(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさである、請求項4記載の画像投影装置。
前記光源は波長の異なる複数のレーザ光を出射し、前記第1光収束部又は前記第2光収束部における前記硝材の屈折特性による非点収差は前記回折面の回折特性で補正される、請求項10記載の画像投影装置。
前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさである、請求項10から15のいずれか一項記載の画像投影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの眼の前方に配置された投影ミラーで走査光を反射させ、ユーザの眼の瞳孔近傍で走査光を収束させた後に網膜に照射する画像投影装置が知られている。しかしながら、このような画像投影装置では、投影される画像に歪みが生じたりするなど、良好な画像を投影する点で改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、良好な画像を投影することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、レーザ光を出射する光源と、入力された画像データに基づいて画像光線を生成して、前記光源からの前記画像光線の出射を制御する制御部と、前記光源から出射された前記画像光線を走査して走査光とする走査部と、前記ユーザの眼の前方に配置され、前記走査光を前記ユーザの眼の瞳孔近傍の第1収束点で収束させた後に前記網膜に照射して前記網膜に前記画像を投影する第1光収束部と、前記走査部で走査された前記走査光を前記第1光収束部の手前の第2収束点で収束させた後に前記第1光収束部に照射する第2光収束部と、を備え、前記走査部による前記走査光の走査角度と前記走査光が前記第1収束点に収束する収束角度とは略同じ大きさであ
り、前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさであり、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長は前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長よりも短く、前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長は前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長よりも短い、画像投影装置である。
【0010】
本発明は、ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、レーザ光を出射する光源と、入力された画像データに基づいて画像光線を生成して、前記光源からの前記画像光線の出射を制御する制御部と、前記光源から出射された前記画像光線を走査して走査光とする走査部と、前記ユーザの眼の前方に配置され、前記走査光を前記ユーザの眼の瞳孔近傍の第1収束点で収束させた後に前記網膜に照射して前記網膜に前記画像を投影する第1光収束部と、前記走査部で走査された前記走査光を前記第1光収束部の手前の第2収束点で収束させた後に前記第1光収束部に照射する第2光収束部と、を備え、前記走査部による前記走査光の走査角度と前記走査光が前記第1収束点に収束する収束角度とは略同じ大きさであり、前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさであり、前記第2光収束部の焦点距離は、前記第1光収束部の焦点距離よりも短い、画像投影装置である。
【0011】
上記構成において、
前記第1光収束部と前記第2光収束部は、前記走査光を反射するミラーであり、前記画像光線は、前記第1光収束部での屈曲角と前記第2光収束部での屈曲角とが略同じ大きさである構成とすることができる。
【0012】
本発明は、ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、レーザ光を出射する光源と、入力された画像データに基づいて画像光線を生成して、前記光源からの前記画像光線の出射を制御する制御部と、前記光源から出射された前記画像光線を走査して走査光とする走査部と、前記ユーザの眼の前方に配置され、前記走査光を前記ユーザの眼の瞳孔近傍の第1収束点で収束させた後に前記網膜に照射して前記網膜に前記画像を投影する第1光収束部と、前記走査部で走査された前記走査光を前記第1光収束部の手前の第2収束点で収束させた後に前記第1光収束部に照射する第2光収束部と、前記第2収束点に配置され、前記画像光線を収束光とする光学特性を有するレンズと、を備え、前記画像光線は、前記レンズによって前記第1光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第1光収束部に入射する、画像投影装置である。
【0013】
上記構成において、
前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記画像光線を前記第2光収束部に拡散光で入射させるための
光学部材を備える構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記
光学部材は、前記画像光線を収束光とする光学特性を有し、前記画像光線は、前記
光学部材によって前記第2光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第2光収束部に入射する構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記
光学部材は、前記光源と前記走査部との間の前記画像光線の光路に設けられ、前記画像光線を収束光で前記走査部に入射させ、前記画像光線は、前記走査部から収束光で出射して前記第2光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第2光収束部に入射し、前記第2光収束部から拡散光で出射して前記
