特許第6659460号(P6659460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6659460通信装置、通信方法、通信プログラムおよび通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659460
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、通信プログラムおよび通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20200220BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20200220BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20200220BHJP
【FI】
   H04W40/02
   H04W88/04
   H04W92/18
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-102300(P2016-102300)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-212484(P2017-212484A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年8月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 総務省「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発〜複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発〜技術課題イ−2複数移動通信網対応端末技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 明
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−54763(JP,A)
【文献】 特開2007−165980(JP,A)
【文献】 特開2006−13734(JP,A)
【文献】 特表2014−530564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置と無線により通信する通信部と、
他の通信装置と無線により直接通信する通信装置間通信部と、
自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う制御部と、
を備え
前記制御部は、
マルチパスTCPにより通信を行う機能を有し、
通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、
前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う、
通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、自己と通信相手との間における前記他の通信装置およびそれより後位の別の通信装置を経由する通信経路を決定する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記他の通信装置から通信経路に関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する、
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報として通信速度の情報に基づいて通信経路を決定する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記無線基地局装置からネットワークに関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
無線基地局装置と無線により通信し、
他の通信装置と無線により直接通信し、
自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う場合に、マルチパスTCPにより通信を行う機能を用いて、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う、
通信方法。
【請求項7】
無線基地局装置と無線により通信するステップと、
他の通信装置と無線により直接通信するステップと、
自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う場合に、マルチパスTCPにより通信を行う機能を用いて、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行うステップと、
をコンピュータに実行させるための通信プログラム。
【請求項8】
通信装置と無線基地局装置とを有し、
前記通信装置は、無線基地局装置と無線により通信し、他の通信装置と無線により直接通信し、自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行い、
前記無線基地局装置は、前記通信装置と無線により通信し、
前記通信装置は、マルチパスTCPにより通信を行う機能を有し、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法、通信プログラムおよび通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IOT(Internet of Things)の普及によって、スマートフォンやタブレット端末だけでなく、多くの装置が直接インターネットに接続することが可能な通信経路を有するようになってきた。しかしながら、これらの装置は、それぞれの装置が行う通信のみで使用することができるように設計されており、他の装置から使用することができない。このため、これらの装置が有する通信経路の通信状態が悪くなった場合には、無線区間における通信速度が遅くなり、動画の再生処理が止まることなどによりユーザの体感が悪くなることや、無線区間におけるデータの再送が頻繁に起こり、無線周波数の利用効率が大幅に悪くなることが発生する場合があった。通信経路としては、Wi−Fi(Wireless Fidelity)やLTE(Long Term Evolution)などがある。
【0003】
なお、モバイルルータなどを経由して通信を行う形態もある。
また、モバイルアドホックネットワーク(MANET:mobile ad hoc network)が知られている、MANETは、無線アドホックネットワークの一種であり、物理層とデータリンク層のアドホックネットワークの上にルーティングを行うネットワーク環境がある。MANETは、通信を経由する各装置において通信経路を選択して通信を行う分散制御の技術である。
