特許第6659699号(P6659699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6659699ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法及びそれから得られる生成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659699
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法及びそれから得られる生成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20200220BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20200220BHJP
   C08F 30/04 20060101ALI20200220BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   C08G81/02
   C08G63/08
   C08F30/04
   C08F4/6592
【請求項の数】12
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2017-532698(P2017-532698)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-538828(P2017-538828A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015080340
(87)【国際公開番号】WO2016097207
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年10月10日
(31)【優先権主張番号】14198476.5
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】デュシャトー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ボウヤーイ,ミロウド
(72)【発明者】
【氏名】ヤシンスカ−ワルツ,リディア
(72)【発明者】
【氏名】ゴスワミ,パーサ プラティム
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/02
C08F 255/00−255/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法において、
A)触媒系を使用して、少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーとを共重合し、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を有するポリオレフィン主鎖を得る工程であって、前記触媒系が、
i)元素のIUPAC周期表の第3族〜第10族に由来する金属を含む金属触媒又は金属触媒前駆体と、
ii)任意選択で共触媒と、
を含む、工程、及び
B)前記ポリオレフィン主鎖上に一又は複数のポリマー側鎖を形成してグラフト共重合体を得る工程であって、触媒的開始剤として、工程A)で得られた前記ポリオレフィン主鎖上の前記金属鎮静化された官能化短鎖分枝が用いられる、工程
を含み、
グラフト共重合体を得る工程B)が、少なくとも1種類の側鎖用のポリマーのカルボニル基含有官能基における求核置換反応によって行われるか、又は
グラフト共重合体を得る工程B)が、少なくとも1種類の環状モノマーを使用する開環重合(ROP)と、少なくとも1種類の側鎖用のポリマーのカルボニル基含有官能基における求核置換反応との組合せによって行われる、方法。
【請求項2】
一連のリアクタを使用する単一プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーが、式I−Aに従う化合物であり、
【化1】
式中、
Cは炭素であり、
1a、R1b、R1c、及びR1dは、各々独立して、H、又は1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーが、式I−Bに従う化合物であり、
【化2】
式中、
Cは炭素であり、
、R、及びRは、各々独立して、H、又は1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択され、
−X−MLは、典型金属鎮静化されたヘテロ原子含有官能基であり、ここで、Xはヘテロ原子又はヘテロ原子含有基であり、Mに結合するヘテロ原子は、O、S及びNからなる群より選択され、Mは典型金属であり、Lは配位子であり、nは、Lの全体の電荷がMの酸化状態−1となるように0、1、2又は3であり、Rは1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記配位子Lが、ヒドリド、ヒドロカルビル、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、チオラート、メルカプテート、カルボキシレート、カルバメート、サレン、サラン、サラレン、グアニジナート、ポルフィリン、β−ケチミナート、フェノキシ−イミン、フェノキシ−アミン、ビスフェノラート、トリスフェノラート、アルコキシアミン、アルコキシエーテル、アルコキシチオエーテル、サブカーボネート及びサブサリチレート又はそれらの組合せからなる群より独立して選択される、請求項4に記載の方法
【請求項6】
工程B)の間に、ROP、エステル交換反応又は求核置換反応のための追加的な触媒が添加されない、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程A)で用いられる前記金属触媒又は金属触媒前駆体が、元素のIUPAC周期表の第3族〜第8族に由来する金属を含む、又は、工程A)で用いられる前記金属触媒又は金属触媒前駆体が、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Fe、Co、Ni、Pdからなる群より選択される金属を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記共触媒が、MAO、DMAO、MMAO、SMAO、フッ化アリールボラン、又はフッ化アリールボラートからなる群より選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデン−ノルボルネン、及びビニリデン−ノルボルネン、並びにそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程B)のROPの間に用いられる環状モノマーが、ラクトン、ラクチド、環状オリゴエステル、エポキシド、アジリジン、エポキシド及び/又はアジリジンとCOとの組合せ、環状無水物、エポキシド及び/又はアジリジンと環状無水物との組合せ、エポキシド及び/又はアジリジンとCOと環状無水物との組合せ、環状N−カルボキシ無水物、環状カーボネート、ラクタム、及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される極性モノマーであり、あるいは、工程B)のROPの間に用いられる環状モノマーが、少なくとも12原子の環サイズを有する無極性の環状モノマーである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程B)の間に付加されるカルボニル基含有官能基を含む前記少なくとも1種類の側鎖用のポリマーが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ランダム又はブロックポリ(カーボネート−エステル)、ポリ(カーボネート−エーテル)、ポリ(エステル−エーテル)、ポリ(カーボネート−エーテル−エステル)、ポリ(エステル−アミド)、ポリ(エステル−エーテル−アミド)、ポリ(カーボネート−アミド)、ポリ(カーボネート−エーテル−アミド)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリ(エステル−エーテル−ウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(カーボネート−エーテル−ウレタン)、ポリ(エステル−尿素)、ポリ(エステル−エーテル−尿素)、ポリ(カーボネート−尿素)、ポリ(カーボネート−エーテル−尿素)、ポリ(エーテル−アミド)、ポリ(アミド−ウレタン)、ポリ(アミド−尿素)、ポリ(ウレタン−尿素)又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーを得るために用いられる鎮静化用金属が、アルミニウム、チタン、亜鉛、ガリウム、マグネシウム、カルシウム及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスケード様の方法を使用する、ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法、及びそれから得られる生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一又は複数の極性又は無極性の側鎖を含むポリオレフィン主鎖を有するグラフト共重合体を調製する方法、及びそれから得られる生成物に関する。
【0003】
ポリオレフィン主鎖と、少なくとも1つの無極性のポリエチレン様ポリマー側鎖とを組み合わせたグラフト共重合体は、例えばポリオレフィン(例えばiPP)とポリエチレンとのブレンドの相容化剤として有用である。実際のポリオレフィン−ポリエチレングラフト共重合体(例えばiPP−g−PE)の調製は、非常に面倒なプロセスである。
【0004】
ポリオレフィン主鎖と少なくとも1種類の極性ポリマー側鎖とを組み合わせたグラフト共重合体は、有効性を制限しかねない、接着性、プリント適性、及び相容性の乏しさに起因して、ある特定の用途にとっての欠点につながる、固有の無極性の性質を有するポリオレフィンポリマーの特性を改善するために用いられうる。さらには、このようなグラフト共重合体は、例えばポリオレフィン(例えばiPP)と極性ポリマー(例えばポリカーボネート)とのブレンドの相容化剤として有用である。
【0005】
グラフト共重合体は、官能化された短鎖分枝を含む、明確に定められたランダム官能化ポリオレフィンを主鎖として使用して調製されうることが知られている。この主鎖ポリオレフィンは、別のプロセスで調製され、それに続くプロセスにおいて追加的な触媒を使用して側鎖が付加される。
【0006】
他の関連する先行技術(非特許文献1)は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVOH)をポリ(ヒドロキシル)官能化ポリエチレンとして適用し、エステル交換反応触媒としてのSnOctの存在下、ポリエステルで処理して、対応するEVOH−グラフト−ポリエステルグラフト共重合体を形成するプロセスを使用する。
【0007】
極性又は無極性のポリマー側鎖の形成は、ポリオレフィン主鎖上の反応性の置換基からこれらのポリマー側鎖を成長させることによって(grafting from法)、又は、事前合成されたポリマーをポリオレフィン主鎖の反応性の側基に結合させることによって(grafting onto法)のいずれかで行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Becquart, Macromol. Mater. Eng. 2009, 294, 643-650
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、グラフト共重合体の調製のための容易な多用途かつ調整可能な方法を提供することである。
【0010】
さらには、本発明の目的は、ポリオレフィン主鎖と、少なくとも1種類の極性又は無極性の(好ましくは、ポリエチレン様ポリエステル)ポリマー側鎖とを有するグラフト共重合体を生成することである。
【0011】
さらには、本発明の目的は、iPPとポリカーボネートなど、ポリオレフィンと極性ポリマーとのブレンド、又は、iPPとPEなど、ポリオレフィンと無極性ポリマーとのブレンドのための相容化剤として使用可能な共重合体を提供することである。
【0012】
これらの目的の1つ以上は、本発明に従った方法によって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製のための、新しい、本発明に係るカスケード様の方法、及びそれから得られる生成物に関する。
【0014】
第1の態様では、本発明は、ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法に関し、該方法は、
A)触媒系を使用して、少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された(pacified)官能化オレフィンモノマーとを共重合して、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を有するポリオレフィン主鎖を得る工程であって、該触媒系が、
i)元素のIUPAC周期表の第3族〜第10族に由来する金属を含む、金属触媒又は金属触媒前駆体と、
ii)必要に応じて共触媒と、
を含む、工程;及び
B)前記ポリオレフィン主鎖上に一又は複数のポリマー側鎖を形成する工程であって、触媒的開始剤として、工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属鎮静化された官能化短鎖分枝が、グラフト共重合体を得るために用いられる、工程
を含む。
【0015】
ある実施形態では、触媒系は、iii)必要に応じて捕捉剤をさらに含む。
【0016】
工程B)は、例えば、開環重合(ROP)及び/又は求核置換によって行われうる。
【0017】
ある実施形態では、グラフト共重合体を得る工程B)は、少なくとも1種類の環状モノマーを使用する開環重合(ROP)によって行われうる。
【0018】
ある実施形態では、グラフト共重合体を得る工程B)は、カルボニル基含有官能基、とりわけ例えば、側鎖の少なくとも1つのポリマーのカルボン酸又は炭酸エステル官能基における、求核置換反応、とりわけ例えば、エステル交換反応によって行われうる。
【0019】
ある実施形態では、第1の種類のオレフィンモノマーは、式I−Aに従った化合物である:
【化1】
式中、
Cは炭素であり、
1a、R1b、R1c、及びR1dは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される。
【0020】
別の実施形態では、第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーは、式I−Bに従った化合物である:
【化2】
式中、
Cは炭素であり、
、R、及びRは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択され、
X−MLは、典型金属(main group metal)鎮静化されたヘテロ原子含有官能基である[式中、Xはヘテロ原子又はヘテロ原子含有官能基であり、Mに結合するヘテロ原子はO、S及びNからなる群より選択され、Rは、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルである]。
【0021】
さらに別の実施形態では、工程B)は、工程A)の直後に、好ましくは一連の連結されたリアクタ内で、好ましくは連続的に、行われる。
【0022】
さらに別の実施形態では、工程B)の間に、ROP又は求核置換反応のための触媒的開始剤以外の追加的な触媒は添加されない。
【0023】
さらに別の実施形態では、工程A)で用いられる金属触媒又は金属触媒前駆体は、元素のIUPAC周期表の第3族〜第8族、好ましくは第3族〜第6族、さらに好ましくは第3族〜第4族に由来する金属を含む。
【0024】
さらに別の実施形態では、工程A)で用いられる金属触媒又は金属触媒前駆体は、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Fe、Co、Ni、Pdからなる群より選択される金属、好ましくはTi、Zr又はHfを含む。
【0025】
ある実施形態では、上記触媒は、例として、とりわけ例えば、チタンアルコキシをマグネシウムアルコキシと反応させて、その後に反応生成物をアルミニウムアルキルハライドと反応させることによって得られる、チタン−マグネシウムとアルミニウムをベースとしたチーグラー・ナッタ触媒などのチーグラー・ナッタ触媒であってよく、又は、とりわけ例えば、メタロセン、ハーフメタロセン又はポストメタロセン及び/又はシングルサイト触媒でありうる、第4族金属をベースとした触媒でありうる。
【0026】
ある実施形態では、触媒前駆体は、例えば、C−、C−又はC−対称ジルコニウム又はハフニウムメタロセン、好ましくは、インデニル置換ジルコニウム又はハフニウムジハライド、さらに好ましくは、架橋ビス−インデニルジルコニウム又はハフニウムジハライド、さらに一層好ましくは、rac−ジメチルシリルビス−インデニルジルコニウム又はハフニウムジクロリド(それぞれ、rac−MeSi(Ind)ZrCl及びrac−MeSi(Ind)HfCl)、若しくはrac−ジメチルシリルビス−(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム又はハフニウムジクロリド(それぞれ、rac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl及びrac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)HfCl)でありうる。
【0027】
ある実施形態では、上記触媒前駆体は、例えば、いわゆるハーフメタロセン、又は幾何拘束型の触媒であってよく、さらに一層好ましくは、CMe[(C11P=N]TiCl、[MeSi(CMe)N(tBu)]TiCl、[CMe(CHCHNMe]TiClでありうる。
【0028】
ある実施形態では、上記触媒は、例えば、いわゆるポストメタロセンであってよく、好ましくは、[EtNC(N(2,6−iPr−C)]TiCl又は[N−(2,6−ジ(l−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルでありうる。
【0029】
さらに別の実施形態では、共触媒は、例として、例えば、トリエチルアルミニウム(TEA)又はジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、若しくはMAO、DMAO、MMAO、SMAOなどのアルミニウムアルキル及びアルミニウムアルキルハライド、及びフッ化アリールボラン又はフッ化アリールボラートからなる群より選択される。
【0030】
さらに別の実施形態では、捕捉剤は、トリ(i−ブチル)アルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、MAO、MMAO、SMAOなどのアルミニウムアルキル、ジエチル亜鉛などの亜鉛アルキル、又はブチルマグネシウムなどのマグネシウムアルキルからなる群より選択される。ある実施形態では、捕捉剤は、共触媒と同一の化合物である。別の実施形態では、捕捉剤は、共触媒とは異なる化合物である。捕捉剤はまた、連鎖移動剤として機能してもよい。
【0031】
さらに別の実施形態では、式I−Aに従ったオレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデン−ノルボルネン、及びビニリデン−ノルボルネン、並びにそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0032】
さらに別の実施形態では、グラフト共重合体を生成するために工程B)のROPの間に用いられる環状モノマーは、ラクトン、ラクチド、環状オリゴエステル(例えばジ−エステル、トリ−エステル、テトラ−エステル、ペンタ−エステル又はより高次のオリゴエステル)、エポキシド、アジリジン、エポキシド及び/又はアジリジンとCOとの組合せ、環状無水物、エポキシド及び/又はアジリジンと環状無水物との組合せ、エポキシド及び/又はアジリジンとCOと環状無水物との組合せ、環状N−カルボキシ無水物、環状カーボネート、ラクタム及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される極性モノマーである。
【0033】
さらに別の実施形態では、工程B)のROPの間に用いられる環状モノマーは、環/サイクル内にカルボニル基含有官能基と少なくとも10個の連続した炭素原子とを含む環状モノマーであり、好ましくは、マクロラクトンなどの環状エステル、環状カーボネート、環状アミド、環状ウレタン及び環状尿素、又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択され、好ましくはマクロラクトンである。
【0034】
さらに別の実施形態では、少なくともカルボン酸又は炭酸エステル官能基若しくはカルボニル基含有官能基を側鎖として含むポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ランダム又はブロックポリ(カーボネート−エステル)、ポリ(カーボネート−エーテル)、ポリ(エステル−エーテル)、ポリ(カーボネート−エーテル−エステル)、ポリ(エステル−アミド)、ポリ(エステル−エーテル−アミド)、ポリ(カーボネート−アミド)、ポリ(カーボネート−エーテル−アミド)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリ(エステル−エーテル−ウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(カーボネート−エーテル−ウレタン)、ポリ(エステル−尿素)、ポリ(エステル−エーテル−尿素)、ポリ(カーボネート−尿素)、ポリ(カーボネート−エーテル−尿素)、ポリ(エーテル−アミド)、ポリ(アミド−ウレタン)、ポリ(アミド−尿素)、ポリ(ウレタン−尿素)又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0035】
さらに別の実施形態では、金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーを得るために用いられる、鎮静化する(pacifying)金属は、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ビスマス、チタン、亜鉛、及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0036】
ある実施形態では、本方法は、ポリマー−OH中間体の存在を含まない。
【0037】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明に従った方法によって得られた又は得ることができるグラフト共重合体に関する。
【0038】
定義
以下の定義は、記載される主題を明確にするために、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる。以下に挙げられていない他の用語もまた、概ね、当技術分野で受け入れられた意味を有することが意図されている。
【0039】
本明細書で用いられる「グラフト共重合体」とは、主鎖に連結した1つ以上の側鎖を有するマクロ分子を意味する。これらの側鎖は、主鎖のものとは異なる構造的又は立体配置的特徴を有する。
