(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る高周波バイパス装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
高周波バイパス装置は、例えば、電力線を通信回線としても利用する電力線搬送通信に用いる装置である。電力を伝送する電力線上には、配電トランス、開閉器、遮断器などの電力機器が設けられている。例えば、配電トランスは、電力伝送用の低周波信号(日本国では50[Hz]又は60[Hz]の交流信号)の伝送を想定して設計されているので、配電トランスで情報通信用の高周波信号を伝送させることは困難である。また、開閉器や遮断器などでは、落雷などの事故発生時に電力線を遮断する動作をするので、電力線の遮断時に情報通信用の高周波信号が伝送できなくなる。
【0033】
なお、例えば、CEPCA(CE−Powerline Communication Alliance)という団体で作成されたHD−PLC(High Definition Power Line Communication)規格では、情報通信用の高周波信号の使用周波数帯として4[MHz]〜28[MHz]の帯域が規定されている。また、UPA(Universal Powerline Association)という団体で作成された規格では、情報通信用の高周波信号の使用周波数帯として2[MHz]〜30[MHz]の帯域が規定されている。
【0034】
電力線搬送通信では、電力伝送用の低周波信号に情報通信用の高周波信号を重畳した信号が電力線を用いて伝送されるので、高周波バイパス装置は、電力線上に設けられた電力機器の入力側で低周波信号に重畳されている高周波信号を取り出し、その高周波信号を、電力機器を通らない信号線で当該電力機器の出力側にバイパスする。そして、高周波バイパス装置は、バイパスした高周波信号を電力機器の出力側に接続された電力線に重畳し、当該電力線を用いて次の電極機器まで高周波信号を伝送する。
【0035】
図1は、本発明に係る高周波バイパス装置の基本構成を示す図である。
【0036】
高周波バイパス装置1は、電力線3の途中に配設された電力機器2に並列に取り付けられている。電力線3は、電力を運ぶための電線路を構成する複数本の電線、その電線を支持する支持物及び付帯設備などの電力設備のうちの複数本の電線に相当するものである。また、電力機器2は、電線路を構成する電力設備のうちの付帯設備に相当するものである。なお、本明細書では、電力伝送用の交流電流を流す個々の電気線を「電線」と称し、交流電流を流すために電力伝送用の電圧が印加される複数本の電気線の全体を「電力線」と称して説明する、
【0037】
電線の種類には、送電網における送電線と配電網における配電線とが含まれるが、
図1に示す電力線3は、例えば、配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線の例である。従って、電力機器2は、配電線上に配設される配電機器である。
【0038】
配電線は、通常、数千[V]の高圧(例えば、6600[V])で需要家の近くまで電力を供給する高圧配電線路と、変圧器によりその高圧を百乃至数百[V]の低圧(例えば、100又は200[V])に落として需要家に供給する低圧配電線路とを有する。高圧配電線は、通常、電力を三相交流で配電するので、3本の電線を有するが、
図1の例は、1相分の配電線路を示しており、電力線3は、2本の電線31,32で構成されている。
【0039】
なお、
図1では、電力機器2の入力側(
図1では、電力機器2の左側)に接続される電力線3と電力機器2の出力側(
図1では、電力機器2の右側)に接続される電力線3とを区別するため、入力側の電力線の符号に「A」を付し、出力側の電力線の符号に「B」を付している。従って、電力機器2の入力側の電力線3Aは、2本の電線31A,32Aで構成され、電力機器2の出力側の電力線3Bは、2本の電線31B,32Bで構成されている。
【0040】