【0004】
また、マルチパストランスポートプロトコル(MPTP:MultiPath Transport Protocol)が知られている。MPTPは、インターネット上のソースと宛先との間のトランスポートレイヤにおいて管理されるべき複数のサブフローまたはストリームのサポートを可能にする。
一例として、特許文献1には「マルチパストランスポートを使用した協調帯域幅アグリゲーション」に関する技術が記載されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−111879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、通信装置は当該通信装置(自己の通信装置)の通信経路を制御しているが、通信効率が不十分となる場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、他の通信装置における通信経路を制御することで、通信効率を良好にすることができる通信装置、通信方法、通信プログラムおよび通信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、一態様に係る通信装置は、無線基地局装置と無線により通信する通信部と、他の通信装置と無線により直接通信する通信装置間通信部と、自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う制御部と、を備え、前記制御部は、マルチパスTCPにより通信を行う機能を有し、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う。
一態様に係る通信装置は、前記制御部は、自己と通信相手との間における前記他の通信装置およびそれより後位の別の通信装置を経由する通信経路を決定する、構成が用いられてもよい。
一態様に係る通信装置は、前記制御部は、前記他の通信装置から通信経路に関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する、構成が用いられてもよい。
一態様に係る通信装置は、前記制御部は、前記情報として通信速度の情報に基づいて通信経路を決定する、構成が用いられてもよい。
一態様に係る通信装置は、前記制御部は、前記無線基地局装置からネットワークに関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する、構成が用いられてもよい。
【0009】
上記の課題を解決するために、一態様に係る通信方法は、無線基地局装置と無線により通信し、他の通信装置と無線により直接通信し、自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う場合に、マルチパスTCPにより通信を行う機能を用いて、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う。
上記の課題を解決するために、一態様に係るプログラムは、無線基地局装置と無線により通信するステップと、他の通信装置と無線により直接通信するステップと、自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う場合に、マルチパスTCPにより通信を行う機能を用いて、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行うステップと、をコンピュータに実行させるための通信プログラムである。
【0010】
上記の課題を解決するために、一態様に係る通信システムは、通信装置と無線基地局装置とを有し、前記通信装置は、無線基地局装置と無線により通信し、他の通信装置と無線により直接通信し、自己と通信相手との間における前記他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行い、前記無線基地局装置は、前記通信装置と無線により通信し、前記通信装置は、マルチパスTCPにより通信を行う機能を有し、通信を行う前に、前記マルチパスTCPにおける自己とそれぞれの前記無線基地局装置との間のサブフローを設定し、前記他の通信装置に対して自己から指定する前記通信経路を経由して通信を行うように要求することで、前記通信経路を使用して通信を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、他の通信装置(直接接続することが可能な通信装置や、それより後位の通信装置)における通信経路を制御することで、通信効率を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る通信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る通信装置が直接接続している他の通信装置に関するログ情報の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る通信装置が直接接続している他の通信装置の後位にある別の通信装置に関するログ情報の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る通信装置が使用することが可能な通信経路を決定する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る通信装置により行われる通信制御の一例(第1の例)を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係る通信装置により行われる通信制御の一例(第2の例)を説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る通信装置により行われる通信の一例(第1の例)を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る通信装置により行われる通信の一例(第2の例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の概略的な構成を示すブロック図である。
通信システム1は、複数の通信装置11〜13と、複数の無線基地局装置21〜23と、サーバ装置31(通信相手の一例)と、通信ネットワーク41を備える。各無線基地局装置21〜23およびサーバ装置31は、通信ネットワーク41と接続されている。通信ネットワーク41としては、任意のネットワークが用いられてもよく、例えば、インターネットが用いられてもよい。
各無線基地局装置21〜23は、自己の通信可能領域に存在する通信装置11〜13と無線により通信することが可能である。各通信装置11〜13は、無線により互いに直接接続して通信することが可能である。
【0015】