【0040】
本明細書で用いられる「主鎖」とは、線状ポリマー鎖を意味し、他のすべての鎖は、ペンダントであるとみなされうる。主鎖は、好ましくは、他の鎖/側鎖がそれから開始して得られうる、ポリマー鎖である。よって、主鎖は、工程A)において得られる。
【0041】
本明細書で用いられる「側鎖」又は「分岐」又は「ポリマー分岐」又は「ポリマー側鎖」とは、ポリマー主鎖からの派生物を意味する。これらの用語は、相互に交換可能に用いることができる。この派生物は、オリゴマー又はポリマー性であってよく、ポリマー主鎖と比較して、性質が同様であっても異なっていてもよい。「側鎖」又は「分岐」又は「ポリマー分岐」又は「ポリマー側鎖」は、したがって、少なくとも2つの異なるモノマーを含むランダム又はブロック共重合体であってもよい。「側鎖」は、主鎖から開始して得られうる。「側鎖」は、したがって、工程B)において得ることができる。
【0042】
本明細書で用いられる「短鎖分枝」とは、2〜3の原子しか有しない分枝を意味する。短鎖分枝は、それらが結合する線状の分子の骨格よりはるかに小さい。
【0043】
本明細書で用いられる「側基」とは、オリゴマー性でもポリマー性でもない、鎖からの派生物を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる「オレフィンモノマー」又は「オレフィン」とは、ポリオレフィンのためのビルディングブロックとして機能することができる炭素−炭素二重結合を有する炭化水素化合物を意味する。
【0045】
本明細書で用いられる「α−オレフィン」とは、α位に二重結合を有するオレフィンを意味する。
【0046】
本明細書で用いられる「ポリオレフィン」とは、オレフィンモノマーの重合によって得られるポリマーを意味する。
【0047】
本明細書で用いられる「ポリマー鎖」とは、少なくとも500g/molの数平均分子量(M)を有する鎖を意味する。
【0048】
本明細書で用いられる「共重合体」とは、2種類以上のモノマーに由来するポリマーを意味する。
【0049】
本明細書で用いられる「共重合」とは、少なくとも2種類の異なるモノマーが用いられる、共重合体を生成するための方法を意味する。
【0050】
本明細書で用いられる「鎮静化剤(pacifying agent)」とは、官能基を遮断又は保護して、官能基を可逆的に不活性化する薬剤を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる「金属鎮静化された官能化オレフィンモノマー」とは、金属と反応した、反応性の官能基を有するオレフィンモノマーを意味する。それは、官能基を可逆的に不活性化するために金属を用いて鎮静化された、官能化されたオレフィンモノマーである。
【0052】
本明細書で用いられる「金属鎮静化された官能化短鎖分枝」とは、金属と反応した、反応性の官能基を有する短鎖分枝を意味する。それは、官能基を可逆的に不活性化するために金属を用いて鎮静化された、官能化された短鎖分枝である。
【0053】
本明細書で用いられる「ヒドロカルビル鎖」とは、本発明の工程A)に従った重合反応のヒドロカルビル生成物を意味する。それは、例えば2〜20のオレフィン単位を有するオリゴマー性ポリオレフィン鎖であるか、あるいは、それは、例えば20を超えるオレフィン単位からなるポリオレフィン鎖であってもよい。「ヒドロカルビル鎖」と「ヒドロカルビル」は同義語として使用しないことに留意されたい。
【0054】
本明細書で用いられる「ヒドロカルビル」とは、水素及び炭素原子を含む置換基を意味する;それは、アルキル、アルケニル、アルカジエニル及びアルキニルなどの直鎖状、分岐鎖状又は環状の飽和又は不飽和の脂肪族置換基;シクロアルキル、シクロアルカジエニル、シクロアルケニルなどの脂環式置換基;単環式又は多環式芳香族置換基などの芳香族置換基、並びにそれらの組合せ、例えばアルキル置換アリール及びアリール置換アルキルなどである。それは、1つ以上のヒドロカルビルではないヘテロ原子含有置換基で置換されてもよい。したがって、本明細書において「ヒドロカルビル」が用いられる場合には、そうでないことが明記されない限り、それは「置換ヒドロカルビル」でもありうる。用語「ヒドロカルビル」には、水素原子がすべてフッ素原子によって置換された、パーフルオロ化されたヒドロカルビルも含まれる。ヒドロカルビルは、化合物上の基(ヒドロカルビル基)として存在してもよく、あるいは、それは、金属上の配位子(ヒドロカルビル配位子)として存在してもよい。
【0055】
本明細書で用いられる「ポリエチレン様ブロック」又は「ポリエチレン様ポリマー」又は「ポリエチレン様ポリマーブロック」とは、例えばポリエチレン様ポリエステルブロックを含むがそれに限られない、ポリエチレンと少なくとも部分的に混和性である、ポリマー又はポリマーブロックを指す。このような種類のポリマー又はポリマーブロックは、カルボニル基含有官能基間に少なくとも10連続を有するモノマー単位を少なくとも60mol%、含みうる。よって、本発明の文脈において、ポリエチレン様ポリマーは無極性とみなされる。
【0056】
本明細書で用いられる「環状モノマー」とは、重合においてビルディングブロックとして使用可能な環系を有する化合物を意味する。環系は開環され、該開環されたモノマーが、成長するポリマー鎖に結合する。
【0057】
本明細書で用いられる「開環重合」又は「ROP」とは、環状モノマーが開環されて連鎖(enchained)し、ポリマーを形成する、連鎖成長重合の形態を意味する。それは、環状モノマーと二酸化炭素との共重合も含む(例えばエポキシド+CO)。
【0058】
本明細書で用いられる「開始剤」とは、金属触媒とともに使用される場合に、ROP又は求核置換反応を開始することができる試薬を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる「触媒的開始剤」とは、ROP又は求核置換反応を開始しかつ触媒作用を及ぼすことができる金属含有試薬を意味する。言い換えれば、触媒的開始剤は、金属触媒と開始剤との組合せである。
【0060】
本明細書で用いられる「ルイス塩基配位子」とは、金属触媒又は金属触媒前駆体の遷移金属に配位することができる基を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる「Pol」とは、ポリオレフィンを意味する。
【0062】
本明細書で用いられる「PE」とは、ポリエチレンを意味する。
【0063】
本明細書で用いられる「LDPE」とは、低密度ポリエチレンを意味し、本明細書で用いられる「LLDPE」とは、直鎖状低密度ポリエチレンを意味する。したがって、LDPE及びLLDPEは、例えば0.85〜0.95kg/mの密度を有するポリエチレンを包含し、よって、特に例えばVLDPE及びMDPEを含む。
【0064】
本明細書で用いられる「HDPE」とは、高密度ポリエチレンを意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「CL」とは、ε−カプロラクトンを意味する。
【0066】
本明細書で用いられる「PCL」とは、ポリカプロラクトンを意味する。
【0067】
本明細書で用いられる「PLA」とは、ポリラクチドを意味する(L、D又はDL−ラクチドが用いられうる)。
【0068】
本明細書で用いられる「aPP」とは、アタクチックポリプロピレンを意味する。
【0069】
本明細書で用いられる「iPP」とは、アイソタクチックポリプロピレンを意味する。
【0070】
本明細書で用いられる「sPP」とは、シンジオタクチックポリプロピレンを意味する。
【0071】
本明細書で用いられる「EB」とは、環状エチレンブラシラートを意味する。
【0072】
本明細書で用いられる「PEB」とは、ポリエチレンブラシラートを意味する。
【0073】
本明細書で用いられる「Amb」とは、アンブレトリッドを意味する。
【0074】
本明細書で用いられる「PAmb」とは、ポリアンブレトリッドを意味する。
【0075】
本明細書で用いられる「BA」とは、環状ブチレンアジペートを意味する。
【0076】
本明細書で用いられる「PBA」とは、ポリブチルアジペートを意味する。
【0077】
本明細書で用いられる「BS」とは、環状ブチレンサクシネートを意味する。
【0078】
本明細書で用いられる「PBS」とは、コハク酸ポリブチルを意味する。
【0079】
本明細書で用いられる「aPS」とは、アタクチックポリスチレンを意味する。
【0080】
本明細書で用いられる「iPS」とは、アイソタクチックポリスチレンを意味する。
【0081】
本明細書で用いられる「sPS」とは、シンジオタクチックポリスチレンを意味する。
【0082】
本明細書で用いられる「PDL」とは、ペンタデカラクトンを意味する。
【0083】
本明細書で用いられる「PPDL」とは、ポリペンタデカラクトンを意味する。
【0084】
本明細書で用いられる「4M1P」とは、4−メチル−1−ペンテンを意味する。
【0085】
本明細書で用いられる「P4M1P」とは、ポリ−4−メチル−1−ペンテンを意味する。
【0086】
本明細書で用いられる「iP4M1P」とは、アイソタクチックポリ−4−メチル−1−ペンテンを意味する。
【0087】
本明細書で用いられる「−g−」とは、グラフト共重合体を意味し、例えばHDPE−g−PCLは、HDPE上にグラフト化されたPCLのグラフト共重合体である。
【0088】
本明細書で用いられる「−co−」とは、ランダム共重合体を意味し、例えばポリ(CL−co−PDL)は、CLとPDLとのランダム共重合体である。
【0089】
本明細書で用いられる「求核置換」とは、カルボニル基に結合した求核剤が別の求核剤によって置換される反応を意味する。
【0090】
本明細書で用いられる「エステル交換反応」とは、カルボン酸又は炭酸エステルの求核性のアルコキシド基を交換するプロセスを意味する。エステル交換反応は、エステル又はカーボネート官能基を使用する特殊なタイプの求核置換である。
【0091】
本明細書で用いられる「カルボン酸エステル官能基」とは、有機ヒドロカルビル基に結合したエステル基(−O−C(=O)−)を意味する。
【0092】
本明細書で用いられる「炭酸エステル官能基」とは、有機ヒドロカルビル基に結合したカーボネート基(−O−C(=O)−O−)を意味する。
【0093】
本明細書で用いられる「カルボニル基含有官能基」とは、有機ヘテロ原子含有基 XR’に結合したカルボニル(>C=O)基を意味し、ここで、XはO、S、及びNR”から選択され、R’及びR”は水素又はヒドロカルビルであり、カルボニル基はヘテロ原子に結合する。本発明の文脈において、好ましくは、ポリマーは、側鎖に、カルボニル基含有官能基として、少なくとも1つのカルボン酸エステル、炭酸エステル、アミド、ウレタン又は尿素官能基を含む。用語、カルボニル基含有官能基はまた、他の官能基に加えて、カルボン酸エステル及び炭酸エステル官能基も含む。したがって、カルボニル基含有官能基は、好ましくは、反応性のカルボニル基含有官能基を指す。本発明の意味において、カルボニル基含有官能基は、結果的に、ケトンを意味しないことが好ましい。
【0094】
本明細書で用いられる「環状エステル」とは、環状の形態のエステル化合物を意味する。それは、環状ジ−エステル、環状トリ−エステル、環状テトラ−エステル、環状ペンタ−エステル又はより高次の環状オリゴマー性エステルである、環状オリゴエステルも包含する。
【0095】
本明細書で用いられる「ラクトン」とは、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを意味する。これは、環状エステルの定義の範囲内に包含される。
【0096】
本明細書で用いられる「オリゴラクトン」とは、ジ−ラクトン、トリ−ラクトン、テトラ−ラクトン、ペンタ−ラクトン、又はより高次のオリゴマー性ラクトンを意味する。これらは、ラクトンの特殊な形態であり、ラクトンの定義の範囲内に包含される。
【0097】
本明細書で用いられる「マクロラクトン」とは、環/サイクル内にエステル官能基と少なくとも10個の連続した炭素原子とを含むラクトンであるマクロ環状ラクトンを意味し、これらは、ラクトンの特殊な形態であり、ラクトンの定義の範囲内に包含される。
【0098】
本明細書で用いられる「マクロオリゴラクトン」とは、環状マクロモノ−、マクロジ−、マクロトリ−、マクロテトラ−及びマクロペンタ−ラクトン又はより高次のオリゴマーの混合物を意味する。これらは、マクロラクトンの特殊な形態であり、マクロラクトンの定義の範囲内に包含される。
【0099】
本明細書で用いられる「環状アミド」とは、環状形態のアミド化合物を意味する。それは、環状ジ−アミド、環状トリ−アミド、環状テトラ−アミド、環状ペンタ−アミド又はより高次の環状オリゴマー性アミドである、環状オリゴアミドも包含する。
【0100】
本明細書で用いられる「環状カーボネート」とは、環状形態のカーボネート化合物を意味する。それは、環状ジ−カーボネート、環状トリ−カーボネート、環状テトラ−カーボネート、環状ペンタ−カーボネート又はより高次の環状オリゴマー性カーボネートである、環状オリゴカーボネートも包含する。
【0101】
本明細書で用いられる「環状ウレタン」とは、環状形態のウレタン化合物を意味する。それは、環状ジ−ウレタン、環状トリ−ウレタン、環状テトラ−ウレタン、環状ペンタ−ウレタン又はより高次の環状オリゴマー性ウレタンである、環状オリゴウレタンも包含する。
【0102】
本明細書で用いられる「環状尿素」とは、環状形態の尿素化合物を意味する。それは、環状ジ−尿素、環状トリ−尿素、環状テトラ−尿素、環状ペンタ−尿素又はより高次の環状オリゴマー性尿素である、環状オリゴ尿素も包含する。
【0103】
本明細書で用いられる「HT SEC」とは、高温サイズ排除クロマトグラフィーを意味する。HT SECは、ポリマーのサイズと多分散性の両方の尺度として用いられうる。
【0104】
本明細書で用いられる「多分散指数(D)」とは、ポリマー分子のサイズ分布を示す値(M/M)を意味する。Dの測定方法は、以下に説明される。Mは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0105】
本明細書で用いられる「連鎖移動剤」とは、ヒドロカルビル及び/又はヒドロカルビル鎖を活性触媒又は他の連鎖移動剤と交換可能な化合物を意味する。それは、弱い化学結合を伴った少なくとも1つの配位子を含む金属化合物である。
【0106】
本明細書で用いられる「触媒系」とは、金属触媒又は金属触媒前駆体、及び必要に応じて共触媒、並びに必要に応じて捕捉剤を含む系を意味する。
【0107】
本明細書で用いられる「触媒」とは、触媒反応をもたらす種を意味する。
【0108】
本明細書で用いられる「金属触媒」とは、活性部位を形成する少なくとも1つの金属中心を含む触媒を意味する。本発明の文脈において「金属触媒」は、金属が遷移金属である「遷移金属触媒」と同じである。
【0109】
本明細書で用いられる「金属触媒前駆体」とは、活性化されると活性金属触媒を形成する化合物を意味する。
【0110】
本明細書で用いられる「メタロセン」とは、典型的には、金属活性部位に結合した2つの置換されたシクロペンタジエニル(Cp)配位子からなる金属触媒又は金属触媒前駆体を意味する。
【0111】
本明細書で用いられる「遷移金属」とは、元素のIUPAC周期表の第3族〜第10族のいずれか、又は、言い換えれば、第3族金属、第4族金属、第5族金属、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属又は第10族金属のいずれかに由来する金属を意味する。
【0112】
本明細書で用いられる「第3族金属」とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)及び他のランタニド類(Ce〜Lu)、並びに、アクチニウム(Ac)及び他のアクチニド類(Th〜Lr)である、元素のIUPAC周期表の第3族から選択される金属を意味する。
【0113】
本明細書で用いられる「第4族金属」とは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)である、元素のIUPAC周期表の第4族から選択される金属を意味する。
【0114】
本明細書で用いられる「第5族金属」とは、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)である、元素のIUPAC周期表の第5族から選択される金属を意味する。
【0115】
本明細書で用いられる「第6族金属」とは、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)である、元素の周期表の第6族から選択される金属を意味する。
【0116】
本明細書で用いられる「第7族金属」とは、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)及びレニウム(Re)である、元素の周期表の第7族から選択される金属を意味する。
【0117】
本明細書で用いられる「第8族金属」とは、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)である、元素の周期表の第8族から選択される金属を意味する。
【0118】
本明細書で用いられる「第9族金属」とは、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)である、元素の周期表の第9族から選択される金属を意味する。
【0119】
本明細書で用いられる「第10族金属」とは、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)である、元素の周期表の第10族から選択される金属を意味する。
【0120】
本明細書で用いられる「典型金属」とは、元素のIUPAC周期表の第1族、第2族、及び第13族〜15族の元素である金属を意味する。言い換えれば、次の金属:
*第1族:リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)
*第2族:ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、及びカルシウム(Ca)
*第13族:ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)
*第14族:ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)
*第15族:アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)
を意味し、
典型金属には、本発明の文脈では、亜鉛(Zn)も含まれる。
【0121】
本明細書で用いられる「共触媒」とは、金属触媒前駆体を活性化して活性金属触媒をもたらす化合物を意味する。
【0122】
本明細書で用いられる「捕捉剤」とは、重合リアクタ、供給される溶媒及びモノマー内に存在する不純物と反応し、それによって、オレフィン重合プロセスの間の触媒の被毒を防止する化合物を意味する。
【0123】
本明細書で用いられる「メチルアルミノキサン」又は「MAO」とは、触媒的オレフィン重合のための共触媒として機能する、トリメチルアルミニウムの部分加水分解に由来する化合物を意味する。
【0124】
本明細書で用いられる「SMAO」とは、担持されたメチルアルミノキサン、すなわち固体担体に結合したメチルアルミノキサンを意味する。
【0125】
本明細書で用いられる「DMAO」とは、空乏化メチルアルミノキサン、すなわちそこから遊離のトリメチルアルミニウムが取り除かれたメチルアルミノキサンを意味する。
【0126】
本明細書で用いられる「MMAO」とは、修飾メチルアルミノキサン、すなわち、トリメチルアルミニウムと、それに加えて、トリ(i−ブチル)アルミニウム又はトリ−n−オクチルアルミニウムなどの別のトリアルキルアルミニウムとの部分加水分解後に得られる生成物を意味する。
【0127】
本明細書で用いられる「フッ化アリールボラン又はフッ化アリールボラート」とは、3つ又は4つのフッ素化された(好ましくはパーフルオロ化された)アリール配位子を有するホウ酸塩化合物、又は、3つのフッ素化された(好ましくはパーフルオロ化された)アリール配位子を有するボラン化合物を意味する。
【0128】
本明細書で用いられる「ハライド」とは、フッ化物(F−)、塩化物(Cl−)、臭化物(Br−)及びヨウ化物(I−)からなる群より選択されるイオンを意味する。
【0129】
本明細書で用いられる「ハロゲン」とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)からなる群より選択される原子を意味する。
【0130】
本明細書で用いられる「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を意味する。ヘテロ原子にはハライドも含まれる。
【0131】
本明細書で用いられる「元素のIUPAC周期表の第14族、第15族、第16族又は第17族から選択されるヘテロ原子」とは、Si、Ge、Sn[第14族]、N、P、As、Sb、Bi[第15族]、O、S、Se、Te[第16族]、F、Cl、Br、I[第17族]から選択されるヘテロ原子を意味する。
【0132】
本明細書で用いられる「アルキル」とは、炭素−炭素単結合のみを有する、炭素及び水素原子からなる基を意味する。アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよく、非置換であっても置換されていてもよい。アルキル基にはアリール置換基も含まれうる。アルキル基は、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は硫黄(S)若しくはハロゲン(すなわちF、Cl、Br、I)などの1つ以上のヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0133】
本明細書で用いられる「アリール」とは、芳香族環に由来する置換基を意味する。アリール基は、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、硫黄(S)又はハロゲン(すなわちF、Cl、Br、I)などの1つ以上のヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。アリール基には、芳香族環上の1つ以上の水素原子がヒドロカルビル基によって置換されている、置換アリール基も包含される。
【0134】
本明細書で用いられる「アルコキシド」又は「アルコキシ」とは、脂肪族アルコールの脱プロトン化によって得られる置換基を意味する。それは、酸素原子に結合したアルキル基で構成される。
【0135】
本明細書で用いられる「アリールオキシド」又は「アリールオキシ」又は「フェノキシド」とは、芳香族アルコールの脱プロトン化によって得られる置換基を意味する。それは、酸素原子に結合したアリール基で構成される。
【0136】
本明細書で用いられる「シリル基」とは、1〜20個のケイ素原子を含む、直鎖状、分岐鎖状又は環状の置換基を意味する。上記シリル基は、Si−Si単結合又は二重結合を含みうる。
【0137】
例えば、「C1〜C20」などの表現及び同様の式は、本明細書では例えば1〜20個の炭素原子など、炭素原子の数に関する範囲のことを意味しうる。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明は、ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製のための新しい本発明に係るカスケード様の方法、及びそれから得られる生成物に関し、該ポリマーは、極性などの細かく調整されたパラメータを有する。ポリマー側鎖は、極性又は無極性でありうる。
