(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記第1の方法については、複数本の長尺鋼材の相互の間隔を1本ずつ拡げる必要があるため、高速化の要求に応じられないという問題がある。第2の方法については、画像の解像度や解析能が計数精度に影響する場合がある。第3の方法については、計数対象の棒鋼の移動による振動が光学変位計によるセンシングに影響する場合がある。すなわち、棒鋼の移動による振動によって光学変位計での測定結果に誤差が生じる場合がある。特に、計数対象の長尺鋼材が異形棒鋼と呼ばれる表面に凹凸を有するものである場合、光学変位計が凹凸部分を測定することによってより大きな誤差が生じるおそれがある。しかも、上記の特許文献1に開示されている計数方法は、計数対象の鋼材を転動させながら光学変位計によって鋼材表面との間の距離を測定し、この測定した距離に基づいて表面プロフィールを作成して、そのプロフィールを微分処理した信号と、しきい値とを比較することによって鋼材数をカウントする方法である。この方法によると、計数対象の鋼材に転動による振動が生じると、光学変位計によって測定された距離に基づく表面プロフィールに、実際の表面形状にはない波形が生じることになる。そのため、そのプロフィールを微分処理した信号にも振動による凹凸が発生し、計数結果に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
この発明の目的の一つは、高精度で、かつ高速に長尺鋼材を計数することを可能とする計数システムを提供することである。また、他の目的は、高精度で、かつ高速に長尺鋼材を計数することを可能とする計数方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態によると、計数システムは、測定対象物との間の距離を測定するための光学変位計と、光学変位計を直線状に走行させるための走行装置と、光学変位計により測定された測定値を取得し、測定値に基づいて長尺鋼材を計数するための演算装置と、を備える。走行装置は、光学変位計を、測定対象物としての長尺鋼材が並列に並べて置かれている載置面に平行な面内であって、長尺鋼材の長手方向と交差する方向の直線上を走行させる。演算装置は、光学変位計の複数の走行位置における複数の測定値の中から長尺鋼材ごとに距離の測定の開始および測定の終了を特定し、長尺鋼材ごとの距離の測定の開始から終了までの間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材を計数する。
この計数システムによれば、計数対象の長尺鋼材の位置を固定し光学変位計を移動させて当該光学変位計から長尺鋼材までの距離が測定される。そのため、長尺鋼材の移動に伴う振動の影響を受けることなく光学変位計から長尺鋼材までの距離が測定されることになる。それ故、計数精度を向上させることができる。
また、長尺鋼材を移動させてセンサ位置を通過させる場合と比較してセンサを移動させる方が、相対的な移動速度を速めることができる。それ故、計数速度を速めることができる。
また、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始および測定の終了が特定されて、その間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材が計数されるため、光学変位計による測定間隔が大きい場合に生じるおそれのある計数の漏れも、測定間隔が小さい場合に生じるおそれのある重複する計数も防ぐことができる。それ故、計数精度を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、演算装置は、載置面から光学変位計までの距離および長尺鋼材の径から得られる第1のしきい値と、距離の測定の開始から終了までの間に得られた測定値とを比較することによって、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始および測定の終了を特定する。
この計数システムによれば、長尺鋼材ごとの距離の測定の開始およびその測定の終了を容易にかつ高精度に特定することができ、その結果として計数精度を向上させることができる。
【0009】
