【文献】
ディスパロン AQH−800,[令和元年5月10日検索]、インターネット<URL:https://www.kusumoto.co.jp/wp-content/uploads/2016/12/AQH-800_TDS_J.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドが、ポリアミド1g当たりKOH 0.01から8.0mgの範囲の酸価を有する、請求項1または2に記載の水性分散液(P)。
ポリマー樹脂(P2)および(P1)の互いに対する相対質量比が、いずれの場合にも、分散液(P)におけるそれらの固形分に対して、10:1から1.5:1の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性分散液(P)。
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドが、分散液(P)に、分散液(P)の総質量に対して、0.5から15質量%の範囲の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性分散液(P)。
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルが、分散液(P)に、分散液(P)の総質量に対して、5から20質量%の範囲の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性分散液(P)。
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルが、ポリエステル1g当たりKOH 20から50mgの範囲の酸価および/またはポリエステル1g当たりKOH 20から300mgの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性分散液(P)。
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマー樹脂(P1)およびそれとは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(P2)を含む、水性分散液(P)と、
ポリマー樹脂(P1)および(P2)とは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)ならびに任意に少なくとも1種の架橋剤(A2)を含む、少なくとも1種の結合剤(A)と、
少なくとも1種の顔料(B)と
を含む水性コーティング組成物であって、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするための、水性コーティング組成物。
分散液(P)内に、ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドを、コーティング組成物の総質量に対して、0.05から5質量%の範囲の量で含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)として、少なくとも1種のポリウレタンおよび/または少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレートおよび/または少なくとも1種のポリエステルを含む、請求項11または12に記載のコーティング組成物。
ポリマー樹脂(A1)を、コーティング組成物の総質量に対して、5から40質量%の範囲の量で含み、顔料(B)を、コーティング組成物の総質量に対して、0.1から25質量%の範囲の量で含む、請求項11から13のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも1種のポリマー樹脂(P1)およびそれとは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(P2)を含む水性分散液(P)であって、
ポリマー樹脂(P1)が、ポリアミドであり、
ポリマー樹脂(P2)が、ポリエステルであり、
水性分散液(P)が、ポリマー樹脂(P2)の存在下において、ポリマー樹脂(P1)を水または水性媒体に分散させることにより得ることが可能であり、
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドが、ポリアミド1g当たりKOH<10mgの酸価を有し、
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルが、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を、少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと反応させることにより、少なくとも得ることが可能であり、
水性分散液(P)が、分散液(P)の総質量に対して、最大で25質量%の1種または複数の有機溶剤を含有する、
水性分散液(P)である。
【0015】
この種の水性分散液(P)は、特に、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするために使用できる水性コーティング組成物において、適切な成分であることを意外にも見出した。本発明の、この種の得られた水性コーティング組成物は、特に、任意にコーティングした基材に、ベースコートフィルムを塗布するための「ベースコート/クリアコート」プロセスに適切であり、ひいては、ベースコートコーティング組成物として使用できることを意外にも見出した。
【0016】
さらに、ポリマー樹脂(P2)が分散液(P)に存在することにより、ポリアミド1g当たりKOH<10mgの酸価を有し、したがって、通常は溶剤系コーティング組成物でのみ使用できるポリアミドをポリマー樹脂(P1)として、水性コーティング組成物中に組み込むことが可能になることを意外にも見出した。特に、本発明によるポリマー樹脂(P1)および(P2)の分散液(P)、または(P2)により水性組成物に移動したポリアミド(P1)は、水性コーティング組成物において、適切なレオロジー補助剤であることを意外にも見出した。特に、この点において、本発明に従ってポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を、少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと反応させることにより、少なくとも得ることが可能であることが、本発明には不可欠であることを意外にもさらに見出した。
【0017】
さらに、分散液(P)中の1種または複数の有機溶剤の最大の割合が、分散液(P)の総質量に対して最大で25質量%であることが本発明に不可欠であることを意外にも見出したが、これは、より多い割合の有機溶剤を有するが、ポリアミド1g当たりKOH<10mgの酸価を有するポリアミドの水性相への(簡潔な)移行も可能にする対応する比較の水性分散液は、しばらくすると分離または相分離が生じるので、不十分な保存安定性しか呈さないためである。
【0018】
さらに、分散液(P)を含む水性コーティング組成物が、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするために使用される場合、特にポリマー樹脂(P1)および(P2)が本発明の分散液(P)に存在するおかげで、または、(P2)によって本発明の水性分散液(P)に移行したポリマー樹脂(P1)が存在するおかげで、ぶつ、ピンホールおよびはじきの発生を和らげる、または防ぐことができることを意外にも見出した。この場合、さらに、それぞれのコーティング組成物の金属効果が有害な影響を与えず、本発明のコーティング組成物は、特に、仕上げの曇り度の評価に関係する良好な性質に関して顕著であることを意外にも見出した。さらに、本発明のコーティング組成物は、2週間にわたり比較的高温でも、例えば、40℃以上でも、良好な保存安定性に関して顕著であることを意外にも見出した。これらの前述の性質の少なくとも1つに関して、10以上の酸価を有するポリアミド、または金属シリケート、例えば市販の製品Laponite(登録商標)が使用される、従来技術から公知の慣用のコーティング組成物は、レオロジー補助剤として使用され、欠点を呈する。ポリマー樹脂(P1)を直接、別々に((P1)およびポリマー樹脂(P2)から分散液(P)の事前製造なしで)水性コーティング組成物に組み込むことは不可能であり、対応するコーティング組成物の一部において、ぶつの形成および/または十分な保存安定性の不足を伴う。
【0019】
「はじき」、「たるみ」、「ピンホール」、「フロップ」および「ぶつ」という用語は、当業者に公知であり、例えば、Roempp Lexikon、Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag 1998で定義されている。
【0020】
水性分散液(P)
本発明の水性分散液(P)に存在する水、(P1)および(P2)成分、およびまた、存在し得る以下に記載されている成分(C)のいずれか、およびまた、存在する有機溶剤のいずれかの質量%単位の割合は、水性分散液(P)の総質量に対して、好ましくは合計100質量%になる。
【0021】
本発明の意味において「を含む(comprising)」という用語は、本発明の水性分散液(P)に関連して、好ましい一実施形態では、「からなる(consisting of)」という定義を有する。本発明の水性分散液(P)のこの好ましい実施形態において、水性分散液(P)に任意に存在する1種または複数のさらなる成分が、水性分散液中に存在してもよく、これらの成分は以下に定義されている通りであり、例えば、水、(P1)および(P2)成分以外に、任意に(C)および/または有機溶剤(複数可)が存在してもよい。この場合、すべての成分はそれぞれ、それらの好ましい実施形態において、上および下で規定されているように、本発明の水性分散液(P)に存在してもよい。
【0022】
本発明の水性分散液(P)は、分散液(P)の総質量に対して、最大で25質量%の1種または複数の有機溶剤を含有する。当業者は、「有機溶剤」という用語に精通している。この用語は、例えば、1999年3月11日(2章、セクション18)のCouncil Directive 1999/13/EC(ここでは、「溶剤」と呼ばれる)で定義されている。有機溶剤の例は、(ヘテロ)環状、(ヘテロ)脂肪族または(ヘテロ)芳香族炭化水素、単または多官能アルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびアミド、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコールおよびブチルグリコール、ならびにそれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロンまたはそれらの混合物である。
【0023】
本発明の水性分散液(P)は、いずれの場合にも、分散液(P)の総質量に対して、好ましくは最大で24.5質量%、より好ましくは最大で24質量%、きわめて好ましくは最大で23.5質量%、より詳細には最大で23質量%、最も好ましくは最大で20質量%の1種または複数の有機溶剤を含有する。
【0024】
本発明の水性分散液(P)は、水を液体希釈剤として含む。本発明の水性分散液(P)に関連する「水性」という用語は、好ましくは、液体希釈剤のように、すなわち、液体溶剤および/または分散媒のように、水を主要な成分として含む液体である水性分散液(P)を指す。しかし、本発明の水性分散液(P)は、水性分散液(P)の総質量に対して最大で25質量%までの小さい割合で有機溶剤を任意に含み得る。
【0025】
本発明の水性分散液(P)は、ポリマー樹脂(P2)、また、任意に、さらなる成分(C)および/または有機溶剤(複数可)の存在下において、ポリマー樹脂(P1)を水または水性媒体に工程(1)において分散させて、水性分散液(P)を得ることにより、好ましくは得ることが可能である。
【0026】
工程(1)の分散は、好ましくは15から30℃の範囲の温度で、10から60分間かけて、好ましくは10から30分間かけて行われる。分散は、商用の装置、より詳細には溶解機、例えば、VWA−Getzmann、GermanyのDispermat(登録商標)LC30という装置によって行うことができる。そのような装置は、典型的には、撹拌容器に配置された撹拌ディスク(歯付きディスク)を有する。撹拌ディスクの直径対撹拌容器の直径の相対的な寸法比は、好ましくは1:1.1から1:2.5の範囲である。撹拌ディスクの周速は、工程(1)を実践する場合、好ましくは15から25m/s、より好ましくは15から20m/sの範囲である。撹拌容器充填レベルは、撹拌容器の全高に対して、好ましくは60%から90%の範囲である。撹拌ディスクの直径は、好ましくは、撹拌ディスクと撹拌容器の底面との間の距離を超える。工程(1)の分散を行い、好ましくは、その結果、トロイダル流パターンが生成される、すなわち、ドーナツ効果が観察される。この用語は当業者によく知られている。
【0027】
水性分散液(P)は、(P1)、(P2)および水だけではなく、任意に、上に記載した有機溶剤と共に、少なくとも1種のさらなる成分(C)を使用して製造してもよい。
【0028】
成分(C)は、適切にはおよび好ましくは乳化剤であり、好ましくは、ポリマー樹脂(P2)とは異なる乳化剤である。任意の成分(C)は、ポリマー樹脂(P1)とも異なる。互いに異なる2種以上の成分(C)も使用してもよい。
【0029】
当業者に公知の慣用の乳化剤は、いずれも成分(C)として適切である。成分(C)は、好ましくは、レシチンおよびC
12〜C
24脂肪アルコールポリグリコールエーテルからなる群から選択される。使用されるポリグリコールエーテルは、C
12〜C
24脂肪アルコールで完全に、または部分的にエーテル化されていてよい。適切なレシチン、すなわち、適切なリン脂質は、例えば、市販されているLipotin(登録商標)Aである。大豆レシチンも適切である。適切なC
12〜C
24脂肪アルコールポリグリコールエーテルの例は、市販の製品Lutensol(登録商標)ON 60およびLutensol(登録商標)XP 70である。
【0030】
分散液(P)は、少なくとも1種のさらなる成分(C)を使用して製造する;ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステル対成分(C)の相対質量比は、好ましくは50:1から1.5:1の範囲、より好ましくは35:1から1.75:1の範囲、きわめて好ましくは30:1から1.5:1の範囲、とりわけ好ましくは10:1から4:1の範囲である。
【0031】
少なくとも1種のさらなる成分(C)は、本発明の水性分散液(P)に、いずれの場合にも、水性分散液(P)の総質量に対して、好ましくは0.1から10質量%、より好ましくは0.1から7.5質量%、きわめて好ましくは1.5から5質量%の量で存在する。
【0032】
少なくとも1種のさらなる成分(C)は、いずれの場合にも、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは0.05から5質量%、きわめて好ましくは0.05から3質量%の量で本発明のコーティング組成物に存在する。
【0033】
ポリマー樹脂(P2)および(P1)の互いに対する相対質量比は、いずれの場合にも、分散液(P)におけるそれらの固形分に対して、好ましくは15:1から1:1の範囲、より好ましくは12.5:1から1.1:1の範囲、きわめて好ましくは10:1から1.5:1の範囲、さらにより好ましくは8:1から1.5:1の範囲、より詳細には7:1から1.5:1の範囲、最も好ましくは6.5:1から1.5:1の範囲である。
【0034】
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、分散液(P)におけるその固形分に対して、いずれの場合にも、分散液(P)の総質量に対して、0.1から15質量%、より好ましくは0.2から12.5質量%、きわめて好ましくは0.5から10質量%、さらにより好ましくは0.75から9質量%、最も好ましくは1から8質量%、または、1から7質量%の範囲の量で、好ましくは存在する。
【0035】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、分散液(P)におけるその固形分に対して、いずれの場合にも、分散液(P)の総質量に対して、2.5から25質量%、より好ましくは3.5から22.5質量%、きわめて好ましくは4.5から20質量%、さらにより好ましくは5から19質量%、最も好ましくは、6から18質量%の範囲の量で、好ましくは存在する。
【0036】
ポリマー樹脂(P1)
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、ポリアミド1g当たりKOH<10mgの酸価を有する。ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、ポリアミド1g当たりKOH<9mg、より好ましくはポリアミド1g当たりKOH<8mg、きわめて好ましくはポリアミド1g当たりKOH≦7mgの酸価を、好ましくは有する。ポリマー樹脂(P1)は、ポリアミド1g当たりKOH 0から10.0mg未満の範囲、より好ましくはポリアミド1g当たりKOH 0.1から10.0mg未満の範囲、きわめて好ましくはポリアミド1g当たりKOH 0.1から9.0mg未満の範囲、最も好ましくはポリアミド1g当たりKOH 0.1から8.0mgの範囲の酸価を、好ましくは有する。さらなる好ましい実施形態において、ポリマー樹脂(P1)は、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から10mg未満の範囲、より好ましくは、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から9mgまたは0.5から9mgの範囲、きわめて好ましくは、ポリアミド1g当たりKOH0.1から8mgまたは0.5から8mgの範囲、とりわけ好ましくは、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から7mg以下または0.5から7mg以下の範囲の酸価を有する。酸価は、本明細書で以下に記載されている方法により判定される。
