(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る光電式分離型感知器の試験装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正がなされうる。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光電式分離型感知器の試験装置100の説明図である。
図2は、実施の形態1に係る光電式分離型感知器の試験装置100の制御部50の機能ブロック図である。
図1(a)は光電式分離型感知器の試験装置100の全体図である。
図1(b)はブラインドユニット20の正面図を示し、
図1(c)はブラインドユニット20の斜視図を示している。
図1(d)はブラインド24が全閉の状態を示した側面図、
図1(e)はブラインド24が全開の状態を示した側面図である。
【0013】
光電式分離型感知器の試験装置100は、減光フィルタユニット10と、ブラインドユニット20と、筐体30と、制御部50とを備えている。
【0014】
減光フィルタユニット10は、板状の減光フィルタ11を複数備えている。複数の減光フィルタ11は、光軸方向に並ぶように複数配置されている。なお、光軸方向とは、光電式分離型感知器の送光部1側から受光部2側へ向かう方向である。各減光フィルタ11は、第1の減光率と第1の減光率よりも減光率が小さい第2の減光率とが供給される電圧に応じて切り替えられるように構成されている。減光フィルタ11は調光ガラス等で構成することができる。減光フィルタ11は、第1の減光率の状態のときには白濁状態となり、第2の減光率の状態のときには透明状態となる。制御部50によって各減光フィルタ11の減光率が切り替えられることで、減光フィルタユニット10の全体としての減光率が制御される。
【0015】
ブラインドユニット20は、駆動装置21と、支持体22及び支持体23と、板状のブラインド24と、軸部25とを備えている。駆動装置21は、例えば、ステッピングモーターを採用することができる。駆動装置21は、ブラインド24を回転駆動する機能を有する。実施の形態1では、各軸部25に駆動装置21が設けられている態様を例に説明しているが、それに限定されるものではない。例えば、ブラインドユニット20に歯車等を設けることで、1つの駆動装置21の駆動力を複数の軸部25に伝達させるようにしてもよい。支持体22及び支持体23には、軸部25が回転自在に設けられている。支持体22及び支持体23は、例えば、長尺状の板状部材で構成することができる。
【0016】
ブラインド24は、上下方向に並ぶように、並列に配置されている。ブラインド24は、回転自在に設けられ、光を遮る機能を有している。ブラインド24は、板状の部材である。ブラインド24は、軸部25に固定されており、軸部25の回転に伴って、回転する。ブラインド24は、例えば、矩形状に構成することができる。ブラインド24は、回転することで上下に隣接するブラインド同士の間に形成される隙間の大きさが変わるように構成されている。複数のブラインド24にこの隙間が形成されている場合には、当該隙間を光が通過する。
【0017】
図1(d)に示すように、ブラインド24が上下方向に平行な状態が、ブラインド24が全閉の状態である。
図1(e)に示すように、ブラインド24が水平方向に平行な状態が、ブラインド24が全開の状態である。ここでは図示していないが、駆動装置21を制御することで、ブラインドユニット20は、ブラインド24の角度が斜めの状態、すなわち全開と全閉との間の中間的な開度の状態も実現できる。
【0018】
筐体30は、減光フィルタユニット10、ブラインドユニット20及び制御部50が設けられている。また、筐体30は、光電式分離型感知器の送光部1を載置する第1の載置部31と、光電式分離型感知器の受光部2を載置する第2の載置部32とを備えている。第1の載置部31及び第2の載置部32は、例えば、水平面等で構成することができる。第1の載置部31及び第2の載置部32には、光電式分離型感知器の送光部1及び受光部2の位置がずれないように固定手段が設けられていてもよい。第1の載置部31と第2の載置部32との間には、減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20が配置されている。筐体30には、光の進む方向において、減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20の順番に配置されているが、それに限定されるものではなく、順番は逆であってもよい。筐体30には、減光フィルタユニット10、ブラインドユニット20、送光部1及び受光部2の制御指示に用いる操作部3が設けられている。
【0019】
