(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カプラーの両側の開口部から夫々ネジ鉄筋を螺合した後に前記カプラーの内部空洞にて、前記ネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定する鉄筋間隔測定装置であって、前記カプラーの外側からグラウト注入孔に挿入して前記内部空洞内の前記ネジ鉄筋の先端を検出する部材と、前記ネジ鉄筋の前記先端から前記グラウト注入孔の中心軸までの距離を測定する部材と、を有し、かつ前記グラウト注入孔に嵌め合わされる筒状の注入孔嵌合部材と、該注入孔嵌合部材の内部を摺動する通電部材と、前記注入孔嵌合部材の下端に湾曲して配設されて前記通電部材を前記カプラーの前記内部空洞に誘導する筒状の湾曲誘導部材と、前記通電部材に電流を供給する電源と、該電源から前記通電部材へ至る前記電流の流路となる第1電気配線と、前記通電部材を摺動させるための摺動棒と、前記第1電気配線ならびに前記摺動棒を内包し前記注入孔嵌合部材の上端に配設される筒状の柱管体と、前記摺動棒の摺動距離を測定するために前記柱管体または前記摺動棒に装着される目盛と、前記カプラーまたは前記ネジ鉄筋から前記電源へ流れる前記電流の流路となる第2電気配線と、前記第1電気配線または前記第2電気配線に配設されて前記電流によって作動する電灯および/またはブザーと、を有することを特徴とする鉄筋間隔測定装置。
カプラーの両側の開口部から夫々ネジ鉄筋を螺合した後に前記カプラーの内部空洞にて、前記ネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定する鉄筋間隔測定方法において、前記カプラーの外側からグラウト注入孔に注入孔嵌合部材を嵌め合わせ、該注入孔嵌合部材の下端に配設される湾曲誘導部材の内部にて電流が供給される通電部材を摺動棒によって摺動させて、前記湾曲誘導部材の下端面から前記通電部材を突出させ更に直線状に進行させ、前記通電部材の先端が前記ネジ鉄筋の先端に接触した時に生じる通電によって電灯および/またはブザーを作動させ、該電灯および/または該ブザーが作動した時に前記摺動棒を停止し、前記摺動棒の摺動距離を測定し、該摺動距離の測定値に基づいて前記ネジ鉄筋の前記先端から前記グラウト注入孔の中心軸までの距離を夫々算出することによって、前記ネジ鉄筋の先端同士の間隔を算出することを特徴とする鉄筋間隔測定方法。
【背景技術】
【0002】
建築工事や土木工事において、
図4に示すような、ネジ鉄筋1をカプラー2の両側の開口部から螺合して連結する継手(いわゆる機械式継手)が広く使用されている。そしてネジ鉄筋1を螺合した後、カプラー2に設けられたグラウト注入孔3からグラウト材を注入することによって、ネジ鉄筋1を固定する。このような機械式継手において、ネジ鉄筋1とカプラー2が螺合した部位の長さW(mm)が短すぎると、コンクリートの補強等に使用することによって作用する引張り方向の荷重(以下、引張り力という)に対する機械式継手の強度が低下する。
【0003】
そこで、引張り力に対する機械式継手の強度を十分に維持するための許容範囲としてカプラー2の内部空洞におけるネジ鉄筋1の先端同士の間隔S(mm)の上限値S
MAX(=30mm)が規定されている。ネジ鉄筋1の先端同士の間隔Sの上限値S
MAXの規定は、螺合した部位の長さWの下限値を規定することを意味している。つまり、工事現場にてカプラー2の内部空洞における間隔SがS
MAX値よりも小さくなるようにネジ鉄筋1を捩じ込むことによって、螺合した部位の長さWを十分に確保し、ひいては引張り力に対する機械式継手の強度を十分に維持できる。
【0004】
ところが、ネジ鉄筋1とカプラー2を螺合することによってカプラー2の内部空洞に進入したネジ鉄筋1の先端を視認することは不可能である。
【0005】
