(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記培養液循環供給手段の前記第2の液溜部の培養液流出口が、前記栽培槽の側板部の下部に設けられ、前記培養液流出口の槽内側の端部にエルボ部材が回動可能に接続され、前記エルボ部材は、垂直方向上方に立ち上がるときの上端開口が前記栽培トレイの下面に近い高さレベルとなることを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培装置。
前記複数の床上げブロックが、培養液より比重は大きいがその差が小さな材料により形成され、培養液の浮力で移動容易となる可能性のある構成であるときは、前記複数の床上げブロックおよび前記床上げブロックが前記栽培槽の底板部から離れないようにする床上げブロック移動防止手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つの請求項に記載の水耕栽培装置。
前記栽培槽の上端開口部のうち、前記複数の栽培トレイで閉じられない両側の上端開口部分を閉じる第1の蓋部および第2の蓋部を更に有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つの請求項に記載の水耕栽培装置。
前記第1の蓋部および第2の蓋部は、それぞれの上面部の両側部分より立ち上がるように設けられた一対の栽培トレイ載置用リブを有することを特徴とする請求項5に記載の水耕栽培装置。
上面が開放した直方体形状の栽培槽内に、前記栽培槽の両側の側板部および底板部の三方に密着する直方体状の複数の床上げブロックを、槽内の両端部を避けて、敷き詰めた状態に収容し、前記槽内の両端部に画成されるギャップ空間を培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とし、前記複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔を有する複数の栽培トレイの各両端部を前記栽培槽の両側面の上端部に載置し、ポンプと配管を含む培養液循環供給手段により前記第2の液溜部に貯留する培養液を前記第1の液溜部に循環供給し、前記複数の床上げブロックの上面部に形成された前記第1の液溜部から前記第2の液溜部に向かい培養液の薄膜流下が可能な緩い傾斜を有する複数の培養液流し溝部に前記培養液を薄膜状に流れさせ、前記定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を前記培養液流し溝部に受け止めてNFT薄膜水耕を行うことを特徴とする水耕栽培方法。
前記培養液循環供給手段の前記第2の液溜部の培養液流出口を、前記栽培槽の側板部の下部に設け、前記培養液流出口の槽内側の端部にエルボ部材を回動可能に接続し、幼菜栽培植物の栽培に際し、前記NFT薄膜水耕を行う前段階としてDFT湛液水耕を行うときは、前記エルボ部材を上方に立ち上げることにより前記エルボ部材の上端開口を前記栽培トレイの下面に近い高さレベルとすることを特徴とする請求項7に記載の水耕栽培方法。
上面が開放した直方体形状の栽培槽内に、長手方向の両端部を除いて、前記栽培槽の両側の側板部および底板部の三方に密着する直方体状の複数の床上げブロックを敷き詰めて収容し、前記長手方向に両端部に画成されるギャップ空間を培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とし、前記複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔を有する複数の栽培トレイの各両端部を前記栽培槽の両側面の上端部に載置し、前記複数の床上げブロックの各上面部の高さレベルが前記第1の液溜部側が高く前記第2の液溜部が低い階段状になるように設定し、かつ前記各ブロック上面部の前記第2の液溜部側の端縁に数mmの高さの堰を設け、ポンプと配管を含む培養液循環供給手段により前記第2の液溜部に貯留する培養液を前記第1の液溜部に循環供給し、前記各ブロック上面部に培養液の薄膜を形成するとともに、前記定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を前記各ブロック上面部で受け止めてNFT薄膜水耕を行うことを特徴とする水耕栽培方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された水耕栽培装置では、以下の問題点がある。(1)栽培槽内に各々独立した複数の樋状部材20を装備するので、構成部材の点数が多く、組立が容易でない。(2)栽培植物が変更され、最適な定植間隔が変更になる場合、全体を一旦分解して再組み立てすることが必要であった。(3)再組み立てにおいては、多岐状に組み付けた培養液供給管を分解し、または廃棄して、変更後の最適な定植間隔となるように、培養液供給管を樋状部材20の数に対応した多岐状に組み立てる必要があり、組み立て作業が面倒で多くの時間を要していた。(4)培養液を各々独立した複数の樋状部材20の個々に供給しなければならず、その結果、培養液供給管が樋状部材20の数だけ多岐状に複雑に還流の不均一や局所的枯渇を招きやすいものであった。
【0009】
一方、育苗後、定植直後の幼齢期の栽培植物は、まだ根が未成熟なため、NFT薄膜水耕による育成には耐えられず、初期の一定期間については、NFT薄膜水耕ではなく、DFT湛液水耕を適用して育成している現状がある。このため、特許文献1に記載されたNFT薄膜水耕の水耕栽培装置は、育苗後、定植直後の幼齢期の栽培植物に適用されない。定植直後の幼齢期の栽培植物を別のDFT湛液水耕栽培装置で育成し、NFT薄膜水耕による育成に耐えられるようになった時点で、特許文献1に記載された水耕栽培装置を適用して育成を続けようとすると、DFT湛液水耕栽培装置とNFT薄膜水耕栽培装置との間で栽培トレイや栽培棚の共通化が必要になり、配管も複雑化するという問題がある。
【0010】
