(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6659949
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】音声処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/436 20110101AFI20200220BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20200220BHJP
H04N 5/60 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
H04N21/436
H04R3/00 310
H04N5/60
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-5692(P2016-5692)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-126926(P2017-126926A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕二
【審査官】
冨田 高史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−150079(JP,A)
【文献】
特開2009−253923(JP,A)
【文献】
特開2010−028454(JP,A)
【文献】
特開2012−085152(JP,A)
【文献】
TX-SR343 AVレシーバー 詳細ガイド,オンキヨー株式会社,2015年,pp.27, 36,URL,https://www.jp.onkyo.com/support/manual/manualpdf/TX-SR343.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 − 21/858
H04N 5/50 − 5/63
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビから入力される音声信号をスピーカーに出力するARC機能を有する音声処理装置であって、
前記テレビから入力される機器間転送するための規格に従ったSPDIF信号を、シリアル転送するための規格に従ったI2S信号に変換する変換部と、
前記I2S信号にデジタル信号処理を行う信号処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記テレビとCEC規格に従った通信を行っており、
自装置の内部状態がARC機能を実行する状態であり、
前記変換部が前記SPDIF信号をロックしており、且つ、前記信号処理部が前記I2S信号をロックしていない状態が、所定時間継続した場合に、ARC機能オフのコマンドを前記テレビに送信し、前記テレビに接続されている電源ラインをローレベルにした後、ハイレベルとし、ARC機能オンのコマンドを前記テレビに送信することを特徴とする音声処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置として、テレビから入力される音声信号をスピーカーに出力するARC(Audio Return Channel)機能を有するAVレシーバーがある(例えば、特許文献1参照。)。テレビとAVレシーバーとは、HDMI(登録商標)ケーブルで接続される。また、テレビからHDMI(登録商標)ケーブルを介して、デジタル音声信号がAVレシーバーに入力される。AVレシーバーは、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換して、スピーカーに出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−199693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、テレビから正常にAVレシーバーにデジタル音声信号が出力されているにもかかわらず、AVレシーバーに問題が発生すると、スピーカーから音声が出力されないという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、テレビから入力される音声信号をスピーカーに出力するARC機能を有する音声処理装置において、スピーカーから音声が出力されないという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の音声処理装置は、テレビから入力される音声信号をスピーカーに出力するARC機能を有する音声処理装置であって、前記テレビから入力される機器間転送するための規格に従った第1デジタル音声信号を、シリアル転送するための規格に従った第2デジタル音声信号に変換する変換部と、前記第2デジタル音声信号にデジタル信号処理を行う信号処理部と、制御部と、を備え、前記スピーカーから音声が出力されていない異常状態であると判断した場合に、ARC機能オフのコマンドを前記テレビに送信し、前記テレビに接続されている電源ラインをローレベルにした後、ハイレベルとし、ARC機能オンのコマンドを前記テレビに送信することを特徴とする。
【0007】
本発明では、制御部は、スピーカーから音声が出力されていない異常状態であると判断した場合に、ARC機能オフのコマンドをテレビに送信し、テレビに接続されている電源ラインをローレベルにした後、ハイレベルとし、ARC機能オンのコマンドをテレビに送信する。これにより、テレビは、音声処理装置が接続されなおしたと判断し、デジタル音声信号の出力を一旦停止した後、再開する。このため、信号処理部は、第2デジタル音声信号のロックをやり直すことになる。信号処理部は、ロックのやり直しにより、第2デジタル音声信号をロックすることができる可能性が高く、信号処理部が第2デジタル音声信号をロックすれば、スピーカーから正常に音声が出力される。このように、本発明によれば、音声処理装置の問題により、スピーカーから音声が出力されないという問題を解決することができる。
【0008】
第2の発明の音声処理装置は、第1の発明の音声処理装置において、前記制御部は、前記テレビと所定規格に従った通信を行っており、自装置の内部状態がARC機能を実行する状態であり、前記変換部が前記第1デジタル音声信号をロックしており、且つ、前記信号処理部が前記第2デジタル音声信号をロックしていない状態が、所定時間継続した場合に、前記異常状態であると判断することを特徴とする。
【0009】
第3の発明の音声処理装置は、第2の発明の音声処理装置において、前記所定規格は、CEC規格であることを特徴とする。
【0010】
第4の発明の音声処理装置は、第1〜第3の発明のいずれかの音声処理装置において、前記第1デジタル音声信号は、SPDIF信号であることを特徴とする。
【0011】
第5の発明の音声処理装置は、第1〜第4の発明のいずれかの音声処理装置において、前記第2デジタル音声信号は、I2S信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音声処理装置の問題により、スピーカーから音声が出力されないという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。
【
図2】スピーカーから音声が出力されていない場合のAVレシーバーの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。AVレシーバー1(音声処理装置)は、テレビ100とHDMI(登録商標)ケーブルにより接続されている。AVレシーバー1は、テレビ100から入力される音声信号をスピーカー200に出力するARC(Audio Return Channel)機能を有する。また、AVレシーバー1は、CEC(Consumer Electronics Control)規格に従った通信を行う機能を有する。
