特許第6659428号(P6659428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659428
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/184 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   B62D1/184
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-72579(P2016-72579)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178261(P2017-178261A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】富士機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】松野 充佳
(72)【発明者】
【氏名】澤村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 誠俊
(72)【発明者】
【氏名】島田 亜耶
(72)【発明者】
【氏名】片倉 怜央
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠雄
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 韓国特許第10−2016−0017199(KR,B1)
【文献】 特開2012−250638(JP,A)
【文献】 特開2009−166716(JP,A)
【文献】 特開2008−143396(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/037627(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0207379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/000−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトと、
上記ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、
上記ステアリングコラムの車両前端部に設けたチルト軸を揺動中心として当該ステアリングコラムを車両上下方向に揺動可能に支持する車体取付ブラケットと、
上記車体取付ブラケットに一体に設けられ、上記ステアリングコラムの車両後端部側で当該ステアリングコラムを両側から挟み込むように配置された一対の挟持片と、
上記チルト軸を中心とする円弧状を呈し、上記一対の挟持片にそれぞれ形成されたチルト孔と、
上記チルト孔及び上記ステアリングコラムを貫通するクランプ軸と、
上記クランプ軸の一端側に設けられ、上記一対の挟持片で上記ステアリングコラムを締め付けて当該ステアリングコラムを締結するロック機構と、を有し、
上記一対の挟持片のいずれか一方は、チルト孔の車両前方側もしくは車両後方側のいずれか一方と、上記チルト孔の車両上方側及び車両下方側を囲むように形成された略U字状のスリットと、当該スリットに囲まれて先端側に上記チルト孔が位置する舌片部と、を有し、
少なくとも上記スリットが形成された挟持片には、当該スリットの外側を囲う補強部が一体的に設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置。
【請求項2】
上記補強部は、上記スリットの車両上方側、車両下方側、車両前方側及び車両後方側にそれぞれ配置される4つのフランジ部から構成されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
上記車体取付ブラケットは、上記一対の挟持片と、上記一対の挟持片の車両上方側に位置して車体への取付孔を有するステーと、を有し、
上記ステーの車両前後端部の一部を下方へ折曲することによって、上記スリットの車両上方側、車両前方側及び車両後方側を囲う互いに連続した3つのフランジ部が構成されることを特徴とする請求項2に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
上記4つのフランジ部のうち上記スリットの車両下方側に位置する下方側フランジ部は、上記補強部のうち車両後方側に位置する後方側フランジ部と一体に連続するよう形成されることを特徴とする請求項2または3に記載のステアリングコラム装置。
【請求項5】
上記スリットは、車両前方側に向かって開放する横向き略U字状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールのチルト調整が可能なステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたステアリングコラム装置は、運転者の体格に合わせてステアリングホイールの位置をチルト(上下)方向に調整する機能を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステアリングシャフトを回転自在に支持するアウターコラムと、アウターコラムの左右の側面を挟持する左右一対の側板を有する車体取付ブラケットと、上記一対の側板に形成された長孔状のチルト用長溝及び上記アウターコラムを貫通する締付けロッドと、上記締付けロッドとともに上記一対の側板で上記アウターコラムを締め付けるナットと、を有するチルト調節構造が開示されている。
【0004】