他方、従来において、DFT湛液水耕とNFT薄膜水耕とを兼用できる栽培装置については、なんら考慮されていなかった。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、栽培槽内に装備するNFT薄膜水耕を実現する構成部材の点数が極めて少なくて済み、組立が容易であり、かつ栽培植物の変更があっても栽培槽外に装備する培養液循環供給手段の変更を伴わないで栽培槽内を再装備することができて、NFT薄膜水耕を行うことができる水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る水耕栽培装置は、上記目的達成のため、上面が開放した直方体形状の栽培槽と、前記栽培槽内に長手方向に両端部を除いて敷き詰めて収容され、かつ、前記栽培槽の両側の側板部および底板部の三方に密着し、前記栽培槽内の長手方向の両端部に培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とを画成する直方体状の複数の床上げブロックと、前記複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、各両端部を前記栽培槽の両側面の上端部に載置された複数の定植孔を有する複数の栽培トレイと、ポンプと配管を含んでなり、前記第2の液溜部に貯留する培養液を前記第1の液溜部に循環供給する培養液循環供給手段と、を備え、前記複数の定植孔は、前記各栽培トレイに栽培植物の水平方向の大きさに適する間隔で前記栽培槽の長手方向と直交する方向に並んで設けられ、前記栽培植物の根を挿通し根基部を保持するようになっており、前記複数の床上げブロックの上面部には、前記各定植孔の真下に位置するよう、前記栽培槽内の前記第1の液溜部の側の一端から前記第2の液溜部の側の他端まで培養液の薄膜流下が可能な緩い傾斜を有する複数の培養液流し溝部が形成され、前記定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を前記培養液流し溝部に受け止め、前記培養液流し溝部を薄膜状に流れる前記培養液によりNFT薄膜水耕を行うようになっている。
【0013】
上記構成により、本発明に係る水耕栽培装置は、ブロック上面部に複数の培養液流し溝部が形成された複数の床上げブロックを設置するだけで、栽培植物を定植する栽培トレイの定植間隔に合わせて、複数の培養液流し溝部の設置を実現し栽培槽内を装備することができるので、NFT薄膜水耕を行うことができ、栽培槽内に装備する構成部材の点数を従来に比べて大幅に少なくすることができ、栽培槽内の構造が簡単なので迅速かつ容易な組立性を有する。
【0014】
また、本発明に係る水耕栽培装置は、栽培槽内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とを画成することができるので、栽培槽内に装備する構成部材の点数が従来に比べて大幅に少なくて済み、また栽培槽外の設備である培養液循環供給手段については、従来の様な培養液供給側の多岐状配管を廃することができるので、全体的に組立が容易であり、培養液を第1の液溜部を介して全ての培養液流し溝部に均一に供給することができるから、良好なNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る他の水耕栽培装置は、上面が開放した直方体形状の栽培槽と、前記栽培槽内に長手方向に両端部を除いて敷き詰めて収容され、かつ、前記栽培槽の両側の側板部および底板部の三方に密着し、前記栽培槽内の長手方向の両端部に培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とを画成する直方体状の複数の床上げブロックと、前記栽培槽の上端開口部のうち、前記複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、各両端部を前記栽培槽の両側面の上端部に載置された複数の定植孔を有する複数の栽培トレイと、前記各栽培トレイに栽培植物の水平方向の大きさに適する間隔で前記栽培槽の長手方向と直交する方向に並んで設けられ、前記栽培植物の根を挿通し根基部を保持する複数の定植孔と、ポンプと配管を含んでなり、前記第2の液溜部に貯留する培養液を前記第1の液溜部に循環供給する培養液循環供給手段と、を備え、前記複数の床上げブロックは、これらの各上面部の高さレベルが前記第1の液溜部側が高く前記第2の液溜部が低い階段状になるように設定され、かつ前記各ブロック上面部の前記第2の液溜部側の端縁に数mmの高さの堰が設けられ、各堰の上流領域となる各ブロック上面部に前記培養液の薄膜を形成するとともに、前記定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を
前記各ブロック上面部で受け止めて、NFT薄膜水耕を行うようになっている。
【0016】
上記構成により、本発明に係る水耕栽培装置は、高さの堰が付設された高さが異なる複数の床上げブロックを栽培槽内に設置するだけでブロック上面部を階段状に隙間なく形成してかつ段違いの床面を嵩上げ形成し、各床上げブロックのブロック上面部の端縁に数mmの高さの堰が付設し、栽培槽内を装備することができるので、各床上げブロックの上面部に全面的に培養液の薄膜流を形成することができ、根が未成熟である幼齢期の栽培植物も含めて良好なNFT薄膜水耕行うことができ、他方、従来において生じていた複数の培養液流し溝部に対する還流の不均一や局所的枯渇を招きやすいという問題点を解消することができる。
【0017】
また、本発明に係る水耕栽培装置は、栽培槽内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とを画成することができるので、栽培槽内に装備する構成部材の点数を従来に比べて大幅に少なくすることができ、栽培槽内の構造が簡単なので迅速かつ容易な組立性を有し、また栽培槽外の設備である培養液循環供給手段については、従来の様な培養液供給側の多岐状配管を廃することができるので、全体的に組立が容易であり、培養液を第1の液溜部を介してブロック上面部の全幅に均一に供給することができるから、良好なNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る水耕栽培方法は、上面が開放した直方体形状の栽培槽内に、直方体状の複数の床上げブロックを収容するとともに、槽内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とを画成し、複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔を有する複数の栽培トレイの各両端部を栽培槽の両側面の上端部に載置し、培養液貯留タンクとポンプと配管を含む培養液循環供給手段により第2の液溜部に貯留する培養液を第1の液溜部に循環供給し、複数の床上げブロックの上面部に形成された第1の液溜部から第2の液溜部に向かい培養液の薄膜流下が可能な緩い傾斜を有する複数の培養液流し溝部に培養液を薄膜状に流れさせ、定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を培養液流し溝部に受け止めてNFT薄膜水耕を行うものであり、さらに、NFT薄膜水耕を行う前段階としてDFT湛液水耕を行うときは、第2の液溜部の培養液の液面をブロック上面部よりも高くなるように管理する構成である。