この問題を解消するために、ネジ鉄筋1とカプラー2とを螺合した時にS≦S
MAXを満足できるネジ鉄筋1の位置に予めマーク(たとえば塗料による着色等)をつけておき、工事現場にてそのマークの位置までネジ鉄筋1を捩じ込んで機械式継手を得る技術が従来から普及している。しかしこの技術は、ネジ鉄筋1の捩じ込みを停止する位置にバラツキが生じるのは避けられないので、カプラー2の内部空洞におけるネジ鉄筋1の先端位置が一定にならず、ネジ鉄筋1の先端同士の間隔Sが大きく変動し易いという問題がある。
【0006】
特許文献1には、カプラー2のグラウト注入孔3周辺を切取って透明部材を嵌め込み、カプラー2の内部空洞におけるネジ鉄筋1を目視で観察しながらネジ鉄筋1を捩じ込む技術が開示されている。しかしこの技術は、カプラー2に複雑な加工を施す必要があるので、カプラー2の製造コストの上昇、ひいては建築工事や土木工事の施工コストの上昇を招く。
【0007】
特許文献2には、ネジ鉄筋1をカプラー2に捩じ込んで機械式継手を得た後に超音波探触子からネジ鉄筋1に超音波を発信して、ネジ鉄筋1の先端位置を検出する技術が開示されている。しかしこの技術は、高価な超音波発信器を必要するので、建築工事や土木工事の施工コストの上昇を招くばかりでなく、超音波探触子をネジ鉄筋1に接触させて超音波を発信し、そのエコーを受信するという一連の作業に長時間を要するので、建築工事や土木工事の工期が長くなるという問題がある。また、ネジ鉄筋1表面に形成されたネジの凹凸に超音波探触子を接触させて超音波を発信するので、ネジ鉄筋1の先端の検出精度が低下して数mm程度の誤差が生じるという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、ネジ鉄筋をカプラーに捩じ込んだ後、グラウト材を注入する前に、簡便な手段で効率良くかつ精度良くネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定する測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した課題を解決するために、カプラーに必ず設けられるグラウト注入孔を活用して、カプラーの内部空洞におけるネジ鉄筋の先端を測定する技術について検討した。そして、
(A)計測用治具をグラウト注入孔から挿入し、その計測用治具がネジ鉄筋の先端に接触した時に電流が流れてブザーや電灯が作動するような構成にすれば、ネジ鉄筋の先端を検出したことを作業員が認識できる、
(B)計測用治具として弾力性を有する部材(たとえばバネ等)を使用すれば、グラウト注入孔から挿入し、さらにネジ鉄筋の方向に湾曲させることが可能である
ということを見出した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明に係る鉄筋間隔測定装
置は、カプラーの両側の開口部から夫々ネジ鉄筋を螺合した後にカプラーの内部空洞にて、ネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定する鉄筋間隔測定装置であって、前記カプラーの外側からグラウト注入孔に挿入して内部空洞内のネジ鉄筋の先端を検出する部材と、ネジ鉄筋の先端からグラウト注入孔の中心軸までの距離を測定する部材と、を有
し、かつグラウト注入孔に嵌め合わされる筒状の注入孔嵌合部材と、注入孔嵌合部材の内部を摺動する通電部材と、注入孔嵌合部材の下端に湾曲して配設されて通電部材をカプラーの内部空洞に誘導する筒状の湾曲誘導部材と、通電部材に電流を供給する電源と、電源から通電部材へ至る電流の流路となる第1電気配線と、通電部材を摺動させるための摺動棒と、第1電気配線ならびに摺動棒を内包し注入孔嵌合部材の上端に配設される筒状の柱管体と、摺動棒の摺動距離を測定するために柱管体または摺動棒に装着される目盛と、カプラーまたはネジ鉄筋から電源へ流れる電流の流路となる第2電気配線と、第1電気配線または第2電気配線に配設されて電流によって作動する電灯および/またはブザーと、を有する鉄筋間隔測定装置である。