【0037】
当業者に公知の慣用のポリアミドは、いずれもポリマー樹脂(P1)として使用してもよいが、但し、このポリアミドが、ポリアミド1g当たりKOH<10mgの酸価を有することが条件である。当該ポリアミドは、ポリアミドホモポリマーまたはコポリマーであってよい。2種以上の異なるポリアミドの混合物をポリマー樹脂成分(P1)として使用することも可能である。
【0038】
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、ポリアミド1g当たりKOH<9mg、より好ましくはポリアミド1g当たりKOH<8mg、きわめて好ましくはポリアミド1g当たりKOH≦7mgのアミン価を、好ましくは有する。ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から10mg未満の範囲、より好ましくは、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から9mgまたは0.5から9mgの範囲、きわめて好ましくは、ポリアミド1g当たりKOH 0.1から8mgまたは0.5から8mgの範囲、とりわけ好ましくは、ポリアミド1g当たり0.1から7mg以下または0.5から7mg以下の範囲のアミン価を、好ましくは有する。当業者は、アミン価を判定する方法を認識している。アミン価は、好ましくは、DIN16945(1989年3月付け)に対して判定される。
【0039】
ポリマー樹脂(P1)として使用されるポリアミドは、100g/molから5000g/molの範囲、より好ましくは150g/molから4000g/molの範囲、きわめて好ましくは200g/molから3000g/molの範囲、とりわけ250g/molから2000g/molの範囲、最も好ましくは400g/molから1500g/molの範囲の数平均分子量を、好ましくは有する。当業者は、数平均分子量を判定する方法を認識している。数平均分子量は、以下の方法に従って判定される。
【0040】
ポリマー樹脂(P1)として本発明に使用されるポリアミドは、少なくとも1種のポリカルボン酸(C1a)を、少なくとも1種のポリアミン(C1b)と、任意に、少なくとも1種のモノカルボン酸、より詳細には少なくとも1種のC
12〜C
24モノカルボン酸、および/または、例えば少なくとも1種のモノアミン、例えばC
2〜C
12モノアミンの存在下において反応させることにより、好ましくは得ることが可能である。
【0041】
ポリマー樹脂(P1)として本発明に使用されるポリアミドは、脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸、ポリマー、例えば脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸の二量体および三量体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のポリカルボン酸(C1a)を、少なくとも1種の脂肪族C
2〜C
12ジアミン(C1b)と反応させることにより、好ましくは得ることが可能である。
【0042】
少なくとも1種のポリカルボン酸(C1a)および少なくとも1種のポリアミン(C1b)の反応は、好ましくは溶剤中で実行し、この溶剤は、好ましくは有機溶剤である。
【0043】
ポリマー樹脂(P1)として本発明に使用されるポリアミドは、少なくとも1種のポリカルボン酸(C1a)、好ましくは、脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸、ポリマー、例えば脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸の二量体および三量体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリカルボン酸を、少なくとも1種のポリアミン(C1b)と、好ましくは少なくとも1種の脂肪族C
2〜C
12ジアミン(C1b)と反応させることにより、好ましくは得ることが可能であり、次いで得られた反応生成物を、その後、任意に、少なくとも1種の、好ましくは塩基性の、中和剤と接触させる。生じた反応生成物の酸価は、遊離カルボキシル基を、中和剤と反応させることにより調整して、KOH<10mg/gの酸価の反応生成物を得られるようにしてもよい。
【0044】
ポリマー樹脂(P1)として本発明に使用されるポリアミドは、市販されており:例は、市販の製品Thixatrol(登録商標)P220X−MF、Disparlon(登録商標)A6900−20X、Disparlon(登録商標)A650−20X、Disparlon(登録商標)A670−20M、Disparlon F−9030、Disparlon(登録商標)6900−20X、Luvotix(登録商標)AB、Luvotix(登録商標)PA 20 XA、Luvotix(登録商標)R−RF、Luvotix(登録商標)HT−SF、Luvotix(登録商標)HAT 400、Luvotix(登録商標)HT、Troythix(登録商標)250 XF、Byk−430およびByk−431を含む。
【0045】
ポリマー樹脂(P2)
当業者に公知の慣用のポリエステルは、いずれもポリマー樹脂(P2)として使用してもよいが、但し、このポリエステルが、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を、少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと反応させることにより、少なくとも得ることが可能であることが条件である。当該ポリエステルは、ポリエステルホモポリマーまたはコポリマーであってよい。2種以上の異なるポリエステルの混合物も、ポリマー樹脂成分(P2)として使用してもよい。この点に関して、「少なくとも得ることが可能な」という用語は、本発明の意味において、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、ならびに少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと同様に、ポリエステル(P2)の製造に任意に使用してもよいさらなる出発成分、例えば、少なくとも1種の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、ならびに/または例えば、脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸、芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸、脂肪族C
5〜C
12トリカルボン酸、脂環式C
6〜C
12トリカルボン酸および芳香族C
9〜C
12トリカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸および/または少なくとも1種のトリカルボン酸も意味するよう理解される。
【0046】
ポリマー樹脂(P2)は、好ましくは、ポリマー樹脂(P1)を水性相に移行させるための乳化剤として作用する。
【0047】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、好ましくは、ポリエステル1g当たりKOH 20から50mgの範囲の酸価を有する。より好ましくは、ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、ポリエステル1g当たりKOH 20から45mgの範囲、きわめて好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から40mgの範囲、とりわけ好ましくはポリエステル1g当たりKOH 30から38mgの範囲の酸価を有する。当業者は、酸価を判定する方法を認識している。酸価は、本明細書で以下に記載されている方法に従って判定される。
【0048】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、好ましくは、ポリエステル1g当たりKOH 20から300mgの範囲のOH価(ヒドロキシル価)を有する。きわめて好ましくは、ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、ポリエステル1g当たりKOH 25から250mgの範囲、きわめて好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から200mgの範囲、とりわけ好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から150mgの範囲、またはポリエステル1g当たりKOH 30から120mgの範囲のOH価を有する。当業者は、OH価を判定する方法を認識している。OH価は、本明細書で以下に記載されている方法に従って判定される。
【0049】
別の好ましい実施形態において、ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、いずれの場合にも、ポリエステル1g当たり最大でKOH 300mg、より好ましくは最大でKOH 250mg、きわめて好ましくは最大でKOH 200mg、さらにより好ましくは最大でKOH 150mg、とりわけ好ましくは最大でKOH 120mgのOH価を有する。
【0050】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、ポリエステル1g当たりKOH 20から50mgの範囲、より好ましくはポリエステル1g当たりKOH 20から45mgの範囲、きわめて好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から40mgの範囲、とりわけ好ましくはポリエステル1g当たりKOH 30から38mgの範囲の酸価、および/または、ポリエステル1g当たりKOH 20から300mgの範囲、より好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から250mgの範囲、きわめて好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から200mgの範囲、とりわけ好ましくはポリエステル1g当たりKOH 25から150mgの範囲もしくはポリエステル1g当たりKOH 30から120mgの範囲のヒドロキシル価を、好ましくは有する。
【0051】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、500g/molから100000g/molの範囲、より好ましくは700g/molから90000g/molの範囲、きわめて好ましくは1000g/molから80000g/molの範囲、とりわけ好ましくは、1000g/molから60000g/molまたは2000g/molから60000g/molまたは2000g/molから50000g/molの範囲、最も好ましくは、2000g/molから10000g/molまたは2000g/molから6000g/molの範囲の数平均分子量を、好ましくは有する。当業者は、数平均分子量を判定する方法を認識している。数平均分子量は、以下の方法により判定される。
【0052】
ポリマー樹脂(P2)として発明に使用されるポリエステルは、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を、少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと反応させることにより、少なくとも得ることが可能である。この場合、いずれの場合にも、遊離酸だけではなく、対応する適切な誘導体、例えば対応するエステルおよび/または無水物、また、対応する塩も使用することができる。
【0053】
「重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、ポリマー、より詳細には、脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸の二量体および/または三量体を指す。この用語は、当業者に公知である。
【0054】
ポリマー、より詳細には脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸の二量体および三量体を得るための製造プロセス、すなわち、重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、例えば、二量化、三量化、および/またはより高重合、とりわけ二量化および/または三量化脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を得るための製造プロセスも、例えば、DE2056211A1、US2,793,219AおよびUS2,955,121Aから、当業者に公知である。重合脂肪族C
14〜C
22モノカルボン酸は、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により、任意に1回または複数回、例えば2回、3回、4回または5回置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で置換が可能である。そのような重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を製造するために使用される出発原料は、少なくとも単不飽和脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸である。得られた重合した、例えば二量化および三量化脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、いずれの場合にも、互いに、また、より高い多価重合生成物から蒸留することにより分離でき、任意にさらなる変換反応、例えば水素化を施すこともできる。
【0055】
ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために使用される少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、好ましくは、二量化および/または三量化、より詳細には、少なくとも1種の二量化C
12〜C
24モノカルボン酸である。
【0056】
重合した、とりわけ二量化および三量化C
12〜C
24モノカルボン酸は、市販されている。商用の二量化脂肪酸の例は、CrodaのEmpol 1003、Empol 1005、Empol 1008、Empol 1012、Empol 1016、Empol 1026、Empol 1028、Empol 1061、Empol 1062、Pripol 1006、Pripol 1009、Pripol 1012、Pripol 1013、Pripol 1017、Pripol 1022、Pripol 1025およびPripol 1027という製品であり、市販の三量化脂肪酸の例は、BASFのEmpol 1043およびCrodaのPripol 1040という製品である。
【0057】
「脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、飽和または不飽和、好ましくは不飽和の、合計12〜24個、すなわち、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個の炭素原子を有する脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、好ましくは合計14〜22個、すなわち、14、15、16、17、18、19、20、21もしくは22個の炭素原子を有する脂肪族C
14〜C
22モノカルボン酸、または合計16〜20個、すなわち、16、17、18、19もしくは20個の炭素原子を有する脂肪族C
16〜C
20モノカルボン酸を指すことが理解され、これらは、いずれの場合にもちょうど1個の−C(=O)−OH基を有し、すなわち、脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、この1個の−C(=O)−OH基だけではなく、合計11〜23個、すなわち、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22もしくは23個の炭素原子を有するC
11〜C
23脂肪族ラジカル、好ましくは合計13〜21個、すなわち、13、14、15、16、17、18、19、20もしくは21個の炭素原子を有するC
13〜C
21脂肪族ラジカル、または合計15〜19個、すなわち、15、16、17、18もしくは19個の炭素原子を有するC
15〜C
19脂肪族ラジカルを有する。この場合「脂肪族」という表現は、好ましくは、非環式の飽和または不飽和、好ましくは不飽和の、分岐または非分岐脂肪族ラジカルを包含する。この場合、不飽和脂肪族ラジカルは、少なくとも1個、好ましくは、1、2、3、4または5個、より好ましくは、1、2、3または4個、きわめて好ましくは、1、2または3個の炭素二重結合を有する。脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、天然または合成脂肪酸であってよい。脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により、任意に1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカノン酸、アラキジン酸、ヘンイコサノン酸、ドコサン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸(icosenic acid)、ゲトレイノイック酸(getoleinoic acid)、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、カレンジュラ酸、プニカ酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸およびセルボン酸、また、リシノール酸からなる群から選択されることが好ましい。脂肪族C
