(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660136
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫用金型及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20200220BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20200220BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20200220BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20200220BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-197033(P2015-197033)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-65233(P2017-65233A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲二
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−221586(JP,A)
【文献】
特開平10−138249(JP,A)
【文献】
特開2010−143043(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/080378(WO,A1)
【文献】
特開2014−162099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並設されて環状をなす複数のセクタを備えたタイヤ加硫用金型であって、
前記各セクタは、トレッド成形面を構成する内面と、前記内面に対して径方向の反対側に位置する外面と、前記外面に形成された取付穴と、前記内面と前記取付け穴とを連通するベントホールと、を有し、
前記セクタを前記外面側から支持しており、前記取付孔穴の軸心に同心状に形成された締め付け穴を有する、セグメントと、
前記取付穴に螺合されており、内径部に雌ネジ部を有する中間部材と、
前記セグメント側から前記締め付け穴を通して、前記中間部材の前記雌ネジ部に螺合され、軸心方向に延びる貫通孔が形成されたボルトと、
を備えたことを特徴とするタイヤ加硫用金型。
【請求項2】
前記中間部材は、前記取付穴の底面との間に隙間を有する状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項3】
前記ボルトは、前記取付穴に中間部材を螺合した状態で、前記中間部材への螺合先端位置が、前記取付穴の底面から離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項4】
前記中間部材は、前記取付穴の底面に当接する一端面から他端側に向かって延び、内面と外面を連通する切欠溝を有することを特徴とする請求項3に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項5】
前記セクタは、前記ベントホールが開口する内面にスプリングベントが配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1つに記載のタイヤ加硫用金型を用いて、グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ製造方法であって、
型締め時、内部のガスを、前記セクタの前記内面側から前記ベントホールを介して前記取付穴に流動させ、前記取付穴に螺合する前記中間部材に螺合した前記ボルトの軸心方向に延びる貫通孔を介して前記セクタの外部へと排出することを特徴とするタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫用金型、及び、このタイヤ加硫用金型を使用したタイヤ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ加硫用金型として、セクタのトレッド成形面(内面)と背面(外面)とを連通するベントホールが取付け用ネジを螺合するための取付穴と重なる場合、取付け用ネジの円筒軸方向に延びる連通孔を設けることにより、ベントホールから連通孔を介して、加硫成形時に発生するガスを外部に排出するようにしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来のタイヤ加硫用金型では、取付け用ネジの外面にガス抜き用の連通孔を形成するようにしている。