配電機器には、高圧配電線路上に設けられる配電機器と、低圧電線路上に設けられる配電機器と、高圧配電線路と低圧配電線路の境界に設けられる配電機器とが含まれる。高圧配電線路上に設けられる配電機器には、例えば、開閉器、遮断器、電圧調整器、進相コンデンサなどが含まれる。低圧配電線路の境界に設けられる配電機器には、例えば、変圧器が含まれる。なお、低圧配電線路上に電圧調整器が配置される場合もある。また、低圧電線路上に設けられる配電機器は、例えば、分電盤やブレーカなどである。なお、低圧配電線路上に変圧器が配置される場合もある。
【0041】
例えば、電力機器2が高圧配電線路上に設けられ開閉器や遮断器の場合、電力線3の電力機器2の入力側の電力線3Aと出力側の電力線3Bの構成(電線の線径や本数などの構成)は同一となるが、電力機器2が高圧配電線路と低圧配電線路の境界に設けられる変圧器の場合、電力線3の電力機器2の入力側の電力線3Aと出力側の電力線3Bの構成(電線の線径や本数などの構成)が異なる場合がある。
【0042】
例えば、6600[V]−100/200[V]の変圧器の場合、電力機器2の入力側の電力線3Aは、2本の電線31A,32Aで構成されるが、電力機器2の出力側の電力線3Aは、3本の電線31B,32B,33Bで構成される場合がある。
【0043】
高周波バイパス装置1は、信号取出部11、信号バイパス部12、信号重畳部13を備える。信号取出部11は、2本の電線31A,32Aからなる電力線3Aを用いて伝送される高周波信号を電力機器2の入力側(入力端の近傍)で取り出す。高周波信号は、例えば、上述した2[MHz]〜30[MHz]の帯域の周波数を有する情報通信用の高周波信号である。
【0044】
電力線3Aの一対の電線31A,32Aは、電力伝送用の高圧(例えば、6600[V]の交流電圧)を電力機器2に向けて伝送するが、電力線3を高周波信号の通信路としても利用する場合、電力線3の一対の電線31A,32Aは、その高周波信号も電力機器2に向けて伝送する。
【0045】
情報通信用の高周波信号S
Hの振幅は、電力伝送用の電圧信号S
Vの振幅に比べて非常に小さいので、電力線3Aを伝送する信号は、電圧信号S
Vの振幅に高周波信号S
Hが重畳された波形(電圧信号S
Vの振幅が高周波信号S
Hによって変動する波形)を有している。
【0046】
信号取出部11は、例えば、一対の電線31A,32Aを伝送する高周波信号S
Hを取り出すためのピックアップコイル(以下、「信号取出コイル」という。)と、その信号取出コイルを一対の電線31A,32Aのいずれか一方、又は一対の電線31A,32Aの間に設けられる高周波信号S
Hのバイパス線路に磁気的に結合するコアとを有する。信号取出部11は、電線31A又は電線31Bを伝送する高周波信号S
Hと同一の周波数を有する高周波信号S
H’を電磁誘導により信号取出コイルに誘導して、高周波信号S
Hが重畳された電圧信号S
Vから高周波信号S
H’だけを取り出す。
【0047】
信号バイパス部12は、信号取出部11によって取り出された高周波信号S
H’を電力機器2の出力側の電力線3Bに伝送する。信号バイパス部12は、例えば、2本の信号線からなり、両信号線の一方の端部は、信号取出部11の信号取出コイルに接続されている。また、2本の信号線の他方の端部は、電力機器2の出力側に設けられた信号重畳部13のピックアップコイル(後述する)に接続されている。
【0048】
2本の信号線の両端をそれぞれピックアップコイルに接続した回路は、環状の信号線からなる回路と等価な回路を構成する。従って、信号取出部11のピックアップコイルに高周波信号S
H’が誘導されると、その高周波信号S
H’は、環状の信号線の回路を流れて信号重畳部13のピックアップコイルに伝送される。
【0049】
信号バイパス部12の2本の信号線は、通常、環状の信号線で構成されるが、その場合は、各信号線の一部分が信号取出コイルと信号重畳コイルとして機能する。上記の信号取出部11と信号重畳部13の説明では、説明の便宜上、環状の信号線の信号取出コイルの部分と、信号重畳コイルの部分と、高周波信号を伝送する部分とを分離した構成について説明している。