より好ましくは、演算装置は、さらに、長尺鋼材の径から得られる第2のしきい値と、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始からの光学変位計の走行距離とを比較することによって、長尺鋼材ごとに距離の測定の終了を特定する。
この計数システムによれば、複数の長尺鋼材が間隔をあけることなく隣接している場合であっても、複数の長尺鋼材ごとの距離の測定の開始およびその測定の終了を容易にかつ高精度に特定することができ、その結果として計数精度を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、演算装置は、光学変位計からの測定値に基づく計数結果が所定本数に達したか否かを判断するための判断手段と、計数結果が所定本数に達したと判断された場合に、所定本数と判断された測定値を得た光学変位計の走行位置を表す情報を発信するための発信手段と、を含む。
この計数システムによれば、長尺鋼材の計数と並行して、所定本数目の長尺鋼材を素早く高精度に特定することができる。そのため、計数対象の複数の長尺鋼材の中から所定本数目の長尺鋼材を抜き出す装置や、計数対象の長尺鋼材に対して結束などの処理を行う装置などと連携することで、計数後の処理を素早く行うことができる。
【0011】
本発明の他の実施形態によると、計数方法は、並列に並べて置かれている長尺鋼材を計数する方法である。この方法は、測定対象物との間の距離を測定するための光学変位計を、長尺鋼材の長手方向と交差する方向の直線上を走行させるステップと、光学変位計によって得られた複数の測定値の中から、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始および測定の終了を特定するステップと、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始から終了までの間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材を計数するステップ、を備える。
この計数方法によれば、計数対象の長尺鋼材の位置を固定し光学変位計を移動させて当該光学変位計から長尺鋼材までの距離が測定される。そのため、長尺鋼材の移動に伴う振動の影響を受けることなく光学変位計から長尺鋼材までの距離が測定されることになる。それ故、計数精度を向上させることができる。
また、長尺鋼材を移動させてセンサ位置を通過させる方法と比較して、相対的な移動速度を速めることができる。それ故、計数速度を速めることができる。
また、長尺鋼材ごとに距離の測定の開始および測定の終了が特定されて、その間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材が計数されるため、光学変位計による測定間隔が大きい場合に生じるおそれのある計数の漏れも、測定間隔が小さい場合に生じるおそれのある重複する計数も防ぐことができる。それ故、計数精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この開示によると、高精度で、かつ高速に長尺鋼材を計数することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、好ましい実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0015】
[第1の実施の形態]
<システム構成>
図1は、本実施の形態にかかる長尺鋼材計数システムの構成を説明するための概略図である。
図1を参照して、本実施の形態にかかる長尺鋼材計数システム(以下、計数システム)100は、変位計3と、走行装置5と、変位計3および走行装置5と電気的に接続された演算装置1と、を含む。
演算装置1と変位計3および走行装置5との通信は、無線通信であってもよいし有線の通信であってもよい。
【0016】
変位計3は光学変位計であって、たとえばレーザ変位計である。変位計3は、レーザ光を測定方向に対して照射するための発光部3aと、測定方向からの反射光を受光するための受光部3bと、を含む。変位計3は、一例として、発光部3aが照射した光が測定方向に存在する測定対象物から反射する光を受光するまでの時間に基づいて測定対象物までの距離を測定する。
変位計3は演算装置1と通信するための通信装置31をさらに含む。変位計3は、演算装置1からの制御信号に従って測定対象物までの距離の測定を開始する。好ましくは、変位計3は、演算装置1からの制御信号に従う間隔で測定対象物までの距離を測定する。そして、変位計3は、測定値を示す信号を演算装置1に入力する。
