(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(a)は、実施例の留め具10の側面図であり、
図1(b)は、留め具10の断面図である。
図1(b)に示す留め具10の断面は、本体20の中心を通り、バンド34の長手方向に沿ったものである。
【0010】
留め具10は、取付部材を被取付部材に取り付けるために用いられる。例えば、留め具10は、車体パネルや内装パネルにホースやワイヤハーネスを固定するために使用される。つまり、取付部材としてホースやワイヤハーネスがあり、被取付部材として車体パネルや内装パネルがある。また、取付部材は、飾り部材として留め具10に一体に連結されてよい。
【0011】
図1(b)に示すように、留め具10は、本体20と、本体20の筒状部30に挿入される挿入部材22と、筒状部30に収容された接着液袋24とを備える。留め具10は、挿入部材22を押し込んで接着液袋24を破いて接着液を流出させ、被取付部材の取付面に固着される。
【0012】
本体20は、筒状部30とバンド留め部32とバンド34とを有し、樹脂材により形成される。筒状部30は、詳細は後述するが、接着液袋24を収容し、接着液により被取付部材の取付面に固着される。
【0013】
バンド34は、帯状に形成され、取付部材を囲んで締め付け、バンド留め部32に保持させる。バンド34は、長手方向に沿って形成される多段爪34aを有する。バンド34は、バンド留め部32から延出する。
【0014】
バンド留め部32は、筒状部30の外側面に連設され、矩形断面の筒状に形成される。バンド留め部32は、バンド34を支持し、挿入されたバンド34を係止する。バンド留め部32は、バンド34が挿通される挿通孔40と、挿通孔40内に撓み可能に形成される係止爪42とを有する。係止爪42は、バンド34の多段爪34aに係止してバンド34の抜け止めとして機能する。
【0015】
挿入部材22は、筒状部30に一部を挿入した状態で保持され、筒状部30内をスライド可能である。接着液袋24は、筒状部30の内部に配置され、接着液を内包する。挿入部材22は、接着液袋24を押圧等により破って接着液を流出させる。挿入部材22の先端部分は、筒状部30の内周面の形状に応じて略立方形に形成され、接着液袋24を押圧するとともに、流れ出た接着液を外部に押し出す。
【0016】
図2(a)は、本体20の平面図であり、
図2(b)は、本体20の底面図である。筒状部30は、フランジ部36、底部38、保持爪44、ガイド溝部46、第1開口部48、第2開口部50、孔部52、裏側溝部54および抜け止め爪56を有する。
【0017】
底部38およびフランジ部36の裏面は、
図2(b)に示すように、同一面を構成し、取付面に接着される接着面58として機能する。底部38は板状であり、底部38には、両側を切り欠くように第2開口部50が形成され、中央に孔部52が形成される。フランジ部36は、板状であり、筒状部30より外側に張り出す。底部38の外側にフランジ部36が設けられることで、接着面58を拡張でき、筒状部30を小型化しつつ、十分な接着面積を確保できる。
【0018】
接着面58には、裏側溝部54が複数設けられる。裏側溝部54は、第2開口部50からフランジ部36に渡って形成され、接着液を第2開口部50からフランジ部36へ移動させやすくする。また、第2開口部50から底部38に延びる裏側溝部54は、接着液を第2開口部50から底部38へ移動させやすくする。
【0019】
第1開口部48および第2開口部50は、筒状部30の軸方向両端にそれぞれ位置し、第1開口部48は上側で挿入部材22を受け入れ、第2開口部50は、底部38側で接着液の流出口として機能する。第2開口部50は、底部38を部分的に貫通し、底部38の両側に形成される。また、孔部52も、接着液の流出口として機能する。
【0020】
保持爪44は、筒状部30の内壁面59に突出して複数形成される。保持爪44は、
図1(b)に示すように挿入部材22を保持し、挿入部材22が底部38側に移動することを抑える。
