(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術で用いられる電磁波レーダーは、コストが高いために、検査するための検査システムのコストが増大するという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、赤外線による検査精度を向上しつつ、コストを低減することが容易な道路路面撮影システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る道路路面撮影システムは、路面を所定の第一方向に沿って走行する車両に取り付けられ、前記路面の赤外線による画像を、赤外撮像画像として撮像する赤外画像撮像部と、前記車両の走行距離を検出する走行距離検出部と、前記走行距離検出部によって検出された走行距離に基づき、前記車両が予め設定された基準距離走行する都度、前記赤外画像撮像部によって撮像を実行させる撮像制御部と、前記赤外画像撮像部によって撮像された前記赤外撮像画像に画像処理を施すことにより赤外線路面画像を生成する赤外画像処理部とを備え、前記赤外画像撮像部による前記路面の前記撮像範囲の、前記第一方向の長さは、前記基準距離の予め設定された設定数倍にされ、前記設定数は二以上の自然数であり、前記画像処理は、前記赤外画像撮像部により連続して撮像された複数の前記赤外撮像画像に基づくと共に前記路面に正対した画像である複数の正対画像を、前記各正対画像上での前記第一方向に対応する方向である第二方向に沿って、前記各正対画像上において前記路面における前記基準距離に対応する長さである基準画像長分、ずらしながら重ね合わせる重ね合わせ処理を含む。
【0008】
この構成によれば、車両を走行させつつ路面を赤外線で撮像した複数の赤外撮像画像を重ね合わせることにより赤外線路面画像が得られるので、赤外線路面画像の精度が向上する結果、赤外線による検査精度を向上することができる。また、背景技術のように、電磁波レーダーを用いなくてよいので、コストを低減することが容易である。また、重ね合わせられる複数の赤外撮像画像は、車両が予め設定された基準距離走行する都度、赤外画像撮像部によって撮像されたものであるため、重ね合わせられる複数の赤外撮像画像を得るために、複数の撮像手段を備える必要がない。
【0009】
また、前記赤外画像撮像部の撮像方向は、前記路面の垂線に対して傾斜しており、前記画像処理は、前記赤外画像撮像部により連続して撮像された前記各赤外撮像画像を、ホモグラフィ変換により前記正対画像に変換する正対変換処理を含むことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、車両に斜めに傾けて赤外画像撮像部を取り付けることによって、撮像可能な路面面積を増大することが容易である。
【0011】
また、前記車両に取り付けられ、前記路面の可視光による画像を、可視撮像画像として撮像する可視画像撮像部をさらに備え、前記撮像制御部は、前記走行距離検出部によって検出された走行距離に基づき、前記可視画像撮像部による撮像を前記赤外画像撮像部と同期して行わせることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、路面の可視光による画像が可視撮像画像として撮像されるので、可視光による可視撮像画像と赤外線による赤外撮像画像との併用によって、道路の検査精度を向上させることが容易になる。また、可視画像撮像部による撮像が赤外画像撮像部と同期されるので、可視撮像画像と赤外撮像画像とで、同一の撮像位置の画像を対比させることが容易となる。
【0013】
また、前記走行距離検出部は、前記車両が予め設定された設定距離走行する都度、パルス信号を出力し、前記撮像制御部は、前記パルス信号に基づいて前記赤外画像撮像部による撮像と前記可視画像撮像部による撮像とを同期させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、パルス信号に基づいて赤外画像撮像部による撮像と可視画像撮像部による撮像とを同期させるので、赤外画像撮像部による撮像と可視画像撮像部による撮像とを同期させることが容易である。
【0015】