図2における制御部50は、減光フィルタ制御部50Aと、駆動装置制御部50Bと、光送受信制御部50Cと、各種データを格納する記憶部50Dとを備えている。減光フィルタ制御部50Aは、各減光フィルタ11に供給する電圧を制御する機能を有する。減光フィルタ制御部50Aは、AC100(V)の電圧を各減光フィルタ11に供給するか否かを切り替えることで、第1の減光率と第2の減光率とを切り替える。具体的には、AC100(V)の電圧を減光フィルタ11に供給しないと(OFFとすると)、白濁状態(減光率70%)に対応する第1の減光率とすることができ、また、AC100(V)の電圧を減光フィルタ11に供給すると(ONとする)、透明状態(減光率7%)に対応する第2の減光率とすることができる。第1の減光率とする減光フィルタ11の枚数が増加すると、その分、減光率が増加する。また、減光フィルタ11が第2の減光率(透明状態)であっても、第2の減光率の減光フィルタ11の枚数が増加すれば、その分、全体としての減光率は増加する。減光フィルタ11のON・OFFと減光フィルタ11の枚数と減光フィルタ11の減光率との関係は、減光フィルタ11が全部でn枚により構成されているとすると、下記の表の通りに表すことができる。(ここで挙げた数値は全て例示であり、これに制限されない。)
【0021】
駆動装置制御部50Bは、各駆動装置21を制御する機能を有する。駆動装置制御部50Bは、軸部25(ブラインド24)が予め定められた角度になるように制御することができる。例えば、駆動装置制御部50Bは、
図1(d)に示すように、軸部25(ブラインド24)の角度を90度の状態(全閉状態)とすることができ、また、
図1(e)に示すように、軸部25(ブラインド24)の角度θを0度の状態(全開状態)とすることができる。また、0度と90度の間の中間的に角度の状態とすることもできる。なお、ここでいう角度θとは、水平方向とブラインド24とがなす角度を指す。当該角度θとブラインドユニット20の減光率との関係は次の式(1)のように定められる。
【0022】
ブラインドユニット20の減光率 = w×sinθ/l・・・式(1)
【0023】
ここで、上下に隣接するブラインド24の間隔をlとし、ブラインド24の短手方向の幅をwとする。w≒lであれば、角度θが30度で減光率が50%となり、角度θが90度で減光率が100%となる。
【0024】
光送受信制御部50Cは、操作部3の指示データに基づいて、送光部1及び受光部2を制御する機能を有している。例えば、光送受信制御部50Cは、送光部1で光を発光させる、受光部2で光を受光する、等の制御を行う。
【0025】
制御部50に含まれる各機能部は、専用のハードウェア、または記憶部50Dに格納されるプログラムを実行するMPU(Micro Processing Unit)で構成される。制御部50が専用のハードウェアである場合、制御部50は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御部50が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。制御部50がMPUの場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして記述され、記憶部50Dに格納される。MPUは、記憶部50Dに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部50の各機能を実現する。記憶部50Dは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリである。
【0026】
実施の形態1に係る光電式分離型感知器の試験装置100は、複数の減光フィルタ11のONとOFFとを切り替えることで広範囲の減光率をカバーすることができる。特許文献1のように1枚の液晶フィルタでは、減光率の変化量がかなり制限される。一方、光電式分離型感知器の試験装置100では、減光フィルタ11をONとする枚数を変えることで、減光率を制御するものであり、広範囲の減光率のカバーが可能である。
【0027】
実施の形態1に係る光電式分離型感知器の試験装置100は、ブラインド24の角度を制御することで、広範囲の減光率をカバーすることができる。特許文献2のように、シャッター板(ブラインド)を支持する本体部が設けられた態様では、シャッター板(ブラインド)を開いても本体部が光を遮ってしまう。したがって、特許文献2の態様では、減光率を低くしにくい。一方、光電式分離型感知器の試験装置100では、支持体22及び支持体23が両端に配置されているため、ブラインド24へ向けて入射する光が、支持体22及び支持体23によって遮断されてしまうことを回避することができる。例えば、ブラインド24が全開の状態であれば、ブラインド24の厚みの分だけ、若干光は遮られるものの、その他には、光を遮るものがない。したがって、光電式分離型感知器の試験装置100の態様では、減光率を低くしやすい。なお、ブラインド24の厚みを薄くするほど、光が遮断されることをより回避することができ、ブラインド24が全開の状態において減光率をより0に近づけることができる。なお、ブラインド24は、上下方向に並ぶように、並列に配置されている構成としているが、左右方向に並ぶように、並列に配置されている構成としてもよい。
【0028】