【0021】
ガイド溝部46は、
図2(b)に示すように筒状部30の内壁面59に凹んで形成される。ガイド溝部46は、挿入部材22の係合爪を摺動可能に受け入れ、挿入部材22の挿入をガイドする。抜け止め爪56は、
図2(a)に示すように、ガイド溝部46内に突出して形成され、保持爪44より上方に位置する。抜け止め爪56は、挿入部材22が第1開口部48から抜けることを抑える。
【0022】
図3は、留め具10の断面図である。
図3に示す留め具10の断面は、
図2(a)に示す本体20の線分A−Aの位置である。
【0023】
挿入部材22は、両側面の先端側に突出して形成された係合爪62を有する。係合爪62が抜け止め爪56に係合し、挿入部材22が第1開口部48から抜ける動きを制限する。筒状部30の保持爪44は、挿入部材22の先端側の縁に当たって挿入部材22が底部38側に移動することを抑えている。なお、保持爪44は下方に傾斜しているため、挿入部材22を押し込むことで挿入部材22は保持爪44を乗り越える。
【0024】
挿入部材22の先端には突部60が形成される。突部60は、底部38側の孔部52に入り込むことができ、接着液袋24を孔部52に押し込んで接着液袋24を破れやすくする。なお、変形例では、突部60の先を鋭く錐状にして、挿入部材22の押し込み時に接着液袋24に刺さって破くように構成してよい。
【0025】
接着液袋24は、接着液70を内包しており、両端にシール部72を有する。接着液袋24は、底部38と挿入部材22の間に収容され、底部38に載置される。挿入部材22と底部38により、接着液袋24が筒状部30から外に出ることを防ぐ。シール部72は、袋を熱溶着で閉じて形成される。底部38は、中央側から第2開口部50に向かって下がるように傾斜面38aを有する。底部38は、傾斜面38aにより中央から第2開口部50に向かって板厚が薄くなる。傾斜面38aにより、接着液袋24から出た接着液70が第2開口部50に向かう。なお、変形例では、傾斜面38aの傾斜に応じて挿入部材22の先端面にも傾斜面を設け、互いに面接触するように構成してもよい。
【0026】
図4は、接着液袋24を収容した本体20を示す平面図である。接着液袋24の両端のシール部72は、一対の第2開口部50に向かってそれぞれ配置される。シール部72が第2開口部50に向かって配置されるとは、接着液袋24の中心からシール部72を通る任意の延長線上に第2開口部50が配置されることをいい、または、接着液袋24の中心からシール部72の中心を通る延長線上に第2開口部50が配置されることをいう。
【0027】
シール部72は、挿入部材22に押圧された際に破れやすい部分であり、シール部72から出た接着液70は、第2開口部50に向かう。このように、接着液袋24のシール部72が、第2開口部50に近接して第2開口部50に向かって配置されることで、接着液70を第2開口部50を通りやすくできる。
【0028】
第2開口部50は、筒状部30内の端に位置し、内壁面59に沿って底部38を貫通するように形成される。つまり、内壁面59は、同一面で裏側へ貫通し、第2開口部50の一辺を画成する。これにより、接着液袋24から出た接着液70が内壁面59に飛散した場合に、内壁面59を伝って第2開口部50から流れ出ることができる。
【0029】
図5は、被取付部材12に固着した状態の留め具10を説明するための図である。ユーザは、取付部材をバンド34で保持させ、本体20を被取付部材12の取付面12aに載置し、挿入部材22を上から底部38に向かって押し込み、数十秒押さえて取付作業を完了する。ユーザが挿入部材22を押さえつけている間に、流れ出た接着液70が固まり、接着面58と取付面12aを固着し、挿入部材22を筒状部30に固着する。
【0030】