この特許文献1においては、一対の側板でアウターコラムを挟持する際の締め付け操作力を軽減するために、側板に形成したチルト用長溝の両側や上方に長孔状の貫通孔を設け、これらの側板が弾性変形しやすくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−143396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1においては、チルト位置によって一対の側板でアウターコラムを挟持する際の締め付け操作力が変化する。すなわち、チルト位置によってチルト用長溝周囲の剛性が変化するため、一対の側板でアウターコラムを挟持する際の操作力がチルト位置によって変化してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、支持剛性を高くしながら、ロック機構を操作する際の操作力が相対的に小さく、かつチルト位置によって操作力が変化することがないステアリングコラム装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトと、上記ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、上記ステアリングコラムの車両前端部に設けたチルト軸を揺動中心として当該ステアリングコラムを車両上下方向に揺動可能に支持する車体取付ブラケットと、上記車体取付ブラケットに一体に設けられ、上記ステアリングコラムの車両後端部側で当該ステアリングコラムを両側から挟み込むように配置された一対の挟持片と、上記チルト軸を中心とする円弧状を呈し、上記一対の挟持片にそれぞれ形成されたチルト孔と、上記チルト孔及び上記ステアリングコラムを貫通するクランプ軸と、上記クランプ軸の一端側に設けられ、上記一対の挟持片で上記ステアリングコラムを締め付けて当該ステアリングコラムを締結するロック機構と、を有し、上記一対の挟持片のいずれか一方は、チルト孔の車両前方側もしくは車両後方側のいずれか一方と、上記チルト孔の車両上方側及び車両下方側を囲むように形成された略U字状のスリットと、当該スリットに囲まれて先端側に上記チルト孔が位置する舌片部と、を有し、少なくとも上記スリットが形成された挟持片には、当該スリットの外側を囲う補強部が一体的に設けられていることを特徴としている。
【0009】
ステアリングコラム装置のチルト位置を所望の位置に固定する際には、ロック機構により挟持片の舌片部が変形してステアリングコラムを挟持する。このとき、舌片部は、チルト位置にかかわらず、略U字状のスリットの両端を結んだ直線上の部分である基端を支点に変形する。そのため、ロック機構により挟持片の舌片部を締め付ける際の操作力は、チルト位置による変動が少なくなる。
【0010】
そして、上記補強部は、具体的には、上記スリットの車両上方側、車両下方側、車両前方側及び車両後方側にそれぞれ配置される4つのフランジ部から構成される。
【0011】
また、上記車体取付ブラケットは、上記一対の挟持片と、上記一対の挟持片の車両上方側に位置して車体への取付孔を有するステーと、を有し、上記ステーの車両前後端部の一部を下方へ折曲することによって、上記スリットの車両上方側、車両前方側及び車両後方側を囲う互いに連続した3つのフランジ部を構成するようにしてもよい。
【0012】
さらに、上記4つのフランジ部のうち上記スリットの車両下方側に位置する下方側フランジ部は、上記補強部のうち車両後方側に位置する後方側フランジ部と一体に連続するよう形成するようにしてもよい。
【0013】
そして、上記スリットは、車両前方側に向かって開放するU字状に形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のステアリングコラム装置は、ステアリングコラムを挟み込む挟持片のいずれか一方のチルト孔を略U字状にスリットで囲うようにした舌片部に設けることで、挟持片の剛性を補強部により強くできるため、支持剛性を向上できると共に、舌片部はクランプ軸の軸方向に容易に弾性変形できるため、剛性を下げることができる。これにより、ステアリングコラム装置は、支持剛性を向上できると共に、ロック機構を操作する際の操作力を相対的に小さくできる。
【0015】
また、チルト位置にかかわらず、ロック機構により舌片部を締め付ける操作力が変動しないため、操作力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るステアリングコラム装置の全体斜視図。
図2図1に示したステアリングコラム装置の左側の側面説明図。
図3図1に示したステアリングコラム装置の正面説明図。
図4図2に示したステアリングコラム装置の全断面説明図。
図5図1に示したステアリングコラム装置の要部の分解斜視図。
図6図1に示したステアリングコラム装置の右側の側面の要部を拡大した説明図。
図7図3の要部を拡大した断面説明図。
図8】(A)は図7に示したボトムブラケットの詳細を示す斜視図、(B)は同じく図7に示したスライダの詳細を示す斜視図。
図9図5に示したディスタンスブラケットの詳細を示す図で、(A)は平面図、(B)は同図(A)の正面図、(C)は同図(B)の左側面図。
図10図7の要部の分解斜視図。
図11図5に示したワイヤホルダの詳細を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜11は本発明に係るステアリングコラム装置を実施するためのより具体的な実施の形態として、チルト・テレスコ(テレスコピック)操作が可能なステアリングコラム装置の例を示している。
【0018】
そして、図1はステアリングコラム装置全体の斜視図を示し、図2図1に示したステアリングコラム装置の左側の側面説明図を、図3図1に示したステアリングコラム装置の正面説明図を、図4図2に示したステアリングコラム装置の全断面説明図を、図5図1に示したステアリングコラム装置における主たる構成要素の分解斜視図をそれぞれ示している。さらに、図6は、図1に示したステアリングコラム装置の右側の側面の要部を拡大した説明図を示している。なお、以下の説明において「前方側」、「後方側」、「前端」、「後端」、「前後方向」、「上下方向」等の用語は、あくまでステアリングコラム装置の車載状態での向きを基準としていて、例えば「前方側」とは車両前方側を指している。