また、前記赤外線路面画像と、前記可視撮像画像とを、撮像された前記路面の位置が互いに対応するように表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、赤外線路面画像と、可視撮像画像とが、撮像された路面の位置が互いに対応するように表示されるので、可視撮像画像と赤外撮像画像とで、同一の撮像位置の画像を対比させることができる結果、道路の検査精度を向上させることが容易になる。
【0017】
また、前記車両をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、車両を含んで道路路面撮影システムが構成される。
【発明の効果】
【0019】
このような構成の道路路面撮影システムは、赤外線による検査精度を向上しつつ、コストを低減することが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る道路路面撮影システムの構成を概念的に示す説明図である。
【0022】
図1に示す道路路面撮影システム1は、車両2、赤外線サーモグラフィーカメラ3(赤外画像撮像部)、ラインセンサカメラ4(可視画像撮像部)、走行距離検出部5、撮像制御部6、コンピュータ7、及びディスプレイ8(表示部)を備えている。
【0023】
車両2は、道路Rの路面RS上を走行する。
図1に示す例では、紙面左方向が車両2の走行方向D1(第一方向)となっている。道路Rは、例えば高速道路である。道路Rは、床版R3、防水層R2、及び表層R1がこの順に積層されて構成されている。表層R1はアスファルト、防水層R2は水を通さない素材(例えば樹脂シート)の層、床版R3はコンクリートの板である。なお、床版R3の代わりに路盤が設けられていてもよい。
【0024】
赤外線サーモグラフィーカメラ3は、赤外線による画像を撮像するカメラである。赤外線サーモグラフィーカメラ3は、後述するパルス信号P3のパルスタイミングで撮像を実行する。赤外線サーモグラフィーカメラ3は、車両2の、例えば後端上部に取り付けられている。赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像方向31は、車両2の後端上部から後方、かつ斜め下方に向けられている。撮像方向31は、赤外線サーモグラフィーカメラ3の光学系の光軸方向、あるいは赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像範囲32の中心と赤外線サーモグラフィーカメラ3を結ぶラインである。
【0025】
撮像方向31は、路面RSの垂線RVに対して傾斜している。路面RSの撮像範囲32の、走行方向D1に沿う方向の長さLaは、例えば1mとされている。撮像範囲32の走行方向D1と直交する方向の幅は、路面RSの幅(車両2が走行している車線の幅)よりも大きくされていることが好ましい。
【0026】
このように、赤外線サーモグラフィーカメラ3を車両2の後端上部に取り付け、撮像方向31を路面RSの垂線RVに対して傾斜させることで、長さLaを増大させ、赤外線サーモグラフィーカメラ3によって撮像される路面RSの面積を増大させることができる。なお、赤外線サーモグラフィーカメラ3は、車両2の先端上部に取り付けられ、撮像方向31が前方かつ斜め下方に向けられていてもよい。また、赤外線サーモグラフィーカメラ3は、単一のカメラで構成される例に限らない。複数のカメラを組み合わせて赤外線サーモグラフィーカメラ3を構成し、複数のカメラの撮像範囲を合成して撮像範囲32としてもよい。
【0027】
ラインセンサカメラ4は、可視光による画像をライン状に撮像するカメラである。ラインセンサカメラ4は、後述するパルス信号P4のパルスタイミングで撮像を実行する。ラインセンサカメラ4は、例えば車両2の後端から後方に突出するように設けられ、下方を向いて撮像するようにされている。
【0028】
ラインセンサカメラ4は、例えば走行方向D1と直交する方向(紙面奥行き方向)に延びるライン状に、路面RSを可視画像で撮像する。ラインセンサカメラ4の撮像範囲は、走行方向D1に沿う方向の長さLbが、例えば1mmとされている。ラインセンサカメラ4の撮像範囲の走行方向D1と直交する方向の幅は、赤外線サーモグラフィーカメラ3と同様、路面RSの幅(車両2が走行している車線の幅)よりも大きくされていることが好ましい。