【0013】
本発明に係る鉄筋間隔測定装
置においては、通電部材の先端に装着された通電接触子を有すること、湾曲誘導部材の湾曲した中心軸がなす測定基準平面をカプラーの外側から視認できるように表示する表示部材を有することが好ましい。
【0014】
また本発明に係る鉄筋間隔測定方
法は、カプラーの両側の開口部から夫々ネジ鉄筋を螺合した後にカプラーの内部空洞にて、ネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定する鉄筋間隔測定方法において、カプラーの外側からグラウト注入孔に
注入孔嵌合部材を嵌め合わせ、注入孔嵌合部材の下端に配設される湾曲誘導部材の内部にて電流が供給される通電部材を摺動棒によって摺動させて、湾曲誘導部材の下端面から通電部材を突出させ更に直線状に進行させ、通電部材の先端がネジ鉄筋の先端に接触した時に生じる通電によって電灯および/またはブザーを作動させ、電灯および/またはブザーが作動した時に摺動棒を停止し、摺動棒の摺動距離を測定し、摺動距離の測定値に基づいてネジ鉄筋の先端からグラウト注入孔の中心軸までの距離を
夫々算出することによって、ネジ鉄筋の先端同士の間隔を算出する鉄筋間隔測定方法である。
【0016】
本発明に係る鉄筋間隔測定方
法においては、通電部材の先端に通電接触子を装着することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ネジ鉄筋をカプラーに捩じ込んだ後、グラウト材を注入する前に、簡便な手段で効率良くかつ精度良くネジ鉄筋の先端同士の間隔を測定することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、
図4中のグラウト注入孔3の周辺を拡大して、本発明に係る鉄筋間隔測定装置4をグラウト注入孔3に取り付けた例を模式的に示す断面図である。なお、本発明はネジ鉄筋1をカプラー2に捩じ込んだ後、グラウト材を注入する前に、ネジ鉄筋1の先端同士の間隔を測定するものであるから、鉄筋間隔測定装置4を取り付ける時は、カプラー2内のネジ鉄筋1の先端同士の隙間は空洞である。
【0020】
本発明に係る鉄筋間隔測定装置4を用いて、カプラー2内でネジ鉄筋1の先端同士の間隔を測定するにあたって、
図1に示すように、注入孔嵌合部材5をカプラー2の外側からグラウト注入孔3に嵌め合わせる。注入孔嵌合部材5は電気的に絶縁性の物質(たとえばプラスチック等)からなる筒状の部材であり、外径はグラウト注入孔3の内径と同一である。したがって注入孔嵌合部材5の中心軸は、グラウト注入孔3の中心軸8に一致する。
【0021】
注入孔嵌合部材5の上端には、柱管体15を配設する。柱管体15の外径は注入孔嵌合部材5の外径よりも大きいので、柱管体15は、グラウト注入孔3内に入らず、カプラー2の外側に留まる。
【0022】
注入孔嵌合部材5の長さM(mm)が短すぎると、グラウト注入孔3に取り付けた鉄筋間隔測定装置4の姿勢が安定しない。一方で、長さMが長すぎると、使用中に注入孔嵌合部材5の変形や折損が生じやすくなる。したがって長さMは、グラウト注入孔3の長さ(すなわちカプラー2の厚さ)G(mm)に対して0.3G≦M≦Gの範囲内が好ましい。
【0023】
注入孔嵌合部材5の下端には、湾曲誘導部材6を配設する。湾曲誘導部材6も電気的に絶縁性の物質(たとえばプラスチック等)からなる筒状の部材である。湾曲誘導部材6は、直線状に延伸する直線部6aと円弧状に湾曲した湾曲部6bを有し、直線部6aの中心軸がグラウト注入孔3の中心軸8に一致するように配設される。
【0024】