【0017】
測定対象物としての複数本の長尺鋼材Aは、並列に並べた状態で載置面7上に載置されている。載置面7は、長尺鋼材Aの長手方向に沿って所定間隔ごとに設けられた複数の長尺レール8の上面で構成されている。
変位計3は載置面7を測定方向とする、つまり、変位計3は、発光部3aの照射方向が載置面7に向かい、かつ、受光部3bが受光する方向が載置面7から当該受光部3bに向かう方向となるように取り付けられている。
【0018】
走行装置5は動力源であるモータMを有する。走行装置5は、モータMの回転を利用して直線状に変位計3を走行させる。変位計3の走行する方向を、以降の説明において走行方向とも称する。また、変位計3の移動距離を走行距離とも称する。
図1において、変位計3の走行方向をX方向、鉛直方向をZ方向、X方向およびZ方向を含む面の法線方向をY方向とする。
【0019】
走行装置5は演算装置1と通信するための通信装置53をさらに含む。走行装置5は、演算装置1からの制御信号に従って、変位計3の移動を開始する。好ましくは、走行装置5は、演算装置1からの制御信号に従う速度で変位計3を移動させる。また、好ましくは、走行装置5は、演算装置1からの制御信号に従う距離変位計3を移動させる。
【0020】
測定対象物としての長尺鋼材Aは、変位計3の走行方向に長手方向が交差するように載置面7上に並列に並べられて置かれる。好ましくは、長尺鋼材Aは、変位計3の走行方向に対して長手方向が直交するように載置面7上に並列に並べられて置かれる。
【0021】
演算装置1は、たとえばパーソナルコンピュータ(PC)である。演算装置1は、変位計3から、載置面7の上方を走行中に測定された測定値を取得し、この測定値に基づいて載置面7上に並べて置かれた長尺鋼材Aを計数する。好ましくは、演算装置1は、変位計3によって計数されるべき長尺鋼材Aの本数の指示をユーザ操作等によって受け付けて、該指示に基づいて変位計3を制御する。好ましくは、演算装置1は、変位計3での測定間隔を予め記憶しておき、記憶されている測定間隔に基づいて変位計3および/または走行装置5を制御する。測定間隔は、計数対象の長尺鋼材Aの直径よりも短い間隔である。演算装置1は、長尺鋼材Aの直径と測定間隔との関係を表した関係式を予め記憶している場合、計数対象の長尺鋼材Aの直径の指定を受け付けてもよい。
【0022】
<装置構成>
図2および
図3を用いて走行装置5の装置構成を説明する。
図2は、走行装置5を
図1のY方向と逆方向に見た図であって、走行装置5の正面概略図である。
図3は、走行装置5を
図1のZ方向と逆方向に見た図であって、走行装置5の側面概略図である。
図2および
図3を参照して、走行装置5は、変位計3を走行方向であるX方向に直線状に移動させるための機構の一例として、サーボモータ等のモータMと、X方向に沿って直線状に設置され、モータMによって回転駆動されるボールねじ51とを有し、変位計3を把持する把持部52を、ボールねじ51の回転力を利用してX方向およびその逆方向に往復移動させる。これにより、把持部52に把持された変位計3がX方向に沿って往復移動する。
【0023】
好ましくは、走行装置5は、把持部52をZ方向に沿って往復移動させるための機構の一例として、図示しないサーボモータなどのモータを含む、Z方向およびその逆方向に可動の電動シリンダをさらに有する。これにより、走行装置5は、変位計3と測定対象物としての長尺鋼材Aとの間の高さ方向の距離を調整可能である。
【0024】
好ましくは、走行装置5は、把持部52をY方向に沿って往復移動させるための機構の一例として、図示しないギヤードモータなどのモータと、Y方向に沿った方向をラックの移動方向とする図示しないラックピニオンとをさらに有する。これにより、走行装置5は、変位計3と測定対象物としての長尺鋼材Aとの間の長尺鋼材Aの長手方向の距離を調整可能である。
【0025】
好ましくは、モータMの回転/停止、および回転速度は、演算装置1からの制御信号に従う。これにより、計数システム100での計数動作が演算装置1によって制御される。
【0026】
図4を用いて演算装置1の装置構成を説明する。
図4は、演算装置1が一般的なPCである場合の、演算装置1の装置構成の一例を表したブロック図である。