【0019】
図1〜5に示すように、ステアリングコラム装置は、大きく分けて、図示しない車体への取付部材として機能する金属板製の車体取付ブラケット(以下、単に「取付ブラケット」と言う。)1と、取付ブラケット1に対しその前端部側のチルトヒンジピン14を揺動中心(チルト軸)として上下方向(図2の矢印a方向)に揺動操作可能(チルト位置調整可能)に支持される金属板製のチルトブラケット2と、チルトブラケット2に対し前後方向(図2の矢印b方向)に進退移動可能(テレスコ位置調整可能)に支持される金属筒状のミッドジャケット3と、ミッドジャケット3にその軸心方向で相対摺動可能に内挿支持される金属筒状のアッパージャケット4と、アッパージャケット4に内挿されて回転可能に支持されるステアリングシャフト5と、上記チルト位置調整およびテレスコ位置調整に備えて、取付ブラケット1とチルトブラケット2およびミッドジャケット3の三者の締結(ロックまたはクランプ)とその解除(アンロックまたはアンクランプ)を司るロック機構6と、を備えている。そして、ステアリングシャフト5の後端部に図示しないステアリングホイールのボス部がセレーション結合される。
【0020】
ここで、チルトブラケット2は主としてチルト位置調整時の取付ブラケット1に対するチルト動作を司ると共に、ステアリングシャフト5の前端側を回転可能に支持しており、本実施の形態では、ミッドジャケット3とアッパージャケット4とともに、ステアリングシャフト5を包囲しているステアリングコラムを構成している。
【0021】
図1,5に示すように、取付ブラケット1は、左右一対の側壁部1a,1aと、それらの一対の側壁部1a,1a間に架橋的に配置されて溶接された前後一対のステー1b,1cと、により正面視にて下面が開放された略下向きU字状のものとして形成されていて、それぞれのステー1b,1cに形成された取付孔71に挿入される図示外のボルトにより、いわゆる前下がりの傾斜姿勢にて車体に固定される。ここで、ステー1bは、ステー1cよりも車両後方側に位置するものである。
【0022】
また、図1,5に示すように、取付ブラケット1における双方の側壁部1aの前端部には軸孔7が形成されているほか、双方の側壁部1aの後端部には挟持片としてのクランプ片部8が形成されている。
【0023】
そして、図1,4,5,6に示すように、それぞれのクランプ片部8には、チルト孔としてのチルト用長孔10が貫通形成されている。チルト用長孔10は、軸孔7を曲率中心とする円弧状の長孔である。
【0024】
さらに、図1,4,5,6に示すように、一方のクランプ片部8には、横向き略U字状のスリット9aにて囲まれて変形容易部として機能する舌片部9が形成されている。
【0025】
ここで、スリット9aは、チルト用長孔の上下方向の位置に、前後方向に沿って形成された上辺部72及び下辺部73と、チルト用長孔10の後方側で上辺部72及び下辺部73の一端を接続するよう形成された後辺部74と、を有している。後辺部74は、チルト用長孔10の円弧に沿って形成されている。
【0026】
このスリット9aは、車体前方側が開放する横向きU字状に形成されている。また、スリット9aの後辺部74は、軸孔7を曲率中心とする円弧状に形成されている。なお、この後辺部74は、より大きな半径の円弧であってもよく、また直線形状であってもよい。
【0027】
舌片部9は、図1,6から明らかなように、弾性変形の基端9bとなるスリット9aの両端を結ぶ線がチルト調整方向であるチルト用長孔10の円弧の方向と近似するように設定されている。これにより、舌片部9自体が、自己の弾性域の範囲内で、略同じ操作力でより容易に弾性変形可能となっている。なお、クランプ片部8,8同士も、互いに接近離間する方向に自己の弾性域の範囲内で弾性変形可能となっている。
【0028】
一方のクランプ片部8におけるチルト用長孔10は、舌片部9の先端側(図6における左側端)に位置している。
【0029】
これにより、一方のクランプ片部8におけるチルト用長孔10は、舌片部9の基端9bまでの距離が、チルト位置にかかわらず略一定となるよう形成されている。換言すると、一方のクランプ片部8におけるチルト用長孔10は、舌片部9の基端9bとの距離が、チルト用長孔長手方向で略一定となるように形成されている。ここで、舌片部9の基端9bとは、スリット9aの上辺部72の先端とスリット9aの下辺部73の先端とを結んだ直線上の部分である。この基端9bは、チルト用長孔10の曲率に沿うように傾いている。換言すると、基端9bは、チルト用長孔10と略平行となるように形成されている。
【0030】
そして、チルト用長孔10が舌片部9の先端側に形成され、チルト用長孔10と舌片部9の基端9bとの間に変形容易な部分が確保される。そのため、舌片部9のばね定数を相対的に低くすることができる。換言すれば、舌片部9の剛性を相対的に低くすることができる。
【0031】
さらに、スリット9aが設けられた一方のクランプ片部8においては、スリット9aの外側を囲うように補強部が一体に設けられている。この補強部は、スリット9aの外側を囲う4方向にそれぞれ配置された、第1フランジ部75、第2フランジ部76、第3フランジ部77及び第4フランジ部78を有している。第1〜第4フランジ部75,76,77,78は、それぞれクランプ片部8の側方に突出するよう形成されている。換言すれば、第1〜第4フランジ部75,76,77,78は、それぞれクランク片部8に対して直交するよう形成されている。
【0032】
前方側フランジ部である第1フランジ部75は、スリット9aの車両前方側に位置し、スリット9aの開放部、換言すると舌片部9の基端9bに隣接して対向するよう形成されている。詳述すると、第1フランジ部75は、ステー1bの前端部の一部を下方へ折曲した部分によって構成されている。
【0033】