16〜C
20モノカルボン酸は、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカノン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、リノール酸、リノレン酸、カレンジュラ酸、プニカ酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸およびチムノドン酸、また、リシノール酸からなる群から選択されることが好ましい。脂肪族C
18モノカルボン酸は、ステアリン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、カレンジュラ酸、プニカ酸およびエレオステアリン酸、また、リシノール酸からなる群から、より詳細には、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸、また、リシノール酸からなる群から、最も好ましくは、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸、またリシノール酸からなる群から選択されることが好ましい。
【0058】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、少なくとも1種の重合脂肪族、好ましくは、少なくとも1種の二量化および/または三量化脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、ならびに任意に少なくとも1種の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を、少なくとも1種のC
2〜C
20ポリオールおよび/またはC
2〜C
20ジオールと反応させることにより、少なくとも得ることが可能である。
【0059】
ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために使用される少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸から得ることが可能な構造単位は、ポリエステルの総質量に対して、好ましくは10から40mol%の範囲の量でポリエステルに存在する。より好ましくは、ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために使用される少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、二量化および/または三量化C
12〜C
24モノカルボン酸であり、そこから得ることが可能な構造単位は、ポリエステルの総質量に対して、10から80mol%、好ましくは10から60mol%、より好ましくは10から40mol%の範囲の量でポリエステルに存在する。この場合、使用される重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、ポリエステル中に完全に組み入れられないが、その代わり、少なくとも1種のポリオールおよび/またはジオールを、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸と反応させる際に、ポリエステルに存在する構造単位は、エステル結合の形成による水の排出のみで構成されることが、当業者には明らかである。より好ましくは、ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために使用される少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、二量化および/または三量化C
12〜C
24モノカルボン酸であり、そこから得ることが可能な構造単位は、いずれの場合にも、ポリエステルの総質量に対して12から38mol%の範囲、きわめて好ましくは、14から36mol%の範囲、または16から34mol%の範囲、または18から32mol%の範囲、または20から30mol%の範囲、または22から28mol%の範囲、とりわけ好ましくは、23から26mol%の範囲の量でポリエステルに存在する。
【0060】
「ポリオール」という用語は、本発明の意味において、好ましくは第一級の、ヒドロキシル基を、好ましくは少なくとも3個有する成分を指す。しかし、全体では、ポリオールは、好ましくは、ヒドロキシル基を10個以下有してもよく、すなわち、少なくとも2個の第一級ヒドロキシル基に加えて、ヒドロキシル基をさらに8個以下含有してもよい。したがって、「ポリオール」という用語は、特にトリオールを包含する。「ポリオール」は、本発明の意味において、(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)脂環式または(ヘテロ)芳香族ポリオールであってよい。ポリオールとしては、脂肪族、好ましくは飽和の、ポリオールの使用が好ましい。ポリオールは、好ましくはトリオールである。本発明に用いられるポリオールは、好ましくは、分子1個当たり2から20個、より好ましくは、2から12個の炭素原子を有する、すなわち、これらは、好ましくはC
2〜C
20ポリオール、より好ましくはC
2〜C
12ポリオールである。ポリオールは、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。
【0061】
「ジオール」という用語は、本発明の意味において、好ましくは第一級の、ヒドロキシル基を2個有する成分を好ましくは指す。「ジオール」は、本発明の意味において、(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)脂環式または(ヘテロ)芳香族ジオールであってよい。使用されるジオールは、好ましくは、脂肪族、好ましくは飽和の、ジオールである。本発明に用いられるジオールは、好ましくは、分子1個当たり2から20個、より好ましくは2から12個の炭素原子を有する、すなわち、これらは、好ましくはC
2〜C
20ジオール、より好ましくはC
2〜C
12ジオールである。ジオールは、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。
【0062】
本発明に用いられるポリエステルを製造するためにポリマー樹脂(P2)として使用されるジオールおよび/またはポリオールは、脂肪族C
2〜C
20ポリオールおよび/または脂肪族C
2〜C
20ジオールからなる群から選択されることが特に好ましい。ポリマー樹脂(P2)として本発明に用いられるポリエステルを製造するために使用されるジオールは、きわめて好ましくは、脂肪族C
2〜C
12ジオールからなる群から選択される。
【0063】
「脂肪族C
2〜C
20ポリオール」または「脂肪族C
2〜C
20ジオール」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、飽和または不飽和、好ましくは飽和の、合計2〜20個、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子をそれぞれ有する、飽和脂肪族C
2〜C
20ポリオールまたはC
2〜C
20ジオールを指し、好ましくは合計2〜12個、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子をそれぞれ有する、脂肪族C
2〜C
12ポリオールまたは脂肪族C
2〜C
12ジオールを指し、これらは、いずれの場合にも、好ましくは末端の、−OH基を2個ちょうど有する。この場合、「脂肪族」という表現は、好ましくは、非環式飽和または不飽和、好ましくは飽和の、分岐または非分岐脂肪族ラジカルを包含する。この文脈における不飽和脂肪族ラジカルは、少なくとも1個、好ましくは、1、2、3、4または5個、より好ましくは、1、2、3または4個、きわめて好ましくは、1、2または3個の炭素二重結合を有する。脂肪族C
2〜C
20ポリオールまたはC
2〜C
20ジオールは、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により、1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。脂肪族C
2〜C
20ポリオールは、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,4−ジヒドロキシブタン(1,4−ブタンジオール)、1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン(1,6−ヘキサンジオール)、ネオペンチルグリコールおよび1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)からなる群から選択される。脂肪族C
2〜C
20ジオールは、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,4−ジヒドロキシブタン(1,4−ブタンジオール)、1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン(1,6−ヘキサンジオール)およびネオペンチルグリコールからなる群から選択される。
【0064】
ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルを製造するために、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、および少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオール以外に、任意に、少なくとも1種の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、好ましくは少なくとも1種の脂肪族C
16〜C
20モノカルボン酸をさらに使用することが可能である。この場合、脂肪族重合C
12〜C
24モノカルボン酸の製造にも適している同一の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を使用することが可能である。少なくとも単不飽和であり、かつ/または脂肪族ラジカルが少なくとも1個のOH基により置換されている、少なくとも1種のそのような脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸、好ましくは少なくとも1種のそのような脂肪族C
16〜C
20モノカルボン酸が、とりわけこの目的に適している。そのような脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸の一例は、リシノール酸である。ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために使用される少なくとも1種の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸は、任意に使用され、そこから得ることが可能な構造単位は、いずれの場合にも、ポリエステルの総質量に対して、0から20mol%の範囲、きわめて好ましくは0から10mol%の範囲の量でポリエステルに存在する。
【0065】
ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために、任意に、少なくとも1種のさらなる成分を使用することが可能である。ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために、例えば、脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸、芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸、脂肪族C
5〜C
12トリカルボン酸、脂環式C
6〜C
12トリカルボン酸および芳香族C
9〜C
12トリカルボン酸からなる群から選択され、より好ましくは、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸および芳香族C
9〜C
12トリカルボン酸および芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸および/もしくは少なくとも1種のトリカルボン酸、または用いることが可能な適切なそれらの誘導体、例えば、対応する無水物および/もしくはエステルをさらに使用することが好ましい。ポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルは、好ましくは、ポリエステルにおけるすべての構造単位の100mol%の総割合に対して、3から40mol%、より好ましくは5から30mol%を構成し、構造単位は、ポリエステルを製造するための少なくとも1種のジカルボン酸および/または少なくとも1種のトリカルボン酸の使用に起因する。
【0066】
好ましくは、ポリマー樹脂(P2)として用いられるポリエステルを製造するために、脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸、芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸、脂肪族C
5〜C
12トリカルボン酸、脂環式C
6〜C
12トリカルボン酸および芳香族C
9〜C
12トリカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸および/または少なくとも1種のトリカルボン酸、ならびに任意に、さらに少なくとも1種の脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸がさらに使用される。
【0067】
「脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、飽和または不飽和、好ましくは飽和の、合計3から12個、すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を有する脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸を指し、これらは、いずれの場合にもちょうど2個の−C(=O)−OH基を有し、すなわち、例えば、脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸は、これらの2個の−C(=O)−OH基だけではなく、合計1〜20個の炭素原子を有するC
1〜C
20脂肪族ラジカルを有する。この場合、「脂肪族」という表現は、好ましくは、非環式飽和または不飽和、好ましくは不飽和の、分岐または非分岐脂肪族ラジカルを包含する。C
3〜C
22ジカルボン酸内の不飽和結合は、C
4〜C
22ジカルボン酸に対してのみ可能であることは、当業者には明らかである。この場合、不飽和脂肪族ラジカルは、少なくとも1個、好ましくは、1、2、3、4または5個、好ましくは、1、2、3または4個、きわめて好ましくは、1、2または3個の炭素二重結合を有する。脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸は、天然または合成ジカルボン酸であってよい。脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸は、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により、1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。脂肪族C
3〜C
22ジカルボン酸は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸およびヘキサデカンジカルボン酸からなる群から選択されることが好ましい。
【0068】
脂肪族C
3〜C
12ジカルボン酸とは対照的に、脂肪族C
5〜C
12トリカルボン酸は、少なくとも5個の炭素原子、および2個ではなく3個のカルボキシル基を有する。
【0069】
「脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、飽和または不飽和、好ましくは飽和の、合計5〜12個、すなわち、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を有する、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸を指し、これらは、いずれの場合にもちょうど2個の−C(=O)−OH基を有し、すなわち、例えば、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸は、これらの2個の−C(=O)−OH基だけではなく、合計3〜10個の炭素原子を有するC
3〜C