【0029】
なお、ラインセンサカメラ4は、車両2の先端側に設けられていてもよい。また、ラインセンサカメラ4は、単一のカメラで構成される例に限らない。複数のカメラを組み合わせてラインセンサカメラ4を構成し、複数のカメラの撮像範囲を連結してラインセンサカメラ4の撮像範囲が構成されるようにしてもよい。
【0030】
走行距離検出部5は、例えば車両2の車体下部に、路面RSと対向するように配設されている。走行距離検出部5は、車両2の走行距離を検出する。具体的には、走行距離検出部5は、例えば車両2が予め設定された設定距離Ls走行する都度、パルス信号P5を出力することで、車両2の走行距離を検出する。設定距離Lsは、例えば10mmとされている。すなわち、走行距離検出部5は、車両2が10mm走行する都度、パルス信号P5を出力する。
【0031】
走行距離検出部5としては、例えば市販の非接触速度計を用いることができ、例えば株式会社小野測器製の非接触速度計LC−5200を用いることができる。なお、走行距離検出部5は、車両2の走行距離を検出することができればよく、必ずしも設定距離Ls走行する都度パルス信号を出力するものに限らない。
【0032】
撮像制御部6は、走行距離検出部5から出力されたパルス信号P5に基づいて、車両2が予め設定された基準距離Lc走行する都度、赤外線サーモグラフィーカメラ3によって撮像を実行させる。また、撮像制御部6は、パルス信号P5に基づいて、ラインセンサカメラ4による撮像を、赤外線サーモグラフィーカメラ3による撮像と同期して行わせる。
【0033】
具体的には、撮像制御部6は、パルス信号P5のパルス列を、逓倍する逓倍回路と分周する分周回路とを備えている。撮像制御部6は、例えばパルス信号P5のパルス列を10分周してパルス信号P3を生成し、このパルス信号P3を赤外線サーモグラフィーカメラ3へ出力する。パルス信号P5は、車両2が10mm走行する都度出力されるパルスであり、1パルスが10mmに対応しているから、パルス信号P3の1パルスは100mmに対応する。この場合、パルス信号P3はパルス信号P5が分周された信号であるから、パルス信号P3とパルス信号P5のパルスタイミングは同期している。
【0034】
また、撮像制御部6は、例えばパルス信号P5のパルス列を10逓倍してパルス信号P4を生成し、このパルス信号P4をラインセンサカメラ4へ出力する。パルス信号P5の1パルスは10mmに対応しているから、パルス信号P4の1パルスは1mmに対応する。この場合、パルス信号P4はパルス信号P5が逓倍された信号であるから、パルス信号P4とパルス信号P5のパルスタイミングは同期している。従って、パルス信号P3,P4は共にパルス信号P5と同期しているから、パルス信号P3とパルス信号P4も互いに同期している。
【0035】
赤外線サーモグラフィーカメラ3は、パルス信号P3のパルスタイミングで撮像を実行するから、赤外線サーモグラフィーカメラ3は、車両2が100mm走行する都度撮像する。すなわち、撮像制御部6の分周回路によって、基準距離Lcは100mmに設定される。撮像範囲32の走行方向D1に沿う方向の長さLaは、上述の通り1mとされているから、長さLaは、基準距離Lcの10倍にされている。すなわち、予め設定された設定数Nsは10とされ、設定数Nsは二以上の自然数であり、長さLaは、基準距離Lcの設定数Ns倍とされている。
【0036】
図2は、
図1に示す撮像範囲32と、長さLa、基準距離Lc、及び設定数Nsとの関係を説明するための説明図である。
図2に示すように、赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像範囲32は、走行方向D1の長さLaが1m、撮像の都度ずれる基準距離Lcが100mmであるから、各撮像範囲32は、撮像の都度1m−100mm=90mmの範囲が重複する。
【0037】
そして、10回撮像が繰り返されると、符号a1で示すように、路面RSの位置A1の赤外線画像が10回(設定数Ns回)撮像されることになる。以後、符号a2〜a10で示すように、路面RSの位置A2〜A10の赤外線画像がそれぞれ10回(設定数Ns回)撮像される。これにより、道路路面撮影システム1によれば、車両2を走行させつつ、路面RSの同一位置の赤外線画像を、設定数Ns回撮像することができる。