本実施形態では、各通信装置11〜13は、個別の識別情報などが異なる点を除いて、同一の機能を有する。
各通信装置11〜13は、例えば、スマートフォンやタブレット端末のように、ユーザによって操作される端末装置である。他の例として、各通信装置11〜13は、車や家などに設置される通信装置であってもよい。
【0016】
各通信装置11〜13は、当該各通信装置11〜13(自装置)により通信する前、および通信中に、直接接続することが可能な他の通信装置を発見した場合に、当該他の通信装置と直接接続して(直接接続を確立して)、当該他の通信装置に記憶された通信経路の情報を当該他の通信装置から取得(受信)する。各通信装置11〜13は、当該他の通信装置から通信経路の情報を取得する際に、当該他の通信装置がさらに他の通信装置(ここで、説明の便宜上、「別の通信装置」という。)との接続が完了していて当該別の通信装置との通信経路の情報を記憶している場合には、当該情報も合わせて取得(受信)する。
また、各通信装置11〜13は、無線基地局装置21〜23から通信ネットワーク41の状態に関する情報を受信する機能を有する。通信ネットワーク41の状態に関する情報としては、例えば、通信経路の状態の情報や、通信装置の状態の情報などが用いられてもよい。これらの状態としては、通信障害の有無などの状態が用いられてもよい。
【0017】
各通信装置11〜13は、当該各通信装置11〜13(自装置)における通信経路の状態や、直接通信可能な他の通信装置から取得した情報(当該他の通信装置またはそれより後位の他の通信装置に関する情報)に基づく通信経路の状態や、無線基地局装置21〜23から取得した情報に基づく通信ネットワーク41の状態に関する情報を集中管理して、当該情報に基づいて、これらを総合的に判断して、通信時の状態に適した(一例として、最適な)通信経路を選択するように制御する。
【0018】
各通信装置11〜13は、ユーザによって操作されるなどして当該各通信装置11〜13(自装置)が通信の起点となる場合には、通信の起点となるときに対応した動作を行う。また、各通信装置11〜13は、当該各通信装置11〜13(自装置)が他の通信装置から直接接続された場合には、直接接続されたときに対応した動作を行う。
本実施形態では、説明の便宜上、通信装置11が通信の起点となり、他の通信装置12、13が直接接続される場合を想定して説明する。
なお、本実施形態では、図などにおいて、他の通信装置12、13を「通信装置(中継)」と記載する場合もあり、他の通信装置13(別の通信装置)を「通信装置(さらに中継)」と記載する場合もある。
【0019】
通信装置11は、無線基地局装置21と無線により通信することで、当該無線基地局装置21を経由して、通信ネットワーク41と接続することが可能である。また、通信装置11は、直接接続することが可能な他の通信装置12と無線により通信することで、当該他の通信装置12(さらに、無線基地局装置22または無線基地局装置23)を経由して通信ネットワーク41と接続することが可能である。また、通信装置11は、直接接続することが可能な他の通信装置12と、当該他の通信装置12により直接接続することが可能な別の通信装置13(後位の通信装置)(さらに、無線基地局装置22または無線基地局装置23)を経由して通信ネットワーク41と接続することが可能である。
なお、図1の例では、通信装置12、13は、2個の無線基地局装置22、23のうちのいずれとも無線により通信することが可能である。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る通信装置11の概略的な構成を示すブロック図である。
通信装置11は、通信部111と、通信装置間通信部112と、記憶部113と、制御部114を備える。制御部114は、通信経路情報取得部131と、情報分析部132と、通信制御部133を備える。
なお、通信装置間の通信は、D2D(Device to Device)通信と呼ばれることもある。
【0021】
通信部111は、無線基地局装置21と無線により通信を行う。具体的には、通信部111は、制御部114から出力された信号を変調してRF(Radio Frequency)信号を生成し、アンテナ(不図示)を介して当該RF信号を無線送信する。また、通信部111は、アンテナを介して受信したRF信号を復調し、これにより得られた信号を制御部114に出力する。
通信装置間通信部112は、他の通信装置12と直接接続することが可能な場合には、当該他の通信装置12と接続して通信を行う。具体的には、通信装置間通信部112は、制御部114から出力された信号を変調してRF信号を生成し、アンテナ(不図示)を介して当該RF信号を無線送信する。また、通信装置間通信部112は、アンテナを介して受信したRF信号を復調し、これにより得られた信号を制御部114に出力する。
なお、本実施形態では、通信部111が使用するアンテナと、通信装置間通信部112が使用するアンテナとは同一であるが、他の構成例として、異なってもよい。
【0022】
記憶部113は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などを含んで構成される。
記憶部113は、通信装置11を機能させるために使用される各種の情報を記憶し、例えば、制御部114が動作するためのプログラムやパラメータを記憶する。
また、記憶部113は、制御部114の通信経路情報取得部131により取得された情報、情報分析部132による分析結果の情報、および通信部111を経由して取得された通信ネットワーク41の状態を表す情報を記憶する。
また、記憶部113は、制御部114により生成されたログ情報を記憶する。当該ログ情報は、自己の通信装置11および接続している他の通信装置12、13に関して、無線通信状態を表す情報を含む。
【0023】
制御部114は、通信装置11における各種の処理を制御する。制御部114は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有しており、当該CPUにより記憶部113に記憶されたプログラムを実行することで、各種の処理を制御する。
通信経路情報取得部131は、自己の通信装置11および他の通信装置12、13について、無線状態(例えば、電波の強度の状態)、通信状態、および通信ネットワーク41の状態(ネットワーク状態)などに関する情報を取得して、記憶部113に当該情報を記憶させる。当該情報は、通信経路の情報として使用され得る。なお、本実施形態では、通信経路情報取得部131は、記憶部113に情報の保存を依頼することで、当該記憶部113に当該情報を記憶させる。
【0024】