10脂環式ラジカルを有する。この場合、「脂環式」という表現は、好ましくは、環式飽和または不飽和、好ましくは不飽和の、脂環式ラジカルを包含する。脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸は、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される、少なくとも1個の置換基により、1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。ヘキサヒドロフタル酸およびヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロテレフタル酸およびヘキサヒドロテレフタル酸無水物、ならびにヘキサヒドロイソフタル酸およびヘキサヒドロイソフタル酸無水物からなる群から選択される脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸が好ましい。脂環式C
6〜C
12トリカルボン酸は、少なくとも炭素原子を6個、およびカルボキシル基を2個ではなく3個有する点で、脂環式C
5〜C
12ジカルボン酸とは異なる。
【0070】
「芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸」という用語は、本発明の意味において、好ましくは、合計8〜12個、すなわち、8、9、10、11または12個の炭素原子を有する芳香族C
8〜C
22ジカルボン酸を指し、これらはいずれの場合にもちょうど2個の−C(=O)−OH基を有し、すなわち、例えば、芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸は、これらの2個の−C(=O)−OH基に加えて、合計6〜10個の炭素原子を有するC
6〜C
10芳香族ラジカルを有する。芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸は、好ましくは、OH、O−C
1〜4脂肪族ラジカル、=O、NH
2、NH(C
1〜4脂肪族ラジカル)、N(C
1〜4脂肪族ラジカル)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基により、1回または複数回、例として2回、3回、4回または5回、任意に置換されていてよく、置換は同一または異なる炭素原子上で可能である。芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、オルト−フタル酸および/もしくはトリメリット酸、ならびに/またはそれらの無水物および/もしくはエステルからなる群から選択される。芳香族C
9〜C
12トリカルボン酸は、少なくとも炭素原子9個およびカルボキシル基を2個ではなく3個有する点で、芳香族C
8〜C
12ジカルボン酸とは異なる。
【0071】
当業者には、例えば、DE4009858A1から、ポリマー樹脂(P2)として使用できる適切なポリエステル、およびその製造は公知である。
【0072】
水性分散液のレオロジー補助剤としての使用
本発明のさらなる主題は、本発明の分散液(P)を、レオロジー補助剤として水性コーティング組成物に使用する方法である。「レオロジー補助剤」は、本発明の意味において、好ましくは、チキソトロープ剤、増粘剤および流れ調整剤、ならびにそれらの混合物、より好ましくは増粘剤からなる群から選択されるレオロジー補助剤である。
【0073】
本発明の水性分散液(P)に関連する上記の好ましい実施形態もすべて、本発明のこの水性分散液(P)を、レオロジー補助剤として水性コーティング組成物に使用する方法に関する、好ましい実施形態である。
【0074】
コーティング組成物
本発明の水性分散液(P)は、特に、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするために用いられ得る、水性コーティング組成物における成分として適切である。
【0075】
したがって、本発明のさらなる主題は、
少なくとも1種のポリマー樹脂(P1)およびそれとは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(P2)を含む、本発明の水性分散液(P)と、
ポリマー樹脂(P1)および(P2)とは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)ならびに任意に少なくとも1種の架橋剤(A2)を含む、少なくとも1種の結合剤(A)と、
少なくとも1種の顔料(B)と
を含む水性コーティング組成物であって、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするための、水性組成物である。
【0076】
したがって、本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは水性ベースコート組成物、すなわち、水性ベースコートフィルムを生成するのに適しているコーティング組成物である。「ベースコート」という用語は、当業者に公知であり、例えば、Roempp Lexikon、Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag 1998で定義されている。
【0077】
本発明のコーティング組成物に存在する(P1)、(P2)、(A1)、(B)および水の成分、また、存在する場合は成分(C)および/または(D)および/または(E)、また、存在する任意の有機溶剤および/または成分(A2)の質量%単位の割合は、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは合計100質量%になる。
【0078】
本発明のコーティング組成物に関連する「を含む」という用語は、本発明の意味において、好ましい一実施形態では、「からなる」という意味を有する。本発明のコーティング組成物に関し、この文脈において、この好ましい実施形態で、下で明記され、および本発明に従って使用されるコーティング組成物に、任意に存在する1種または複数のさらなる成分、例えば、水、(P1)、(P2)、(A1)および(B)成分に加えて、任意に(A2)および/または(C)および/または(D)および/または(E)および/または有機溶剤(複数可)がコーティング組成物に存在してもよい。この場合、すべての成分は、いずれの場合にも、それらの上述および後述の好ましい実施形態において本発明のコーティング組成物に存在してもよい。
【0079】
本発明の水性コーティング組成物は、水を液体希釈剤として含む。
【0080】
本発明のコーティング組成物に関連する「水性」という用語は、好ましくは、その液体希釈剤、すなわち、液体溶剤および/または分散媒として、水を主要な成分として含む液体コーティング組成物を指す。しかし、本発明のコーティング組成物は、任意に有機溶剤を前記比率で含み得る。そのような有機溶剤の例は、(ヘテロ)環状、(ヘテロ)脂肪族または(ヘテロ)芳香族炭化水素、単または多官能アルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびアミド、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコールおよびブチルグリコール、また、それらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロンまたはそれらの混合物を含む。
【0081】
これらの有機溶剤の割合は、好ましくは、いずれの場合にも、本発明のコーティング組成物に存在する液体希釈剤、すなわち、液体溶剤、および/または分散媒の総割合に対して、最大で40.0質量%、より好ましくは最大で35.0質量%、きわめて好ましくは最大で30.0質量%、より詳細には、最大で25.0質量%、または最大で20.0質量%、または最大で15.0質量%、さらにより好ましくは最大で10.0質量%である。本発明のコーティング組成物における有機溶剤の割合は、より詳細には、本発明のコーティング組成物に存在する液体希釈剤、すなわち、液体溶剤および/または分散液媒体の総割合に対して、最大で10.0質量%から40.0質量%の範囲である。
【0082】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に対して、10から50質量%の範囲、より好ましくは10から45質量%の範囲、きわめて好ましくは10から40質量%の範囲の不揮発性画分を有する。
【0083】
結合剤(A)
本発明の水性コーティング組成物に使用される結合剤(A)は、好ましくは、水に分散性または可溶性の結合剤である。
【0084】
「結合剤」という用語は、本発明の意味において、DIN EN ISO4618(ドイツ語版、2007年3月付け)に従って、好ましくは、フィルム形成に関与するコーティング組成物の不揮発性画分であって、顔料(B)およびそこに存在する任意のフィラーを除くもの、より詳細には、フィルム形成に関与するポリマー樹脂を指す。不揮発性画分は、以下に記載されている方法に従って判定してもよい。
【0085】
適切なポリマー樹脂(A1)は、当業者に公知のすべての慣用のポリマー樹脂(A1)、例えば、自己架橋型および非自己架橋型ポリマー樹脂(A1)である。非自己架橋型ポリマー樹脂(A1)が使用される場合、本発明に従って使用される結合剤(A)は、架橋剤(A2)をさらに含み得る。任意に存在する架橋剤(A2)を含む適切なポリマー樹脂(A1)は、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、DE4437535A1、WO92/15405A1およびWO2005/021168A1、より詳細にはEP0228003A1、DE19948004A1、DE4009858A1およびDE4437535A1から公知である。
【0086】
結合剤(A)は、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を任意に有する、少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)を含む。
【0087】
ポリマー樹脂(A1)は、好ましくは、ポリマー樹脂(P1)および(P2)とは異なる。
【0088】
本発明に従って使用される結合剤(A)中のポリマー樹脂(A1)は、好ましくは、架橋性反応性官能基を有する。当業者に公知の、慣用の架橋性反応性官能基は、いずれもこの文脈において適切である。結合剤(A)における少なくとも1種のポリマー樹脂は、好ましくは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルバメート基、少なくとも1個のC=C二重結合を有する基、例えばビニル基または(メタ)アクリレート基、およびエポキシド基からなる群から選択される、少なくとも1つの官能性反応基を有する。結合剤(A)におけるポリマー樹脂(A1)は、好ましくは、官能性ヒドロキシル基を有する。
【0089】
本発明の目的のために、「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」という表現は、いずれの場合にも、それぞれ「メタクリルの」および/または「アクリルの」ならびに「メタクリレート」および/または「アクリレート」の定義を包含する。
【0090】
結合剤(A)中のポリマー樹脂(A1)が、架橋性官能基、例えばヒドロキシル基を有する場合、いずれの場合にも、結合剤(A)中のポリマー樹脂(A1)の固形分の総質量に対して、架橋性官能基、例えばヒドロキシル基の割合は、好ましくは、0.1質量%から7.0質量%、より好ましくは0.25から6.5質量%、きわめて好ましくは0.50から6.0質量%、より詳細には0.75から5.5質量%である。
【0091】
ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、発熱または吸熱硬化性または架橋性である。ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、より詳細には、熱硬化性または架橋性である。ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、好ましくは、−20℃から250℃までの温度範囲で硬化性または架橋性である。ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、好ましくは、室温でまたは15℃から80℃の範囲の温度で、架橋性である。本発明の目的のための室温は、好ましくは、18℃から23℃の範囲の温度を意味する。あるいは、ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、高温、例として80℃以上、より好ましくは110℃以上、きわめて好ましくは140℃以上または150℃以上の温度でのみ架橋性である。ポリマー樹脂(A1)および任意に存在する架橋剤(A2)は、50から150℃、より好ましくは70から150℃、きわめて好ましくは80から150℃で架橋性であると特に有利である。
【0092】
結合剤(A)は、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ビニルエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂、また、それらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)を含み、好ましくは、ポリマー樹脂の70から100質量%が、前述のポリマーの少なくとも1種から選択される。明記したポリマーのうち、好ましくは、いずれの場合にも、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が言及される。これらの樹脂、またその製造も当業者に公知である。適切なポリエステルは、例えばDE4009858A1から公知である。適切なポリウレタンは、例えばDE19948004A1およびEP0228003A1から公知である。「ポリウレタン」という用語は、好ましくは、特に、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、すなわち、ポリウレタンで改質したポリ(メタ)アクリレートを含む。そのようなポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えばDE4437535A1から当業者に公知である。
【0093】
結合剤(A)は、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステルおよびポリ(メタ)アクリレートからなる群から、より詳細には、ポリウレタンおよびポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)を含み、好ましくは、結合剤中のポリマー樹脂の70から100質量%は、前述のポリマーの少なくとも1種から選択される。
【0094】
2種以上の異なるポリマー樹脂(A1)、例として、各例において、互いに異なる2種または3種のポリマー樹脂(A1)が、結合剤(A)に存在することも可能である。
【0095】
特に好ましい一実施形態において、結合剤(A)は、ポリマー樹脂(A1)として、少なくとも1種のポリウレタンを含み、好ましくはポリマー樹脂の70から100質量%が、そのようなポリウレタンを構成し、および/または、ポリマー樹脂(A1)として、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレートを含み、好ましくは、ポリマー樹脂の70から100質量%が、そのようなポリ(メタ)アクリレートから選択され、および/または、ポリマー樹脂(A1)として、少なくとも1種のポリエステルを含み、好ましくはポリマー樹脂の70から100質量%が、そのようなポリエステルから選択される。
【0096】
結合剤(A)は、イソシアネート基および/またはオリゴマー化または重合化イソシアネート基、きわめて好ましくは、少なくとも1種の対応するポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリ(メタ)アクリレートが加えられた、硬化性または架橋性ポリマー樹脂(A1)を含み得る。
【0097】
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリウレタンをポリマー樹脂(A1)として含む場合、ヒドロキシルを含有する化合物、例えば、ジオールを含むポリオール(例えば、ヒドロキシルを含有するポリエステルまたはヒドロキシルを含有するポリエーテルのヒドロキシル基、また、それらの混合物およびコポリマー)ならびに、少なくとも1種のイソシアネートまたはポリイソシアネート(芳香族および脂肪族イソシアネート、ジ−、トリ−および/またはポリイソシアネートを含む)の間での、重付加反応により製造されるポリウレタン系樹脂は、際立った適合性を所有する。これは、通常は、ポリイソシアネートのイソシアネート基を用いた、ポリオールのOH基の化学量論的変換を必要とする。しかし、ポリイソシアネートは、「過架橋」または「架橋不足」が生じ得る量でポリオール成分に加えられるので、使用される化学量論比も変動し得る。イソシアネート基とOH基との反応以外に、発生し得るさらなる架橋反応は、例えば、イソシアネートの二量化および三量化である(ウレトジオンまたはイソシアヌレートを形成する)。適切なポリイソシアネートおよびイソシアネートは、用いることができ、架橋剤(A2)として明記されているすべてのポリイソシアネートおよびイソシアネートをそれぞれ含む。
【0098】