レンズによって前記第1光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第1光収束部に入射し、前記第1光収束部から略平行光で出射する構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記光源は前記走査部と正対した位置に配置され、前記第2光収束部はハーフミラーを含み、前記ハーフミラーは前記光源から出射された前記レーザ光を透過させる構成とすることができる。
【0018】
本発明は、ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、レーザ光を出射する光源と、入力された画像データに基づいて画像光線を生成して、前記光源からの前記画像光線の出射を制御する制御部と、前記光源から出射された前記画像光線を走査して走査光とする走査部と、前記ユーザの眼の前方に配置され、前記走査光を前記ユーザの眼の瞳孔近傍の第1収束点で収束させた後に前記網膜に照射して前記網膜に前記画像を投影する第1光収束部と、前記走査部で走査された前記走査光を前記第1光収束部の手前の第2収束点で収束させた後に前記第1光収束部に照射する第2光収束部と、を備え、前記第1光収束部及び前記第2光収束部は硝材と回折面と曲面ミラーとを備え、前記走査光は前記回折面の位置で屈折するとともに回折して前記曲面ミラーで反射する、画像投影装置である。
【0019】
上記構成において、前記光源は波長の異なる複数のレーザ光を出射し、前記第1光収束部又は前記第2光収束部における前記硝材の屈折特性による非点収差は前記回折面の回折特性で補正される構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記画像光線を前記第1光収束部に拡散光で入射させるための第
1光学部材を前記第2収束点に備え、前記第
1光学部材は、前記画像光線を収束光とする光学特性を有し、前記画像光線は、前記第
1光学部材によって前記第1光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第1光収束部に入射する構成とすることができる。
【0021】
上記構成において、前記第
1光学部材は、表面に回折面を有する構成とすることができる。
【0022】
上記構成において、前記画像光線を前記第2光収束部に拡散光で入射させるための第
2光学部材を備え、前記第
2光学部材は、前記画像光線を収束光とする光学特性を有し、前記画像光線は、前記第
2光学部材によって前記第2光収束部の手前で集光した後に拡散光となって前記第2光収束部に入射する構成とすることができる。
【0023】
上記構成において、前記第
2光学部材は、表面に回折面を有する構成とすることができる。
【0024】
上記構成において、前記画像光線は、前記走査部と前記第2光収束部の間の光路長に対する前記第2光収束部と前記第2収束点の間の光路長の比が前記第1光収束部と前記第1収束点の間の光路長に対する前記第2収束点と前記第1光収束部の間の光路長の比と略同じ大きさである構成とすることができる。
【0025】
本発明は、上記記載の画像投影装置を備えた、網膜走査型視野視力検査装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、良好な画像を投影することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、実施例1に係る画像投影装置を上方から見た図である。
図2は、
図1の投影光学系に関する部分を拡大した図である。
図1のように、実施例1の画像投影装置100は、光源10、走査ミラー12、投影光学系20、制御部30、及び画像入力部32を備える。実施例1の画像投影装置100は、例えばメガネ型である。光源10は、例えばメガネのツル側に設置されている。走査ミラー12及び投影光学系20は、例えばメガネのレンズ側に設置されている。制御部30及び画像入力部32は、例えばメガネに設けられずに外部装置(例えば携帯端末)に設けられていてもよいし、メガネのツルに設けられていてもよい。
【0030】
画像入力部32は、図示しないカメラ及び/又は録画機器などから画像データが入力される。制御部30は、入力された画像データに基づいて、光源10からのレーザ光40の出射を制御するとともに、走査ミラー12の走査の制御を行う。光源10は、制御部30の制御の下、例えば赤色レーザ光(波長:610nm〜660nm程度)、緑色レーザ光(波長:515nm〜540nm程度)、及び青色レーザ光(波長:440nm〜480nm程度)の可視レーザ光を出射する。赤色、緑色、及び青色のレーザ光を出射する光源10として、例えばRGB(赤・緑・青)それぞれのレーザダイオードチップと3色合成デバイスとが集積された光源が挙げられる。光源10は、1つのモジュール内にレーザダイオードチップと3色合成デバイスとが集積された1つの光源部である。なお、光源10は、単一の波長のレーザ光を出射してもよい。このように、画像データは、光源10によって画像光線であるレーザ光40に変換される。
【0031】
制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。カメラをユーザの眼50の視線方向に向けて画像投影装置100の適切な位置に設置すれば、このカメラで撮像した視線方向の画像を網膜52に投影させることができる。また、録画機器などから入力された画像を投影させたり、カメラ画像と録画機器などからの画像とを制御部30でスーパーインポーズさせたりして、いわゆる仮想現実(AR:Augmented Reality)画像を投影させることもできる。
【0032】
走査ミラー12は、光源10から出射されたレーザ光40を2次元に走査して走査光42とする。走査ミラー12は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであり、水平方向及び垂直方向の2次元にレーザ光40を走査する。走査ミラー12で走査された走査光42は投影光学系20に入射する。
