【実施例1】
【0010】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係る水上フェンスAは、水上の保全対象の周りを平面視して取り囲むように設置して保全領域Bを形成するための構造体である。
本発明において「保全対象」とは、周囲の物や者からの保全が要求されるあらゆるものが含まれる。
また、本発明において「保全領域B」とは、前記保全対象の保全が確保される程度の範囲で前記保全対象の周囲を区画してなる領域が含まれる。
本実施例では、保全対象を、既に投錨してある船舶XのアンカーYを想定しており、保全領域Bを、前記アンカーYに絡みついてアンカーYの収納を遮る恐れのある漂流物などの物体や、前記アンカーYを介して船舶Xへの侵入を試みる動物など、がアンカーYに接近することの無いよう、アンカーYの周囲を一定範囲区画した領域を想定している。
本発明に係る水上フェンスAは、防護壁10、拘束材20、および位置決め材30、を少なくとも具備して構成する。
以下、各要素の詳細について説明する。
【0011】
<2>防護壁(
図1)
防護壁10は、前記保全対象の周囲に形成される保全領域Bを区画するように、水上に露出して壁を形成する構造物である。
防護壁10の高さや深さは、保全対象の種類や、保全対象に影響を及ぼしうる想定要因(物または者)によって適宜決定することができる。
例えば、保全領域Bへの者の侵入を防ぎたい場合には、防護壁10の水上からの高さを2m以上に設定するなどしてもよい。
【0012】
<2.1>浮力体(
図1)
本実施例では、上下方向を長手方向とする長尺状の浮力体11を複数並べて配置することで、防護壁10を構成している。
浮力体11は、後述する拘束材20や、別途浮力体11に設けてある連結具などを用いて互いに連結しておくことができる。
また、浮力体11は、発泡スチロールなどの低比重の素材を用いて構成することができる。
さらに、浮力体11の表面には、外部要因の影響で浮力体11が破損したり、周囲の船舶Xなどと接触して船舶X側を破損させたりすることがないよう、ポリウレアなどの保護用塗料を塗布してコーティングしてもよい。
【0013】
<2.2>浮力体の形状例(
図2)
本発明において浮力体11の形状は特段限定しない。
図2に、浮力体11の形状例を示す。
図2(a)に示す浮力体11は、円柱を略中央で切断した半円柱形状を呈している。
図2(b)に示す浮力体11は、円柱の底部を円形状のまま残しつつ、円柱の両側面を除去して略平板形状を呈している。
図2(c)に示す浮力体11は、側面視三角形状を呈し、外側にスロープ111を形成した形状を呈している。
図2(d)に示す浮力体11は、四角柱の底部を残しつつ、外側に逆スロープ112を形成するように切断した形状を呈している。本例のように逆スロープ112を設けておくと、防護壁10が保全領域Bに対する者の侵入を防止することを目的とした場合などに効果的である。
【0014】
<2.3>オイルフェンスとしての兼用
さらに、本発明では、浮力体11の外表面に油の吸収が可能な素材などを巻き付けておいてもよい(図示せず)。
当該構成によれば、本発明に係る水上フェンスAをオイルフェンスとしても使用することもできる。
【0015】
<3>拘束材(
図1,
図3)
拘束材20は、連結した複数の浮力体11を拘束することにより、防護壁10の平面形状の保持性を向上させるための部材である。
拘束材20は、紐状、帯状などの長尺部材を用いることができる。
図3に、拘束材20の構成例を示す。
図3(a)では、拘束材20を、各浮力体11の外面に設けたループ12に挿通するベルト部材で構成しており、このベルト部材を緊張して長さ調整することで前記防護壁10の周方向に緊張力を導入する。この緊張力により各浮力体11は保全領域の中央側に引き寄せられて、防護体の平面形状が略円形状を保持するように拘束される。
図3(b)では、拘束材20を、各浮力体11の側面方向に貫通形成した貫通孔13に挿通するベルト部材で構成している。ベルト部材を用いた緊張力により防護体の平面形状を保持する点は前記した
