【実施例】
【0027】
実施例1:未加工の植物ホモジネートのリポキシゲナーゼ活性を評価するための比色分析アッセイ
リノールヒドロペルオキシド、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン(MBTH)、及び3−(ジメチルアミノ)安息香酸(DMAB)は、ヘモグロビンの存在下で反応して、590nmで吸収する紫インダミン色素を生み出すことで知られる。この波長での吸収度は、リノールヒドロペルオキシドの濃度と最大35uMまで線形である。
【0028】
大豆粉1gを、最大24時間の期間にわたって、4℃または周囲温度のいずれかで、10mLの適切なpH調整された緩衝液または水(1:10w/v)中に抽出した。磁気撹拌しながら(約500rpm)試験管内で反応を実行した。1時間及び2時間時点では、抽出溶液を、約10分間沈降させた後、10μLの酵素溶液を取り出して、4mLのキュベット内のアッセイ溶液A(リノール酸及びDMABを含有)(1mL)に添加した。室温で約5分間インキュベートした後、アッセイ溶液B(MBTH及びヘモグロビン)(1mL)を添加し、約5分間さらにインキュベートした後、吸収度読取り値(表1)を記録した。ホウ酸ナトリウム、pH10.4の抽出物試料、及びブランク(酵素を除く全ての試薬)を除く全ての試料内で青色形成が観察された。この場合、淡灰色が観察され、吸収度は約0.2であった。ブランクは、リノール酸を除く全ての試薬及び酵素で実行され、0.2の吸収度を得た。酵素溶液が吸収度読取り値を干渉していると決定された。
【表1】
【0029】
残りの時点(5時間及び24時間)を、異なる方法で分析した。抽出溶液を、約10分間沈降させた後、10μLの酵素溶液を取り出して、2mLのエッペンドルフチューブ内のアッセイ溶液A(リノール酸及びDMABを含有)(0.5mL)に添加した。室温で約5分間インキュベートした後、アッセイ溶液B(MBTH及びヘモグロビン)(0.5mL)を添加し、約5分間さらにインキュベートした。ラウリル硫酸ナトリウム溶液(1%w/v)(0.5mL)を添加して反応を停止させ、この溶液を、9.8rcf、4℃で、5分間遠心分離機にかけた。次いでこの溶液を4mLのキュベット内にデカントし、前と同じように分析した。結果は、いかなる特定の傾向も示さなかった。
【0030】
実施例2:代替の比色分析アッセイ条件
アッセイ感度を試験するため、希釈系列は、元来の充填値(供給業者による分析証明書に基づいて0.42Mユニット(4.11mg)/mL)で凍結乾燥酵素を使用し、それ以上比色検出が観察されなくなるまで半分希釈して、設定した。また、これをメチレンブルー漂白法(Suda et al.,J.Agric.Food Chem.43,3,1995,p.742,EP no.2118126 A1)を用いて分析し、それによって、100μMのメチレンブルー溶液の吸収度の減少を、リノール酸の存在下で酵素溶液とともにインキュベートしたときに徐々に、680nmで分析した。メチレンブルー漂白アッセイを、2.1mLの0.2M トリス−HCl緩衝液、pH9.0、0.3mLの100μMメチレンブルー溶液、0.3mLの10mMリネオレートナトリウム基質、及び0.3mLの大豆粉抽出物(全体積3mL)を使用して実施した。
【表2】
【0031】
DMAB−MBTHアッセイでは、10μLの酵素溶液を取り出し、2mLのエッペンドルフ内のアッセイ溶液A(リノール酸及びDMABを含有)(0.5mL)に添加した。室温で約5分間インキュベートした後、アッセイ溶液B(MBTH及びヘモグロビン)(0.5mL)を添加し、約5分間さらにインキュベートした。ラウリル硫酸ナトリウム溶液(1%w/v)(0.5mL)を添加して反応を停止させ、この溶液を、16.1rcf、4℃で、10分間遠心分離機にかけた。次いでこの溶液を4mLのキュベット内にデカントし、前と同じように分析した。これを2重で実行した。
【表3】
【0032】
表3の結果より、この方法を使用して得られた吸収度読取り値が、溶液内の酵素の濃度と線形の様態では一致しないことが明らかとなった。pH6の未加工の植物リポキシゲナーゼのアッセイには、元来の方法を使用した。ヘモグロビンは、8.5の最適pH、及び0.5mMのリノール酸濃度で疑似リポキシゲナーゼ活性を示すことが報告されている。本アッセイはpH9で実施されたため、これは得られた結果といくらかの関係があった可能性がある。しかしながら、酵素を除く全試薬を含有するブランクにおいては、色形成が観察されなかったことに注目した。しかしながら、得られた結果に基づいて、メチレンブルー漂白法を続行することを決定した。本方法は、単純かつ迅速であるが、特別に感度が高いわけではなく、定量化が困難である。活性レベルは、色が消える(すなわち、680nmでの吸収度が0に達する)のにかかった時間によって決定される。より高い酵素充填量間の区別をするため、精製された酵素を有する希釈系列を、より低い濃度の酵素溶液を使用して繰り返した。30μLの酵素溶液のみをメチレンブルー漂白溶液に添加し、その体積を、270μLの蒸留水で最大3mLまで調整した。得られた結果を表4に記録する。
【表4-1】
【表4-2】
【0033】
希釈系列のグラフ表示を
図1に示す。吸収度が減少し始める誘導時間(0.5〜2分)は、より低い酵素濃度を有する試料で観察される。
【0034】
大豆粉抽出物の活性を、市販の酵素の溶液と対比して、この方法を使用して、比色分析によってアッセイすることができると決定し、要求される酸化反応を実施するために十分な活性を示した。
【0035】
実施例3:還元剤としてのシステイン
凍結乾燥酵素の代替供給品が供給された。最初の試験は、酵素充填量を最大半分まで減少可能であることを示した。代替還元剤(システイン)と組み合わせることで、酵素充填量は、最初のDGLA基質1グラム当り13.7Mユニット(液状酵素調製)から1グラム当り1.8Mユニット(凍結乾燥酵素)に減少された。DGLA1グラム当り£11.37から、DGLA1グラム当り£0.75(約15倍の削減、
図2)への、リポキシゲナーゼ酵素の費用削減を実現した。これは、減少された酵素充填量及びより安価な供給(凍結乾燥酵素では£0.42/Mユニットに対して液状酵素調製では£0.83/Mユニット)という2つの要因によるものであった。
【0036】
供給された凍結乾燥酵素が良好な安定性を有することも観察された。−20℃で保存すること、及び使用後に乾燥させることが推奨されるものの、本バッチは、最適化された酵素充填量(1.8Mユニット/g DGLA)を使用した反応に利用される前の2週間、周囲の大気条件で保存された。性能の低下は観察されなかった。pHを維持し、反応構成成分を可溶化するために、反応は、緩衝溶液内で実行された。
【0037】
穏やかな還元剤、システインを、水素化ホウ素ナトリウムの代わりに使用した。システインの使用によって、酸化/還元反応を一工程内で実行することが可能になった。加えて、反応/反応停止中に可燃性水素は生成されなかった。さらには、恐らくはシステインの抗酸化剤特性に起因して、生産された過酸化生成物は少なくなった。また、プロセスの開始時に還元剤を添加することが、高濃度のヒドロペルオキシドによって不可逆の酵素不活性化を少なくするのに役立ち、ひいては酵素要件(例えば、費用節約)を引き下げ、かつ過酸化の可能性を低くする結果を導くと考えられる。
【0038】
実施例4:酵素充填量