図4を参照して、演算装置1は、装置全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10で実行されるプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)11と、CPU10でプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)12と、計数結果などを記憶するためのHDD(Hard Disc Drive)13と、キーボードやスイッチなどの入力装置14と、ディスプレイ15と、他の装置と無線または有線にて通信するための通信装置16とを含む。
【0027】
<計数原理>
図5〜
図8を用いて、本実施の形態にかかる計数システム100での計数原理を説明する。
図5は、変位計3と測定対象物としての長尺鋼材Aとを模式的に表した図である。
図6は、変位計3での測定を説明するための図である。
図7および
図8は、それぞれ、
図6の各点での測定結果および計数方法を説明するための図であって、
図7は長尺鋼材Aが1本独立して置かれている場合の例、
図8は長尺鋼材Aが複数本、間隔をあけることなく隣接した状態で置かれている場合の例を表している。
【0028】
図5を参照して、変位計3は、走行装置5によって、載置面7上に並列に並んで置かれた長尺鋼材Aの上方を、長尺鋼材Aの長手方向に直交する方向に走行しながら規定された間隔で測定対象物との間の距離を測定する。変位計3の走行方向であるX方向の位置である走行位置が、載置面7に長尺鋼材Aの置かれていない位置の真上である場合、測定値Zは、変位計3から載置面7までの距離Lとなる(Z=L)。走行位置が載置面7に長尺鋼材Aの置かれている位置の真上であって、長尺鋼材Aの頂点の真上である場合、つまり、長尺鋼材の頂点が測定位置となっている場合、測定値Zは、変位計3から載置面7までの距離Lから長尺鋼材Aの直径Dを減じた距離となる(Z=L−D)。そのため、走行中の変位計3からの測定値Zが上記L−Dを満たすものであったときに変位計3が1本の長尺鋼材Aの真上を通過しているものとしてカウントしていくこともできる。しかしながら、変位計3による測定位置は必ずしも長尺鋼材Aの頂点とならない場合もある。特に、計数速度を優先して測定間隔を大きくするほど、測定位置が長尺鋼材Aの頂点とならない可能性は高まる。この場合、その長尺鋼材Aの計数が漏れてしまうおそれがある。逆に、測定間隔を小さくすると、測定位置が1本の長尺鋼材の頂点近傍に複数ある場合が生じる。すなわち、上記L−Dに近い値となる測定値Zが1本の長尺鋼材に対して複数得られる場合が生じる。この場合、その長尺鋼材Aについて2以上カウントされてしまうおそれがある。
【0029】
そこで、本実施の形態にかかる計数システム100において演算装置1は、走行中の変位計3によって得られた複数の測定値の中から、長尺鋼材Aごとに距離の測定の開始および終了を特定する。そして、演算装置1は、長尺鋼材Aごとに距離の測定の開始から終了までの間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材Aを計数する。
【0030】
ここで、具体的に、
図6に表されたように、長尺鋼材Aが1本だけ離れて置かれている場合と、2本間隔をあけずに隣接しておかれている場合と、のそれぞれを例に挙げて本計数システム100での計数方法を説明する。
図6において、測定点P1〜P22は、その順で、走行する変位計3によって変位計3との距離が測定された点を表している。測定点P1〜P22のうちのP1、P2,P9,P10,P21,P22は長尺鋼材Aと共に測定対象物となる載置面7上の点であり、他の点は、長尺鋼材A表面上の点である。
図7は
図6の測定点P1〜P10までの測定結果(測定値Z)を表し、
図8は
図6の測定点P10〜P22までの測定結果を表している。この例では、変位計3から載置面7までの距離Lを200mm(L=200)、長尺鋼材Aの直径Dを10mm(D=10)とする。したがって、測定値Zは、L≦Z≦(L−D)、つまり200≦Z≦190を満たす。
演算装置1は、変位計3から測定値Zを得るたびに
図7、
図8のように測定値Zをメモリに書き込むと共に、直前の測定位置における測定値(Z(n−1))からの差分(Z(n−1)−Zn)を算出し、メモリに書き込む。
【0031】