このため、取付け用ネジによる支持強度が低下し、セクタの支持状態が安定しないという問題がある。また取付け用ネジの外面への加工は、そのネジ形状のために面倒で時間がかかり、生産性の点で問題がある。さらにセクタはタイヤのトレッド面の違い等により変更されるが、外面に加工が施された取付け用ネジの螺合作業は実際には難しく、組替性の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、取付ネジの支持強度の低下及び生産性の悪化、あるいは、セクタへの組替性の悪化をもたらすことなく、効果的なガス抜きを実現とすることができるタイヤ加硫用金型及びタイヤ製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
周方向に並設されて環状をなす複数のセクタを備えたタイヤ加硫用金型であって、
前記各セクタは、トレッド成形面を構成する内面と、
前記内面に対して径方向の反対側に位置する外面と、
前記外面に形成された取付穴と、前記内面と
前記取付穴とを連通するベントホールと
、を有し、
前記セクタを前記外面側から支持しており、前記取付孔穴の軸心に同心状に形成された締め付け穴を有する、セグメントと、
前記取付穴に螺合され
ており、内径部に雌ネジ部を有する中間部材と、
前記セグメント側から前記締め付け穴を通して、前記中間部材
の前記雌ネジ部に螺合され、軸心方向に延びる貫通孔
が形成されたボルトと、
を備えたことを特徴とするタイヤ加硫用金型を提供する。
【0007】
この構成により、加硫成形時、残留ガスはベントホールから取付穴を通過し、ボルトに形成した貫通孔を介して排出される。このボルトは貫通孔を形成しただけのシンプルな構成であるので、簡単に加工することができる。また、ボルトの雄ネジ部には特殊な加工は不要であるので、ボルトによるセクタの支持状態を強固で安定したものとすることができる。勿論、ボルトを螺合したり、取り外したりする際の作業性が阻害されることもない。
【0008】
前記中間部材は、前記取付穴の底面との間に隙間を有する状態で取り付けられているのが好ましい。
【0009】
この構成により、ベントホールを介して取付穴に進入した残留ガスを、中間部材に邪魔されることなく、ボルトの先端に開口する貫通孔へと流動させることができる。
【0010】
前記ボルトは、前記取付穴に中間部材を螺合した状態で、前記中間部材への螺合先端位置が、前記取付穴の底面から離れているのが好ましい。
【0011】
この構成により、中間部材内に流入した残留ガスを、ボルトに形成した貫通孔を介して外部へと導くことができる。
【0012】
前記中間部材は、前記取付穴の底面に当接する一端面から他端側に向かって延び、内面と外面を連通する切欠溝を有するのが好ましい。
【0013】
この構成により、中間部材の螺合位置に拘わらず、切欠溝を介して確実に残留ガスを排出するルートを確保することができる。
【0014】
前記セクタは、前記ベントホールが開口する内面にスプリングベントが配置されているのが好ましい。
【0015】
この構成により、型締めが完了する直前までスプリングベントを開口させて残留ガスを排気することができ、型締め完了後はスプリングベントを閉鎖させてゴムの流出を防止することができる。
【0016】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、
上記タイヤ加硫用金型を用いて、グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ製造方法であって、
型締め時、内部のガスを、
前記セクタの
前記内面
側から前記ベントホールを介して
前記取付穴に流動させ、前記取付穴に螺合する
前記中間部材に螺合した
前記ボルトの軸心方向に延びる貫通孔を介して
前記セクタの外部へと排出することを特徴とするタイヤ製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボルトに形成した貫通孔を介して残留ガスを排出することができる。ボルトは貫通孔を形成しただけであり簡単に加工することができる。ボルトの雄ネジ部には何ら加工が施されていないので、セクタの支持状態を強固で安定したものとすることができると共に、ボルトの螺合及び取外に問題が生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るタイヤ加硫用金型を装着した加硫成形機の一部を示す正面半断面図である。