先の生体内酸化反応を、DGLA基質1グラム当り約13.7Mユニットの活性(1ユニットは、全体積1.0mLにおいて、pH9.0の0.1Mホウ酸緩衝液中、25℃で0.02%リネオレートとともにインキュベートしたときに、234nmで毎分0.001AUの増加を引き起こす酵素と定義される)の酵素充填量で液状酵素調製を使用して実施した。凍結乾燥粉であるリポキシゲナーゼの代替供給品も試験した。DGLA基質1グラム当り約13.7Mユニットの活性を使用して、生体内酸化反応を、凍結乾燥酵素を用いて繰り返し、
1H NMR分光法による同様の反応完了プロファイルを得た。この反応を、さらに3回、各回で酵素充填量を半分に減らして繰り返した。結果を表5にまとめる。
【表5】
【0039】
これらの試験の結果は、反応完了が依然として1時間以内に得られる上に、酵素充填量が、少なくとも半分減少され得ることを示す。より充填量の低い試料で得られた
1H NMRスペクトルは不確定であったが、DGLAは、依然としてNMRで見ることができ、その存在がTLCによって確認された。
【0040】
実施例5:酵素源
先の反応は、リポキシゲナーゼの液状調製を使用して実施され、DGLA1グラム当り13.7Mユニットの充填量で反応完了を得た。凍結乾燥純酵素の代替供給品が得られ、DGLA1グラム当りわずか6.87Mユニットの酵素充填量を使用して、反応完了に達した。
【0041】
実施例6:反応媒体
緩衝液の代わりに純水を使用して実験を実施した。DGLAを水に添加して、2つの非混合層を得た。2M水酸化ナトリウムでpHを9.8に調整し、撹拌して乳濁液を得た。凍結乾燥酵素(DGLA1グラム当り6.87Mユニット)を添加し、前と同じように反応を実施した。1時間後、反応混合物は依然として、不完全な変換を示す、濁った乳濁液であった。
1H NMR分光法は、およそ45%の未反応DGLA、及び過酸化不純物の一部を示した。これは、必要pH(約9)を維持し、かつ基質の可溶化を助けるためには、緩衝液が必要とされることを示唆する。15−(S)−HPETrEもまた、DGLA基質の可溶化を助けると考えられる。
【0042】
実施例7:還元剤
中間体ヒドロペルオキシドを、前もって、1.1当量の水素化ホウ素ナトリウムを使用して、ワンポットシーケンスで、きれいに還元した。しかしながら、これは、特に後処理中に水素ガスの生成を導き、pH調整のために大量の10%クエン酸溶液を必要とした。スケールアップにおいて、水素化ホウ素ナトリウムは、水素問題、充電モード、及び工場での予測される長い反応停止時間(約17時間)が理由で、好まれない。
【0043】
水素化ホウ素ナトリウムの代わりにシステインが還元剤として使用される実験を実施した。様々な酵素充填量を使用していくつかの反応を実施した。様々な変形を表6に詳しく説明する。酸素圧下で(2.5バール)で、Parr反応器内で反応を実行した。
【0044】
2当量のシステインが、最初に必要とされるように考えられる。3当量の添加は、恐らくは酵素活性化ヒドロペルオキシドの急速な除去に起因して、反応の失速、または少なくとも非常に遅い進行を引き起こした。しかしながら、2当量のシステインを最初に使用した場合、1時間の反応時間後に残留するヒドロペルオキシドを減少するために、さらなる当量のシステインを添加することが必要とされる。これは、恐らく、ヒドロペルオキシドではなく、酸素による反応混合物内のシステインの酸化が原因である。DGLA1グラム当り1.8Mユニット活性にまで酵素充填量を減少させることは、これらの条件下で達成可能で、数時間以内のDGLAの実質的に完全な消費、及び減少された不純物(例えば、過酸化生成物)形成が得られることも分かった。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0045】
実施例8:ダブルバッチフェッド発酵装置反応
基質(40g)及び酵素(1.8Mユニット/g DGLA)をそれぞれ一定速度(1.6mL/分及び2mL/分)でpH9.5の0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(850mL)に添加する、1Lの最終体積反応を3L発酵装置内で実行した。緩衝溶液に酸素を吹き込んで、500rpmで撹拌した。酵素をpH4.5の0.1M酢酸ナトリウム溶液(150mL)内に溶液として添加し、反応のpHを3M NaOH(水溶液)の添加により約9.5に維持した。DGLAの添加時、著しい発泡が発生し、一部の材料が槽から放出された(約10%)。ポリプロピレングリコール2000(20mLホウ酸緩衝液と1:1v/v)を抗発泡剤として添加したが、効果はあまりなかった。さらなる20mLが、発泡を著しく減少させることはなかった。酸素流を可能な限り最も低い設定まで減少させることが、次第に気泡を減少させた。1.5時間後、アリコートを
1H NMRにより分析したところ、残渣DGLA(6.25重量%)を示した。この反応をさらに5時間継続した。次いで、懸濁液を、セライトを介して濾過してシスチンを除去し、固形クエン酸でpH3まで酸性化した。結果として生じる懸濁液を、4℃で週末にかけて保存した。沈殿生成物及びさらなるシスチン残渣は、水溶液から沈降していた。これらを濾過によって収集し、白色クリームを得た。TLCは、水性濾液内に生成物がないことを示した。収集された「クリーム」を、MTBE内でスラリー化し、濾過すると粒状の白色固体が残った。濾液をロータリーエバポレータ上で濃縮すると、44gの黄色油が残った。
1H NMR分析は、HPETrEが無いこと、及び残渣DGLAが1重量%未満であることを示した。しかしながら、本生成物は、PPG2000も含有していた。この油を、20%MTBE:ヘキサン(100mL)内でスラリー化し、シリカパッド(400g)に塗布した。このパッドを、ヘキサン(1.2L)、20%MTBE:ヘキサン(2L)、及び40%MTBE:ヘキサン(4L)で溶出した。本生成物含有画分をTLCで識別した。初期生成物含有画分は、TLCにより、DGLAのかすかな痕跡を含有しており、これらを組み合わせ、かつ別々に濃縮して、透き通った淡黄色油である生成物を13g得た。
1H NMR(CDCl
3)約0.5%DGLA、HETrE。残留生成物含有画分を組み合わせて、生成物を14g得た。
1H NMR(CDCl
3)−HETrE。HPLC面積%純度(252nm)−96.92%。カラムクロマトグラフィ後の生成物の総回収率は62%であった。しかしながら、反応器内の発泡問題が原因で著しい損失が発生した。これは、十分な酸素が撹拌を介して混合物内に移送される場合には、反応を圧力下で実施する必要がないこと、及び延長された反応時間が副生成物の増加をもたらさなかったことを示している。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、より少ない酵素充填量、より低い酸素可用性、及び反応混合物中の不安定なヒドロペルオキシド量の減少など多数の理由によるものであると考えられる。しかしながら、わずかな酸素圧下での反応は、反応発泡の問題を制御するのに役立つであろう。
【0046】
実施例9:酵素源としての大豆粉
10gの大豆粉からの十分なリポキシゲナーゼ活性を抽出して、3gのDGLAをHETrE(1:10w/v 0.1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.5、3時間、180rpm)にきれいに変換するための条件を開発した。
【0047】
凍結乾燥酵素及び大豆粉の現在の価格に基づいた費用比較は、材料費における7倍の節約を示すが(
図3)、余分なユニット操作(抽出、濾過)が工場規模で要求されるため、低ボリュームでの節約の可能性は取るに足りないものである。
【0048】