演算装置1は、長尺鋼材Aごとに距離の測定の開始を特定するためのしきい値Th1を予め記憶している。そして、演算装置1は、変位計3から測定値Zを得るたびに測定値Zとしきい値Th1とを比較し、その測定値を得たときの走行位置が長尺鋼材Aとの間の距離の測定を開始する位置であるか否かを判断する。
しきい値Th1は、測定対象としての長尺鋼材Aの直径Dの所定割合として算出されてもよい。一例として、しきい値Th1は、Th1=L−(D×A)を満たす値とする。変数Aは、たとえば0.75である。この例の場合、しきい値Th1は概ね193mmとなる(Th1≒193)。この場合、
図7を参照して、測定点P4の測定値Z=193mmが取得されると、演算装置1は長尺鋼材Aとの間の距離の測定を開始する位置であると判断する。また、
図8を参照して、測定点P12の測定値Z=193mmが取得されると、演算装置1は長尺鋼材Aとの間の距離の測定を開始する位置であると判断する。
【0032】
演算装置1は、長尺鋼材Aとの間の距離の測定の開始を特定すると、その走行位置以降の変位計3による測定が、当該長尺鋼材Aまでの距離を測定している状態にあることを記憶する。一例として、演算装置1はフラグを備えており、ある1本の長尺鋼材Aまでの距離を測定している状態にある場合にそのフラグをON状態とする。以降の説明または図面においては、フラグをON状態とすること、あるいはフラグがON状態であることをon記憶するともいう。
図7においては、測定点P4で測定値がしきい値Th1以下となるので、測定点P4でon記憶されている。
図8においては、測定点P12で測定値がしきい値Th1以下となるので、測定点P4でon記憶されている。なお、
図6においては、on記憶されている状態における測定点が白丸、on記憶されていないときの測定点が黒丸で表されている。
【0033】
演算装置1は、変位計3から測定値Zを得るたびにon記憶されているか否かを確認する。on記憶されていない場合には、上記のしきい値Th1との比較を行ってon記憶するか否かを判断する。on記憶されている場合には、直前の測定位置における測定値(Z(n−1))からの差分(Z(n−1)−Zn)、つまり測定値の変化が正であるか負であるかを判断する。測定値の変化が負となるときは長尺鋼材Aの頂点に至るまでの面上の位置が測定位置である。測定値の変化が正となるときは長尺鋼材Aの頂点からX方向に進む面上の位置が測定位置である。そして、演算装置1は、on記憶されている状態において測定値の変化が負から正に初めて転じたことが判断されると、その長尺鋼材Aを1カウントする。すなわち、演算装置1はカウンタを含み、on記憶されている状態において測定値の変化が負から正に初めて転じたことが判断されると当該カウンタを1インクリメントする。
図7においては、測定点P6では測定点P5における測定値との差分が負であり、測定点P7で測定点P6における測定値との差分が初めて正に転じている。そのため、演算装置1は、測定点P7でカウンタを1インクリメントする。また、
図8においては、測定点P13では測定点P12における測定値との差分が負であり、測定点P14で測定点P13における測定値との差分が初めて正に転じている。そのため、演算装置1は、測定点P14でカウンタを1インクリメントする。
【0034】
演算装置1は、1本の長尺鋼材Aとの間の距離の測定の終了を特定するためのしきい値Th2を予め記憶している。そして、演算装置1は、on記憶されている状態において変位計3から測定値Zを得るたびに測定値Zとしきい値Th2とを比較し、その測定値が得られた変位計3の位置がその1本の長尺鋼材Aとの間の距離の測定を終了する位置であるか否かを判断する。
しきい値Th2は、計数対象の長尺鋼材Aの直径Dの所定割合として算出されてもよい。一例として、しきい値Th2は、Th2=L−(D×B)を満たす値とする。変数Bは、たとえば0.35である。この例の場合、しきい値Th2は概ね196mmとなる(Th2≒196)。この場合、
図7を参照して、測定点P9の測定値Z=200mmが取得されると、演算装置1はその1本の長尺鋼材Aとの間の距離の測定を終了する位置であると判断する。
【0035】
ところが、計数対象の長尺鋼材Aが