上方側フランジ部である第2フランジ部76は、スリット9aの車両上方側に位置し、スリット9aの上辺部72に隣接して対向するよう形成されている。詳述すると、第2フランジ部76は、ステー1bのうち側壁部1aの外側に張り出して取付孔71が形成された部分によって構成されている。つまり、第2フランジ部76は、第1フランジ部75と一体となって連続していると共に、取付ブラケット1の車体への取り付け用フランジを兼ねている。
【0034】
後方側フランジ部である第3フランジ部77は、スリット9aの車両後方側に位置し、スリット9aの後辺部74に隣接して対向するよう形成されている。詳述すると、第3フランジ部77は、クランプ片部8の後端縁である側壁部1aの後端縁に沿って形成されており、クランプ片部8の外周縁8(後端縁)を外側に折曲してなる部分と、ステー1bの後端部の一部を下方へ折曲した部分とを溶接して一体に結合することで構成されている。換言すると、第3フランジ部77は、ステー1bからなる部分と、側壁部1aの後端縁(外周縁)を折曲してなる部分とを重ねるように配置し、この重ねた部分が全長に亙って溶接することによって構成されている。つまり、第3フランジ部77は、第1、第2フランジ部75,76と一体となって連続している。
【0035】
下方側フランジ部である第4フランジ部78は、スリット9aの車両下方側に位置し、スリット9aの下辺部73に隣接して対向するよう形成されている。詳述すると、第4フランジ部78は、クランプ片部8の下端縁である側壁部1aの下端縁に沿って形成されており、クランプ片部8の外周縁(下端縁)を外側に折曲した部分によって構成されている。この第4フランジ部78は、第3フランジ部77と一体となって連続している。
【0036】
また、第1〜第4フランジ部75,76,77,78は、図2に示すように、スリット9aを設けていない側のクランプ片部8にも同様に設けられている。
【0037】
なお、本実施の形態では、ステー1bが一対の側壁部1a,1aに対して溶接により接合されており、第1フランジ部75及び第2フランジ部76は、側壁部1aに対して直線状に接する部分が全長に亙って溶接されている。
【0038】
図2に示すチルトブラケット2は、左右一対の側壁部とそれら側壁部同士の間に位置する下壁部2aとにより上面が開放されたいわゆる上向きU字状のものとして形成されていて、前端部ではフランジ付きの円筒状の軸受ホルダ11が双方の側壁部間に配置されている。また、チルトブラケット2の双方の側壁部の前端部にはそれぞれに軸孔12が形成されているほか、下壁部2aには前後方向に沿ってテレスコ位置調整のための第2のテレスコ用長孔13が形成されていると共に、双方の側壁部の後端部には一対の締結片部2bが上方に向けて延長形成されている。なお、第2のテレスコ用長孔13の詳細については後述する。
【0039】
チルトブラケット2は、図1,5に示すように、取付ブラケット1のU字状空間内に納まるように組み付けられ、その際にチルトブラケット2側の軸孔12と取付ブラケット1側の軸孔7とを合致させた上でチルト軸として機能するチルトヒンジピン14を挿入してかしめ固定することにより、チルトブラケット2はチルトヒンジピン14を支点として揺動可能に、すなわちチルト位置調整可能に取付ブラケット1に対し支持される。そして、上記のように、上向きU字状のチルトブラケット2が下向きU字状の取付ブラケット1のU字状空間内に納まるように組み付けられることにより、両者の重合部では略箱形(ボックス状)の断面形状を呈するかたちとなっている。
【0040】
また、図1〜3に示すように、チルトブラケット2の双方の側壁部の外側にはそれぞれに引っ張りコイルばねタイプのアシストスプリング15が配置される。このアシストスプリング15の上端部のフック部は取付ブラケット1側の係止片16aに、下端部のフック部はチルトブラケット2の双方の側壁部に形成された係止片16bにそれぞれ係止される。これにより、取付ブラケット1に対しチルト位置調整可能なチルトブラケット2は、常時上方側、すなわちチルトヒンジピン14を支点として図2の反時計周り方向に付勢され、締結解除時のステアリングコラムの落下防止とチルト上段方向への操作力を軽減している。
【0041】
図5に示したチルトブラケット2の双方の側壁部の後端部に形成された締結片部2bは、それらの締結片部2b,2b同士が互いに接近離間する方向に弾性変形可能となっていて、それぞれに略平行四辺形の角孔2cが形成されている。
【0042】
図1,2および図4,5に示すミッドジャケット3は、後述するように四角形または変形八角形の筒状をなすジャケット本体17と、そのジャケット本体17の上面に固定されたディスタンス部としてのディスタンスブラケット18と、ジャケット本体17の前端から延長形成された上向きU字状のフロントブラケット19とから構成されている。
【0043】
ディスタンスブラケット18は下面が開放された下向きU字状のものであり、その下端部側がジャケット本体17を跨ぐように近接させた上で溶接等によりジャケット本体17に固定されている。ミッドジャケット3は、ジャケット本体17が四角形または変形八角形の筒状のものでありながらも、その上面側にディスタンスブラケット18が溶接固定されることにより、ジャケット本体17との間にボックス断面形状を形成していて、ディスタンスブラケット18の双方の側壁部がチルトブラケット2の内側面に摺接することになる。このディスタンスブラケット18の双方の側壁部には、前後方向に沿ってテレスコ位置調整に際してガイドとなる第1のテレスコ用長孔20が形成されている。
【0044】
さらに、図2,5に示すように、ミッドジャケット3における四角形または変形八角形のジャケット本体17の一方の側壁部は、前後方向に沿ってラックの如き形態のロックツースを有するコラム側テレスコロックツース板21が固定される。そして、後述するように、共にU字状をなす取付ブラケット1とチルトブラケット2との内側にミッドジャケット3が摺動可能に配置され、同時に取付ブラケット1のクランプ片部8とチルトブラケット2の締結片部2bとにより、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18を両側から締結して保持することが可能となっている。