【
図2】
図1のタイヤ加硫用金型の型締め動作を示す正面半断面図である。
【
図3】
図1のセクタ及びセグメントを示す分解斜視図である。
【
図8】
図1に示すタイヤ加硫用金型によって加硫成形されることにより得られたタイヤの部分展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0020】
図1は、加硫成形機1に本実施形態に係るタイヤ加硫用金型2を装着した状態を示す。加硫成形機1の上プレート3及び上プラテン4と、下プラテン5との間に、コンテナ6を介してタイヤ加硫用金型2が取り付けられている。
【0021】
上プレート3は昇降シリンダ7の下端部に固定されている。昇降シリンダ7の中心には昇降ロッド8が配置されている。昇降ロッド8の下端部には上プラテン4が固定されている。昇降シリンダ7と昇降ロッド8は図示しない駆動機構によって昇降する。但し、上プレート3と上プラテン4とは独立して昇降可能となるように構成されている。上プラテン4には流路4aが形成され、熱交換媒体(例えば、オイル)が流動することにより温調できるようになっている。
【0022】
下プラテン5には、前記上プラテン4と同様に熱交換媒体が流動する流路5aが形成されている。そして、熱交換媒体の温度を調整することにより、上プラテン4及び下プラテン5を介してタイヤ加硫用金型2を所望の加硫温度にすることができるようになっている。下プラテン5の中心にはブラダユニット9が配置されている。
【0023】
ブラダユニット9は、昇降可能な支軸10に固定した上クランプ11及び下クランプ12にブラダ13を取り付けたものである。上クランプ11、下クランプ12及びブラダ13によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出される。ブラダは、空気が供給されて外周側に膨らみ、グリーンタイヤを内側から支持する。
【0024】
コンテナ6は、セグメント14、ジャケットリング15、上コンテナプレート16、及び下コンテナプレート17で構成されている。
【0025】
セグメント14は、後述するタイヤ加硫用金型2の各セクタ20をそれぞれネジ止めする複数個(ここでは、7個)で構成されている。各セグメント14の内面はセクタ20の外面20bに沿っており、外面は下方に向かうに従って徐々に外径側に膨らむ傾斜面(外周側円錐面14a)で構成されている。各セグメント14は上スライド18に径方向に往復移動可能に支持されている。
【0026】
ジャケットリング15は中空円筒状で、上端面を上プレート3に固定されている。そして、昇降シリンダ7の昇降動作に従って昇降する。ジャケットリング15の内面は、下端側に向かうに従って徐々に外径側に傾斜する内周側円錐面15aで構成されている。ジャケットリング15の内周側円錐面と各セグメント14の外周側円錐面とは、その円錐面に沿ってスライドし、(例えば、ほぞと蟻溝のような構成により)互いに離れないようになっている。これにより、ジャケットリング15が降下すれば、その内周側円錐面15aで前記各セグメント14の外周側円錐面14aを押圧し、外径側に広がった状態のセグメント14を、内径側で環状に連なった状態へと移動させることができるようになっている。
【0027】
上コンテナプレート16は、外周側下面に上スライド18が固定され、内周側下面に後述する上型21が固定されている。上コンテナプレート自体は上プラテン4の下面に固定されている。これにより、昇降ロッド8が昇降すれば、上プラテン4及び上コンテナプレート16と共に、上型21及びセグメント14(セグメント14に固定されたセクタ20を含む)が昇降することになる。
【0028】
下コンテナプレート17は、外周側上面に下スライド19が固定され、内周側上面には後述する下型22が固定されている。下スライド19には、型締め時にセグメント14が載置され、径方向にスライド可能に支持する。下コンテナプレート自体は下プラテン5の上面に固定されている。
【0029】
タイヤ加硫用金型2は、セクタ20、上型21、及び下型22で構成されている。
【0030】
セクタ20はアルミ合金からなり、タイヤ周方向に複数に分割され(ここでは、7分割)、内径側に移動した状態で環状に連なる。各セクタ20は、内面20aがタイヤのトレッド部を成形するためのトレッド成形面で構成されている。
【0031】
各セクタ20には、
図4に示すように、内面20aと外面20bとを連通する複数のベントホール23が形成されている。各ベントホール23には、内面側にベントプラグ24がそれぞれ装着されている。ベントプラグ24は、