【0050】
信号バイパス部12の信号線が環状の信号線で構成される場合は、信号取出部11は、信号バイパス部12の2本の環状の信号線の信号取出コイルとなる部分を電力線3Aの電線31A,32Aのいずれか一方又は高周波信号S
Hのバイパス線路に磁気的に結合するコアで構成され、信号重畳部13は、高周波重畳用の線路と、信号バイパス部12の2本の環状の信号線の信号重畳コイルとなる部分を高周波重畳用の線路に磁気的に結合するコアとで構成されることになる。
【0051】
信号重畳部13は、信号バイパス部12の信号線によって伝送される高周波信号S
Hを電力機器2の出力側の電力線3Bに重畳する。信号重畳部13は、例えば、電力機器2の出力側の電力線3Bの一対の電線31B,32Bの間に設けられる高周波重畳用の線路と、信号バイパス部12の2本の信号線の他方の端部に接続されたピックアップコイル(以下、「信号重畳コイル」という。)と、そのピックアップコイルを高周波重畳用の線路に磁気的に結合するコアとを有する。
【0052】
信号重畳部13は、高周波信号S
H'が流れる信号重畳コイルをコアによって高周波重畳用の線路に磁気的に結合することにより、当該線路に高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”を誘導する。この高周波信号S
H”は、高周波重畳用の線路が接続された電力線3Bの一対の電線31B,32Bを流れ、需要家に向けて伝送される。
【0053】
本発明に係る高周波バイパス装置1は、信号重畳部13の具体的な構成に特徴を有するが、信号取出部11、信号バイパス部12及び信号重畳部13の各部の具体的な構成には複数の構成を採用することができる。以下、具体的な構成の実施の形態について、詳細に説明する。
【0054】
(実施の形態1)
図2は、高周波バイパス装置1の具体的な構成の第1の実施の形態を示す図である。
【0055】
第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1は、電力線3上に電力機器2として設けられた配電用の変圧器2Aに並列に配設されるものである。変圧器2Aは、例えば、電力線3Aで配電される6600[V]の高圧を100[V]と200[V]の低圧に変換して需要家に供給する。このため、変圧器2Aの入力側には2個の入力端子t1,t2(高圧ブッシング)が設けられているが、出力側には3個の出力端子t3,t4,t5(低圧ブッシング)が設けられている。また、変圧器2Aの入力側に接続される電力線3Aは、2本の電線31A,32Aで構成されるが、出力側に接続される電力線3Bは、3本の電線31B,32B,33Bで構成される。電線33Bは、接地用の電線である。電線31A,32A及び電線31B,32B,33Bには、例えば、銅などの導体をポリエチレンなどの絶縁体で被覆した絶縁電線が用いられている。
【0056】
変圧器2Aの2個の入力端子t1,t2は、一次コイル(高圧コイル)の両端から引き出されるものであり、電力線3Aの電線31Aと電線32Aにそれぞれ接続されている。また、3個の出力端子t3,t4,t5は、二次コイル(低圧コイル)の両端と中間から引き出されるものであり、コイルの中間から引き出される出力端子t5は接地用の端子である。二次コイル(低圧コイル)の両端から引き出される出力端子t3,t4は、電力線3Bの電線31Bと電線32Bにそれぞれ接続され、二次コイル(低圧コイル)の中間から引き出される出力端子t5は、電力線3Bの電線33Bに接続されている。
【0057】
変圧器2Aの出力側の電力線3B上には、電線31Bと電線32Bの間にPLCアダプタ4Aが設けられ、電線32Bと電線33Bの間にPLCアダプタ4Bが設けられている。PLCアダプタ4A,4Bは、電力線3Bによって伝送される、情報通信用の高周波信号が重畳された電力伝送用の低周波信号(例えば、100[V]の交流電圧信号)から高周波信号だけを取り出して、例えば、パーソナルコンピュータなどの情報端末に送信する機器である。
【0058】