【0033】
投影光学系20は、走査ミラー12で走査された走査光42をユーザの眼50の瞳孔54近傍で収束させた後に網膜52に照射して網膜52に画像を投影する。ユーザは、網膜52に照射された走査光42の残像効果によって画像を認識する。
【0034】
図1及び
図2のように、投影光学系20は、反射ミラー22と投影ミラー24を含む。反射ミラー22及び投影ミラー24の反射面は、自由曲面などの曲面となっている。反射ミラー22と投影ミラー24は、異なる焦点距離を有する凹面ミラーである。反射ミラー22の焦点距離は、投影ミラー24の焦点距離よりも短くなっている。すなわち、反射ミラー22の曲率半径は、投影ミラー24の曲率半径よりも小さい。
【0035】
走査ミラー12で走査された走査光42は、反射ミラー22に入射する。走査光42は、反射ミラー22で反射されて収束点60で収束した後に投影ミラー24に照射される。このように、反射ミラー22は、走査光42を投影ミラー24の手前の収束点60で収束させた後に投影ミラー24に照射する第2光収束部の一例である。投影ミラー24に照射された走査光42は、投影ミラー24で反射されて瞳孔54近傍の収束点62で収束した後に網膜52に照射される。このように、投影ミラー24は、走査光42を瞳孔54近傍の収束点62で収束させた後に網膜52に照射する第1光収束部の一例である。反射ミラー22及び投影ミラー24は正の集光パワーを有する。
【0036】
走査ミラー12による走査光42の走査角度θ1と走査光42が収束点62に収束する収束角度θ4とは同じ大きさである。すなわち、走査光42において走査ミラー12と収束点62とは等倍の共役の関係となっている。例えば、走査ミラー12による走査光42の走査角度θ1と走査光42が収束点60に収束する収束角度θ2とは同じ大きさであり、走査光42において走査ミラー12と収束点60とは反射ミラー22を介して等倍の共役の関係となっている。すなわち、反射ミラー22は、走査ミラー12による走査光42の走査角度θ1と略同じ大きさの収束角度θ2で走査光42を収束点60に収束させる。例えば、走査光42が収束点60から出射する出射角度θ3(出射角度θ3=収束角度θ2)と走査光42が収束点62に収束する収束角度θ4とは同じ大きさであり、走査光42において収束点60と収束点62とは投影ミラー24を介して等倍の共役の関係となっている。すなわち、投影ミラー24は、収束点60から出射された走査光42の出射角度θ3と略同じ大きさの収束角度θ4で走査光42を収束点62に収束させる。これらにより、走査光42において走査ミラー12と収束点62とは反射ミラー22及び投影ミラー24を介して等倍の共役の関係となっている。
【0037】
なお、走査角度θ1と収束角度θ4は、完全に同じ大きさの場合に限られず、略同じ大きさの場合でもよい。収束角度θ2及び出射角度θ3においても同じである。なお、略同じとは、網膜52に投影される画像の品質に影響をほとんど及ぼさない程度に同じであるものである。
【0038】
網膜52に投影される画像の中央の画素に対応するレーザ光40aの反射ミラー22での屈曲角φ1と投影ミラー24での屈曲角φ2とは同じ大きさである。レーザ光40a以外のレーザ光40においても、反射ミラー22での屈曲角と投影ミラーでの屈曲角とは同じ大きさである。なお、屈曲角とは、入射角と反射角の和である。
【0039】
また、レーザ光40aにおいて、走査ミラー12と反射ミラー22の間の光路長L1に対する反射ミラー22と収束点60の間の光路長L2の比は、投影ミラー24と収束点62の間の光路長L4に対する収束点60と投影ミラー24の間の光路長L3の比と同じ大きさである。すなわち、(光路長L2/光路長L1)=(光路長L3/光路長L4)である。レーザ光40a以外のレーザ光40においても、走査ミラー12と反射ミラー22の間の光路長に対する反射ミラー22と収束点60の間の光路長の比は、投影ミラー24と収束点62の間の光路長に対する収束点60と投影ミラー24の間の光路長の比と同じ大きさである。
【0040】
なお、レーザ光40の反射ミラー22での屈曲角と投影ミラー24での屈曲角は、完全に同じ大きさの場合に限られず、略同じ大きさの場合でもよい。また、レーザ光40において、走査ミラー12と反射ミラー22の間の光路長に対する反射ミラー22と収束点60の間の光路長の比は、投影ミラー24と収束点62の間の光路長に対する収束点60と投影ミラー24の間の光路長の比と完全に同じ場合に限られず、略同じ場合でもよい。なお、略同じとは、網膜52に投影される画像の品質に影響をほとんど及ぼさない程度に同じであるものである。
【0041】
図3は、比較例1に係る画像投影装置を上方から見た図である。
図3のように、比較例1の画像投影装置500では、投影光学系20は、反射ミラー22の代わりに反射ミラー82を含む。反射ミラー82は、平面ミラー又は略平面のミラーである。したがって、走査光42は、反射ミラー82で反射された後、ほとんど収束することなく投影ミラー24に照射される。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0042】
図4(a)及び
図4(b)は、ユーザの網膜に照射されるレーザ光を評価したシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションは、走査ミラー12で走査された走査光42が円形状で且つレーザ光40が均一に分布している場合に、網膜52の照射された走査光42がどのようになるかを評価した。なお、
図4(a)及び
図4(b)では、ユーザが認識する走査光42を示し、横方向はユーザの眼50の左右方向に対応し、縦方向は上下方向に対応する。
【0043】
比較例1の画像投影装置500では、