【0019】
また、本発明に係る他の水耕栽培方法は、上面が開放した直方体形状の栽培槽内に、長手方向の両端部を除いて、前記栽培槽の両側の側板部および底板部の三方に密着する直方体状の複数の床上げブロックを敷き詰めて収容し、前記長手方向に両端部に画成されるギャップ空間を培養液供給側の第1の液溜部と培養液流出側の第2の液溜部とし、前記複数の床上げブロックの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔を有する複数の栽培トレイの各両端部を前記栽培槽の両側面の上端部に載置し、前記複数の床上げブロックの各上面部の高さレベルが前記第1の液溜部側が高く前記第2の液溜部が低い階段状になるように設定し、かつ前記各ブロック上面部の前記第2の液溜部側の端縁に数mmの高さの堰を設け、ポンプと配管を含む培養液循環供給手段により前記第2の液溜部に貯留する培養液を前記第1の液溜部に循環供給し、前記各ブロック上面部に培養液の薄膜を形成するとともに
、前記定植孔の縁で栽培植物の根基部を保持し根先部を
前記各ブロック上面部で受け止めてNFT薄膜水耕を行う構成である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、栽培槽内に装備するNFT薄膜水耕を実現する構成部材の点数が極めて少なくて済み、組立が容易であり、かつ栽培植物の変更があっても栽培槽外に装備する培養液循環供給手段の変更を伴わないで栽培槽内を再装備することができて、NFT薄膜水耕を行うことができる水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供する水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法について、図面を参照して説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1〜
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る水耕栽培装置の構成を示すとともに水耕栽培方法を説明するための図である。
【0024】
まず、本実施の形態に係る水耕栽培装置の構成を説明する。
図1および
図2に示すように、水耕栽培装置1は、上面が開放した直方体形状の栽培槽10と、栽培槽10内に栽培槽10の長手方向に並べて敷き詰めて収容される複数の床上げブロック15a〜15fと、栽培槽10上に流れ方向に並べて敷き詰めて載置される複数の栽培トレイ20a〜20fと、栽培槽10の外に設けられる培養液循環供給手段23とを備えている。
【0025】
栽培槽10内に複数の床上げブロック15a〜15fが収容されることにより、栽培槽10内の長手方向の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とが画成されている。複数の床上げブロック15a〜15fは、ブロック上面部16に複数の培養液流し溝部17を有している。
【0026】
複数の培養液流し溝部17は、平底を有する凹条に形成されており、第1の液溜部13より溢流する培養液が溝内を薄膜となって緩やかに流れさせるようにするため、第1の液溜部13の側が第2の液溜部14の側よりも高い傾斜を有するように設定されている。この傾斜度は、1%程度(水平距離100対高さ1の割合の傾斜度)であることが好ましい。
【0027】
以上が、水耕栽培装置の概要の構成である。以下さらに詳述する。
【0028】
栽培槽10は、長矩形の底板部10aと、底板部10aの四辺より立ち上がる4つの側板部10b〜10eと、を有し、上面が開放した直方体形状に形成されている。栽培槽10は、例えば、塩化ビニル等の合成樹脂により構成される。栽培槽10は、例えば、鉄骨製の架台11上に設置される。栽培槽10は、架台11を構成する脚の長さの調整またはスペーサを挟むことにより、複数の培養液流し溝部17が、上記の1%程度の傾斜度に設定される。なお、培養液流し溝部17の深さが下流側に行くに連れて次第に深くなる方式で、1%程度の傾斜度が設けられることを排除する趣旨ではない。
【0029】
栽培槽10の幅寸法は、特に寸法選択基準はないが、収穫期に横方向の広がりが最大となる栽培植物を例えば3つ直列に並べて栽培できるように、前記横方向の広がり寸法を定植間隔としたときに、概ね定植間隔で4ピッチに相当する大きさとされる。
【0030】
栽培槽10の短手方向に沿う栽培トレイ20a〜20fの長さ寸法は、栽培槽10に載置したときに、栽培槽10の両側に例えば5cmずつ張り出す長さとされ、下面には、栽培槽10の両側内面に近接する一対の位置決め用突起20pが設けられている。栽培トレイ20a〜20fの幅寸法は、特に寸法選択基準はないが、例えば、収穫期に横方向の広がりが最大となる栽培植物が栽培槽10の長手方向に一列に近接して並ぶように、上記と同じ栽培植物の収穫期の横方向の広がりの寸法に略等しく設定される。栽培トレイ20a〜20fは、栽培対象の栽培植物の横方向の広がりの寸法が小さい場合に対応した幅寸法のものを選択することを排除するものではない。
【0031】
栽培トレイ20a〜20fは、複数の定植孔21を有し、各定植孔21の周縁に固定された保持ブロック22を備えている。複数の定植孔21は、栽培トレイ20a〜20fの長さ方向に定植間隔毎に設けられる。ここでの定植間隔とは、現に栽培対象となる栽培植物の収穫期の横方向の広がり寸法をいうものであり、栽培対象となる全ての栽培植物のうち、収穫期の横方向の広がり寸法をいうものではない。保持ブロック22は、例えば栽培植物の播種培地としたウレタンキューブそのものであり、別の例では、当該ウレタンキューブに、その周囲を囲むエラストマーまたはゴムよりなるリング部材が付加され、栽培植物の根部で外葉の広がりを制限して隣接する栽培植物同士の接触障害を予防する効果のあるものが使用される。総じて保持ブロック22は、栽培植物の根を通して根基部P1を軟らかく保持する役目を果たす。