高周波バイパス装置1の信号取出部11は、キャパシタC1と、コアFC1とを備える。キャパシタC1は、変圧器2Aの入力側の電力線3Aの2本の電線31A,32Aの間に接続されている。コアFC1は、後述する信号バイパス部12の2本の信号線121,122と、電力線3Aの一方の電線31Aとを磁気的に結合するための磁気結合素子である。なお、信号バイパス部12の2本の信号線121,122は、両端が接続された環状の信号線である。また、信号線121,122は、導体を絶縁体で被覆した絶縁ケーブルで構成されている。
【0059】
キャパシタC1とコアFC1は、変圧器2Aの入力端の近傍位置に設けられている。キャパシタC1は、電力線搬送通信の使用周波数帯域(例えば、2[MHz]〜30[MHz])に対して低インピーダンス(例えば、数[Ω])となる容量を有する。電線31A,32AのキャパシタC1の接続点a1−a2から変圧器2A側を見た使用周波数帯域におけるインピーダンスは等価的に低インピーダンス若しくは短絡状態となる。これにより、電力線3Aを用いて伝送される高周波信号S
Hは、主として接続点a1−a2でキャパシタC1を通る回路を流れることになり、変圧器2Aの回路状態が信号取出部11における高周波信号の取り出し動作に与える影響を抑制することができる。
【0060】
信号取出部11のキャパシタC1は、高周波信号の取り出し動作に必須の構成要素ではないので、省略することができる。
【0061】
コアFC1は、例えば、円筒形状の分割型のフェライトコアで構成されている。分割型のコアFC1は、2本の信号線121,122の一部分(信号取出コイルとなる部分)を電線31Aに沿わせるように配置し、信号線121、信号線122及び電線31Aを挟み込むように(これらの線が円筒内を通るように)に取り付けられている。信号線121、信号線122は絶縁ケーブルであり、電線31Aは絶縁電線であるので、コアFC1内でこれらの線が電気的に短絡することはない。
【0062】
信号線121、信号線122及び電線31AのコアFC1の円筒内を通る部分には、それぞれインダクタンスがあるので、各インダクタンスは、コアFC1によって磁気的に結合されている。従って、電線31Aに高周波信号S
Hが流れると、その高周波信号S
Hと同一の周波数を有する高周波信号S
H’が信号線121と信号線122にそれぞれ誘導される。すなわち、高周波信号S
H’が信号バイパス部12に取り出される。
【0063】
高周波バイパス装置1の信号バイパス部12は、2本の信号線121と信号線122で構成される。信号線121,122は、環状の絶縁ケーブルで構成されている。信号線121,122は、変圧器2Aの入力側と出力側とに延びている。信号線121,122の変圧器2Aの入力側に延びた部分は、上述したように、コアFC1によって電力線3Aの電線31Aに磁気的に結合されている。また、信号線121,122の変圧器2Aの出力側に延びた部分は、後述するように、信号重畳部13のコアFC2,FC3によってそれぞれ接続線LC1,LC2に磁気的に結合されている。
【0064】
信号線121,122のコアFC1の円筒内を通る部分は、コアFC1によって電線31Aに磁気的に結合され、当該電線31Aを流れる高周波信号S
Hと同一波形の高周波信号S
H’を取り出す部分である。すなわち、信号線121,122のコアFC1の円筒内を通る部分は、信号取出コイルに相当する部分である。
【0065】
また、信号線121のコアFC2の円筒内を通る部分は、コアFC2によって接続線131に磁気的に結合され、信号線121を流れる高周波信号S
H’と同一波形の高周波信号S
H”を接続線LC1に誘導する部分である。また、信号線122のコアFC3の円筒内を通る部分は、コアFC3によって接続線LC2に磁気的に結合され、信号線121を流れる高周波信号S
H’と同一波形の高周波信号S
H”を接続線LC2に誘導する部分である。すなわち、信号線121,122のコアFC2,FC3の円筒内を通る部分は、信号重畳コイルに相当する部分である。
【0066】
