特許第6660001号(P6660001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660001
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】燃料蒸発ガス排出抑止装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   F02M25/08 301H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-245363(P2015-245363)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-110553(P2017-110553A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−121114(JP,A)
【文献】 特開2007−064154(JP,A)
【文献】 特開2010−158927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の吸気通路と燃料タンクとを連通する連通路と、
前記連通路に接続され前記連通路内の燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、
前記燃料タンクと前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉する密閉弁と、
前記燃料タンクへの給油の際に、前記燃料タンクの給油蓋を開弁する前に前記密閉弁を開弁して、前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを前記キャニスタに吸着させる給油制御部と、
前記内燃機関の運転中に、前記キャニスタに吸着された燃料蒸発ガスを前記吸気通路に導入して、当該燃料蒸発ガスを処理するキャニスタパージを実行するキャニスタパージ制御部と、を備え、
前記キャニスタパージ制御部は、前記燃料タンクへの給油完了後に、前記内燃機関を強制的に始動して前記キャニスタパージを実行し、当該キャニスタパージの完了から次の前記燃料タンクへの給油までエンジンの前記キャニスタパージを禁止することを特徴とする燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【請求項2】
前記キャニスタパージ制御部は、前記キャニスタパージの実行中における前記キャニスタから前記吸気通路への前記燃料蒸発ガスの導入量に基づいて、前記キャニスタパージの実行完了時期を設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【請求項3】
前記キャニスタから前記吸気通路に導入される燃料蒸発ガスの濃度を算出するパージ濃度算出部を備え、
前記キャニスタパージ制御部は、前記パージ濃度算出部により算出した前記燃料蒸発ガスの濃度に基づいて、前記キャニスタパージの実行完了時期を設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【請求項4】
前記連通路と前記キャニスタとの連通を開閉するキャニスタ開閉弁と、
前記燃料タンクの内圧を検出するタンク圧検出部と、
前記燃料タンクの内圧が第1の所定値以上である際に、前記キャニスタ開閉弁を閉弁するとともに前記密閉弁を開弁し、運転状態にある前記内燃機関の前記吸気通路に前記連通路を介して前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを導入して、当該燃料蒸発ガスを処理するタンクパージを行なうタンクパージ制御部を更に備え、
前記タンクパージ制御部は、更に、前記キャニスタパージ制御部による前記キャニスタパージの禁止期間中には、前記内燃機関の運転中において、前記燃料タンクの圧力が前記第1の所定値より低い第2の所定値未満となるまで前記タンクパージを実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料蒸発ガス排出抑止装置におけるパージ制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より車両の多くには、燃料タンク内で蒸発した燃料蒸発ガスの、給油時における大気への放出を防止するために、燃料タンクと内燃機関の吸気通路とを連通する連通路に介装するキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通又は封鎖する密閉弁(タンク封鎖弁)と、吸気通路とキャニスタとの間の連通路の連通と遮断とを行うパージ弁(パージソレノイドバルブ)とを備える燃料蒸発ガス排出抑止装置が設けられている。燃料蒸発ガス排出抑止装置は、給油をする際には密閉弁を開きパージ弁を閉じて、燃料タンク内の燃料蒸発ガスをキャニスタに流出するようにし、燃料蒸発ガスをキャニスタ内に配設された活性炭に吸着させている。そして、燃料蒸発ガス排出抑止装置は、内燃機関の作動中にパージ弁を開き、キャニスタの活性炭に吸着させている燃料蒸発ガスを内燃機関の吸気通路に導入して燃料蒸発ガスを処理する(キャニスタパージ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−92315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなキャニスタパージは、例えば車両走行中でのキャニスタパージの実行を回避するようにエンジン始動時に所定時間行うようにしている。
