特許第6659944号(P6659944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6659944データ設定システム、データ更新システムおよびデータ設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659944
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】データ設定システム、データ更新システムおよびデータ設定方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20200220BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20200220BHJP
   H04W 8/24 20090101ALI20200220BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   G06F13/00 500A
   H04W8/24
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-225984(P2015-225984)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-98625(P2017-98625A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】中野 晃
(72)【発明者】
【氏名】尾田 雄馬
【審査官】 松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0311391(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0136222(US,A1)
【文献】 特開2005−055940(JP,A)
【文献】 特開2009−267746(JP,A)
【文献】 特開2004−356746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F13/00
H04B7/24−7/26
H04L12/00−12/26
12/50−12/955
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設定データを記憶する記憶部を有する端末装置と、該端末装置とネットワークを介して通信可能な第1および第2のプロビジョニングサーバと、を有するデータ設定システムであって、
前記端末装置は、前記複数の設定データのうち、一部の可変データを書き換える操作部を有し、
前記第1プロビジョニングサーバは、前記複数の設定データの全てを記憶し、
前記第2プロビジョニングサーバは、前記複数の設定データのうち、前記可変データを除く固定データを記憶し、
前記端末装置は、初期状態時に前記第1プロビジョニングサーバにアクセスして、前記複数の設定データの全てを取得して前記記憶部に記憶することにより設定済となり、
前記設定済の端末装置は、前記第2プロビジョニングサーバにアクセスして、前記固定データを取得する
データ設定システム。
【請求項2】
前記端末装置は、電源オンまたは再起動時に前記第1または第2プロビジョニングサーバにアクセスする請求項1に記載のデータ設定システム。
【請求項3】
前記端末装置は、前記設定済となったのち、前記操作部の操作による可変データの書き換えを許可する請求項1または請求項2に記載のデータ設定システム。
【請求項4】
データ設定装置を更に備え、
前記第1、第2プロビジョニングサーバに記憶される設定データが、前記設定装置によって書き換え可能である
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデータ設定システム。
【請求項5】
複数の音声通信システムのそれぞれに設けられたプロビジョニングサーバと、
いずれかの音声通信システムのプロビジョニングサーバにアクセスして、該アクセスしたプロビジョニングサーバのデータを更新する遠隔設定装置と、
を有するデータ更新システムであって、
前記遠隔設定装置がアクセスすべきプロビジョニングサーバを指定する初期設定サーバを設け、
前記遠隔設定装置は、起動時に前記初期設定サーバにアクセスし、該初期設定サーバによって指定されたプロビジョニングサーバにアクセスする
データ更新システム。
【請求項6】
前記初期設定サーバは、前記遠隔設定装置に対応づけて、アクセスすべきプロビジョニングサーバのアドレスを記憶する振り分けテーブルを有し、前記遠隔設定装置がアクセスしてきたとき、その遠隔設定装置に対応するプロビジョニングサーバのアドレスを送信することによって、そのプロビジョニングサーバを指定し、