図4(b)のように、走査光42は円形状ではあるが眼50の中心から左右方向にずれていて、レーザ光40は不均一で偏った分布をした結果となった。このように、レーザ光40の分布が不均一になったのは、走査光42を瞳孔54近傍の収束点62で収束させるために、正の集光パワーを有する投影ミラー24を用いているためと考えられる。レーザ光40の分布が不均一で偏ってしまうと、ユーザが認識する画像は歪曲した画像になってしまう。
【0044】
一方、実施例1の画像投影装置100では、
図4(a)のように、走査光42は円形状で且つ眼50の中心に位置し、レーザ光40は走査ミラー12で走査されたときと同様の均一に分布した結果となった。このように、実施例1では、レーザ光40の分布が均一な分布のままに保たれたのは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例1では、正の集光パワーを有する投影ミラー24に加えて、正の集光パワーを有する反射ミラー22を用いている。上述したように、レーザ光40は、走査ミラー12と反射ミラー22の間の光路長に対する反射ミラー22と収束点60の間の光路長の比が投影ミラー24と収束点62の間の光路長に対する収束点60と投影ミラー24の間の光路長の比と同じ大きさとなっている。これにより、走査ミラー12から反射ミラー22を介して収束点60に到達するまでのレーザ光40の光路と、収束点60から投影ミラー24を介して収束点62に到達するまでのレーザ光40の光路とは、大きさが異なる相似形であるが収束点60を中心とした点対称性を有する構成とすることができる。これにより、投影ミラー24の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響が、反射ミラー22の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響によって相殺されるようになると考えられる。よって、実施例1ではレーザ光40の分布は均一な分布のままに保たれたものと考えられる。
【0045】
実施例1によれば、走査光42を瞳孔54近傍の収束点62で収束させる投影ミラー24に加えて、走査光42を投影ミラー24の手前の収束点60で収束させる反射ミラー22を備える。そして、レーザ光40は、走査ミラー12と反射ミラー22の間の光路長に対する反射ミラー22と収束点60の間の光路長の比が投影ミラー24と収束点62の間の光路長に対する収束点60と投影ミラー24の間の光路長の比と略同じ大きさになっている。これにより、
図4(a)で説明したように、投影ミラー24の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響を、反射ミラー22の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響によって相殺することができる。よって、歪曲などが抑制された良好な画像を投影することができる。
【0046】
また、実施例1では、比較例1に比べて、反射ミラー82の代わりに反射ミラー22が設けられているだけである。このため、部品点数の増加と画像投影装置の大型化を抑制しつつ、良好な画像を投影できるようになる。
【0047】
また、実施例1によれば、レーザ光40は、反射ミラー22での屈曲角と投影ミラー24での屈曲角とが略同じ大きさになっている。これにより、投影ミラー24の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響を、反射ミラー22の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響によって効果的に相殺することができる。
【0048】
また、比較例1の画像投影装置500のように、正の集光パワーを有する1枚の投影ミラー24を用いて走査光42を網膜52に照射する場合、眼50の角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が走査ミラー12で走査された際のレーザ光40の直径よりも小さくなることが生じる。これは、走査ミラー12の走査角度は小さいにも関わらず、ユーザの眼50には大きな振れ角で走査光42が入射するためである。角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が小さくなると、高解像度の画像を網膜52に投影することが難しくなる。このことについて、発明者が行った実験を用いて説明する。実験は、視力が0.04、0.5、0.9、及び1.2と異なる複数のユーザに対して、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径を異ならせた場合に、網膜52に投影された画像(例えばカメラで撮像されたユーザの視線方向の画像)をユーザがどの程度視認できるかを測定することで行った。網膜52に投影した画像は、水平視野角20°、画面アスペクト比16:9、有効垂直解像度720本の画像とした。例えば眼軸長が24mmであれば、網膜52に投影される画像の大きさは、横5700μm×縦3200μmとなる。
【0049】
図5は、ユーザの眼に入射する際のレーザ光の直径と視力との関係を調べた実験結果を示す図である。
図5の横軸は原視力、縦軸は獲得視力である。原視力とは、一般的な視力検査によって測定される視力のことである。獲得視力とは、走査光42が照射されることで網膜52に投影された画像に対する視力のことである。
図5において、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が310μmである場合の結果を実線で、470μmである場合の結果を点線で、820μmである場合の結果を一点鎖線で、1360μmである場合の結果を破線で示している。なお、レーザ光40は略平行光で角膜58に入射している。
【0050】
