向)に集光する機能(円柱軸が水平方向(Y軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面)を有し、第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bが水平方向(Y軸方向)に集光する機能(円柱軸が鉛直方向(Z軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面)を有した構成とすることが可能である。
【0099】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として
図10(a),(b)に示すレンズ結合体22を備えた車両用灯具20について説明する。なお、
図10(a)は、レンズ結合体22を光源14側から見た正面図である。
図10(a)は、車両用灯具20の構成を示す上面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具10(レンズ体12)と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0100】
車両用灯具20は、
図10(a),(b)に示すように、本発明を適用したレンズ結合体22と、レンズ結合体22を構成する複数の上記レンズ体12に対して、各々の入射面12aに向けて光Lを照射する複数の光源14とを備えている。
【0101】
すなわち、この車両用灯具20は、複数の車両用灯具20(複数のレンズ体12A)を水平方向(Y軸方向)に一列に並べて配置した構成である。レンズ結合体22は、上記レンズ体12が複数並んだ状態で、各々の出射面12dが結合されることによって、水平方向(Y軸方向)にライン状に延びる連続出射面12Dを有している。
【0102】
本実施形態の車両用灯具20では、このような水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ結合体22を備えることで、そのデザイン性を向上させることが可能である。
【0103】
なお、レンズ結合体22については、複数のレンズ体12を一体に成形したものに限らず、複数のレンズ体12を別体に成形した後に、これらをレンズホルダ等の保持部材に保持することで、一体の構成とすることも可能である。
【0104】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として
図11(a),(b)に示すレンズ結合体22Aを備えた車両用灯具20Aについて説明する。なお、
図11(a)は、レンズ結合体22Aを光源14側から見た正面図である。
図11(a)は、車両用灯具20Aの構成を示す上面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具10A(レンズ体12A)と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0105】
車両用灯具20Aは、
図11(a),(b)に示すように、本発明を適用したレンズ結合体22Aと、レンズ結合体22Aを構成する複数の上記レンズ体12Aに対して、各々の第1入射面12aに向けて光Lを照射する複数の光源14とを備えている。
【0106】
すなわち、この車両用灯具20Aは、複数の車両用灯具10A(複数のレンズ体12A)を水平方向(Y軸方向)に一列に並べて配置した構成である。レンズ結合体22Aは、上記レンズ体12Aが複数並んだ状態で、各々の第2出射面12A2bが結合されることによって、水平方向(Y軸方向)にライン状に延びる連続出射面12A2Bを有している。
【0107】
本実施形態の車両用灯具20Aでは、このような水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ結合体22Aを備えることで、そのデザイン性を向上させることが可能である。
【0108】
なお、レンズ結合体22Aについては、複数のレンズ体12Aを一体に成形したものに限らず、複数のレンズ体12Aを別体に成形した後に、これらをレンズホルダ等の保持部材に保持することで、一体の構成とすることも可能である。
【0109】
なお、本発明は、上記第1〜第4の実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記レンズ体12では、上述した1つの導光凸部16が配置された構成となっているが、複数(本例では2つ)の導光凸部16が配置された構成とすることも可能である。
【0110】
この場合、複数の導光凸部16によって複数のOH光を形成することができる。そして、これら複数のOH光によって、グレアやボケ等の発生を防ぎつつ、OH用配光パターンを自在に形成することが可能である。
【0111】
なお、上記レンズ体12Aにおいても、上述した1つの導光凸部16が配置された構成に限らず、複数の導光凸部16が配置された構成とすることが可能である。また、これら複数の導光凸部16が配置されたレンズ体12,12Aを結合することで、上記レンズ結合体22,22Aとすることも可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0113】
(第1の実施例)
第1の実施例では、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、OH光L
OHを投影したときの光源像について、上記パラメータ(1)〜(5)のうち、(3)「導光凸部の幅」を変更したときの光源像を
図12(a)〜(c)に示す。なお、
図12(a)〜(c)は、「導光凸部16の幅」を変更したときの仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたOH用配光パターンP
OHを示す光度分布図である。また、
図12(a)〜(c)中に示す(1)〜(5)の数値は、上記パラメータ(1)〜(5)の各寸法(相対値)を表す。
【0114】
図12(a)〜(c)に示すように、「導光凸部16の幅」を変更することによって、主にOH用配光パターンP
OHの幅方向(Y軸方向)における光度分布を変更することができる。
【0115】
(第2の実施例)
第2の実施例では、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、OH光L
OHを投影したときの光源像について、上記パラメータ(1)〜(5)のうち、(4)「OH用出射面16aの角度」を変更したときの光源像を
図13(a)〜(c)に示す。なお、
図13(a)〜(c)は、「OH用出射面16aの角度」を変更したときの仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたOH用配光パターンP
OHを示す光度分布図である。また、
図13(a)〜(c)中に示す(1)〜(5)の数値は、上記パラメータ(1)〜(5)の各寸法(相対値)を表す。
【0116】
図13(a)〜(c)に示すように、「OH用出射面16aの角度」を変更することによって、主にOH用配光パターンP
OHの高さ方向(Z軸方向)における光度分布を変更することができる。
【0117】
(第3の実施例)
第3の実施例では、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、OH光L
OHを投影したときの光源像について、上記パラメータ(1)〜(7)のうち、(6)「OH用出射面16aの曲率」を変更したときの光源像を
図14(a),(b)に示す。なお、
図14(a),(b)は、「OH用出射面16aの曲率」を変更したときの仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたOH用配光パターンP
OHを示す光度分布図である。また、
図14(a),(b)中に示す(1)〜(7)の数値は、上記パラメータ(1)〜(7)の各寸法(相対値)を表す。また、(6)の数値が「なし」のときは、OH用出射面16aが平面であることを表す。
【0118】
図14(a),(b)に示すように、「OH用出射面16aの曲率」を変更することによって、主にOH用配光パターンP
OHの幅方向(Y軸方向)における光度分布を変更することができる。
【0119】
(第4の実施例)
第4の実施例では、シミュレーションによりレンズ体12に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、OH光L
OHを投影したときの光源像について、上記パラメータ(1)〜(7)のうち、(7)「OH用入射面12eの高さ」を変更したときの光源像を
図15(a),(b)に示す。なお、
図15(a),(b)は、「OH用入射面12eの高さ」を変更したときの仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたOH用配光パターンP
OHを示す光度分布図である。また、
図15(a),(b)中に示す(1)〜(7)の数値は、上記パラメータ(1)〜(7)の各寸法(相対値)を表す。
【0120】
図15(a),(b)に示すように、「OH用入射面12eの高さ」を変更することによって、主にOH用配光パターンP
OHの高さ方向(Z軸方向)における光度分布を変更することができる。