【実施例】
【0019】
(実施例1)
図1は、実施例1の半導体装置の断面の一部を示している。図示のAはFET領域を示し、Cはダイオード領域を示し、Eは周辺耐圧領域を示し、BはFET領域とダイオード領域の間に位置する境界領域を示し、Dはダイオード領域と周辺耐圧領域の間に位置する境界領域を示している。実際の断面は、
図1から左方に延びており、FET領域Aは
図1の左方に延びている。半導体基板4を平面視したときに、FET領域Aは半導体基板4の中央領域に形成されており、ダイオード領域CはFET領域Aを一巡する範囲に形成されており、周辺耐圧領域Eはダイオード領域Cを一巡する範囲(半導体基板4の外周の内側を外周に沿って延びる領域)に形成されている。
図1の断面の全体を観察すると、領域B,C,D,Eは、領域Aの中心線に対して左右対称となっている。本明細書では、半導体基板の中央領域に近い側を内側といい、周辺領域に近い側を外側という。
【0020】
半導体基板4の下面に、下面電極(ドレイン兼カソード電極)2が形成されている。半導体基板4の下面に臨む範囲は、n型不純物を高濃度に含むドレイン兼カソード層6となっている。ドレイン兼カソード層6とドレイン兼カソード電極2はオーミック接触する。
【0021】
半導体基板4のうち、前記したドレイン兼カソード層6と後記するボディ領域10以外の部分は、n型不純物を低濃度に含んでおり、n型ドリフト層8となっている。加工前の半導体基板4は、n型ドリフト層8として動作するのに適当な濃度のn型不純物を含んでいる。
【0022】
前記したドレイン兼カソード層6は、加工前の半導体基板4の下面からn型不純物を注入して拡散した領域である。
FET領域A内の半導体基板4の上面側には、加工前の半導体基板4の上面からp型不純物を注入して拡散した領域が形成されている。この領域は、半導体基板4の上面に臨む範囲の一部に形成されており、p型のボディ領域10として機能する。半導体基板4のうち、ドレイン兼カソード層6とp型ボディ領域10以外の領域は未加工のままに残されており、それがn型ドリフト層8として動作する。
【0023】
p型ボディ領域10のp型不純物濃度は薄く、そのままでは後記するソース電極16aにオーミック接触しない。p型ボディ領域10の一部であって半導体基板4の上面に臨む範囲には、p型不純物濃度が高いコンタクト領域12が形成されている。コンタクト領域12はソース電極16aにオーミック接触する。p型ボディ領域10の電位は、ソース電極16aの電位に等しく維持される。
【0024】
p型ボディ領域10内の一部に、n型不純物を高濃度に含むソース領域14が形成されている。ソース領域14は、半導体基板4の上面に臨む範囲に形成されており、ソース電極16aにオーミック接触する。
p型ボディ領域10、コンタクト領域12、ソース領域14は、紙面に垂直方向に延びている。
【0025】
n型ソース領域14とn型ドリフト層8は、p型ボディ領域10によって隔てられている。n型ソース領域14とn型ドリフト層8を隔てるp型ボディ領域10の上面にはゲート絶縁膜18が形成され、その上面にゲート電極20が形成されている。なお、ゲート電極20と、ソース電極16aは、図示しない層間絶縁膜で絶縁されている。n型ソース領域14とn型ドリフト層8を隔てるp型ボディ領域10には、ゲート絶縁膜18を介してゲート電極20が対向する。
【0026】
ゲート電極20に正電圧が印加されない間は、n型ソース領域14とn型ドリフト層8の間がp型ボディ領域10によって絶縁され、ソース電極16aとドレイン兼カソード電極2の間には電流が流れない。ゲート電極20に正電圧が印加されている間は、n型ソース領域14とn型ドリフト層8を隔てるp型ボディ領域10に反転層が形成され、n型ソース領域14とn型ドリフト層8の間が低抵抗となる。半導体装置の使用時には、ソース電極16aが接地され、ドレイン兼カソード電極2は正電位に接続されている。ゲート電極20に正電圧が印加されている間は、ソース電極16aとドレイン兼カソード電極2の間を電流が流れる。ドレイン兼カソード電極2とソース電極16aの間にFET(Field Effect Transistor)が形成されている。FETはMOS型であってもよいし、MIS型であってもよい。
【0027】
