(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
本実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、ポータブルプリンタ1および充電台2の外観を示す斜視図である。
図2は、ポータブルプリンタ1および充電台2の構成を示すブロック図である。
【0009】
ポータブルプリンタ(以下、単にプリンタと呼称する)1は、携帯容易な小型のプリンタである。プリンタ1は電子機器の一例であり、充電台2は送電機器の一例である。充電台2は、プリンタ1に電力を送電する。プリンタ1は、充電台2が送電した電力を受電し、該電力によりバッテリー128を充電する。
【0010】
充電台2は、
図1に示すように、本体21と、該本体21に給電するための電源コード22とを備えている。本体21内には、
図2に示すように、送電デバイス23を備えている。送電デバイス23は、プリンタ1へ送電する。充電台2からプリンタ1への送受電は、接触端子を介さずに行われる。つまり、プリンタ1は、いわゆる非接触充電を行う。当該充電台2からプリンタ1への非接触給電には、公知の技術(例えば電磁誘導方式や磁界共鳴方式などがある)を用いる。
【0011】
プリンタ1は、
図1に示すように、本体部11と蓋部12とで構成される筐体10を備えている。本体部11は、一部が開口とされた箱型の容器である。蓋部12は、一端部を本体部11に回動自在に取り付けられ、回動に従って本体部11の開口を開閉する。蓋部12が本体部11の開口を閉じた状態での蓋部12の回動端と本体部11との間が、発行口10aとされる。
【0012】
また、プリンタ1は、
図2に示すように、筐体10内に、メイン基板101およびオプション基板102を備えている。
【0013】
メイン基板101には、CPU111、FROM112、RAM113、表示制御回路121、モータ制御回路122、ヘッド制御回路123、I/Oポート124、通信I/F125、電源制御部126およびDCジャック127が、設けられている。バッテリー128は、電源制御部126に接続される。
【0014】
オプション基板102には、受電デバイス131、A/Dコンバータ132およびサーミスタ133が、設けられている。
【0015】
FROM(Flash ROM(Read Only Memory))112は、CPU111が実行する各種プログラムを記憶する。RAM(Random Access Memory)113は、可変データを書き換え自在に記憶してワークエリアとして使用される。
【0016】
CPU(Central Processing Unit)111は、FROM112が記憶するプログラムをRAM113に展開して実行することにより、各種モジュールとして機能して、プリンタ1を構成する各部を統括的に制御する。
【0017】
表示制御回路121は、CPU111の制御に従って、LCD(Liquid Crystal Display)141を制御する。LCD141は、本体部11の外面に表示面を向けて設けられ、文字や画像を表示する表示部の一例である。
【0018】
モータ制御回路122は、ステッピングモータ142を制御する。ヘッド制御回路123は、サーマルヘッド143を制御する。ステッピングモータ142は、プラテンローラ(不図示)を回転させる。サーマルヘッド143およびプラテンローラは、用紙に印字を行う印字部を構成する。プラテンローラは、サーマルヘッド143との間に、印字対象の用紙を挟み、回転することによって用紙を搬送する。サーマルヘッド143は、複数個の発熱体(不図示)を備え、発熱体で加熱することにより用紙に印字する。
【0019】
サーマルヘッド143は、本体部11に設けられていて、プラテンローラは、蓋部12に設けられている。蓋部12が本体部11の開口を開放する位置にあるとき、プラテンローラはサーマルヘッド143から離れて位置する。蓋部12が本体部11の開口を閉じる位置にあるとき、プラテンローラはサーマルヘッド143に接する。
【0020】
I/Oポート124は、キー151から出力をCPU111に入力し、CPU111からの制御信号をLED152に伝達する。キー151およびLED152は、本体部11の外面に設けられている。キー151は、プリンタ1の使用者からの操作入力を受け付ける操作部の一例である。LED(Light Emitting Diode)152は、プリンタ1の使用者に対して、プリンタ1のステータスなどの各種情報を報知する報知部の一例である。
【0021】
また、I/Oポート124は、例えば用紙検知センサ161、ヘッド開閉センサ162およびヘッド温度センサ163などの各種検知部からの出力を、CPU111に伝達する。用紙検知センサ161は、サーマルヘッド143とプラテンローラとの間の用紙を検知する。ヘッド開閉センサ162は、サーマルヘッド143とプラテンローラとが接していること、つまり本体部11の開口を蓋部12が閉じていることを検知する。ヘッド温度センサ163は、サーマルヘッド143の温度を検知する。
【0022】
通信I/F125は、NFC(Near Field Communication)対応装置と、近距離無線通信を行う通知部である。本実施形態のプリンタ1は、通信I/F125を介して、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)装置やスマートフォン、PC(Personal Computer)などの外部装置(不図示)と通信する。通信I/F125は、プリンタ1のステータスを外部装置に連絡し、また、プリンタ1で印字する印字データを外部装置から受信する。
【0023】