【0015】
図1に示すように、AVレシーバー1は、制御部2、記憶部3、表示部4、操作部5、デジタル信号入力端子6、DIR(Digital Audio Interface Receiver)7、DSP(Digital Signal Processor)8、D/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)9、ボリューム調整部10、増幅部11、スピーカー端子12を備える。
【0016】
制御部2は、記憶部3に記憶されたプログラムに従って、AVレシーバー1を構成する各部を制御する。記憶部3は、制御部2の主メモリとして機能するRAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)から構成されている。なお、記憶部3は、例示する構成に限られず、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等を含んでいてもよい。
【0017】
表示部4は、設定画面等を表示するものであり、LCD(液晶ディスプレイ)や蛍光表示管等である。操作部5は、ユーザー操作を受け付けるためのものであり、AVレシーバー1の筐体に設けられた操作ボタンやリモートコントローラーである。ユーザーは、操作部5を操作することにより、例えば、音声信号のボリューム値を指示することができる。
【0018】
デジタル信号入力端子6には、HDMI(登録商標)ケーブルを介して、テレビ100が接続されている。デジタル信号入力端子6には、テレビ100からSPDIF信号が入力される。DIR7(変換部)は、テレビ100から入力されるSPDIF信号(第1デジタル音声信号)を、I2S信号(第2デジタル音声信号)に変換する。変換されたI2S信号は、DSP8に出力される。DSP8(信号処理部)は、I2S信号に、イコライザー処理等のデジタル信号処理を行う。デジタル信号処理が行われたI2S信号は、DAC9に出力される。DAC9は、I2S信号をアナログ音声信号にD/A変換する。D/A変換されたアナログ音声信号は、ボリューム調整部10に出力される。
【0019】
ボリューム調整部10は、アナログ音声信号のボリューム値を調整する。ボリューム値が調整されたアナログ音声信号は、増幅部11に出力される。増幅部11は、ボリューム値が調整されたアナログ音声信号を増幅する。増幅されたアナログ音声信号は、スピーカー端子12に出力される。スピーカー端子12には、スピーカー200が接続されている。スピーカー200は、アナログ音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0020】
以下、スピーカー200から音声が出力されていない場合のAVレシーバー1の動作について説明する。制御部2は、以下の条件が全て成立している場合、スピーカー200から音声が出力されていない異常状態と判断する。
1.テレビ100とのCEC通信(ARC機能に関するコマンドのやりとり)が正常に行われていること。
2.AVレシーバー1の内部状態が、ARC機能を実行する状態であり、DIR7がSPDIF信号をロックしており、且つ、DSP8がI2S信号をロックしていないこと。
3.2の状態が所定時間継続していること。
【0021】
制御部2は、異常状態であると判断した場合、以下の処理を実行する。
1.ARC機能オフのCECコマンドをテレビ100に送信する。
2.テレビ100に接続されている電源ライン(5V)をローレベルにした後、ハイレベルとする。
3.ARC機能オンのCECコマンドをテレビ100に送信する。
【0022】
1〜3の処理により、テレビ100は、AVレシーバー1が、接続されなおしたと判断し、デジタル音声信号の出力を一旦停止した後、デジタル音声信号の出力を再開する。
【0023】
図2は、スピーカー200から音声が出力されていない場合のAVレシーバー1の動作を示すフローチャートである。まず、制御部2は、AVレシーバー1の内部状態が、ARC機能を実行する状態であるか否かを判断する(S1)。制御部2は、AVレシーバー1の内部状態が、ARC機能を実行する状態であると判断した場合(S1:Yes)、DIR7が、SPDIF信号をロックしているか否かを判断する(S2)。制御部2は、DIR7が、SPDIF信号をロックしていないと判断している間は(S2:No)、S2の処理を繰り返し実行する。
【0024】
制御部2は、DIR7が、SPDIF信号をロックしていると判断した場合(S2:Yes)、DSP8が、I2S信号をロックしているか否かを判断する(S3)。制御部2は、DSP8が、I2S信号をロックしていないと判断した場合(S3:No)、異常状態監視用のタイマーが起動しているか否かを判断する(S4)。制御部2は、異常状態監視用のタイマーが起動していないと判断した場合(S4:No)、異常状態監視用のタイマーを起動する(S5)。異常状態監視用のタイマーは、例えば、10秒間でタイムアウトとなるタイマーである。
【0025】
制御部2は、異常状態監視用のタイマーが起動していると判断した場合(S4:Yes)、又は、S5の処理の後、異常状態監視用のタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する(S6)。制御部2は、異常状態監視用のタイマーがタイムアウトしていないと判断している間は(S6:No)、S6の処理を繰り返し実行する。制御部2は、異常状態監視用のタイマーがタイムアウトしたと判断した場合(S6:Yes)、テレビ100にARC機能オフのCECコマンドを送信する(S7)。次に、制御部2は、テレビ100に接続されている電源ラインをローレベルにした後、ハイレベルにする(S8)。次に、制御部2は、テレビ100にARC機能オンのCECコマンドを送信する(S9)。
【0026】
制御部2は、AVレシーバー1の内部状態が、ARC機能を実行する状態でないと判断した場合(S1:No)、DSP8が、I2S信号をロックしていると判断した場合(S3:Yes)、処理を終了する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、制御部2は、スピーカー200から音声が出力されていない異常状態であると判断した場合に、ARC機能オフのCECコマンドをテレビ100に送信し、テレビ100に接続されている電源ラインをローレベルにした後、ハイレベルとし、ARC機能オンのコマンドをテレビに送信する。これにより、テレビ100は、AVレシーバー1が接続されなおしたと判断し、デジタル音声信号の出力を一旦停止した後、再開する。このため、DSP8は、I2S信号のロックをやり直すことになる。DSP8は、ロックのやり直しにより、I2S信号をロックすることができる可能性が高く、DSP8がI2S信号をロックすれば、スピーカー200から正常に音声が出力される。このように、本実施形態によれば、AVレシーバー1の問題により、スピーカー200から音声が出力されないという問題を解決することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0029】
上述の実施形態においては、音声処理装置として、AVレシーバーを例示した。これに限らず、他の音声処理装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0031】
1 AVレシーバー(音声処理装置)
2 制御部
7 DIR(変換部)
8 DSP(信号処理部)
100 テレビ
200 スピーカー