【0045】
図1,2および図4,5に示すアッパージャケット4は、ミッドジャケット3のジャケット本体17と相似形の四角形または変形八角形の筒状をなしていて、ジャケット本体17に対しリニアベアリングまたはリニアガイド22(図7参照。)を介して摺動可能に挿入される。さらに、アッパージャケット4には、図4に示すように、ステアリングシャフト5のアッパーシャフト5aがアッパーベアリング23(図4参照)を介して回転可能に支持されるとともに、このアッパーシャフト5aに対して軸方向に移動可能に且つ一体で回転可能にステアリングシャフト5のロアシャフト5bがセレーション嵌合にて接続される。なお、ロアシャフト5bの前端部は、図5のチルトブラケット2の軸受ホルダ11に支持されたロアベアリング24(図4参照)を介して回転可能に支持された上で、例えば図示外のステアリングギヤ装置の入力部に自在継手や中間シャフトを介して接続される。
【0046】
そして、図1,2に示すように、ミッドジャケット3のジャケット本体17とアッパージャケット4との軸心方向での相対位置決めを行い、双方の側壁部に形成されたピン孔に両者にまたがるように例えば樹脂製のシャーピン(せん断ピン)25を圧入することで、ミッドジャケット3のジャケット本体17とアッパージャケット4とを固定してある。なお、シャーピン25の機能は、通常時にはミッドジャケット3のジャケット本体17とアッパージャケット4との相対移動を阻止するように両者を連結しているものの、車両衝突時にアッパージャケット4に所定値以上の荷重が加わった場合に初めてせん断されて、ジャケット本体17とアッパージャケット4との相対移動を許容する公知のものである。
【0047】
以上の説明から明らかなように、チルトブラケット2、ミッドジャケット3、アッパージャケット4およびステアリングシャフト5からなるステアリングコラムがチルトヒンジピン14を中心として揺動動作することによりチルト位置調整が行われ、他方、ステアリングコラムのミッドジャケット3とチルトブラケット2との間で相対移動することでテレスコ位置調整が行われることになる。
【0048】
図5に示すロック機構6は、クランプ軸としてのロックボルト26と、ストロークガイド27、把手部28aが後方側に延びている操作レバー28、乗り上げカム部材29とプロフィールカム部材30、およびツース連結板31のほか、チルトロック用とテレスコロック用の板ばねタイプのばね部材32,33と、レバー側チルトロックツース板34とそれに対向する固定側チルトロックツース板35、およびレバー側テレスコロックツース板36等から構成されている。固定側チルトロックツース板35は、一方のクランプ片部8に固定されていると共に、チルト用長孔が形成されている。
【0049】
図5に示すストロークガイド27は、一方のクランプ片部8のチルト用長孔10、チルトブラケット2の一方の締結片部2bに形成された角孔2cを貫通し、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18に形成された第1のテレスコ用長孔20に回転を規制された状態で前後方向に摺動自在に嵌合保持される。乗り上げカム部材29は操作レバー28の略平行四辺形の角孔に回転不能に嵌合保持されると共に、ツース連結板31とばね部材32およびレバー側チルトロックツース板34の三者は、それぞれにプロフィールカム部材30の角柱部に回転不能に挿入支持された上で、そのプロフィールカム部材30の角柱部がチルトブラケット2の他方の締結片部2bに形成された角孔2cを貫通し、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18に形成された第1のテレスコ用長孔20に回転を規制された状態で前後方向に摺動自在に嵌合保持される。また、レバー側テレスコロックツース板36には角柱部が形成されており、この角柱部にテレスコロック用のばね部材33が回転を規制するように挿入された上で、ツース連結板31の下側の角孔に回転を規制された状態で角穴の軸方向に摺動自在に保持され、止め輪37によって抜け止めが施される。
【0050】
そして、下向きU字状の取付ブラケット1のU字状空間内にミッドジャケット3がチルトブラケット2と共に納まるように組み付けられた状態で、ロックボルト26は、チルトブラケット2の角孔2cに嵌合保持されるストロークガイド27のほか、ディスタンスブラケット18に形成された第1のテレスコ用長孔20、固定側チルトロックツース板35、レバー側チルトロックツース板34、チルトロック用のばね部材32、ツース連結板31、チルトブラケット2の角孔2cに嵌合保持されるプロフィールカム部材30、操作レバー28の角孔に嵌合保持される乗り上げカム部材29をそれぞれ貫通した上で、操作レバー28側からベアリング(スラストニードルベアリング)38を介してナット39が締結されることで、その抜け止めが施される。
【0051】
これにより、先にも述べたように、ストロークガイド27は、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18の一方の側壁部に形成された第1のテレスコ用長孔20に、同様にプロフィールカム部材30の角柱部は、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18の他方の側壁部に形成された第1のテレスコ用長孔20に、それぞれスライド可能に嵌合保持される。
【0052】
固定側チルトロックツース板35およびレバー側チルトロックツース板34には双方の対向面に鋸歯状のロックツースが形成されている。レバー側チルトロックツース板34は操作レバー28の回転操作に応じ固定側チルトロックツース板35に対して接近離間動作することで噛合・離脱可能であって、チルト位置調整に際してそのアンロックとロックとを行う機能を有している。また、図2に示すように、レバー側テレスコロックツース板36は、チルトブラケット2の開口窓部40からミッドジャケット3の固定側テレスコロックツース板21に臨むようになっている。そして、これらの固定側テレスコロックツース板21とレバー側テレスコロックツース板36との関係は、上記固定側チルトロックツース板35およびレバー側チルトロックツース板34のそれとほぼ同様に、テレスコ位置調整に際してそのアンロックとロックとを行う機能を有している。