ここで、通信経路情報取得部131により情報を取得するタイミング(以下で、「情報取得タイミング」ともいう。)としては、任意のタイミングが用いられてもよい。情報取得タイミングとしては、例えば、自己の通信装置11が他の通信装置12と直接接続を行った後における通信開始前の任意のタイミングが用いられてもよい。当該通信開始前としては、通信開始の直前が用いられてもよく、または、もっと前が用いられてもよい。また、情報取得タイミングとしては、自己の通信装置11が他の通信装置12と直接通信しているとき(通信中)における任意のタイミングが用いられてもよく、この場合、例えば、通信品質が良好であったが劣化してきた通信経路については不使用とする(キャンセルとする)構成が用いられてもよい。また、情報取得タイミングとしては、例えば、リアルタイムのタイミングであってもよく、または、それよりも遅れたタイミングであってもよい。
また、通信経路情報取得部131により取得する情報としては、任意の情報であってもよい。当該情報としては、例えば、各通信装置における通信経路のインタフェースの状態(例えば、インタフェースの電源がオンであるまたはオフであるという状態)の情報が用いられてもよく、また、無線の電波の強度の情報や、無線通信のビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)あるいは無線通信のスループットなどの品質の情報が用いられてもよい。
【0025】
情報分析部132は、自己の通信装置11がユーザによる操作などに応じて通信を開始するときに、記憶部113に対して自己の通信装置11および他の通信装置12、13に関する情報を要求して取得する。そして、情報分析部132は、当該情報を分析して、使用することが可能な通信経路を分析(決定)する。
ここで、情報分析部132による分析としては、任意の分析が用いられてもよい。当該分析では、例えば、同じ電波の強さであっても通信方式によって実際に通信することが可能な物理的な通信速度が異なることから、当該通信速度に関して同じ条件で比較することが可能な状態に補正した後に、各通信経路の品質などの状態を分析する処理が用いられてもよい。
【0026】
また、使用される各通信経路ごとに、ビットレート(Bit Rate)などの通信速度が異なる値に設定されてもよい。一例として、送信元と送信先との間における全体の通信経路のなかに通信速度が遅い経路が含まれると全体の通信速度が低下することが考えられるため、各通信経路ごとにスループットの逆数の値(または、それに近い値)を有する通信速度が設定されてもよい。
また、各通信経路ごとに、電波の強度などの品質に基づいて、MCS(Modulation and Coding Scheme)が設定されてもよい。
【0027】
通信制御部133は、通信部111による通信および通信装置間通信部112による通信を制御する。通信制御部133は、情報分析部132による分析結果に基づいて、使用することが可能な通信経路を使用して通信を行うように制御する。この制御では、ルーティングなどが行われてもよい。
ここで、通信制御部133は、例えば、通信に使用している通信経路の品質などの状態が通信中に変化したことが情報分析部132による分析結果に基づいて判定された場合に、最新の分析結果の情報に基づいてルーティングを変更するような機能を有してもよい。
【0028】
図3および図4を参照して、ログ情報の例を示す。
図3は、本発明の一実施形態に係る通信装置11が直接接続している他の通信装置12に関するログ情報1001の一例を示す図である。図3の例では、Wi−FiとLTEの2個の通信経路が存在する場合を示すが、他の通信経路が存在してもよい。
ログ情報1001は、他の通信装置12の識別情報(一例として、MACアドレス)、当該ログ情報1001の生成時刻の情報を含み、さらに、当該他の通信装置12に関して、各通信経路のIPアドレス、通信経路の数(通信経路数)、通信経路の種別(例えば、Wi−FiとLTE)、各通信経路の電波強度、各通信経路の通信状態(一例として、スループット)、各通信経路のネットワーク状態(例えば、通信方式ごとまたは装置ごとに、混雑などのために規制中で使用不可、または、通常の状態であるために使用可能、など)、後位局(後位にある通信装置)の情報(例えば、有りまたは無しと、有る場合には後位局の識別情報)といった項目の情報を含む。
通信装置11は、図3に示されるログ情報1001を記憶部113に記憶する。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係る通信装置11が直接接続している他の通信装置12の後位にある別の通信装置13に関するログ情報1011の一例を示す図である。図4の例では、WiMAX2(Worldwide Interoperability for Microwave Access 2)の通信経路が存在する場合を示すが、他の通信経路が存在してもよい。
ログ情報1011は、通信装置11が直接接続している他の通信装置12に関する情報(説明の便宜上、「直接通信情報」という。)1021と、当該他の通信装置12の後位にある別の通信装置13に関する情報(説明の便宜上、「後位通信情報」という。)1022を含む。
直接通信情報1021は、通信装置11が直接接続している他の通信装置12に関して、接続元情報(他の通信装置12の識別情報)を含む。後位通信情報1022は、当該他の通信装置12の後位にある別の通信装置13に関して、図3に示されるログ情報1001と同様な項目の情報を含む。
なお、例えば、他の通信装置12の後位にある別の通信装置13が2個以上存在する場合には、ログ情報1011は、1個の直接通信情報1021に対して、2個以上の異なる後位局のそれぞれに関する後位通信情報1022(2個以上の後位通信情報1022)が含まれる。
通信装置11は、図4に示されるログ情報1011を記憶部113に記憶する。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態に係る通信装置11が使用することが可能な通信経路を決定する処理の手順の一例を示すフローチャートである。通信装置11は、制御部114の情報分析部132により、当該処理を行う。
情報分析部132は、記憶部113から、通信装置に関する情報を取得する。当該情報としては、例えば、自己の通信装置11に関する情報、および他の通信装置12、13に関する情報が用いられる。情報分析部132は、取得した情報に係る通信装置11、12、13を候補とする(ステップS1)。
【0031】
次に、情報分析部132は、通信経路の状態に基づいて、候補を絞る。本実施形態では、情報分析部132は、ステップS1の処理における候補のなかから、通信経路のネットワーク状態が通常の状態である通信装置のみに候補を絞る(ステップS2)。
次に、情報分析部132は、ステップS2の処理における候補に関して、各通信経路の通信速度(ここでは、物理的な通信速度)を計算する。本実施形態では、情報分析部132は、各通信経路における無線の電波強度に基づいて、各通信経路における物理的な通信速度を計算する。ここで、任意の電波強度における物理的な通信速度は各通信方式によって異なるが、例えば、通信方式受電界強度から通信する際の伝送レートが求まり、これによって物理的な通信速度の最大値が求まる。本実施形態では、通信方式受電界強度と伝送レートとの対応を表す情報が記憶部113に記憶されており、情報分析部132は当該情報を参照する(ステップS3)。