しかし、このようにエンジン始動時に行うようにすると、例えばハイブリッド車のようにエンジンを作動しないで走行するEVモードが可能な車両では、EV走行のみ行なっている場合にキャニスタパージが行なわれず、キャニスタの吸着容量を超えて吸着が不能となり、給油時に燃料タンクから燃料蒸発ガスが給油口から漏れてしまう虞がある。また、エンジン始動時にキャニスタに燃料蒸発ガスが多く吸着していない場合もあり、このような場合では無駄なキャニスタパージを実行することになってしまう。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、キャニスタパージを適切なタイミングで実施して、キャニスタの吸着性能を維持するとともに無駄なキャニスタパージを抑制することができる燃料蒸発ガス排出抑止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の燃料蒸発ガス排出抑止装置は、車両の内燃機関の吸気通路と燃料タンクとを連通する連通路と、前記連通路に接続され前記連通路内の燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、前記燃料タンクと前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉する密閉弁と、前記燃料タンクへの給油の際に、前記燃料タンクの給油蓋を開弁する前に前記密閉弁を開弁して、前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを前記キャニスタに吸着させる給油制御部と、前記内燃機関の運転中に、前記キャニスタ開閉弁に吸着された燃料蒸発ガスを前記吸気通路に導入して、当該燃料蒸発ガスを処理するキャニスタパージを実行するキャニスタパージ制御部と、を備え、前記キャニスタパージ制御部は、前記燃料タンクへの給油完了後に、前記内燃機関を強制的に始動して前記キャニスタパージを実行し、当該キャニスタパージの完了から次の前記燃料タンクへの給油まで前記キャニスタパージを禁止することを特徴とする。
【0007】
また、好ましくは、前記キャニスタパージ制御部は、前記キャニスタパージの実行中における前記キャニスタから前記吸気通路への前記燃料蒸発ガスの導入量に基づいて、前記キャニスタパージの実行完了時期を設定するとよい。
また、好ましくは、前記キャニスタから前記吸気通路に導入される燃料蒸発ガスの濃度を算出するパージ濃度算出部を備え、前記キャニスタパージ制御部は、前記パージ濃度算出部により算出した前記燃料蒸発ガスの濃度に基づいて、前記キャニスタパージの実行完了時期を設定するとよい。
【0008】
また、好ましくは、前記連通路と前記キャニスタとの連通を開閉するキャニスタ開閉弁と、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク圧検出部と、前記燃料タンクの内圧が第1の所定値以上である際に、前記キャニスタ開閉弁を閉弁するとともに前記密閉弁を開弁し、運転状態にある前記内燃機関の前記吸気通路に前記連通路を介して前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを導入して、当該燃料蒸発ガスを処理するタンクパージを行なうタンクパージ制御部を更に備え、
前記タンクパージ制御部は、更に、前記キャニスタパージ制御部による前記キャニスタパージの禁止期間中には、前記内燃機関の運転中において、前記燃料タンクの圧力が前記第1の所定値より低い第2の所定値未満となるまで前記タンクパージを実行するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料タンクへの給油完了後に内燃機関を強制的に始動してキャニスタパージが実行されるので、給油の際にキャニスタに吸着させた燃料蒸発ガスをキャニスタから排出させ、キャニスタの吸着性能を回復し維持させることができる。
そして、キャニスタパージの完了から次の燃料タンクへの給油までキャニスタパージが禁止されるので、給油の際にキャニスタに燃料蒸発ガスが吸着される燃料蒸発ガス排出抑止装置において、無駄なキャニスタパージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料蒸発ガス排出抑止装置の概略構成図である。