実施の形態1に係る光電式分離型感知器の試験装置100は、複数の減光フィルタ11に供給する電圧を制御することで、減光率を変化させることができる。すなわち、従来のように、減光率が異なるフィルタを交換するような作業が必要なく、試験の際の作業者の負担を抑制することができる。
【0029】
実施の形態1では、各減光フィルタ11の第1の減光率が同じである態様を例に説明したが、それに限定されるものではない。減光フィルタ11ごとに第1の減光率の度合が異なっていてもよい。第2の減光率についても同様である。減光フィルタ11ごとに第2の減光率の度合が異なっていてもよい。これにより、更にきめ細やかに減光率を変えることができる。
【0030】
実施の形態1に基づいて光電式分離型感知器の検査を行う場合と効果について説明する。検査作業者は検査対象となる光電式分離型感知器(供試感知器)を筐体30内の第1の載置部31及び第2の載置部32に載置して操作部3を操作し、制御部50に検査開始を通知する。制御部50は、記憶部50Dに書き込まれた手順により、減光フィルタ制御部50Aが、減光フィルタ11の減光率を所定値に設定する。光送受信制御部50Cから供試感知器に必要な電源を供給して監視状態とする。次に駆動装置制御部50Bよりブラインドユニット20を制御して、供試感知器が火災信号を出力しない第1の減光率になる角度に制御する。供試感知器が火災信号を出力しなかったら、火災信号を出力すべき第2の減光率になる角度に制御する。供試感知器が火災信号を出力したら、故障信号を出力すべき第3の減光率になる角度に制御し、感知器が故障信号を出力するかを確認する。全てが正常であったらブラインドユニット20の角度は0度に戻す。次に減光フィルタ11の減光率を別の値に設定して、供試感知器を監視状態にし、ブラインドユニット20を同様に第1から第3の減光率になるよう制御し、出力信号の有無を確認する。この手順を繰り返し必要な設定の検査の確認がすべて正しく行われたら、正常/異常などの結果表示を操作部3の表示部分に行い、これを作業者は確認して、供試感知器を筐体30から取り外す。これにより、検査作業者の作業は供試感知器の取り付けと取り外し作業のみで済むため、労力の削減に貢献する。なお必要な減光率は減光フィルタ11、ブラインドユニット20のいずれで実現してもよく、組み合わせて実現しても良い。
【0031】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る光電式分離型感知器の試験装置(減光フィルタユニット110、ブラインドユニット220)の説明図である。
図3(a)は、減光フィルタユニット110の斜視図である。
図3(b)は、ブラインドユニット220の斜視図である。実施の形態2では、実施の形態1で説明した減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20のそれぞれが持ち運び可能となっている態様である。実施の形態2では、実施の形態1と共通する構成には同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0032】
図3(a)に示すように、減光フィルタユニット110は、複数の減光フィルタ11に加えて、複数の減光フィルタ11を支持する支持体12と、支持体12に接続された取手13とを備えている。支持体12は減光フィルタ11の下端に配置されている。
【0033】
図3(b)に示すように、ブラインドユニット220は、駆動装置21と、支持体22及び支持体23と、板状のブラインド24と、軸部25とに加えて、支持体26と、支持体26に接続された取手27とを備えている。支持体26は、一端が支持体22の下端に接続され、他端が支持体23の下端に接続されている。支持体26の中間部には取手27が接続されている。
【0034】
また、減光フィルタユニット110は、図示省略の制御部50及び操作部3を備えている。同様に、ブラインドユニット220は、図示省略の制御部50及び操作部3を備えている。例えば、制御部50及び操作部3は、取手(取手13、取手27)に搭載することができる。また、減光フィルタユニット110及びブラインドユニット220は、電源ケーブル等を接続可能に構成することで、減光フィルタ11に電圧を供給したり、駆動装置21に駆動電力を供給したりすることができる。
【0035】
実施の形態2に係る光電式分離型感知器の試験装置(減光フィルタユニット110及びブラインドユニット220)は、実施の形態1で説明した効果と同様の効果を有することに加えて次の効果を有する。作業者は、取手13、27を握持することで、減光フィルタユニット110及びブラインドユニット220を持ち運びすることができる。これにより、作業者は、光電式分離型感知器の設置現場で、すみやかに、光電式分離型感知器の試験を実施することができる。つまり、実施の形態2に係る光電式分離型感知器の試験装置(減光フィルタユニット110及びブラインドユニット220)は、試験の際における作業者の負担を抑制することができる。
【0036】