【0032】
次に、情報分析部132は、通信速度に基づいて、候補を絞る。本実施形態では、情報分析部132は、ステップS2の処理における候補に関して、すべての可能な通信経路のなかで通信速度が最も速い通信経路を特定し、当該通信経路の通信速度(つまり、最速値)と比べて通信速度が1/n(nは1よりも大きい整数値である。)以下となる通信経路については候補から除外する(ステップS4)。
次に、情報分析部132は、以上の分析の結果に基づいて、使用する通信経路を決定する。本実施形態では、情報分析部132は、通信速度が速い通信経路を優先的に使用するように選択するが、他の選択の仕方が用いられてもよい。また、情報分析部132は、例えば、通信対象となる情報の量(データ量)や、通信に使用することが可能な通信時間などに基づいて、2個以上の通信経路を並列的に使用するように選択してもよい(ステップS5)。
【0033】
図6および図7を参照して、本発明の一実施形態に係る通信装置11により行われる通信制御の例を説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る通信装置211により行われる通信制御の一例(第1の例)を説明するための図である。
【0034】
図6には、通信システム201の一例を示してある。
通信システム201は、3個の通信装置211〜213と、6個の無線基地局装置221〜226を含む。
また、各無線基地局装置221〜226は、図1に示される通信ネットワーク41と同様な通信ネットワーク(図示せず)と接続されており、また、当該通信ネットワークには、図1に示されるサーバ装置31と同様なサーバ装置(図示せず)が接続されている。
なお、図6の例では、通信装置211〜213を示して説明するが、通信装置211は図1に示される通信装置11の一例であり、通信装置212は図1に示される他の通信装置12の一例であり、通信装置213は図1に示される別の通信装置13の一例である。
【0035】
通信装置211は、2個の無線基地局装置221、222のそれぞれと無線により通信することが可能である。通信装置212は、2個の無線基地局装置223、224のそれぞれと無線により通信することが可能である。通信装置213は、2個の無線基地局装置225、226のそれぞれと無線により通信することが可能である。各通信装置211〜213と通信することが可能な2個の無線基地局装置221〜222、223〜224、225〜226は、例えば、互いに異なる通信方式を使用して通信を行う。互いに異なる通信方式としては、例えば、Wi−FiやLTEなどがある。
通信装置211と通信装置212とは、互いに、無線により直接通信することが可能である。通信装置212と通信装置213とは、互いに、無線により直接通信することが可能である。
【0036】
通信装置211は、マルチパスTCP(MPTCP:MultiPath Transmission Control Protocol)により通信を行う機能を有する制御部261(図2に示される制御部114に対応するもの)を備える。また、通信装置212および通信装置213も、それぞれ、当該制御部261と同様な機能を有する制御部(図示せず)を備える。なお、MPTCPはトランスポート層にあり、制御部261はアプリケーション層にある。
【0037】
図6には、MPTCPにおけるサブフローa1〜a2、a11〜a12、a21〜a22を示してある。
サブフローa1、a2、a11、a12、a21、a22は、それぞれ、通信装置211と無線基地局装置221との間のサブフロー、通信装置211と無線基地局装置222との間のサブフロー、通信装置212と無線基地局装置223との間のサブフロー、通信装置212と無線基地局装置224との間のサブフロー、通信装置213と無線基地局装置225との間のサブフロー、通信装置213と無線基地局装置226との間のサブフローである。
【0038】
図6には、通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22を示してある。
通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22は、それぞれ、通信装置211と無線基地局装置221を経由する通信経路、通信装置211と無線基地局装置222を経由する通信経路、通信装置212と無線基地局装置223を経由する通信経路、通信装置212と無線基地局装置224を経由する通信経路、通信装置213と無線基地局装置225を経由する通信経路、通信装置213と無線基地局装置226を経由する通信経路である。
なお、これらの通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22のそれぞれは、通信装置211から通信ネットワークを介して通信サーバまでの通信経路である。
【0039】
本例では、複数の通信経路を構築して同時に通信を行う技術として、トランスポートレイヤのプロトコルとして規定されているMPTCPが使用されている。MPTCPでは、通信装置211〜213の内部における複数の通信経路をサブフローa1〜a2、a11〜a12、a21〜a22という形態でとらえて、複数の通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22を構築して通信を行う。但し、MPTCPでは、通信装置211は、他の通信装置212、213における複数の通信経路を同時に制御することはできない。
【0040】
このため、本例では、通信装置211は、通信を開始する前に、まず、制御部261により、記憶部(図2に示される記憶部113に対応するもの)に対して問い合わせを行う。この問い合わせでは、通信装置211は、制御部261により、記憶部に記憶された情報に基づいて、自己の通信装置211と接続している他の通信装置が存在するか否か、および複数の通信経路の情報があるか否かを確認する。そして、通信装置211は、他の通信装置212が存在して、複数の通信経路が存在する場合には、制御部261により、当該他の通信装置212の制御部に対して、自己の通信装置211から指定する1個以上の通信経路のそれぞれを経由して通信を行うように要求する。なお、このような通信の制御は、例えば、各通信装置211、212の制御部における通信制御部(図2に示される通信制御部133に対応するもの)により行われてもよい。
【0041】
MPTCPにおいてそれぞれの通信経路を指定する方法の一例を示す。