【0038】
なお、撮像が開始されてからの走行距離が、基準距離Lcの設定数Ns−1倍以下の範囲、すなわち撮像開始からの走行距離が100mm×9=900mm以下の位置範囲では、撮像回数が9回以下になる。従って、撮像が開始されてからの走行距離が基準距離Lcの設定数Ns倍に満たない範囲で撮像された画像データは、削除してもよく、あるいは画像精度が低い参考データとしてもよい。
【0039】
一方、ラインセンサカメラ4は、パルス信号P4のパルスタイミングで撮像を実行するから、ラインセンサカメラ4は、車両2が1mm走行する都度撮像する。また、上述したとおり、ラインセンサカメラ4の撮像範囲は、走行方向D1に沿う方向の長さLbが1mmである。すなわち、撮像制御部6の逓倍回路によって、撮像範囲の走行方向D1に沿う方向の長さLbと、撮像の都度ずれる撮像位置のずれ量とが等しくされている。これにより、ラインセンサカメラ4は、路面RSの可視光画像を走査するように連続的に撮影することで、可視撮像画像Gkを生成する。
【0040】
また、パルス信号P3とパルス信号P4が互いに同期しているから、ラインセンサカメラ4と赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像タイミングも同期している。従って、ラインセンサカメラ4で撮像された可視光画像と赤外線サーモグラフィーカメラ3で撮像された赤外線画像とで、同一の位置で撮像された画像同士を対応付けることが容易である。
【0041】
ディスプレイ8は、液晶表示装置等のいわゆるディスプレイ表示装置である。なお、表示部は、ディスプレイ表示装置に限らない。例えば紙媒体に印刷することで画像を表示するプリンターであってもよい。
【0042】
コンピュータ7としては、いわゆるパーソナルコンピュータ等、種々のコンピュータを用いることができる。コンピュータ7は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、所定の制御プログラム等を記憶する不揮発性の記憶部であるHDD(Hard Disk Drive)と、赤外線サーモグラフィーカメラ3及びラインセンサカメラ4から出力された画像データを受信するためのインターフェイス回路と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。コンピュータ7は、例えばHDDに記憶された制御プログラムを実行することによって、赤外画像処理部71、画像記憶部72、及び表示処理部73として機能する。
【0043】
赤外画像処理部71は、正対変換処理と、重ね合わせ処理とを実行する。正対変換処理は、赤外線サーモグラフィーカメラ3により連続して撮像された各赤外撮像画像G1を、ホモグラフィ変換により正対画像G2に変換する処理である。重ね合わせ処理は、各正対画像G2を、それらの各正対画像上での走行方向D1に対応する方向である走行方向D2(第二方向)に沿って、それらの各正対画像G2上において路面RSにおける基準距離Lcに対応する基準画像長Lg分、ずらしながら重ね合わせる処理である。
【0044】
図3は、赤外画像処理部71の正対変換処理について説明するための説明図である。赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像方向31は、路面RSの垂線RVに対して傾斜しているので、実際の地面に対する撮像範囲32は、(1)で示すように台形形状となっている。このように台形形状の撮像範囲32の画像が、赤外線サーモグラフィーカメラ3によって撮像されると、(2)で示すように外形が矩形の赤外撮像画像G1となる。その結果、検査対象の路面RSの画像が、いわゆる遠近法のように遠方が細くなる形状となるため、その実際の路面RSと赤外撮像画像G1に写っている路面RSの画像との縮尺倍率が、路面RSの画像位置によって異なる。
【0045】