実施の形態2に基づいて光電式分離型感知器の点検を行う場合と効果について説明する。点検作業者は点検対象となる光電式分離型感知器が設置されている場所へ、ブラインドユニット220を携行する。設置場所に到着したら作業者は、光電式分離型感知器の設置距離から決定する、火災信号を出力してはならない第1の減光率になるよう、取手27内に内蔵される操作部3を操作する。すると制御部50がブラインドユニット220の角度を制御する。角度が所定値になったら、光電式分離型感知器の送光部及び受光部の光軸上にブラインドユニット220を挿入する。火災信号が出力されない状態を確認できたら、点検作業者はそのままの状態で火災信号を出力すべき第2の減光率になるよう取手27内に内蔵される操作部3を操作してブラインドユニット220の角度を制御する。角度が所定値になったら火災信号が出力されることを作業者は確認する。同様に故障信号の出力も必要に応じて確認できる。よってこれまでは減光率ごとに減光フィルタを用意しなければならなかったものが、
図3(b)に示す1種類の点検器具のみでよく、減光率も0%〜100%まで実現できるので、必要な工具類の削減と労力の削減に貢献できる。なお、ブラインドユニット220での例を挙げたが、減光フィルタユニット110で実現しても良い。
【0037】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係る光電式分離型感知器の説明図である。
図4(a)は光電式分離型感知器の送光部1の模式図であり、
図4(b)は光電式分離型感知器の受光部2の模式図である。実施の形態3では、実施の形態1で説明した減光フィルタユニット10又はブラインドユニット20が、光電式分離型感知器に搭載されている。実施の形態3では、実施の形態1と共通する構成には同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0038】
送光部1は、本体1Aと、レンズ部支持体1Bと、レンズ部1Cと、送光素子1Dと、減光フィルタユニット10とを備えている。本体1Aには、レンズ部支持体1Bと、レンズ部1Cと、送光素子1Dと、減光フィルタユニット10とが設けられている。本体1A内に減光フィルタユニット10が設けられている。本体1Aには、光が本体1Aの外部へ出るように、開口1Eが設けられている。ここでは、減光フィルタユニット10が送光部1に設けられている態様について説明したが、ブラインドユニット20が設けられていてもよい。また、減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20の両方が送光部1に設けられていてもよい。
【0039】
受光部2は、本体2Aと、レンズ部支持体2Bと、レンズ部2Cと、受光素子2Dと、減光フィルタユニット10とを備えている。本体2Aには、レンズ部支持体2Bと、レンズ部2Cと、受光素子2Dと、減光フィルタユニット10とが設けられている。本体2A内に減光フィルタユニット10が設けられている。本体2Aには、送光部1から出射した光が入るように、開口2Eが設けられている。ここでは、減光フィルタユニット10が受光部2に設けられている態様について説明したが、ブラインドユニット20が設けられていてもよい。また、減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20の両方が受光部2に設けられていてもよい。
【0040】
制御部50及び操作部3は、送光部1及び受光部2の少なくとも一方に搭載されていてもよいし、送光部1及び受光部とは別の場所に配置されていてもよい。つまり、制御部50及び操作部3の位置は、減光フィルタユニット10及びブラインドユニット20を制御することができるのであれば、特に、限定されるものではない。
【0041】
実施の形態3に係る光電式分離型感知器は、実施の形態1で説明した効果と同様の効果を有することに加えて次の効果を有する。試験装置と光電式分離型感知器とを一体化することで、試験の際に、光電式分離型感知器を取り外す作業負担や、高所に配置された光電式分離型感知器の光路上に試験装置を配置する作業負担等が発生することを回避することができる。
【0042】
実施の形態3に基づく効果について説明する。光電式分離型感知器の送光部1、受光部2上に設けられたブラインドユニット20は通常は全開の状態で火災監視を行っている。点検を行うよう定められた時期が来ると、光電式分離型感知器内に設けられた制御部50がブラインドユニット20を制御して、火災信号を出すべきでない減光率となる角度に設定する。これで光電式分離型感知器が火災信号を出さないことを確認すると、次に制御部50は火災信号を出すべき角度に制御する。光電式分離型感知器が火災信号を出したことを確認すると、次は故障信号を出すべき角度に制御する。これで故障信号を出力したことを確認したら、角度を全開にして正常という結果で点検は終了し、次の点検時期まで火災監視を続行する。これにより、光電式分離型感知器が自動で点検を実施できるので、点検作業の労力を大幅に削減できる。なお、減光フィルタユニット10により減光率を制御し点検を実施しても良い。