高周波バイパス装置1の信号重畳部13は、2個のキャパシタC2,C3と2個のコアFC2,FC3を備える。キャパシタC2は、変圧器2Aの出力側の電力線3Bの電線31Bと電線33Bの間に接続される。キャパシタC3は、変圧器2Aの出力側の電力線3Bの電線32Bと電線33Bの間に接続される。
【0067】
コアFC2は、信号バイパス部12の信号線121とキャパシタC2を電線31B,33Bの線間に接続するための接続線LC1とを磁気的に結合するための磁気結合素子である。また、コアFC3は、信号バイパス部12の信号線122とキャパシタC3を電線32B,33Bの線間に接続するための接続線LC2とを磁気的に結合するための磁気結合素子である。
【0068】
キャパシタC2とキャパシタC3は、変圧器2Aの出力端の近傍位置に設けられている。キャパシタC2,C3もキャパシタC1と同様に、電力線搬送通信の使用周波数帯域(例えば、2[MHz]〜30[MHz])に対して低インピーダンス(例えば、数[Ω])となる容量を有する。電線31Bと電線33Bの間を接続線LC1とキャパシタC2で接続した回路131(
図3参照。以下、「信号重畳回路131」という。)と、電線32Bと電線33Bの間を接続線LC2とキャパシタC3で接続した回路132(
図3参照。以下、「信号重畳回路132」という。)は、それぞれ高周波信号だけを流す回路(線路)を構成している。
【0069】
変圧器2Aの出力側の電力線3Bでは、2本の電線31B,33Bからなる配電線路と、2本の電線32B,33Bからなる配電線路でそれぞれ100[V]の交流信号が伝送され、2本の電線31B,32Bからなる配電線路で200[V]の交流信号が伝送される。信号重畳回路131と信号重畳回路132のインピーダンスは、電力線搬送通信の使用周波数帯域に対して低インピーダンスとなるが、電力伝送用の低周波信号に対しては高インピーダンスとなる。このため、変圧器2Aから電線31B,33Bからなる配電線路に出力される100[V]の交流信号は、信号重畳回路131には流れず、配電線路によって需要家側に伝送される。同様に、変圧器2Aから電線32B,33Bからなる配電線路に出力される100[V]の交流信号も信号重畳回路132には流れず、配電線路によって需要家側に伝送される。
【0070】
コアFC2,FC3は、コアFC1と同様に、円筒形状の分割型のフェライトコアで構成されている。分割型のコアFC2は、信号線121の一部分(信号重畳コイルとなる部分)を信号重畳回路131の接続線LC1に沿わせるように配置し、信号線121及び接続線LC1を挟み込むように(これらの線が円筒内を通るように)に取り付けられている。また、分割型のコアFC3は、信号線122の一部分(信号重畳コイルとなる部分)を信号重畳回路132の接続線LC2に沿わせるように配置し、信号線122及び接続線LC2を挟み込むように(これらの線が円筒内を通るように)に取り付けられている。信号線121、信号線122は絶縁ケーブルであるので、コアFC2,FC3内で信号線121,122と接続線LC1,LC2が電気的に短絡することはない。
【0071】
信号線121と接続線LC1のコアFC2の円筒内を通る部分にはそれぞれインダクタンスがあるので、各インダクタンスは、コアFC2によって磁気的に結合されている。また、信号線122と接続線LC2のコアFC3の円筒内を通る部分にもそれぞれインダクタンスがあるので、各インダクタンスは、コアFC3によって磁気的に結合されている。
【0072】
信号線121に高周波信号S
H’が流れると、その高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が接続線LC1に誘導され、信号線122に高周波信号S
H’が流れると、その高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が接続線LC2に誘導される。接続線LC1に誘導された高周波信号S
H”は、2本の電線31B,33Bからなる配電線路を通ってPLCアダプタ4Aに伝送されるので、その配電線路を流れる低周波信号(100[V]の交流信号)に重畳されてPLCアダプタ4Aに伝送される。また、接続線LC2に誘導された高周波信号S