ダイオード領域C内の半導体基板4の上面に、ショットキー電極16bが形成されている。ショットキー電極16bは、n型ドリフト層8にショットキー接触する金属で形成されている。ダイオード領域C内の半導体基板4の上面に臨む範囲には、一定のピッチでp型拡散領域22が形成されている。p型拡散領域22は紙面垂直方向に延びている。
【0028】
ショットキー電極16bに高電位が印加されると、ショットキー電極16bからドレイン兼カソード電極2に電流が流れる。ショットキーダイオードに逆方向の電圧が印加されたとき(ショットキー電極16bが接地され、ドレイン兼カソード電極2が正電位に接続された状態)には、隣接するp型拡散領域22の間に位置するn型ドリフト層8に空乏層が延び、電流が流れないようにする。p型拡散領域22はショットキーダイオードの耐圧能力を改善する。
【0029】
周辺耐圧領域Eには、p型のガードリング24が多重に形成されている。最も内側のガードリング24aの上部には、フィールドプレート16cが形成されている。p型ガードリング24は、半導体基板4の周辺部に空乏層を伸ばし、半導体装置の耐圧を上げる。フィールドプレート16cと半導体基板4の間に層間絶縁膜を配置してもよい。フィールドプレート16cとショットキー電極16bとソース電極16aは導通している。フィールドプレート16cとショットキー電極16bとソース電極16aは、半導体基板4の上面に形成した上面電極で形成することができる。
【0030】
FET領域Aとダイオード領域Cの間に位置する境界領域Bには、トレンチ34が形成されている。トレンチ34の内面(側面と底面)は、絶縁膜38で覆われている。絶縁膜38の内面(トレンチ34の内側を向く面)は、電極膜16dで覆われている。電極膜16dは、ソース電極16aとショットキー電極16bに導通している。
絶縁膜38は、薄い側面と厚い底面を備えている。なお、薄い側面といえども、ゲート絶縁膜18よりは厚い。また、絶縁膜38は、半導体基板4(GaNまたはSiCで形成されている)の比誘電率より大きな比誘電率を持つ材質で形成されている。
【0031】
最もダイオード領域C側に位置するp型ボディ領域10aは、FET領域Aから境界領域B内に延びている。そのp型ボディ領域10aの境界領域B内の端部は、トレンチ34に接している。電極膜16dの底面(
図1では、その深さをDで示している)は、ボディ領域10aの底面(
図1では、その深さをD1で示している)より深い位置に形成されており、ボディ領域10aはトレンチ34の側面に接している(トレンチ34の底面に達してしない)。p型ボディ領域10aの境界領域B内の端部の近傍は、電界集中が生じやすい部位である。本実施例では、その部位にトレンチ34と、絶縁膜38と、電極膜16dが形成されており、電界集中を緩和する。
【0032】
最もFET領域A側に位置するp型拡散領域22aは、ダイオード領域Cから境界領域B内に延びている。そのp型拡散領域22aの境界領域B内の端部は、トレンチ34に接している。電極膜16dの底面は、p型拡散領域22aの底面(
図1では、その深さをD2で示している)より深い位置に形成されており、p型拡散領域22aはトレンチ34の側面に接している(トレンチ34の底面に達してしない)。p型拡散領域22aの近傍に位置する境界領域B内の領域は、電界集中が生じやすい部位である。本実施例では、その部位に、トレンチ34と、絶縁膜38と、電極膜16dが形成されており、電界集中を緩和する。
【0033】
ダイオード領域Cと周辺耐圧領域Eの間に位置する境界領域Dには、トレンチ36が形成されている。トレンチ36の内面(側面と底面)は、絶縁膜40で覆われている。絶縁膜40の内面(トレンチ36の内側を向く面)は、電極膜16eで覆われている。電極膜16eは、ショットキー電極16bとフィールドプレート16cに導通している。
絶縁膜40は、薄い側面と厚い底面を備えている。なお、薄い側面といえども、ゲート絶縁膜18よりは厚い。また、絶縁膜40は、半導体基板4(GaNまたはSiCで形成されている)の比誘電率より大きな比誘電率を持つ材質で形成されている。
【0034】
最も周辺耐圧領域E側に位置するp型拡散領域22bは、ダイオード領域Cから境界領域D内に延びている。そのp型拡散領域22bの境界領域D側の端部は、トレンチ36に接している。電極膜16eの底面(
図1では、その深さをDで示している)は、p型拡散領域22b(