前記遠隔設定装置は、前記初期設定サーバから受信したアドレスを用いてプロビジョニングサーバにアクセスする
請求項5に記載のデータ更新システム。
【請求項7】
各音声通信システムは、それぞれ複数のプロビジョニングサーバを有し、
前記初期設定サーバは、1台の遠隔設定装置に対応づけて、一つの音声通信システムに所属する前記複数のプロビジョニングサーバのアドレスを記憶する
請求項6に記載のデータ更新システム。
【請求項8】
前記振り分けテーブルは、前記遠隔設定装置とは別に設けられたシステム設置者設定装置によって更新される請求項6または請求項7に記載のデータ更新システム。
【請求項9】
複数の設定データを記憶する記憶部を有する端末装置と、該端末装置とネットワークを介して通信可能な第1および第2のプロビジョニングサーバと、を有するシステムにおいて、
前記第1プロビジョニングサーバに、前記複数の設定データの全てを記憶し、
前記第2プロビジョニングサーバに、前記複数の設定データのうち、所定の可変データを除く固定データを記憶し、
端末装置が、初期状態時に第1プロビジョニングサーバにアクセスして、前記複数の設定データの全てを取得することにより設定済となり、
前記設定済の端末装置が、第2プロビジョニングサーバにアクセスして、前記固定データを取得する
データ設定方法。
【請求項10】
前記端末装置は、前記複数の設定データのうち、前記可変データを書き換える操作部を有し、
前記設定済の端末装置は、前記操作部の操作によって前記可変データを書き換えられる請求項9に記載のデータ設定方法。
【請求項11】
前記端末装置は、電源オンまたは再起動時に前記第1または第2プロビジョニングサーバにアクセスする請求項9または請求項10に記載のデータ設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セキュリティを維持しつつユーザにサーバのデータ更新を許可するデータ設定システム、データ更新システムおよびデータ設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上にサーバ(呼制御コントローラ)を設置し、このサーバを介して音声通信を行う音声通信システムが実用化されている(たとえば非特許文献1)。このような音声通信システムでは、トランシーバ形状の通信端末の動作を規定するデータを設定するために、第2のサーバ(プロビジョニングサーバ)がネットワーク上に設置される。通信端末は、電源がオンされると、ネットワークに接続してプロビジョニングサーバにアクセスし、プロビジョニングサーバから設定データ(プロビジョニングデータ)をダウンロードしてメモリに記憶することにより(プロビジョニング処理)、このデータを用いて呼制御コントローラを介したPTT通信の運用が可能になる。
【0003】
音声通信システムにおいて、複数の通信端末は、システムの使用者が所持するが、呼制御コントローラやプロビジョニングサーバはシステムの設置者が管理する。複数の通信端末は、そのそれぞれに個別の設定データが必要である。また、音声通信システムの運用中に一部または全部の通信端末の設定を変更したい場合がある。
【0004】
従来は、音声通信システムのセキュリティを維持するため、設定データを更新するためのサーバへのアクセス経路および権限をシステム利用者に提供、付与してないため、サーバーへ直接アクセスし、データを更新することができない。このため、音声通信システムの運用開始時や設定の変更時に各通信端末の設定データをプロビジョニングサーバに書き込む作業をシステム設置者が行っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アイコム株式会社、"IPトランシーバシステムIP−500H″、[online]、[平成27年11月4日検索]、インターネット〈URL:https://www.icom.co.jp/products/land_mobile/products/ip_transceiver/IP500H/index.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の運用形態では、些細な設定変更でも、システム使用者はその都度システム設置者に連絡して設定変更を依頼する必要があった。そして、システム設置者は、些細な設定変更でもシステム使用者に代わって作業をする必要があった。このため、設定変更の反映に時間が掛かり、迅速な運用形態の変更ができなかった。また、システム設置者にとっては、設定変更の都度作業が発生するため、システムの運用管理コストが増加する。
【0007】
これに対応するため、システム使用者に設定データの更新を許可した場合、ネットワーク上には複数のシステムが稼働している場合があり、システム使用者が他のシステムにアクセスしてデータを書き換えてしまうおそれがあった。
【0008】