図2】キャニスタパージ実施可否判定制御要領を示すフローチャートである。
図3】パージ制御要領を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料蒸発ガス排出抑止装置1の概略構成図である。
本実施形態の燃料蒸発ガス排出抑止装置1は、図示しない走行用モータ及びエンジン10(内燃機関)を備えこれらの駆動源のいずれか一方或いは双方を用いて走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車に用いられている。
【0012】
本実施形態の燃料蒸発ガス排出抑止装置1を備えた車両は、エンジン10を作動させずに車両に搭載したバッテリの電力により走行用モータで走行駆動するEVモードと、エンジン10を作動させてエンジン10及び走行用モータの両方で走行駆動するパラレルモードが可能である。
図1に示すように、燃料蒸発ガス排出抑止装置1は、車両に搭載されるエンジン10と、燃料を貯留する燃料貯留部20と、燃料貯留部20で蒸発した燃料の蒸発ガスを処理する燃料蒸発ガス処理部30と、車両の総合的な制御を行うための制御装置である電子コントロールユニット50と、後述する給油リッド23(給油蓋)の開作動を操作するモーメンタリ動作式の給油リッドスイッチ61と、車両状態等を表示するディスプレイ63とを備えている。
【0013】
エンジン10は、吸気通路噴射型(Multi Point Injection:MPI)のガソリンエンジンである。エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に空気を取り込む吸気通路11が設けられている。また、吸気通路11の下流には、エンジン10の吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁12が設けられている。燃料噴射弁12には、燃料配管13が接続され、燃料を貯留する燃料タンク21から燃料が供給される。
【0014】
エンジン10の吸気通路11には、吸気通路11内の圧力を検出する吸気圧センサ14が配設されている。また、エンジン10には、エンジン10の冷却水温度を検出する水温センサ15が配設されている。
燃料貯留部20は、燃料タンク21と、燃料タンク21への燃料注入口である燃料給油口22と、車両の車体に設けられる燃料給油口22の蓋である給油リッド23と、給油リッド23を閉状態でロックするリッドロック機構65と、燃料を燃料タンク21から燃料配管13を介して燃料噴射弁12に供給する燃料ポンプ24と、燃料タンク21の内圧である燃料タンク内圧Ptを検出する圧力センサ25(タンク圧検出部)と、燃料タンク21から燃料蒸発ガス処理部30への燃料の流出を防止する燃料カットオフバルブ26と、給油時に燃料タンク21内の液面を制御するレベリングバルブ27とで構成されている。また、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスは、燃料カットオフバルブ26よりレベリングバルブ27を経由して、燃料蒸発ガス処理部30に排出される。
【0015】
燃料蒸発ガス処理部30は、パージ配管(連通路)31と、ベーパ配管(連通路)32と、キャニスタ33と、エバポレーティブリークチェックモジュール34と、密閉弁35と、パージバルブ36と、バイパス弁37(キャニスタ開閉弁)と、リリーフ弁39と、エアフィルタ40とを備えている。
パージ配管31は、一端がエンジン10の吸気通路11に接続され、他端がバイパス弁37に接続されている。ベーパ配管32は、一端が燃料タンク21のレベリングバルブ27に接続され、他端がバイパス弁37に接続されている。
【0016】
キャニスタ33は、内部に活性炭を有している。キャニスタ33には、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガス或いは活性炭に吸着した燃料蒸発ガスが流通する蒸発ガス流通孔33bが設けられている。また、キャニスタ33には、活性炭に吸着した燃料蒸発ガスをエンジン10の吸気通路11に放出するときに外気を吸入するための外気吸入孔33aが設けられている。外気吸入孔33aは、外部からのゴミの侵入を防ぐエアフィルタ40及びエバポレーティブリークチェックモジュール34を介して外気を吸入可能となっている。
【0017】