当該方法では、通信装置211は、通信を行う前に、制御部261により、自己の通信装置211および他の通信装置212、213のそれぞれが有する通信経路のIPアドレスに対して、サブフローa1〜a2、a11〜a12、a21〜a22を設定して、通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22を構築する。そして、通信装置211は、通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22を構築した後には、制御部261により、各通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22に対応するサブフローa1〜a2、a11〜a12、a21〜a22を使用して通信を行う程度(例えば、データ量や通信速度など)を制御(調整)することができる。
図6には、このような通信経路b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22の設定のイメージが示されている。
【0042】
このように、図6の例では、通信装置211が他の通信装置212、213に対してパスを張る仕方を指示することで、当該他の通信装置212、213が当該指示にしたがって当該パスを張る。そして、通信装置211は、張られたパスのなかで所望のパスを使用して通信を行う。
【0043】
図7は、本発明の一実施形態に係る通信装置311により行われる通信制御の一例(第2の例)を説明するための図である。
【0044】
図7には、通信システム301の一例を示してある。
通信システム301は、3個の通信装置311〜313と、6個の無線基地局装置321〜326を含む。
また、各無線基地局装置321〜326は、図1に示される通信ネットワーク41と同様な通信ネットワーク(図示せず)と接続されており、また、当該通信ネットワークには、図1に示されるサーバ装置31と同様なサーバ装置(図示せず)が接続されている。
なお、図7の例では、通信装置311〜313を示して説明するが、通信装置311は図1に示される通信装置11の一例であり、通信装置312は図1に示される他の通信装置12の一例であり、通信装置313は図1に示される別の通信装置13の一例である。
【0045】
通信装置311は、2個の無線基地局装置321、322のそれぞれと無線により通信することが可能である。通信装置312は、2個の無線基地局装置323、324のそれぞれと無線により通信することが可能である。通信装置313は、2個の無線基地局装置325、326のそれぞれと無線により通信することが可能である。各通信装置311〜313と通信することが可能な2個の無線基地局装置321〜322、323〜324、325〜326は、例えば、互いに異なる通信方式を使用して通信を行う。互いに異なる通信方式としては、例えば、Wi−FiやLTEなどがある。
通信装置311と通信装置312とは、互いに、無線により直接通信することが可能である。通信装置312と通信装置313とは、互いに、無線により直接通信することが可能である。
【0046】
通信装置311は、TCP(Transmission Control Protocol)により通信を行う機能を有する制御部411(図2に示される制御部114に対応するもの)を備える。また、他の通信装置312、313も、それぞれ、当該制御部411と同様な機能を有する制御部412、413を備える。なお、TCPはトランスポート層にあり、制御部411〜413はアプリケーション層にある。
【0047】
図7には、通信経路c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22を示してある。
通信経路c1、c2、c11、c12、c21、c22は、それぞれ、通信装置311と無線基地局装置321を経由する通信経路、通信装置311と無線基地局装置322を経由する通信経路、通信装置312と無線基地局装置323を経由する通信経路、通信装置312と無線基地局装置324を経由する通信経路、通信装置313と無線基地局装置325を経由する通信経路、通信装置313と無線基地局装置326を経由する通信経路である。
なお、これらの通信経路c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22のそれぞれは、通信装置211から通信ネットワークを介して通信サーバまでの通信経路である。
【0048】
本例では、複数の通信経路を構築して同時に通信を行う技術として、トランスポートレイヤのプロトコルとして規定されているTCPが使用されている。
このため、本例では、通信装置311は、通信を開始する前に、まず、制御部411により、記憶部(図2に示される記憶部113に対応するもの)に対して問い合わせを行う。この問い合わせでは、通信装置311は、制御部411により、記憶部に記憶された情報に基づいて、自己の通信装置311と接続している他の通信装置が存在するか否か、および複数の通信経路の情報があるか否かを確認する。そして、通信装置311は、他の通信装置312が存在して、複数の通信経路が存在する場合には、制御部411により、当該他の通信装置312の制御部412に対して指示を行うことにより、自己の通信装置311から指定する1個以上の通信経路のそれぞれを経由して通信を行うように制御する。なお、このような通信の制御は、例えば、各通信装置311、312の制御部における通信制御部(図2に示される通信制御部133に対応するもの)により行われてもよい。
【0049】
TCPにおいてそれぞれの通信経路を指定する方法の一例を示す。
当該方法では、通信装置311は、通信を行う際に、制御部411により、他の通信装置312、313に対して、当該他の通信装置312、313による通信において使用する通信方式を指定する。具体例として、通信装置311は、他の通信装置312および別の通信装置313を経由して通信を行う場合、当該他の通信装置312に対して行うべき通信の内容を指示するとともに、当該別の通信装置313に対して行うべき通信の内容を指示する。当該他の通信装置312および当該別の通信装置313は、それぞれ、制御部412、413により、通信装置311からの指示にしたがって、通信を行う。通信装置311は、制御部411により、各通信経路c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22を使用して通信を行う程度(例えば、データ量や通信速度など)を制御(調整)することができる。
図7には、このような通信経路c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22の設定のイメージが示されている。
【0050】
このように、図7の例では、通信装置311〜313がパスを張るという概念は無い。通信装置311は、他の通信装置312、313に対して行うべき通信の内容を指示し、当該他の通信装置312、313は当該指示にしたがって通信を行う。これにより、通信装置311は、所望の通信経路c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22を使用して通信を行う。