湾曲部6bの曲率は、特に限定せず、後述する通電バネが容易に摺動できるように適宜設定する。ただし、湾曲誘導部材6の下端面6cとグラウト注入孔3の中心軸8との距離Q(mm)がグラウト注入孔3の内径の1/2よりも小さくなるように湾曲部6bを設ける。その理由は、湾曲誘導部材6をグラウト注入孔3内に進入させるためである。
【0025】
湾曲誘導部材6の直線部6aの長さは、特に限定せず、カプラー2と注入孔嵌合部材5の寸法に応じて設定する。直線部6aは必ずしも設ける必要はなく、たとえばM=Gの場合は直線部6aを設けず、湾曲部6bのみで湾曲誘導部材6を構成しても良い。直線部6aを設けない場合は、湾曲部6bの上端面の中心がグラウト注入孔3の中心軸8に一致するように配設する。
【0026】
湾曲誘導部材6の直線部6aと湾曲部6bの外径は同一とし、注入孔嵌合部材5の外径(すなわちグラウト注入孔3の内径)よりも小さくする。その理由は、湾曲誘導部材6をグラウト注入孔3内に進入させるためである。
【0027】
図1に示す湾曲誘導部材6の内部には、
図3(a)に示すように、通電部材9と通電接触子10が収納されている。
図3(a)には、通電部材9として金属製のバネを用いる例を示すが、通電部材9は導電性を有し、かつ弾力性を有するものを使用すれば良い。バネを用いる場合は、耐久性と低価格を両立させる観点からステンレス鋼製のバネを使用することが好ましい。
通電部材9には電源14(
図1参照)から電流を供給するための第1電気配線11が接続される。さらに通電部材9には摺動棒13が連結されており、摺動棒13は、湾曲誘導部材6から注入孔嵌合部材5を経て柱管体15の内部を貫通し、その上端が柱管体15の上面から突出するように配設される。つまり柱管体15は、摺動棒13と第1電気配線11を内包する筒状の部材である。なお、摺動棒13および柱管体15は電気的に絶縁性の物質(たとえばプラスチック等)からなるものを使用する。
【0028】
そして、ネジ鉄筋1の先端を検出するにあたって、作業員が摺動棒13の上端を挟持して摺動させることによって、通電バネ9が湾曲誘導部材6の内部を摺動する。既に説明した通り通電部材9は弾力性を有するので、湾曲誘導部材6の湾曲部6bを容易に通過することが可能である。こうして通電接触子10を装着した通電部材9が、
図3(b)に示すように、湾曲誘導部材6の下端面6cから突出し、さらに、そのまま直線状に進行していく。
【0029】
通電部材9が
図3(a)の位置から
図3(b)の位置へ摺動する際には、通電部材9の進行方向の背後から摺動棒13が通電部材9を押し出すように摺動するので、通電部材9の全長は変化せず一定を保つ。
【0030】
通電部材9の先端に装着された通電接触子10には電源14から第1電気配線11、通電部材9を介して電流が供給されるが、
図3(a)に示すように、通電接触子10がネジ鉄筋1の先端に接触していない状態では、電源14から供給された電流が再び電源14へ戻るという電気回路が形成されない(
図1参照)ので、電流の流れ(以下、通電という)は生じない。そして、
図3(b)に示すように通電接触子10がネジ鉄筋1の先端に接触することによって、電気回路が形成されて、電流がネジ鉄筋1に流れて、通電が開始(
図2参照)される。その通電の開始がネジ鉄筋1先端の検出を意味する。なお、通電接触子10は導電性物質(たとえば金属等)からなる部材であり、耐久性と低価格を両立させる観点からステンレス鋼を使用することが好ましい。
【0031】
通電接触子10は必ずしも通電部材9に装着する必要はない。通電接触子10を使用しない場合は、通電部材9の先端がネジ鉄筋1に接触した時に通電が開始される。ただし通電部材9が直接、ネジ鉄筋1に接触することによって通電部材9の変形や折損が生じる惧れがあり、ひいては、ネジ鉄筋1の先端の検出精度の低下を招く惧れがある。したがって本発明では、通電部材9の変形や折損を防止するために、通電部材9の先端に通電接触子10を装着してネジ鉄筋1の先端を検出することが好ましい。