【0053】
ここで、テレスコ位置調整に際しては、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18に形成した第1のテレスコ用長孔20の範囲内で行われることになるが、これとは別に、図5に示すように、チルトブラケット2の下壁部2aにもテレスコ位置調整のための第2のテレスコ用長孔13が形成されている。
【0054】
図7図3の要部を拡大した断面図を示していて、図1,2のほか図4,7に示すように、チルトブラケット2の下壁部2aにはボトムブラケット41が下方に突出するように溶接固定されている。このボトムブラケット41は、図8の(A)に示すように、偏平状で且つ上向きの断面略U字状をなしていて、そのボトムブラケット41の上に同図(B)に示す樹脂製のスライド部材としてのスライダ42が重ねて配置されている。なお、図7は同部位での理解を容易にするために、異なる断面を合成して一つの図としてある。
【0055】
さらに、図4に示すように、スライダ42の上には後述するようにミッドジャケット3のフロントブラケット19の前端部が重ねて配置される。そして、図8の(A)に示すボトムブラケット41に第2のテレスコ用長孔13が形成されていると共に、第2のテレスコ用長孔13をはさんでその両側には上面が凹形状となる断面円弧状のガイド溝43が第2のテレスコ用長孔13に近接して平行に形成されている。この第2のテレスコ用長孔13は、図5に示したミッドジャケット3のディスタンスブラケット18に形成された第1のテレスコ用長孔20よりも前方側に位置している。
【0056】
他方、図8の(B)に示すスライダ42には取付孔44が貫通形成されているほか、取付孔44の両側であって且つ同図(A)のボトムブラケット41側のガイド溝43と個別に合致する部分には下向き凸形状となる断面円弧状の突起部45が形成されている。
【0057】
そして、図7,8に示すように、ボトムブラケット41とスライダ42とを重ね合わせた時には、スライダ42の取付孔44がボトムブラケット41の第2のテレスコ用長孔13に合致すると共に、ボトムブラケット41のガイド溝43にスライダ42の突起部45がそれぞれ合致するようになっている。この場合に、ボトムブラケット41のガイド溝43に対してスライダ42の突起部45がガイド溝43の長手方向で線接触となるように、ガイド溝43のうちスライダ42の突起部45と接する面側での曲率半径を突起部45の曲率半径よりも小さく設定してある。
【0058】
図9は先に述べたミッドジャケット3単独での詳細を示していて、同図(A)は平面図、(B)は同図(A)の正面図、(C)は同図(B)の左側面図である。ジャケット本体17の前端にはこれを延長するように略上向きU字状のフロントブラケット19が溶接固定されている。このフロントブラケット19の底壁部19aの前端には、チルトブラケット2側へ突出し、ボトムブラケット41に対向してスライダ42の着座部となる略上向きU字状の着座フランジ部46が形成されていて、この着座フランジ部46にナット(プロジェクションナット)47が溶接固定されている。なお、フロントブラケット19の底壁部19aは、ミッドジャケット3におけるジャケット本体17の底壁部の一部として一体に形成されている。
【0059】
そして、図10は、ボトムブラケット41とスライダ42およびフロントブラケット19のナット47との関係を、フロントブラケット19を省いた分解図で示している。
【0060】
図7および図10に示すように、ボトムブラケット41の下側から弾性部材としての皿ばね48とワッシャー49とを介して締結部材としての段突き形状のボルト50を第2のテレスコ用長孔13およびスライダ42の取付孔44に挿通させた上で、そのボルト50をフロントブラケット19の着座フランジ部46に溶接固定されている締結部材としてのナット47に締め込むことで、第2のテレスコ用長孔13が形成されたボトムブラケット41と、スライダ42およびフロントブラケット19の着座フランジ部46の三者が弾性的に共締めされている。これにより、図7に示すように、ボトムブラケット41とワッシャー49とがガイド溝43の背面側の二箇所にて線接触するかたちとなると共に、ボトムブラケット41のガイド溝43とスライダ42側の突起部45とが圧接して、ガイド溝43に対して突起部45がそれぞれに二箇所にて線接触するかたちとなっている。
【0061】
この構造により、テレスコ位置調整のために、ミッドジャケット3がスライダ42と共にチルトブラケット2のボトムブラケット41に対してスライド可能に支持されていて、ボトムブラケット41と、スライダ42およびフロントブラケット19の着座フランジ部46の三者が弾性的に共締めされていることにより、図7の上下方向および左右方向のいずれの方向においてもがたつきが発生しないようになっている。
【0062】
以上の説明から明らかなように、チルトブラケット2のボトムブラケット41とミッドジャケット3のフロントブラケット19との間に挟まれたスライド部材としてのスライダ42と、そのスライダ42をボトムブラケット41とフロントブラケット19との間に弾性的に共締めしている皿ばね48とワッシャー49、ボルト50、およびナット47とにより、テレスコ位置調整のためにミッドジャケット3に設けられた摺動ガイド部材51が構成されていることになる。同時に、この摺動ガイド部材51とボトムブラケット41の第2のテレスコ用長孔13とにより、テレスコガイド機構52が構成されていることになる。
【0063】