図6に表されたように2本以上間隔をあけずに隣接している場合、測定値Zがしきい値Th2に達するよりも以前に次の長尺鋼材Aの測定が開始されてしまう場合がある。つまり、測定値Zがしきい値Th2に達しないうちに測定値Zの変化が負に転じる場合がある。この場合、演算装置1は、変位計3の走行距離に基づいて1本の長尺鋼材との間の距離の測定の終了を特定する。具体的には、演算装置1は、変位計3と1本の長尺鋼材との間の距離の測定が開始されたときの(on記憶したときの)変位計3の走行位置を起点とする変位計3の走行距離が、長尺鋼材Aの概ね直径D分となると、当該1本の長尺鋼材Aの測定は終了して隣接する次の長尺鋼材の測定を開始しているものとして、当該長尺鋼材Aについてのon記憶を解消(フラグをリセット)する。演算装置1は、予め記憶している変位計3における測定間隔と、変位計3から取得した測定値の数とに基づいて変位計3の走行距離を算出することができる。
【0036】
この判断を行うため、演算装置1は、さらに、2本以上隣接あるいは近接している場合に長尺鋼材Aごとに距離の測定の終了を特定するためのしきい値Th3を予め記憶している。そして、演算装置1は、on記憶されている状態において変位計3から測定値Zを得るたびに測定値Zとしきい値Th2とを比較する。その結果、その1本の長尺鋼材Aとの間の距離の測定を終了する位置ではないと判断した場合に、演算装置1は、さらに、当該1本の長尺鋼材Aについてon記憶したときの変位計3の走行位置(
図8では測定点P12に相当する走行位置)からの変位計3の走行距離Xnとしきい値Th3とを比較する。これにより、演算装置1は、変位計3の現在位置がその1本の長尺鋼材Aとの間の距離の測定を終了する位置であるか否かを判断する。
上記判断に従ってon記憶を解消すると、演算装置1は、次の長尺鋼材Aの測定が開始されているか、つまり、測定値を上記のしきい値Th1との比較を行ってon記憶するか否かを判断する。
本計数システム100では、変位計3が予め規定された距離走行し、その間の測定値それぞれに対して演算装置1が上記の処理を行なうことで、載置面7上の上記予め規定された走行距離に対応した部分に並列に並んで置かれた長尺鋼材Aが計数される。
【0037】
なお、測定対象物とする長尺鋼材Aが載置面7上で複数本重なってしまう場合がある。重なり部分では、測定値Zが、変位計3から載置面7までの距離Lから長尺鋼材Aの直径Dを減じた距離よりも短くなる(Z<(L−D))。そこで、演算装置1は、測定値ZがZ<L−Dを満たす場合には、エラーを通知してもよい。または、演算装置1は、重なった状態で隣接する長尺鋼材Aの距離の測定の開始および終了を特定するためのしきい値をさらに記憶しておき、重なった状態で載置面7に置かれた長尺鋼材も計数するようにしてもよい。
【0038】
<機能構成>
図9は、上記動作を行なうための演算装置1の機能構成の一例を表わしたブロック図である。
図9の各機能は、演算装置1のCPU10がROM11に記憶されているプログラムをRAM12上に読み出して実行することで、主にCPU10において実現される。しかしながら、少なくとも一部機能が
図4に表わされた他のハードウェア、または図示されていない電気回路などの他のハードウェアによって実現されてもよい。
【0039】
図9を参照して、演算装置1のCPU10は、信号入力部101と、フラグ判定部102と、距離算出部103と、差分算出部104と、カウンタ判定部105とを含む。
信号入力部101は、通信装置16を介して変位計3から測定値を示す信号の入力を受け付ける。フラグ判定部102は、上記のしきい値Th1〜Th3を予め記憶しておき、測定値としきい値とを比較することで、on記憶するか否か、あるいはon記憶を解消するか否かを判定する。そして、フラグ判定部102は、RAM12に含まれる記憶領域であるフラグ記憶部121に、現在のフラグの状態を記憶させる。距離算出部103は、変位計3の走行距離Xnを算出する。フラグ判定部102は、必要に応じて変位計3の走行距離Xnをしきい値Th3と比較することによってon記憶を解消するか否かを判定する。
差分算出部104は、変位計3から測定値の、直前の測定位置における測定値からの差分を算出する。カウンタ判定部105は、on記憶されている状態において上記差分が負から正に最初に転じたと判定すると、RAM12に含まれる記憶領域であるカウンタ122を1インクリメントする。
【0040】
<動作フロー>
図10は、本計数システム100において計数動作が行なわれる際の、演算装置1での具体的な制御の流れを表わしたフローチャートである。
図10のフローチャートに表わされた動作は、演算装置1のCPU10がROM11に記憶されているプログラムをRAM12上に読み出して実行し、