【0032】
電源14には第1電気配線11に加えて、
図1、2に示すように、第2電気配線12の一端が接続される。第2電気配線12の他端は、カプラー2に捩じ込まれずに露出している鉄筋1の表面(
図1、2参照)、あるいはネジ鉄筋1と螺合したカプラー2の表面(図示省略)に接続される。ただし第2電気配線12を、そのままネジ鉄筋1やカプラー2に接続するのは困難であるから、導電性物質(たとえば金属等)からなる接続補助具18(たとえばクリップ等)を装着して、ネジ鉄筋1やカプラー2に接続しやすくすることが好ましい。
【0033】
接続補助具18としてクリップを使用すれば、ネジ鉄筋1やカプラー2をクリップで挟むことによって、電気的な接続を容易に得ることができる。
【0034】
また、カプラー2の表面にはスケール等が付着して導電性の低い部分が存在するので、表面における導電性のバラツキが小さいネジ鉄筋1に第2電気配線12を接続することが好ましい。
【0035】
このようにして通電接触子10がネジ鉄筋1の先端に接触した時に、電源14から供給される電流が、第1電気配線11から通電部材9、通電接触子10、ネジ鉄筋1へ流れ、さらにネジ鉄筋1あるいはカプラー2から第2電気配線12を経て電源14へ流れる。
【0036】
電流を流す方向について、上記では電源14から第1電気配線11に流す例について説明したが、上記とは逆方向に流しても良い。すなわち電源14から第2電気配線12を経てネジ鉄筋1(あるいはカプラー2)、通電接触子10、通電部材9、第1電気配線11へ電流が流れるようにしても、鉄筋間隔測定装置4を支障なく使用できる。また電流は、直流電流、交流電流、いずれも本発明に適用できる。
【0037】
工事現場においては、通電が開始された時(すなわちネジ鉄筋の先端を検出した時)に、作業員が摺動棒13の摺動を停止する必要がある。そこで、作業員が通電開始を認識できるように、第1電気配線11または第2電気配線12に電灯および/またはブザーを配設する。電灯ならびにブザーは、通電によって作動するものであり、いずれか片方を使用しても良いし、両方を併用しても良い。電灯は、白熱電灯やLED電灯等、従来から知られているものを使用する。ブザーの種類も特に限定せず、従来から知られているものを使用する。なお
図1、2には、第2電気配線12に電灯19を配設する例を示す。
【0038】
そして電灯が点灯した時、あるいは、ブザーが鳴った時に、作業員が摺動棒13の摺動を停止して、摺動棒13が通電開始までに摺動した距離U(以下、摺動距離という)を測定する。その摺動距離U(mm)の測定を容易に行なうために、柱管体15の内部を摺動する摺動棒13に目印を付けておき、その目印の移動量を計測するための目盛16を柱管体15に装着する。あるいは、柱管体15に目印を付けておき、摺動棒13に目盛を装着しても、摺動距離Uを測定することができる。したがって、摺動棒13に付与した目印あるいは目盛を視認するために、柱管体15は透明な材質を使用することが好ましい。なお
図1、2には、柱管体15に目盛16を装着する例を示す。
【0039】
湾曲誘導部材6の下端面6cとグラウト注入孔3の中心軸8との距離Q(mm)、および、湾曲誘導部材6の下端面6cから鉄筋1の先端に到る直線状の通電部材9の中心軸とグラウト注入孔3の中心軸8とのなす角θ(°)は、湾曲誘導部材6の湾曲部6bの形状に応じて一義的に決まる数値である。したがって、摺動距離Uと角θから三角関数を用いて、ネジ鉄筋1の先端と湾曲誘導部材6の下端面6cとの距離P(mm)を算出できる。角θは90°であっても良い。その場合(θ=90°)は、P=Uとなる。
【0040】
そして、距離Pと距離Qの和を算出することによって、ネジ鉄筋1の先端とグラウト注入孔3の中心軸8との距離L(mm)を求めることができる。つまり、L=P+Qである。