図4,5に示すように、ミッドジャケット3のジャケット本体17の上面には、衝突時のエネルギー吸収のためのエネルギー吸収ワイヤ(以下、単にワイヤと言う。)53が配設されている。このワイヤ53は偏平W字状またはM字状に折り曲げられていて、前端側の折り曲げ基部53aと双方の自由端部53cとが図11に示すようなガイド部材としてのワイヤガイド54のワイヤ挿通孔54a,54bに挿入された上で、ジャケット本体17の上面に二本のねじ55で固定されている。そして、ワイヤ53の前端側の折り曲げ基部53aは、図4に示すようにアッパージャケット4の前端上面に突出形成された係止部56に係止されている一方、ワイヤ53の後端側の一対の折り曲げ基部53bは、図11に示したワイヤガイド54における半円筒状のガイド突起部54cの案内面にそれぞれに巻き掛けられている。
【0064】
この構造では、万一、車両の衝突に伴う乗員の二次衝突時に、ステアリングホイールおよびステアリングシャフト5を介して、ステアリングコラムを収縮させるような荷重が加わると、図1,2に示すシャーピン25がせん断された上で、リニアガイド22を介してアッパージャケット4がミッドジャケット3のジャケット本体17に対して収縮動作する。その際に、図4に示すアッパージャケット4の係止部56に係止されているワイヤ53が引き出されて、そのワイヤ53がガイド突起部54cの案内面に沿って連続的に変形することで衝突エネルギーを吸収することになる。なお、係止部56は図4に示したジャケット本体17のスリット17aに挿通されているので、アッパージャケット4とジャケット本体17との組立てに支障をきたすことはない。
【0065】
次に、以上のように構成されたステアリングコラム装置でのチルト位置調整操作およびテレスコピック位置調整操作について説明する。
【0066】
図1,2に示すように、操作レバー28の把手部28aがステアリングコラムとほぼ平行となるように延びている状態がロック状態であり、この状態では、図5に示した乗り上げカム部材29のカム山がプロフィールカム部材30のカム山に乗り上げていて、ステアリングコラムのチルト位置調整機能およびテレスコピック位置調整機能が共にロック状態となっている。
【0067】
すなわち、乗り上げカム部材29とプロフィールカム部材30におけるカム山同士が互いに乗り上げていることにより、ロックボルト26がその軸方向で操作レバー28側に引っ張られてストロークガイド27とツース連結板31及びプロフィールカム部材30の間隔が狭まることで、取付ブラケット1の一対のクランプ片部8を最も外側にして、その内側のチルトブラケット2の一対の締結片部2bと、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18とが、ロックボルト26の軸心方向において締結されている。同時に、図5に示したレバー側チルトロックツース板34のロックツースが取付ブラケット1の一方のクランプ片部8に設けた固定側チルトロックツース板35のロックツースと噛み合うと共に、ばね部材33を介してツース連結板31に押されることでレバー側テレスコロックツース板36のロックツースがミッドジャケット3の側面に設けたコラム側テレスコロックツース板21のロックツースと噛み合うことになる。
【0068】
なお、レバー側となるそれぞれのロックツース板34,36のロックツースと固定側またはコラム側となる双方のロックツース板35,21のロックツースとが互いに歯先同士で接続するいわゆる歯先ロックの状態となった場合でも、双方のレバー側となるロックツース板34,36を付勢しているばね部材32,33が弾性変形することでクランプ片部8とツース連結板31は圧接した状態となることができ、ロックボルト26に発生する軸力に影響することなくロックできる。
【0069】
これにより、チルトブラケット2が取付ブラケット1に対してチルト位置調整不能に、且つミッドジャケット3がチルトブラケット2に対してテレスコ位置調整不能に、それぞれロックされている。
【0070】
その一方、チルト位置調整(車両上下方向での位置調整)またはテレスコ位置調整(車両前後方向での位置調整)に際しては、図1,2に示した操作レバー28の把手部28aを握って下方に所定量だけ回動操作する。この操作レバー28の下方への回動操作により、図5に示した乗り上げカム部材29のカム山が相手側のプロフィールカム部材30のカム山同士の間の谷部に落ち込み、ロックボルト26の引っ張り軸力が緩められて、それまで取付ブラケット1のクランプ片部8等に作用していた締結保持力が解除されてステアリングコラムがいわゆるアンロック状態となる。
【0071】
ここで、図5に示したばね部材32は、レバー側となるチルトロックツース板35をロック方向に付勢する機能と、アンロック方向に解除する機能とを有していて、上記アンロック状態では、ばね部材32のばね力により、レバー側となるチルトロックツース板34が、相手側となる固定側チルトロックツース板35から離脱した状態を維持する。また、この時、同時にツース連結板31がアンロック方向に移動することで、レバー側テレスコロックツース板36が相手側となるコラム側テレスコロックツース板21から離脱した状態を維持する。
【0072】
このアンロック状態で、チルトヒンジピン14を揺動中心として取付ブラケット1に対しチルトブラケット2を車両上下方向(図2の矢印a方向)に揺動操作すれば、そのチルトブラケット2とミッドジャケット3およびアッパージャケット4の三者を一体としたステアリングコラムの位置の調整が可能であり、取付ブラケット1の一対のクランプ片部8に形成されたチルト用長孔10および固定側チルトロックツース板35のチルト用長孔の範囲内で、チルト位置調整(車両上下方向での位置調整)が可能となる。
【0073】
また、上記アンロック状態で、アッパージャケット4をミッドジャケット3とともに車両前後方向(図2のb方向)に進退移動させれば、図5に示すように、ミッドジャケット3のディスタンスブラケット18に形成された第1のテレスコ用長孔20、およびチルトブラケット2のボトムブラケット41に形成された第2のテレスコ用長孔13の範囲内で、テレスコ位置調整(車両前後方向での位置調整)が可能となる。この場合において、ロックボルト26は上記第1のテレスコ用長孔20にも挿通されているので、ロックボルト26がテレスコ位置調整に際して支障をきたすことはない。