【0139】
本発明のキーは、工程A)において、2種類の異なるオレフィンモノマー、すなわち、第1の種類のオレフィンモノマーと、金属鎮静化された官能基を有する第2の種類のオレフィンコモノマーとを使用することであり、それによって、金属鎮静化された官能基を有する短鎖分枝を含むランダム共重合体を結果的に生じ、これは、それに続く、グラフト共重合体の形成工程からなる工程B)のための触媒的開始剤として直接用いられうる。これにより、中間官能化ポリオレフィンのワークアップ、精製又は乾燥の必要性が回避され、かつ、側鎖を形成する工程に追加的な触媒を使用する必要性が回避されうる。
【0140】
本発明の方法は、少なくとも2つの工程を含む。第1の工程である工程A)の間に、第2の工程である工程B)でのグラフト共重合体の形成のために必要とされる、一又は複数(例えば多数)の反応性の側基を有するポリオレフィン主鎖が調製される。
【0141】
ポリマー側鎖の形成は、触媒的開始剤として用いられる工程(A)で得られたポリオレフィン主鎖上で金属鎮静化された官能化短鎖分枝からこれらのポリマー側鎖を成長させることによって(grafting from法)、又は、触媒的開始剤として用いられる工程(A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属鎮静化された官能化短鎖分枝に事前合成されたポリマーを結合させることによってのいずれかで行われうる。
【0142】
工程A)は、その一方は金属鎮静化された官能化基を有する、少なくとも2種類の異なるモノマーを、触媒系を使用して重合し、ランダムに配置された金属鎮静化された短鎖分枝を含むポリオレフィン主鎖を得る工程に関する。
【0143】
工程A)で用いられる触媒系は、i)第3族〜第10族、好ましくは第3族〜第8族の金属触媒又は金属触媒前駆体;及びii)必要に応じて共触媒を含む。
【0144】
工程B)は、工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の短鎖分枝にポリマー側鎖を形成する工程に関する。工程A)の上記ポリオレフィン主鎖は、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を含む。言い換えれば、工程B)は、グラフト共重合体の形成に関する。
【0145】
工程B)の間にグラフト共重合体が形成されうる、本発明に従った幾つかの合成ルートが存在する。それは、例えば、ROPを介して成長するか、あるいは、求核置換によって付加されてもよい。
【0146】
ある実施形態では、工程B)は、グラフト共重合体を得る工程に関し、触媒的開始剤として工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属官能化された側鎖分枝を使用する、環状モノマーのROPによって行われる。
【0147】
ある実施形態では、工程B)は、グラフト共重合体を得る工程に関し、触媒的開始剤として工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属官能化された側鎖分枝を使用する、とりわけ例えばカルボン酸又は炭酸エステル官能基などの少なくとも1つのカルボニル基含有官能基を含む、側鎖についてのポリマーの求核置換、とりわけ例えばエステル交換反応などによって行われる。
【0148】
ある実施形態では、工程B)は、グラフト共重合体を得る工程に関し、触媒的開始剤として工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属官能化された側鎖分枝を使用する、ROPと求核置換との組合せによって行われる。ROP及び求核置換は、同時に行うことができる。あるいは、最初に、側鎖を得るために、触媒的開始剤として工程A)で得られたポリオレフィン主鎖上の金属官能化された側鎖分枝を使用して、少なくとも1つのカルボニル基含有官能基を含むポリマーを使用する求核置換が行われる。その後に、ROPが、ROPのための触媒的開始剤として機能する、環状モノマーを工程B)の第1のサブ工程で得られた金属官能化されたグラフト共重合体に加えることによって行われる。
【0149】
好ましくは、上記プロセス工程はすべて、直接、次々に行われる。
【0150】
好ましくは、プロセス工程A)及びB)は、加水分解及び/又は中間ワークアップなしに行うことができる。
【0151】
好ましくは、プロセスは、一連のリアクタ内で行われる。
【0152】
これらの工程の各々は、以下にさらに詳細に論じられ、かつ、実施形態も以下に論じられる。
【0153】
工程A):ポリオレフィン主鎖の調製
本発明に従った方法における第1の工程は、反応性の求電子性金属懸垂基を有するポリオレフィン主鎖の調製である。よって、工程A)で得られる生成物は、金属鎮静化された官能化側鎖含有ポリオレフィンである。
【0154】
本発明の方法の工程A)の間に、共重合が行われる。少なくとも2つの異なるオレフィンモノマーが用いられる;その一方は、その官能性が鎮静化用金属で鎮静化されているヘテロ原子含有官能基を有する、官能化されたオレフィンである。この共重合反応は、1つ以上の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を有するランダム共重合体を生じる。金属鎮静化された官能化短鎖分枝は、グラフト共重合体を得るために工程B)で用いられる反応性の置換基である。
【0155】
本発明のある実施形態では、第1の種類のオレフィンモノマーは、以下の式I−Aに従った構造を有する:
【化3】
式中、
Cは炭素であり、
1a、R1b、R1c、及びR1dは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される。
【0156】
ヒドロカルビルは、例えば、アルキル、アルケニル、アルカジエニル及びアルキニルでありうる。それはまた、シクロアルキル、シクロアルカジエニル、シクロアルケニルなどの脂環式置換基であってもよい。それはまた、単環式又は多環式芳香族置換基などの芳香族置換基、並びにそれらの組合せ、例えばアルキル置換アリール及びアリール置換アルキルなどであってもよい。ヒドロカルビルは、例えばヘテロ原子などの1つ以上の非ヒドロカルビル含有基で置換されていてもよい。
【0157】
好ましくは、式I−Aに従ったオレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデン−ノルボルネン、及びビニリデン−ノルボルネン、並びにそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。好ましくは、上記第1の種類のオレフィンモノマーは、エチレン又はプロピレンである。
【0158】
加えて、一方はエチレン又はプロピレン、他方は1つ以上の他のオレフィンの組合せもまた、第1の種類のオレフィンモノマーとして用いられうる。例えば1つ以上のハロゲンで置換されたなど、上述のモノマーの置換類似体もまた使用して差し支えない。芳香族モノマーも、本発明に従って用いられうる。LLDPE−側鎖に達するように、エチレンとα−オレフィンとの組合せなど、2つ以上のオレフィンの組合せを使用することも可能である。
【0159】
本発明のある実施形態では、第2の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーは、以下の式I−Bに従った構造を有する:
【化4】
式中、
Cは炭素であり、
、R、及びRは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択され、
−X−MLは、金属鎮静化されたヘテロ原子含有官能基である。
【0160】
ある実施形態では、Rが存在しない場合には、R−X−MLは、X−MLと書き表すこともでき、あるいは、別の実施形態ではRはヒドロカルビル基である。Xがヘテロ原子含有基の場合、ヘテロ原子はMに結合することに留意されたい。
【0161】
好ましくは、Xは、以下からなる群より選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子含有基である:
・ −O−
・ −S−
・ −NR6a
・ −CO
・ −C(=O)−
・ −C(=S)S−
・ −C(=O)S−
・ −C(=S)O−
・ −C(=O)N(R6a)−
・ −C(=NR6a)O−
・ −C(=NR6a)N(R6b)−
・ −C(=NR6b)N(R6a)−
・ −C(=S)N(R6a)−
・ −C(=NR6a)S−
・ −CHC(R6a)=C(OR6b)O−
・ −CHC(R6a)=C(NR6b6c)O−
・ −CHC(R6a)=P(OR6bOR6c)O−
・ −C(R6a)=N−
・ −C(R6a)R6bC(R6c)R6dO−
・ −C(R6a)R6bC(R6c)R6dNR6e
・ −C(=O)−R6a−C(=O)O−
・ −C(R6b6c)N(R6a)−
・ −S(=O)O−
・ −C(R6a)(R6b)O−
【0162】
好ましくは、上記ヘテロ原子含有基Xに由来するヘテロ原子は、O、S、N又はそれらの1つ以上の組合せである。
【0163】
好ましくは、R6a、R6b、R6c、R6d、R6eは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される。好ましくは、MLは、1つ以上の配位子Lと結合した金属である。好ましくは、nは0、1、2又は3である。ここでは、Lの全体の電荷は、金属−1の酸化状態に対応する。
【0164】
Mは、鎮静化用金属であり、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ビスマス、チタン、亜鉛、及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0165】
好ましくは、配位子Lは、ヒドリド、ヒドロカルビル、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、チオラート、メルカプテート、カルボキシレート、カルバメート、サレン、サラン、サラレン、グアニジナート、ポルフィリン、β−ケチミナート、フェノキシ−イミン、フェノキシ−アミン、ビスフェノラート、トリスフェノラート、アルコキシアミン、アルコキシエーテル、アルコキシチオエーテル、サブカーボネート及びサブサリチレート又はそれらの組合せからなる群より独立して選択される。
【0166】
好ましい実施形態では、式I−Bに従った化合物は、金属鎮静化されたヒドロキシルα−オレフィン、又は金属鎮静化されたヒドロキシル−官能化された環状オレフィンモノマーであり、好ましくは、アルミニウムで鎮静化されたヒドロキシルオレフィンモノマーである。
【0167】
金属鎮静化されたヒドロキシルα−オレフィンモノマーは、式I−Bに対応し、式中、R、R、及びRは、各々、Hであり、Xは−O−であり、Rは、一又は複数の−C(R7a)(R7b)−基[式中、R7a及びR7bは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される]である。R基の例は、−(CH−である。
【0168】
金属鎮静化されたヒドロキシ−官能化された環がひずんだ環状オレフィン(内部オレフィンとも呼ばれる)は、典型的には、ヒドロキシル官能化されたノルボルネンであり、好ましくは、金属鎮静化された5−ノルボルネン−2−メタノールである。それらは式I−Bに対応しており、式中、R及びRはHであり、R及びRは一緒に、X−MLで官能化された環構造を形成し、ここで、Xは−O−である。
【0169】
好ましくは、上記金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーは、金属触媒又は金属触媒前駆体が添加される前に、インサイチュで調製される。金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーは、例えば、式I−C(下記)に従ったプロトン性官能化オレフィンモノマーと金属鎮静化剤との脱プロトン反応によって調製されうる。
【化5】
【0170】
ある実施形態では、金属鎮静化剤は、金属ヒドロカルビル種LMR7cから選択される。L、M及びnは、上記指定される通りである。R7cは、ヒドリド又は1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、pは1、2又は3である。ここでは、L+R7cの全体の電荷は、金属の酸化状態に対応する。
【0171】
好ましくは、金属鎮静化剤は、モノ−、ジ−又はトリヒドロカルビルアルミニウム、モノ−、ジ−又はトリヒドロカルビルホウ素、モノ−、ジ−又はトリヒドロホウ素、モノ−、ジ−又はトリヒドロカルビルガリウム、モノ−、ジ−又はトリヒドロカルビルビスマス、モノ−又はジヒドロカルビル亜鉛、モノ−又はジヒドロカルビルマグネシウム、モノ−又はジヒドロカルビルカルシウム、モノ−、ジ−、トリ−又はテトラヒドロカルビルチタン及びそれらの1つ以上の組合せである。
【0172】
好ましくは、上記金属鎮静化剤は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(i−プロピル)アルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリ(i−ブチル)アルミニウム(TIBA)、トリ(t−ブチル)アルミニウム、トリ(n−ヘキシル)アルミニウム、トリ(n−オクチル)アルミニウム、ジ(i−ブチル)アルミニウムヒドリド(DIBALH)、ジメチルアルミニウム2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、ジエチルアルミニウム2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、ジ(i−ブチル)アルミニウム2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、i−ブチルアルミニウム−ビス(ジ−トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウム−ジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)−i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウム−ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、n−オクチルアルミニウム−ジ−エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウム−ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム−ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウム−ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタン−アミド)、n−オクチルアルミニウム−ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタン−アミド)、n−オクチル−アルミニウム−ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリ(i−ブチル)ガリウム、ジ−n−ブチルマグネシウム(DBM)、ジメチルマグネシウム、ブチル−オクチル−マグネシウム、ブチル−エチル−マグネシウム、ブチルマグネシウム2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、ベンジルカルシウム2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、メチル亜鉛2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、ジエチル亜鉛(DEZ)、ジメチル亜鉛、ジ−イソプロピル亜鉛、ジ−t−ブチル亜鉛、ジ−(n−ヘキシル)亜鉛、エチル亜鉛(t−ブトキシド)、エチル亜鉛2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、トリメチルホウ素、トリブチルホウ素、ジエチルホウ素 2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチル−フェノキシド、9−ボラビシクロ(3.3.1)ノナン、カテコールボラン、ジボランから選択される。
【0173】
ある実施形態では、金属鎮静化剤は、TIBA、DIBALH、DBM、DEZからなる群より選択される。
【0174】
金属鎮静化剤は、工程A)の重合反応の間に連鎖移動剤としても作用しうることに留意されたい。
【0175】
工程A)での使用に適した触媒系
工程A)で使用するための触媒系は、以下の成分を含む:
i)元素のIUPAC周期表の第3族〜第10族に由来する金属を含む、金属触媒又は金属触媒前駆体、
ii)必要に応じて共触媒、及び
iii)必要に応じて捕捉剤。
【0176】
適切な金属触媒及び/又は金属触媒前駆体は、随意的である適切な共触媒とともに、このセクションで論じられる。工程A)のための金属触媒は、共触媒なしで使用することができ、工程A)のための金属触媒前駆体は、実際の活性触媒を得るために共触媒を必要とする。
【0177】
工程A)に適した金属触媒又は金属触媒前駆体
以下のセクションにおいて、本発明に従った金属触媒又は、該金属触媒の調製に使用されうる金属触媒前駆体の幾つかの例が特定される。本発明の工程A)での使用に適した金属触媒は、工程A)での使用前に金属触媒前駆体を共触媒と反応させることによって、又は、共触媒とのインサイチュ反応によって、得られうる。
【0178】
本発明によれば、金属触媒は、第3族金属、第4族金属、第5族金属、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属又は第10族金属から選択される金属中心を有し、好ましくは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Fe、Co、Ni、Pdである。
【0179】
本発明に従った金属触媒又は金属触媒前駆体は、例えば、シングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ触媒でありうる。
【0180】
本明細書で用いられるチーグラー・ナッタ触媒とは、金属又は半金属化合物(例えばマグネシウム化合物又はシリカ化合物)上に担持された、ハロゲン化チタン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化ハフニウム、ハロゲン化ジルコニウム、及びハロゲン化バナジウムから選択される遷移金属ハライドを含む、遷移金属含有固体触媒化合物を意味する。このような触媒の種類の概要は、例えば、T. Pullukat及びR. HoffのCatal. Rev. -Sci. Eng. 41, vol. 3及び4, 389-438, 1999に示されている。このような前駆触媒の調製は、例えば、国際公開第96/32427号に開示されている。米国特許出願公開第2009/0048399号、同第2014/0350200号、国際公開第96/32427号、同第01/23441号、同第2007/134851号、米国特許第4978648号、欧州出願公開第1283222号、米国特許第5556820号;同第4414132号;同第5106806号及び同第5077357号に報告されているチーグラー・ナッタ触媒もまた、本発明における金属触媒前駆体としての使用に適しているであろう。
【0181】
金属触媒又は金属触媒前駆体は、例えば、C−、C−又はC−対称ジルコニウム又はハフニウムメタロセンであってよく、好ましくは、インデニル置換ジルコニウム又はハフニウムジハライドであり、さらに好ましくは、架橋ビス−インデニルジルコニウム又はハフニウムジハライドであり、さらに一層好ましくは、rac−ジメチルシリルビス−インデニルジルコニウム又はハフニウムジクロリド(それぞれ、rac−MeSi(Ind)ZrCl及びrac−MeSi(Ind)HfCl)、若しくはrac−ジメチルシリルビス−(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム又はハフニウムジクロリド(それぞれ、rac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl及びrac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)HfCl)でありうる。
【0182】
本発明によれば、上記触媒前駆体は、例えば、いわゆるハーフメタロセン、又は幾何拘束型の触媒であってよく、さらに一層好ましくはCMe[(C11P=N]TiCl、[MeSi(CMe)N(tBu)]TiCl、[CMe(CHCHNMe]TiClでありうる。
【0183】
本発明によれば、上記触媒は、例えば、いわゆるポストメタロセンであってよく、好ましくは、[EtNC(N(2,6−iPr−C)]TiCl又は[N−(2,6−ジ(l−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルでありうる。
【0184】
金属触媒又は金属触媒前駆体はまた、例えば、好ましくは、式(C)R(C13)MLに従ったC又はC対称化合物であってよく、式中、Cは、非置換又は置換されたシクロペンタジエニルであり、C1311は、非置換のフルオレニル基又は置換されたフルオレニル基であり、架橋R基は、−Si(Me)−、−Si(Ph)−、−C(Me)−又は−C(Ph)−からなる群より選択され、それによって、C−及びC−対称メタロセンを生じる。
【0185】