【0051】
図8および図9を参照して、本発明の一実施形態に係る通信装置11により行われる通信の例を示す。
図8は、本発明の一実施形態に係る通信装置511により行われる通信の一例(第1の例)を示す図である。
図8には、通信装置511と、当該通信装置511と直接通信することが可能な他の通信装置512と、当該他の通信装置512と直接通信することが可能な別の通信装置513と、サーバ装置521を示してある。
なお、図8の例では、通信装置511は図1に示される通信装置11の一例であり、通信装置512は図1に示される他の通信装置12の一例であり、通信装置513は図1に示される別の通信装置13の一例であり、サーバ装置521は図1に示されるサーバ装置31の一例である。
【0052】
図8の例では、通信装置511が受信対象となるデータを3個の分量に分割(仮想的に分割)して、分割したデータのそれぞれを、3個の異なる通信経路のそれぞれを使用して受信する場合を示す。
通信装置511は、まず、処理タイミング2001において、受信対象となるデータを3個の分量に分割する。図8の例の説明において、これら3個の分量に分割されたデータをそれぞれ、第1の分割データ、第2の分割データ、第3の分割データという。
【0053】
次に、通信装置511は、第1の分割データを要求する信号を、他の通信装置512に送信する(処理T1)。当該信号には、例えば、当該通信装置511の宛先の情報が含まれる。他の通信装置512は、当該信号を、(図示しない無線基地局装置および通信ネットワークを介して)サーバ装置521に送信する(処理T2)。サーバ装置521は、当該信号を受信したことに応じて、第1の分割データを含む信号を、(図示しない通信ネットワークおよび無線基地局装置を介して)他の通信装置512に送信する(処理T3)。他の通信装置512は、当該信号を、通信装置511に送信する(処理T4)。
【0054】
また、通信装置511は、第2の分割データを要求する信号を、(他の通信装置512を介して)別の通信装置513に送信する(処理T11)。当該信号には、例えば、当該通信装置511の宛先の情報が含まれる。別の通信装置513は、当該信号を、(図示しない無線基地局装置および通信ネットワークを介して)サーバ装置521に送信する(処理T12)。サーバ装置521は、当該信号を受信したことに応じて、第2の分割データを含む信号を、(図示しない通信ネットワークおよび無線基地局装置を介して)別の通信装置513に送信する(処理T13)。別の通信装置513は、当該信号を、(他の通信装置512を介して)通信装置511に送信する(処理T14)。
【0055】
また、通信装置511は、第3の分割データを要求する信号を、(図示しない無線基地局装置および通信ネットワークを介して)サーバ装置521に送信する(処理T21)。当該信号には、例えば、当該通信装置511の宛先の情報が含まれる。サーバ装置521は、当該信号を受信したことに応じて、第3の分割データを含む信号を、(図示しない通信ネットワークおよび無線基地局装置を介して)通信装置511に送信する(処理T14)。
【0056】
通信装置511は、処理タイミング2011において、受信した3個の分割データ(第1の分割データ、第2の分割データ、第3の分割データ)を結合して、ひとまとまりのデータを取得する。
【0057】
ここで、図8の例では、通信対象のデータを3個に分割したが、他の構成例として、通信対象のデータを2個または4個以上に分割してもよく、または、通信対象のデータを分割しなくてもよい。また、それぞれの分割データを通信する通信経路としては、任意の通信経路が用いられてもよい。
また、図8の例では、他の通信装置512および別の通信装置513を経由して通信する場合を示したが、他の構成例として、いずれか一方の通信装置のみが用いられてもよく、または、当該他の通信装置512および当該別の通信装置513とともに、さらに他の通信装置(計3個以上の他の通信装置)が用いられてもよい。
また、図8の例では、データを受信する場合を示したが、データを送信する場合についても、同様な通信制御が適用されてもよい。
また、図8の例では、データを要求する通信経路と、当該データが送信される通信経路とが同じである場合を示したが、他の構成が用いられてもよい。
また、データの再送制御が行われてもよい。
【0058】
図9は、本発明の一実施形態に係る通信装置611により行われる通信の一例(第2の例)を示す図である。
図9には、通信装置611と、当該通信装置611と直接通信することが可能な他の通信装置612と、サーバ装置621を示してある。
なお、図9の例では、通信装置611は図1に示される通信装置11の一例であり、通信装置612は図1に示される他の通信装置12の一例であり、サーバ装置521は図1に示されるサーバ装置31の一例である。
【0059】
図9の例では、通信装置611が受信対象となるデータを2個の分量に分割(仮想的に分割)して、分割したデータのそれぞれを、他の通信装置612を経由する2個の異なる通信経路のそれぞれを使用して受信する場合を示す。
まず、通信装置611は、受信対象となるデータを2個の分量に分割する。図9の例の説明において、これら2個の分量に分割されたデータをそれぞれ、第2−1の分割データ、第2−2の分割データという。
次に、通信装置611は、これらの分割データ(第2−1の分割データ、第2−2の分割データ)のそれぞれを異なる通信経路で受信することを要求する信号を、他の通信装置612に送信する(処理T101)。図9の例では、当該通信経路は、通信装置611により決定されて指定される。当該信号には、例えば、当該通信装置611の宛先の情報が含まれる。
【0060】
次に、他の通信装置612では、処理タイミング2101において、通信装置611から受信された信号に基づいて、第2−1の分割データと第2−2の分割データとで、2個の異なる通信経路を使用することが把握される。
次に、他の通信装置612は、第2−1の分割データを要求する信号を、(図示しない無線基地局装置および通信ネットワークを介して)サーバ装置621に送信する(処理T111)。サーバ装置621は、当該信号を受信したことに応じて、第2−1の分割データを含む信号を、(図示しない通信ネットワークおよび無線基地局装置を介して)他の通信装置612に送信する(処理T112)。
また、他の通信装置612は、第2−2の分割データを要求する信号を、(図示しない無線基地局装置および通信ネットワークを介して)サーバ装置621に送信する(処理T121)。サーバ装置621は、当該信号を受信したことに応じて、第2−2の分割データを含む信号を、(図示しない通信ネットワークおよび無線基地局装置を介して)他の通信装置612に送信する(処理T122)。
【0061】