また、設定データの一部(たとえば音量など)は、端末ユーザが通信端末を操作して変更可能であるが、電源オン時に上記のプロビジョニング処理を行うと、ユーザが変更したデータも上書きしてイニシャル値に戻ってしまう。
【0009】
この発明は、多数のデータが設定される端末装置や複数の個別の音声通信システムが稼働しているシステムにおいて、不要な範囲のデータの設定,更新を防止し、適切なデータ設定、更新を行うことが可能なデータ設定システム、データ更新システムおよびデータ設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のデータ設定システムは、複数の設定データを記憶する記憶部を有する端末装置と、該端末装置とネットワークを介して通信可能な第1および第2のプロビジョニングサーバと、を有する。端末装置は、複数の設定データのうち一部の可変データを書き換える操作部を有する。第1プロビジョニングサーバは、複数の設定データの全てを記憶する。第2プロビジョニングサーバは、複数の設定データのうち可変データを除く固定データを記憶する。端末装置は、初期状態時に第1プロビジョニングサーバにアクセスして複数の設定データの全てを取得して前記記憶部に記憶する。設定済の端末装置は、第2プロビジョニングサーバにアクセスして固定データを取得する。
【0011】
本発明のデータ設定方法は、複数の設定データを記憶する記憶部を有する端末装置と、該端末装置とネットワークを介して通信可能な第1および第2のプロビジョニングサーバと、を有するシステムにおいて、第1プロビジョニングサーバに、複数の設定データの全てを記憶し、第2プロビジョニングサーバに、複数の設定データのうち所定の可変データを除く固定データを記憶する。端末装置が、初期状態時に第1プロビジョニングサーバにアクセスして、複数の設定データの全てを取得することにより設定済となり、設定済の端末装置が、第2プロビジョニングサーバにアクセスして、固定データを取得する。
【0012】
本発明のデータ設定システムでは、端末装置が、初期状態のとき、第1プロビジョニングサーバにアクセスして複数の設定データの全てを取得する。設定済となった端末装置では、操作部による操作によって可変データは変更可能である。このため、設定済の端末装置は、第2プロビジョニングサーバにアクセスして固定データのみ取得する。これにより、管理者によってプロビジョニングサーバに設定される固定データと、ユーザにより端末において書き換え可能な可変データからなる設定データの更新が互いに円滑に行われ、固定データは常に最新に保たれるとともに、ユーザによって設定された可変データが上書きされることがない。
【0013】
本発明のデータ更新システムは、複数の音声通信システムのそれぞれに設けられたプロビジョニングサーバと、いずれかの音声通信システムのプロビジョニングサーバにアクセスして、このアクセスしたプロビジョニングサーバのデータを更新する遠隔設定装置と、を有し、さらに、遠隔設定装置がアクセスすべきプロビジョニングサーバを指定する初期設定サーバを設ける。遠隔設定装置は、起動時に初期設定サーバにアクセスし、この初期設定サーバによって指定されたプロビジョニングサーバにアクセスする。
【0014】
本発明のデータ更新システムでは、複数の音声通信システムが稼働している場合に、この音声通信システムのプロビジョニングサーバのデータを更新する遠隔設定装置がどのシステムのサーバにアクセスするかを初期設定サーバが指定する。これにより、遠隔設定装置が自由に他のシステムのサーバにアクセスすることがない。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、多数のデータが設定される端末装置や複数の個別の音声通信システムが稼働しているシステムにおいて、不要な範囲のデータの設定,更新を防止し、適切なデータ設定、更新を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態である音声通信システムの呼制御システムの構成図である。
図2】通信端末のブロック図である。
図3】通信端末に設定されるプロビジョニングデータを示す図である。
図4】音声通信システムの端末設定システムの構成図である。
図5】遠隔設定装置のブロック図である。
図6】音声通信システムのサーバのブロック図である。
図7】初期設定サーバに設けられるシステム振り分けテーブルを示す図である。
図8】プロビジョニングサーバおよび呼制御コントローラに設けられるテーブルを示す図である。
図9】通信端末のプロビジョニングデータがどのサーバから書き込まれるかを示す図である。
図10】遠隔設定装置の起動時の動作を示すフローチャートである。
図11】通信端末のデータ設定の手順を説明する図である。