本発明での使用に適したジルコノセンジクロリド金属触媒前駆体の非限定的な例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−プロピル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジ−t−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジトリメチルシリル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,2,4−トリメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,2,3,4−テトラメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−ビス(3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−ビス(3−トリメチルシリル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−ビス(テトラヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−(1−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−(1−インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−(1−インデニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレン−ビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−1,1,2,2−テトラメチルシラニレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−1,1,2,2−テトラメチルシラニレン−ビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチリデン(1−インデニル)(2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、rac−[1−(9−フルオレニル)−2−(2−メチルベンゾ[b]インデノ[4,5−d]チオフェン−1−イル)エタン]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(シクロペンタ−フェナントレン−3−イリデン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(シクロペンタ−フェナントレン−1−イリデン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2−メチル−シクロペンタ−フェナントレン−1−イリデン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2−メチル−3−ベンズ−インデン−3−イリデン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−ビス[(3a,4,5,6,6a)−2,5−ジメチル−3−(2−メチルフェニル)−6H−シクロペンタチエン−6−イリデン]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−(2,5−ジメチル−1−フェニルシクロペンタ[b]ピロール−4(1H)−イリデン)(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−1−シクロペンタ−フェナントレン−1−イル)ジルコニウムジクロリド、[o−ビス(4−フェニル−2−インデニル)ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[o−ビス(5−フェニル−2−インデニル)ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[o−ビス(2−インデニル)ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[o−ビス(1−メチル−2−インデニル)ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−(1,2−フェニルジイル)−1,l’ジメチルシリル−ビス(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−(1,2−フェニルジイル)−1,1’−(1,2−エタンジイル)−ビス(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル−(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリル−(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−シクロヘキシル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−シクロヘキシル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−t−ブチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−t−ブチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−アダマンチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−アダマンチル−1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−シクロヘキシル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−シクロヘキシル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−t−ブチル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−t−ブチル−1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−メチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−メチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−シクロヘキシル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−シクロヘキシル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン−(3−アダマンチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン−(3−アダマンチル−シクロペンタジエニル)(オクタヒドロ−オクタメチル−ジベンゾ−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0186】
好ましい実施形態では、金属触媒又は金属触媒前駆体は、例えば次のものでありうる:[[2,2’−[[[2−(ジメチルアミノ−κN)エチル]イミノ−κN]ビス(メチレン)]ビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]]ジルコニウム・ジベンジル、(フェニルメチル)[[2,2’−[(プロピルイミノ−κN)ビス(メチレン)]ビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]]ジルコニウム・ジベンジル又は(フェニルメチル)[[2,2’−[[[(2−ピリジニル−κN)メチル]イミノ−κN]ビス(メチレン)]ビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]]ジルコニウム・ジベンジル。
【0187】
好ましい実施形態では、国際公開第00/43426号及び同第2004/081064号、並びに米国特許出願公開第2014/0039138号、同第2014/0039139号、及び同第2014/0039140号の各明細書に報告される複合体は、本発明の方法のための金属触媒前駆体としての使用に適している。
【0188】
上に列挙したものに類似しているが、ZrがHfで置換されている化合物、いわゆるハフノセンもまた、本発明に従った触媒前駆体として使用されうる。
【0189】
本発明での使用のための金属触媒又は金属触媒前駆体はまた、ポストメタロセン触媒又は触媒前駆体由来であってもよい。
【0190】
好ましい実施形態では、金属触媒又は金属触媒前駆体は、次のものでありうる:[HN(CHCHN−2,4,6−Me−C]Hf(CH2Ph)2又はビス[N,N’−(2,4,6−トリメチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウム・ジベンジル。
【0191】
別の好ましい実施形態では、金属触媒又は金属触媒前駆体は、2,6−ジイソプロピルフェニル−N−(2−メチル−3−(オクチルイミノ)ブタン−2)ハフニウム・トリメチル、2,4,6−トリメチルフェニル−N−(2−メチル−3−(オクチルイミノ)ブタン−2)ハフニウム・トリメチルでありうる。
【0192】
好ましい実施形態では、金属触媒又は金属触媒前駆体は、[2,6−iPrNC(2−iPr−C)−2−(6−C)]HfMe、すなわち[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルでありうる。
【0193】
本発明に従った金属触媒前駆体の他の非限定的な例としては、次のものがある:[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(o−トリル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチル、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(o−トリル)(α,α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジ(N,N−ジメチルアミド)、[N−(2,6−ジ(l−メチルエチル)フェニル)アミド)(o−トリル)(α,α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジクロリド、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(フェナントレン−5−イル)(α,α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチル、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(フェナントレン−5−イル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン2−ジイル)メタン)]ハフニウムジ(N,N−ジメチルアミド)、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(フェナントレン−5−イル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジクロリド。他の非限定的な例としては、例えば以下のようなピリジルジアミド金属ジクロリド複合体のファミリーが挙げられる:[N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−6−[2−[フェニル(フェニルアミノ−κN)メチル]フェニル]−2−ピリジンメタンアミナト(2−)−κN1,κN2]ハフニウムジクロリド、[N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−6−[2−[(フェニルアミノ−κN)メチル]−1−ナフタレニル]−2−ピリジンメタンアミナト(2−)−κN1,κN2]ハフニウムジクロリド、[N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−α−[2−(1−メチルエチル)フェニル]−6−[2−[(フェニルアミノ−κN)メチル]フェニル]−2−ピリジンメタンアミナト(2−)−κN1,κN2]ハフニウムジクロリド、[N−(2,6−ジエチルフェニル)−6−[2−[フェニル(フェニルアミノ−κN)メチル]−1−ナフタレニル]−2−ピリジンメタンアミナト(2−)−κN1,κN2]ジルコニウムジクロリド、[4−メチル−2−[[2−フェニル−1−(2−ピリジニル−κN)エチル]アミノ−κN]フェノラト(2−)−κO]ビス(フェニルメチル)ハフニウムビス(フェニルメチル)、[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチル−6−[[2−フェニル−1−(2−ピリジニル−κN)エチル]アミノ−κN]フェノラト(2−)−κO]ハフニウムビス(フェニルメチル)、[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチル−6−[[フェニル(2−ピリジニル−κN)メチル]アミノ−κN]フェノラト(2−)−κO]ハフニウムビス(フェニルメチル)。
【0194】
本発明での使用に適したチタンジクロリド金属触媒前駆体の非限定的な例としては、次のものが挙げられる:シクロペンタジエニル(P,P,P−トリ−t−ブチルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(P,P,P−トリ−t−ブチルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(P,P,P−トリ−t−ブチルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、1,2,3,4−テトラフェニル−シクロペンタジエニル(P,P,P−トリ−t−ブチルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(P,P,P−トリシクロヘキシルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(P,P,P−トリシクロヘキシルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(P,P,P−トリシクロヘキシルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、1,2,3,4−テトラフェニル−シクロペンタジエニル(P,P,P−トリシクロヘキシルホスフィンイミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(P,P−ジシクロヘキシル−P−(フェニルメチル)ホスフィンイミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタンジクロリド、1,2,3−トリメチル−シクロペンタジエニル(2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノラト)チタンジクロリド、[(3a,4,5,6,6a−η)−2,3,4,5,6−ペンタメチル−3aH−シクロペンタ[b]チエン−3a−イル](2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノラト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N’−ビス(1−メチルエチル)エタンイミダミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N’−ジシクロヘキシルベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N’−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(1,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(1,3−ビス[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(1,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(1,3−ビス[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−2−イミダゾリジンイミナト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(ジ−t−ブチルケチミノ)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタンイミナト)チタンジクロリド、[(3a,4,5,6,6a−η)−2,4,5,6−テトラメチル−3aH−シクロペンタ[b]チエン−3a−イル](2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタンイミナト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(2,6−ジフルオロ−N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(2,6−ジフルオロ−N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,6−ジフルオロ−N,N−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ジフルオロベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ジフルオロベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ジフルオロベンゼンカルボキシミダミダト)チタンジクロリド、シクロペンタジエニル(N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジナト)チタンジクロリド、ペンタフルオロフェニルシクロペンタジエニル(N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジナト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジナト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(1−(イミノ)フェニルメチル)ピペリジナト)チタンジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルクロムジクロリドテトラヒドロフラン複合体。
【0195】
本発明での使用に適したチタン(IV)ジクロリド金属触媒の非限定的な例としては、次のものがある:(N−t−ブチルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド、(N−フェニルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド、(N−sec−ブチルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド、(N−sec−ドデシルアミド)(ジメチル)(フルオレニル)シランチタンジクロリド、(3−フェニルシクロペンタジエン−1−イル)ジメチル(t−ブチルアミド)シランチタンジクロリド、(3−(ピロール−1−イル)シクロペンタジエン−1−イル)ジメチル(t−ブチルアミド)シランチタンジクロリド、(3,4−ジフェニルシクロペンタジエン−1−イル)ジメチル(t−ブチルアミド)シランチタンジクロリド、3−(3−N,N−ジメチルアミノ)フェニル)シクロペンタジエン−1−イル)ジメチル(t−ブチルアミド)シランチタンジクロリド、(P−t−ブチルホスホ)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド。他の例は、Lnがジメチル、ジベンジル、ジフェニル、1,4−ジフェニル−2−ブテン−1,4−ジイル、1,4−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイル又は2,3−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイルである、直上のリストに列挙した金属触媒前駆体である。
【0196】
適切な金属触媒前駆体はまた、国際公開第93/19104号に記載されるものなど、三価の遷移金属であってもよい(例えば特に、13頁15行目の実施例1を参照)。
【0197】
適切な金属触媒前駆体はまた、国際公開第96/13529号に記載される、[CMeCHCHN(n−Bu)]TiClとしての三価の遷移金属であってもよく(例えば特に、20頁10〜13行目の実施例IIIを参照)又は国際公開第97/142232号及び同第97/42236号の各明細書に記載される[CH(iPr)CHCHNMe]TiClであってもよい(例えば、特に、26頁14行目の実施例1を参照)。
【0198】
ある実施形態では、金属触媒前駆体は、[CCHCHNMe]TiClである。
【0199】
ある実施形態では、金属触媒又は金属触媒前駆体はまた、[CMeCHCHNMe]TiCl、[CCHCHNiPr]TiCl、[CMeCHCHNiPr]TiCl、[CN]TiCl、[CCHCHNMe]CrCl、[CMeCHCHNMe]CrCl;[CCHCHNiPr]CrCl、[CMeCHCHNiPr]CrCl又は[CN]CrClであってもよい。
【0200】
本発明に従った適切であろう金属触媒前駆体の例の非限定的なリストは、次の通りである:(N,N−ジメチルアミノ)メチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(N,N−ジメチルアミノ)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(N,N−ジメチルアミノ)プロピル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(N,N−ジブチルアミノ)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(ピロリジニル)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(N,N−ジメチルアミノ)エチル−フルオレニルチタンジクロリド、(ビス(1−メチル−エチル)ホスフィノ)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(ビス(2−メチル−プロピル)ホスフィノ)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(ジフェニルホスフィノ)エチル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、(ジフェニルホスフィノ)メチルジメチルシリル−テトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド。他の例は、塩化物が、臭化物、ヒドリド、メチル、ベンジル、フェニル、アリル、(2−N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル、(2−N,N−ジメチルアミノ)ベンジル、2,6−ジメトキシフェニル、ペンタフルオロフェニルで置換されうる、及び/又は、金属が三価のチタン又は三価のクロムである、直上のリストに列挙した触媒である。
【0201】
好ましい実施形態では、触媒前駆体は次の通りである:[2−(2,4,6−iPr−C)−6−(2,4,6−iPr−C)−CN]Ti(CHPh)又は[EtNC(N−2,6−iPr−C]TiCl
【0202】
本発明に従った金属触媒前駆体の他の非限定的な例としては、次のものがある:{N’,N”−ビス[2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル]−N,N−ジエチルグアニジナト}チタントリクロリド、{N’,N”−ビス[2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル]−N−メチル−N−シクロヘキシルグアニジナト}チタントリクロリド、{N’,N”−ビス[2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル]−N,N−ペンタメチレングアニジナト}チタントリクロリド、{N’,N”−ビス[2,6−ジ(メチル)フェニル]−sec−ブチル−アミニジナト(aminidinato)}チタントリクロリド、{N−トリメチルシリル,N’−(N”,N”−ジメチルアミノメチル)ベンズアミジナト}チタンジクロリドTHF複合体、{N−トリメチルシリル,N’−(N”,N”−ジメチルアミノメチル)ベンズアミジナト}バナジウムジクロリドTHF複合体、{N,N’−ビス(トリメチルシリル)ベンズアミジナト}チタンジクロリドTHF複合体、{N,N’−ビス(トリメチルシリル)ベンズアミジナト}バナジウムジクロリドTHF複合体。