バイパス弁37には、キャニスタ33の蒸発ガス流通孔33bに連通するように接続されるキャニスタ接続口37aが設けられている。また、バイパス弁37には、ベーパ配管32の他端が接続されるベーパ配管接続口37bと、パージ配管31の他端が接続されるパージ配管接続口37cとが設けられている。また、バイパス弁37は、無通電の状態で開弁し、外部から駆動信号が供給され通電状態となることにより閉弁状態となる常開弁の電磁弁である。そして、バイパス弁37は、無通電状態で開弁状態であるときには、キャニスタ接続口37aとベーパ配管接続口37bとパージ配管接続口37cとを連通するようにして、キャニスタ33への燃料蒸発ガスの流出入と、エアフィルタ40より吸入される外気のベーパ配管32及びパージ配管31への流入とを可能とする。また、バイパス弁37は、閉弁状態であるときには、キャニスタ接続口37aが封鎖され、ベーパ配管接続口37bとパージ配管接続口37cのみを連通して、キャニスタ33への燃料蒸発ガスの流出入とエアフィルタ40からキャニスタ33を介してベーパ配管32及びパージ配管31への大気の流入を不可とする。即ち、バイパス弁37は、ベーパ配管32及びパージ配管31に対し、閉弁状態であればキャニスタ33を封鎖し、開弁状態ではキャニスタ33を開放する。
【0018】
密閉弁35は、ベーパ配管32に介装されている。密閉弁35は、無通電の状態で閉弁し、外部から駆動信号が供給され通電状態となることにより開弁状態となる常閉弁の電磁弁である。密閉弁35は、閉弁状態であるとベーパ配管32を封鎖し、開弁状態であるとベーパ配管32を開放する。即ち、密閉弁35は、閉弁状態であれば燃料タンク21を密閉状態に封鎖し、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスのキャニスタ33及びエンジン10の吸気通路11への流出を不可とし、開弁状態であれば燃料蒸発ガスのキャニスタ33或いはエンジン10の吸気通路11への流出を可能とする。
【0019】
パージバルブ36は、パージ配管31に介装されている。パージバルブ36は、無通電の状態で閉弁し、通電状態となると開弁状態となる常閉弁の電磁弁である。パージバルブ36は、閉弁状態であるとパージ配管31を封鎖し、開弁状態であるとパージ配管31を開放する。即ち、パージバルブ36は、閉弁状態であればキャニスタ33或いは燃料タンク21よりエンジン10の吸気通路11への燃料蒸発ガスの流出を不可とし、開弁状態であればキャニスタ33或いは燃料タンク21よりエンジン10の吸気通路11へ燃料蒸発ガスの流出を可能とする。
【0020】
リリーフ弁39は、密閉弁35と並列にベーパ配管32に介装されている。リリーフ弁39は、燃料タンク21の内圧が上昇すると機械的に開弁し、圧力をキャニスタ33側へ逃がして燃料タンク21の破裂を防止するものである。
エバポレーティブリークチェックモジュール34は、内部に負圧ポンプ、切替弁、圧力センサを有しており、燃料蒸発ガス排出抑止装置1の洩れやバルブ等の故障判定に用いられる。
【0021】
ディスプレイ63は、車両状態を表示するものであり、例えば、給油リッドスイッチ61の操作から給油リッド23がロック解除されるまでの時間、給油リッド23の開放操作の中止、給油リッド23の開閉状態等を表示するものである。
電子コントロールユニット50は、車両の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成されており、給油制御部51、タンクパージ制御部52、キャニスタパージ制御部53、パージ濃度算出部55を備えている。
【0022】
電子コントロールユニット50の入力側には、上記吸気圧センサ14、水温センサ15、圧力センサ25及びエバポレーティブリークチェックモジュール34の圧力センサ、給油リッドスイッチ61等が接続されており、これらのセンサ類からの検出情報が入力される。
一方、電子コントロールユニット50の出力側には、上記燃料噴射弁12、燃料ポンプ24、エバポレーティブリークチェックモジュール34の負圧ポンプ及び切替弁、密閉弁35、パージバルブ36、バイパス弁37、ディスプレイ63、リッドロック機構65に備えられたドアモータ86等が接続されている。
【0023】
電子コントロールユニット50は、各種センサ類からの検出情報に基づいて、リッドロック機構65のドアモータ86を作動制御して給油リッド23の開閉制御を行うとともに、切替弁34e、密閉弁35、パージバルブ36及びバイパス弁37の開閉とを制御し、燃料タンク21にて発生した燃料蒸発ガスのキャニスタ33への吸着、キャニスタ33に吸着した燃料蒸発ガスや燃料タンク21にて発生した燃料蒸発ガスをエンジン10の運転時に吸気通路11へ導入するパージ処理制御を行う。
【0024】
給油リッド23の開閉制御は、燃料タンク21に燃料を補給する際に、燃料タンク21内の圧力が上昇しているときに燃料給油口22のキャップを開けて燃料給油口22から燃料蒸発ガスが多量に排出してしまうことを防止するために行なわれ、電子コントロールユニット50の給油制御部51によって行なわれる。給油制御部51は、給油リッドスイッチ61が操作された際に、密閉弁35及びバイパス弁37を開弁して、燃料タンク21内の燃料蒸発ガスをキャニスタ33に吸着させて、燃料タンク21内の圧力を低下させてから、給油リッド23のロックを解除する。
【0025】
パージ処理制御としては、キャニスタ33に吸着した燃料蒸発ガスを吸気通路11へ導入して、キャニスタ33における燃料蒸発ガスの吸着量を低下させるキャニスタパージと、燃料タンク21内の燃料蒸発ガスをエンジン10の吸気通路11へ導入するタンクパージ(高圧パージ)が可能である。