電源制御部126は、メイン基板101の各部が使う電力の取得元を、状況により選択し、切り替える。電力の取得元としては、ACアダプタ103からDCジャック127を介して受ける電力と、バッテリー128とがある。プリンタ1は、電源制御部126を経由して給電される電力により稼働する。
【0024】
バッテリー128は、受電デバイス131から受ける電力により充電される。バッテリー(充電池、蓄電池、二次電池)128は、充電により電気を蓄えることが可能な電池であって、例えば、リチウムイオン電池などである。
【0025】
オプション基板102は、メイン基板101から給電を受けない。受電デバイス131は、受電部の一例であって、例えば、コイル(またはアンテナ)や、整流器などを含む。受電デバイス131は、充電台2の送電デバイス23から送電される電力を非接触で受電し、当該電力でバッテリー128を充電する。
【0026】
サーミスタ133は、受電デバイス131から給電を受け、温度に応じて出力を変化させる。サーミスタ133は、自装置の温度を測定する測温部の一例である。サーミスタ133は、発熱を検知しやすくするため、受電デバイス131やバッテリー128の近傍に設けられる。
【0027】
A/Dコンバータ132は、サーミスタ133の出力(アナログ値)を、デジタル値に変換する。サーミスタ133の出力は、A/Dコンバータ132、受電デバイス131、バッテリー128、電源制御部126、と経路をたどって、CPU111へと伝達される。
【0028】
図3は制御部110が備えるモジュールを示すブロック図である。CPU111、FROM112およびRAM113は、制御部110を構成する。制御部110は、充電制御部1101を備えている。充電制御部1101は、CPU111がFROM112に記憶されたプログラムを実行することによって生成されるモジュールである。
【0029】
充電制御部1101として機能するときの制御部110は、
図4−1および
図4−2のフローチャートに流れを示す処理を行う。当該処理は、充電制御処理である。
【0030】
この充電制御処理には、初期値α[℃]、最新値β[℃]、前回値γ[℃]の3種類の変数を用いる。いずれの変数も、温度の測定値(測温値)としてサーミスタ133の出力から算出した値を記憶する。初期値αは、充電開始当初の測温値を記憶する。最新値βは、充電処理中の測温値を記憶する。前回値γは、最新値βを更新する直前の値を記憶する、退避(保存)用の変数である。最新値βは、充電制御処理中に随時更新され、該最新値βの更新に先立ち、更新前の最新値βの値によって前回値γが更新される。
【0031】
充電制御処理において、まず、制御部110は、充電を一定時間行う(ステップS1)。つまり、制御部110は、受電デバイス131を稼動させる。受電デバイス131は、送電デバイス23から送電される電力を受電し、バッテリー128の充電およびサーミスタ133への給電を行う。
【0032】
上述の「一定時間」とは、サーミスタ133が適切な出力をCPU111に伝達するのに必要十分な程度の時間である。制御部110は、充電開始から一定時間経過後、サーミスタ133の出力から、測温値を算出して、初期値αに記憶させる(ステップS2)。この時点での最新値βとすべき値は初期値αの値であるので、制御部110は、ステップS2に続いて、初期値αによって最新値βを更新(上書き)する。
【0033】
次に、制御部110は、初期値αが、基準として設定した温度(第1閾値:例えば60℃)以下であるか判断する(ステップS3)。初期値αが第1閾値以下であれば、処理を継続する。ここで、第1閾値は、充電を行うには温度が高過ぎるとして充電続行を見合わせるのが相応しい温度である。
【0034】
次に、制御部110は、最新温度の測定(ステップS5)に先立ち、前回の測定値を保存する(ステップS4)。つまり、最新値βに記憶されている値によって、前回値γを更新する。
【0035】
続いて、制御部110は、サーミスタ133の出力から、測温値を算出して、最新値βを更新する(ステップS5)。
【0036】
この後、制御部110は、充電が完了したかモニタし(ステップS6)、充電が完了したら(ステップS6のYes)、充電を終了する。
【0037】
ステップS6において、制御部110は、充電が完了するまでの間(ステップS6のNo)、所定のタイミングで充電が完了したかモニタを繰り返す。モニタ時、充電が完了していない場合(ステップS6のNo)、制御部110は、ステップS11へ処理を進める。
【0038】
ステップS11において、制御部110は、最新値β[℃]が60℃(第1閾値)以下であるか判断する。最新値βが60℃以下の場合(ステップS11のYes)、制御部110はさらに、最新値β測温時点での初期値αからの温度上昇の幅(上昇幅)が30℃以内であるか判断する(ステップS12)。ここで、上記30℃は、初期値αからの温度上昇を許容する範囲の閾値(第2閾値)の一例である。
【0039】
ステップS12において、βとαとの差が30℃以下の場合(ステップS12のYes)、制御部110はさらに、最新値β測定時点での前回値γからの温度上昇の幅が2℃以下であるか判断する(ステップS13)。ここで、上記2℃は、前回値γからの温度上昇を許容する範囲の閾値(第3閾値)の一例である。
【0040】
ステップS13において、βとγとの差が2℃以下の場合(ステップS13のYes)、制御部110は、処理をステップS4へ戻す。
【0041】
ステップS13において、最新値β測定時点での前回値γからの温度上昇の幅が2℃(第3閾値)よりも大きい場合(ステップS13のNo)、急激な温度上昇が懸念されるため、制御部110は、ユーザに注意を促す通知を行う(ステップS14)。ステップS14では、制御部110は、具体的には、急激な温度上昇が懸念される状態にある旨を、LCD141に表示させるとともに、通信I/F125を介して所定の外部装置へ連絡する。また、表示メッセージが、例えば、充電効率がよくないことを知らせる内容や、受電機器であるプリンタ1の充電台2に対する位置の変更を促す内容などであってもよい。