【0074】
このようにしてチルト位置調整またはテレスコ位置調整を行った後に、操作レバー28を再度図1,2の位置まで上方に回動操作すれば、先のロック状態に復帰することになる。
【0075】
このようなステアリングコラム装置においては、チルト位置を所望の位置に固定する際に、ロック機構6によりクランプ片部8の舌片部9が変形してチルトブラケット2を挟持する。このとき、舌片部9は、チルト位置にかかわらず、上辺部72の先端と下辺部73の先端と結んだ直線上の部分である基端9bを支点に変形する。つまり、舌片部9は、基端9bを固定端とするいわゆる片持ちはりと類似した構成となる。ここで、ロックボルト26の軸芯と基端9bの距離はチルト用長孔10のどの位置においてもほとんど差がないため、ロック機構6によりクランプ片部8の舌片部9を締め付ける際の操作力は、チルト位置による変動が少なくなる。従って、ステアリングコラム装置は、ロック機構6によりチルト位置を固定する際の操作性を安定させることができる。
【0076】
また、スリット9aを設けたことにより、舌片部9は軽い力でロックボルト26の軸方向への弾性変形が可能になる。そのため、ステアリングコラム装置は、ロック機構6を操作する際の操作力を相対的に小さくできる。
【0077】
そして、舌片部9の剛性を低くして撓み易くすることで、ロック機構6によりクランプ片部8の舌片部9を締め付けた際の軸力ロスが少なくなり、チルトブラケット2を確実に保持することができる。
【0078】
そのため、スリット9aを設けていない他方のクランプ片部8の剛性を強くした場合でも、ロックのための軸力を確保しつつ、操作力を軽くできる。これにより、支持剛性の向上と、操作力の軽減及び安定化が図れる。
【0079】
また、スリット9aが設けられたクランプ片部8においては、舌片部9の変形が容易になる一方で、全体の剛性はスリット9aの外側を囲うように設けた第1〜第4フランジ部75,76,77,78によって向上する。さらに言えば、スリット9aが設けられたクランプ片部8においては、スリット9aの周囲の剛性を、第1〜第4フランジ部75,76,77,78によって向上させることができる。特に、第1フランジ部75を舌片部9の基端9bに隣接して配置することで、一方のクランク片部8aは、舌片部9の基端9bの周辺の剛性が向上し、この部分の変形を抑制することができる。
【0080】
これにより、スリット9aが設けられたクランプ片部8においても、剛性を向上させることができ、ステアリングコラム装置全体の剛性を更に向上できる。
【0081】
そして、チルト用長孔10は、舌片部9の基端9bまでの距離が、チルト位置にかかわらず略一定となるよう形成されている。そのため、例えば、チルト上限位置でのロックボルト26と舌片部9の基端9bまでの距離と、チルト下限位置でのロックボルト26と舌片部9の基端9bまでの距離と、を略同じにすることができる。つまり、ロック機構6によりクランプ片部8の舌片部9を締め付ける際の操作力をチルト位置によらず均一にすることができる。
【0082】
また、スリット9aが、車両前方側に向かって開放するU字状に形成されているので、チルト用長孔10は相対的に車両後方側に位置することになる。そのため、チルトブラケット2を挟持する位置が相対的に車両後方側となり、ステアリングコラム装置の振動剛性を相対的に向上させることができる。
【0083】
なお、上述した本実施の形態の取付ブラケット1は、軸孔7の形成された車両前方側の部分と、チルト用長孔10の形成された車両後方側のクランク片部8とが一体となった構成となっているが、取付ブラケット1を車両の前後方向に2分割した構成としてもよい。詳述すると、取付ブラケット1を、ステー1c及び軸孔7を含む前方側取付ブラケットと、ステー1b、クランプ片部8及びチルト用長孔10を含む後方側取付ブラケットと、に二分割したものに置き換えることも可能である。
【0084】
また、上述した本実施の形態では、ロック機構6の操作レバー28が設けられていない側のクランプ片部8にスリット9aが形成されているが、ロック機構6の操作レバー28が設けられている側のクランプ片部8にスリット9aを設けることも可能である。
【0085】
そして、第1フランジ部75は、その下端が第4フランジ部78と一体となって連続するように形成してもよい。
【0086】
上述した本実施の形態において、必要な剛性が得られるのであれば、第3フランジ部77や第4フランジ部78の一部または全部を省略することも可能である。すなわち、スリット9aの周囲に、第1フランジ部75及び第2フランジ部76のみを設けたり、第1〜第3フランジ部75,76,77のみを設けたりしてもよい。
【0087】
また、必要な剛性が得られるのであれば、第1〜第4フランジ部75,76,77,78は、互いに一体となって連続している必要はなく、例えば第1フランジ部75の上端が第2フランジ部76に対して離間していてもよい。但し、各フランジ部が隣接するフランジ部に対して一体となって連続している方が、クランプ片部8の剛性が相対的に高くなる。
【0088】
そして、スリット9aは、上述した本実施の形態とは逆に、車両前方側に向かって開口するU字状に形成することも可能である。但し、この場合、チルトブラケット2を挟持する位置は、相対的に車両前方側となる。
【符号の説明】
【0089】
1…取付ブラケット(車体取付ブラケット)
1a…側壁部
2…チルトブラケット(ステアリングコラム)
3…ミッドジャケット(ステアリングコラム)
4…アッパージャケット(ステアリングコラム)
5…ステアリングシャフト
6…ロック機構
8…クランプ片部
9…舌片部
9a…スリット
9b…基端
10…チルト用長孔
26…ロックボルト(クランプ軸))
75…第1フランジ部
76…第2フランジ部
77…第3フランジ部
78…第4フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11