【0032】
複数の栽培トレイ20a〜20fは、各両端部を栽培槽10の両側面の上端部に載置される。複数の栽培トレイ20a〜20fは、栽培槽10の複数の床上げブロック15a〜15fの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、必要な数だけ各栽培槽10に載置される。
図1では、栽培トレイ20a〜20fと、床上げブロック15a〜15fとが、それぞれ6つ並んだ状態に対応しているが、栽培槽10の長手方向に沿う栽培トレイ20a〜20fの寸法と、床上げブロック15a〜15fの寸法とは、一致している必要はなく、実装置では、床上げブロック15a〜15fの寸法の方が大きく設定される。
【0033】
栽培槽10には、複数の栽培トレイ20a〜20fを挟む両側に、第1の蓋部24と第2の蓋部25が載置されている。複数の栽培トレイ20a〜20fと第1の蓋部24と第2の蓋部25は、太陽光や人工光の栽培槽10内への照射を防ぐことができ、これにより、栽培槽10内に藻が発生するのを回避できる。なお、第1の蓋部24と第2の蓋部25にも、栽培トレイ20a〜20fと同様に位置決め用突起20pが設けられ、さらに栽培槽10の長手方向に位置決め用突起20qが設けられる。
【0034】
第1の蓋部24は、上面部の両側部分より立ち上がる一対の栽培トレイ載置用リブ26を有している。同様に、第2の蓋部25にも、上面部の両側部分より立ち上がる一対の栽培トレイ載置用リブ27を有している。一対の栽培トレイ載置用リブ26は、栽培トレイ20aへの栽培植物の定植に際して利用できる。また、一対の栽培トレイ載置用リブ27は、生育を終了して収穫する場合に、
図1に示す栽培トレイ20aを載置して根の切断する際の載置台として利用できる。
【0035】
複数の床上げブロック15a〜15fは、複数の栽培トレイ20a〜20fと第1の蓋部24と第2の蓋部25を栽培槽10に載置する前に、互いに密着して一塊の状態で栽培槽10内に収容されている。これにより、栽培槽10内には、栽培槽10の長手方向に両端部に培養液Bを貯留する第1の液溜部13と第2の液溜部14とが画成される。
【0036】
複数の床上げブロック15a〜15fは、栽培槽10の両側の長尺な側板部10b,10cおよび底板部10aの三方に密着した状態に収容されている。複数の床上げブロック15a〜15fは、全て同一の高さであってよいが、この実施の形態では、栽培期間の後半における根の成長を考慮して第2の液溜部14側の3つの床上げブロック15a〜15cが第1の液溜部13の3つの床上げブロック15d〜15fよりも低く設定されている。
【0037】
床上げブロック15a〜15fの底板部10a側板部10b,10cに対する密着は、床上げブロック15a〜15fの寸法を側板部10b,10cの間のギャップ寸法に合わせることにより実現される。他方、床上げブロック15a〜15fの底板部10aに対する密着は、寸法一致の問題ではなく、以下のように実現される。
【0038】
複数の床上げブロック15a〜15fは、培養液の比重より大きく静置状態で培養液に浮き上がることのない樹脂材料、例えば、塩化ビニル製により形成される。ただし、培養液より比重は大きいがその差が小さな材料であると、培養液の浮力で自重が軽減されて栽培槽10内への固定が甘くなり移動容易となる可能性がある。そこで固定を確実なものとするための床上げブロック移動防止手段18により栽培槽10のブロック上面部が押さえられて、栽培槽10の底板部10aから離れないようになっている。
【0039】
床上げブロック移動防止手段18は、この実施の形態では、栽培槽10の両側の長尺な側板部10b,10cに固定され、一塊の状態の複数の床上げブロック15a〜15fの四隅を挟む4つの縦桟18a,18bと、各側の2つの縦桟18a,18b間に横に架け渡され、ブロック上面部を押さえる段違い形状の横桟18c,18dと、を有する。縦桟18a,18bは、側板部10b,10cから一体に、例えば、リブ状に突出して設けられ、縦方向に小さいピッチでボルト通し孔が設けられている。縦桟18a,18bは、一塊の状態の複数の床上げブロック15a〜15fが移動しないよう、栽培槽10内の長手方向の位置決め機能を有する。両側の横桟18c,18dは、両端部を縦桟18a,18bに対してボルト連結により高さ調整自在に係合され、床上げブロック15a〜15fの上面部を抑え、必要な場合にはスペーサを挟んで床上げブロック15a〜15fの移動を防止する機能を有する。
【0040】
なお、床上げブロック移動防止手段18は、上記構成に限定されず、例えば、各床上げブロック15a〜15fをボルトで側板部10b,10cに直接連結する構成でもよいし、あるいは、各床上げブロック15a〜15fの上面部に錘を載せる構成でもよい。複数の床上げブロック15a〜15fが、培養液に対して十分に比重の大きな材料により形成される場合には、4つの縦桟18a,18bで床上げブロック15a〜15fを位置規制するだけでよく、両側の横桟18c,18dは、必要ではない。
【0041】
複数の床上げブロック15a〜15fのブロック上面部には、栽培槽10の長手方向に延び、かつ、栽培トレイ20a〜20fに設けられた各定植孔21の真下に対応するように複数の培養液流し溝部17が設けられている。各培養液流し溝部17は、第1の液溜部13の側の一端から第2の液溜部14の側の他端まで、傾斜度が1%位で培養液の薄膜流下が行われる緩い傾斜を有している。
【0042】
第1の液溜部13側の3つの床上げブロック15d〜15fのブロック上面部に設けられた培養液流し溝部17には、第1の液溜部13から溢流する培養液が薄膜となって緩やかに流れるようになっている。床上げブロック15dの段差面を流下する培養液は、床上げブロック15cのブロック上面部の溝部17に落差をもって直接流下させる。直接流下させることでわずかではあるが流下時に空気を巻き込み溶存酸素を高める効果が期待できる。
【0043】
また、培養液流し溝部17は、ブロック上面部に刻設された形態に限定されるものでなく、例えば、3つの床上げブロック15d〜15fのブロック上面部を含む表層部が、別体の1枚ブロックで形成され、この1枚ブロックに培養液流し溝部17が設けられる形態であってもよい。3つの床上げブロック15d〜15fのブロック上面部に設けられる培養液流し溝部17についても同様である。
