(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659632
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】PVA粒子を含む洗浄クリーム、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20200220BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20200220BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20200220BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/04
A61Q19/10
A61K8/81
A61Q11/00
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-154124(P2017-154124)
(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-30836(P2018-30836A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】105125532
(32)【優先日】2016年8月11日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517280432
【氏名又は名称】星▲彦▼塑膠股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】XING YAN Plastic Co., Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】517280443
【氏名又は名称】駿禾科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Jyun He Technology Limited Company
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】顔 鴻昌
(72)【発明者】
【氏名】呂 有宏
(72)【発明者】
【氏名】林 坊云
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−081496(JP,A)
【文献】
特開2015−017245(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0120768(US,A1)
【文献】
特開2012−106972(JP,A)
【文献】
特開平06−321728(JP,A)
【文献】
特開2000−344801(JP,A)
【文献】
特開昭61−286316(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00654211(GB,A)
【文献】
特開平07−018145(JP,A)
【文献】
米国特許第05824324(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/04
A61K 8/81
A61Q 11/00
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法であって、
ポリビニルアルコール粒子50〜80wt%と、グリセリン20〜50wt%とを高低速ミキサーで混和し、混和する時に機能性添加剤0.5〜4.5wt%を添加して、前記ポリビニルアルコール粒子が前記グリセリンを吸収させて膨潤させるステップと、
前記ポリビニルアルコール粒子の表面を平滑になるように研磨するステップと、
研磨された前記ポリビニルアルコール粒子を、含水率が0.1〜23%の洗浄クリームと混和して、前記ポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームを得るステップと、を含み、
前記洗浄クリームは少なくとも一つの界面活性剤を含み、前記ポリビニルアルコール粒子の前記洗浄クリーム中に占める比率が0.5〜5wt%であることを特徴とする、ポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄クリームは、着色料又はフレグランスをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、或いは両性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1記載のポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール粒子は、機能性添加剤0.5〜4.5wt%を含むことを特徴とする、請求項1記載のポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法。
【請求項5】
前記機能性添加剤は、着色料又はフレグランスであることを特徴とする、請求項4記載のポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洗浄クリーム、特に、ポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
角質除去や美白のための洗顔クリーム、角質除去用品又は歯磨き粉などは、それぞれポリエチレン(Polyethylene, PE)又はポリプロピレン(Polypropylene, PP)製のマイクロビーズを有し、その作用は、マイクロビーズと肌又は歯面との摩擦によって、肌の老廃物の排出と、歯垢除去を促す効果を発揮する。
【0003】
そのPE又はPP製のマイクロビーズの利点により、多くの関連商品が市場に導入されることになっている。しかし、長く使われているほど、そのPE又はPP製のマイクロビーズによる、我々の健康と地球に対する被害が日々深刻になっている。
【0004】
また、より優れる機能とテクスチャを求めることにより、そのPE又はPP製のマイクロビーズはさらに微小化に製造され、且つ大量に添加されている。推計によると、洗顔クリーム1本に含まれたマイクロビーズの数が少なくとも36万個に達するため、数万単位のマイクロビーズが下水道を通して川や海に流れ込むことになる。また、マイクロビーズのサイズが小さいので、浄水場でも有効に収集できず、最終的に海や環境に流れ込む。そして、分解できないPE又はPP製のマイクロビーズは海洋生物や動物の食料となって一生体の中に残留して、食物連鎖で海洋生物を通してそのマイクロビーズが人体に辿ることになり、健康を損なうことになる。
【0005】
現時点では、代替として天然繊維粒子を使うことも可能ですが、その天然繊維粒子のコストが高く、且つ粒子のサイズや精度の制御が困難であるため、良好な代替品とは言えない。
【0006】