【0203】
好ましい実施形態では、触媒前駆体は、例えば次のものでありうる:[CN{CMe=N(2,6−iPr)}]FeCl、[2,4−(t−Bu)−6−(CH=NC)CO]TiCl又はビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[(ペンタフルオロフェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド。本発明に従った金属触媒前駆体の他の非限定的な例は、例えば次のものでありうる:ビス[2−[(2−ピリジニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[(フェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[(1−ナフタレニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[3−[(フェニルイミノ)メチル][1,1’−ビフェニル]−2−フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシ−6−[(フェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−6−[(フェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−6−[(フェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[3−(1,1−ジメチルエチル)−5−[(フェニルイミノ)メチル][1,1’−ビフェニル]−4−フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−[(シクロヘキシルイミノ)メチル]−6−(1,1−ジメチルエチル)フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[[[2−(1−メチルエチル)フェニル]イミノ]メチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[(ペンタフルオロフェニルイミノ)エチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[(ペンタフルオロフェニルイミノ)プロピル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−[1−(フェニルイミノ)エチル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−[1−(フェニルイミノ)プロピル]フェノラト]チタンジクロリド、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−[フェニル(フェニルイミノ)メチル]フェノラト]チタンジクロリド。他の例は、ジクロリドが、ジメチル、ジベンジル、ジフェニル、1,4−ジフェニル−2−ブテン−1,4−ジイル、1,4−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイル又は2,3−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイルで置換されうる、及び/又は、金属がジルコニウム又はハフニウムでありうる、直上のリストに列挙した金属触媒前駆体である。
【0204】
好ましい実施形態では、触媒前駆体は次のものでありうる:[2−[[[2−[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2−(ヒドロキシ−κO)フェニル]メチル]アミノ−κN]エチル]メチルアミノ−κN]メチル]−4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノラト(2−)−κO]チタン・ビス(フェニルメチル)、[2,4−ジクロロ−6−[[[2−[[[3,5−ジクロロ−2−(ヒドロキシ−κO)フェニル]メチル]アミノ−κN]エチル]メチルアミノ−κN]メチル]フェノラト(2−)−κO]チタン・ビス(フェニルメチル)、[2−[[[[1−[[2−(ヒドロキシ−κO)−3,5−ジヨードフェニル]メチル]−2−ピロリジニル−κN]メチル]アミノ−κN]メチル]−4−メチル−6−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルフェノラト(2−)−κO]チタン・ビス(フェニルメチル)、[2−[[[2−[[[[2−(ヒドロキシ−κO)−3,5−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]メチル]メチルアミノ−κN]メチル]フェニル]メチルアミノ−κN]メチル]−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノラト(2−)−κO]チタン・ビス(フェニルメチル)、[2,4−ジクロロ−6−[[[2−[[[[3,5−ジクロロ−2−(ヒドロキシ−κO)フェニル]メチル]アミノ−κN]メチル]フェニル]アミノ−κN]メチル]フェノラト(2−)−κO]チタン・ビス(フェニルメチル)。他の例は、ビス(フェニルメチル)が、ジクロリド、ジメチル、ジフェニル、1,4−ジフェニル−2−ブテン−1,4−ジイル、1,4−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイル又は2,3−ジメチル−2−ブテン−1,4−ジイルで置換されうる、及び/又は、金属がジルコニウム又はハフニウムでありうる、直上のリストに列挙した金属触媒前駆体である。
【0205】
本発明での使用に適しているであろうクロム触媒の例の非限定的なリストは、次の通りである:(N−t−ブチルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランクロム・ビス(トリメチルシリル)メチル、(N−フェニルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランクロム・ビス(トリメチル)メチル、(N−sec−ブチルアミド)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランクロム・ビス(トリメチルシリル)メチル、(N−sec−ドデシルアミド)(ジメチル)(フルオレニル)シランクロムヒドリド・トリフェニルホスフィン、(P−t−ブチルホスホ)(ジメチル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランクロム・ビス(トリメチルシリル)メチル。他の例は、L1が、ヒドリド、メチル、ベンジル、フェニル、アリル、(2−N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル、(2−N,N−ジメチルアミノ)ベンジルであり;言い換えれば、クロム・メチル、クロム・ベンジル、クロム・アリル、クロム(2−N,N−ジメチルアミノ)ベンジルであり;及び/又は、金属が三価のイットリウム又はサマリウムである、直上のリストに列挙した触媒であり;他の例は、Lnが、塩化物、臭化物、ヒドリド、メチル、ベンジル、フェニル、アリル、(2−N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル、(2−N,N−ジメチルアミノ)ベンジルであり、及び/又は、金属が、三価のチタン又は三価のクロムである、直上のリストに列挙した金属触媒前駆体である。
【0206】
本発明に従った金属触媒前駆体の非限定的な例としては、次のものがある:N,N’−1,2−アセナフチレンジイリデンビス(2,6−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンアミン)ニッケル・ジブロミド、N,N’−1,2−エタンジイリデンビス(2,6−ジメチルベンゼンアミン)ニッケル・ジブロミド、N,N’−1,2−エタンジイリデンビス(2,6−ビス(1−メチル−エチル)ベンゼンアミン)ニッケル・ジブロミド、N,N’−1,2−アセナフチレンジイリデンビス(2,6−ジメチルベンゼンアミン)ニッケル・ジブロミド、N,N’−1,2−アセナフチレンジイリデンビス(2,6−ビス(1−メチルエチル)ベンゼンアミン)ニッケル・ジブロミド、N,N’−1,2−アセナフチレンジイリデンビス(1,1’−ビフェニル)−2−アミンニッケル・ジブロミド。他の例は、臭化物が、塩化物、ヒドリド、メチル、ベンジルで置換されうる、及び/又は、金属がパラジウムでありうる、直上のリストに列挙した触媒である。
【0207】
本発明に従った金属触媒前駆体のさらなる非限定的な例としては、次のものがある:[2−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル]−6−(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)、[2−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル]−6−(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)、[2−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル]フェノラト−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)−、[3−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル][1,1’−ビフェニル]−2−オラート−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)−、[2−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル]−4−メトキシフェノラト−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)、[2−[[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]イミノ−κN]メチル]−4−ニトロフェノラト−κO]ニッケル・フェニル(トリフェニルホスフィン)、[2,4−ジヨード−6−[[[3,3”,5,5”−テトラキス(トリフルオロメチル)[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−2’−イル]イミノ−κN]メチル]フェノラト−κO]ニッケル・メチル[[3,3’,3”−(ホスフィニジン−κP)トリス[ベンゼンスルホナト]]]三ナトリウム;[2,4−ジヨード−6−[[[3,3”,5,5”−テトラキス(トリフルオロメチル)[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−2’−イル]イミノ−κN]メチル]フェノラト−κO]ニッケル・メチル[[3,3’−(フェニルホスフィニデン−κP)ビス[ベンゼンスルホナト]]]−二ナトリウム。
【0208】
工程A)に適した共触媒
共触媒は、金属触媒前駆体が適用される場合に用いられうる。この共触媒の機能は、金属触媒前駆体を活性化することである。共触媒は、例として、例えばトリイソブチルアルミニウムなどのアルミニウムアルキルと組み合わせる可能性がある、例えばアルミニウムアルキル及びアルミニウムアルキルハライド、例えば、トリエチルアルミニウム(TEA)又はジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、MAO、DMAO、MMAO、SMAOなどからなる群より選択されてよく、及び/又は、例えばトリイソブチルアルミニウムなどのアルミニウムアルキルと、フッ化アリールボラン又はフッ化アリールボラート(すなわち、B(R’)、ここで、それぞれ、R’はフッ化アリールであり、yは3又は4である)との組合せなどであってもよい。フッ化ボランの例はB(Cであり、フッ化ボラートの例は、[X][B(C(例えばX=PhC、CN(H)Me)である。
【0209】
本明細書で用いられるメチルアルミノキサン又はMAOとは、触媒的オレフィン重合のための共触媒として機能する、トリメチルアルミニウムの部分加水分解に由来する化合物を意味しうる。
【0210】
本明細書で用いられる担持されたメチルアルミノキサン又はSMAOとは、固体担体に結合したメチルアルミノキサンを意味しうる。
【0211】
本明細書で用いられる空乏化メチルアルミノキサン又はDMAOとは、そこから遊離のトリメチルアルミニウムが取り除かれたメチルアルミノキサンを意味しうる。
【0212】
本明細書で用いられる修飾メチルアルミノキサン又はMMAOとは、修飾メチルアルミノキサン、すなわち、トリメチルアルミニウムと、それに加えて、トリ(イソブチル)アルミニウム又はトリ−n−オクチルアルミニウムなどの別のトリアルキルアルミニウムとの部分加水分解後に得られる生成物を意味しうる。
【0213】
本明細書で用いられるフッ化アリールボラート又はフッ化アリールボランとは、3つ又は4つのフッ素化された(好ましくはパーフルオロ化された)アリール配位子を有するホウ酸塩化合物又は3つのフッ素化された(好ましくはパーフルオロ化された)アリール配位子を有するボラン化合物を意味しうる。
【0214】
例えば、共触媒は、有機金属化合物でありうる。有機金属化合物の金属は、元素のIUPAC周期表の第1族、第2族、第12族又は第13族から選択されうる。好ましくは、共触媒はオルガノアルミニウム化合物であり、さらに好ましくはアルミノキサンであり、該アルミノキサンは、トリアルキルアルミニウム化合物と水との反応により、該アルミノキサンを部分的に加水分解することによって生成される。例えば、トリメチルアルミニウムは、水と反応して(部分加水分解)、メチルアルミノキサン(MAO)を形成しうる。MAOは、アルミニウム原子上にメチル基を有するアルミニウムオキシド骨格を有する、一般式(Al(CH3−n0.5n・(AlMeを有する。
【0215】
MAOは、概して、多量の遊離のトリメチルアルミニウム(TMA)を含み、これは、MAOを乾燥することによって除去することができ、いわゆる空乏化したMAO又はDMAOを与える。担持されたMAO(SMAO)も使用することができ、これは、無機担体材料、典型的にはシリカをMAOで処理することによって生じうる。
【0216】
MAOを乾燥する代わりに、遊離のトリメチルアルミニウムの除去が望ましい場合には、遊離のトリメチルアルミニウムと反応する、ブチルヒドロキシトルエン(BHT、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)などのバルキーフェノールを加えてもよい。
【0217】
C1〜30のヒドロカルビル置換された第13族化合物の付加によって修飾されたアルキルアルミノキサンなど、中性のルイス酸修飾ポリマー性又はオリゴマー性アルミノキサンも使用することができ、とりわけ各ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビル基中に1〜10個の炭素を有する、トリ(ヒドロカルビル)アルミニウム−又はトリ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物、又はそれらのハロゲン化(パーハロゲン化を含む)誘導体、特にはトリアルキルアルミニウム化合物が使用されうる。
【0218】
ポリマー性又はオリゴマー性アルミノキサンの他の例は、トリ(イソブチル)アルミニウム−又はトリ(n−オクチル)アルミニウム−修飾メチルアルミノキサンであり、概して、修飾メチルアルミノキサン又はMMAOと称される。本発明において、MAO、DMAO、SMAO及びMMAOはすべて、共触媒として使用することができる。
【0219】
加えて、ある特定の実施形態については、金属触媒前駆体はまた、T. J. Marks et al., Chem. Rev. 2000, (100), 1391に例示されるように、ともに共触媒を形成するアルキル化剤とカチオン形成剤との組合せ、又は触媒前駆体がすでにアルキル化されている場合にはカチオン形成剤のみによっても、触媒的に活性にされうる。適切なアルキル化剤はトリアルキルアルミニウム化合物であり、好ましくはTIBAである。本明細書での使用に適したカチオン形成剤は、(i)C1〜30のヒドロカルビル置換された第13族化合物などの中性のルイス酸、好ましくは、各ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビル基中に1〜10個の炭素を有する、トリ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物及びそれらのハロゲン化(パーハロゲン化を含む)誘導体、さらに好ましくは、パーフルオロ化されたトリ(アリール)ホウ素化合物、最も好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素と、(ii)[C][A]型[式中、「C」は、アンモニウム、ホスホニウム、オキソニウム、シリリウム又はスルホニウム基などのカチオン基であり、[A]は、アニオン、とりわけ例えば、ボラートである]の非ポリマー性、相容性、かつ非配位性のイオン形成化合物とを含む。
【0220】
アニオン[「A」]の非限定的な例は、ホウ酸塩化合物、例えばC1〜30のヒドロカルビル置換されたホウ酸塩化合物などであり、好ましくは、各ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビル基中に1〜10個の炭素を有する、テトラ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物及びそれらのハロゲン化(パーハロゲン化を含む)誘導体、さらに好ましくは、パーフルオロ化されたテトラ(アリール)ホウ素化合物、最も好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。
【0221】
例えば共触媒としてSMAOを使用する、担持触媒もまた用いられうる。担体材料は無機材料でありうる。適切な担体としては、固体かつ微粒子化された高表面積の金属酸化物、半金属酸化物、又はそれらの混合物が挙げられる。例としては以下のものが挙げられる:タルク、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、粘土、及びそれらの混合物。
【0222】
担持触媒の調製は、当技術分野で知られた方法を使用して行うことができ、例えば、i)金属触媒前駆体を担持MAOと反応させて担持触媒を生成できる;ii)MAOを金属触媒前駆体と反応させて、結果的に得られた混合物をシリカに加えて担持触媒を形成できる;iii)担体上に固定化された金属触媒前駆体を可溶性のMAOと反応させることができるなどである。
【0223】
工程A)に適した捕捉剤
捕捉剤は、重合リアクタ内、及び/又は、供給される溶媒及び/又はモノマー内に存在する不純物と反応させるために、必要に応じて触媒系に加えられうる。この捕捉剤は、オレフィン重合プロセスの間の触媒の被毒を防止する。捕捉剤は、共触媒と同一であって差し支えないが、アルミニウムヒドロカルビル(例えばトリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、MAO、MMAO、SMAO)、亜鉛ヒドロカルビル(例えばジエチル亜鉛)又はマグネシウムヒドロカルビル(例えばジブチルマグネシウム)からなる群より独立して選択されてもよい。
【0224】
オレフィンの重合
工程A)は、少なくとも2種類のオレフィンを重合して、共重合体化されたポリオレフィン主鎖を提供する工程であり、この工程は、好ましくは、不活性雰囲気下で行われる。
【0225】
本発明において、第2の種類のオレフィンモノマー上のヘテロ原子含有官能基は、インサイチュで保護されるか、あるいは、鎮静化用金属によって鎮静化される。
【0226】
オレフィンの重合は、例えば、ポリマーの融点未満で、気相中で行われうる。重合はまた、ポリマーの融点未満で、スラリー相中で行うこともできる。さらには、重合は、ポリマー生成物の融点より高い温度で、溶液中で行うことができる。
【0227】
例えば、元素の周期表の第3族〜第10族に属する遷移金属の化合物をベースとした触媒の存在下で、連続(マルチ)CSTR又は(マルチ)ループリアクタ内で溶液中又はスラリー中で、流動床又は機械攪拌床を備えたリアクタ内で気相中で、又はこれらの異なるリアクタの組合せで、エチレン又はプロピレンなどの1種類以上のオレフィンを連続的に重合することが知られている。
【0228】
気相プロセスについては、ポリマー粒子は、オレフィンを含むガス状の反応混合物内に流動状態及び/又は攪拌状態で保持される。流動床又は機械攪拌床を構成するポリマーが、リアクタから連続的に又は間欠的に取り出されるとともに、触媒がリアクタ内に連続的に又は間欠的に導入される。重合反応の熱は、リアクタ内へと再循環させる前に、熱伝達手段を通過するガス状の反応混合物によって本質的に除去される。加えて、熱の除去を促進するために、液体流が気相リアクタ内に導入されてもよい。
【0229】
オレフィンのスラリー相重合は非常によく知られており、この重合では、オレフィンモノマーと必要に応じてオレフィンコモノマーとが、触媒の存在下、希釈剤中で重合され、この希釈剤中に固体ポリマー生成物が懸濁され、輸送される。多モードの生成物の生産が望まれる場合には、典型的には、2つ以上のリアクタがこのような重合に用いられ、ここで、第1のリアクタ内で製造されたポリマーが第2のリアクタに移され、そこで、第1のポリマーとは異なる特性を有する第2のポリマーが、第1のポリマーの存在下で製造される。しかしながら、単一モード/多モードのスイングプラントを作り出すため、又は個別には経済的に存立可能な規模を欠きうる2つの小さいリアクタの順応性を高めるために、単一モードのポリマーを製造する2つのリアクタを連結することもまた望ましいであろう。スラリーリアクタを気相リアクタと組み合わせてもよい。
【0230】
スラリー相重合は、典型的には、50〜125℃の範囲の温度及び0.1〜4MPa(1〜40バール)の範囲の圧力下で行われる。用いられる触媒は、本発明に従ったものなど、典型的にはオレフィン重合に用いられる任意の触媒でありうる。ポリマー及び希釈剤、並びに大抵の場合には触媒系の成分、オレフィンモノマー及びコモノマーも含む、生成物のスラリーは、ポリマーとともに取り出される流体の量を最小限にするために、必要に応じて液体サイクロン又は沈降脚などの濃縮装置を使用して、各リアクタから間欠的に又は連続的に排出されうる。
【0231】
本発明はまた、溶液重合法でも行われうる。典型的には、溶液法では、モノマー及びポリマーは、不活性溶媒中に溶解される。
【0232】