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリウレタンをポリマー樹脂(A1)として含む場合、好ましくは、ポリエステルポリオールを、プレポリマーポリオール成分として使用して適切に製造される。適切なポリエステルポリオールは、特に、少なくとも1種のポリオール、例えば少なくとも1種のジオール、例としてエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールおよび/もしくは1,6−ヘキサンジオール、または、例えば少なくとも1種のトリオール、例えば1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)に由来する化合物、少なくとも1種のジカルボン酸、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルト−フタル酸および/もしくはジメチロールプロピオン酸に由来する化合物、ならびに/あるいは少なくとも1種のジカルボン酸誘導体、例えばジカルボン酸エステルおよび/もしくはジカルボン酸無水物、例えばフタル酸無水物に由来する化合物を含む。プレポリマーポリオール成分として使用される、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のジオールおよび/またはトリオール、ならびにアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルト−フタル酸、ジメチロールプロピオン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸(もしくは少なくとも1種のそれらのジカルボン酸誘導体)に由来する、この種のポリエステルポリオールがとりわけ好ましい。結合剤(A)により包含されるポリウレタン樹脂を製造するために、少なくとも1種のそのようなポリエステルポリオールを、少なくとも1種の架橋剤(A2)と、より詳細には少なくとも1種のポリイソシアネート、例えばHDIまたはIPDIと使用することが好ましい。
【0099】
水中における、この種のポリウレタン樹脂および/またはポリ尿素樹脂の溶解または分散を可能にするためには、分散を安定させるために、イオン性および/または親水性セグメントを、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素鎖に組み込むのが通常である。ポリウレタンの場合に使用される軟質セグメントは、好ましくは、すべてのジオールの量に対して、比較的高分子量のジオール、好ましくは、500から5000g/mol、好ましくは1000から3000g/molの数平均分子量M
nを有するポリエステルジオールの、20から100mol%である。数平均分子量は、本明細書で以下に記載されている方法により判定される。
【0100】
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリエステルをポリマー樹脂(A1)として含む場合、ポリエステル成分として用いられるポリエステルポリオールは、ポリウレタン樹脂の製造に関連すると明記されているものであってよい。
【0101】
結合剤(A)は、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー樹脂をポリマー樹脂(A1)として含み、特にエステル、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸のC
1〜6アルキルエステルのモノマー混合物またはオリゴマー混合物と適切に製造される。ポリマー合成は、これらのモノマーのC−C二重結合を反応させることにより達成される。そのようなポリ(メタ)アクリレート系樹脂の製造は、例えば、有機過酸化物の分解によって開始するラジカル重合によって達成できる。
【0102】
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー樹脂を、ポリマー樹脂(A1)として含む場合、とりわけ適切なポリ(メタ)アクリレート系ポリマー樹脂は、水中におけるオレフィン系不飽和モノマーの多段階ラジカルエマルション重合により製造できるものである。
【0103】
i.乳化剤および水溶性開始剤を使用した、水中におけるエマルション重合による、オレフィン系不飽和モノマーAの混合物の重合、
ii.iで得られたポリマーの存在下において、乳化剤および水溶性開始剤を使用した、水中におけるエマルション重合によるオレフィン系不飽和モノマーBの混合物の重合、水中におけるオレフィン系不飽和モノマーBのこの混合物は、好ましくは、少なくとも1種のポリオレフィン系不飽和モノマーを含む、
iii.iiで得られたポリマーの存在下において、乳化剤および水溶性開始剤を使用した、水中におけるエマルション重合によるオレフィン系不飽和モノマーC混合物の重合
により製造できるポリ(メタ)アクリレート系ポリマー樹脂が、特に好ましい。
【0104】
適切なオレフィン系不飽和モノマーは、モノまたはポリオレフィン系不飽和であってよい。適切なモノオレフィン系不飽和モノマーの例は、詳細には、(メタ)アクリレート系モノオレフィン系不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸およびエステル、(メタ)アクリル酸のニトリルまたはアミドである。適切なポリオレフィン系不飽和モノマーの例は、オレフィン系不飽和ラジカルを有する(メタ)アクリル酸のエステルである。このラジカルは、アリルラジカルまたは(メタ)アクリロイルラジカルであってよい。好ましいポリオレフィン系不飽和モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン1,2−グリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン2,2−グリコールジ(メタ)アクリレート、ブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートである。モノマー混合物Aは、好ましくは、非置換アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の単不飽和エステル、およびさらに任意に、ビニル基上に芳香族ラジカルを有する、少なくとも1種のビニル性単不飽和モノマーを含む。モノマー混合物Bは、好ましくは、少なくとも1種のポリオレフィン系不飽和モノマー、非置換アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の単不飽和エステル、および任意に、ビニル基上に芳香族ラジカルを有する、少なくとも1個のビニル性単不飽和モノマーを含む。モノマー混合物Cは、好ましくは、少なくとも1種のα−β不飽和カルボン酸、1種または複数のヒドロキシル基により置換されているアルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の単不飽和エステル、非置換アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の単不飽和エステル、および任意に、ビニル基上に芳香族ラジカルを有する、少なくとも1種のビニル性単不飽和モノマーを含む。
【0105】
結合剤(A)が、少なくとも1種のポリマー樹脂(A1)に加えて、少なくとも1種の架橋剤(A2)をさらに含む場合、当業者に公知のすべての慣用の架橋剤、例えば、アミノプラスト樹脂、フェノプラスト樹脂、多官能性マンニッヒ塩基、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、β−ヒドロキシアルキルアミド、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、エポキシド、遊離ポリイソシアネートおよび/またはブロックポリイソシアネート、とりわけブロックポリイソシアネート、また、エステル交換反応が可能な基を平均で少なくとも2個有する化合物、例として、マロン酸ジエステルおよびポリイソシアネート、またはマロン酸の多価アルコールエステルおよび部分エステルとモノイソシアネートの反応生成物が、そのような薬剤の適合性を所有している。特に好ましい架橋剤は、ブロックポリイソシアネートである。ブロックポリイソシアネートが架橋剤として選択される場合、本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、一成分組成物(1−K)として製剤される。非ブロックポリイソシアネートが架橋剤として選択される場合、本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、二成分組成物(2−K)として製剤される。
【0106】
水に分散性または可溶性のメラミン樹脂、好ましくはメラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物、より詳細にはエーテル化メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物は、用いることができ、架橋剤(A2)として特に好ましい。これらの生成物の水における溶解度または分散性は、できるだけ低くすべき縮合度だけではなく、エーテル化成分によっても決まり、アルカノールまたはエチレングリコールモノエーテル系の中の低級構成物だけが、水溶性縮合物を生成する。メタノール−エーテル化(メチル化)メラミン樹脂は、最も重要性がある。可溶化剤が、任意のさらなる添加剤として使用される場合、エタノール−、プロパノール−および/またはブタノール−エーテル化メラミン樹脂、より詳細には、対応するエーテル化メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物も、水性相に溶解または分散することができる。
【0107】
使用されるイソシアネートは、好ましくは、(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)脂環式、(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂肪族−(ヘテロ)芳香族イソシアネートである。炭素原子を2から36個、より詳細には6から15個含有するジイソシアネートが好ましい。好ましい例は、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−(2,4,4)−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,9−ジイソシアネート−5−メチルノナン、1,8−ジイソシアネート−2,4−ジメチルオクタン、1,12−ドデカンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネートトジプロピルエーテル、シクロブテン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサ1,3−および−1,4−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−ジイソシアネートメチル−2,3,5,6−テトラメチルシクロヘキサン、デカヒドロ−8−メチル(1,4−メタノナフタレン−2(または3)、5−イレンジメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−1(または2)、5(または6)イレンジメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−1(または2)、5(または6)イレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート(H6−TDI)、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、4,4’−ジイソシアネート−3,3’,5,5’−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアネート−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタメチルジシクロヘキシルメタン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−ジイソシアネートメチル−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2−メチル−1,5−ジイソシアネートペンタン(MPDI)、2−エチル−1,4−ジイソシアネートブタン、1,10−ジイソシアネートデカン、1,5−ジイソシアネートヘキサン、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,5(2,6)−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDI)、また、これらの化合物のいずれかの混合物である。高級イソシアネート官能基のポリイソシアネートも、使用してもよい。そのような三量化ヘキサメチレンジイソシアネートおよび三量化イソホロンジイソシアネートの例。さらに、ポリイソシアネートの混合物も用いてよい。本発明の架橋剤(A2)として適切な有機ポリイソシアネートは、例えば、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを含む、ポリオールに由来するプレポリマーであってもよい。いかなる所望のイソシアネートも、ブロックポリイソシアネートとして用いてよく、化合物と反応したイソシアネート基により、得られたブロックポリイソシアネートは、ヒドロキシル基およびアミノ基、例えば第一級および/または第二級アミノ基に対して、室温で、言い換えれば18から23℃の温度で特に安定であるが、高温で、例として80℃以上、より好ましくは110℃以上、きわめて好ましくは130℃以上、とりわけ好ましくは140℃以上、または90℃から300℃、または100から250℃、さらにより好ましくは125から250℃、きわめて好ましくは150から250℃で反応する。イソシアネートをブロック化するために、好ましくは、いかなる所望の適切な脂肪族、脂環式または芳香族アルキルモノアルコールも使用することが可能である。それらの例は、脂肪族アルコール、例えばメチル、エチル、クロロエチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、3,3,5−トリメチルヘキシル、デシルおよびラウリルアルコール;脂環式アルコール、例えばシクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;ならびに芳香族アルキルアルコール、例えばフェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールである。他の適切なブロック剤は、ヒドロキシルアミン、例えばエタノールアミン、オキシム、例えばメチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム、ならびにアミン、例えばジブチルアミンおよびジイソプロピルアミンである。
【0108】
本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、架橋剤(A2)として、少なくとも1種の、任意にアルキル化したメラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物、好ましくは、少なくとも1種の水溶性または分散性メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物、より詳細には、少なくとも1種の水溶性または分散性のエーテル化(アルキル化)、好ましくはメチル化メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物を含む。そのような生成物は、例えば、Resimene(登録商標)HM 2608の名称で市販されている。
【0109】
架橋剤(A2)は、好ましくは、水中の分散液または溶液中の架橋剤である。架橋を促進するために、水性コーティング組成物に適切な触媒を加えることが可能である。当業者もそのような触媒を知っている。
【0110】
本発明の水性コーティング組成物は、ポリマー樹脂(A1)を、いずれの場合にも、水性コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは、5から40質量%または20から40質量%、より好ましくは、5から35質量%または20から35質量%、きわめて好ましくは、5から30質量%または20から30質量%の範囲の量で含む。
【0111】
水性コーティング組成物は、好ましくは、架橋剤(A2)を、コーティング組成物中のポリマー樹脂(A1)の総質量に対して、5から40質量%の量、好ましくは10から35質量%の量、より好ましくは15から30質量%の量で含む。これらの数量の数字は、いずれの場合にも、それぞれの固形分に対する。
【0112】
水性コーティング組成物は、好ましくは、架橋剤(A2)を、いずれの場合にも、水性コーティング組成物の総質量に対して、0.1から20質量%の量、好ましくは0.5から15質量%の量、より好ましくは1から10質量%の量で含む。
【0113】
顔料(B)
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の顔料(B)を含む。
【0114】
顔料(B)は、好ましくは、水中の分散液または溶液中の顔料(B)の形態である。
【0115】
有機および/または無機、着色および/または体質顔料、より詳細には、好ましくは、これらの性質の少なくとも2つを有する顔料が、顔料(B)として特に適切である。
【0116】
好ましい一実施形態において、顔料(B)は、効果顔料、または少なくとも1種の効果顔料、および、それとは異なる少なくとも1種の顔料の混合物であり、後者は、それ自体は効果顔料ではなく、好ましくは、有機および無機、着色および体質顔料からなる群から選択され、また、好ましくは、これらの性質の少なくとも2つを有する顔料である。
【0117】
当業者は、効果顔料の概念に精通している。対応する定義は、例えば、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998で見出される。効果顔料は、好ましくは、光学的効果、または色彩および光学的効果、より詳細には光学的効果を付与する顔料である。顔料の対応する分類は、DIN 55945(2011年12月付け)に従って行われる。
【0118】
顔料(B)は、好ましくは、任意にコーティングした有機および無機効果顔料からなる群から選択される。
【0119】