【0044】
培養液流し溝部17は、定植孔21の真下位置にくるように、床上げブロック15a〜15fのブロック上面部に設けられる。すなわち、定植孔21に保持された栽培植物Pの根先部P2が真っ直ぐに垂れ下がり、各定植孔21の真下に培養液流し溝部17が存在することで根先部P2を培養液流し溝部17が受け止めるように構成される。培養液流し溝部17が定植孔21の真下になく、横にずれていると、根先部P2を培養液流し溝部17が受け止められないからである。
【0045】
そこで、複数の培養液流し溝部17は、栽培槽10の短手方向の同一位置でかつ長手方向に一列に並ぶ複数の定植孔21の真下に位置するように配設される必要がある。したがって、複数の培養液流し溝部17の栽培槽10の短手方向の間隔と、各栽培トレイ20a〜20fに設けられる定植孔21の間隔とが一致しているように、複数の床上げブロック15a〜15fと複数の栽培トレイ20a〜20fとが選択され、栽培槽10に装着される必要がある。
【0046】
具体的には、
図2に示すように、栽培植物が最も大きい種類であり、3つの定植孔21が設けられた各栽培トレイ20a〜20fが選択されるときには、ブロック上面部に3つの培養液流し溝部17が形成された複数の床上げブロック15a〜15fが選択される。また、
図3に示すように、栽培植物が小さい種類であり、6つの定植孔21が設けられた各栽培トレイ20a〜20fが選択されるときには、ブロック上面部に6つの培養液流し溝部17が形成された複数の床上げブロック15a〜15fが選択される。このような選択は、培養液流し溝部17は、定植孔21の真下位置にくるようにするための選択である。
【0047】
さらに、培養液流し溝部17が栽培開始時から栽培期間の前半において、栽培植物Pの根先部P2を受け止めるための構成として、栽培槽10に載置された栽培トレイ20d〜20fの下面から培養液流し溝部17までのギャップが、栽培開始時の栽培植物(幼菜)Psの短い根の長さよりも数cm小さくなるように、複数の床上げブロック15d〜15fの高さが設定される。また、培養液流し溝部17が栽培開始時から栽培期間の後半において、栽培植物Pの長く成長した根の根先部P2を受け止めるための構成として、栽培槽10に載置された栽培トレイ20a〜20cの下面から培養液流し溝部17までのギャップが、栽培後半の初期時の栽培植物Pの短い根の長さよりも数cm小さくなるように、複数の床上げブロック15d〜15fの高さが一段低く設定される。なお、栽培後半の初期時の栽培植物Pの短い根の長さが対して長くならず、本数が増えて横に広がる場合には、培養液流し溝部17の溝幅を大きくする。
【0048】
培養液循環供給手段23は、培養液Bを貯留する培養液貯留タンク23aと、培養液貯留タンク23a内の培養液Bを給送するポンプ23bと、培養液Bを還流させる配管23cと、培養液Bの給送量をNFT薄膜水耕に必要な量だけ給送するように調節する流量弁23dと、ドレン弁23eと、液出口管1hの槽内側の端部に回動可能に接続されたエルボ部材12と、を含んでなる。配管23cは、側板部10dの下部に設けられた液出口管1hと培養液貯留タンク23aとを連通している管路部分と、培養液貯留タンク23aとポンプ23bとを連通している管路部分と、ポンプ23bと流量弁23dとを連通している管路部分と、流量弁23dと側板部10eの下部に設けられた液入口管1gとを連通している管路部分と、を有する。
【0049】
培養液循環供給手段23は、ポンプ23bが駆動されることにより、培養液貯留タンク23a内の培養液を第1の液溜部13に供給するようになっている。第1の液溜部13から溢流する培養液は、培養液流し溝部17を薄膜となって流れ、第2の液溜部14に到達し、培養液貯留タンク23a内に帰還するようになっている。こうして、培養液循環供給手段23は、栽培槽10内に培養液を循環供給するようになっている。
【0050】
エルボ部材12は、第2の液溜部14に貯留する培養液の液面を可変設定する役目を果たす。エルボ部材12は、栽培トレイ20fと床上げブロック15fとで栽培植物(幼菜)PsをDFT湛液水耕する際に垂直方向上方に立ち上げられる。このときのエルボ部材12の上端開口12aは、栽培トレイ20a〜20fの下面に近い高さレベルとなり、これにより、ブロック上面部よりも高くなるのでDFT湛液水耕を行うことができる。
【0051】
次に、上記構成の水耕栽培装置について、水耕栽培方法について、装置の組立手順を含む栽培手順を説明する。
(1−1) まず、前提として、栽培槽10は培養液が貯留されていない空の状態で、かつ、培養液循環供給手段23が設備されているものとする。
(1−2) 栽培対象の栽培植物の種類に対応した定植間隔に一致している複数の栽培トレイ20a〜20fと複数の床上げブロック15a〜15fとを選択する。
図1、
図2は、1つの栽培トレイに3株を並べて、かつ1度に一枚の栽培トレイをセットする栽培例を示すもので、ここでは、この例を選択するものとする。
(1−3) 栽培槽10内にかつ4つの縦桟18a,18bに四隅が押さえられるように複数の床上げブロック15a〜15fを収容し、2つの横桟18c,18dを取付ける。これにより、複数の床上げブロック15a〜15fは、水平方向および上方に移動不能に敷き詰めた一塊の状態に収容され、複数の培養液流し溝部17が所定の配列でかつ所定の高さに設定される。
(1−4) 複数の床上げブロック15a〜15fの取り付けにより、栽培槽10内の床上げブロック15a〜15fの両側のギャップが、培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14となる。この時点で、培養液の循環路は完成する。
(1−5) エルボ部材12を横に倒して開口を低くし、培養液を第2の液溜部14に入れて配管23cを介して培養液貯留タンク23aに貯留する。
(1−6) 第1の蓋部24と第2の蓋部25を栽培槽10に載置する。
(1−7) 第1の蓋部24を利用して最初の一枚の栽培トレイ20aの各定植孔21に栽培植物を定植する。すなわち、栽培トレイ20aを第1の蓋部24に設けられた一対の栽培トレイ載置用リブ26に載置すると、栽培トレイ20aと下方の第1の蓋部24との間にギャップができるので、栽培植物の根を定植孔21に上方から挿通し、根基部P1を保持ブロック22で保持し、根先部P2を下方の第1の蓋部24とのギャップに垂らす作業を行うことができる。