図12】通信端末の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照してこの発明の音声通信システムについて説明する。図1は、この発明の実施形態である音声通信システムの呼制御システム2の構成図である。また、図4は、音声通信システムの端末設定システム3の構成図である。この音声通信システム1は、2つの個別の音声通信システム1−1、1−2を含んでおり、各音声通信システム1−1、1−2は、それぞれ呼制御システム2−1、2−2および端末設定システム3−1、3−2を有している。本発明において個別の音声通信システム1−nの数(n)に制限はない。
【0018】
図1において、呼制御システム2−1においては、通信端末11−1〜3が、呼制御コントローラ16−1を介して相互に音声通信をする。呼制御システム2−2においては、通信端末11−4〜5が、呼制御コントローラ16−2を介して相互に音声通信をする。本発明において、各音声通信システムに所属する通信端末11の数に制限はない。呼制御コントローラ16、通信端末11相互間の通信基盤(communication infrastructure)としては、携帯電話の通信ネットワークであるLTEネットワーク10が用いられる。LTEネットワーク10は、無線通信拠点である基地局10Aを有しており、通信端末11は、この基地局10Aと通信することでLTEネットワーク10にアクセスする。なお、本発明において、通信基盤はLTEネットワークに限定されない。ただし、呼制御コントローラ16および図4に示す各種サーバ12〜15は、自由なアクセスが不可能な閉域網に設置されている。
【0019】
図2は、通信端末11のブロック図である。通信端末11は、図1に示したように、ハンディトランシーバの外観を有しているが、機能的にはLTEネットワーク10の基地局10Aを介して音声信号を送受信する無線ネットワーク機器である。装置の動作を制御する制御部40はマイクロプロセッサで構成される。制御部40は、各種のデータが記憶される記憶部41を有している。記憶部41は、プロビジョニングデータ記憶エリア41Aを有し、このプロビジョニングデータ記憶エリア41Aには、図3に示すようなプロビジョニングデータ(設定データ)が記憶される。制御部40には、操作部42、表示部43、オーディオ回路44、LTE通信部45およびカードスロット46が接続されている。操作部42は、PTTスイッチ220などのキースイッチを含み、ユーザの操作を受け付けてその操作信号を制御部40に入力する。表示部43は液晶ディスプレイを含む。液晶ディスプレイには、ユーザの操作によって選択された通信相手の識別番号や着信した通信相手の識別番号などが表示される。
【0020】
また、オーディオ回路44は、マイク240およびスピーカ241を有している。制御部40は、受信した音声信号をデコードしてオーディオ回路44に入力する。オーディオ回路は、このデコードされたオーディオ信号をアナログ信号に変換してスピーカ241から出力する。また、オーディオ回路44は、マイク240から入力された音声信号をデジタル信号に変換して制御部40に入力する。制御部40は、このデジタルオーディオ信号を音声パケット化してLTE通信部45に入力する。LTE通信部45は、LTE通信方式で無線通信を行う回路を有し、制御部40から入力されたパケットを基地局10Aに向けて送信するとともに、基地局10Aから受信したパケットを制御部40に入力する。なお、オーディオ回路44にはイヤホンコネクタ242が設けられている。イヤホンコネクタ242にイヤホンマイク(不図示)が接続されると、通信端末11本体に設けられているマイク240およびスピーカ241は機能を停止し、イヤホンマイクのマイクおよびスピーカ(イヤホン)が有効になる。カードスロット46には、端末識別情報が記憶されたICカード(SIMカード)47がセットされる。このSIMカード47に記憶されている端末識別情報(ICCID)が各通信端末11の識別情報として用いられる。なお、SIMカード47に代えて、端末識別情報(ICCID)が書き込まれたモジュールを組み込んでもよい。
【0021】
以上の構成の通信端末11において、ユーザがPTTスイッチ220を押しながらマイク240に向けて音声を入力すると、通信端末11は、この音声信号を音声パケットに編集して基地局10Aを介して呼制御コントローラ16に送信する。
【0022】
図3は記憶部41のプロビジョニングデータ記憶エリア41Aの構成を示す図である。プロビジョニングデータ記憶エリア41Aには、以下のようなプロビジョニングデータが記憶される。なお、この実施形態では、以下のデータのうち初期設定サーバアドレスは、通信端末11の出荷時に不揮発に書き込まれ、プロビジョニングデータには含まれない。
【0023】
初期設定サーバアドレス:図4に示す初期設定サーバ12のIPアドレス
プロビジョニングサーバアドレス:図4に示すプロビジョニングサーバA14またはプロビジョニングサーバB15のIPアドレス
呼制御コントローラアドレス:呼制御コントローラ16のIPアドレス