次に、他の通信装置612では、処理タイミング2111において、受信された第2−1の分割データと第2−2の分割データが結合される。
そして、他の通信装置612は、結合されたデータを含む信号を、通信装置611に送信する(処理T131)。これにより、通信装置611は、当該信号を受信して、当該データを取得する。
【0062】
ここで、図9の例では、通信対象のデータを2個に分割したが、他の構成例として、通信対象のデータを3個以上に分割してもよく、または、通信対象のデータを分割しなくてもよい。また、それぞれの分割データを通信する通信経路としては、任意の通信経路が用いられてもよい。
また、図9の例では、他の通信装置612を経由して通信する場合を示したが、他の構成例として、当該他の通信装置612の代わりに、さらに他の通信装置が用いられてもよく、または、当該他の通信装置612とともに、さらに他の通信装置(計2個以上の他の通信装置)が用いられてもよい。
また、図9の例では、データを受信する場合を示したが、データを送信する場合についても、同様な通信制御が適用されてもよい。
また、図9の例では、データを要求する通信経路と、当該データが送信される通信経路とが同じである場合を示したが、他の構成が用いられてもよい。
また、データの再送制御が行われてもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る通信装置11では、他の通信装置12との間で直接通信を行い、当該他の通信装置12およびさらに後位の通信装置13における通信経路に関する情報を取得し、取得された情報に基づいて実際に通信する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を制御する。また、通信装置11では、通信ネットワーク41の側の装置から通信ネットワーク41などに関する情報の通知を受信した場合には、無線基地局装置21との通信で得られた当該情報を考慮して通信経路を決定することも可能である。また、通信装置(本実施形態では、通信装置12、13を例とした。)では、他の端末装置(本実施形態では、通信装置11を例とした)から直接接続および通信要求があった場合には、当該他の通信装置の通信を中継する装置として動作する。
【0064】
このように、本実施形態に係る通信装置11では、他の通信装置12、13における通信経路を制御することで、通信効率を良好にすることができる。
例えば、通信装置11では、自己の通信装置11および他の通信装置12、13を経由して、複数の通信経路のなかで所望の通信経路を選択することができ、これら複数の通信経路を同時に選択可能とすることや同時に使用することが可能である。このため、通信装置11では、ある通信経路の品質などの状態が一時的または長期に渡って悪くなる環境においても、他の通信装置12、13が有する通信経路を使用すること、あるいは、当該通信経路と自己の通信装置11が有する通信経路とを組み合わせて使用することなどにより、通信に適した通信経路を探し出して使用することができる。したがって、例えば、従来の通信方式と比べて、安定かつ高速な通信が可能となる。
【0065】
なお、本実施形態に対する対比技術として、モバイルルータ等を経由して通信を行う技術があるが、これは、通信経路を完全にモバイルルータに切り替えて通信を行うものであり、本実施形態のように自己の通信装置11が有する通信経路と他の通信装置12、13が有する通信経路を同時に制御して通信を行うものとは異なる。
また、本実施形態に対する対比技術として、MANETがあるが、これは、通信を経由する各装置で通信経路を選択して通信を行う分散制御が用いられており、本実施形態のように最初に通信を発する起点となる通信装置11がすべての通信経路の制御を行う集中制御によって通信を実現するものとは異なる。
【0066】
一構成例として、無線基地局装置21と無線により通信する通信部111と、他の通信装置12と無線により直接通信する通信装置間通信部112と、自己と通信相手(サーバ装置31)との間における他の通信装置12を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う制御部114と、を備える通信装置11である。
一構成例として、制御部114は、自己と通信相手との間における他の通信装置12およびそれより後位の別の通信装置13を経由する通信経路を決定する。
一構成例として、制御部114は、他の通信装置12から通信経路に関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する。
一構成例として、制御部114は、通信速度の情報に基づいて通信経路を決定する。
一構成例として、制御部114は、無線基地局装置21からネットワーク(通信ネットワーク41)に関する情報を取得し、取得された当該情報に基づいて通信経路を決定する。
また、本実施形態に係る通信装置11〜13などにより行われる方法(例えば、通信方法)や、本実施形態に係る通信装置11〜13などで実行されるコンピュータのプログラム(例えば、通信プログラム)や、本実施形態に係る通信装置11〜13および無線基地局装置21〜23を含む通信システム1を実施することも可能である。
また、一構成例として、第1の通信装置(例えば、通信装置11)と無線により通信する第2の通信装置(例えば、無線基地局装置21)であって、第1の通信装置は、第2の通信装置と無線により通信し、他の通信装置(例えば、通信装置12)と無線により直接通信し、自己と通信相手(例えば、サーバ装置31)との間における当該他の通信装置を経由する通信経路を決定して、決定された通信経路を使用して通信を行う。
【0067】
ここで、以上に示した実施形態に係る各装置(例えば、通信装置11〜13など)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体(記憶媒体)に記録(記憶)して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1、201、301…通信システム、11〜13、211〜213、311〜313、511〜513、611〜612…通信装置、21〜23、221〜226、321〜326…無線基地局装置、31、521、621…サーバ装置、41…通信ネットワーク、111…通信部、112…通信装置間通信部、113…記憶部、114、261、411〜413…制御部、131…通信経路情報取得部、132…情報分析部、133…通信制御部、1001、1011…ログ情報、1021…直接通信情報、1022…後位通信情報、a1〜a2、a11〜a12、a21〜a22…サブフロー、b1〜b2、b11〜b12、b21〜b22、c1〜c2、c11〜c12、c21〜c22…通信経路、2001、2011、2101、2111…処理タイミング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9