図5のように、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が820μm、1360μmと大きい場合には獲得視力が高くなる。つまり、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が大きい場合は高解像度の画像を網膜52に投影できるが、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径が小さい場合は高解像度の画像を網膜52に投影することが難しいことが分かる。
【0051】
そこで、実施例1では、
図2のように、走査ミラー12による走査光42の走査角度θ1と走査光42が収束点62に収束する収束角度θ4とを略同じ大きさにしている。すなわち、走査光42において走査ミラー12と収束点62は略等倍の共役の関係となっている。これにより、角膜58に入射する際のレーザ光40の直径を走査ミラー12で走査された際のレーザ光40の直径と略同じ大きさにすることができる。よって、高解像度の画像を投影することができる。
【0052】
また、実施例1によれば、反射ミラー22の焦点距離は投影ミラー24の焦点距離よりも短くなっている。これにより、反射ミラー22と投影ミラー24の間隔を狭くすることができ、画像投影装置をより小型化することができる。画像投影装置の小型化の点から、反射ミラー22は投影ミラー24よりも小さいことが好ましい。
【0053】
反射ミラー22及び投影ミラー24は、正の集光パワーを有し、光を収束させた後に拡散させる光学特性を備えていれば、自由曲面ミラー以外に、レンズやミラーを組み合わせる、回折素子を用いる、などによっても構成することができる。
【実施例2】
【0054】
図6は、比較例2に係る画像投影装置を上方から見た図である。なお、レーザ光40は一定の大きさの直径を有することから、
図6では、直径を有するレーザ光40として図示している。なお、走査ミラー12で走査された走査光42が1点に集まることを収束と表現し、1本のレーザ光40が正の集光パワーによって焦点を結ぶことを集光と表現する。
図6のように、比較例2の画像投影装置600では、光源10と走査ミラー12との間のレーザ光40の光路にレンズ84が設けられている。その他の構成は、実施例1の画像投影装置100と同じであるため説明を省略する。
【0055】
光源10から出射された拡散光であるレーザ光40は、レンズ84によって略平行光に変換されて走査ミラー12に入射する。走査ミラー12で反射されたレーザ光40は略平行光のままで反射ミラー22に入射する。反射ミラー22は走査光42を収束点60に収束させる正の集光パワーを有することから、反射ミラー22に略平行光のレーザ光40が入射すると、反射ミラー22で反射したレーザ光40は収束点60の手前で集光する収束光となる。レーザ光40は、収束点60の手前で集光した後に拡散光となって投影ミラー24に入射する。このため、投影ミラー24に入射する際のレーザ光40の直径は大きくなる。投影ミラー24は走査光42を瞳孔54近傍の収束点62に収束させる正の集光パワーを有することから、投影ミラー24に大きな直径のレーザ光40が入射すると、レーザ光40は眼50に収束光で入射し、瞳孔54近傍で集光した後に拡散光となって網膜52に入射する。
【0056】
このように、比較例2の画像投影装置600では、レーザ光40は、網膜52に拡散光で照射するため、網膜52近傍で合焦されずに、網膜52でのサイズが大きくなってしまう。このため、デフォーカス画像が網膜52に投影されてしまう。
【0057】
図7は、実施例2に係る画像投影装置を上方から見た図である。なお、
図7においても、
図6と同様に、直径を有するレーザ光40として図示している。
図7のように、実施例2の画像投影装置200では、光源10と走査ミラー12との間のレーザ光40の光路にレンズ14が設けられている。投影光学系20は、反射ミラー22及び投影ミラー24に加えて、収束点60にレンズ26を備える。その他の構成は、実施例1の画像投影装置100と同じであるため説明を省略する。
【0058】
レンズ14は、光源10から出射された拡散光であるレーザ光40を収束光に変換する集光レンズである。このため、レーザ光40は、走査ミラー12に収束光で入射する。走査ミラー12で反射したレーザ光40は収束光のままであり、反射ミラー22の手前で集光した後に拡散光となって反射ミラー22に入射する。反射ミラー22は走査光42を収束点60に収束させる正の集光パワーを有するが、レンズ14の焦点距離を適切に設定して反射ミラー22に入射する際のレーザ光40の開口数(NA:Numerical Aperture)を適切な大きさにすることで、反射ミラー22で反射されたレーザ光40は、拡散具合(拡散光の広がりの形状)が抑えられた拡散光となる。レンズ26は、この拡散具合が抑えられた拡散光であるレーザ光40を収束光に変換する集光レンズである。レンズ26で収束光に変換されたレーザ光40は、投影ミラー24の手前で集光した後に拡散光となって投影ミラー24に入射する。投影ミラー24は走査光42を瞳孔54近傍の収束点62に収束させる正の集光パワーを有するため、レンズ26の焦点距離を適切に設定して投影ミラー24に入射する際のレーザ光40のNAを適切な大きさにすることで、投影ミラー24で反射されたレーザ光40は略平行光となる。レーザ光40は、略平行光となって眼50に入射し、水晶体56によって網膜52近傍に合焦する。
【0059】
図8(a)及び
図8(b)は、反射ミラーの収束点に設けたレンズの焦点距離を異ならせたときにユーザの網膜の位置に仮想的に設置した平面に照射されるレーザ光を評価したシミュレーション結果である。
図8(a)及び
図8(b)では、ユーザが認識するレーザ光40を示し、横方向はユーザの眼50の左右方向に対応し、縦方向は上下方向に対応する。
図8(a)は、レンズ26の焦点距離が適切でないときのシミュレーション結果であり、
図8(b)は、レンズ26の焦点距離が適切なときのシミュレーション結果である。
図8(a)のように、レンズ26の焦点距離が適切でない場合、網膜52の位置に仮想的に設置した平面に投射されたレーザ光40の径が眼50の左右方向で異なることが生じる。一方、