しかしながら、重ね合わせ処理を実行するためには、撮影位置をずらしながら撮像された複数の赤外撮像画像G1について、同一位置が撮像された画像同士で縮尺倍率が同一でなければ画像を重ね合わすことができない。そこで、路面RSに対して正対して撮像する仮想カメラV、すなわち撮像方向が路面RSに対して垂直な仮想カメラVを仮定する。そして、(3)で示すように、赤外撮像画像G1を、このような仮想カメラVで路面RSを撮像した場合に得られる正対画像G2に変換する。
【0046】
赤外画像処理部71は、ホモグラフィ変換(homography)として知られている画像処理方法を用いて赤外撮像画像G1を正対画像G2に変換する。赤外画像処理部71は、赤外線サーモグラフィーカメラ3によって赤外撮像画像G1が撮像される都度正対画像G2に変換してもよく、複数の赤外撮像画像G1を一旦記憶部に記憶させておき、後ほど記憶部から各赤外撮像画像G1を読み出して正対画像G2に変換してもよい。
【0047】
次に、重ね合わせ処理について説明する。
図4は、赤外画像処理部71によって実行される重ね合わせ処理について説明するための説明図である。
図4に示す正対画像G2の外縁が、撮像範囲32に対応している。
【0048】
赤外画像処理部71は、重ね合わせ処理によって、正対変換処理により得られた複数の正対画像G2を、元となる赤外撮像画像G1が撮像された順に、走行方向D2へ基準画像長Lgずつずらしながら重ね合わせることにより、赤外線路面画像G3を生成する。この場合、撮像が開始されてからの走行距離が、基準距離Lcの設定数Ns−1倍以下の範囲、すなわち撮像開始からの走行距離が100mm×9=900mm以下の位置範囲が撮像された正対画像G2の数は、設定数Nsに満たないので、この範囲に対応する部分の画像は削除してもよく、あるいは画像精度が低い参考データとしてもよい。
【0049】
撮像が開始されてからの走行距離が基準距離Lcの設定数Ns−1倍を超える範囲、すなわち撮像開始からの走行距離が900mmを超える位置範囲については、その位置の路面RSが撮像された正対画像G2が、設定数Ns重ね合わせられる。
【0050】
重ね合わせは、各正対画像G2について、基準画像長Lgずつずらした状態で互いに対応する位置の各画素値を、積算する処理であってもよく、その各画素値を平均する処理であってもよい。このように、複数の正対画像G2について、路面RSの同一位置に対応する複数(設定数Ns)の画素値を重ね合わせることによって、赤外線路面画像G3が得られる。
【0051】
図1を参照して画像記憶部72は、赤外画像処理部71によって生成された赤外線路面画像G3と、ラインセンサカメラ4によって撮像された可視撮像画像Gkとを記憶部に記憶させる。表示処理部73は、記憶部から、赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとを読み出して、撮像された路面RSの位置が互いに対応するようにディスプレイ8に表示させる。このとき、赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとは、パルス信号P5に基づき、同期したタイミングで撮像されているので、互いの位置関係を対応させるのが容易である。
【0052】
赤外線路面画像G3を生成する過程で、画像の重ね合わせ数が設定数Nsに満たない部分を削除した場合は、対応する長さ分、可視撮像画像Gkの先頭部分を削除すればよい。また、赤外線路面画像G3を生成する過程で、画像の重ね合わせ数が設定数Nsに満たない部分を削除しなかった場合は、そのまま赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとを用いればよい。これにより、赤外線路面画像G3の先頭位置と、可視撮像画像Gkの先頭位置とを揃えることで、互いの位置関係を対応させることができる。
【0053】
図5は、表示処理部73によってディスプレイ8の表示画面Gdに表示された赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとの一例を示す画面図である。
図5に示す例では、赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとを、互いの位置関係を上下に並べて対応させている。なお、位置関係の対応は、左右に並べて対応させてもよく、あるいは赤外線路面画像G3と、可視撮像画像Gkとを重ねて表示することで対応させてもよい。