酸素圧下で実施された、酵素源として大豆粉を使用した生体内酸化反応により、DGLAのHPETrE(約95%)への合理的な変換を得た。反応は、大豆粉を直接添加することによって実施され得るが、これが粘性のある反応混合物を生産した。反応混合物の酸性化は、タンパク質の沈降を引き起こし、そのとき、濾過するのが困難な生成された粘度の高い乳濁液が抽出される。層のきれいな分離は、遠心分離を用いて達成され得るが、これは、処理するボリュームに起因して、大規模では実現可能でないことが分かった。粉残渣を除去するのはかなり困難であったため、反応器の清掃にも問題があるだろう。
【0049】
代わりに活性酵素を室温で粉から緩衝溶液中に抽出した。遠心分離後、結果として生じる混濁液を使用して生体内酸化を実施した。これは、不溶性の炭水化物を反応混合物から除去するが、著しい量のタンパク質が原因で、後処理手続き中に乳濁液が形成される。
【0050】
大豆粉から半精製された酵素の単離を試みたが、これは不活性であることが分かった。
脱脂大豆粉からの酵素活性の抽出のための最適条件の系統的測定(緩衝液媒体、pH、時間、温度)。
【0051】
大豆粉から酵素を抽出することに関する調査を、pH及び抽出緩衝液(1:10w/v大豆粉充填量)(表7)で検討し、比色分析アッセイ調査と並行して実施した。
【表7】
【0052】
これらの抽出物溶液のpHを分析したところ、pH4.5のホウ酸ナトリウム緩衝液は、大豆粉を添加すると6.1のpHを有することが分かった。pH10の酢酸ナトリウム緩衝液は、大豆粉を添加すると6.8のpHを有し、純水抽出物のpHもまた6.8であった。これは、ホウ酸塩(8〜10)及び酢酸(3.6〜5.6)緩衝液のpH緩衝範囲と一致する。pH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液を、大豆粉を添加してpH5.2に変えた。
【0053】
タンパク質は、磁気攪拌機によって引き起こされるような摩擦によって損傷を受け得る。抽出の次のセットを、温度制御されたオービタルシェーカー内の50mL遠心分離管内で実行した。多数の反応を、様々なpH及び温度で設定し、1、2、及び14時間の3つの時点、ならびに5、25、及び40℃の3種類の温度で分析した。アッセイ結果(差別の少ない条件でメチレンブルー漂白によって決定される(300μL酵素溶液))を表8に示す。
【表8】
【表9】
【表10】
【0054】
これらの結果を精製された酵素の希釈系列の結果(表2)と比較することによって、≧0.105Mユニットの酵素活性/mLが、調査されたpH範囲にわたって大豆粉から抽出されることが決定された。これは、500gの毒性バッチの合成で利用される酵素活性(0.41Mユニット/mLの反応混合物)のおよそ4分の1である。pH9.0では、25及び40℃での抽出が、酵素活性を減少させ、2時間の抽出時間後に顕著になるようである。より低いpH値4.5及び6.5では、昇温での抽出は、これらの条件下で確定できる効果を有しない。
【0055】
14時間抽出試料を、適切な条件下で週末にかけて撹拌し、前と同じように分析した(表11)。
【表11】
【0056】
唯一の顕著な違いは、5℃でのpH9.0のホウ酸塩抽出物の活性の減少であった。週末にかけて室温で放置された濾過抽出物(pH4.5)が、メチレンブルー漂白法で判定した際に、活性の著しい低下を示さなかったことも観察された。
【0057】
pH4.5及び6.5(1:5w/v大豆粉の充填量)で、及び30℃の温度で、さらなる抽出を実施した(表12)。抽出物溶液を、より感度の高い条件を使用して分析した(30μLの酵素溶液)(表4と比較)。
【0058】
pH4.5の抽出溶液の上清は、pH6.5及び9.0の両方で得られたものよりも濁りが少ないことが観察された。
【表12-1】
【表12-2】
【0059】
25℃で週末にかけて放置されていた抽出物溶液(1:10w/v)を、1日放置した後、濾過した。pH4.5の試料は、透き通った黄色の上清を有し、それをデカントし、セライトのパッドを介して濾過した。残渣粉も濾過し、固体ケークを得た。20mLの抽出物を、33mLの初期緩衝液体積から回復した。濁った上清を有したpH6.5及び9.0の試料を、上記のように処理した。pH6.5の抽出物をデカントすると、上清は、粉残渣と混合した。この懸濁液を濾過して、14mLのわずかに混濁した黄色濾液を得た。pH9.0の抽出物は、20mLのオレンジ色をした混濁濾液を得た。
【0060】
30℃のpH4.5の抽出物(1:5w/v)もまた濾過して、わずか4mLの濾液を13.5mLの初期緩衝液体積から得た。
【0061】
pH4.5及び6.5の抽出は、メチレンブルー溶液を漂白するのにかかる時間を基に、0.21〜0.42Mユニット/mLの酵素活性を示した。しかしながら、pH4.5では、より透き通った抽出物を得ることができる。pH9.0では、抽出物活性は、徐々に減少し、得られる抽出物は再び濁るようである。1:5w/vの粉充填量では、少量の抽出物のみを回復することができ、1:10w/v抽出物と比べて活性の増加は著しくない。したがって、pH4.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液内の1:10w/v充填量の大豆粉を、室温で抽出して有用な活性を得ることができる。
【0062】
実施例10:酵素源としての大豆粉抽出物
10gの7B大豆粉を、pH4.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液100mLを用いて、3時間、32℃、180rpmで抽出した後、セライトを介して濾過して85mLの透き通った黄色濾液(pH5.2)を産出した。30μL分をメチレンブルー漂白試験により分析すると、活性は、およそ2mg/mL(0.2Mユニット/mL)の精製された凍結乾燥酵素(
図4)に匹敵した。
【0063】
約0.055Mユニット/mLの反応溶液の市販の酵素充填量(1.8Mユニット/g DGLA)は、反応完了に十分であった。
【0064】
2当量のシステインを、35mLの0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液とともにParr反応器に装入し、氷浴内で0〜5℃に冷却した。pHを2M水酸化ナトリウム溶液で調整した後、DGLAの添加、及びpH9.6へのさらなる調整が続いた。大豆粉抽出物(53mL)を添加して、100mLの体積及び9.3のpHを得た。酵素活性充填量は、0.11Mユニット/mLの反応溶液であった。反応を、O
2圧(35psi、2.5バール)下で1時間実施した。
1H NMR分光法は、わずかな残渣DGLA、ならびにHPETrE及びHETrEの混合物を示した(
図5)。さらなる1当量のシステインの2回に分けた添加は、
1H NMR分光法によって判定した際に、残留HPETrEの減少を可能にした。反応溶液を週末にかけて4℃で保存した。反応を前と同じように後処理した(
図5)。
【0065】
実施例11:15(S)−HETrEの単離及び精製
システイン還元剤の使用は、反応のための酵素活性充填量を7.6分の1減少(13.7Mユニットから1.8Mユニット/g DGLA)させることを可能にし、それにもかかわらず許容範囲の不純物プロファイルを得た。反応完了は、数時間以内に得られ得る。10%クエン酸溶液で酸性化する代わりに、反応を固体クエン酸で酸性化し、ひいては総容量を約30%減少させた。HETrE生成物は、シスチン残渣とともに反応混合物から沈殿し、それは濾過によって収集され得る。収集した沈殿物のMtBEでのスラリー化、及び濾過に続く、溶媒の除去が、>100重量%の未加工のHETrEの単離を可能にした。対照的に、先の後処理は、乳濁液形成を軽減するために、比較的高価な50/50ヘキサン/MtBE混合物(×3回)での抽出を伴った。乳濁液を分割するためにセライトを介した濾過と、及び生成物を回復するためにMtBEでの洗浄とを必要とする、ラグ層もまた収集した。未加工のHETrE(430g)を約72Lの溶媒から回復した。しかしながら、この方法により、320gの未加工のHETrEを9LのMtBEからのみ回復した。