その故、前述した欠点を克服するために、本発明は、前述した問題を緩和または軽減する一種のポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームを提供する。
【発明の概要】
【0007】
上述した一般的なプラスチックで製造されたマイクロビーズが分解しないために環境汚染、人体被害の原因となる問題、及び代替としての天然繊維粒子のコストが高く、且つ粒子のサイズや精度の制御が困難など様々な問題を解決するために、本願発明は、ポリビニルアルコール粒子を含む洗浄クリームを提供し、ポリビニルアルコール粒子を洗浄クリーム中
に分散させ、そのうち、前記洗浄クリームの含水率が0.1〜23%であり、且つ界面活性剤を含み、前記ポリビニルアルコール粒子の前記洗浄クリーム中に占める比率が0.5〜5wt%であり、前記ポリビニルアルコール粒子は、分子量が110,000〜120,000ダルトンのポリビニルアルコール50〜
80wt%と、グリセリン
20〜50wt%とを含み、前記ポリビニルアルコール粒子が前記洗浄クリーム中に
分散されている。
【0008】
本発明のPVA粒子が、一定の含水率を持つ洗浄クリームにおいて完全な粒子状態を維持できるため、本発明を使う場合、優れる角質除去や美白の効果を有し、さらにその水溶性を利用して、当該ポリビニルアルコール粒子が下水道に洗い流す時に、大量の水がそのポリビニルアルコール粒子を加水分解して消滅することで、従来の分解できないPE又はPP製のマイクロビーズによる環境の汚染を減らすことができる。
【0009】
また、本発明は、一般的なプラスチック製造工程によって、均一なサイズや精度のポリビニルアルコール粒子を大量生産できるので、比較的安価で製造できると共に、粒子のサイズを容易に制御することができる。
【0010】
本発明の他の目的、利点及び新規的な特徴は、以下の明細書及び図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のPVA粒子の製造プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の製造方法の好ましい一例では、以下のステップを含む:
【0013】
ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol, PVA)原料粒子及びグリセリン(Glycerine, GC)を高低速ミキサーで混和し、前記PVA原料粒子をグリセリンに浸潤して前記グリセリンを吸収させることで、前記PVA原料粒子をPVA粒子に形成するように膨潤させる。そのうち、前記グリセリンを吸収させた後の前記PVA粒子において、PVAとグリセリンの比率は、PVA50〜95wt%、及びグリセリン0.5〜50wt%である;
【0014】
原料の混和において、機能性添加剤を0.5〜4.5wt%添加する;
【0015】
混和後の前記PVA粒子を、その表面がさらに滑らかになるように研磨して、肌に対する刺激や損傷を減少する;そして、
【0016】
研磨された前記PVA粒子を、界面活性剤を含む洗浄クリームと均一に混合する。前記洗浄クリームの含水率が0.1〜23%の範囲内であることが好ましい。
さらに着色料、キレート剤、防腐剤又はフレグランスなどの添加物を含んでもよい。前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、或いは両性界面活性剤を含む。
【0017】
従来のPVA原料粒子のサイズが約100メッシュ(mesh,150μm)であり、粒子径が小さく、テクスチャが硬い且つ表面がラフであるが、本発明がPVA原料粒子をグリセリンに浸潤させた後、PVA原料粒子はグリセリンを吸収してより大きい粒子に膨潤させることで、粒子が柔らかくて平滑になると共に、粒子径が70〜80メッシュ(mesh,180〜220μm)に増加して、使用者の肌に対する損傷が減少すると同時に、肌の老廃物を除去する目的も達成できる。
【0018】
前述した機能性添加剤は、着色料又はフレグランスであっても良いが、それに限定されない。本発明の前記洗浄クリームは、ローション、ゲル又はペーストを採用することができる。前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、或いは両性界面活性剤であっても良いが、それに限定されない。また、前記洗浄クリームは、前述した界面活性剤以外に、必要に応じてさらに他の添加剤、例えばキレート剤または防腐剤を含み得る。
【0019】
PVAが水溶性ポリマーである故、水分を大量に含む湿潤環境に溶解又は分解されることになり、前記PVA粒子が、水分を含む前記洗浄クリームにおいて完全な粒子状態を保つように、前記PVA粒子におけるPVAの分子
量は110,000〜120,000ダルトン(Dalton, D) の範囲内であることが好ましい。また、その分子量(重合度)が高くなるほど、粘度も上がり、溶解度も相対的に低下するので、前記PVA粒子の分子量を調整することで、水での溶解速度を調整できる。
【0020】
その分子量が110,000〜120,000DのPVAは、グリセリンの吸収効果と製品の品質が最も優れるので、本発明の前記PVA粒子が洗浄クリームにおいて完全な粒子状態を維持する。使用した時、本発明のPVA粒子は肌の老廃物を除去すると共に、過度の摩擦や粒子の粗さより肌を損傷することもない。また、当該PVA粒子が下水道に洗い流す時に、大量の水がそのPVA粒子を加水分解することで、環境を汚染することもなく、海洋生物の体内に蓄積することもない。
【0021】
清潔用品は多種の製剤と用法があり、直接肌や歯に使用するものと、少量の水を加えて泡立てる形式など、主要の二種類の使い方を含む。その泡には、23wt%以上、はては50〜60wt%の含水率に達する可能性もあるが、本発明は特定な分子量のPVA粒子を利用することで、完全な粒子状態を長時間維持でき、約2−3分間保つことができる。
【0022】
また、本発明に使用された前記PVA粒子に含まれたPVAとグリセリンは、いずれも人体や環境に無害のものであり、環境中に廃棄されても環境汚染や海洋生物の被害にはならない。
【0023】
以下の表1は、本発明が提供された上述の製造方法で製造された幾つかの実施例である。表1は、前記PVA原料粒子が前記グリセリンと混和された時の、前記グリセリンの添加比率(wt%)と、それに対する前記PVA粒子が膨潤後の体積膨張倍率と、前記ポリビニルアルコール粒子の外観や肌触りを表す。
【表1】
【0024】
以上の説明で理解されるように、本発明のPVA粒子は、水分を含む洗浄クリームにおいて完全な粒子状態を保たれ、本発明を使用する時、優れる角質除去や美白の効果を提供できる。また、その水溶性の特性より速やかに分解して消滅するので、従来の分解できないPE又はPP製のマイクロビーズによる環境の汚染を減らすことができる。
【0025】
本発明のPVA粒子は、従来のプラスチック製造工程で製造できる他、安価且つ粒子のサイズを容易に制御することができる。