図8(b)のように、レンズ26の焦点距離が適切である場合、レーザ光40の径は眼50の上下方向及び左右方向において均一の大きさになる。
【0060】
実施例2によれば、
図7のように、レーザ光40を投影ミラー24に拡散光で入射させるためのレンズ26が、反射ミラー22で反射した走査光42の収束点60に設けられている。レーザ光40を投影ミラー24に拡散光で入射させることで、投影ミラー24の正の集光パワーによってレーザ光40を略平行光に変換して眼50に照射することができる。これにより、レーザ光40は水晶体56によって網膜52近傍に合焦されるようになるため、デフォーカスが抑制された良好な画像を投影することができる。また、レンズ26を収束点60に設けることで、走査光42を構成する複数のレーザ光40が投影ミラー24に適切な拡散光で入射させることを容易に実現できる。
【0061】
また、実施例2によれば、
図7のように、レンズ26はレーザ光40を収束光とする光学特性を有し、レーザ光40はレンズ26によって投影ミラー24の手前で集光した後に発散光となって投影ミラー24に入射する。これにより、投影ミラー24に入射する際のレーザ光40のNAを良好に調整できるため、投影ミラー24で反射されたレーザ光40が略平行光となることを良好に実現できる。
【0062】
また、実施例2によれば、
図7のように、レーザ光40を反射ミラー22に拡散光で入射させるためのレンズ14が設けられている。これにより、反射ミラー22の正の集光パワーによって拡散具合が抑えられたレーザ光40をレンズ26に入射させることができる。よって、レーザ光40を投影ミラー24に適切な拡散光で入射させるためのレンズ26に特別な仕様のレンズを用いなくて済む。
【0063】
また、実施例2によれば、
図7のように、レンズ14はレーザ光40を収束光とする光学特性を有し、レーザ光40はレンズ14によって反射ミラー22の手前で集光した後に発散光となって反射ミラー22に入射する。これにより、レンズ26に入射する際のレーザ光40の拡散具合の調整が容易となる。
【0064】
実施例2のように、ユーザに良好な画像を提供することと、画像投影装置を小型化することと、の両立を図る点から、レーザ光40は、走査ミラー12から収束光で出射して反射ミラー22の手前で集光した後に拡散光となって反射ミラー22に入射する。そして、反射ミラー22から拡散光で出射し、レンズ26によって投影ミラー24の手前で集光した後に拡散光となって投影ミラー24に入射し、投影ミラー24から略平行光で出射することが好ましい。
【0065】
また、実施例2では、比較例2に比べて、レンズ26が増えているだけであるため、部品点数の増加と画像投影装置の大型化を抑制しつつ、良好な画像を投影できるようになる。
【0066】
なお、実施例2において、レンズ26は色収差を抑える機能を備えていてもよい。また、レンズ26は像面湾曲を抑えた設計とすることが好ましい。投影ミラー24にレーザ光40を拡散光で入射させるための光学部材としてレンズ26の場合を例に示した。反射ミラー22にレーザ光40を拡散光で入射させるための光学部材としてレンズ14の場合を例に示した。しかしながら、光学部材は、レンズに限定されるものではなく、ミラーであっても、回折素子であってもよく、レーザ光40を収束光にする光学特性を有するものが好ましい。
【0067】
実施例1及び実施例2において、反射ミラー22及び投影ミラー24は、回折素子を有する場合でもよい。また、反射ミラー22は、光が透過しない全反射ミラーである場合が好ましい。投影ミラー24は、ユーザの眼50の視線方向の光を透過させることができるハーフミラーであってもよいし、光が透過しない全反射ミラーであってもよい。投影ミラー24がハーフミラーであれば、視線方向の実画像を透過させて、レーザ光40による画像と合わせて視認することができ、全反射ミラーであれば、レーザ光40による画像のみを視認することができる。
【0068】
図9は、実施例2の変形例1に係る画像投影装置を上方から見た図である。
図9のように、実施例2の変形例1の画像投影装置210では、光源10及びレンズ14は走査ミラー12に正対した位置に配置されている。すなわち、光源10のレーザ光40を出射する出射面11は、走査ミラー12の走査面13に正対している。したがって、レーザ光40は、走査ミラー12の走査面13に正面から入射する。光源10と走査ミラー12をこのような位置関係で配置した場合、実施例2のように反射ミラー22を用いる場合では、光源10から出射されたレーザ光40は、反射ミラー22で遮られてしまい、走査ミラー12に入射しない。そこで、実施例2の変形例1では、反射ミラー22の代わりに反射ハーフミラー86を用いている。反射ハーフミラー86は、光源10側からのレーザ光40を透過させるが、走査ミラー12からの反射光は反射させるハーフミラーである。したがって、光源10から出射されたレーザ光40は、反射ハーフミラー86を透過して走査ミラー12に入射される。走査ミラー12で反射したレーザ光40は、反射ハーフミラー86で反射する。その他の構成は、実施例2の画像投影装置200と同じであるため説明を省略する。
【0069】
実施例2のように、レーザ光40が走査ミラー12に斜めに入射して反射する場合では、投影画像が横台形に歪むことがあり、そのため、網膜52に投影される画像に歪みが発生することがある。しかしながら、実施例2の変形例1によれば、光源10は走査ミラー12と正対した位置に配置されている。このため、レーザ光40は走査ミラー12に正面から入射するようになり、投影画像が横台形に歪むことが軽減され、その結果、網膜52に投影される画像の歪みが軽減される。
【実施例3】
【0070】
図10は、実施例3に係る画像投影装置を上方から見た図である。