【0066】
1:10w/w未加工HETrE:シリカゲル比率を使用したカラムクロマトグラフィ(約55g産出)による精製、及び(1)4Lの10%MTBE:シクロヘキサン、(2)3Lの20%MTBE:シクロヘキサン、及び(3)4Lの50%MTBE:シクロヘキサン(総溶出体積:11L)での溶出は、適切であると判明した。以前は、Biotage KP Silカラムは、1:10w/w未加工HETrE:シリカゲル比率を使用して約45gの15(S)−HETrEを精製するために使用され、かつ(1)2Lのヘキサン、(2)2Lの10%MTBE:ヘキサン、(3)2Lの20%MTBE:ヘキサン、(4)2Lの30%MTBE:ヘキサン、(5)4Lの40%MTBE:ヘキサン、(6)50%MTBE:ヘキサン、及び(7)4LのMTBE(総溶出体積:19L)で溶出された。改善されたクロマトグラフィ条件は、溶媒体積の40%減少、減少された処理時間(例えば、溶媒除去のため)、及び生成物分解の減少されたリスクを示す。
【0067】
還元剤としてシステインを使用すると、反応が進むにつれて、固体、恐らくは酸化型シスチンが反応から沈殿するのが観察された。最初に、反応の最後に見ることができる沈殿物をセライトを介した濾過によって収集し、透き通った濾液を得た後、固体クエン酸を使用してpHを3に調整した。さらなるシスチン/システインが、この段階で生成物とともに沈殿する。こね粉状の沈殿物を、焼結漏斗を介した濾過によって収集し、漏斗上で空気乾燥させることができた。次いで、この「こね粉状のもの」をMTBE(1×100mL、3×50mL)内でスラリー化して生成物を除去し、それを濾過によって収集し、Na2SO4上で乾燥させた。
【0068】
精製された酵素を使用したとき、水性層の抽出により、急速に沈降する乳濁液を得た。しかしながら、粉抽出物を使用した反応の抽出により、分割するにはセライトを介した濾過が必要とされるゲル状の乳濁液を得た。これは、生成物の損失、またはフィルタを介して洗浄するために増加される溶媒使用をもたらし得る。沈殿した生成物/シスチンの直接濾過、及びMTBEでのスラリー化がこの問題を防ぐことが分かった。この手続きを実施した後、粉抽出物反応(1891−029)から結果として生じる水性濾液(pH3)を、100mLのMTBEで抽出し、セライトを介して濾過されるゲル状の乳濁液を得た。有機層のTLC分析は、非常に微かなUV活性スポットのみを示し、単離された生成物(62mg)の
1H NMRは、HETrEが存在しないことを示したため、沈殿物の濾過がHETrE生成物の回復に好適な方法であることを表している。
【0069】
この反応は、UPLC面積%(252nm)で純度92.73%を有する2.5g(94%)の未加工のHETrEを産出した。
【0070】
実施例12:10Lスケールアップ反応
10Lスケールアップ反応を2回実施して(それぞれ300gのDGLA)、カラムクロマトグラフィ精製、溶媒除去、及び高真空乾燥の後、UPLCで純度97.2%を有する15(S)−HETrEを合計469g(74%)産出した。本材料は、比較用毒性バッチの約90mEq/kgと比較して、12.5mEq/kgの過酸化物値を有することが分かった。
【0071】
追加の10Lスケールアップ反応を実施して、カラムクロマトグラフィ精製、溶媒除去、及び高真空乾燥の後、さらに239g(76%)の15(S)−HETrEを産出した。
【0072】
実施例13:安定性研究
10Lスケールアップ反応を2回実施して、安定性研究のために600gのDGLAを処理した。これらは、スキーム2に示される条件を使用して実施された。
【化2】
スキーム2
【0073】
10Lの0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH13.4)を水素化槽に装入し、2当量のシステインがその後に続いた。DGLAを緩衝液溶液に装入し、0〜5℃に冷却した。LPX1酵素パウダーを冷えた反応溶液に添加し、最低2バールの純酸素で加圧し、1時間撹拌した。1時間後の
1H NMR分析は、約6%HPETrE、及び8%残渣DGLAを示した。反応試料のCAD分析は、残渣DGLAが12.6% w/wで存在することを示した。酸素圧下でさらに60分後の分析は、
1H NMRにより約5%HPETrE、及び4%DGLAを示した。CAD分析は、残渣DGLAが5.0% w/wで存在することを示した。反応混合物を窒素でパージした後、さらに1当量のシステインを添加し、反応を1時間撹拌した。アリコートの分析は、
1H NMRにより、HPETrEが無いこと、及び3.5%DGLAを示した。CAD分析は、残渣DGLAが3.8% w/wで存在することを示した。
【0074】
反応混合物を、窒素ブランケット下で1.3℃で一晩撹拌した。アリコートの分析は、
1H NMRにより、HPETrEが無いこと、及び3.5%DGLAを示した。CAD分析は、残渣DGLAが5.3% w/wで存在することを示し、それは特異な結果であると考えられる。アリコートを、窒素雰囲気下で後処理し、直ちに過酸化物値を分析した。これは、2mEq/kgであることが分かった。バルク溶液を、窒素雰囲気下で、25Lのドラム缶に流し、10Lのガラス槽に移した。0.02%BHTを含有するMtBEを添加し、固体クエン酸を少量ずつ添加することによってこの水溶液のpHを調整した。結果として生じる三相混合物(有機、水性、及び固体沈殿物)を沈降させた。この混合物を、次いで、窒素流出下で4L焼結漏斗を介して濾過した。1.5〜2時間を要した濾過中に、添加されたMtBEのおよそ3分の2が蒸発した。濾液層を槽に戻し、沈降させ、次いで分離した。水性層を再抽出した(×2回)。3つの抽出物層をロータリーエバポレータ上で別個に濃縮した。合計274gの未加工油を単離した(テトラクロロニトロベンゼン標準に対する
1H NMRアッセイにより、約231g(73%))。さらに53gの未加工油(43g+10g)を、単離された濾過ケークをMtBE(2×1L)内でスラリー化した後に得て、
1H NMRアッセイにより、合計で327gの未加工の回復を得た(278g(88%)。第1の抽出物及びスラリー化された材料において、それぞれ8.6mEq/kg及び14.9mEq/kgの過酸化物値を得た。
【0075】
第2のバッチを同じ様式で生産したが、反応溶液の初期温度は、より低い1.4℃対4.2℃であった。1時間後の
1H NMR分析は、約3%HPETrE、及び11%残渣DGLAを示した。反応試料のCAD分析は、残渣DGLAが15.5% w/wで存在することを示した。酸素圧下でさらに120分後の分析は、
1H NMRにより、約6% HPETrE、及び4%DGLAを示した。反応混合物を窒素でパージした後、さらに1当量のシステインを添加し、反応を窒素ブランケット下で一晩撹拌した。アリコートの分析は、
1H NMRにより、HPETrEが無いこと、及び約3%DGLAを示した。CAD分析は、残渣DGLAが4.0% w/wで存在することを示した。
【0076】