より好ましくは、顔料(B)は、任意にコーティングした金属効果顔料、任意にコーティングした金属酸化物効果顔料、任意にコーティングした、金属および非金属で構成される効果顔料、ならびに任意にコーティングした非金属効果顔料からなる群から選択される。
【0120】
きわめて好ましくは、実際に、顔料(B)は、金属効果顔料、シリケート−コーティング金属効果顔料、および任意にコーティングした非金属効果顔料、例えば真珠光沢顔料、より詳細にはマイカ顔料からなる群から選択される。特により好ましい顔料(B)は、金属効果顔料およびシリケート−コーティング金属効果顔料からなる群から選択される。
【0121】
好ましい金属効果顔料の例は、アルミニウム効果顔料、鉄効果顔料または銅効果顔料である。任意にコーティングした、例えば、シラン化、および/またはクロム化アルミニウム効果顔料、より詳細には、Eckartから市販されている製品、例えばStapa(登録商標)Hydrolac、Stapa(登録商標)Hydroxal、Stapa(登録商標)HydroluxおよびStapa(登録商標)Hydrolan、最も好ましくは、Stapa(登録商標)HydroluxおよびStapa(登録商標)Hydrolanがとりわけ好ましい。
【0122】
本発明に従って使用される効果顔料(B)は、当業者に公知の、任意の慣用の形態、例えば、小葉形態および/または小板形態、例えば、より詳細には(コーン)フレーク形態または硬貨形態であってよい。
【0123】
金属および非金属で構成される効果顔料の例は、欧州特許出願EP0562329A2に記載されているように、酸化鉄でコーティングしたアルミニウム顔料、例えば、金属、より詳細にはアルミニウムでコーティングしたガラス小葉、または金属、より詳細にはアルミニウム製の反射体層を含む干渉顔料である。
【0124】
非金属効果顔料の例は、真珠光沢顔料、より詳細にはマイカ顔料、金属酸化物でコーティングし、小板形態を有するグラファイト顔料、例えば、金属反射体層を含まず、濃色のフロップを呈する干渉顔料、酸化鉄ベースの効果顔料、または有機液晶効果顔料である。
【0125】
好ましくは本発明に従って、顔料(B)として用いられる、効果顔料に関するさらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998、176頁「Effect pigments」ならびに380および381頁「Metal oxide−mica pigments」から「Metal pigments」を参照されたい。
【0126】
効果顔料ではない顔料(B)として適切な顔料は、好ましくは、有機および無機、着色および体質顔料、好ましくは、これらの性質の少なくとも2つを有する顔料、ならびにナノ粒子からなる群から選択される。適切な無機着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛もしくはリトポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラックもしくはスピネルブラック;有彩顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物緑、コバルト緑もしくはウルトラマリン緑、コバルト青、ウルトラマリン青もしくはマンガン青、ウルトラマリン紫もしくはコバルト紫およびマンガン紫、赤色酸化鉄、硫セレン化カドミウム、モリブデン赤もしくはウルトラマリン赤;褐色酸化鉄、ミックスブラウン、スピネル相およびコランダム相もしくはクロムオレンジ;または黄色酸化鉄、ニッケルチタン黄、クロムチタン黄、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロム黄もしくはバナジン酸ビスマスである。適切な有機着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンゾイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダンスロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。適切な体質顔料またはフィラーの例は、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリケート、例えば滑石もしくはカオリン、シリカ、酸化物、例えば水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム、または有機フィラー、例えば紡績繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維もしくはポリマー粉末である;さらなる詳細に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998、250頁以下、「Fillers」を参照されたい。ナノ粒子は、好ましくは、主族および遷移族金属、ならびにそれらの化合物からなる群から選択される。主族および遷移族金属は、好ましくは、主族からの金属3から5種、遷移族からの金属3から6種、また、元素周期表の1および2種から、また、ランタニドから選択される。ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、アンチモン、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびセリウム、より詳細にはアルミニウム、ケイ素、銀、セリウム、チタンおよびジルコニウムの使用が、特に好ましい。金属の化合物は、好ましくは、酸化物、水和酸化物、硫酸塩またはリン酸塩である。銀、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよびそれらの混合物、より好ましくは、銀、酸化セリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム水和物およびそれらの混合物、きわめて好ましくは、酸化アルミニウム水和物、より詳細にはベーマイトを使用することが好ましい。これらのナノ粒子は、好ましくは、平均一次粒径50nm未満、より好ましくは、5から50nm、とりわけ10から30nmを有する。この場合、一次粒径は、好ましくは、レーザ回折によって、より好ましくは、ISO 13320−1(2009年9月付け)によるレーザ粒度分析によって判定される。
【0127】
本発明のコーティング組成物中の、本発明に用いられる顔料(B)の量は、当該顔料コーティング組成物の用途に応じて、きわめて幅広く変化し得る。顔料(B)の量は、本発明のコーティング組成物に対して、好ましくは0.1から25質量%、より好ましくは1.0から20質量%、きわめて好ましくは1.5から18質量%、とりわけ好ましくは2から15質量%、より詳細には2.0から8質量%である。
【0128】
本発明のコーティング組成物の構成成分としての分散液(P)
本発明の水性分散液(P)に関連する、本明細書で上に記載したすべての好ましい実施形態は、本発明の水性分散液(P)を含む本発明のコーティング組成物に関係する、ポリマー樹脂(P1)および(P2)に特に関連する好ましい実施形態でもある。
【0129】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、工程(1)および(2)により得ることが可能であり、これは、互いにこの順番、すなわち
(1)本発明の水性分散液(P)を製造する工程、および
(2)工程(1)により得られた水性分散液(P)を、コーティング組成物の製造に使用される他の成分と、すなわち、少なくとも成分(A1)および(B)、また、任意に(A2)、(D)、(E)、さらなる水および/または有機溶剤と混合する工程
で進められる。
【0130】
したがって、水性分散液(P)は、好ましくは、ポリマー樹脂(P2)の存在下において、ポリマー樹脂(P1)を水または水性媒体に分散させることにより、事前に製造される。したがって、製造したこの水性分散液(P)は、本発明のコーティング組成物を製造するための成分として使用される。上で認められたように、さらに、水性分散液(P)は、少なくとも1種の成分(C)を任意に含み得る。
【0131】
少なくとも1種のポリマー樹脂(P1)およびそれとは異なる少なくとも1種のポリマー樹脂(P2)は、好ましくは、本発明のコーティング組成物に、いずれの場合にも、コーティング組成物の総質量に対して、0.5から15質量%、より好ましくは0.75から10質量%、きわめて好ましくは1.0から8.5質量%、とりわけ好ましくは1.5から7.5質量%、最も好ましくは1.0から5.0質量%の範囲の量で一緒に存在する。
【0132】
本発明のコーティング組成物は、ポリマー樹脂(P1)として分散液(P)内に使用されるポリアミドを、いずれの場合にも、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは0.05から5質量%の範囲の量で、より好ましくは0.1から4.5質量%の範囲の量で、きわめて好ましくは0.15から4質量%の範囲の量で、さらにより好ましくは0.2から3.5質量%の範囲の量で、より詳細には0.25から3質量%の範囲の量で含む。本発明のベースコート組成物における質量%単位のポリアミドの量は、いずれの場合にも、ポリアミド自体、すなわちその固形分を指す。
【0133】
本発明のコーティング組成物は、分散液(P)内にポリマー樹脂(P2)として使用されるポリエステルを、いずれの場合にも、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは0.4から10質量%の範囲の量で、より好ましくは0.6から9質量%の範囲の量で、きわめて好ましくは0.8から8質量%の範囲の量で、さらにより好ましくは1から6質量%の範囲の量で、より詳細には1.5から5質量%の範囲の量で含む。本発明のベースコート組成物における質量%単位のポリエステルの量は、いずれの場合にも、ポリエステル自体、すなわち、その固形分を指す。
【0134】
本発明のコーティング組成物の任意の成分(D)
本発明のコーティング組成物は、任意に、少なくとも1種のさらなる成分(D)を含み得る。成分(D)は、適切にはおよび好ましくは、増粘剤、好ましくは、ポリマー樹脂(P1)とは異なる増粘剤である。さらに、任意の成分(D)は、ポリマー樹脂(P2)とも異なる。互いに異なる2種以上の成分(D)も使用できる。任意の成分(D)は、好ましくは、金属シリケート、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤、ポリウレタン系増粘剤、ポリマー性ワックスおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0135】
金属シリケートは、好ましくは、スメクタイトの群から選択される。特に好ましくは、スメクタイトは、モンモリロナイトおよびヘクトライトの群から選択される。モンモリロナイトおよびヘクトライトは、より詳細には、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、また、マグネシウムナトリウムおよびナトリウムマグネシウムフッ素リチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロケイ酸塩は、Laponite(登録商標)の商標名で販売されている。
【0136】
ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、適切な塩基と任意に架橋および/または中和する。そのようなポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤の例は、「アルカリ膨潤性エマルション」(ASE)、および、これらを疎水性修飾で変化させたものである、「親水性修飾アルカリ膨潤性エマルション」(HASE)である。ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤は、好ましくはアニオン性である。対応する製品、例えばRheovis(登録商標)AS 1130が市販されている。
【0137】
ポリウレタン系増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、任意に、適切な塩基と架橋および/または中和する。対応する製品、例えばRheovis(登録商標)PU 1250が市販されている。
【0138】
適切なポリマー性ワックスの例は、任意に修飾したエチレン−酢酸ビニルコポリマー系ポリマー性ワックスを含む。対応する製品は、例えばAquatix(登録商標)の名称で市販されている。
【0139】
本発明のコーティング組成物が、少なくとも1種の成分(D)を含む場合、本発明のコーティング組成物におけるポリマー樹脂(P1)対さらなる成分(D)の相対質量比は、好ましくは15:1から1:15の範囲、より好ましくは5:1から1:5の範囲、きわめて好ましくは5:1から1.5:1の範囲である。すべての数は、成分の固形分に基づく。
【0140】
成分(D)が金属シリケートである場合、本発明のコーティング組成物における、ポリマー樹脂(P1)対成分(D)の相対質量比は、好ましくは7.5:1から1.2:1の範囲、より好ましくは5:1から1.5:1の範囲である。成分(D)が、ポリ(メタ)アクリル酸系増粘剤である場合、本発明のコーティング組成物におけるポリマー樹脂(P1)対成分(D)の相対質量比は、好ましくは5:1から1.5:1の範囲、より好ましくは4:1から2:1の範囲である。成分(D)がポリウレタン系増粘剤である場合、本発明のコーティング組成物におけるポリマー樹脂(P1)対成分(D)の相対質量比は、好ましくは4:1から1.2:1の範囲、より好ましくは3:1から1.5:1の範囲である。すべての数は、成分の固形分に基づく。
【0141】
少なくとも1種の成分(D)は、いずれの場合にも、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは最大で5質量%、より好ましくは最大で2.5質量%、きわめて好ましくは最大で1.5質量%、より詳細には最大で1.0質量%、最も好ましくは最大で0.75質量%の量で、本発明のコーティング組成物に存在する。
【0142】
任意の成分(E)
本発明のコーティング組成物は、その所望の用途に応じて、1種または複数の、成分(E)として用いられる慣用の添加剤を含み得る。これらの添加剤(E)は、好ましくは、抗酸化剤、帯電防止剤、湿潤剤、分散剤、流れ調整剤、可溶化剤、消泡剤、湿潤剤、安定剤、好ましくは熱安定剤(heat stabilizer)および/または熱安定剤(thermal stabilizer)、インプロセス安定剤、およびUVおよび/または光安定剤、光保護剤、脱気剤、阻害剤、触媒、柔軟剤、難燃剤、反応性希釈剤、担体媒体、疎水化剤、親水化剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤(expandant)、加工助剤、可塑剤ならびに前述のさらなる添加剤の混合物からなる群から選択される。本発明のコーティング組成物における添加剤(E)の量は、変化してもよい。その量は、本発明のコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは0.01から20.0質量%、より好ましくは0.05から18.0質量%、きわめて好ましくは0.1から16.0質量%、とりわけ好ましくは0.1から14.0質量%、より詳細には0.1から12.0質量%、および最も好ましくは0.1から10.0質量%である。
【0143】
本発明のコーティング組成物は、上に記載されたそれぞれの成分を、水性媒体中に分散および/または溶解し、例えば、高供給撹拌機、撹拌タンク、アジテータミル、溶解機、混練装置またはインライン溶解機によって混合し、任意に、さらに水を添加することにより製造できる。
【0144】
使用する方法
本発明のさらなる主題は、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするために、本発明のコーティング組成物を使用する方法である。
【0145】
適切な基材の例は、金属またはプラスチック製のコーティングされる物品、例えば、そこから生成される自動車両、例として自動車、トラック、オートバイおよびバスのボディおよびその部品、ならびに金属またはプラスチック製の家電機器の部品を含む。
【0146】
方法、ベースコートフィルムおよび基材
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの工程(a):
(a)少なくとも1種の任意にコーティングした基材を、本発明の水性コーティング組成物によるベースコートフィルムで、少なくとも部分的にコーティングする工程
を含む、任意にコーティングした基材を、ベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングするための方法である。
【0147】
この場合、工程(a)は、基材を本発明のコーティング組成物と、少なくとも部分的に接触させることにより行われる。
【0148】
工程(a)には、任意に、さらなる工程(b)を続けてよく、これは、さらなるコーティングフィルム、好ましくはクリアコートフィルムを、工程(a)により塗布したベースコートフィルムに塗布することである。この例では、本発明の方法は、多層塗装系を生成するための方法である。
【0149】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1種の任意にコーティングした基材を、本発明の水性コーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングすることにより得ることが可能な、または、本発明の方法により得ることが可能なベースコートフィルムである。
【0150】
本発明のさらなる主題は、本発明の水性コーティング組成物、または本発明のベースコートフィルムで少なくとも部分的にコーティングした基材である。