(1−8) 定植が終えたら、栽培トレイ20aを第1の蓋部24の隣に密着するように栽培槽10上に載置する。
(1−9) 栽培トレイ20aと第2の蓋部25との間は、定植していない複数の栽培トレイを載置して開口を閉塞する。
(1−10) エルボ部材12を横に倒した状態とし、ポンプ23bを稼働し、培養液貯留タンク23a内の培養液を第1の液溜部13に送給する。これにより、第1の液溜部13内の培養液の液面レベルが高くなっていき、培養液が第1の液溜部13から溢れ出て複数の培養液流し溝部17に流れ込み、薄膜となって緩やかに流下する。ここで、ポンプ23bの送液量は、培養液が薄膜となって培養液流し溝部17を流れるように流量調整弁の調整により設定されるものとする。これによって、NFT薄膜水耕が行われる。
(1−11) 数日経たら、第1の蓋部24を利用して次の栽培トレイ20bを栽培植物を定植し、栽培トレイ20aの隣の定植していない栽培トレイを外して、そこに、栽培トレイ20aを横ずらしし、栽培トレイ20aが移動して空いたスペースを塞ぐように栽培トレイ20bを栽培槽10に載置する。
(1−12) 以後同様にして、数日経るごとに、次々に、栽培トレイ20c〜20fを栽培槽10に載置する(
図1)。
(1−13) 最初の栽培トレイ20aは、第2の蓋部25の隣の位置まで横ずれしてから数日経ると、収穫期を迎える。大きく成長した栽培植物が定植した栽培トレイ20aを取り上げて第2の蓋部25に設けられた一対の栽培トレイ載置用リブ27に載置すると、栽培トレイ20aと下方の第2の蓋部25との間にギャップができるので、栽培トレイ20aの下面側の根基部P1より根部を切り離し、葉茎部を上方に取り外して収穫することができる。栽培トレイ20aを取り上げると、空きができるので、栽培トレイ20b〜20fを次々に横ずれして、栽培槽10上の第1の蓋部24の隣に、新しく栽培植物を定植した栽培トレイを載置する。以後同様にして、数日経るごとに、次々に、栽培トレイ20b〜20fを収穫する。
【0052】
次に、栽培対象の幼菜である栽培植物についてDFT湛液水耕を行うように変更する場合について説明する。この場合は、栽培対象の栽培植物を、
図1、
図2に示す1つの栽培トレイに3株が並ぶ栽培から、
図3に示す1つの栽培トレイに6株が並ぶ栽培に変更する場合である。
【0053】
(2−1)
図1に示す、栽培槽10に載置されている栽培トレイ20a〜20fを取り外し、次いで両側の横桟18c,18dを縦桟18a,18bとの連結を解いて取り外し、次いで床上げブロック15a〜15fを取り外し、ドレン弁23eを開いて栽培槽10内の培養液を培養液貯留タンク23aに回収する。
(2−2)
図3に示すように、6株をならべて定植する栽培トレイ20gを選択するとともに、この栽培トレイ20gに対応する床上げブロック15gを選択する。さらに、床上げブロック15gの選択については、幼菜の根の長さと、栽培トレイ20gの下面から培養液流し溝部17までのギャップが同じくらいとなる、所要高さの複数の床上げブロック15gを選択する。
(2−2)
図3に示すように、先に、複数の床上げブロック15gを取付け、次いで一対の横桟18e,18fを取付けて、横桟18e,18fで複数の床上げブロック15gを押さえつける。なお、ブロック上面部の段差の相違により横桟の形状は異なってくる。
(2−3) エルボ部材12を立ち上げる。エルボ部材12は、第2の液溜部14に貯留する培養液の液面を可変設定する役目を果たす。エルボ部材12は、栽培トレイ20gと床上げブロック15gとで栽培植物(幼菜)PsをDFT湛液水耕する際に垂直方向上方に立ち上げられる。このときのエルボ部材12の上端開口12aは、栽培トレイ20gの下面に近い高さレベルとなり、これにより、ブロック上面部よりも高くなるのでDFT湛液水耕を行うことができる。
(2−4) 以後は、上述した(1−5)から(1−13)までと同様の段取り作業を行う。
【0054】
次に、栽培対象の栽培植物の根が幼菜と大きく変わらない栽培植物についてNFT薄膜水耕を行うように変更する場合について説明する。この場合は、
図3に示す1つの栽培トレイ20gと床上げブロック15gとが引き続き用いられ、上述した(1−5)から(1−13)までと同様の段取り作業を行う。
【0055】
次に、栽培対象の栽培植物の根が幼菜に比べて長くなる場合にNFT薄膜水耕を行うように変更する場合について説明する。この場合、
図4に示す栽培トレイ20hと床上げブロック15hが用いられる。
図4に示す床上げブロック15hの高さは、
図3に示す床上げブロック15gの高さに比べて低くなり、ブロック上面部から栽培槽10の上面までのギャップがおおきくなる。床上げブロック15gから床上げブロック15hへの交換は、(2−1)と同様に行う。
図4に示す栽培トレイ20hは、
図3に示す栽培トレイ20gと同一のものを用いることができる。NFT薄膜水耕は、上述した(1−3)から(1−13)までと同様の段取り作業を行う。なお、ブロック上面部が一平面であるので、
図4に示すように、
図3に示す一対の横桟18e,18fを引き続き使用できる。
【0056】
以上のように、上記構成の水耕栽培装置1を用いた水耕栽培方法は、上面が開放した直方体形状の栽培槽10内に、直方体状の複数の床上げブロック15a〜15fを収容するとともに、槽内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とを画成し、複数の床上げブロック15a〜15fの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔21を有する複数の栽培トレイ20gの各両端部を栽培槽10の両側面の上端部に載置し、培養液貯留タンク23aとポンプ23bと配管23cを含む培養液循環供給手段23により第2の液溜部14に貯留する培養液を第1の液溜部13に循環供給し、複数の床上げブロック15a〜15fの上面部に形成された第1の液溜部13から第2の液溜部14に向かい培養液の薄膜流下が可能な緩い傾斜を有する複数の培養液流し溝部17に培養液を薄膜状に流れさせ、定植孔21の縁で栽培植物Pの根基部P1を保持し根先部P2を培養液流し溝部17に受け止めてNFT薄膜水耕を行う構成である。