アリコートを窒素雰囲気下で後処理し、直ちに過酸化物値を分析したところ、5mEq/kgであることが分かった。バルク溶液を、窒素雰囲気下で、25Lのドラム缶に流し、15Lのガラス槽に移した。固体クエン酸でpH3.2に酸性化した後、結果として生じる固体沈殿物を、窒素流出下で多孔性1、4L焼結漏斗を介した濾過によって収集した。次いで濾過ケークを槽に戻し、MtBEでスラリー化し(3回×3L)、毎回濾過した。3つの濾液層をロータリーエバポレータ上で別個に濃縮した。合計325gの未加工油を単離した(テトラクロロニトロベンゼン標準に対する
1H NMRアッセイにより、約284g(90%))。第1の抽出物画分では、10mEq/kgの過酸化物値を得た。
【0077】
未加工の材料を組み合わせ、多数の75L Biotage KP−Silカラム上でカラムクロマトグラフィによって精製した。精製された画分を、TLC分析に基づいて組み合わせ、40℃(光から保護される)でロータリーエバポレータ上で濃縮した後、窒素でベントし、80℃で保存した。単離された純HETrE画分をMtBE中に溶解し、きれいな焼結漏斗を介して濾過し、組み合わせた後、40℃(光から保護される)でロータリーエバポレータ上で濃縮した。精製された材料を光から保護し、高真空ポンプ上で3日間室温で乾燥させた後、窒素でベントし、−80℃で保存した。元来のHPLC法(235nm)を使用して、UPLC(252nm)で97.4%面積純度、及び97.3%面積純度で、合計469gの淡黄色油を得た。
1H NMRスペクトルは構造に準じた。本材料を残渣溶媒のためのGCヘッドスペースにより分析し、MtBE及びシクロヘキサンについてそれぞれ、434及び9.2ppmの値を得た(制限5000及び3880ppm)。本バッチに関して12.5mEq/kgの過酸化物値を計算した(対して、先の毒性バッチでは約90mEq/kg)。
【0078】
この方法で生産される材料を、元来のOPRD法を使用したHPLCによる毒性バッチと比較した。HPLCトレースを
図6及び
図7に示す。
【0079】
これらのバッチは、同様のプロファイル及び純度を有する。2つのスペクトル間の主な相違は、約35〜36分で顕著であるが、これは恐らくは広範で不明瞭なピークの統合が原因である。48.1分での不純物は、毒性バッチ内で0.55%に対して試験バッチ内では0.92%で存在し、それは修正された反応条件に起因し得るか、DGLA開始材料の組成物に起因し得る可能性が高い(トコフェロール安定化させたバッチを使用して試験バッチを調製した)。63〜66分の間の不純物は、面積%の変動と一致する。トレースの比較から明らかな0.1%を超える新しい不純物はない。
【0080】
1H NMRスペクトルのオーバーレイは、実質的に同一のプロファイルを示した(
図8)。
表13は、毒性バッチの調製のために以前に利用された条件を、試験バッチの調製のために使用される条件と大まかに比較する。
【表13】
【0081】
スケールアップ試験バッチの実施中に、O
2圧下で2.5〜3時間後、約4〜5%残渣DGLAが反応混合物内に残ったことが観察された。試験反応中に、最終当量のシステイン還元剤を添加し、大気条件下で撹拌し、残渣DGLAのさらなる変換を起こさせた。しかしながら、スケールアップ反応中、反応混合物を窒素でパージした後に最終当量のシステインを添加したため、DGLAレベルのさらなる減少は不可能であった。本論拠は、反応混合物内の酸素の存在を減少させ、ひいてはさらなる過酸化物形成及びシステインの酸化の可能性を最小限にすることであった。さらに20〜50%の酵素活性が添加される、さらなる試験を実施した。最終当量のシステインとともに20%酵素活性の添加は、
1H NMRによって判定した際に、<1%残渣DGLAを得ることが分かった。
【0082】
残りの10Lの実行を、本明細書内に詳述されるプロセス説明に従って実施した。合計239gの淡黄色油を、前と同じように
1H NMRプロファイルで得た。
【0083】
実施例14:プロセス説明
プロセス説明(PD)は、この全研究中に実施される反応の結果に基づいて生成された。安定性研究プロジェクトのために十分なHETrEを提供するための2×300gのDGLAの処理において、プロセス説明案に従った。PDは、以下の例示的工程を含む:
1.ホウ酸(61.8g、1mol)及びNaOH(120.0g;3mol)を10Lの水に装入し、溶解するまで撹拌することによって、ホウ酸ナトリウム緩衝液0.1Mを調製する。
2.10.0Lの0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液を水素化槽に装入する。
3.システイン(237.2g;1.958mol;2.0当量)を装入し、溶解するまで撹拌する。
4.DGLA(300.0g;9.79mol;1.0当量/重量/体積)を緩衝液溶液に装入し、0〜5℃に冷却する。
5.目盛付きpHプローブを使用してpHが約9.3〜9.6であることを確認する。
6.必要に応じて、4M NaOH溶液でpHを調製する。
7.LPX1酵素パウダー(5.30g、17.7mg/g DGLA;1.8Mユニット/g DGLA、1.77重量%)を冷えた反応溶液に装入する。
8.反応槽を最低2バールの純酸素で加圧する。
9.反応を2バール酸素圧下で、0〜5℃で1時間撹拌する。
10.発泡を防ぐために酸素をゆっくりと放出する。
11.化学者チェック:アリコートを除去する;固体クエン酸を使用して抽出物をpH3に酸性化し、MTBEで抽出する。Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータ上で溶媒を除去し、
1H NMRにより残渣を分析して、DGLAのHPETrE/HETrEへの変換を確認する。
12.さらなるLPX1酵素パウダー(1.06g、3.5mg/g DGLA、0.36Mユニット/g DGLA、0.35重量%)及び1当量のシステイン(119.0g;0.979mol)を添加し、酸素下でさらに1.5時間撹拌する。
13.酸化完了について分析する−反応混合物のアリコートを除去し、等体積のMeOHで反応を停止させ、開始材料の消費を示すためにCAD検出により分析する。残渣DGLAが<10g/kg(HPLC/CADによる)の場合は合格。IPCが不合格の場合、酸素圧下でさらに1時間撹拌を継続し、分析を繰り返す。
14.還元完了について分析する−アリコートを除去する;固体クエン酸を使用して抽出物をpH3に酸性化し、MTBEで抽出する。Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータ上で溶媒を除去し、
1H NMR及び/またはUPLC/UVにより残渣を分析して、残渣HPETrEが無いことを確認する。試験段階中、試料を酸素から保護し、遅滞なく過酸化物試験を実施する。NMR及び/またはUPLC/UVにより15−HPETrEが検出不可能な場合は合格。過酸化物値はFIOである。IPCが不合格の場合、システイン(59.5g、0.489mol、0.5当量)を添加し、窒素ブランケット下でさらに4〜8時間撹拌を継続し、分析を繰り返す。
15.反応混合物を窒素でパージする(×3回)。
16.反応器内容物を、窒素流出下で25Lドラム缶に移す。
17.反応混合物を窒素ブランケットされた約15L槽に装入する。
18.目盛付きpH測定器でpHをチェックしながら、固体クエン酸(必要に応じ、装入表(表16、付録1)を参考)を、撹拌された、窒素ブランケットされた反応混合物に少量に分けて装入する。pH≦3.5に調整する。毎回次の分量を添加する前にpHが安定するのを待つ。添加回数、pH傾向、観察を記録する。
19.撹拌を止め、沈殿した固体を焼結漏斗上で濾過する。濾過中、外部窒素ブランケットを適用する。
20.水性濾液層を10Lドラム缶内に移す。
21.湿潤ケークを抽出槽内に戻す。MtBE(3L)を抽出槽に装入する。
22.10分間撹拌し、沈降させる。