図5に示すように、ベントホール23に嵌合される筒状のハウジング25と、このハウジング25内に挿入されて通路を開閉するステム26と、このステム26を内面20aから突出するように付勢するスプリング27とを備える。
【0032】
各セクタ20の外面20bには、
図3に示すように、セグメント14に固定するための複数の取付穴28が形成されている。取付穴28には雌ネジが形成され、そこにはエンザート29が装着されている。エンザート29はステンレス鋼等、セクタ20よりも硬度の高い材質からなる。エンザート29には、
図7に示すように、外周に取付穴28の雌ネジに螺合する雄ネジ29aが形成され、内周に雌ネジ29bが形成されている。またエンザート29には一端側に切欠溝29cが形成されている。切欠溝29cは、エンザート29の一端から軸心方向に延びる一対の切欠きからなり、切欠き同士はエンザート29の軸心を中心として対称な位置に配置されている。
【0033】
エンザート29の雌ネジ29bには、セグメント14に固定するためのボルト30が螺合している。取付穴28に装着したエンザート29にボルト30を螺合した状態では、ボルト30の先端面と取付穴28の底面との間に隙間が形成されている。ボルト30には、
図6に示すように、先端面とヘッドとを連通する中心孔30aが形成されている。この中心孔30aの加工はドリル等で簡単に行うことができる。またボルト30の雄ネジへの加工がないため、この加工に伴う雄ネジでの損傷は発生しにくいし、損傷することによりエンザート29への螺合が難しくなるといった不具合も発生しにくい。
【0034】
各取付穴28には、
図4に示すように、ベントホール23が連通している。ベントホール23は、これにより、タイヤ加硫用金型2内の空気が、ベントホール23を介して取付穴28へと流入し、エンザート29の切欠溝29cを介してボルト30の中心孔30aからセグメント側へと流動する。そして、この空気は、セグメント14に形成した図示しないガス抜き溝を介してタイヤ加硫用金型2の外部へと排出される。なお、型締め時、タイヤ加硫用金型2が配置される、上プレート3、ジャケットリング15、下コンテナプレート17によって囲まれた空間は、適宜必要な箇所がOリング等によって封止されることにより密閉される。この密閉空間は、図示しない真空ポンプ等によって真空引きされている。これにより、タイヤ加硫用金型内の残留ガスを密閉空間へと排出しやすくなっている。また、ベントホール23は、取付穴28に連通するもののほか、例えば、
図8の2点鎖線で示すように、加硫成型後のタイヤTのトレッド部に形成された複数のブロックBに対して、複数箇所に形成されている。
【0035】
各セクタ20の両側面は、内径側が隣接するセクタ同士で互いに当接する当接面20cで構成され、外径側が隙間を形成する逃がし面20dで構成されている。
【0036】
図1に示すように、上型21は環状に形成されており、内周部には上ビードリング31が固定されている。上型21は上コンテナプレート16に固定されており、昇降ロッド8の昇降動作に伴って昇降する。降下する際、上ビードリング31でグリーンタイヤGTのビード部を押さえることができるようになっている。これにより、上型21の下内面と、上ビードリング31の下面とで、タイヤのサイドウォール部とビード部とが形成される。
【0037】
下型22は、前記上型21と同様に環状に形成されており、内周部には下ビードリング32が固定されている。
【0038】
前記構成からなるタイヤ加硫用金型2を装着された加硫成形機1では、次のようにして型締めが行われ、グリーンタイヤGTの加硫成形が行われる。
【0039】
すなわち、
図2(a)に示す型開き状態で、グリーンタイヤGTをその軸心方向が上下に向かうようにして下型22上に載置する。このとき、下方側に位置するビード部を下ビードリング32に位置決めする。
図2(b)に示すように、ブラダ13内に空気を供給して膨張させ、その外面でグリーンタイヤGTの内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤGTは、下ビードリング32とブラダ13によって支持され、下型22とは非接触状態となる。
【0040】
そして、図示しない駆動装置を駆動することにより昇降ロッド8及び昇降シリンダ7を降下させ、型締め動作を開始する。これによりまず、
図2(c)に示すように、上ビードリング31がグリーンタイヤGTの上方側に位置するビード部に当接する。そして、
図2(d)に示すように、ビード部を介してグリーンタイヤが変形した後、上型21がグリーンタイヤGTに当接する。
【0041】