図9の各機能を発揮することによって実現される。
図10の動作は、たとえば入力装置14から計数開始のユーザ操作を受け付けるなどによって開始される。
【0041】
図10を参照して、計数動作が開始すると、演算装置1のCPU10は走行装置5に制御信号を出力することによって変位計3の走行を開始する(ステップS1)。CPU10は、予め記憶している変位計3の走行速度と走行開始からの経過時間とに基づいて変位計3の走行距離Xnを監視する。そして、変位計3の走行距離が予め規定されている測定位置に達するたびに(ステップS3でYES)、変位計3に対して距離の測定を指示する(ステップS5)。CPU10は、変位計3から測定された距離を表わす信号の入力を受け付けて、その信号に基づいて計数処理を実行する(ステップS7)。ステップS7では、CPU10は、変位計3からの複数の測定値から計数対象の長尺鋼材Aの1本ずつをon記憶することによって区別して、長尺鋼材Aごとに測定の開始と終了とを特定する(ステップS71)。そして、CPU10は、開始と終了との間に得られる測定値に基づいて、当該長尺鋼材Aをカウントする(ステップS73)。
【0042】
CPU10は、走行開始からの変位計3の走行距離Xnの合計が計数終了位置として予め規定されている位置に達するまで上記の動作を繰り返す。そして、変位計3が終了位置に達すると(ステップS15でYES)、計数動作を終了する。好ましくは、CPU10は、計数動作を終了すると、計数結果をディスプレイ15に表示するなどして出力する。
【0043】
図11は、
図10のステップS7の計数処理の詳細を表わしたフローチャートである。
図11を参照して、CPU10は、変位計3からある測定点Pnにおける測定値を表わす信号の入力を受け付けると(ステップS101でYES)、入力された測定値である、変位計3によって測定された距離Znをメモリに記憶する(ステップS103)。
【0044】
測定点Pnの測定値を得たタイミングがon記憶されていない場合(ステップS105でNO)、CPU10は、測定値である距離Znとしきい値Th1とを比較する。測定点Pnにおける距離Znがしきい値Th1よりも小さい場合(ステップS107でYES)、CPU10はon記憶する(ステップS109)。すなわち、CPU10は、測定点Pnをある1本の長尺鋼材Aまでの距離の測定の開始点であると特定する。
測定点Pnにおける距離Znがしきい値Th1よりも大きい場合には(ステップS107でNO)、CPU10は以降の動作を行なうことなく、次の測定点P(n+1)における測定値の入力を待機する。
【0045】
測定点Pnの測定値を得たタイミングがon記憶である場合(ステップS105でYES)、あるいは上記の動作によって測定点Pnの測定値を得たタイミングがon記憶されると、CPU10は、距離Znと直前の測定点P(n+1)における測定値である距離Z(n−1)との差分を算出して、メモリに記憶する(ステップS111)。算出された差分がon記憶されてから負から正に最初に転じたものである場合(ステップS113でYES)、CPU10は、カウンタを1インクリメントする(ステップS115)。すなわち、CPU10は、当該長尺鋼材Aを1本カウントする。
【0046】
CPU10は、on記憶されている場合に、測定値である距離Znとしきい値Th2とを比較する。その結果、測定点Pnにおける距離Znがしきい値Th2よりも大きい場合(ステップS117でYES)、CPU10はon記憶を解除する(ステップS121)。または、CPU10は、on記憶されている場合に、測定点Pnにおける距離Znがしきい値Th2に達するよりも前に、当該on記憶の状態となった走行位置からの変位計3の走行距離Xがしきい値Th3に達した場合(ステップS119でYES)、CPU10はon記憶を解除する(ステップS121)。すなわちCPU10は、これらいずれかの場合、測定点Pnをある1本の長尺鋼材Aまでの距離の測定の終了点であると特定する。
【0047】
CPU10は、次の測定点P(n+1)が予め規定された測定の終了位置であるか否かを確認し、まだ終了位置まで達していない場合には(ステップS123でNO)、次の測定点P(n+1)を処理対象の測定点Pnとして(ステップS125)、上記ステップS101以降の動作を繰り返す。次の測定点P(n+1)が予め規定された測定の終了位置である場合には(ステップS123でYES)、すべての測定が終了したものとしてCPU10は一連の動作を終了する。このとき、CPU10は、カウンタに記憶された計数結果をディスプレイ15などで出力してもよい。