【0151】
この場合、本発明のコーティング組成物は、直接、または、先行するプライマコーティング組成物(プライマ)を少なくとも部分的に塗布した後で、必要に応じて、さらなるコーティング組成物、例えばサーフェイサフィルムをプライマに少なくとも部分的に塗布した後で、コーティングされる物品へ塗布できる。これに、好ましくは、これらのコーティングフィルムの硬化が続く。本発明のコーティング組成物は、好ましくは、塗装系として、自動車両のボディおよびそれらの部品に塗布される。コーティングされる金属物品は、好ましくは、リン酸塩およびクロム酸塩で、好ましくはリン酸塩、例えばリン酸金属塩、より詳細にはリン酸亜鉛で、化学的処理を事前に施す。
【0152】
本発明のコーティング組成物は、静電気コーティング、エアスプレーコーティングおよびエアレススプレーコーティングにより、これらの標的基材にコーティングできる。得られたそれらのコーティングフィルムの厚さは、硬化コーティングフィルムとして、好ましくは5から35μm、より詳細には10から25μmの範囲である。コーティングフィルムは、例えば、2から40分、好ましくは5から20分、50から約100℃(オーブン温度)での加熱により乾燥させてよい。
【0153】
透明コーティング組成物は、本発明のコーティング組成物のコーティングフィルムに、硬化した後で、またはそれを硬化させずに、すなわち、それらのコーティングした面に、コーティングしてもよい。
【0154】
この種のクリアコートを塗布するための透明コーティング組成物は、本発明のコーティング組成物を、標的基材に、上に記載した手段で最初にコーティングすることにより、また、コーティング組成物中の固形分を好ましくは30から80質量%に制御した透明コーティング組成物を、前記基材のコーティングした面に、静電気コーティング、エアスプレーコーティングおよびエアレススプレーコーティングによって、それらのコーティングフィルムが加熱により硬化した後で、または未硬化状態で塗布できる。透明コーティング組成物のフィルムの厚さは、硬化したコーティングフィルムに対して、好ましくは、一般的に5から100μm、より詳細には20から80μmの範囲である。全体のコーティングフィルムは、100から180℃で10から40分加熱することにより硬化できる。
【0155】
判定の方法
1.本発明の水性分散液または比較の分散液を基材に塗布する際における、ぶつ発生率の評価
ぶつ発生率を評価するために、以下の一般的なプロトコールにより分散液を調査する:
150μm4面式バーアプリケータを使用して、それぞれの分散液を寸法9cm×15cmのガラスパネルに塗布する。このように形成したフィルムを、湿った状態で、18から23℃での、60分間のフラッシング時間後、若干の空気の包含をぶつとして誤解しないように、光源に対してこれを保持することによりぶつ発生率を視覚的に評価した。1〜5の評定は、(1=ぶつがない/5=ぶつがきわめて多い)とする。
【0156】
2.均一性および水混和性の評価
均一性および水混和性を評価するために、以下の一般的なプロトコールにより、本発明の水性分散液(または比較の分散液)を調査する:
a)均一性:分散液の製造に使用される個々の成分を組み合わせて、肉眼的に単一相の混合物(均一な混合物)を形成できるかどうか、または、例えば、検量の手順中ほど早く、もしくは、例えば、成分を一緒に撹拌してから5から10分以内に、分離の結果として、例えば、2つ以上の相が形成されるかどうかを評価する。
b)水混和性:分散液の製造に使用される最後の成分として、脱イオン水が、分散液の他の構成成分と混合できる程度を評価した。この評価基準の1つは、詳細には、混合作業に必要なせん断エネルギーの量である。
【0157】
各例において、1〜5の評定は(1=きわめて均一/5=きわめて不均一、および1=きわめて良好な水混和性/5=水と混和できない)とする。
【0158】
3.本発明の水性分散液または比較の分散液の保存安定性の評価
保存安定性を評価するために、以下の一般的なプロトコールにより、本発明の水性分散液(または比較分散液)を視覚的に調査する:
それぞれの分散液を、密閉したガラス容器に18〜23℃または40℃で、28または365日間にわたって保存する。この保存期間に続き、検査を行って、分離が起きたかどうかを判定する。1〜5の評定は(1=きわめて安定、すなわち、分離がなく2つ以上の相の形成がない/5=きわめて不安定、すなわち、重度に分離し、かつ/または2つ以上の相がきわめて顕著に形成される)とする。
【0159】
4.ピンホールの発生率の評価
ピンホールの発生率を評価するため、本発明の水性分散液(または比較のコーティング組成物)を含む発明のコーティング組成物を、水性ベースコート材料として、プライマ−サーフェイサ系でコーティングした、寸法32×60cmの鋼鉄パネルに、単回塗布により塗布する。コーティングを行ってから、判定されるフィルムの厚さに差を出すために、事前に、鋼鉄パネルの一方の長辺に2つの接着剤ストリップ(Tesaband、19mm)を施す。次いで、水性ベースコート材料は、静電的に塗布し、乾燥フィルムの厚さを16〜19μmとする。生じた水性ベースコートフィルム、室温(18から23℃)で5分間のフラッシング時間後、続いて、強制空気オーブンで、80℃で10分間乾燥させる。2つの接着剤ストリップのうち片方の除去に続いて、重力供給スプレーガンを手動で使用して、商用の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHのEvergloss(登録商標))を、ウェッジ形式で、乾燥した水性ベースコートフィルムに塗布し、乾燥フィルムの厚さを0〜55μmとする。生じたクリアコートフィルムを、室温(18から23℃)で10分間フラッシュする;これに続いて、強制空気オーブンで、140℃でさらに20分間硬化する。第2の接着剤ストリップの除去に続いて、クリアコートウェッジに関しては、水性ベースコートの乾燥フィルムの厚さを確認し、鋼鉄パネルに厚さ20〜30μm、30〜40μmおよび40〜50μmの範囲のフィルムの厚さを記録する。この場合、DIN EN ISO 2808(2007年5月付け)、方法12A(例えば、ElektroPhysikのminitest3100−4100という機器により)に従って、それぞれのフィルムの厚さを判定する。
【0160】
クリアコート乾燥コートの3つに分けた厚さの範囲(20〜30μm、30〜40μmおよび40〜50μm)で、ピンホールを視覚的に評価する。各領域におけるピンホールの数を計数する。すべての結果を、面積200cm
2に対して標準化する。さらに、適切な場合、もうピンホールが発生しないクリアコート乾燥フィルムの厚さを記録し続ける。
【0161】
5.本発明のまたは比較のコーティング組成物の保存安定性の判定
発明の(または比較のコーティング組成物の)水性分散液を含む、本発明のコーティング組成物の保存安定性は、40℃で2週間保存する前後で、管理条件下(23.0℃±0.2℃)で、DIN 53019−2(2001年2月付け)に従って、DIN 53019−1(2008年9月付け)に対応する回転粘度計を使用して、それらを調査することにより判定した。試料は、まず、1回目のせん断を100s
−1の速度で3分間施す。これに続いて、せん断荷重なしに条件付けする。流動曲線を測定するために、0.1s
−1から1000s
−1の範囲のせん断速度は、約5分間以内に移動させる(上方曲線)。その後、せん断を1000s
−1で少し維持してから(保持時間)、続いて、これを、1000s
−1から0.1s
−1の範囲のせん断速度へと、約5分間かけて再度減少させる(下方曲線)。36箇所の測定点を上方および下方曲線中に、ならびに10箇所の測定点を保持時間中に取得する。保持時間中の平均粘度レベル(高せん断粘度)、および下方曲線から判定される1s
−1での粘度レベル(低せん断粘度)を、測定データから判定し、保存前後の値を、互いに比較する。
【0162】
6.本発明のコーティング組成物または比較のコーティング組成物を基材に塗布する際における、ぶつ発生率の評価
ぶつ発生率を評価するために、発明の水性分散液(または比較のコーティング組成物)を含む発明のコーティング組成物を、水性ベースコート材料としてサーフェイサコーティングでコーティングし、寸法32×60cmの鋼鉄パネルに、最初の工程で、静電的に塗布を行って乾燥フィルムの厚さを8〜9μmとし、第2の工程で、室温(18から23℃)での2分間のフラッシング時間後に、空気圧により塗布を行って乾燥フィルムの厚さを4〜5μmとする、二重塗布によって塗布する。続いて、室温での5分間のさらなるフラッシング時間後、生じた水性ベースコートフィルムを、強制空気オーブンで80℃で5分間乾燥させる。乾燥水性ベースコートフィルムの上に塗布するのは、商用の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHのProGloss(登録商標))であり、乾燥フィルムの厚さを40〜45μmとする。生じたクリアコートフィルムを室温(18から23℃)で10分間かけてフラッシュする。これに続いて、強制空気オーブンで140℃でさらに20分間硬化する。
【0163】
ぶつを視覚的に評価し、1〜5の評定は、(1=ぶつなし/5=きわめてぶつが多い)とする。
【0164】
7.不揮発性画分の判定
不揮発性画分を、DIN EN ISO 3251(2008年6月付け)に従って判定する。この判定は、事前に乾燥させたアルミニウム皿中で1gの試料を検量し、乾燥オーブンで125℃で60分間乾燥を実行し、続いてデシケータで冷却し、次いで再度検量することにより達成される。残渣は、用いられる試料の総量に対して、不揮発性画分に相当する。不揮発性画分の体積は、必要な場合は、任意に、DIN 53219(2009年8月付け)に従って判定してもよい。
【0165】
8.数平均および質量平均分子量の判定
数平均分子量(M
n)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により判定する。判定の方法は、DIN 55672−1(2007年8月付け)に従う。数平均分子量以外に、この方法を使用して、質量平均分子量(M
w)、また、多分散性(質量平均分子量(M
w)対数平均分子量(M
n)の比)を判定できる。テトラヒドロフランが、溶離液として使用される。判定は、ポリスチレン標準に対して行われる。カラム材料は、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーからなる。
【0166】
9.ヒドロキシル価(OH価)の判定
OH価を、DIN 53240−2(2007年11月付け)に従って判定する。この方法では、OH基は、過剰な無水酢酸でのアセチル化により反応させる。続いて、水を添加することにより過剰な無水酢酸を切断して、酢酸を形成し、全体の酢酸をエタノール性KOHで逆滴定する。OH価は、KOHの量をmg単位で指し示し、これは、試料1gをアセチル化する際に結合した酢酸の量に等しい。
【0167】
10.酸価の判定
酸価を、DIN EN ISO 2114(2002年6月付け)に従って、「方法A」を使用して判定する。酸価は、DIN EN ISO 2114で規定の条件下で、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg単位の質量に相当する。
【0168】
11.曇り度の判定
コーティングの曇り度は、DIN EN ISO 4618(2007年3月付け)に従って、色および/またはつやが異なる、表面に無作為に分布した不規則な領域によって引き起こされる、コーティングのむらのある外観を指すと理解される。この種のつぎはぎ状不均一性は、コーティング全体の視覚的印象を損ない、一般的に望ましくない。コーティングの望ましくない曇り度は、例えば、用いられるコーティング組成物の性質により引き起こされ得る。
【0169】
曇り度を判定し、評価するために、以下の一般的なプロトコールにより多層塗装系を生成する:
寸法32cm×60cmの、標準的なサーフェイサコーティング(BASF Coatings GmbHのSecuBloc(登録商標))でコーティングした鋼鉄パネルに、発明のコーティング組成物または比較のコーティング組成物を、水性ベースコート材料として、二重塗布によって塗布する:最初の工程では、静電的に塗布を行って、目標のフィルムの厚さ(乾燥フィルムの厚さ)8〜9μmとし、第2の工程では、18〜23℃での2分間のフラッシング時間後、空気圧により塗布を行って、目標のフィルムの厚さ(乾燥フィルムの厚さ)4〜5μmとする。生じた水性ベースコートフィルムは、18〜23℃で5分間かけてのさらなるフラッシング時間後、続いて強制空気オーブンで80℃で5分間乾燥させる。乾燥させた水性ベースコートフィルムの上に塗布するのは、商用の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHのProGloss(登録商標))であり、目標のフィルムの厚さ(乾燥フィルムの厚さ)は40〜45μmとする。生じたクリアコートフィルムを、18〜23℃で10分間フラッシュオフする。これに続いて、強制空気オーブンで140℃で20分間硬化させる。
【0170】
曇り度を、定義された光条件および観察形状下で視覚的に評価する。この場合、曇り度は、評定スケールを使用して評価される(評定1=認知できない曇り度から格付け5=重度の曇り度が視認できる)。この目的のために、対応するコーティングを拡散光下において、2つの異なる角度(a)直線視野:視野角が約80°、(b)斜位視野:視野角が約40°)で、2から3メートルの距離で見る。
【0171】
以下の本発明の実施例および比較例は、本発明を例示する役割を果たすが、いかなる制約も課すと解釈すべきではない。
【0172】
本発明の実施例および比較例
別段の指示がない限り、各例において、部単位の量は質量部であり、パーセント単位の量は質量百分率である。
【0173】
1.使用される成分
以下で特定され、本発明の分散液およびコーティング組成物を製造するために使用され、比較の分散液または比較のコーティング組成物にも対応する成分は、以下の意味を有する:
Disparlon(登録商標)A6900−20Xは、Kusumoto Chemicals,Ltd.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%)。
Disparlon(登録商標)A650−20Xは、Kusumoto Chemicals,Ltd.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%)。
Disparlon(登録商標)A670−20Mは、Kusumoto Chemicals,Ltd.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%)。
Disparlon(登録商標)F−9030は、Kusumoto Chemicals,Ltd.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%)。
Thixatrol(登録商標)P220X−MFは、Elementis Specialties,Inc.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%、酸価:KOH 5mg/g)。
Luvotix(登録商標)PA 20 XAは、Lehmann&Voss&Co.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%、酸価:KOH≦7mg/g)。
Luvotix(登録商標)ABは、Lehmann&Voss&Co.から市販されているポリアミドである(不揮発性画分:100質量%;酸価:KOH≦3mg/g)。
Troythix(登録商標)250 XFは、Troy Corp.、USAから市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%;酸価:KOH 4〜5mg/g)。
【0174】
本発明に用いられるポリエステル(I)の水性分散液は、DE4009858A1の実施例D(16段、37〜59行)に記載されているように製造するが、ブタノールの代わりに、ブチルグリコールが希釈に使用される点が異なり、分散液は、不揮発性画分の60質量%を有する。ポリエステルは、KOH 30mg/ポリエステル1gの酸価を有する。
【0175】
ポリエステルA(本発明に用いられるポリエステル)は、撹拌機、温度計および充填カラムを備えた反応器中で、6.13質量部のネオペンチルグリコール、3.23質量部の1,6−ヘキサンジオール、7.78質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物、および29.17質量部の高分子脂肪酸(二量体の含有量が少なくとも98質量%、三量体の含有量が最大で2質量%、モノマーの含有量が最大でも微量)、また、11.07質量部の市販の製品ビスフェノールA 4EOを検量および溶融することにより製造する。これらの構成成分を、カラム塔頂の温度が95℃を超えないような手段で撹拌しながら加熱する。酸価がKOH 8.5mg/gに達するまで、220℃以下でエステル化を続ける。100℃に冷却を行った後で、3.33質量部のトリメリト酸無水物を添加し、酸価がKOH 30〜35mg/gに達するまで、160℃以下でエステル化を続ける。90℃に冷却を行った後で、2.8質量部のジメチルエタノールアミン、17.28質量部の脱イオン水および19.21質量部のブチルグリコールを撹拌しながらゆっくり合わせる。生成物は、pH7.3〜8.5を有し、不揮発性画分が60質量%、酸価がKOH 35.3mg/g、OH価がKOH 54mg/gの微細分散液である。この分散液は、そのままポリエステルAとして使用する。
【0176】