送受信ポート番号:呼制御コントローラ16と通信する際の呼制御コントローラ14の送受信ポート番号
呼出ID:通信端末11の自身の呼出ID
通知音設定:着信等の通知音の選択情報
オプションボタン設定:操作部42に設けられているオプションボタンに対する機能の割当情報
イヤホン設定:イヤホンマイクが接続された場合にフル・デュプレックス通信を行うか否かの設定情報
アドレス帳:呼出可能な通信端末11の呼出IDリスト
音量設定:通話音の音量設定情報
【0024】
以上のデータのうち、プロビジョニングサーバアドレスおよび呼制御コントローラアドレスが、同じ個別音声通信システムで使用される通信端末11で共通のデータ412である。呼出ID、送受信ポート番号、通知音設定、オプションボタン設定、イヤホン設定、アドレス帳および音量設定が、各通信端末11ごとに個別に設定される個別データ413である。このうち、呼出IDおよび送受信ポート番号は各通信端末11ごとにユニークであり且つ通信端末11から変更することができない個別固定データ413Aである。それ以外のプロビジョニングデータである通知音設定、オプションボタン設定、イヤホン設定、アドレス帳および音量設定は、ユーザが通信端末11を操作することによって、または、通信端末11に接続されたクローニング端末20(図4参照)によって変更することが可能な個別可変データ413Bである。なお、共通データ412、個別固定データ413A、個別可変データ413Bの種類および数はこの実施形態に限定されない。
【0025】
図4は、通信端末11にプロビジョニングデータを書き込むための端末設定システム3の構成を示す図である。端末設定システム3も2つの呼制御システム2−1,2−2に対応して、端末設定システム3−1、3−2の2つが設けられている。端末設定システム3−1および3−2は同様の構成であるため、以下端末設定システム3−1について説明する。
【0026】
音声通信システム1−1に対応して、プロビジョニングサーバA14−1、プロビジョニングサーバB15−1、および、上述の呼制御コントローラ16−1が設置されている。各サーバおよびコントローラは、それぞれLTEネットワーク10に接続されている。また、複数の音声通信システム1に共通に初期設定サーバ12が設けられている。なお、プロビジョニングサーバA14−1、プロビジョニングサーバB15−1、呼制御コントローラ16−1は、LTEネットワーク10に直接接続されてもよいが、LTEネットワーク10にゲートウェイ(不図示)を介して接続されるローカル・エリア・ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0027】
音声通信を行う通信端末11は、初期状態、すなわち工場出荷時および初期化時には、初期設定サーバ12にアクセスして自分が所属する音声通信システム1−nへの振り分けを受ける。すなわち、その所属する音声通信システム1−nのプロビジョニングサーバA14−nのアドレスを取得し、その音声通信システム1−n内で運用できるようなプロビジョニングデータを取得する。呼制御システム2−1において、プロビジョニングサーバA14−1は、初期状態の通信端末11に対して全てのプロビジョニングデータを送信する。プロビジョニングサーバB15−1は、設定済の通信端末11に対してプロビジョニングデータのうち固定データのみ再設定する。プロビジョニングデータを取得した通信端末11は、呼制御コントローラ16−1にアクセスしてレジストを要求し、レジストされることで図1に示した呼制御システム2−1に所属する通信端末11として他の通信端末11と通信することが可能になる。
【0028】
初期設定サーバ12には、図7に示すテーブルが記憶される。プロビジョニングサーバA14、プロビジョニングサーバB15および呼制御コントローラ16には、図8に示すようなテーブルが記憶される。これらのテーブルの設定は、システム設置者設定装置19によって、すなわちシステム設置者によって行われる。テーブルの内容は、システム設置者設定装置19または遠隔設定装置17によって行われる。
【0029】
複数の通信端末11をそれぞれユーザに所持させて音声通信システムを運用するクライアントは、遠隔設定装置17を用いることにより、プロビジョニングサーバA14、プロビジョニングサーバB15および呼制御コントローラ16のデータを更新することができる。クライアントのシステム管理者は、設定用端末18を用いて遠隔設定装置17に更新データを入力する。遠隔設定装置17は、このデータを指定されたサーバ、コントローラに送信してデータを更新する。遠隔設定装置17は図5に示す構成をしており、設定用端末18は例えばパーソナルコンピュータで構成される。
【0030】
また、通信端末11のユーザは、通信端末11の操作部42を操作して個別可変データの書き換えが可能である。また、通信端末11にケーブルでクローニング端末20を接続することにより、より効率的に個別可変データの書き換えが可能である。クローニング端末20はたとえばパーソナルコンピュータで構成される。