【0048】
<第1の実施の形態の効果>
本計数システム100が上記のように構成されていることによって、計数対象とする長尺鋼材Aが載置面7上に位置が固定された状態で、変位計3が当該長尺鋼材Aを測定対象とした状態で直線状に走行して当該変位計3から長尺鋼材までの距離が測定される。そのため、長尺鋼材Aの移動に伴う振動の影響を受けることなく変位計3から長尺鋼材までの距離が測定されることになる。それ故、一般的な、長尺鋼材を整列して移動させながら固定された光学変位計で長尺鋼材までの距離を測定することによって当該長尺鋼材を計数する方法よりも計数精度を向上させることができる。また、上記の一般的な計数方法よりも、長尺鋼材と光学変位計との相対的な移動速度を速めることができる。それ故、上記の一般的な計数方法よりも計数速度を速めることができる。
また、演算装置1は変位計3からの複数の測定値に基づいて、長尺鋼材Aごとに距離の測定の開始および測定の終了を特定し、その間に得られた測定値に基づいて長尺鋼材Aを計数する。そのため、変位計3の測定間隔が大きい場合に生じるおそれのある計数の漏れも、測定間隔が小さい場合に生じるおそれのある重複する計数も防ぐことができる。それ故、計数精度を向上させることができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
本計数システム100は、他の装置と連携して用いられてもよい。連携する装置は、たとえば、計数対象とされた複数の長尺鋼材Aの中から特定の1本以上の長尺鋼材を取り除く装置や、該長尺鋼材にマーキングする装置や、所定本数の長尺鋼材を結束する装置などである。または、連携する装置は本計数システム100内に搭載されている装置であってもよい。たとえば、変位計3に、載置面7上の長尺鋼材Aを押し出す器具、または把持して引き出す器具が取り付けられていてもよいし、マーキングするための器具が取り付けられてもよい。
【0050】
第2の実施の形態にかかる計数システム100において演算装置1は、入力装置14に対するユーザ操作、あるいは、通信装置16を介して他の装置からの入力情報によって、たとえば「40本」などの、計数するべき長尺鋼材Aの本数の指定を受け付ける。また、演算装置1は、通信装置16によって上記の連携する装置と通信する。上記のように、連携する装置が本計数システム100内に搭載されているものであっても、演算装置1は、通信装置16によって上記の連携する装置と通信して必要な情報を発信する。
【0051】
再び
図9を参照して、第2の実施の形態にかかる演算装置1のCPU10は、上記の動作を行なうために、指定部106と、判断部107と、発信部108とをさらに含む。
指定部106は、計数するべき長尺鋼材Aの本数の指定を受け付ける。
判断部107は、カウンタ判定部105が1カウントするたびに、計数結果を記憶しているカウンタ122を参照して指定された本数に達したか否かを判断する。計数結果が指定された本数に達したと判断部107によって判断された場合に、発信部108は、指定された数と判断された測定値を得た変位計3の走行位置を表わす情報を、上記の連携する装置に対して発信する。
【0052】
再び
図10を参照して、第2の実施の形態にかかる演算装置1は、ステップS7で計数処理を行なって変位計3からの測定値に基づいて長尺鋼材Aを計数するたびに、指定された本数に達したか否かを判断する(ステップS9)。そして、計数した数が指定された本数に達したと判断された場合(ステップS9でYES)、演算装置1は、その数をカウントしたときの変位計3の走行位置を表わす情報を連携する装置に発信する(ステップS11)。
【0053】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態にかかる計数システム100において上記の動作が行なわれることによって、指定された本数の長尺鋼材を計数することができる。そのため、所定本数の長尺鋼材を拘束する装置や、所定本数目の長尺鋼材を抜き出したりマーキングしたりする装置などと連携することで、計数後の処理を素早く行うことができる。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。