図1では、その深さをD2で示している)の底面より深い位置に形成されており、p型拡散領域22bはトレンチ36の側面に接している(トレンチ36の底面に達してしない)。p型拡散領域22bの近傍に位置する境界領域D内の領域は、電界集中が生じやすい部位である。本実施例では、その部位に、トレンチ36と、絶縁膜40と、電極膜16eが形成されており、電界集中を緩和する。
【0035】
最もダイオ―ド領域C側に位置するp型ガードリング24aは、周辺耐圧領域Eから境界領域D内に延びている。電極膜16eの底面は、p型ガードリング24aの底面(
図1では、その深さをD3で示している)より深い位置に形成されており、p型ガードリング24aはトレンチ36の側面に接している(トレンチ36の底面に達してしない)。p型ガードリング24aの近傍に位置する境界領域D内の領域は、電界集中が生じやすい部位である。本実施例では、その部位に、トレンチ36と、絶縁膜40と、電極膜16eが形成されており、電界集中を緩和する。
【0036】
境界領域Bの左端部は、必ずしも一意に決定されるものでないが、最も右側のソース領域14aの左端部の左方には反転層が形成されることからFET領域の一部であり、最も右側のコンタクト領域12aの右端部の右方には反転層が形成されないことからFET領域ではない。境界領域Bの左端部は、最も右側のソース領域14aの左端部から最も右側のコンタクト領域12aの右端部までの間のいずれかにある。
図1では、最も右側のコンタクト領域12aの右端を境界領域Bの左端部としている。
図1に示した境界領域Bの左端部は、最も右側のソース領域14aの左端部から最も右側のコンタクト領域12aの右端部までの間にある。境界領域Bの端部を如何に定義しても、最も右側のp型ボディ領域10aは、FET領域Aから境界領域B内に延びており、トレンチ34に接している。
【0037】
境界領域Bの右端部は、最も左側のp型拡散領域22aの左端部から右端部までの間のいずれかにある。
図1では、最も左側のp型拡散領域22aの右端を境界領域Bの右端部としている。
図1に示した境界領域Bの右端部は、最も左側のp型拡散領域22aの左端部から右端部までの間にある。境界領域Bの右端部を如何に定義しても、最も左側のp型拡散領域22aは、ダイオード領域Cから境界領域B内に延びており、トレンチ34に接している。
【0038】
最も右側のp型ボディ領域10aの右側の領域と、最も左側のp型拡散領域22aの左側の領域には、電界集中が生じやすい。本実施例では、電界集中が生じやすい位置に、トレンチ34と、絶縁膜38と、電極膜16dが形成されており、電界集中を緩和する。特に、電極膜16dがp型ボディ領域10aとp型拡散領域22aより深い位置まで延びているために、電界集中を効果的に緩和する。
【0039】
境界領域Dの左端部は、最も右側のp型拡散領域22bの左端部から右端部までの間のいずれかにある。
図1では、最も右側のp型拡散領域22bの右端を境界領域Dの左端部としている。
図1に示した境界領域Dの左端部は、最も右側のp型拡散領域22aの左端部から右端部までの間にある。境界領域Dの左端部を如何に定義しても、最も右側のp型拡散領域22aは、ダイオード領域Cから境界領域D内に延びており、トレンチ36に接している。
【0040】
境界領域Dの右端部は、最も左側のp型ガードリング24aの左端部から右端部までの間のいずれかにある。
図1では、最も左側のp型ガードリング24aの左端を境界領域Dの右端部としている。
図1に示した境界領域Dの左端部は、最も左側のp型ガードリング24aの左端部から右端部までの間にある。境界領域Dの右端部を如何に定義しても、最も左側のp型ガードリング24aは、周辺耐圧領域Eから境界領域D内に延びており、トレンチ36に接している。
【0041】
最も右側のp型拡散領域22bの右側の領域と、最も左側のp型ガードリング24aの左側の領域には、電界集中が生じやすい。本実施例では、電界集中が生じやすい位置に、トレンチ36と、絶縁膜40と、電極膜16eが形成されており、電界集中を緩和する。特に、電極膜16eがp型拡散領域22aとp型ガードリング24aより深い位置まで延びているために、電界集中を効果的に緩和する。
【0042】
本実施例では、FET領域Aと周辺耐圧領域Eの間にダイオード領域Cが存在する。本明細書で開示する技術は、FET領域Aと周辺耐圧領域Eが隣接している場合にも有効である。FET領域と周辺耐圧領域の間に位置する境界領域に、トレンチと絶縁膜と電極膜を形成すれば、電界集中が緩和される。