【0041】
このようにして算出される距離Lの精度を高めるためには、湾曲部6bの湾曲した中心軸がなす平面(以下、測定基準平面という)を、カプラー2の中心軸7とグラウト注入孔3の中心軸8がなす平面に一致させる必要がある。そこで、測定基準平面の位置をカプラー2の外側から作業員が視認できるように、表示部材17を柱管体15に配設することが好ましい。
【0042】
表示部材17の形状は特に限定しない。たとえば、直線状の線材を測定基準平面の位置に配設する、あるいは、平板状の板材に直線を描いて測定基準平面の位置を示す、等の手段で測定基準平面を表示すれば良い。
【0043】
そして距離Lを測定する際に、作業員がカプラー2の外側からグラウト注入孔3に注入孔嵌合部材5に嵌め合わせ、さらに、表示部材17で示される測定基準平面をカプラー2の中心軸7に一致させて、上記で説明した手順で距離Lを測定する。
【0044】
片方のネジ鉄筋1について距離L(以下、L
Aという)を測定した後、他方のネジ鉄筋1について距離L(以下、L
Bという)を測定し、距離L
Aと距離L
Bの和を算出することによって、ネジ鉄筋1の先端同士の間隔S(S=L
A+L
B)を求めることができる。
【0045】
目盛16は摺動棒13の摺動距離Uを測定するものであるが、摺動距離Uと角θから三角関数を用いて算出した距離Pを読み取ることが可能な目盛を用いても良い。また、距離L(L=P+Q)を読み取ることが可能な目盛を用いても良い。
【0046】
以上に説明した通り、本発明によれば、簡便な鉄筋間隔測定装置4を用いて、グラウト注入孔3からカプラー2の内部空洞に注入孔嵌合部材5と湾曲誘導部材6を挿入して、通電バネ9を摺動させるという単純な動作で効率良くかつ精度良く、ネジ鉄筋1の先端同士の間隔を測定できる。
【0047】
なお、グラウト注入孔3は、カプラー2を鋳造する際に内面のネジ山とともに形成することができる。特に、精密鋳造の技術でカプラー2を製造することによって、十分な寸法精度を有するグラウト注入孔3を形成することができる。また、カプラー2に機械加工(たとえばドリルで穿孔等)を施して設けることによって、グラウト注入孔3の寸法精度の更なる向上を図ることができ、ひいては、間隔Sの測定精度を一層向上することができる。
【実施例】
【0048】
2本のネジ鉄筋(軸体の直径48.3mm、ネジ山の高さ4.2mm、長さ300mm)を製造し、カプラー(サイズD51)の両側の開口部から夫々捩じ込んで螺合した。本実施例ではカプラーのグラウト注入孔からグラウト材を注入していないが、上記のネジ鉄筋をカプラーに螺合したものを機械式継手と記す。
【0049】
得られた機械式継手のカプラーの両側から突出しているネジ鉄筋の長さを夫々測定し、ネジ鉄筋の長さ(=300mm)からその測定値を減算することによって、ネジ鉄筋とカプラーが螺合した部位の長さW(
図4参照)を算出した。こうして両側のネジ鉄筋について夫々W値を算出し、次いでカプラーの長さからW合計値を減算して、ネジ鉄筋の先端同士の間隔S(
図4参照)を算出した。これをS
standardとする。
【0050】
次に、その機械式継手のグラウト注入孔(直径6mm)に、
図1に示す鉄筋間隔測定装置を構成する注入孔嵌合部材を嵌め合わせて、本発明に係る測定方法で両側のネジ鉄筋についてその先端とグラウト注入孔の中心軸との距離Lを夫々測定し、それを合算することによって、ネジ鉄筋の先端同士の間隔Sを算出した。これをS
exampleとする。なお、通電部材はステンレス鋼製のバネを使用し、通電部材の先端にステンレス鋼製半球体の通電接触子を装着した。
【0051】
こうして得られたS
standardとS
exampleを比較すると、誤差は1.0mmであった。既に説明した通り従来の超音波を用いる測定技術では数mmの誤差が生じるのに対して、本発明によれば良好な精度で測定できることが確かめられた。