【0031】
図5は、遠隔設定装置17のブロック図である。遠隔設定装置17は、設定用端末18とLTEネットワーク10上のサーバ、コントローラとを接続する。遠隔設定装置17は、遠隔設定装置17と通信するLANインタフェース112、LTEネットワーク10を介して各サーバと通信するLTEインタフェース114、R/W制御部110および設定ファイル記憶部111を有している。
【0032】
LANインタフェース112は、設定用端末18と通信するためのプロトコルスタック113を有している。このプロトコルスタック113は、一般的なLAN規格に準拠したプロトコルを実行するためのものでよい。また、LTEインタフェース114は、LTEネットワーク10を介して各サーバと通信するためのプロトコルスタック115を有している。このプロトコルスタック115は、LTEネットワーク10の規格に準拠したものである。設定ファイル記憶部111は、各サーバのプロビジョニングデータを更新するための更新データを記憶する。R/W制御部110は、設定ファイル記憶部111へのリード/ライトを制御する。
【0033】
このように、LANインタフェース112側とLTEインタフェース114側は設定ファイル記憶部111を共有するが、通信を中継しない構成であり、設定用端末18がLTEネットワーク10側に直接コマンドを送信することができないようになっている。また逆に、LTEネットワーク10側から設定用端末18が見えない構成であるため、LTEネットワーク10から設定用端末18にアクセスされることがない。
【0034】
図6は、初期設定サーバ12およびプロビジョニングサーバA,B(以下、単にサーバと呼ぶ)のブロック図である。サーバは、制御部30、記憶部31およびネットワーク通信部32を有している。記憶部31は、たとえばハードディスクやRAMなどで構成され、図7図8に示す各種のテーブルを記憶する。ネットワーク通信部32は、LTEネットワーク10を介して通信端末11や遠隔設定装置17と通信する。制御部30は、LTEネットワーク10を介した通信により、遠隔設定装置17からプロビジョニングデータを取得して記憶部31に記憶する。また、制御部30は、LTEネットワーク10を介してアクセスしてきた通信端末11に対して記憶部31に記憶しているプロビジョニングデータを送信する。
【0035】
図7(A)、(B)は、初期設定サーバ12に設けられているシステム振り分けテーブルを示す図である。図7(A)は、遠隔設定装置17を振り分けるためのテーブルである。各遠隔設定装置17(識別情報)に対応づけて、その遠隔設定装置17に所属させる音声通信システム1−nのサーバのアドレスを記憶している。すなわち、音声通信システム1−1に所属させられるべき遠隔設定装置17には、プロビジョニングサーバA14−1、プロビジョニングサーバB15−1および呼制御コントローラ16−1のアドレスが対応付けられている。遠隔設定装置17の識別情報としては、LTEネットワーク10で通信するためのIDであるICCIDを用いればよい。通信端末11の識別情報も同様にICCIDを用いればよい。
【0036】
遠隔設定装置17は、毎回の電源オン時に、初期設定サーバ12にアクセスして、所属する音声通信システム1−nのサーバアドレスを取得することで、その音声通信システム1−nのサーバに対してのみデータ更新が可能になる。
【0037】
また、図7(B)は、通信端末11をそれぞれ所属する音声通信システム1−nに振り分けるためのシステム振り分けテーブルである。通信端末11は、プロビジョニングサーバA14−nにアクセスして全プロビジョニングデータを取得し、その音声通信システム1−nの通信端末11として運用可能になるため、このテーブルには、各通信端末11の識別情報に対応づけて、その通信端末11を所属させる音声通信システム1−nのプロビジョニングサーバA14−nのアドレスが記憶されている。
【0038】
通信端末11は、初期状態で電源がオンされると、初期設定サーバ12にアクセスし、プロビジョニングサーバA14−nのアドレスを取得する。通信端末11は、その後再起動してプロビジョニングサーバA14−nにアクセスし、その音声通信システム1−nに合わせたプロビジョニングデータを取得する。一度全プロビジョニングデータを取得した(設定済の)通信端末11は、その後の電源オン時には、初期設定サーバ12にアクセスせず、プロビジョニングサーバB15−nに直接にアクセスする。
【0039】
図7に示した初期設定サーバ12のシステム振り分けテーブルは、システム設置者によりシステム設置者設定装置19を用いて更新される。システム設置者がクライアントのために、音声通信システム1−n(プロビジョニングサーバA14−n、プロビジョニングサーバB15−n、呼制御コントローラ16−n)を設置し、通信端末11および遠隔設定装置17を引き渡す場合に、このシステム振り分けテーブルを設定しておくことで、通信端末11および遠隔設定装置17を専ら音声通信システム1−nのみにアクセスする機器とすることができる。