電界集中が生じると、半導体装置の耐圧が低くなり、アバランシェ降伏時に電流が集中して半導体装置が熱破壊されることがある。本明細書に記載の技術によると、その問題に対処することができる。
【0043】
電界集中を緩和するためには、絶縁膜38,40の底面を側面より厚くするのがよい。ただし、側面が薄いといえども、ゲート絶縁膜18よりは厚くする。また、絶縁膜38,40を、半導体基板4を構成するSiCまたはGaNの比誘電率より大きな比誘電率を持つ材質で形成するのが好ましい。さらに、p型ボディ領域10、p型拡散領域22、p型ガードリング24といったp型領域の底面より、電極膜16d,16eの底面が深いという関係も、電界集中の緩和に有効である。すなわち、
図1のD(電極膜16d,16eの底面の深さ)が、D1(p型ボディ領域10の深さ)、D2(p型拡散領域22の深さ)、D3(p型ガードリング24の深さ)のいずれよりも大きくなっている。
【0044】
本明細書に記載の技術は、境界領域BとDの範囲に定め方に制約されるものでない。半導体基板内の半導体構造から境界領域を決めてもよいし、電界分布から境界領域を決めてもよいし、半導体装置が動作する際の電位変化の大きさから、境界領域BとDの範囲を定めてもよい。その境界領域内にトレンチ34と36が形成されていれば耐圧が向上する。
【0045】
(実施例2)
図2を参照して実施例2を説明する。説明した部材・部位に共通するものには、同じ参照番号を付して重複説明を省略する。以下では、実施例1からの相違点のみを説明する。
【0046】
相違点1:
図2に示すように、実施例2では、境界領域Bにn型不純物の低濃度領域30が形成され、境界領域Dにn型不純物の低濃度領域32が形成されている。n型不純物の低濃度領域30,32は、n型のドリフト層8よりもさらに低濃度であり、電界集中が生じにくい。n型不純物の低濃度領域30,32は、半導体基板4の表面から、ドリフト層8を貫通して、ドレイン兼カソード層6に達している。n型不純物の低濃度領域30,32がドレイン兼カソード層6に達するほど深いと、電界集中の緩和能力が向上する。
本実施例では、n型ドリフト層8が、シリコンよりもバンドギャップが広いSiCまたは窒化物半導体で形成されている。そのために、シリコンの場合よりもn型ドリフト層8が浅く(実施例では10μm程度)、ドリフト層8を貫通するn型不純物低濃度領域30,32を製造しやすい。ドリフト層8を貫通するn型不純物低濃度領域30,32を設ける技術は、ワイドギャップ半導体(2.2eV程度またはそれ以上のバンドギャップを持つ。窒化物半導体等のIII−V族半導体、炭化珪素、ダイヤモンドが例示される)に適用する場合に特に有用である。
相違点2:トレンチ34はn型不純物の低濃度領域30内に形成されており、トレンチ36はn型不純物の低濃度領域32内に形成されている。
トレンチ34のFET領域A側の側面と、n型不純物の低濃度領域30のFET領域A側の側面はほぼ一致している。それに対して、トレンチ34のダイオード領域C側の側面より、n型不純物の低濃度領域30のダイオード領域C側の側面は、ダイオ―ド領域C内に入り込んでいる。最もFET側のp型拡散領域22aは、n型不純物の低濃度領域30内に形成されている。
トレンチ36の周辺耐圧領域E側の側面と、n型不純物の低濃度領域32の周辺耐圧領域E側の側面はほぼ一致している。それに対して、トレンチ36のダイオード領域C側の側面より、n型不純物の低濃度領域32のダイオード領域C側の側面は、ダイオ―ド領域C内に入り込んでいる。最もダイオード領域側のp型拡散領域22aは、n型不純物の低濃度領域32内に形成されている。
相違点3:電極膜16dは、絶縁膜38の内面を覆うだけでなく、トレンチ34の内部に充填されている。電極膜16eも、絶縁膜40の内面を覆うだけでなく、トレンチ36の内部に充填されている。
相違点4:実施例1のFETは、プレーナゲートであった。実施例2のFETは、トレンチゲート型のトランジスタである。
図2において、参照番号20aはトレンチゲート電極であり、18aはトレンチの内面を被覆してトレンチゲート電極20aと半導体基板4を絶縁しているトレンチゲート絶縁膜である。
相違点5:周辺耐圧領域ではガードリングに代えて、リサーフ構造が形成されている、リサーフ構造は、複数のp型領域26a,26b,26cで形成されており、内側ほど高濃度で深く、外側ほど低濃度で浅く形成されている。内側のp型層26aの境界領域側の端部はトレンチ36の側面に接している。