【0042】
ステップS11において最新値βが60℃を超えた場合(ステップS11のNo)、またはステップS12において最新値β測温時点での初期値αからの温度上昇の幅が30℃を超えた場合(ステップS12のNo)、制御部110は、ステップS21へ処理を進める。ステップS21において、制御部110は、充電を一時停止させる。具体的には、受電デバイス131に、稼働停止を指示する。受電デバイス131の停止に伴い、発熱が停止するので、温度は徐々に低下してゆく。
【0043】
次に、制御部110は、充電停止中であることを示すメッセージを表示する(ステップS22)。該メッセージ表示は、LCD141および通信I/Fにより通信可能な外部装置の両方またはいずれかにより行う。また、LED152によって当該充電停止中のステータスを表示させもよい。
【0044】
制御部110は、充電停止から所定時間待機するごとに(ステップS23)、一定時間充電を行って(ステップS24)サーミスタ133の出力を得て、最新値βを算出する(ステップS25)。
【0045】
次のステップS26において、制御部110は、温度が十分に低下したか判断する(ステップS26)。この判断は、最新値βが、二つの条件を満たすかによって行う。一つ目の条件は、最新値βが第1閾値以下であることである。二つ目の条件は、最新値βと初期値αとの差が第4閾値以下であることである。ここで、上記第4閾値は、例えば、第2閾値(30℃)より低い25℃である。二つの条件が満たされれば(ステップS26のYes)、制御部110は、温度が十分下がったとし、充電を再開する(ステップS27)。
【0046】
充電再開に至ると、制御部110は、ステップS22において行った停止中メッセージ表示を充電中メッセージ表示に切り替え(ステップS28)、処理をステップS4へ戻す。
【0047】
ステップS26の判断時に、温度が十分に低下していなかった場合(ステップS26のNo)、制御部110は、処理をステップS23に戻し、さらに待機する。
【0048】
ステップS3において、初期値αが第1閾値(60℃)よりも高かった場合(ステップS3のNo)、制御部110は、充電を停止する(ステップS31)。続いて、制御部110は、ステップS22同様、停止中メッセージを表示する(ステップS32)。そして、制御部110は、所定時間待機(ステップS33)の後、処理をステップS1へ戻す。
【0049】
このように、本実施形態によれば、初期温度や充電中温度、さらに温度上昇具合を監視し、異常があれば、充電を一時停止する。さらに、本実施形態によれば、充電停止中の温度低下をモニタして、状態がよくなると自動的に充電を再開する。これにより、発熱により充電が異常終了したままになることがなく、適切に充電を完了させることができる。
【0050】
また、ポータブルプリンタ1は、バッテリー128で稼働させるので、印字等のプリンタとしての主たる動作以外でバッテリー128の電力が消費されるのは、好ましくない。本実施形態によれば、受電デバイス131へバッテリー128から給電するルートを設けない構成としたので、サーミスタ133の稼働にバッテリー128が保持する電力を消費しない。よって、サーミスタ133によってバッテリー128の持ちを損なう不都合がない。
【0051】
さらに、本実施形態では、サーミスタ133により測温するのは充電中に限られることに着眼し、受電デバイス131からの給電でサーミスタ133を稼働させるように構成した。これにより、受電デバイス131へバッテリー128から給電しなくとも不都合を生じさせず、サーミスタ133を稼働させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1閾値を例えば60℃とし、第2閾値を例えば30℃とし、第3閾値を例えば2℃とし、第4閾値を例えば25℃としているが、実施にあたってこれらの温度が適切な値に変更されて構わないことは言うまでもない。
【0053】
また、本実施形態では、温度判断に伴う処理として、充電停止と、ユーザに注意を促す通知を行うことと、を例示している。そして、温度判断として、初期温度α、最新温度β、βのαからの上昇具合、および前回温度γからのβの上昇具合を観測している。実施にあたっては、温度判断と、温度判断に伴う処理との組み合わせは、本実施形態のものと同一でなくてもよく、いずれの組み合わせであっても構わない。つまり、例えば、最新温度βが第1閾値を超えたことを条件として、ユーザに注意を促す通知を行うようにしてもよい。
【0054】
本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、FROM112等に予め組み込まれて提供される。
【0055】
本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0056】
さらに、本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0057】
本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、上述した各部(例えば充電制御部1101)を含むモジュール構成となっている。CPU111(プロセッサ)は、上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、上記各部を主記憶装置上にロードする。これにより、各種モジュール(例えば充電制御部1101)が、主記憶装置上に生成される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。