23.撹拌を止め、沈殿した固体を焼結漏斗上で濾過する。濾過中、外部窒素ブランケットを適用する。
24.有機濾液をきれいな10Lドラム缶に移す。
25.工程21〜24を2回繰り返す。
26.250mバール/摂氏40℃浴で蒸留物収集が緩徐になるまで未加工の生成物溶液を蒸発させる。ロータリーエバポレータを窒素でベントする。蒸発が終わる前に、溶液を風袋軽量済1Lフラスコに移す。可能な限り空気から保護する。
27.未加工の重量を決定し、15−HETrE:MtBEモル比(FIO)のためにNMR試料を採取する。過酸化物試験のために、FIO試料を、新鮮なときに採取し、遅滞なく分析する。UPLC/UVでの未加工の純度のためにFIO試料を採取する。
28.窒素下で摂氏−80℃で未加工の生成物を保存する。
29.未加工のHETrEを1体積のシクロヘキサン内に80gずつに分けて溶解し、シクロヘキサンで事前溶出されたBiotage 75Lシリカカートリッジに適用する。10%MtBE:シクロヘキサンで開始して最大50%MtBE:シクロヘキサンまでのカラムから生成物を溶出する。
30.TLCに基づいて生成物画分を事前に組み合わせる。
31.カラム画分純度を分析する−事前に組み合わされた生成物画分のアリコートを除去し、UPLCにより分析する。%面積純度が>95%の場合は合格。IPCが不合格の場合、再精製のために画分を取っておく。
32.純粋な生成物を含有する画分を好適に組み合わせる。
33.40℃でロータリーエバポレータ上で溶媒を除去する。窒素でベントする。
34.材料を、撹拌しながら、高真空下で一定重量まで乾燥させる。
35.窒素下で真空を解放する。
36.残渣溶媒を分析する−乾燥させた生成物のアリコートを除去し、GCヘッドスペースにより分析する。残渣溶媒がICH限界未満(<5000ppm MtBE、3880ppmシクロヘキサン)の場合は合格。IPCが不合格の場合、バルク材料を高真空ポンプに戻し、24時間乾燥を継続し、分析を繰り返す。
37.窒素ブランケット下で、風袋計量済アンバーボトルに移し、80℃で保存する。
【0084】
実施例15:反応器洗浄
DGLA及びHETrE残渣は、エタノール及びメタノール、またはアセトンなどのアルコール中に容易に溶解できる。システインは、水(280g/L@25℃)、及びエタノール(1.5g/100gのエタノール@19℃)中に溶解でき、シスチンは、加熱しながら1M HCl(50g/L)、及び塩基性溶液中に溶解できる。
【0085】
反応後処理から収集された固体550mgを、加熱しながら12mLの1M HCl内でスラリー化した。本材料のバルクを50℃で加熱しながら溶解した。少量の不溶性材料を見ることができた。さらなる1M HCl(12mL)の添加により、粘り気のある固体を溶解することはできなかった。残渣材料を濾過によって収集した(14mg、湿潤、2.5%)。
【0086】
収集した固体550mgを、10mLの4M NaOH内で加熱しながら(ヒートガン)スラリー化した。本材料のバルクを溶解したが、再び少量の不溶性材料を見ることができた。
【0087】
さらなるNaOH(10mL)の添加により、固体を溶解することはできなかった。
【0088】
10L反応の実施後、水素化槽を水及びメタノールで洗浄し、沈殿したシステイン/シスチンなどを除去した。15Lガラス槽内での反応混合物の後処理後、反応器を苛性溶液(約0.5M)で洗浄し、80℃に加熱し、一晩撹拌した後、アセトンで洗い流して槽を見た目にきれいにした。
【0089】
実施例16:熱危険性評価
Advanced Reactive System Screening Tool(ARSST)は、プロセス産業における化学的危険性の可能性を迅速かつ安全に特定することができる効果的な熱量計である。
【0090】
合成反応(スキーム2)は、ホウ酸ナトリウム緩衝液中のリポキシゲナーゼ酵素を使用したDGLAの過酸化を伴う。次いで、結果として生じる過酸化物(15−(S)−HPETrE)を、in−situで、システインの存在下で最終生成物15−(S)−HETrEに還元する。この反応は、0〜5℃でワンポット手続きとして実行されることが意図される。主たる懸念は、特に過酸化物がこの反応の経過中に形成されるため、昇温が不都合な熱イベントを引き起こし得ることであった。
【0091】
全ての試薬を、ラボ内で調製された水溶液としてARSSTセルに装入した。溶液濃度は、開始試薬のおよそ5%であった。およそ10gの溶液をARSST槽に一括で移し、圧力パッドを適用し、運転を開始した。水が蒸発するのを防ぐため、250℃で運転を停止した。
【0092】
槽内の温度は、添加前は21℃であった。自己発熱率は、およそ0.9℃/分であった。反応の過程中に著しい発熱は観察されなかった(
図9)。Advanced Reactive System Screening Tool(ARSST)または直接走査熱量測定(DSC)を使用して、熱危険性は観察されなかった。
【0093】
試験範囲内(最大140℃)でさらなる発熱性は観察されなかった。運転の経過中に気体発生は観察されなかった。自己発熱率は、恐らくは生成物の分解からの揮発性化合物の形成により100℃で減少し、永久気体形成は観察されなかった(
図10)。
【0094】
反応溶液(約10g)を使用してさらなる運転を実行し、そこでは、この場合はいかなる熱危険性の可能性も観察される可能性が高かったため、システイン還元剤を除外し、したがって主に中間体過酸化物を含有していた(
図11)。
【0095】
発熱は、40℃の開始温度を有すると検出され、ATRは13℃であった。バックグラウンド加熱率は0.9℃/分であった。揮発性物質の形成、恐らくは生成物の分解が原因で、自己発熱率はおよそ116℃で減少し始めた。前と同じように、この反応において気体のいかなる放出の証拠もなかった(
図12)。
【0096】
40℃の開始温度及び13℃のATRでの発熱が、この反応において観察された。反応は0〜5℃で実行されるため、それが問題になる可能性は低い。反応中の過酸化物レベルが低いため、観察された発熱が標準反応条件下で見られる可能性は低い。この反応において目に見える気体放出は観察されなかった。反応は、0〜5℃の提案された温度範囲で操作するのに安全である。
【0097】
未希釈のHETrEの試料を、20〜300℃の範囲にわたって2、5、10、20℃/分の発熱率でDSCにより分析した。著しい発熱は観察されなかったが、約40℃でわずかな発熱が観察され、それは恐らく試料から蒸発する残渣溶媒(MtBE)が原因であった。
【0098】
実施例17:ロバスト性研究
修正されたプロセスを使用すると、O
2下での延長された反応時間(最大4時間)は、生成物の品質へのいかなる悪影響も示さなかった。
【0099】
75℃の外部温度で40%MtBE:シクロヘキサン内で還流させる時間の延長(4.5日)は、HETrEの著しい分解を引き起こさなかった。以前に、真空下で50℃で(1822−129−4E)加熱される未希釈のHETrEは、分解を示した(1つの主な不純物が観察され、それは自己で形成されるエステルと特定されている。
【0100】
実施例18:反応時間に関する15(S)−HPETrE/HETrEの安定性の調査
多数の反応が、反応の様々な段階におけるロバスト性に関する有用な情報を提供した。結果を表14にまとめる。
【表14-1】
【表14-2】
【0101】
以前に、元の処理条件(ヒドロペルオキシドの生成に続き、水素化ホウ素ナトリウムを使用してHETrEに還元)を使用すると、酸素圧下で延長された時間(4時間)は、
1H NMR(
図14)、及びLCMS(