タンクパージは、電子コントロールユニット50のタンクパージ制御部52によって行なわれ、バイパス弁37を閉弁し、エンジン10の運転中に密閉弁35及びパージバルブ36を開弁させることで、燃料タンク21内の燃料蒸発ガスを吸気通路11へ導入して処理する。
【0026】
キャニスタパージは、電子コントロールユニット50のキャニスタパージ制御部53によって行なわれ、エンジン運転中においてパージバルブ36及びバイパス弁37を開弁することで、キャニスタ33に吸着されている燃料蒸発ガスを吸気通路11へ導入して処理する。なお、このとき、密閉弁35は閉弁状態とする。
次に、図2図3を用いて、電子コントロールユニット50において実行するキャニスタパージ及びタンクパージの制御について説明する。図2は、キャニスタパージ実施可否判定制御要領を示すフローチャートである。図3は、パージ制御要領を示すフローチャートである。
【0027】
図2及び図3のルーチンは、夫々所定時間毎に繰り返し行なわれる。
図2に示すように、始めにステップS10では、前回の本ステップによる給油の有無の判定から給油があったか否かを判別する。給油があったか否かについては、例えば給油リッドスイッチ61の操作や、燃料タンク21に備えられたレベリングセンサの検出値(燃料タンク21内の燃料の貯留量)の変化等に基づいて判定すればよい。給油があった場合には、ステップS20に進む。給油がない場合には、ステップS30に進む。
【0028】
ステップS20では、給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)を0にする。給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)は、後述するキャニスタパージ量Qp(r)の積算値である。そして、ステップS40に進む。
ステップS30では、次式(1)に示すように、メモリに記憶されている前回までの給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n-1)に、今回増加したキャニスタパージ量Qp(r)を加算して、その加算値を現状の給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)としてメモリに記憶する。
【0029】
ΣQp(n)=ΣQp(n-1)+Qp(r) ・・・(1)
なお、キャニスタパージ量Qp(r)は、キャニスタパージによりキャニスタ33から吸気通路11に導入された燃料蒸発ガスを含むパージガスの流量であり、例えばパージバルブ36の開度に基づく値である。そして、ステップS40に進む。
ステップS40では、給油後キャニスタパージ実施条件が成立したか否かを判別する。給油後キャニスタパージ実施条件は、例えば、次式(2)のように、現状の給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)が所定値Qpa未満とすればよい。この所定値Qpaは、例えば0に近い正値に設定すればよい。
【0030】
ΣQp(n)<Qpa・・・(2)
なお、本ステップで式(2)の判定の代わりに、次式(3)に示すように、キャニスタパージ濃度Pcが所定値Pca以下であることを給油後キャニスタパージ実施条件としてもよい。
Pc≦Pca・・・(3)
キャニスタパージ濃度Pcは、キャニスタパージ時にキャニスタ33から吸気通路11に導入されるパージガスにおける燃料蒸発ガスの濃度である。キャニスタパージ濃度Pcは、例えば特開平11-72049号公報に記載されているように、空燃比のフィードバック制御を行うエンジンにおいて、フィードバック制御において用いられるフィードバック補正係数、パージ流量(キャニスタパージ量Qp(r))、吸入空気量等に基づいて演算すればよい。このキャニスタパージ濃度Pcの演算は、電子コントロールユニット50に設けられたパージ濃度算出部55において行なわれる。なお、所定値Pcaは、1.0(等量比で無限大)に設定すればよい。
【0031】
また、本ステップにおいて、上記式(2)及び式(3)の少なくともいずれか一方が満たされた際に、給油後キャニスタパージ実施条件が成立したと判定してもよい。
あるいは、給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)の代わりにキャニスタパージの実行時間に基づいて判定してもよい。
給油後キャニスタパージ実施条件が成立した場合には、ステップS50に進む。給油後キャニスタパージ実施条件が成立しない場合には、ステップS60に進む。
【0032】
ステップS50では、給油後キャニスタパージ完了フラグをクリアし、キャニスタパージを実施可とする。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS60では、給油後キャニスタパージ完了フラグをセットし、キャニスタパージを実施不可とする。そして、本ルーチンを終了する。