溶液重合は、スラリー法に対して幾つかの利点を有する。重合は、均一系シングルサイト触媒(すなわち、1種類の単独の触媒活性部位からなる金属触媒又は金属触媒前駆体)を使用して、均一相内で起こることから、分子量分布及びプロセス変数は、より容易に制御される。典型的には150℃を超える高い重合温度もまた、高い反応率を生じさせる。溶液法は、主に、液体スラリー法又は気相法によっては製造が困難な比較的低分子量及び/又は低密度の樹脂の生成に用いられる。溶液法は、低密度生成物の生産に非常によく適合しているが、より高分子量の樹脂については、Choi and Ray, JMS Review Macromolecular Chemical Physics C25(l), 1-55, pg. 10 (1985)に論じられるように、リアクタ内の過剰な粘度に起因して、はるかに満足度が低いと考えられる。
【0233】
気相法又はスラリー法とは異なり、溶液法では、通常、ポリマーの固体又は粉末は形成されない。典型的には、反応温度及び反応圧力は、溶液中でポリマーを維持するために、気相法又はスラリー法のものよりも高くなる。溶液法は、ポリマーを形成されたままの状態で溶解する不活性溶媒を使用する傾向にあり、その後に溶媒が分離され、ポリマーがペレット化される。溶液法は、使用する触媒系の組成、圧力、温度、及びコモノマーを変動させることによって、広範囲の製品特性を得ることができるという点において、用途が広いと考えられる。
【0234】
溶液法には比較的小さいリアクタが用いられることから、滞留時間は短く、等級の切り替えを迅速にできる。例えば、リアクタにおいて最大5MPa(50バール)までの圧力かつ最高250℃までの温度で動作する連続した2つのリアクタを用いることができる。新しい及び再循環されるオレフィンモノマーは、最大で5.5MPa(55バール)まで圧縮され、供給ポンプによって重合リアクタ内に圧送される。反応は断熱的であり、リアクタ出口において最高約250℃に維持される。単一のリアクタを使用することもできるが、複数のリアクタは、より狭い滞留時間分布をもたらし、したがって、分子量分布のより良好な制御をもたらす。
【0235】
本発明の一実施形態では、工程A)の後に得られる生成物は、工程B)の前に、工程B)で用いられる触媒と予混合されてよい。
【0236】
ポリマー側鎖を形成する工程B)
上述のように、グラフト共重合体は、工程B)の間に形成される。工程B)は、したがって、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝上にポリマー側鎖を形成して、グラフト共重合体を得る工程である。言い換えれば、工程B)は、ポリマー側鎖、すなわちポリマー分枝、すなわちグラフト共重合体の形成に関する。これは、例えばROPによって行われうる。これは、カルボニル基含有官能基(例えばカルボン酸又は炭酸エステル官能基)を含む事前合成されたポリマーを用いる求核置換反応によっても行うことができる。ポリマー分枝は、したがって、ランダム又はブロック共重合体でありうる。
【0237】
工程B)の間に極性ポリマー側鎖が導入される場合、これらの極性は、例えば、工程B)の間に異なる極性の複数の環状モノマーの組合せを加えることによって、ROP及び/又は求核置換を介してポリオレフィン主鎖に結合可能な、調整された極性を有する事前合成されたホモポリマー又は共重合体を使用することによって、工程B)の間に異なる極性の複数のポリマー又は少なくとも2つの異なる環状モノマーの組合せを加えることによって、又は、工程B)の間に少なくとも1つの環状モノマーと求核置換を介してポリオレフィン主鎖に結合可能な少なくとも1つのポリマーとの組合せを加えることによって、調整されうる。
【0238】
あるいは、ポリマー側鎖の極性は、工程A)で得られた金属鎮静化された側基を有するポリオレフィンを、環状モノマーと側鎖用に事前合成されたポリマーとの組合せと反応させることによって調整されてもよい。物理的及び機械的特性はいずれも、本発明に従った方法を利用して調整可能である。加えて、極性ポリマー側鎖の加水分解及び分解特性は、ポリオレフィン主鎖に影響を及ぼさずに調整されうる。
【0239】
工程B)の間にポリエチレン様ポリエステル側鎖が導入される場合、得られる共重合体は、ポリオレフィン−PEブレンド、特にiPP−PEブレンドのための相容化剤として用いられうる。
【0240】
工程B)におけるgrafting onto法の場合、主鎖上にグラフト化するように付加されるポリマーは、例えば、カルボン酸又は炭酸エステル官能基などの、カルボニル基含有官能基を含む。上記ポリマー側鎖は、ランダム共重合体又はブロック共重合体である可能性がある。
【0241】
このような方式で、複数のポリマーブロック又は鎖が、反応性の官能性を含む上記ポリオレフィン主鎖に連結される。ある実施形態では、すべてのポリマー側鎖は、同一のモノマーでできているが、平均分子量は変動しうる。ポリマー分枝の反応性及び量を調整することによって、得られるグラフト共重合体の特性を容易に調整可能である。ある実施形態では、ポリマー側鎖は、ホモポリマー、好ましくは、ポリエステルなどの極性ポリマーである。ポリマー側鎖はまた、ランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。側鎖は、すべて同一であっても異なっていてもよい。
【0242】
特定の実施形態では、本発明に従った方法は、エチレンなどのオレフィンを、例えばアルミニウム鎮静化された官能性(好ましくは、ヒドロキシル官能性)オレフィンなどのコモノマーとしての金属鎮静化された官能性オレフィンと共重合する工程と、例えばラクトンなどの環状モノマーを加えて、ROPを開始させるその後の工程とを含む、2つの連続した工程からなる。開始剤は、開始剤と触媒の両方として機能する触媒的開始剤であることから、本方法の利点は、ROPを触媒するための追加的な触媒を必要としないことである。第1の工程(工程A)の生成物は、金属鎮静化された側基を有するポリオレフィンである。上記金属鎮静化された側基の各々は、グラフト共重合体を提供するためのROP開始剤及び触媒として作用しうる。
【0243】
特定の実施形態では、本発明に従った方法は、2つの連続した工程、すなわち、エチレンなどのオレフィンを、例えばアルミニウム鎮静化された官能性(好ましくは、ヒドロキシル官能性)オレフィンなどのコモノマーとしての金属鎮静化された官能性オレフィンと共重合する工程、及び、反応性のカルボニル含有官能基を側鎖として含むポリマーを結合させる工程であるその後の工程からなる。
【0244】
本方法の利点は、ROP又は他のカルボニル求核置換反応を行うために、追加的な触媒を必要としないことである。第1の工程(工程A)の生成物は、金属鎮静化された側基を有するポリオレフィンである。上記金属鎮静化された側基の各々は、グラフト共重合体を提供するために、工程B)においてROP、エステル交換反応、又は別のカルボニル求核置換反応を開始及び触媒することができる。工程B)は、好ましくは、不活性雰囲気下で行われる。
【0245】
工程A)において触媒系を使用して、少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーとを共重合することによって得られる、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を有するポリオレフィン主鎖は、したがって、工程B)においてROP及び/又はエステル交換反応及び/又は別のカルボニル求核置換反応を開始及び/又は触媒及び/又は実施するために用いられうる。これは、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーがアルミニウム−アルキルを有する/含むように、とりわけ例えば、アルミニウム−アルキルを使用して、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーを鎮静化する及び/又は得ることが可能である。
【0246】
ポリマー分岐の成長のための開環重合反応
本発明の方法の工程B)の間に、環状モノマーのROPによってポリマー側鎖が形成されうる。
【0247】
工程A)の結果、一又は複数の金属鎮静化された短い官能化側鎖分枝を有するポリオレフィンが得られる。これらの金属鎮静化された短い官能化側鎖分枝は、ROPを開始するために使用することができる。
【0248】
本発明で用いられる好ましい環状モノマーは、酸素含有環状化合物である。ROPの機構は、熟練者によく知られており、例えば、the Handbook of Ring-Opening Polymerization, 209, Eds. P. Dubois, O. Coulembier, J.-M. Raquez, Wiley VCH, ISBN:9783527319534に記載されている。
【0249】
環状モノマーの混合物を使用して、ランダムなポリマー側鎖を形成し、特性を調整することもできる。異なる環状モノマーの連続付加もまた利用することができる。
【0250】
本方法の主な利点は、追加的な触媒を加える必要がないことである。工程A)で得られる金属鎮静化された官能化短鎖分枝は、工程B)で用いられる反応性の置換基である。
【0251】
先行技術において、通常はポリオレフィン主鎖の調製後に、金属鎮静化された反応性の側鎖は、OH基へと加水分解される。これらのOH基へは、通常、例えばトリエチルアルミニウムを使用して、アルミニウム中心が付加される。これは、ROPを開始するAl−O−Pol種を生じる。しかしながら、これらの余分な工程は、本発明に従った方法を使用する場合には必要ではない。
【0252】
ある実施形態では、ROPで使用するための環状モノマーは、極性モノマーである。極性環状モノマーは、好ましくは、ラクトン、ラクチド、環状オリゴエステル(例えばジ−エステル、トリ−エステル、テトラ−エステル、ペンタ−エステル又はより高次のオリゴエステル)、エポキシド、アジリジン、エポキシド及び/又はアジリジンとCOとの組合せ、環状無水物、エポキシド及び/又はアジリジンと環状無水物との組合せ、エポキシド及び/又はアジリジンとCOと環状無水物との組合せ、環状N−カルボキシ無水物、環状カーボネート、ラクタム及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0253】
ラクトンは、ポリラクトン側鎖の調製に用いられる;ラクチドは、ポリラクチド側鎖の調製に用いられる;環状オリゴエステル(例えばジ−エステル、トリ−エステル、テトラ−エステル又はペンタ−エステル)は、異なる種類のポリエステル側鎖の調製に用いられる;エポキシドは、ROPを使用する、ポリエステル側鎖の調製に用いられる;エポキシドとCOの組合せは、ポリカーボネート側鎖又はポリ(カーボネート−co−エーテル)側鎖の調製に用いられる;エポキシドと環状無水物の組合せは、ポリエステル側鎖又はポリエステル−co−エーテル側鎖の調製に用いられる;エポキシド、環状無水物及びCOの組合せは、ポリ(カーボネート−co−エステル)側鎖又はポリ(カーボネート−co−エステル−co−エーテル)側鎖の調製に用いられる;N−カルボキシ無水物は、ポリペプチド側鎖の生成に用いられる;カーボネートは、ポリカーボネート又はポリカーボネート−co−エーテル側鎖の調製に用いられる。
【0254】
他の環状モノマーとしては、硫化物などの環状硫黄含有化合物;アミン(アジリジン)、ラクタム、ウレタン、尿素などの環状窒素含有化合物;リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、ホスフィン及びホスファゼンなどの環状リン含有化合物;並びに、シロキサン及びシリルエーテルなどの環状ケイ素含有化合物がある。
【0255】
ある実施形態では、ROPで使用するための少なくとも1つの環状モノマーは、例えば、環/サイクル内に少なくとも10個の連続した炭素原子を含む、マクロラクトン又はマクロオリゴラクトンなど、カルボニル基含有官能基において求核置換反応を被りうる、反応性の官能基を含む環状ヒドロカルビル類からなる群より選択されるモノマーである。
【0256】
環状モノマーが環状エステルの場合には、それは、4〜40原子の環サイズを有する環状エステルでありうる。好ましくは、環状オリゴエステルの場合において、1つ又は複数のエステル官能性の環を形成する、酸素以外の原子は、炭素原子である。
【0257】
ラクトンは、1つのエステル基を有する環状化合物であり;ジラクトンは、2つのエステル基を有する化合物であり;トリラクトンは、3つのエステル基を有する化合物であり;テトララクトンは、4つのエステル基を有する化合物であり;ペンタラクトンは、5つのエステル基を有する化合物であり;オリゴラクトンは、2〜20のエステル基を有する化合物である。
【0258】
工程B)においてモノマーとして使用可能な環状エステルの例としては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、3−メチルオキセタン−2−オン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−デカラクトン、5,5−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン、1,4−ジオキセパン−5−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、3,6−ジメチルモルホリン−2,5−ジオン、1,4−ジオキセパン−7−オン、4−メチル−1,4−ジオキセパン−7−オン、(S)−γ−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−ノナン酸ラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、グリコリド、ラクチド(L、D、メソ)、ヘプタラクトン、オクタラクトン、ノナラクトン、デカラクトン、11−ウンデカラクトン、12−ドデカラクトン、13−トリデカラクトン、14−テトラデカラクトン、15−ペンタデカラクトン(又はω−ペンタデカラクトン)、グロバリド、16−ヘキサデカラクトン、アンブレトリッド、17−ヘプタデカラクトン、18−オクタデカラクトン、19−ノナデカラクトン、エチレンブラシラート、ブチレンブラシラート、環状テレフタル酸ブチル、環状アジピン酸ブチル、環状コハク酸ブチル、環状テレフタル酸ブチルのオリゴマーが挙げられる。
【0259】
環状エステルは、特にこれらがラクトンの場合には、任意の異性体の形態であってよく、環上に、ROPを妨げない有機置換基をさらに含んでいてもよい。このような環状エステルの例としては、4−メチルカプロラクトン、ε−デカラクトン、リシノール酸のラクトン((co−1)−位に分岐したヘキシルを有する10員環)又はそれらの水素化型、13−ヘキシルオキサシクロトリデカン−2−オン(α−位に分岐したヘキシルを有するマクロ環)などが挙げられる。環内に少なくとも10のメチレン単位が存在するこれらのラクトンは、本発明の文脈では、無極性のモノマーとみなされる。
【0260】
環状エステルは、環内に1つ以上の不飽和を含むこともさらに可能である。このような環状エステルの例としては、5−テトラデセン−14−オリド、11−ペンタデセン−15−オリド、12−ペンタデセン−15−オリド(グロバリドとしても知られる)、7−ヘキサデセン−16−オリド(アンブレトリッドとしても知られる)及び9−ヘキサデセン−16−オリドが挙げられる。
【0261】
環状エステルは、ROPを妨げないことを条件として、環内に1つ以上のヘテロ原子をさらに有していてもよい。このような環状エステルの例としては、1,4−ジオキセパン−5−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、3,6−ジメチルモルホリン−2,5−ジオン、1,4−オキサゼパン−7−オン、4−メチル−1,4−オキサゼパン−7−オン、10−オキサヘキサデカノリド、11−オキサヘキサデカノリド、12−オキサヘキサデカノリド及び12−オキサヘキサデセン−16−オリドが挙げられる。
【0262】
ある実施形態では、最初に、無極性のモノマーを使用して、ポリマー側鎖内の第1のポリエチレン様ブロックが形成され、その後に、極性モノマーを使用して、ポリマー側鎖内の無極性ブロック上に追加のブロックが形成される。言い換えれば、それ自体の側鎖がブロック共重合体である。
【0263】
ある実施形態では、ポリオレフィンはアイソタクチックPPであり、無極性ポリマーはポリアンブレトリッド又はポリペンタデカラクトンであり、極性ポリマーはポリカプロラクトン又はポリラクチドである。
【0264】
ポリマー側鎖を加えるための求核置換
工程B)の間に、ポリオレフィン主鎖にポリマー側鎖を付加するために、求核置換反応が行われうる。
【0265】
工程A)の結果、一又は複数の金属鎮静化された短い官能化側鎖分枝を有するポリオレフィンが得られる。これらの金属鎮静化された短い官能化側鎖分枝は、求核置換反応の実施に用いられうる。
【0266】
本発明の文脈において、求核置換反応は、求核剤と、工程A)で得られた一又は複数の金属鎮静化された短い官能化側鎖分枝を有するポリオレフィンに工程B)の間に付加されたポリマー中に存在するカルボニル基含有官能基との反応を説明する。
【0267】
ポリマー側鎖に付加するためのROPと求核置換との組合せ
本方法の工程B)の間に、ポリマー側鎖は、例えばラクトンなどの環状モノマーのROPと、例えばエステル交換反応などの求核置換との組合せによって形成されうる。
【0268】
工程B)の間に付加されてグラフト共重合体をもたらす少なくとも1つのカルボニル基含有官能基を含むポリマーは、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ランダム又はブロックポリ(カーボネート−エステル)、ポリ(カーボネート−エーテル)、ポリ(エステル−エーテル)、ポリ(カーボネート−エーテル−エステル)、ポリ(エステル−アミド)、ポリ(エステル−エーテル−アミド)、ポリ(カーボネート−アミド)、ポリ(カーボネート−エーテル−アミド)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリ(エステル−エーテル−ウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(カーボネート−エーテル−ウレタン)、ポリ(エステル−尿素)、ポリ(エステル−エーテル−尿素)、ポリ(カーボネート−尿素)、ポリ(カーボネート−エーテル−尿素)、ポリ(エーテル−アミド)、ポリ(アミド−ウレタン)、ポリ(アミド−尿素)、ポリ(ウレタン−尿素)又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択されうる。
【0269】
ある実施形態では、側鎖用に事前合成されたポリマーの他に、環状モノマーも添加されてROPと求核置換反応との組合せをもたらし、例えば、最終的な「ポリオレフィン−g−極性ポリマー」又は「ポリオレフィン−g−ポリエチレン様ポリマー」グラフト共重合体を生じる。このアプローチは、グラフト共重合体の物理的及び機械的特性を調整するための汎用的な方法を提供する。
【0270】
ある実施形態では、求核置換反応の場合、工程B)の間に共触媒が存在する。さらに好ましくは、Cr−又はCo系の触媒の使用の場合には、COと組み合わせたエポキシド及び/又はアジリジンの使用、又は、環状無水物と組み合わせたエポキシド及び/又はアジリジンの使用、又は、CO及び環状無水物と組み合わせたエポキシド及び/又はアジリジンの使用である。使用に適した共触媒の例としては、N−メチル−イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド)ビス(トリフェニル−ホスホラニリデン)アンモニウムアジド)、triシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン及び1,5,7−トリアザビシクロドデセンがある。
【0271】
本方法の主な利点は、工程A)で得られた金属鎮静化された官能化短鎖分枝は工程B)で用いられる反応性の置換基であることから、工程B)のための追加的な触媒を加える必要がないことである。しかしながら、ROP、エステル交換反応又は求核置換反応のための追加的な触媒を加えることも可能である。触媒の特定の例としては、とりわけ、無機酸;有機酸;有機塩基;スズ、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ビスマス、アンチモン、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛のヒドロカルビル、オキシド、塩化物、カルボキシレート、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、サレン複合体、β−ケチミナート複合体、グアニジナト複合体などの金属化合物;及び、リパーゼ酵素が挙げられる。適切な触媒の例は、J. Otera and J. Nishikido, Esterification, p. 52-99, Wiley 2010;J. Otera Chem. Rev. 1993, 93, 1449;H. Kricheldorf Chem. Rev. 2009, 109, 5579;D.-W. Lee, Y.-M. Park, K.-Y. Lee Catal. Surv. Asia 2009, 13, 63;A. B. Ferreira, A. L. Cardoso, M. J. da Silva International Schilarity research Network, 2012, doi:10.5402/2012/142857;Z. Helwani, M. R. Othman, \N. Aziz, J. Kim, W. J. N. Fernando Appl. Catal. A:Gen. 2009, 363, 1;N. E. Kamber, W. Jeong, R. M. Waymouth, R. C. Pratt, B. G. G. Lohmeijer, J. L. Hedrick, Chem. Rev., 2007, 107, 5813;D. Bourissou, S. Moebs-Sanchez, B. Martin-Vaca, C. R. Chimie, 2007, 10, 775に報告されている通りである。
【0272】
本発明に従ったROP又は求核置換のための触媒としての有機酸の例としては、塩化水素のジエチルエーテル複合体、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メチルトリフルオロスルホネート、エチルトリフルオロメタン−スルホネート、n−プロピルトリフルオロスルホネート及びi−プロピルトリフルオロスルホネート))、金属(イットリウム、アルミニウム及びビスマス)トリフラートを含む群から選択される酸があり、酸性触媒はまた、強ルイス酸と強ブレンステッド酸とを組み合わせることによって形成される化合物の群からも選択されうる。このような化合物の特定の例は、フルオロスルホン酸とアンチモンペンタフルオリドとの等モルの組合せである。
【0273】
本発明に従ったROP又は求核置換のための触媒としての有機塩基の例としては、以下の通りである。本明細書における塩基は、超強塩基として定義され、ピリジン又はトリエチルアミンなどの一般に用いられるアミンよりも著しく高い塩基度を示す化合物と称される。超強塩基は、大まかには3つのカテゴリ、すなわち有機、有機金属及び無機に分けることができる。有機超強塩基は、アミジン、グアニジン、多環式ポリアミン及びホスファゼンとして特徴付けられる分子を含む。
【0274】
アミジンは、α−炭素に隣接したイミン官能基を有するアミン化合物として分類される:
【化6】