図13)により判定した際に、過酸化不純物の形成を導くことが観察された(実験1822−063)。RT約7.8でのピークは337のm/zを有し、ジ−HETrEと一致し、吸収度は、化合物のトリエン酸特性と一致する、最大で267nmである。
【0102】
以前と同じ酵素充填量(13.7Mユニット/g DGLA)を使用してヒドロペルオキシド中間体を形成した後、2当量のシステイン還元剤を添加し、O2/空気下でさらに3.5時間撹拌する、初期反応(1822−193)を実施した。
1H NMRプロファイル(
図14)は、1822−163で得たものと類似していた。過酸化は、高酵素充填量、または酸素に対するヒドロペルオキシドの反応特性のいずれかが原因で、ヒドロペルオキシド中間体により発生しているようであった。
【0103】
次の実験(1822−195)では、2当量のシステイン還元剤を反応の開始時に添加し、それをO
2圧下で30分間撹拌した。一部の残渣DGLAが、HETrE及びHPETrEの混合物ならびに少量の過酸化不純物とともに、
1H NMRスペクトル内で見ることができた。大気条件下で一晩保存後、不純物プロファイルは、HPETrEのさらなる還元はなく、わずかに悪化しているように見え、それはシステインが、ヒドロペルオキシドまたは酸素のいずれかによって全て酸化されたことを示唆した。
【0104】
実験1822−197では、反応の開始時の3当量のシステインの添加が、過酸化を減少させるように見えたが、DGLAのHETrEへの変換も遅らせた。過剰なシステインは、酵素活性化HPETrEの還元を加速することが想定され、これは過酸化の欠如、ならびに停滞する反応の原因となり得る。
【0105】
次いで、酵素充填量を、それぞれ3.6、1.8、0.9Mユニット酵素活性/グラム DGLA基質に減少した、実験1891−001〜005を実行した。反応の開始時に2当量のシステインを添加し、それをO2圧下に1時間置いた後、
1H NMRにより分析し、次いでさらに1当量のシステインを添加し、空気またはO2圧下でさらに1時間撹拌した。
1H NMR(
図14)により過酸化不純物は観察されなかったが、低いレベルが252nmでのUPLCにより見ることができた。
【0106】
反応混合物に6.5時間継続して酸素を吹き込んだ発酵装置反応1891−009は、
1H NMRにより過酸化生成物を示さなかった。この場合、溶液中の活性酵素の濃度は、常に低レベルであった。
【0107】
反応1891−029を、酸素下で3時間撹拌し、空気下で週末にかけて保存した。わずかな量の過酸化不純物が、
1H NMRにより見ることができた(
図14)。
スケールアップバッチ1891−051(1.8Mユニット/g DGLA)を、O
2圧下で2.5〜3.75時間維持したが、
1H NMR分析により判定した際に、純度に対する重大な影響はなかった。
【0108】
実施例19:溶媒除去条件下での安定性
500mL40%MtBE:シクロヘキサン中HETrE(約9.1g)溶液を、75℃(外部油浴温度)で400mバール真空(コンデンサ冷却液温度−0℃)で加熱する、熱安定性試験を実施した。これが、穏やかな還流を確立した。溶液を光から保護した。試料を、窒素雰囲気下で、様々な時点で取り出し、UPLC(252nm)により分析した(
図15)。
【0109】
本条件は、プールされたカラム画分からの工場スケールの溶媒除去で直面する可能性のある条件を模倣するように設計された。6時間後、純度の著しい減少は検出されなかった。還流は、さらに112時間にわたって延長された。純度の著しい減少は観察されず、0.44から0.64%への増加はあったものの、RT 12.2分での二量体不純物の形成の急速な増加もなかった。
【0110】
実施例20:反応完了IPCのための非NMR法の調査
w/w DGLA標準に対する化学エアロゾル検出(CAD)法を使用して、反応混合物内の残渣DGLAを決定した。先の反応を、反応混合物からのアリコートの除去及び小型後処理に続く
1H NMR分析を基に、反応完了について評価した。しかしながら、残渣DGLAとHETrE生成物信号との間にいくらかのオーバーラップがあったため、この方法は理想的ではなかった(
図16)。
【0111】
代替の方法が好ましかった。DGLAは210nmを超えて吸収しないため、UV分析は考慮に入れなかった。IPC試料を0.1% w/w DGLA標準と比較する、荷電化エアロゾル検出(CAD)は、好適な方法であることが分かった。IPC試料を反応から取り出し、50%メタノールで反応を停止して酵素を変性させた後、分析を実施した。この方法は、反応試料内の残渣DGLAレベルのより正確な決定を可能にする。
【0112】
実施例21:不純物のLC−MS調査
精製された15(S)−HETrE、ならびにPRD開発の経過中に調製された不純物が豊富な前部及び後部画分を、LC−MS及びMS−MSにより分析した。DGLAに関して供給された規格、及び入手したデータに基づき、観察された不純物に関して暫定的構造を示唆した。DGLA開始材料の規格に基づき、存在する3つの主な不純物(
図20)は、それぞれ1.1、1.6、及び0.4%のGC分析により、FAME面積%を有する、20:2ω6(イコサジエン酸(EDA)、C
20H
36O
2、RMM308.48)、20:3ω3(エイコサトリエン酸(ETE)C
20H
34O
2、RMM306.48)、及び20:4ω3(エイコサテトラエン酸(ETA)、C
20H
32O
2、RMM304.48)であった。0.2%面積(FAME)面積でそれぞれさらに2種類の未確認の不純物もまた存在し、FAME GC分析により3.5面積%の総不純物を示した。
【0113】
精製された生成物(1891−051−7A)から確認された質量の暫定的構造を、表15に含める。m/z323(RT 7.68分)及び319(RT 6.3分)で精製された材料内で確認された主な不純物は、EDA及びETAのヒドロキシル化生成物(それぞれHEDA及びHETE)と一致する。ETEのヒドロキシル化に関連した即座に確認可能な不純物を、精製された材料内で検出することはできなかったが(m/z321を予期した)が、後部画分内では、m/z321(RT 7.19分)でのピークが、主なHETrE生成物ピーク上で観察された。3つ目の主な不純物は、583のm/z(RT 11.41)を有したが、それは恐らく625のm/zで、12.22分で見ることができる二量体生成物に関連する。最初に、これは、Diels Alder機構、または自己エステル化のいずれかが原因で形成されると仮定された。LC MS−MS(
図21)を、+25℃で保存されていた試料(安定性研究1773A0030Eからの試料229)で実施したところ、この二量体純度は増加していた。
【表15-1】
【表15-2】
【0114】
不純物の式はC
40H
66O
5であった。断片化モードは、不純物のエステル二量体特性を支持する。MS/MSアルゴリズムによる識別は、エステル開裂からの予期されるパターンである、HETrEと同じプロファイルを有する娘イオンを示した(
図22)。
【0115】
実施例22:EPAからの15(S)−HEPEの生産