図3に示すように、始めにステップS100では、給油後キャニスタパージ完了フラグがクリアしているか否かを判別する。給油後キャニスタパージ完了フラグがクリアしている場合には、ステップS110に進む。給油後キャニスタパージ完了フラグがクリアしていない場合には、ステップS140に進む
ステップS110では、エンジン運転要求をし、エンジン10停止時にはエンジン10を始動させて強制運転させる。そして、ステップS120に進む。
【0033】
ステップS120では、圧力センサ25により検出した燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa未満であるか否かを判別する。なお、この所定圧Paは、タンクパージを必要とするか否かを判別する閾値であり、燃料タンク内圧Ptの上昇時には所定圧P1(第1の所定値)、燃料タンク内圧Ptの低下時には所定圧P1よりも低い所定圧P3(第2の所定値)に設定され、ヒステリシスを持たせるようになっている。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa未満である場合には、ステップS130に進む。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa以上である場合には、ステップS150に進む。
【0034】
ステップS130では、キャニスタパージ制御部53により、キャニスタパージ制御を実施する。キャニスタパージ制御は、パージ濃度算出部55によるキャニスタパージ濃度(パージ濃度)の算出、エンジン10の運転状態に適した目標キャニスタパージ率の算出、パージバルブ36の制御用の目標キャニスタパージDUTYを算出して、上記のように、パージバルブ36及びバイパス弁37を開弁、密閉弁35を閉弁した上で、パージバルブ36の開度を制御して、吸気通路11への燃料蒸発ガスの導入量を調整して、キャニスタパージを実行させる。そして、本ルーチンを終了する。
【0035】
ステップS140では、圧力センサ25により検出した燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa以上であるか否かを判別する。なお、この所定圧Paは、ステップS120と同様に、燃料タンク内圧Ptの上昇時には所定圧P1、燃料タンク内圧Ptの低下時には所定圧P1よりも低い所定圧P3に設定される。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa以上である場合には、ステップS150に進む。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pa未満である場合には、ステップS170に進む。
【0036】
ステップS150では、エンジン運転要求をし、エンジン10停止時にはエンジン10を始動させて強制運転させる。そして、ステップS160に進む。
ステップS160では、タンクパージ制御を実施する。タンクパージ制御は、パージ濃度算出部55においてキャニスタパージ濃度と同様に算出したタンクパージ濃度(パージ濃度)の算出、エンジン10の運転状態に適した目標タンクパージ率の算出、パージバルブ36の制御用の目標タンクパージDUTYを算出して、上記のように、パージバルブ36及び密閉弁35を開弁、バイパス弁37を閉弁した上で、パージバルブ36の開度を制御して、吸気通路11への燃料蒸発ガスの導入量を調整して、タンクパージを実行させる。そして、本ルーチンを終了する。
【0037】
ステップS170では、圧力センサ25により検出した燃料タンク内圧Ptが所定圧Pb以上であるか否かを判別する。なお、この所定圧Pbは、エンジン運転中である場合にタンクパージを実施するか否かを判別する閾値であり、燃料タンク内圧Ptの上昇時には所定圧P2、燃料タンク内圧Ptの低下時には所定圧P3に設定され、ヒステリシスを持たせるようになっている。なお、所定圧P2は、所定圧P1より低く、所定圧P3より大きい値である。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pb以上である場合には、ステップS180に進む。燃料タンク内圧Ptが所定圧Pb未満である場合には、本ルーチンを終了する。
【0038】
ステップS180では、エンジン運転中であるか否かを判別する。エンジン運転中である場合には、ステップS160に進む。エンジン運転中でない場合には、本ルーチンを終了する。
以上のように、本実施形態では、燃料タンク21への給油完了後に、例えば給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)がQpa未満となり、給油後キャニスタパージ実施条件が成立してキャニスタパージが開始される。そして、給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)が所定値Qpa以上となって、給油後キャニスタパージ実施条件の成立が解除されるまでキャニスタパージが実行される。