【0057】
さらにまた、本実施の形態に係る水耕栽培装置および方法は、上面部に複数の培養液流し溝部17が形成された複数の床上げブロック15a〜15fを設置する構成であるから、栽培植物Pが幼齢期の栽培植物Pである場合には、培養液流し溝部17に培養液を流すのではなく、第2の液溜部14の培養液の液面をブロック上面部16よりも高くなるように管理することで、培養液をブロック上面部16の前面に流して、DFT湛液水耕栽培を行うことができ、幼齢期が過ぎたら、第2の液溜部14の培養液の液面をブロック上面部16よりも低くなるように管理することで、培養液流し溝部17に培養液を流すことができ、NFT薄膜水耕を行うことができる。
【0058】
上記構成により、本実施の形態に係る水耕栽培装置および方法は、ブロック上面部16に複数の培養液流し溝部17が形成された複数の床上げブロック15a〜15fを設置するだけで、栽培植物Pを定植する栽培トレイ20gの定植間隔に合わせて、複数の培養液流し溝部17の設置を実現し栽培槽10内を装備することができるので、NFT薄膜水耕を行うことができ、栽培槽10内に装備する構成部材の点数を従来に比べて大幅に少なくすることができ、栽培槽10内の構造が簡単なので迅速かつ容易な組立性を有する。
【0059】
また、本実施の形態に係る水耕栽培装置および方法は、栽培槽10内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とを画成することができるので、栽培槽10内に装備する構成部材の点数が従来に比べて大幅に少なくて済み、また栽培槽10外の設備である培養液循環供給手段23については、従来の様な培養液供給側の多岐状配管を廃することができるので、全体的に組立が容易であり、培養液を第1の液溜部13を介して全ての培養液流し溝部17に均一に供給することができるから、従来において生じていた複数の培養液流し溝部17に対する還流の不均一や局所的枯渇を招きやすいという問題点を解消することができて、良好なNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0060】
さらに、本実施の形態に係る水耕栽培装置および方法は、栽培植物Pが変更され、定植間隔の変更された状態の栽培植物Pを定植する栽培トレイ20gに対応させる場合にも、定植間隔に対応する複数の培養液流し溝部17を有する複数の床上げブロック15a〜15fを交換するだけで、第1の液溜部13と第2の液溜部14とを再び画成することができ、栽培槽10外の設備である培養液循環供給手段23の変更を伴わないで栽培槽10内の再装備が行えて、栽培植物Pの変更に対応したNFT薄膜水耕を簡単迅速に行うことができる。
【0061】
さらにまた、本実施の形態に係る水耕栽培装置および方法は、上面部に複数の培養液流し溝部17が形成された複数の床上げブロック15a〜15fを設置する構成であるから、栽培植物Pが幼齢期の栽培植物Pである場合には、培養液流し溝部17に培養液を流すのではなく、第2の液溜部14の培養液の液面をブロック上面部16よりも高くなるように管理することで、培養液をブロック上面部16の前面に流して、DFT湛液水耕栽培を行うことができ、幼齢期が過ぎたら、第2の液溜部14の培養液の液面をブロック上面部16よりも低くなるように管理することで、培養液流し溝部17に培養液を流すことができ、NFT薄膜水耕を行うことができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法を示す図である。なお、本実施の形態に係る水耕栽培装置において、第1の実施の形態に係る水耕栽培装置と同一の構成部分については、
図1、
図2で用いている符号と同一の符号を用いて説明は省略する。
【0063】
本実施の形態に係る水耕栽培装置1Aは、上面が開放した直方体形状の栽培槽10と、栽培槽10内に収容される直方体状の複数の床上げブロック15i〜15nと、複数の床上げブロック15i〜15nの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、栽培槽10に載置される複数の定植孔21を有する複数の栽培トレイ20i〜20nと、各栽培トレイ20i〜20nに並んで設けられた複数の定植孔21と、培養液循環供給手段23と、を備えている。水耕栽培装置1Aは、栽培槽10内に両端部に第1の液溜部13と第2の液溜部14とが画成される。
【0064】
複数の床上げブロック15i〜15nは、栽培槽10内の縦桟18a,18b間に敷き詰めて収容され、かつ、栽培槽10の両側の側板部および底板部の三方に密着し、横桟18gで上から抑えられて移動防止が図られ、横桟栽培槽10内の長手方向の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とを画成するようになっている。
【0065】
複数の栽培トレイ20i〜20nは、栽培槽10の上端開口12a部のうち、複数の床上げブロック15i〜15nの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、各両端部を栽培槽10の両側面の上端部に載置された複数の定植孔21を有する。
【0066】
培養液循環供給手段23は、各栽培トレイ20i〜20nに栽培植物Pの水平方向の大きさに適する間隔で栽培槽10の長手方向と直交する方向に並んで設けられ、栽培植物Pの根を挿通し根基部P1を保持する複数の定植孔21と、ポンプ23bと配管23cを含んでなり、前第2の液溜部14に貯留する培養液を第1の液溜部13に循環供給する。
【0067】
本実施の形態に係る水耕栽培装置1Aの特徴は、複数の床上げブロック15i〜15nのブロック上面部の全面に培養液を薄膜状に流してNFT薄膜水耕を行うようにしている点である。
【0068】
詳述すると、複数の床上げブロック15i〜15nが、これらの各上面部の高さレベルが第1の液溜部13側が高く第2の液溜部14が低い階段状になるように設定され、かつ各ブロック上面部16の第2の液溜部14側の端縁に数mmの高さの堰30が設けられている。各堰30は、上流領域となる各ブロック上面部16に培養液の薄膜を形成する。堰30を設ける場合には、ブロック上面部の傾斜度を0%とするか、または
図1〜4に示す培養液流し溝部17を設ける場合に比べて、ブロック上面部の傾斜度を小さくすることができる。