【0040】
図8(A)、(B)、(C)は、それぞれ、プロビジョニングサーバA14、プロビジョニングサーバB15および呼制御コントローラ16の記憶部31に設けられるテーブルの例を示す図である。
【0041】
図8(A)は、プロビジョニングサーバA14−nの記憶部31に設けられるプロビジョニングデータテーブルを示す図である。自己の音声通信システム1−nに所属する通信端末11のそれぞれに対応して、その端末装置11に設定すべき全てのプロビジョニングデータが記憶される。プロビジョニングデータは、上述したように共通データ412と個別データ413からなるが、このテーブルには全てのプロビジョニングデータが記憶されている。
【0042】
図8(B)は、プロビジョニングサーバB15−nの記憶部31に設けられるプロビジョニングデータテーブルを示す図である。このプロビジョニングデータテーブルには、各通信端末11の共通データ412および個別データ413のうち個別固定データ413Aが記憶されているが、個別可変データ413Bが記憶されていない。プロビジョニングサーバB15は、設定済の通信端末11に対してプロビジョニングを行うが、このときユーザによって更新された個別可変データ413Bを上書きしないように、個別データ413のうち個別固定データ413Aのみプロビジョニングするようにしている。
【0043】
図8(C)は、呼制御コントローラ16−nの端末テーブルを示す図である。端末テーブルには、この音声通信システム1−nに所属する通信端末11の一覧と各通信端末11のアクティブフラグが記憶されている。通信端末11が呼制御コントローラ16にアクセスしてレジストを要求すると、その通信端末11に対応するアクティブフラグをセットしてその通信端末11が稼働中である旨を記憶する。これによってこの通信端末11と音声信号の送受信を可能にする。
【0044】
これらテーブルそのものの設定、全データのプリセットはシステム設置者によって行われる。そして、サーバアドレス、呼制御コントローラアドレス、ポート番号を除くデータは、クライアントにより遠隔設定装置17を用いて設定可能である。また、個別可変データ413Bは、ユーザが通信端末11を操作する等して、通信端末11の記憶部41A内で変更可能である。
【0045】
図9は、各サーバにより、通信端末11のプロビジョニングデータ記憶エリア41Aにどのデータが設定される(書き込まれる)かを説明する図である。初期状態(工場出荷時、初期化時)には、初期設定アドレスのみが記憶されている。初期設定サーバ12にアクセスすると、プロビジョニングサーバA14のアドレスがプロビジョニングサーバアドレスの欄に書き込まれるとともに、再起動フラグがセットされる。プロビジョニングサーバA14にアクセスすると、プロビジョニングデータが全て書き込まれるとともに、プロビジョニングサーバアドレス欄がプロビジョニングサーバB15のアドレスに書き換えられる。この状態で通信端末11は設定済となる。そして、運用を開始するために再起動フラグがセットされる。
【0046】
設定済の通信端末11が電源オン(再起動)されると、プロビジョニングサーバB15にアクセスする。プロビジョニングサーバB15は、通信端末11に対してプロビジョニングデータのうち共通データ412および個別固定データ413Aを書き込む。個別可変データは413Bは、ユーザによって変更されている可能性があるため上書きしない。なお、個別可変データ413Bは、設定済となったのち、通信端末11の操作またはクローニング端末20からの設定によって書き換えることが可能である。
【0047】
図10は、遠隔設定装置17の起動時の動作を示すフローチャートである。電源がオンされると、初期設定サーバ12にアクセスする(S10)。初期設定サーバ12は、アクセスしてきた遠隔設定装置17の識別情報を読み取り、この識別情報に基づいて、この遠隔設定装置17が所属する音声通信システム1−nの各種サーバ、コントローラのアドレスを返信する。遠隔設定装置17は、この各種サーバ、コントローラのアドレスを取得する(S11)。サーバ、コントローラのアドレスを取得したことにより、設定用端末19からの操作により、これらサーバ、コントローラにアクセスしてデータを更新する動作が可能になる。
【0048】