構造的には、これらはカルボン酸エステル類のアミン等価体に相当する。アルキル置換基R51〜R54は、水素及び、直鎖状、分岐鎖状、環状又は芳香族でありうるC1〜C16アルキル置換基から独立して選択される。さらには、これらのアルキル置換基R51〜R54は、不飽和化、ハロゲン化されてよく、又は、ヒドロキシル、エーテル、アミン、シアノ、又はニトロ官能性などの特定の官能性を持っていてもよい。アルキル置換基R51〜R54はまた、環ひずみの増加によってより強い塩基度を生じうる、二環式構造を形成してもよい。環状アミジンの例は、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、3,3,6,9,9−ペンタメチル−2,10−ジアザビシクロ−[4.4.0]デカ−1−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)である。DBUは最も強いアミジン誘導体であると考えられる。
【0275】
グアニジンも、同様にアミンとして分類することができ、これは、α−炭素に隣接した2つのイミン官能基を有する:
【化7】
これらは、オルトエステル類のアミン等価体に相当し、アミン誘導体の中でも最も強いブレンステッド塩基度を示す。グアニジンの塩基度は、水溶液の化学において最も強い塩基であるヒドロキシルイオンのものに近い。アルキル置換基R55〜R59は、水素及び、直鎖状、分岐鎖状、環状又は芳香族でありうるC1〜C16アルキル置換基から独立して選択される。さらには、これらのアルキル置換基R55〜R59は、不飽和化、ハロゲン化されてよく、又は、ヒドロキシル、エーテル、アミン、シアノ、又はニトロ官能性などの特定の官能性を持っていてもよい。アルキル置換基R55〜R59はまた、環ひずみの増加によってより強い塩基度を生じうる、二環式構造を形成してもよい。一般的なグアニジンの例としては、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、N−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチル−グアニジン(TMG)、又はΝ,Ν,Ν’,Ν’,Ν”−ペンタメチルグアニジン(PMG)がグアニジン化合物の例として与えられうる。
【0276】
ホスファゼンは、3つのアミン置換基と1つのイミン置換基の4つの窒素官能性に結合した五価のリン原子を含む、有機超強塩基である。
【化8】
ホスファゼンは、P塩基として分類され、ここで、nは分子中のリン原子の数を意味する。ホスファゼンの塩基度は、分子中のリン原子の量が増えるにつれて増加する。P塩基は、オルガノリチウム化合物に並行した塩基度を有すると考えられる。アルキル置換基R60〜R61は、直鎖状、分岐鎖状、環状又は芳香族でありうるC1〜C16アルキル置換基から独立して選択される。さらには、これらのアルキル置換基は、不飽和化、ハロゲン化されてよく、又は、ヒドロキシル、エーテル、アミン、シアノ、又はニトロ官能性などの特定の官能性を持っていてもよい。アルキル置換基Rは、同一であるか、又はさまざまな組合せの混合物でありうる。本発明に従ったホスファゼンの適切な例は、1−t−ブチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2A,4A−カテナジ(ホスファゼン)(P−t−Bu)及び1−t−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスホラニリデンアミノ]−2A,4A−カテナジ(ホスファゼン)(P−t−Bu)である。
【0277】
本発明に従ったROP又は求核置換のための触媒としての有機金属塩基又は無機塩基の例は、以下の通りである。有機金属又は無機超強塩基は、金属アルキル、金属アルコキシド、及び金属アミドからなり、これらの例を挙げると、ブチルリチウム、カリウムt−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドがある。有機金属超強塩基の混合物もまた、それらの反応性をさらに高めるために用いることができ、このような例として、ブチルリチウムとカリウムt−ブトキシドとの混合物がある。無機超強塩基は、概して金属水素化物など、サイズが小さく、かつ高電荷密度を示す、アニオンを伴う化合物であることが多く、例として挙げると窒化リチウムである。
【0278】
本発明に従ったROP又は求核置換のためのスズ系触媒の例は、以下の通りである。金属触媒として用いられる四価のスズ化合物としては、酸化スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズ・ジ(2−エチルヘキソエート)、ジラウリン酸ジオクチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジ(n−オクチル)スズ、ビス(ジブチルアセトキシスズ)オキシド、ビス(ジブチルラウロキシルオキシ(lauroxyloxy)スズ)オキシド、ジブチルスズ・ジブトキシド、ジブチルスズ・ジメトキシド、ジブチルスズ・ジサリチラート、ジブチルスズ・ビス(マレイン酸イソオクチル)、ジブチルスズ・ビス(マレイン酸イソプロピル)、ジブチル酸化スズ、酢酸トリブチルスズ、コハク酸イソプロピル・トリブチルスズ、リノール酸トリブチルスズ、ニコチン酸トリブチルスズ、ジラウリン酸ジメチルスズ、ジメチル酸化スズ、ジオクチル酸化スズ、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ジフェニル酸化スズ、酢酸トリフェニルスズ、酢酸トリプロピルスズ、ラウリン酸トリプロピルスズ、及びビス(トリプロピルスズ)オキシドがある。適切なスズ含有化合物としては、カルボキシレート基が、エステル類の生産方法に関連して後述される、一塩基酸、脂肪族二塩基酸、三塩基脂肪族酸、一塩基芳香族酸、二塩基芳香族酸又は三塩基芳香族酸に由来する、二価のスズのカルボン酸塩が挙げられる。カルボン酸塩は、このように添加されてよく、あるいは、二価の酸化スズをカルボン酸と反応させることによって「インサイチュ」で形成されてもよい。用いられる二価のスズ化合物としては、酸化スズ、スズ・ビス(2−エチルヘキサノアート)、スズ・ビス(2,6−tBu−4−Me−CO)、シュウ酸スズ、スズジクロリドがある。
【0279】
本発明に従ったROP又は求核置換のためのチタン系触媒の例は、以下の通りである。用いることができるチタン化合物としては、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラアリル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトライソブチル、チタン酸テトラアミル、チタン酸テトラシクロペンチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン酸テトラシクロヘキシル、チタン酸テトラベンジル、チタン酸テトラオクチル、チタン酸テトラ(2−エチル−ヘキシル)、チタン酸テトラノニル、チタン酸テトラデシル、及びチタン酸テトラオレイル、チタン酸テトラフェニル、チタン酸テトラ(o−トリル)及びチタン酸テトラ(m−トリル)、並びにチタン酸テトラ(1−ナフチル)及びチタン酸テトラ(2−ナフチル)が挙げられる。混合チタン酸アルキル化合物としては、チタン酸トリメチルブチル、チタン酸ジメチルジブチル、チタン酸トリエチルブチル、チタン酸メチルイソプロピルジブチル、チタン酸ジエチルジブチル、チタン酸プロピルトリブチル、チタン酸エチルトリシクロヘキシル、チタン酸ジイソプロピルジオクタデシル、及びチタン酸ジブチルジオクタデシルが挙げられよう。
【0280】
本発明に従ったROP、エステル交換反応又は求核置換のためのビスマス系触媒の例は、以下の通りである。ビスマス・トリス(2−エチル−ヘキサノアート)、トリス酢酸ビスマス、ビスマス・トリスヘキサノアート、ビスマス・トリストリフラート、次サリチル酸ビスマス(オルトサリチラートとも呼ばれる)、次炭酸ビスマス、BiCl、BiBr、BiI、Bi、PhBiOEt、PhBiOMe、PhBiOtBu、PhBiOBr、PhBiI、[SCHCHO]Bi[SCHCHOH]、B(OEt)、ビスマス・アミノトリエタノラート、乳酸ビスマス、硝酸ビスマス、硝酸ビスムチル、炭酸ビスマス、炭酸ビスムチル、水酸化ビスムチル、ビスマスのオルト水酸化物(Bi(OH))。
【0281】
本発明に従ったROP、エステル交換反応又は求核置換のための触媒としての使用のための有機金属/金属配位複合体の例は、以下の通りである。金属ハライド、トリフラート、ヒドロカルビル、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、カルボキシレート、アセチルアセトネート複合体又は、これらの置換基と、Li、Na、K、Mg、Ca、Sc、Y、ランタニド類、Ti、Zr、Zn、Al、Ga、Bi及びSnとの組合せからなる複合体の他にも、別個の及び明確に定められた有機金属及び金属配位複合体が、さまざまな種類の環状エステル又は環状カーボネートのROPのための金属触媒、及びカルボン酸エステル類又は炭酸エステル類を含む、ポリマーのエステル交換反応のための金属触媒として適用されている例としては、Mg、Ca、Sc、Y、ランタニド類、Ti、Zr、Zn、Al、Ga、Bi及びSnの、サレン、サラン、サラレン、グアニジナート、ポルフィリン、β−ケチミナート、フェノキシ−イミン、フェノキシ−アミン、ビスフェノラート、トリスフェノラート、アルコキシアミン、アルコキシエーテル及びアルコキシチオエーテル複合体がある。
【0282】
最近、幾つかの明確に定められた金属開始剤が、LAのさまざまな異性体、すなわちrac−、L−、D−及びメソ−LAの制御されたリビングROPについて開発されており、例えば、O’Keefeらに開示されている(B. J. O’Keefe, M. A. Hillmyer, W. B. Tolman, J. Chem. Soc., Dalton Trans., 2001, 2215-2224)、又はLouら(Lou, C. Detrembleur, R. Jerome, Macromol. Rapid. Commun., 2003, 24, 161-172)、又はNakanoら(K. Nakano, N. Kosaka, T. Hiyama, K. Nozaki, J. Chem. Soc., Dalton Trans., 2003, 4039-4050)、又はDechy−Cabaretら(O. Dechy-Cabaret, B. Martin-Vaca, D. Bourissou, Chem. Rev., 2004, 104, 6147-6176)、又はWuら(Wu, T.-L Yu, C.-T. Chen, C.-C. Lin, Coord. Chem. Rev., 2006, 250, 602-626)、又はAmgouneら(Amgoune, C. M. Thomas, J.-F. Carpentier, Pure Appl. Chem. 2007, 79, 2013-2030)。それらは、ほぼ、以下のものをベースとしている:非毒性の亜鉛(M. Cheng, A. B. Attygalle, E. B. Lobkovsky, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 11583-11584; B. M. Chamberlain, M. Cheng, D. R. Moore, T. M. Ovitt, E. B. Lobkovsky, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 3229-3238; C. K. Williams, L. E. Breyfogle, S. K. Choi, W. Nam, V. G. Young Jr., M. A. Hillmyer, W. B. Tolman, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 11350-11359; G. Labourdette, D. J. Lee, B. O. Patrick, M. B. Ezhova, P. Mehrkhodavandi, Organometallics, 2009, 28, 1309-1319; Z. Zheng, G. Zhao, R. Fablet, M. Bouyahyi, C. M. Thomas, T. Roisnel, O. Casagrande Jr., J.-F. Carpentier, New J. Chem., 2008, 32, 2279-2291)、アルミニウム(N. Spassky, M. Wisniewski, C. Pluta, A. LeBorgne, Macromol. Chem. Phys., 1996, 197, 2627-2637; T. M. Ovitt, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 4072-4073; M. Ovitt, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 1316-1326; N. Nomura, R. Ishii, Y. Yamamoto, T. Kondo, Chem. Eur. J., 2007, 13, 4433-4451; H. Zhu, E. Y.-X. Chen, Organometallics, 2007, 26, 5395-5405)、非毒性のビスマス(H. Kricheldorf Chem. Rev. 2009, 109, 5579)又は、第3族金属及びランタニド類(C.-X. Cai, A. Amgoune, C. W. Lehmann, J.-F. Carpentier, Chem. Commun., 2004, 330-331; A. Amgoune, C. M. Thomas, T. Roisnel, J.-F. Carpentier, Chem. Eur. J., 2006, 12, 169-179; A. Amgoune, C. M. Thomas, S. Ilinca, T. Roisnel, J.-F. Carpentier, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 2782-2784)。
【0283】
工程B)で用いられる追加的な触媒の量は、環状エステルに基づいて、又は工程B)の間に加えられるポリマーのカルボニル官能基の数に基づいて、例えば、0.0001〜0.5質量%、好ましくは0.001〜0.1質量%の範囲から選択される。
【0284】
工程B)の終了後に、グラフト−共重合体が得られる。ある実施形態では、反応混合物は、クエンチ剤、好ましくはプロトン性の極性試薬、さらに好ましくはアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールを使用してクエンチ処理される。しかしながら、水を使用することもできる。このクエンチ処理の後に得られる生成物は、工程A)で得られたポリオレフィン、及び/又は、ポリオレフィン主鎖に結合していない、工程B)におけるROP又は求核置換反応から得られたポリマーも含みうる、粗生成物である。しかしながら、大抵の用途では、粗生成物は、さらに精製されずに、そのまま使用されうる。
【0285】
工程B)におけるROP又は求核置換反応から得られたポリマーを生成物から取り除かなければならない場合、この粗生成物は、例えば、ワークアップの追加の工程に供されうる。このワークアップ工程は、沈降を含みうる。例えば、沈降は、THFなどの溶媒、又はクロロホルムなどの他の有機溶媒中で行われる。これは、側鎖のためのポリマーが極性の場合には、形成された極性ホモポリマーが、グラフト共重合体を離れ、場合によってはオレフィンのホモポリマーを離れて、粗生成物の外へと抽出されることから、抽出と呼ぶこともできる。
【0286】
当業者は、1つ以上の溶媒を用いる、例えば1つ以上の沈降及び/又は抽出工程を使用して、共重合体生成物を精製するために必要な工程を決定することができよう。生成物は使用前に乾燥させてもよい。
【0287】
さらなる実施形態
本発明は、グラフト共重合体の調製のための2段階プロセスに関する。
【0288】
本発明に従った方法を使用して、グラフト共重合体を得ることができる。ある実施形態では、グラフト共重合体は、例えば500〜1,000,000g/mol、好ましくは1,000〜200,000g/molの範囲の数平均分子量(M)を有する。
【0289】
本発明の工程B)の後に得られるポリオレフィン系グラフト共重合体は、好ましくは、1.1〜10.0、さらに好ましくは1.1〜5.0、さらに好ましくは1.1〜4.0、さらに一層好ましくは1.5〜3の多分散指数(D)を有する。
【0290】
ポリオレフィン主鎖は、直鎖状又は分岐鎖状(長鎖分岐状及び短鎖分岐状の両方)、アタクチック、アイソタクチック又はシンジオタクチックであってよく、好ましくは、ポリ−α−オレフィンの場合にはアイソタクチックポリオレフィンであり、該アイソタクチックポリオレフィンは、好ましくはアイソタクチックポリプロピレンである。
【0291】
本発明の特定の非限定的な実施形態によれば、ポリオレフィン主鎖は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、アタクチック、アイソタクチック又はシンジオタクチックPP(それぞれ、aPP、iPP、sPP)、ポリ−4−メチル−1−ペンテン(P4M1P)又はアタクチック、アイソタクチック又はシンジオタクチックポリスチレン(それぞれ、aPS、iPS、sPS)でありうる。
【0292】
本発明に従ったグラフト共重合体は、10%〜90%、好ましくは30%〜70%のポリオレフィンの質量分率(mfPol)を有しうる。質量分率mfPolは、ポリオレフィンの質量をブロック共重合体の全質量で割った商によって定められる。
【0293】
本発明に従ったグラフト共重合体は、90%〜10%、好ましくは70%〜30%の側鎖のポリマーの体積分率(vfPol)を有しうる。体積分率vfPolは、側鎖のポリマーの体積を共重合体の全体積で割った商によって定められる。
【0294】
本方法を使用して調製されうる、ポリオレフィン主鎖と極性ポリマー側鎖とを有するポリマーの例としては、HDPE−g−PCL、HDPE−g−PLA、HDPE−g−PBA、HDPE−g−PBS、HDPE−g−PEB、HDPE−g−ポリ(CL−co−PDL)、HDPE−g−ポリ(BA−co−EB)、HDPE−g−ポリ(BA−co−PDL)、LLDPE−g−PCL、LLDPE−g−PLA、LLDPE−g−PBA、LLDPE−g−PBS、LLDPE−g−PEB、LLDPE−g−ポリ(BA−co−EB)、LLDPE−g−ポリ(CL−co−PDL)、LLDPE−g−ポリ(BA−co−PDL)、EP−g−PCL、EP−g−PLA、EP−g−PBA、EP−g−PBS、EP−g−PEB、EP−g−ポリ(BA−co−EB)、EP−g−ポリ(CL−co−PDL)、EP−g−ポリ(BA−co−PDL)、aPP−g−PCL、iPP−g−PLA、aPP−g−PBA、aPP−g−PBS、aPP−g−PEB、aPP−g−ポリ(BA−co−EB)、aPP−g−ポリ(CL−co−PDL)、aPP−g−ポリ(BA−co−PDL)、iPP−g−PCL、iPP−g−PLA、iPP−g−PBA、iPP−g−PBS、iPP−g−PEB、iPP−g−ポリ(BA−co−EB)、iPP−g−ポリ(CL−co−PDL)、iPP−g−ポリ(BA−co−PDL)、sPP−g−PCL、sPP−g−PLA、sPP−g−PBA、sPP−g−PBS、sPP−g−PEB、sPP−g−ポリ(BA−co−EB)、sPP−g−ポリ(CL−co−PDL)、sPP−g−ポリ(BA−co−PDL)、iP4M1P−g−PCL、iP4M1P−g−PBA、iP4M1P−g−PBS、iP4M1P−g−PEB、iP4M1P−g−ポリ(BA−co−EB)、iP4M1P−g−ポリ(CL−co−PDL)、iP4M1P−g−ポリ(BA−co−PDL)、aPS−g−PCL、aPS−g−PBA、aPS−g−PBS、aPS−g−PEB、aPS−g−ポリ(BA−co−EB)、aPS−g−ポリ(CL−co−PDL)、aPS−g−ポリ(BA−co−PDL)、iPS−g−PCL、iPS−g−PBA、iPS−g−PBS、iPS−g−PEB、iPS−g−ポリ(BA−co−EB)、iPS−g−ポリ(CL−co−PDL)、iPS−g−ポリ(BA−co−PDL)、sPS−g−PCL、sPS−g−PBA、sPS−g−PBS、sPS−g−PEBL、sPS−g−ポリ(BA−co−EB)、sPS−g−ポリ(CL−co−PDL)、sPS−g−ポリ(BA−co−PDL)及び多くの他のポリマーがある。
【0295】
本方法を使用して調製されうる、ポリオレフィン主鎖とポリエチレン様ポリマー側鎖とを有するポリマーの例としては、HDPE−g−PPDL、HDPE−g−PAmb、HDPE−g−ポリ(PDL−co−Amb)、LLDPE−g−PPDL、LLDPE−g−PAmb、LLDPE−g−ポリ(PDL−co−Amb)、EP−g−PPDL、EP−g−PAmb、EP−g−ポリ(PDL−co−Amb)、aPP−g−PPDL、aPP−g−PAmb、aPP−g−ポリ(PDL−co−Amb)、iPP−g−PPDL、iPP−g−PAmb、iPP−g−ポリ(PDL−co−Amb)、sPP−g−PPDL、sPP−g−PAmb、sPP−g−ポリ(PDL−co−Amb)、iP4M1P−g−PPDL、iP4M1P−g−PAmb、iP4M1P−g−ポリ(PDL−co−Amb)、aPS−g−PPDL、aPS−g−PAmb、aPS−g−ポリ(PDL−co−Amb)、iPS−g−PPDL、iPS−g−PAmb、iPS−g−ポリ(PDL−co−Amb)、sPS−g−PPDL、sPS−g−PAmb、sPS−g−ポリ(PDL−co−Amb)がある。
【0296】
本方法を使用して調製されうる、ポリオレフィン主鎖とポリエチレン様及び極性の側鎖とを有するポリマーの例としては、HDPE−g−PPDL−g−PCL、HDPE−g−PAmb−g−PCL、HDPE−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、LLDPE−g−PPDL−g−PCL、LLDPE−g−PAmb−g−PCL、LLDPE−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、EP−g−PPDL−g−PCL、EP−g−PAmb−g−PCL、EP−g−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、aPP−g−PPDL−g−PCL、aPP−g−PAmb−g−PCL、aPP−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、iPP−g−PPDL−g−PCL、iPP−g−PAmb−g−PCL、iPP−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、sPP−g−PPDL−g−PCL、sPP−g−PAmb−g−PCL、sPP−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、iP4M1P−g−PPDL−g−PCL、iP4M1P−g−PAMb−g−PCL、iP4M1P−g−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、aPS−g−PPDL−g−PCL、aPS−g−PAmb−g−PCL、aPS−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、iPS−g−PPDL−g−PCL、iPS−g−PAmb−g−PCL、iPS−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCL、sPS−g−PPDL−g−PCL、sPS−g−PAmb−g−PCL、sPS−ポリ(PDL−co−Amb)−g−PCLがある。