反応を、DI水中に(5L)完全に溶解したホウ砂(194g、0.508mol)によって実行した。L−システイン(40g、0.33mol)、及び25〜30℃で30分間撹拌した。PPG−2000(抗発泡剤、2mL)を添加し、4M NaOHを使用して反応質量pHを9.55〜9.65に調整した。EPA(50g、0.165mol)を添加し、25〜30℃で30分間撹拌した。反応質量を0〜5℃に冷却し、LPX1酵素(1.25g、2.49%)を添加した。反応混合物を酸素(業務グレード、99.5%)(1Kg*2)でパージし、酸素ガス(2.2Kg)で反応槽を加圧した。反応混合物を、0〜5℃で、酸素圧(2.2Kg)下で1時間撹拌した。EPAの変換完了後、質量を窒素ガス(グレードI、1Kg*2)で脱気した。L−システイン(20g、0.165mol)を添加し、反応槽を窒素ガス(グレードI、2.2Kg)で加圧した。本質量を0〜5℃で1時間撹拌した。ペルオキシ中間体の変換完了後、窒素圧を解放し、本質量を反応器から取り外し、DM水(150mL*2)で洗い流した。未加工のpHを40% w/w クエン酸溶液を使用して3.0〜4.0に調整し、続いてMTBE(1L)を添加した。この二相層を30分間撹拌し、濾過した。主な濾液を、層分離のために採取し、残渣をMTBE(500mL*2)で洗浄した。MTBEで洗浄した残渣を、分離した水性層の抽出のために採取した。有機層を組み合わせ、無水硫酸ナトリウム(15g)上で乾燥させ、濾過した。濾液を、30〜35℃で真空下で濃縮し、95.00%HPLC純度を有する淡黄色の液体(48g)としてステージ−Iを得た。
【0116】
15(S)−HEPEのエステル化を、乾燥アセトン(300mL)中にステージ−I(30g、0.094mol)を溶解することによって実行した。炭酸カリウム(68.36g、0.495mol)及び臭化エチル(30.8g、0.283mol)を添加し、その質量を25〜30℃で48時間撹拌した。ステージ−Iの完了後、冷却したDM水(120mL)及びブライン溶液(30mL)を10〜20℃で反応質量に添加した。反応質量を25〜30℃にし、次いで60分間撹拌した。この二相層を分離し、上部有機層を25〜30℃で真空下で濃縮し、溶媒を蒸留して取り除いた。ヘキサン(225mL)を未加工に添加し、その質量を25〜30℃で30分間撹拌した。この二相層を分離し、上部有機層をブライン溶液(15%、90mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム(4.5g)上で乾燥させ、濾過した。濾液をノーリット木炭(SXプラス、3g)と添加し、1時間撹拌した。黒色溶液を、セライトパッドを介して濾過した後、濾液をシリカゲル(100〜200メッシュ、20%)と添加し、次いで1時間撹拌した。スラリー質量を濾過した後、濾液を25〜30℃で真空下で濃縮して、溶媒を蒸留して取り除いた。濃縮された質量を、MTBE(90mL*2)で追跡し、97.13%HPLC純度を有する淡黄色の液体(21.73g)としてステージ−IIを得た。
【0117】
結論及び推奨
DGLAの新規ワンポット生体内酸化/還元は、ほんのわずかの酵素充填量、ならびにかなり少ない抽出及びクロマトグラフィ溶媒のみを使用しながら、同様の純度の15(S)−HETrE材料を著しく増加した収率(二工程法の53%に対して76%)で生み出す。
【0118】
連続ワンポッドモードで使用される、先の還元剤水素化ホウ素ナトリウムは、in−situ還元剤として使用されるシステインで置き換えられた。これは、より大きい規模では問題となっている、品質及び収率にとって脅威となる可能性のある長い反応停止時間を伴う、反応及び後処理中の水素生成を防ぐ。システインの使用のさらなる追加の利点は、還元剤が反応の開始時、すなわち生体内酸化工程の前に、添加され得ることである。したがって、生成されたヒドロペルオキシド中間体は、それが形成されるときにin−situで還元され、高レベルのヒドロペルオキシドによって引き起こされる酵素不活性化を防ぐと同時に、過酸化及びヒドロペルオキシド中間体分解を原因とする不純物形成を防ぐ。これが、要求されるリポキシゲナーゼ酵素充填量を7.6分の1減少させるという結果を導いた。凍結乾燥酵素の代替のより安価な供給と組み合わせることで、これは、酵素費用負担を全体で15分の1減少させるという結果を導いた。
【0119】
酵素充填量要件を減少する試みと並行して、酵素源調査は、大豆粉から抽出されるリポキシゲナーゼが、かくして15−(S)−HETrEプロセスに有効な酵素源であることを明らかにした。それは、大規模製造向けの長期的オプションとして見られるが、好適な大豆粉除去技術はまだ開発されていない。短期的には、及びより小規模の数キログラムの製造向けには、凍結乾燥単離された酵素を使用することが、その高費用が追加の大豆粉処理操作が不必要なことで相殺されることから、推奨される。
【0120】
後処理手続きは、高価なヘキサン及びMtBE溶媒混合物を使用した乳濁液形成抽出から、未加工の生成物を単離するためのMtBEとの反応沈殿物の単純なスラリー化へと簡略化された。10%溶液ではなく固体クエン酸を使用した反応混合物の酸性化が、反応体積を減少させることを助けた。
【0121】
より欠点のない反応プロファイルに起因して、カラム生成条件は、毒性ヘキサンをより安全なシクロヘキサンと置き換えながらも、消費される溶媒の量を減少させるように修正された。これは、溶媒蒸発中の処理時間の減少、ひいては生成物分解の関連リスクの減少という追加の利点を有する。溶液中、及び高温面への曝露に対する15(S)−HETrEの熱安定性の研究は、工場で典型的な溶媒条件下では、著しい分解が<2日の時間規模で発生するはずがないことを示した。最終的に、>100kgの大規模に向けた製造費用削減のために、カラムクロマトグラフィから、塩、共結晶、または他の誘導体の結晶化による精製に移行することが依然として望ましい。
【0122】
新しい処理方法は、酸素曝露、ひいては過酸化物及びそれに続く分解生成物の生成を減少させることを目指して、全ての好適な段階で不活性雰囲気下で材料を取り扱うことを含んでいた。得られる過酸化物値は、かくして、以前に得られた90+の値と比較して、10〜15の辺りである。安定性試験からの結果は、材料の初期品質が観察された安定性に好影響を与えたことを示唆する(エステルの形成は考慮せず)。
【0123】
精製された材料内の主な不純物(>0.10%面積)をLC−MSにより特定する試みは、それらが開始DGLAから主に派生することを示唆する。自己エステル化生成物もまた、観察可能であり、その量は、より高い温度(>−20℃)で徐々に増加する。不純物特定の状況は、初期段階の臨床試験及び関連製造には十分である。
【0124】
現在設計されているようなプロセスは、いかなる重大な熱危険性も示さない―反応混合物が40℃に達するときに、わずかな温度上昇が観察されるが、温度は0〜5℃の間に維持されるため、これは、安全なプロセススケールアップの障害にはならない。
【0125】
結論として、かくして、この研究プログラムから生じる開発されたプロセスは、cGMPに従った安全かつロバストな初期段階の数キログラムのスケールアップ製造のための目的にかなっている。
【表16】
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
システインが還元剤として使用される、脂肪酸の15−ヒドロキシ誘導体の生産のためのプロセス。
(構成2)
脂肪酸1グラム当り400Mユニット未満が反応で使用される、構成1に記載の前記プロセス。
(構成3)
収率が、少なくとも約50%である、構成1または構成2に記載の前記プロセス。
(構成4)
前記15−ヒドロキシ誘導体が、15(S)−HETrEである、構成1〜3のいずれか一項に記載の前記プロセス。
(構成5)
前記脂肪酸を酸化して、15−ヒドロペルオキシ脂肪酸中間体を形成することと、前記中間体を還元して、前記15−ヒドロキシ誘導体を形成することとを含む、構成1〜4のいずれか一項に記載の前記プロセス。
(構成6)
前記15−ヒドロキシ誘導体が、15(S)−ヒドロキシエイコサペンタエン酸である、構成1〜5のいずれか一項に記載の前記プロセス。