【0054】
まず、ラインセンサカメラ4により可視光で撮像された可視撮像画像Gkを見ると、略矩形形状の画像B1,B2や、線状の画像B3、B4が写っている。この画像B1,B2は、道路Rの表層R1を補修した後であり、道路Rの欠陥ではない。一方、画像B3、B4は、道路のひび割れである可能性が高い。このように、可視撮像画像Gkによれば、表層R1の補修跡やひび割れなど、路面RSの状態を確認することができる。
【0055】
次に、赤外線サーモグラフィーカメラ3によって撮像された赤外撮像画像G1に基づく赤外線路面画像G3を見ると、可視撮像画像Gkの画像B1,B2に対応する位置に、画像B1,B2と同様の矩形をした画像B5,B6が認められる。画像B5,B6は、表層R1の補修に使われた補修材料が、他の部分と異なっているために生じた温度差が、赤外撮像画像G1の画像B5,B6として現れたものである。このように、赤外線路面画像G3と可視撮像画像Gkとを対比することによって、画像B5,B6は、道路Rの欠陥ではないと判断できる。
【0056】
一方、可視撮像画像Gkの画像B3,B4に対応する赤外線路面画像G3の位置に、黒い影のような画像B7、B8が写っている。この場合、道路Rのひび割れから表層R1に染みこんだ雨水が、防水層R2の上に溜まっていたり、雨水の浸食で空洞ができていたりするといった欠陥が生じていると判断できる。画像B9〜B11のような画像ムラ、すなわち温度ムラが生じている場合にも、表層R1の浸食や、床版R3のクラック等の欠陥が生じていると判断することができる。
【0057】
このように、道路路面撮影システム1によれば、複数の赤外撮像画像G1を重ね合わせて赤外線路面画像G3を生成するので、画素値の加算により重ね合わせた場合には、道路の欠陥により生じた微小な赤外線レベルの違いが増大されて赤外線路面画像G3でその欠陥を確認することが容易になり、画素値の平均により重ね合わせた場合には、赤外撮像画像G1のノイズ成分がキャンセルされて本来の道路欠陥により生じた画像が精度よく表示される結果、その欠陥を確認することが容易になる。
【0058】
また、赤外線路面画像G3と可視撮像画像Gkとを対比させてその画像を確認することができるので、道路の欠陥状況をより詳細に確認することが可能となる。
【0059】
このように、道路路面撮影システム1によれば、赤外線による検査精度を向上することができる。また、背景技術のように、電磁波レーダーを用いなくてもよいので、コストを低減することが容易である。
【0060】
なお、コンピュータ7及びディスプレイ8を車両2に搭載する例を示したが、必ずしもコンピュータ7及びディスプレイ8は、車両2に搭載されていなくてもよい。例えば、コンピュータ7及びディスプレイ8は、車両2外の建屋内に設置されていてもよい。この場合、赤外撮像画像G1や可視撮像画像Gkを、記憶媒体に記憶しておいてコンピュータ7に供給したり、あるいは無線通信手段等を用いてコンピュータ7へ送信したりしてもよい。コンピュータ7は、このようにして得られた赤外撮像画像G1及び可視撮像画像Gkから赤外線路面画像G3を生成し、赤外線路面画像G3と可視撮像画像Gkとをディスプレイ8に表示させる構成としてもよい。あるいは、コンピュータ7の一部とディスプレイ8とを、車両2外の建屋内に設置してもよい。例えば、表示処理部73及びディスプレイ8は、車両2外の建屋内に設置されていてもよい。そして、赤外線路面画像G3と可視撮像画像Gkとを、記憶媒体又は無線通信手段等によって表示処理部73へ供給するようにしてもよい。
【0061】
また、道路路面撮影システム1は、必ずしもラインセンサカメラ4を備えていなくてもよく、可視撮像画像Gkを表示しない構成としてもよい。また、赤外線サーモグラフィーカメラ3の撮像方向31は、必ずしも路面RSの垂線RVに対して傾斜していなくてもよく、赤外線サーモグラフィーカメラ3が路面RSに対して正対して配設され、撮像方向31が路面RSの垂線RVと一致していてもよい。この場合、赤外画像処理部71は、正対変換処理を実行しなくてもよく、赤外撮像画像G1をそのまま正対画像G2として用いることができる。