図10のように、実施例3の画像投影装置300では、実施例1における投影光学系20の代わりに投影光学系90を備える。光源10と走査ミラー12との間のレーザ光40の光路にレンズ91とハーフミラー99が設けられている。光源10から出射されたレーザ光40はレンズ91を通過した後にハーフミラー99で反射して走査ミラー12に入射する。走査ミラー12で走査された走査光42はハーフミラー99を透過する。投影光学系90は、反射ユニット92及び投影ユニット95と、その間の収束点60に配置されたレンズ98と、を備える。その他の構成は、実施例1の画像投影装置100と同じであるため説明を省略する。
【0071】
反射ユニット92は、硝材(レンズ)71と、硝材71の走査光42の入射側に位置する透過型の回折素子である回折面93と、回折面93の対面に位置する自由曲面ミラー94と、を備える。反射ユニット92に入射した走査光42は、回折面93の位置で屈折するとともに回折して硝材71を自由曲面ミラー94の方向へ透過する。自由曲面ミラー94は、回折面93及び硝材71を透過した走査光42を反射する正の集光パワーを持つ反射ミラーであり、一例として硝材71に反射材を蒸着したものである。
【0072】
投影ユニット95は、硝材(レンズ)72と、硝材72の走査光42の入射側に位置する透過型の回折素子である回折面96と、回折面96の対面に位置する自由曲面ミラー97と、を備える。投影ユニット95に入射した走査光42は、回折面96の位置で屈折するとともに回折して硝材72を自由曲面ミラー97の方向へ透過する。自由曲面ミラー97は、回折面96及び硝材72を透過した走査光42を反射する正の集光パワーを持つ反射ミラーであり、一例として硝材72に反射材を蒸着したものである。
【0073】
回折面93及び96の位置では、硝材71及び72の光学特性によって走査光42が屈折するとともに、回折面93及び96の回折素子の特性によって走査光42が回折する。
【0074】
光源10から出射されたレーザ光40は、レンズ91で収束光に変換され、ハーフミラー99で反射して走査ミラー12に照射される。走査ミラー12で走査された走査光42は、ハーフミラー99を透過して、反射ユニット92の回折面93に入射する。回折面93に入射した走査光42は、回折面93の回折機能により屈折して自由曲面ミラー94へ照射される。自由曲面ミラー94で反射した走査光42は、回折面93に戻り、回折面93でさらに屈折して反射ユニット92から出射し、自由曲面ミラー94の正の集光パワーによって収束点60で収束した後に、投影ユニット95に照射される。収束点60にはレンズ98が配置されている。走査光42を構成するレーザ光40は、レンズ98によって投影ユニット95の回折面96に拡散光で入射する。このように、反射ユニット92は、走査光42を投影ユニット95の手前の収束点60で収束させた後に投影ユニット95に照射する第2光収束部の一例である。
【0075】
投影ユニット95に入射した走査光42は、回折面96の回折機能により屈折して自由曲面ミラー97へ照射される。自由曲面ミラー97で反射した走査光42は、回折面96に戻り、回折面96でさらに屈折して投影ユニット95から出射する。投影ユニット95から出射された走査光42は、自由曲面ミラー97の正の集光パワーによって瞳孔54近傍の収束点62で収束した後に網膜52に照射される。このように、投影ユニット95は、走査光42を瞳孔54近傍の収束点62で収束させた後に網膜52に照射する第1光収束部の一例である。
【0076】
投影光学系90は、実施例1の投影光学系20と同様に、走査光42において走査ミラー12と収束点60とは反射ユニット92を介して等倍の共役の関係となっており、収束点60と収束点62とは投影ユニット95を介して等倍の共役の関係となっている。したがって、走査光42において走査ミラー12と収束点62とは反射ユニット92及び投影ユニット95を介して等倍の共役の関係となっている。
【0077】
実施例1では、反射ミラー22と投影ミラー24で構成される投影光学系20を備える場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。実施例3のように、硝材71と回折面93と自由曲面ミラー94を備える反射ユニット92と、硝材72と回折面96と自由曲面ミラー97を備える投影ユニット95と、で構成される投影光学系90を備える場合でもよい。反射ユニット92及び投影ユニット95は、走査光42を回折面93及び96の位置で屈折するとともに回折して自由曲面ミラー94及び97で反射する。この場合でも、実施例1と同様に、歪曲などが抑制された良好な画像を投影することができる。
【0078】
網膜52にカラー画像を投影する場合、R、G、Bの波長の異なる3種の光源(例えばレーザダイオードチップ)を備えた光源部を光源10に用いる。波長の異なるレーザ光を同一のレンズなどの光学素子で屈折させると、波長によって屈折率が異なるため、3種のレーザ光が同一点で集光しなくなり、非収束差が発生していわゆるゴーストが発生することがある。反射ユニット92及び投影ユニット95は硝材71及び72を有しているため、R、G、Bの波長の異なる3種の光源を備えた光源部を光源10に用いてカラー画像を投影すると、非点収差によるゴーストが発生する可能性がある。そこで、実施例3では、反射ユニット92及び投影ユニット95は回折面93及び96を備える構成としている。回折面93及び96は、R、G、Bの波長の異なるレーザ光40に対して、硝材71及び72による非点収差を補正(キャンセル)させる特性を有するようにしている。これにより、反射ユニット92及び投影ユニット95に入射して反射するR、G、Bのレーザ光40の非点収差が低減され、投影されるカラー画像のゴーストが低減される。
【0079】
図10のように、レーザ光40を投影ユニット95に拡散光で入射させるためのレンズ98が収束点60に設けられている。レンズ98はレーザ光40を収束光とする光学特性を有し、レーザ光40はレンズ98によって投影ユニット95の手前で集光した後に拡散光となって投影ユニット95に入射する。レーザ光40を投影ユニット95に拡散光で入射させることで、投影ユニット95の自由曲面ミラー97の正の集光パワーによって、レーザ光40は略平行光で眼50に照射される。これにより、実施例2で説明したように、デフォーカスが抑制された良好な画像を投影することができる。