図11は、通信端末11の初期状態からの設定手順を示す図である。通信端末装置11は、電源がオンされると、初期設定サーバ12にアクセスして(S20)、プロビジョニングサーバA14のアドレスを取得する(S21)。そして再起動して、プロビジョニングサーバA14にアクセスし(S22)、プロビジョニングサーバA14から全てのプロビジョニングデータを取得する(S23)。このデータのなかにはプロビジョニングサーバB15のアドレスも含まれている。通信端末11は、再起動して、プロビジョニングサーバB15にアクセスする(S24)。プロビジョニングサーバB15は、通信端末11に対して、共通データ412、個別固定データ413Aのみ再設定する(S25)。そして、通信端末11は、呼制御コントローラ16にアクセスしてレジストを要求する(S26)。呼制御コントローラ16からレジスト完了の通知が来ると(S27)、運用可能になる。
【0049】
一度電源がオフされた通信端末11または再起動された通信端末11は、S24から動作を開始し、プロビジョニングサーバB15にアクセスする。ここで、共通データ412および個別固定データ413Aが再設定される。これにより、電源オン前に遠隔設定装置17によってプロビジョニングデータが変更された場合でもそれを通信端末11の設定に反映させることができる。また、この場合でも、ユーザが個別に通信端末11の設定を変更している場合もあるため、個別可変データ413Bは上書きしない。
【0050】
図12は、図11で示した手順でプロビジョニングデータが設定される通信端末11の制御部40の動作を示すフローチャートである。電源がオンされるとプロビジョニングデータ記憶エリア41Aのプロビジョニングサーバアドレス記憶エリアにアドレスが記憶されているかを判断する(S40)。ここにアドレスが記憶されていない場合は(S40でNO)、初期状態からの電源オンであるため、制御部45は、初期設定サーバアドレス記憶エリアに記憶されているアドレスにアクセスするようLTE通信部45を制御する(S41)。この初期設定サーバ12のアドレスは工場出荷時に書き込まれており、初期化されても消去されることはない。制御部40は、初期設定サーバ12からプロビジョニングサーバA14のアドレスを取得し(S42)、これをプロビジョニングサーバアドレス記憶エリアに書き込む。そして、初期設定サーバ12によって再起動フラグがセットされるため、制御部40は、自ら再起動して(S43)、S40にもどる。
【0051】
S40でプロビジョニングサーバアドレスが書き込まれていると、制御部40は、そのアドレスにアクセスするようLTE通信部45を制御し(S50)、プロビジョニングサーバからプロビジョニングデータを取得する(S51)。通信端末11が、S50でプロビジョニングサーバA14にアクセスした場合にはS51で全プロビジョニングデータを取得する。このとき、プロビジョニングサーバアドレスがプロビジョニングサーバB15のアドレスに書き換えられ、且つ、再起動フラグもセットされる。通信端末11が、S50でプロビジョニングサーバB15にアクセスした場合には、S51で一部のプロビジョニングデータが取得され、再起動フラグはセットされない。すなわち、サーバから取得したプロビジョニングデータが、自己のメモリに記憶しているプロビジョニングデータと差異があった場合に再起動が発生するが、プロビジョニングサーバB15から取得するプロビジョニングデータは、先にプロビジョニングサーバA14から取得したプロビジョニングデータの一部であり差異が無いため、通信端末11は再起動しない。
【0052】
再起動フラグがセットされている場合には(S52でYES)、制御部40は、自ら再起動してS40にもどる。再起動フラグがセットされていない場合には(S52でNO)、制御部40は、呼制御コントローラ16にアクセスするようLTE通信部45を制御し、呼制御コントローラ16に対してレジストを要求する(S53)。レジストが完了すると(S54)、通信端末としての運用を開始する。
【0053】
この実施形態では、LTEネットワーク10を用いた音声通信システム1について説明したが、使用するネットワークはLTEネットワーク10に限定されない。
【0054】
通信端末11が本発明の端末装置に対応する。遠隔設定装置17またはシステム設置者設定装置19が本発明のデータ設定装置に対応する。
【0055】
図1図4において、各音声通信システム1−nの各サーバ、コントローラは、それぞれ別個のハードウェアであるように記載しているが、これらはハードウェアを共有していてもよい。すなわち、各サーバの全部または一部が仮想サーバであってもよく、その場合、それぞれが同一のハードウェア上で動作するサービスであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1−n 音声通信システム
2−n 呼制御システム
3−n 端末設定システム
10 LTEネットワーク
11 通信端末
12 初期設定サーバ
14 プロビジョニングサーバA
15 プロビジョニングサーバB
16 呼制御コントローラ
41A プロビジョニングデータ記憶エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12