続いて、上型21がグリーンタイヤGTに当接してから型締めが完了する位置までの所定位置で、一旦、上型21の降下動作を停止させる。さらに、上型21を型締め完了位置まで降下させることにより、
図2(e)に示すように、グリーンタイヤGTは上型21と下型22とによって挟持された状態となる。
【0042】
上型21が型締め完了位置まで降下した後も昇降シリンダ7による降下が続行され、上プレート3と共にジャケットリング15が下方側へと移動する。そして、ジャケットリング15の内周側円錐面がセグメント14の外周側円錐面を押圧する。これにより、セグメント14に固定したセクタ20が内径側へと移動する。
【0043】
セクタ20の内面がグリーンタイヤGTの外面に当接した時点で、一旦、昇降シリンダ7の降下を停止させた後、上プレート3が上プラテン4に当接するまで降下させる。これにより、グリーンタイヤGTは、
図2(f)に示すように、外側は上型21、下型22及びセクタ20によって、内側はブラダ13によって押圧された状態となる。上プラテン4及び下プラテン5には、(型開き状態及び型締め状態の如何に拘わらず)常時、グリーンタイヤGTを所定の加硫温度で加硫できるように温調された熱交換媒体が流動している。これにより、グリーンタイヤGTが加硫成形され、タイヤが完成する。
【0044】
このとき、セクタ20の内面側での残留エアは、ベントホール23を介して排出される。すなわち、ベントホール23に装着したベントプラグ24では、当初ハウジングからステム26が突出した状態となって通路を開放させている。そしてベントホール23は取付穴28に連通している。また取付穴28ではエンザート29が螺合されているが、このエンザート29には切欠溝29cが形成されている。エンザート29に螺合されるボルト30には取付穴28の底面との間に隙間が形成されている。さらに、加硫成形機の密閉空間は真空ポンプに接続されている。このため、タイヤ加硫用金型2内の残留エアはベントホール23を介して取付穴28へと流動し、エンザート29の切欠溝29cからボルト30の中心孔30aを経てセグメント14側へと至った後、図示しないガス抜き溝を介してタイヤ加硫用金型2の外部へと排出される。また完全に型締めが完了した時点では、ベントホール23はステム26によって閉鎖されるので、ベントホール23からゴムが流出することはない。
【0045】
前記構成のタイヤ加硫用金型2では、加硫対象となるタイヤの種類が変更される等によりセクタ20を交換する。この場合、セクタ20は外面20bに形成した取付穴28にエンザート29が螺合されており、ボルト30がアルミ合金からなるセクタ20には直接接触しない。そして、エンザート29に螺合するボルト30には、中心孔30aが形成されているだけであり、雄ネジ部には何ら加工が施されていない。したがって、セクタ20に装着したエンザート29へのボルト30の螺合作業を、ボルト30を損傷させることなくスムーズに行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態では、エンザート29に切欠溝29cを形成するようにしたが、エンザート29を取付穴28の底面との間に隙間が形成されるようにして装着するようにするのであれば、このような切欠溝29cは必ずしも必要なものではない。またエンザート29に代えて、外周面が円筒状で、内周面に雌ネジが形成されたもの等、中間部材として種々のものを採用することができる。
【0048】
また、前記実施形態では、ベントホール23にはベントプラグ24を装着した構成としたが、これに限らず、単なる貫通孔で形成されたノーマルベントで構成してもよいし、ベントホール23にベントピースを圧入したピースベントで構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…加硫成形機
2…タイヤ加硫用金型
3…上プレート
4…上プラテン
4a…流路
5…下プラテン
5a…流路
6…コンテナ
7…昇降シリンダ
8…昇降ロッド
9…ブラダユニット
10…支軸
11…上クランプ
12…下クランプ
13…ブラダ
14…セグメント
14a…外周側円錐面
15…ジャケットリング
15a…内周側円錐面
16…上コンテナプレート
17…下コンテナプレート
18…上スライド
19…下スライド
20…セクタ
20a…内面
20b…外面
20c…当接面
20d…逃がし面
21…上型
22…下型
23…ベントホール
24…ベントプラグ
25…ハウジング
26…ステム
27…スプリング
28…取付穴
29…エンザート(中間部材の一例)
29a…雄ネジ
29b…雌ネジ
29c…切欠溝
30…ボルト
30a…中心孔
31…上ビードリング
32…下ビードリング