ポリエステルB(本発明に用いられるポリエステル)は、撹拌機、温度計および充填カラムを備えた反応器中で、6.87質量部のネオペンチルグリコール、7.23質量部の1,6−ヘキサンジオール、5.81質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物および32.66質量部の高分子脂肪酸(二量体の含有量が少なくとも98質量%、三量体の含有量が最大で2質量%、モノマーの含有量が最大でも微量)また、5.03質量部のドデセニルコハク酸無水物を検量および溶融することにより製造する。これらの構成成分を、カラム塔頂の温度が95℃を超えないような手段で撹拌しながら加熱する。酸価がKOH8.5mg/gに達するまで、220℃以下でエステル化を続ける。100℃に冷却を行った後で、3.31質量部のトリメリト酸無水物を添加し、酸価がKOH30〜35mg/gに達するまで、160℃以下でエステル化を続ける。90℃に冷却を行った後で、2.78質量部のジメチルエタノールアミン、17.19質量部の脱イオン水および19.12質量部のブチルグリコールを撹拌しながらゆっくり合わせる。生成物は、pH7.3〜8.5を有し、不揮発性画分が60質量%、酸価がKOH 35.5mg/g、OH価がKOH 56mg/gの微細分散液である。この分散液は、そのままポリエステルBとして使用する。
【0177】
ポリエステルC(本発明によらずに用いられるポリエステル)を、無水マレイン酸(MAn、2.48mol)、アジピン酸(AD、2.72mol)および1,6−ヘキサンジオール(HD、7.01mol)を、カラム、凝縮器および水分離器を備えたステンレス鋼製4リットル反応器に導入することにより製造する。続いて、3%のキシレンを共留剤として、および0.1%のメチルヒドロキノンを添加した(百分率の数字は、使用されるMAn、ADおよびHDの量に対するものである)。生じた反応混合物を、希薄空気下で5時間かけて加熱した。反応時間全体で、反応混合物の温度は、230℃を超えない。オリゴエステルに対してKOH 2mg/gの酸価に達した場合、反応混合物を80℃に冷却した。これに続いて、in situでトリメリト酸無水物(TMAn、0.95mol)を添加した。その後、160℃への加熱をゆっくり行い、この温度を、生じたオリゴエステルに対してKOH 35mg/gの酸価に達するまで維持した。80℃に再度冷却を行った後で、ジメチルエタノールアミン(DMEA、0.77mol)を30分間かけて添加した。これに続いて、水を添加して、30分間かけて固形分を25質量%とした。生じた分散液を80℃でさらに1時間撹拌し、次いで、18〜23℃に冷却した。この分散液を、そのままポリエステルCとして使用する。分散液に存在するα,ω−ヒドロキシ−官能化オリゴエステルは、KOH 58mg/gのOH価、酸価KOH 35mg/g、3618g/molの数平均分子量および25400g/molの質量平均分子量を有する。
【0178】
Resimene(登録商標)HM 2608は、Ineosから市販されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である(不揮発性画分:80〜85質量%)。
【0179】
Lipotin(登録商標)Aは、Evonik Industries AGから市販されている湿潤剤および分散剤である。
【0180】
Lutensol(登録商標)ON 60およびLutensol(登録商標)XP 70は、BASF SEから市販されている非イオン性表面添加剤である。
【0181】
使用される大豆レシチンは、Hanf&Nellesから市販されている液体生成物である。
【0182】
Alu Stapa Hydrolux(登録商標)VP56450は、Altana−Eckartから入手できる、市販のアルミニウム顔料である。
【0183】
Rheovis(登録商標)AS 1130は、BASF SEから市販されている、アクリルコポリマーに対して、増粘剤を30質量%含有する水溶液である。
【0184】
Pluriol(登録商標)E300は、BASF SEから市販されているポリエチレングリコールである。
【0185】
Dispex(登録商標)Ultra FA 4437は、BASF SEから入手できる、市販の流れ調整剤である。
【0186】
Disparlon(登録商標)AQ600は、Kusumoto Chemicals,Ltdから市販されているポリアミドである(不揮発性画分:20質量%)。
【0187】
Disparlon(登録商標)AQ630は、Kusumoto Chemicals,Ltdから市販されているポリアミドである(不揮発性画分:18質量%)。
【0188】
少なくとも1種のポリマー樹脂(I)の水性分散液を、DE4437535A1の7頁、55行目から8頁、23行目に記載されているように製造する。
【0189】
少なくとも1種のポリマー樹脂(II)の水性分散液は、不揮発性画分26〜28質量%を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂の分散液である。
【0190】
2.本発明の増粘剤の水性分散液、および対応する比較の増粘剤の分散液(本発明によらない分散液)の製造
2.1 本発明によらない比較の増粘剤の分散液V1からV14の製造:
少なくとも1種の有機溶剤、また、任意に少なくとも1種の中和剤、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンジオールを最初に導入する。生じた混合物に前述の市販ポリアミドの少なくとも1種を、15〜25℃の温度で、撹拌しながら添加する。ポリエステル(I)の水性分散液および脱イオン水を、この混合物に連続して、または同時に、撹拌しながら添加する。生じた混合物を、続いて、撹拌しながら、VWA−Getzmann、GermanyのDispermat(登録商標)LC30という機器によって、使用される撹拌ディスクを15から20m/sの周辺速度で、前述の温度で10分間かけて均一化する。
【0191】
この手段で、以下の表1.1および1.2に列挙されている成分から、本発明によらない、増粘剤の分散液V1からV14を得る。いずれの場合にも、量の数字は、それぞれの分散液の総質量に対して、質量%単位である
【0194】
本発明によらない比較の分散液V1からV14は、それぞれの分散液の総質量に対して、32質量%超の含有量の有機溶剤をそれぞれ有する。V1からV9は、イソブタノール系であり、V10からV14は、ブチルグリコール系である。
【0195】
2.2 本発明によらない比較の増粘剤の分散液V15からV17の製造:
以下の表1.3に列挙されている成分を、いずれの場合にも15〜25℃の温度で撹拌しながら、明記された順番で一緒に撹拌して、混合物を得る。この混合物を、続いて、いずれの場合にも、上で明記された温度で、10分間撹拌しながら均一化する。上でセクション2.1に記載した均一化を実行する。
【0197】
本発明によらない比較の分散液V15からV17は、それぞれの分散液の総質量に対して、47質量%超の含有量の有機溶剤をそれぞれ有する。
【0198】
2.3 本発明の増粘剤の分散液X1からX7の製造:
以下の表1.4に列挙されている成分を、いずれの場合にも15〜25℃の温度で撹拌しながら、明記された順番で一緒に撹拌して、混合物を得る。この混合物を、続いて、いずれの場合にも、上で明記された温度で、10分間かけて撹拌しながら均一化する。上でセクション2.1に記載した均一化を実行する。
【0200】
2.4 本発明の増粘剤の分散液X8および本発明によらない増粘剤の分散液V18の製造:
以下の表1.5に列挙されている成分を、いずれの場合にも15〜25℃の温度で撹拌しながら、明記された順番で一緒に撹拌して、混合物を得る。この混合物を、続いて、いずれの場合にも、上で明記された温度で、10分間かけて撹拌しながら均一化する。上でセクション2.1に記載した均一化を実行する。
【0202】
2.5 本発明によらない比較の増粘剤の分散液V19およびV20の製造:
以下の表1.6に列挙されている成分を、いずれの場合にも15〜25℃の温度で撹拌しながら、明記された順番で一緒に撹拌して、混合物を得る。この混合物を、続いて、いずれの場合にも、上で明記された温度で、10分間かけて撹拌しながら均一化する。上でセクション2.1に記載した均一化を実行する。
【0204】
V19およびV20は、X1に対する比較の分散液を表すので、X1は、表1.6で参照しやすいように再度個別化する。
【0205】
3 本発明のコーティング組成物および比較のコーティング組成物の製造
3.1 本発明のコーティング組成物および比較のコーティング組成物を生成するための一般的な作業手順:
以下の表のそれぞれで「水性相」と列挙されている成分は、明記されている順に一緒に撹拌して、水性混合物M1を形成する。次の工程では、有機混合物M2を、以下の表で「有機相」と列挙されている成分から製造する。有機M2混合物を水性混合物M1に加える。次いで、合わせた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンを使用してpH8に、および23℃にて回転粘度計(Anton PaarのC−LTD80/QC調整系を備えたRheolab QC instrument)で測定して1000s
−1のせん断荷重で85±5mPa・sの噴霧粘度に調整する。
【0206】
以下の表の1つが、「混合ニス」というさらなる見出しをさらに含む場合、この見出しで列挙されている成分は、第一に、15から25℃の温度で10分間かけて混合するこの混合ニスを製造するために、明記された順序でそれぞれ撹拌し、次いで、この混合ニスを有機混合物M2に加える。混合ニスおよび有機混合物M2の生じた混合物を、15から25℃の温度で10分間かけて撹拌する場合、次いで、生じた混合物を、水性混合物M1に加えるが、そのさらなる手順は上に記載されている通りである。
【0207】
以下の表のそれぞれにおける、それぞれの量の数字は、それぞれの組成物の総質量に対して、各例における質量%を表す。
【0208】
3.2 コーティング組成物V−I(本発明によらない)およびB−X6およびB−X7(本発明による)
【0210】
3.3 コーティング組成物V−IIおよびV−III(本発明によらない)ならびにB−X1(本発明による)
【0212】
4 試験および調査
4.1 本発明の分散液および比較の分散液の試験および調査
4.1.1 本発明によらない、比較の増粘剤の分散液V1からV14は、それぞれの分散液の総質量に対して、それぞれ32質量%超の有機溶剤含有量であり、上記の方法により、ぶつ発生率、均一性およびそれらの保存安定性を調査し、評価する。
【0215】
表3.1から、V1からV14は、それぞれ、ぶつ発生が観察されない十分な均一性を呈するが、これらの分散液は、判定の方法に記載されているように、18〜23℃での保存でわずか約2週間後に、相分離の形態で分離が発生することを考えれば、不十分な保存安定性を確かに呈することがわかる。
【0216】
4.1.2 本発明によらない、比較の増粘剤の分散液V15からV17は、それぞれの分散液の総質量に対して、それぞれ47質量%超の有機溶剤の含有量であり、上記の方法によりぶつ発生率、均一性およびそれらの保存安定性を調査し、評価する。
【0219】
表3.2から、V15からV17は、それぞれ、ぶつ発生が観察されない十分な均一性を呈するが、これらの分散液は、判定の方法に記載されているように、18〜23℃での保存でわずか数日後(V15およびV16の場合)に、または18〜23℃での保存で数時間後(V17の場合)に、相分離の形態で分離が発生することを考えれば、不十分な保存安定性を確かに呈することがわかる。
【0220】
4.1.3 本発明の増粘剤の分散液X1からX7は、それぞれの分散液の総質量に対して、それぞれ20質量%未満の有機溶剤の含有量であり、ぶつ発生率、均一性、水混和性およびその保存安定性を、上記の方法により調査し、評価する。水混和性の判定のために、X1からX7は、それぞれ、表1.4に明記された成分をそこで指示された順番で混合することにより製造されるが、X1からX7の製造では、水混和性の判定の方法の説明に従って、最後の成分としてのみ、表1.4で指示されたそれぞれの脱イオン水の量の半分は使用される(したがって、脱イオン水が合計56.05質量部のX1の場合、例えば、28.025質量部が最後の成分としてのみ使用される)。
【0223】
表3.3から、X1からX7は、それぞれ、ぶつ発生が観察されない、またはごくわずかしか観察されない、良好な均一性および水混和性を有することがわかる。さらに、すべての分散液X1からX7は、それぞれ、判定の方法に記載されているように40℃で28日間にわたる保存で、良好な保存安定性を示し:分離または相分離は観察されなかった。さらに、分散液X1およびX3は、判定の方法に記載されているように、40℃で365日間にわたって保存し:この比較的長い時間の後でさえ、分離または相分離は観察されなかった。
【0224】
4.1.4 本発明の増粘剤の分散液X8、および比較の分散液V18を、ぶつ発生率、均一性および水混和性に関係する上記方法に従って調査し、評価する。水混和性の判定のために、V18およびX8を、それぞれ、表1.5に明記されている成分を、そこで指示された順番で混合することにより製造し、V18およびX8の製造では、水混和性の判定のための方法の記載に従って、それぞれ、表1.5で指示された脱イオン水の量を最終的な成分としてのみ使用する。
【0227】
表3.4から、X8と対照的に、V18を用いては、良好な均一性も良好な水混和性も、達成できないことがわかる。さらにV18の場合、多数のぶつが観察された。V18は、少なくとも1種の重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を少なくとも1種のジオールおよび/またはポリオールと反応させることによっては得られなかったポリエステルを、そのポリエステル成分として含む:これらの結果は、重合脂肪族C
12〜C
24モノカルボン酸を加えるそのような反応により、本発明に従って用いられるポリエステルを得ることが可能なことが、本発明には不可欠であることを示す。
【0228】
4.1.5 本発明の増粘剤の分散液X1、ならびに比較の分散液V19およびV20を、ぶつ発生率および均一性に関係する上記の方法に従って調査し、評価する。
【0231】
表3.5から、V19およびV20を用いては、X1を用いるのと同様に良好な均一性は達成できるが、それにも関わらず、V19およびV20は、製造後、また、保存後に多数のぶつの発生が観察される点でX1とは異なることがわかる。V19およびV20は、ポリアミドとして、水性組成物、具体的には、市販の製品Disparlon(登録商標)AQ600(V19)およびAQ630(V20)に通例使用される、酸価が高いポリアミドを含む。この欠点は、X1の場合観察されない。
【0232】
4.2 本発明のコーティング組成物および比較のコーティング組成物の試験および調査
4.2.1 ピンホールおよびぶつ発生率の調査
これらの調査は、上記の方法に従って行う。
【0233】
結果を表4.1および4.2に要約する。
【0236】
表4.1からわかるように、本発明の分散液X6およびX7が、水性ベースコート材料B−X6およびB−X7の成分として存在することにより、ピンホールに対して優れた耐性が生じる:ピンホールは観察されなかった。表4.2からわかるように、さらに、B−X6およびB−X7の場合、すべてでぶつの形成は観察されなかった。対照的に、比較のベースコート材料V−Iの場合、多数のぶつが観察された:比較の水性ベースコート材料V−Iは、本発明の分散液、すなわちポリエステル(ポリエステル(I)の水性分散液)およびポリアミド(Disparlon(登録商標)A670−20M)を製造するために使用される個々の成分を含有するが、これらは、事前に加工されて、本発明による分散液を形成せず、その代わりに、分離した成分として、比較のベースコート材料V−I中に直接組み込まれる。さらに、V−Iの場合、18〜23℃で保存する際、すぐ数時間後に分離が観察される。この理由から、V−Iの場合、ピンホール試験を評価することは不可能である。
【0237】
4.2.2 ぶつ発生率および保存安定性の調査
これらの調査は、上記の方法に従って行う。
【0238】
結果を表4.3および4.4に要約する。
【0241】
表4.3からわかるように、B−X1およびV−II(Na−フィロケイ酸Mgを増粘剤として含有する)の場合、観察できるぶつの形成はなかった。対照的に、比較のベースコート材料V−IIIの場合、多数のぶつを観察した:比較の水性ベースコート材料V−IIIは、本発明の分散液、すなわちポリエステル(ポリエステル(I)の水性分散液)およびポリアミド(Disparlon(登録商標)A670−20M)を製造するために使用される個々の成分を含有するが、これらは、事前に加工されて、本発明による分散液を形成せず、その代わりに、分離した成分として、比較のベースコート材料V−III中に直接組み込まれる。V−IIIの場合、40℃で保存する際、すぐ数時間後に相分離または分離が観察され、すなわち、本発明に用いられるポリアミドは、水性ベースコート材料中にそのまま組み込むことができず、その代わり本発明の水性分散液の形態でのみ組み込むことができる。この理由から、および比較のベースコート材料V−IIIの場合に生じる多数のぶつにより、V−IIIの場合、低せん断および高せん断粘度の判定は不可能である。対照的に、水性ベースコート材料V−IIおよびB−X1は、40℃での保存で安定であり、40℃での保存の2週間後に、高せん断および低せん断粘度における許容できるずれを呈し、本発明の水性ベースコート材料B−X1は、V−IIを上回る著しい利点を呈する(小さい変化)(表)4.4参照)。
【0242】
4.2.3 曇り度の調査
この調査は、上記の方法に従って行われる。本発明のコーティング組成物B−X1、また比較のコーティング組成物V−IIを、水性ベースコート材料として、判定の方法に記載されているようにコーティングした鋼鉄パネルに塗布する。続いて、方法に記載されているように、クリアコート材料を、生じたそれぞれのベースコートフィルムに塗布する。
【0245】
結果から、本発明のコーティング組成物B−X1は、V2と比較して、実質的により低い曇り度を有することが示される。