【0069】
例えば、ブロック上面部の傾斜度を0.5%とし、各ブロック上面部の栽培槽10の長手方向に沿った長さを50cmに設定した場合、堰30の高さを3.0mmにすることで、ブロック上面部の上流端で0.5mmとなる培養液の薄膜を形成することができるから、定植孔21の縁で栽培植物Pの根基部P1を保持し根先部P2をブロック上面部で受け止めて、NFT薄膜水耕を行うことができる。この水耕栽培装置1Aでは、堰30の高さを調節自在に設けて、栽培対象の栽培植物に応じて培養液の薄膜の厚さを変更可能であることが好ましい。
【0070】
本実施の形態に係る水耕栽培方法は、上面が開放した直方体形状の栽培槽10内に、長手方向の両端部を除いて、栽培槽10の両側の側板部10b,10cおよび底板部10aの三方に密着する直方体状の複数の床上げブロック15i〜15nを敷き詰めて収容し、長手方向に両端部に画成されるギャップ空間を培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とし、複数の床上げブロック15i〜15nの真上に対応する開口領域を閉塞するよう、複数の定植孔21を有する複数の栽培トレイ20i〜20nの各両端部を栽培槽10の両側面の上端部に載置し、複数の床上げブロック15i〜15nの各上面部の高さレベルが第1の液溜部13側が高く第2の液溜部14が低い階段状になるように設定し、かつ各ブロック上面部16の第2の液溜部14側の端縁に数mmの高さの堰30を設け、ポンプ23bと配管23cを含む培養液循環供給手段23により第2の液溜部14に貯留する培養液を第1の液溜部13に循環供給し、各ブロック上面部16に培養液の薄膜を形成するとともに、各床上げブロックの上面部で定植孔21の縁で栽培植物Pの根基部P1を保持し根先部P2を受け止めてNFT薄膜水耕を行う構成である。
【0071】
上記構成により、本実施の形態に係る水耕栽培装置1Aは、高さの堰30が付設された高さが異なる複数の床上げブロック15i〜15nを栽培槽10内に設置するだけでブロック上面部を階段状に隙間なく形成してかつ段違いの床面を嵩上げ形成し、各床上げブロック15i〜15nのブロック上面部の端縁に数mmの高さの堰30が付設し、栽培槽10内を装備することができるので、各床上げブロック15i〜15nの上面部に全面的に培養液の薄膜流を形成することができ、根が未成熟である幼齢期の栽培植物も含めて良好なNFT薄膜水耕行うことができ、他方、従来において生じていた複数の培養液流し溝部に対する還流の不均一や局所的枯渇を招きやすいという問題点を解消することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る水耕栽培装置は、栽培槽10内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とを画成することができるので、栽培槽10内に装備する構成部材の点数を従来に比べて大幅に少なくすることができ、栽培槽10内の構造が簡単なので迅速かつ容易な組立性を有し、また栽培槽10外の設備である培養液循環供給手段23については、従来の様な培養液供給側の多岐状配管を廃することができるので、全体的に組立が容易であり、培養液を第1の液溜部13を介してブロック上面部の全幅に均一に供給することができるから、良好なNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0073】
本実施の形態に係る水耕栽培装置は、栽培槽10内に、直方体状でありかつ端縁に数mmの高さの堰30が設けられ複数の床上げブロック15i〜15nを敷き詰めて並べるだけで、複数の床上げブロック15i〜15nの上面部を階段状に隙間なく形成してかつ段違いの各床上げブロック15i〜15nの上面部に全面的に培養液の薄膜流を形成することができ、しかも、同時に、栽培槽10内の両端部に培養液供給側の第1の液溜部13と培養液流出側の第2の液溜部14とを画成することができて、多岐状配管を必要としない培養液循環供給手段23を容易に構築することができる。このため、栽培トレイ20i〜20nに定植する栽培植物Pが幼齢期の栽培植物である場合には、その栽培トレイ20i〜20nを一番高い位置の床上げブロック15i〜15nに対応させて栽培槽10に載置し、堰30の高さを少し高くすることにより、根が未成熟である幼齢期の栽培植物に対するDFT湛液水耕栽培とNFT薄膜水耕との中間的な水耕栽培を行うことができる。そして、生育に従い栽培トレイ20i〜20nごと一方向に順次に高いレベルから低いレベルとなる各床上げブロック15i〜15nの上面部に根が当接するように栽培トレイをしていくことで、収穫位置までNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0074】
このため、栽培トレイ20i〜20nに定植する栽培植物Pが幼齢期の栽培植物である場合には、その栽培トレイ20i〜20nを一番高い位置の床上げブロックに対応させて栽培槽10に載置することにより、根が未成熟である幼齢期の栽培植物に対する良好なNFT薄膜水耕行うことができる。
【0075】
そして、生育に従い栽培トレイ20i〜20nごと一方向に順次に高いレベルから低いレベルとなる各床上げブロックの上面部に根が当接するように栽培トレイ20i〜20nをしていくことで、収穫位置までNFT薄膜水耕を行うことができる。
【0076】
[その他の変形例]
(変形例1)
図1において、床上げブロック15dのブロック上面部の下流側端に、DFTに必要な培養液の水深が得られるほどの高い堰を設けて、栽培植物の幼菜期である20d,20e,20fではDFTを行う構成としてもよい。
【0077】
(変形例2)
図1において、床上げブロック15dのブロック上面部の下流側端に堰を設けて、ブロック上面部の全面を利用してNFT薄膜水耕を行う構成としてもよい。
【0078】
本発明によれば、栽培槽内に装備するNFT薄膜水耕を実現する構成部材の点数が極めて少なくて済み、組立が容易であり、かつ栽培植物の変更があっても栽培槽外に装備する培養液循環供給手段の変更を伴わないで栽培槽内を再装備することができて、NFT薄膜水耕を行うことができるという効果を有し、水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供する水耕栽培装置および水耕栽培方法の全般に有用である。