挿入部材22が第2開口部50に向かって押し込まれることで、挿入部材22の先端が接着液袋24を押圧して、シール部72を破り、接着液袋24から出た接着液70が第2開口部50を通って接着面58および取付面12aに流れ出る。接着面58側に流れ出た接着液70は裏側溝部54を伝って広がる。突部60が接着液袋24を孔部52に押し込むことで接着液袋24が破れやすくなるように構成できる。また、挿入部材22の先端部分は、筒状部30の内周面とほぼ同じ大きさの押し込み面を有し、接着液袋24から出た接着液70が挿入部材22の先端部分を越えて第1開口部48側に移動しづらくして、第2開口部50へ押し出されるように構成している。接着液70は、第2開口部50から接着面58側に出た後、裏側溝部54を通って広がる。
【0031】
このように、ボルトや取付孔に位置合わせすることなく、取付面12a上で挿入部材22を押し込めば容易に取り付けることができるため、組み立てた車両でユーザの腕のみが入るような場所でも容易に取り付けることができる。また、ボルトや取付孔が不要であるため、製造コストを抑えることができ、取付孔を設けると強度が低下しやすいカーボン繊維のパネルや、電気自動車の薄い車体パネルに有用である。
【0032】
図6は、変形例の留め具100について説明するための図である。変形例の留め具100は、
図3に示す留め具10と比べて、接着液袋124が挿入部材122に保持されており、挿入部材122および筒状部130が一体である点が異なる。
【0033】
薄肉部80は、筒状部130の上端側の内周面から、挿入部材122の下端側の外周面に渡って形成される。薄肉部80は、筒状部130および挿入部材122を一体に連結する。なお筒状部130および挿入部材122を一体に型抜きするため、筒状部130に底部が形成されておらず、第2開口部50は、筒状部130の内周全域を貫いて形成される。
【0034】
接着液袋124は、突部60に嵌合するための中央孔124aを有し、環状に形成される。突部60を接着液袋124の中央孔124aに圧入して、接着液袋124が挿入部材122に保持される。なお、変形例では接着液袋124は、粘着テープ等で挿入部材122に固着されてもよい。
【0035】
ユーザが本体120を被取付部材12に載置して挿入部材122を押し込むと、薄肉部80が破断して、挿入部材122が第2開口部50に向かって移動し、接着液袋124が取付面12aに押しつけられて破れる。接着液70がフランジ部36の裏側の接着面58に流れ出て、固まり、挿入部材122および筒状部130を取付面12aに固着させる。
【0036】
挿入部材122および筒状部130を一体に成形することで、組み立て工程を簡素化できる。また、接着液袋124を挿入部材122に保持させることで、接着液袋124の姿勢を安定させることができる。
【0037】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0038】
実施例では、挿入部材22に突部60を設け、底部38に孔部52を設ける態様を示したが、この態様に限られない。たとえば、挿入部材22に孔部を設け、底部38に孔部に入る突部を設ける態様であってよい。また、底部38に孔部52を設けるものの、挿入部材22に突部60を設けない態様であってもよい。
【0039】
実施例では、筒状部30内に1つの接着液袋24を収容する態様を示したが、この態様に限られず、接着液袋24を複数収容してもよい。複数の接着液袋24は、連結されていてよく、接着液70が複数の液室に分かれている態様であってよい。たとえば
図4に示す接着液袋24の中央部分に熱溶着によるシール部を設けて、接着液70を左右の液室に分ける。1つの接着液袋24であれば、両端のシール部72のうち一方しか破れないことがあるが、複数の接着液袋24であれば、それぞれの接着液袋24が破れて接着液70をより均等に接着面58に流れ出させることが可能となる。
【0040】
実施例では、平らな取付面12aに留め具10を固着する態様を示したが、この態様に限られない。たとえば、取付面12aが湾曲状であったり、段状であってよい。その場合、接着面58は、取付面12aの形状に応じて湾曲状や、段状に形成される。いずれにしても、取付面12aと接着面58が接する接着面積が十分に確保されていれば、取付面12aの形状によらず、留め具10を固着させることができる。