【0297】
本発明の特定の非限定的な実施形態によれば、ポリオレフィン主鎖は、HDPE、LLDPE、EP、aPP、iPP、sPP、iP4M1P、aPS、iPS又はsPSでありうる。
【0298】
本発明に従って調製された共重合体は、例えば、極性を導入して、ポリオレフィンと極性ポリマーとのブレンド又は異なるポリオレフィンとPEとのブレンドにおける界面相互作用を促進するために使用されうる。接着性などの特性を改善するために、それらを相容化剤として使用してもよい。それらを、ポリオレフィンフィルムのバリア性、とりわけ酸素に対するバリア性を改善するために使用してもよい。それらは、デンプン若しくは、ガラス又はタルクなどの無機充填材を有するポリオレフィン系複合体のための高極性ポリマーに対する相容化剤として使用されうる。それらを薬物送達デバイス、非孔質材料/膜に使用してもよい。
【0299】
本発明の利点
本発明の利点は、共重合体の合成に向けて必要とされるプロセス工程の数の低減である。本発明に従った方法は、先行技術に従った方法と比べて、より短時間及び省エネルギーにし、かつ、より材料消費を少なくする。
【0300】
本発明の別の利点は、全プロセスの間に、原則として、工程A)における金属触媒又は金属触媒前駆体である、単一の触媒しか必要としないことである。工程A)において官能性コモノマーの官能基を保護するために用いられる金属は、工程B)の間に開始剤及び触媒として作用する。
【0301】
本発明に従った方法は、いわゆるカスケード法、又はカスケード様の方法でありうる。したがって、好ましくは例えば一連の連結されたリアクタ内で、好ましくは連続的に、好ましくは、工程B)は工程A)の直後に行われうる、及び/又は、工程C)は工程B)の直後に行われうる。本発明に従ったこのような方法は、その結果、金属−置換工程なしに、例えば加水分解によって、行われうる。金属−置換工程は、したがって、例えば、金属を除去して反応性の有機官能性を与えるいずれかの工程でありうる。好ましくは、工程A)、B)及びC)は、いわゆるカスケード様の方法で行われる。言い換えれば、本方法は、例えば、金属置換をせずに、例えば加水分解によって、ワークアップをせずに、乾燥をせずに、及び/又は、精製工程なしに、一連のリアクタを使用する、単一のマルチステップ法でありうる。押出機も、本発明の文脈ではリアクタとみなされることに留意されたい。
【0302】
所望のグラフト共重合体を高収率で得ることができ、その結果、例えば中間ワークアップ、濾過、乾燥等の先行技術の方法では必要とされるプロセス工程の数を、かなり減らすことができる。これは本発明の利点である。
【実施例】
【0303】
本発明は、本発明のある特定の実施形態をさらに説明するために用いられるにすぎない、以下の非限定的な例によってさらに例証される。
【0304】
不活性乾燥窒素雰囲気下、標準的なシュレンク又はグローブボックス技術のいずれかを使用して、すべての操作を行った。乾燥した、酸素を含まないトルエンを、すべての重合のための溶媒として用いた。rac−MeSi(Ind)ZrCl(1)及びrac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl(2)を、ドイツ国コンスタンツ所在のMCAT GmbH社から購入した。[CMeCHCHNMe]TiCl(3)を、国際公開第93/19104号に開示されるように調製した。メチルアルミノキサン(MAO、トルエン中、30質量%溶液)をChemtura社から購入した。ジエチル亜鉛(ヘキサン中、1.0M溶液)、トリ(i−ブチル)アルミニウム(ヘキサン中、1.0M溶液)、テトラクロロエタン−d(TCE−d)及びCLをSigma Aldrich社から購入した。10−ウンデセン−1−オール(C11OH)をAldrich社から購入し、不活性雰囲気下、4Åのモレキュラーシーブを用いて乾燥させた。
【0305】
典型的な重合方法
ポリエチレン−グラフト−ポリカプロラクトン共重合体の調製のため、単一バッチリアクタ内で行われる連続的な供給プロセスを適用した。第1の工程A)は、エチレン/C11OH共重合からなり、その後にCLのROPが続く(工程B)。重合反応を、ステンレス鋼Buchiリアクタ内で行った。重合の前に、リアクタを、真空下、40℃で乾燥させ、窒素を流した。トルエン溶媒(70mL)を導入し、続いて、不活性雰囲気下でTIBA及び官能性モノマーを導入した。結果的に得られた溶液を15〜20分間攪拌し、続いて、窒素雰囲気下で計算量の共触媒を添加した。金属触媒前駆体をリアクタに加えることによって、重合反応を開始した。次に、リアクタを、エチレンで所望の圧力まで加圧し、その圧力を所定の時間、維持した。エチレンの供給を停止し、残留圧力を解放した。液体注入管を通じて、計算量のCLモノマーを不活性雰囲気下で加え、懸濁液を、強攪拌(600rpm)下で所定の時間、60℃に維持した。酸性メタノール(10%濃塩酸)中での沈降によって反応を終わらせ、PE−グラフト−PCL共重合体とPCL材料を単離した。
【0306】
分析技術
H NMR解析を、TCE−dを溶媒として使用して80〜110℃で行い、400MHzの周波数で動作する、Varian Mercury分光計の5mmチューブに記録した。化学シフトは、テトラメチルシランに対してppm単位で報告され、残留溶媒を参照して決定された。
【0307】
異種核間多結合相関スペクトル(HMBC)を、磁場勾配パルスを用いて記録した。H及び13C軸についてのスペクトル窓は、それぞれ、6075.3及び21367.4Hzであった。データを2560×210の行列で収集し、1K×1Kの行列で処理した。スペクトルを、収集時間0.211秒、遅延時間1.4秒、及び144×210のインクリメントに等しいスキャン数で記録した。
【0308】
固体状態の13C{H}交差分極マジック角スピニング(CP/MAS)NMR及び13C{H}分極移動による低感度核の感度増大法(INEPT)の実験を、2.5mmの外径を有するロータの二重共鳴H−Xプローブを用いるBruker AVANCE−III 500分光計において行った。これらの実験には、25.0kHzのMAS周波数、H及び13C NMRについての2.5μsのπ/2パルス、2.0ミリ秒のCP接触時間及び取得の間のTPPMデカップリングを使用した。CP条件を、L−アラニンを使用して事前に最適化した。13C{H}INEPTスペクトルを、150Hzの1JCHと仮定して、1/3 JCH又は1/6 JCHのいずれかのJ−展開期で、リフォーカスしたINEPTシーケンスを使用して記録した、すなわち、1/3 JCHのJ−展開時間では、CH及びCH基からの信号は正であるのに対し、CHのものは負である。H−H二重量子/単一量子(DQ−SQ)相関実験及びDQビルドアップ実験を、2.5mmの固体状態のMAS二重共鳴プローブを使用して、Bruker AVANCE−III 700分光計において行った。これらの実験には25.0kHzのスピニング周波数を用いた。DQ励起及び再転換を、広帯域バック・トゥ・バック(BaBa)シークエンスを使用して行った。外部標準として固体アダマンタンを使用して、TMSに対するH及び13CNMRスペクトルの化学シフトを報告した。
【0309】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。g/mol単位の分子量(M及びM)及びDを、高速GPC(Freeslate社、米国サニーベール所在)を使用して160℃で行われた、高温サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。検出:IR4(PolymerChar社、スペイン国バレンシア所在)。カラムセット:3つのPolymer Laboratories 13μm PLgel Olexis、300×7.5mm。1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を溶離液として、1mL・分−1の流量で使用した。TCBを、使用前に新たに蒸留した。分子量及び対応するDを、狭いポリエチレン標準物質(PSS社、ドイツ国マインツ所在)に対するHT SEC解析から算出した。共重合体のHT SECを、連続した3つのPLgel Olexis(300×7.5mm、Polymer Laboratories社)カラムを備えたPolymer Laboratories PLXT−20 Rapid GPC Polymer Analysis System(屈折率検出器および粘度検出器)において、160℃で行った。TCBを溶離液として、1mL・分−1の流量で使用した。分子量(M及びM)を、ポリエチレン標準物質に対して計算した(Polymer Laboratories社)。Polymer Laboratories PL XT−220ロボット試料取り扱いシステム(robotic sample handling system)を、オートサンプラとして使用した。
【0310】
示差走査熱量測定(DSC)。溶融(T)及び結晶化(T)温度、並びに転移のエンタルピーを、TA Instruments社のDSC Q100を使用するDSCによって測定した。10℃・分−1の加熱及び冷却速度で、−60℃から160℃まで測定を行った。2番目の加熱及び冷却曲線から転移を推定した。
【0311】
実施例1及び2
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてエチレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として1を使用して行われた。さらには、TIBA及びMAOが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0312】
実施例3及び4
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてエチレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として2を使用して行われた。さらには、TIBA及びMAOが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0313】
実施例5及び6
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてエチレン、金属触媒前駆体として3を使用して行われた。さらには、TIBA及びMAOが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0314】
実施例7及び8
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてエチレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として1を使用して行われた。さらには、TIBA、MAO及びBHTが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【表1】
a)μmol単位の金属触媒前駆体:rac−MeSi(Ind)ZrCl(1);rac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl(2);Ti:[CMeCHCHNMe]TiCl(3);
b)mmol(M)単位のMAO共触媒;
c)TIBA:C11OH:触媒のモル比;ここで、TIBAは連鎖移動剤として用いられ;C11OHは、コモノマーとして用いられたインサイチュ保護化10−ウンデセン−1−オールである;
d)C2:バール単位のエチレン圧であり、括弧内は分単位の反応時間である;
e)記載される値は、mmol単位の量である。括弧内の値は、分単位の時間である;
f)収量クルードは、グラム単位の酸性メタノール中での沈降後の収量である。これは、所望のグラフト共重合体と1つ以上のホモポリマーとの混合物を含みうる;
g)THF中の収量は、THFに可溶性のPCLホモポリマーを除去するためにTHF中に沈降させた後の収量である;
h)Mは、g/mol単位の数平均分子量であり、括弧内の値は多分散指数である。
【0315】
表1から、以下のことが観察できる。工程A)に幾つかの異なる種類の触媒を用いる本発明に従った方法を使用することにより、グラフトポリマー生成物を得ることができる。
【0316】
実施例9
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてプロピレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として1を使用して行われた。さらには、TIBA及びMAOが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0317】
実施例10
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてプロピレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として1を使用して行われた。さらには、TIBA及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが用いられる。工程B)の間に、環状モノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0318】
実施例11
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてプロピレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として2を使用して行われた。さらには、TIBA及びMAOが用いられる。工程B)の間に、環状エステルモノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【0319】
実施例12
工程A)は、第1の種類のオレフィンモノマーとしてプロピレン、第2の種類のオレフィンモノマーとしてインサイチュ保護化C11OH、金属触媒前駆体として2を使用して行われた。さらには、TIBA及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが用いられる。工程B)の間に、環状エステルモノマーとしてCLを用いてROPプロセスが行われた。
【表2】
a)μmol単位の金属触媒前駆体:rac−MeSi(Ind)ZrCl(1);rac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl(2);
b)mmol(M)単位のMAO共触媒;
c)TIBA:C11OH:触媒のモル比;ここで、TIBAは連鎖移動剤として用いられ;C11OHは、コモノマーとして用いられたインサイチュ保護化10−ウンデセン−1−オールである;
d)C3:バール単位のプロピレン圧力であり、括弧内は分単位の反応時間である;
e)記載される値は、mmol単位の量である。括弧内の値は、分単位の時間である;
f)収量クルードは、グラム単位の酸性メタノール中での沈降後の収量である。これは、所望のグラフト共重合体と1つ以上のホモポリマーとの混合物を含みうる;
g)THF中の収量は、THFに可溶性のPCLホモポリマーを除去するためにTHF中に沈降させた後の収量である;
h)Mは、g/mol単位の数平均分子量であり、括弧内の値は多分散指数である。
【0320】
上記から、以下のことが観察できる。本発明に従った方法を用いて、さまざまなグラフト共重合体を、ポリオレフィン主鎖を調整することによって、かつ、ポリマー側鎖の調製に用いられるモノマーを調整することによって、得ることができる。さらには、幾つかの触媒は、側鎖分枝の調製に用いられうる。
他の実施形態
1.ポリオレフィン主鎖と一又は複数のポリマー側鎖とを含むグラフト共重合体の調製方法において、
A)触媒系を使用して、少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーとを共重合し、一又は複数の金属鎮静化された官能化短鎖分枝を有するポリオレフィン主鎖を得る工程であって、該触媒系が、
i)元素のIUPAC周期表の第3族〜第10族に由来する金属を含む、金属触媒又は金属触媒前駆体と、
ii)必要に応じて共触媒と、
を含む、工程と、
B)前記ポリオレフィン主鎖上に一又は複数のポリマー側鎖を形成する工程であって、触媒的開始剤として、工程A)で得られた前記ポリオレフィン主鎖上の前記金属鎮静化された官能化短鎖分枝を用いて、前記グラフト共重合体を得る、工程と
を含む、方法。
2.前記方法が、好ましくは金属置換をしない、一連のリアクタを使用する単一プロセスであることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
3.グラフト共重合体を得る工程B)が、少なくとも1種類の環状モノマーを使用するROPによって行われることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
4.グラフト共重合体を得る工程B)が、前記側鎖についての少なくとも1種類のポリマーのカルボニル基含有官能基における求核置換反応によって行われることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
5.グラフト共重合体を得る工程B)が、少なくとも1種類の環状モノマーを使用するROPと、少なくとも1種類の第2のポリマーのカルボニル基含有官能基における少なくとも1つの求核置換反応との組合せによって行われることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
6.前記少なくとも1つの第1の種類のオレフィンモノマーが、式I−Aに従った化合物であり、
【化9】
式中、
Cは炭素であり、
1a、R1b、R1c、及びR1dは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択される
ことを特徴とする、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
7.前記少なくとも1つの第2の種類の金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーが、式I−Bに従った化合物であり、
【化10】
式中、
Cは炭素であり、
、R、及びRは、各々独立して、H又は、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群より選択され、
−X−MLは、典型金属鎮静化されたヘテロ原子含有官能基であり、ここで、Xは、ヘテロ原子又はヘテロ原子含有基であり、Mに結合するヘテロ原子は、O、S及びNからなる群より選択され、Rは、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビルである、
ことを特徴とする、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
8.工程B)の間に、ROP、エステル交換反応又は求核置換反応のための追加的な触媒が添加されないことを特徴とする、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
9.工程A)で用いられる前記金属触媒又は金属触媒前駆体が、元素のIUPAC周期表の第3族〜第8族、好ましくは第3族〜第6族、さらに好ましくは第3族〜第4族に由来する金属を含む、及び/又は、工程A)で用いられる前記金属触媒又は金属触媒前駆体が、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Fe、Co、Ni、Pdからなる群より選択される金属、好ましくはTi、Zr又はHfを含むことを特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
10.前記共触媒が、MAO、DMAO、MMAO、SMAO、フッ化アリールボラン、又はフッ化アリールボラートからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
11.式I−Aに従った前記オレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデン−ノルボルネン、及びビニリデン−ノルボルネン、並びにそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
12.工程B)のROPの間に用いられる前記環状モノマーが、ラクトン、ラクチド、例えば、ジ−エステル、トリ−エステル、テトラ−エステル、ペンタ−エステル又はより高次のオリゴエステルなどの環状オリゴエステル、エポキシド、アジリジン、エポキシド及び/又はアジリジンとCOとの組合せ、環状無水物、エポキシド及び/又はアジリジンと環状無水物との組合せ、エポキシド及び/又はアジリジンとCOと環状無水物との組合せ、環状N−カルボキシ無水物、環状カーボネート、ラクタム、及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択される極性モノマーであり、好ましくはラクトンであり、あるいは、工程B)のROPの間に用いられる前記環状モノマーが、少なくとも12原子の環サイズを有する無極性の環状モノマーであり、好ましくは、マクロラクトンなどの環状エステル、環状カーボネート、環状アミド、環状ウレタン、及び環状尿素、又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択され、さらに好ましくはマクロラクトンであることを特徴とする、実施形態3、5及び6から11のいずれかに記載の方法。
13.少なくとも1つのカルボン酸エステル又は炭酸エステル官能基又はカルボニル基含有官能基を含む前記側鎖を形成するために工程B)の間に付加される前記ポリマーが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ランダム又はブロックポリ(カーボネート−エステル)、ポリ(カーボネート−エーテル)、ポリ(エステル−エーテル)、ポリ(カーボネート−エーテル−エステル)、ポリ(エステル−アミド)、ポリ(エステル−エーテル−アミド)、ポリ(カーボネート−アミド)、ポリ(カーボネート−エーテル−アミド)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリ(エステル−エーテル−ウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(カーボネート−エーテル−ウレタン)、ポリ(エステル−尿素)、ポリ(エステル−エーテル−尿素)、ポリ(カーボネート−尿素)、ポリ(カーボネート−エーテル−尿素)、ポリ(エーテル−アミド)、ポリ(アミド−ウレタン)、ポリ(アミド−尿素)、ポリ(ウレタン−尿素)又はそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態4、5及び6から12のいずれかに記載の方法。
14.前記金属鎮静化された官能化オレフィンモノマーを得るために用いられる、鎮静化用金属が、アルミニウム、チタン、亜鉛、ガリウム、マグネシウム、カルシウム及びそれらの1つ以上の組合せからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
15.実施形態1から14のいずれかに記載の方法によって得られた又は得ることができるグラフト共重合体