図3(a)と同様である。
【0016】
また、拘束材20の一部に弾性部を設けておくと、拘束材20でもって防護壁10の周方向に緊張力を導入した際に、当該弾性部の復元力を利用して、防護壁10の平面形状の保持性をさらに向上させることもできる。
【0017】
<4>位置決め材(
図1,
図4)
位置決め材30は、保全領域Bの中で保全対象を所定の位置に留め置くための部材である。
位置決め材30は、防護壁10で囲まれる保全領域Bに架設可能な構成であれば良く、棒材、紐材、帯材などを用いることができる。
拘束材20の構成例および使用方法について
図1,4を参照しながら説明する。
【0018】
<4.1>位置決め例1(
図1)(長尺材による保持空間の形成)
図1では、位置決め材30を、前記防護壁10の内側で平面視して互いに交差するように、浮力体11間または拘束材20間に取り付ける、三本の長尺材31で構成している。
長尺材31で囲まれた略三角形状の空間に保全対象(
図1ではアンカーYに相当。)が位置するように各長尺材31を取り付けることで、保全対象を、保全領域Bの略中央の位置に留め置くことができる。
【0019】
<4.2>位置決め例2(
図4)(リング材による保持空間の形成)
図4では、平面方向に開閉可能なゲート321を設けたリング材32と、リング材32から平面視放射方向に延伸して浮力体11または拘束材20に取り付け可能な横材33とで、位置決め材30を構成している。
リング材32が保全領域Bの略中央に位置するように横材33の長さを調整し、リング材32のゲート321を開いて保全対象をリング材32の中に導入することで、保全対象を、保全領域Bの略中央の位置に留め置く保持空間Cとしている。
【0020】
<5>構築方法の手順例(
図5)
次に、
図5を参照しながら、本発明に係る水上フェンスAの構築方法の一例について説明する。
なお、後述する各作業は、矛盾のない範囲で適宜順番を入れ換えたり、並行実施したりすることができる。
【0021】
<5.1>水上フェンスの曳航(
図5(a))
まず、保全対象である、船舶Xから投錨されたアンカーYの投錨点Y1まで、作業員Z1が乗船している小型の作業船Zなどで水上フェンスAを船上運搬または曳航する。
このとき、水上フェンスAは、浮力体11を展開した状態で運搬または曳航しても良いし、浮力体11を仮組みした状態で曳航してもよい。
後者の場合には所定位置に到着した後に、防護壁10を構成する浮力体11の連結の一部を解いてから後述する保全領域の構築作業に進めば良い。
【0022】
<5.2>防護壁による保全領域の構築(
図5(b))
所定位置に到着した後には、作業員Z1が投錨点Y1を取り囲むように浮力体11を組み立てて、保全領域Bを区画する防護壁10を構築する。このとき、拘束材20を軽く緊張して防護壁10の形状を整えてもよい。
【0023】
<5.3>保全対象の位置決め作業(
図5(c))
隣りあう浮力体11間の隙間から、長尺材31を差しこみ、差し込んだ長尺材31の先端を、長尺材31の差込先の対向側にある浮力体11間の隙間に露出している拘束材20に係留する。
この長尺材31の差込作業を異なる方向から少なくとも三回行い、各長尺材31で囲まれた空間に保全対象(投錨点Y1)が留め置かれるようにする。
【0024】
<5.4>最終の形状調整(図示せず)
最後に、拘束材20や長尺材31の長さ調整を行って、投錨点Y1が防護壁10の略中央に位置するように防護壁10の形状を整えて、水上フェンスAの構築を完了する。
【0025】
<6>機能・作用
このように、本発明に係る水上フェンスAによれば、浮力体11が保全対象周辺への侵入を防ぐ壁材としても機能するため、簡便かつ安価に所定の場所に防護壁10を構築することができる。また、船舶Xから投錨したアンカーYのように、保全対象が既に水面を挟んで上下に連続する物体である場合にも、その周囲に水上フェンスAを後付けで設置することができる。