【0039】
そして、この給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)は、次の給油があるまで0にならず、減少もしないので、キャニスタパージ完了後は、次の給油があるまで給油後キャニスタパージ実施条件が成立せずにキャニスタパージが禁止される。
本実施形態では、燃料タンク21へ給油する際にバイパス弁37を開弁してキャニスタ33に燃料タンク21内の燃料蒸発ガスを吸着させ、通常はバイパス弁37は閉弁しているので、給油の際のみキャニスタ33に燃料蒸発ガスが吸着する。そこで、本実施形態では、燃料タンク21へ給油後にキャニスタパージを実行し、次の燃料タンク21への給油までキャニスタパージを禁止するので、給油によってキャニスタ33に吸着される燃料蒸発ガスをその都度、吸気通路11に導入して処理し、キャニスタ33の性能を維持させるとともに、無駄なキャニスタパージを抑制することができる。
【0040】
特に、ハイブリッド車では、エンジン10が作動せずに車両走行が開始され、走行中にエンジン10の始動が行なわれる場合がある。このような車両において、例えばエンジン始動とともにキャニスタパージを実行するように設定すると、エンジン10の筒内への燃料供給量に影響して、車両走行中でのエンジン出力に影響を及ぼす可能性あるが、本実施形態では燃料タンク21への給油完了後のみにキャニスタパージを実行するので、車両走行中でのキャニスタパージの実行が抑制され、車両走行中でのエンジン出力への影響を回避することができる。また、例えエンジン10が作動しないEVモードのみで走行している場合でも、給油完了後にキャニスタパージが実行されることで、キャニスタ33の吸着容量を超えて吸着が不能となることを防止することができる。
【0041】
また、給油後に実行するキャニスタパージについては、上記ステップS40における式(1)のように、給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)が所定値Qpa以上となるまで実行させることで、キャニスタ33から燃料蒸発ガスが充分に排出されるように、キャニスタパージを適切に終了させることができる。
また、ステップS40において、式(2)のように、キャニスタパージ濃度Pcが所定値Pcaは、1.0未満となるまでキャニスタパージを実行させることで、キャニスタに吸着された燃料が無くなったことを正確に推定することができ、キャニスタパージをより適切に過不足なく実行させることができる。
【0042】
また、給油後キャニスタパージ積算量ΣQp(n)及びキャニスタパージ濃度Pcの両方でキャニスタパージの実行判定を行なうことで、いずれか一方の判定精度が低下しても、他方の判定によって、キャニスタパージの過剰な実行を更に抑制することができる。
また、給油後キャニスタパージ完了フラグがクリアしている、即ちキャニスタパージが完了していない場合には、エンジン10を強制運転して、キャニスタパージを実行する。但し、燃料タンク内圧Ptが所定圧P1以上である場合には、給油後キャニスタパージ完了フラグに拘わらず、エンジン10を強制運転の上、タンクパージを実行する。これにより、燃料タンク内圧Ptを確実に所定圧P1以下にすることができ、燃料タンク21の破裂を防止することができる。
【0043】
また、給油後キャニスタパージ完了フラグがクリアしていない、即ちキャニスタパージが禁止されている際には、燃料タンク内圧Ptが所定圧P1未満であっても、所定圧P2以上である場合には、エンジン10が運転中であることを条件として、タンクパージ制御が実施される。したがって、エンジン10の運転中に、燃料タンク21内の圧力を所定圧P2未満に下げておくことができ、エンジン10の強制始動を伴うタンクパージの頻度を低下させ、燃費を向上させることができる。
【0044】
更に、燃料タンク内圧Ptが所定圧P3未満である場合には、タンクパージを行なわないので、タンクパージにより燃料タンク内圧Ptを所定圧P3未満に低下させてしまうことを防止し、燃料タンク21の凹みを防止することができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、燃料蒸発ガス排出抑止装置1がハイブリッド車あるいはプラグインハイブリッド車に採用されているが、これら以外でエンジンを搭載した車両に採用したものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路
21 燃料タンク
25 圧力センサ(タンク圧検出部)
31 パージ配管(連通路)
32 ベーパ配管(連通路)
33 キャニスタ
35 密閉弁
37 バイパス弁(キャニスタ開閉弁)
50 電子コントロールユニット
51 給油制御部
52 タンクパージ制御部
53 キャニスタパージ制御部
55 パージ濃度算出部
図1
図2
図3