【0080】
図10のように、レーザ光40を反射ユニット92に拡散光で入射させるためのレンズ91が設けられている。レンズ91はレーザ光40を収束光とする光学特性を有し、レーザ光40はレンズ91によって反射ユニット92の手前で集光した後に拡散光となって反射ユニット92に入射する。これにより、実施例2で説明したように、反射ユニット92の自由曲面ミラー94の正の集光パワーによって拡散具合が抑えられたレーザ光40をレンズ98に入射させることができる。よって、レーザ光40を投影ユニット95に適切な拡散光で入射させるためのレンズ98に特別な仕様のレンズを用いなくて済む。
【0081】
実施例3の画像投影装置300をヘッドマウントディスプレイに適用する場合、投影光学系90の設置スペースが限られるため、反射ユニット92及び投影ユニット95は、ある程度の屈折角度でレーザ光40を屈折させ、ある程度の集光パワーでレーザ光40を集光させることが好ましい。反射ユニット92及び投影ユニット95が、それぞれ最適化された、硝材71及び72、回折面93及び96、並びに自由曲面ミラー94及び97を備えることで、ヘッドマウントディスプレイとして最適な屈折角度と集光パワーを得ることができる。この構成により、回折面93及び96の回折パワーをできるだけ小さくすることが可能となることから、回折素子ピッチを小さくする必要がなくなるので、その回折精度が高まり、さらに製作が容易になる。
【0082】
R、G、Bの波長の異なるレーザ光40がレンズ91及び98を透過するときも非点収差が発生することがある。これを回避するために、レンズ91及び98の表面に回折素子を設置することによって、この非点収差を低減(キャンセル)させることもできる。
【0083】
反射ユニット92は、光源10から眼50へレーザ光40を導くために、走査ミラー12の水平方向及び垂直方向の走査方向に対して対称な構成になっていない。このため、レンズ91を半円筒形の形状などにして、水平方向及び垂直方向の集光パワーを異ならせることによって、反射ユニット92の水平及び垂直方向の非対称による非点収差を補正(キャンセル)させることができる。
【0084】
レンズ91で収束光に変換されたレーザ光40は、ハーフミラー99で反射して走査ミラー12に照射される。これにより、レーザ光40が走査ミラー12に正面から照射される構成を実現でき、実施例2の変形例1と同様に、投影画像の歪みを低減できる。なお、光源10から出射されたレーザ光40は、ハーフミラー99を介さずに、レンズ91を通過した後に直接走査ミラー12に照射される場合でもよい。
【0085】
実施例1及び実施例2の構成では、反射ミラー22及び投影ミラー24の正の集光パワーでレーザ光40を収束させているため、集光パワーを大きくすることによってミラーから収束点までの距離が小さくなる。これにより、画像投影装置の小型化を実現し得るが、そのためには反射ミラー22及び投影ミラー24の自由曲面ミラーの曲率を大きくすることになり、この場合、画像投影装置の小型化の妨げになり得る。一方、実施例3のように、反射ユニット92及び投影ユニット95が回折面93及び96を備えることにより、回折面93及び96でレーザ光40を屈折させることで、自由曲面ミラー94及び97の曲率を小さくすることが可能となる。この場合、自由曲面ではあるものの平面のミラーに極力近づけることが可能となるので、画像投影装置の更なる小型化を実現することができる。
【0086】
また、実施例3によれば、レーザ光40は、走査ミラー12から回折面93で回折して自由曲面ミラー94までの間の光路長に対する、自由曲面ミラー94から回折面93で回折して収束点60までの間の光路長の比が、自由曲面ミラー97から回折面96で回折して収束点62までの間の光路長に対する、収束点60から回折面96で回折して自由曲面ミラー97までの間の光路長の比と、略同じ大きさになっている。これにより、実施例1の
図4(a)で説明したことと同様に、実施例3においても、自由曲面ミラー97の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響を、自由曲面ミラー94の正の集光パワーがレーザ光40に及ぼす影響によって相殺することができる。よって、歪曲などが抑制された良好な画像を投影することができる。
【0087】
なお、
図10において、反射ユニット92及び投影ユニット95は、説明のために厚みのある図になっている。しかしながら実際には、最短光路長に合わせて反射ユニット92及び投影ユニット95の薄肉化が実現でき、中央部において2.5mm程度の厚みとすることができるので、メガネレンズに埋め込むことも可能になる。
【0088】
実施例1から実施例3では、片方の眼50に画像を投影する場合を例に示したが、両方の眼50に画像を投影する場合でもよい。また、走査部として走査ミラー12の場合を例に示したが、走査部は光線を走査可能であればよい。例えば、走査部として、電気光学材料であるタンタル酸ニオブ酸リチウム(KTN)結晶など、その他の部品を用いてもよい。光線としてレーザ光の場合を例に示したが、レーザ光以外の光でもよい。
【0089】
図11は、網膜走査型視野視力検査装置を示すブロック図である。
図11のように、網膜走査型視野視力検査装置400は、実施例1の画像投影装置100を備える。なお、実施例1の画像投影装置100の代わりに、実施例2、実施例2の変形例1、又は実施例3の画像投影装置を備えていてもよい。例えば、実施例1から実施例3に開示した構成を、特願2017−106337、特願2017−111151に開示されている網膜走査型視野視力検査装置及び網膜走査型ヘッドマウントディスプレイにも適用すれば、この網膜走査型視野視力検査装置で検査されたユーザの視覚特性データに基づいて、網膜走査型ヘッドマウントディスプレイに、画像や視標を投影することに利用することもできるようになる。
【0090】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。