相違点6:ショットキー電極16bの左端部はn型不純物低濃度領域30の形成範囲内に位置しており、ショットキー電極16bの右端部はn型不純物低濃度領域32の形成範囲内に位置している。相違点6によって、ショットキー電極16bの端部近傍に電界集中が生じやすい問題に対処している。
相違点7:電極膜16dの底面は、トレンチゲート電極の底面より深い。また、電極膜16eの底面は、最も深いリサーフ層26aの底面より深い。すなわち、
図1のD(電極膜16d,16eの底面の深さ)は、D4(トレンチゲート電極20aの深さ)、D2(p型拡散領域22の深さ)、D3(最も深いp型リサーフ層26aの深さ)のいずれよりも大きくなっている。
なお、L1>L2の場合はD=D4であってもよい。D>D4であればLに関する制約はなくなる。L1は、トレンチゲート電極間の間隔であり、L2はトレンチ34に最も近いトレンチゲート電極20aとトレンチ34間の間隔である。
【0047】
実施例2でも、トランジスタ領域と周辺耐圧領域の間にダイオード領域が存在する。本明細書で開示する技術は、トランジスタ領域と周辺耐圧領域が隣接している場合にも有効である。境界領域にn型不純物低濃度領域とトレンチを設け、トランジスタ領域から境界領域に延びるp型領域がトレンチに接し、周辺耐圧領域から境界領域に延びるp型領域がトレンチに接していれば、電界集中が緩和される。
【0048】
(実施例3)
図3〜5を参照して実施例3を説明する。
図4は
図3のIV−IV断面を示し、
図5は
図3のV−V断面を示している。説明した部材・部位を共通するものには、同じ参照番号を付して重複説明を省略する。以下では、実施例1、2からの相違点のみを説明する。
相違点1:実施例1,2のFETは、モノポーラのトランジスタであった。実施例3のFETは、バイポーラのトランジスタであり、いわゆるIGBTである。モノポーラトランジスタをFETといい、バイポーラのIGBTから区別する場合もあるが、本明細書では、絶縁ゲートを利用してスイッチングするトランジスタを総称してFETという。その定義に従うと、IGBTもFETの一種である。実施例3のFET領域では、下面電極2に接する位置にp型不純物を高濃度に含むコレクタ領域5が追加されている。モノポーラとバイポーラの相違に起因して、実施例2の下面電極2は、コレクタ兼カソード電極であり、n型領域14はエミッタ領域となり、上面電極16aはエミッタ電極となる。n型不純物高濃度層6は、バッファ領域とカソード層を兼用する。FETがバイポーラトランジスタである場合、特許請求の範囲でいうソース電極は、モノポーラトランジスタのソース電極に対応するエミッタ電極を意味する。
相違点2:
図4と
図5に示すように、ボディ領域10の外周に沿ってp型領域11が形成されている。p型領域11は、ボディ領域10よりも深く形成されており、
図5に示すように、トレンチゲート電極20aの長手方向の端部を覆っている。p型領域11は、半導体基板を平面視したときに、トレンチゲート群20aの形成範囲を一巡している。p型領域11は、トレンチ34の側面に接しており、p型領域11の近傍に生じやすい電界集中に対処している。電極膜16dの底面の深さは、p型領域11の底面よりも深く、トレンチゲート電極20aの底面よりも深い。
相違点3:トレンチゲート電極20aのうち、境界領域に隣接するトレンチゲート電極の底面がn型不純物低濃度領域30中に位置している。これによって電界集中が生じやすい、境界領域に隣接するトレンチゲート電極の底面の近傍に電界集中が生じるのを防止している。
相違点4:実施例3のダイオードは、耐圧を高めるp型拡散領域(
図1の22)を備えていない。従って、ダイオード領域内のp型領域とトレンチ34の関係、ないし、ダイオード領域内のp型領域とトレンチ36の関係には制約がない。トランジスタ領域内のp型ボディ領域10がトレンチ34に接していれば、p型ボディ領域10の近傍に電界集中が生じやすいという問題に対処できる。境界領域側の周辺耐圧領域内のp型ガードリング24aまたはリサーフ層24aにトレンチ26が接していれば、p型ガードリング24aまたはリサーフ層24aの近傍に電界集中が生じやすいという問題に対処することができる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。