H”は、2本の電線32B,33Bからなる配電線路を通ってPLCアダプタ4Bに伝送されるので、その配電線路を流れる低周波信号(100[V]の交流信号)に重畳されてPLCアダプタ4Bに伝送される。
【0073】
次に、第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1の構成の作用と効果について、説明する。
【0074】
図3は、
図2に示す高周波バイパス装置1の回路構成の等価回路を示す図である。
【0075】
図3に示すように、信号取出部11のコアFC1によって信号バイパス部12の信号線121と電力線3Aの電線31Aとを磁気結合した部分と、同コアFC1によって信号バイパス部12の信号線122と電力線3Aの電線31Aとを磁気結合した部分は、トランスT1として機能する。また、信号重畳部13のコアFC2によって信号バイパス部12の信号線121と接続線LC1とを磁気結合した部分は、トランスT2として機能し、信号重畳部13のコアFC3によって信号バイパス部12の信号線122と接続線LC2とを磁気結合した部分は、トランスT3として機能する。
【0076】
トランスT1は、一次コイルに対して2個の二次コイルが磁気結合した回路構成を有している。トランスT1の一次コイルは電線31Aの磁気結合部分に相当し、トランスT1の一方の二次コイルは、信号線121の磁気結合部分(信号取出コイル)に相当し、トランスT1の他方の二次コイルは、信号線122の磁気結合部分(信号取出コイル)に相当している。
【0077】
また、トランスT2の一次コイルは、信号重畳回路131の接続線LC1の磁気結合部分に相当し、トランスT2の二次コイルは、信号線121の磁気結合部分(信号重畳コイル)に相当している。また、トランスT3の一次コイルは、信号重畳回路132の接続線LC2の磁気結合部分に相当し、トランスT2の二次コイルは、信号線121の磁気結合部分(信号重畳コイル)に相当している。
【0078】
トランスT1の一方の二次コイルは、信号線121に相当する線路によってトランスT2の一次コイルに接続され、トランスT1の他方の二次コイルは、信号線122に相当する線路によってトランスT3の一次コイルに接続されている。
【0079】
図3の回路構成において、例えば、数[V]の高周波信号S
Hを重畳した6600[V]の電圧信号S
Vが電力線31Aによって変圧器2Aに向かって伝送されるとする。変圧器2Aに入力された電圧信号S
Vは変圧器2Aの一次コイルの両端(入力端子t1−t2間)に印加され、変圧器2Aの二次コイルの一方端と中間位置(出力端子t3−t5間)に+100[V]の電圧信号+S
V’が誘導され、二次コイルの他方端と中間位置(出力端子t4−t5間)に−100[V]の電圧信号−S
V’が誘導される。従って、変圧器2Aの二次コイルの両端(出力端子t3−t4間)に、200[V]の電圧信号(2×S
V’)が誘導される。
【0080】
そして、変圧器2Aの出力端子t3−t5間に誘導される+100[V]の電圧信号+S
V’は、変圧器2Aの出力側の電線3Bの電線31Bと電線33Bによって需要家側に伝送され、変圧器2Aの出力端子t4−t5間に誘導される−100[V]の電圧信号−S
V’は、電線3Bの電線32Bと電線33Bによって需要家側に伝送される。また、変圧器2Aの出力端子t3−t4間に誘導される200[V]の電圧信号(2×S
V’)は、電線3Bの電線31Bと電線32Bによって需要家側に伝送される。
【0081】
一方、電圧信号S
Vに重畳して伝送される高周波信号S
Hは、接続点a1−a2のインピーダンスがキャパシタC1によって終端されているので、当該キャパシタC1を通って流れ、変圧器2Aの一次コイルには殆ど入力されない。従って、高周波信号S
Hは、変圧器2Aを通る経路では当該変圧器2Aの出力側の電力線3Bには出力されない。
【0082】
トランスT1においては、一次コイルに高周波信号S
Hを重畳した電圧信号S
Vが流れ、2個の二次コイルに高周波信号S
Hと同一の周波数を有する高周波信号S
H’がそれぞれ誘導される。コアFC1には、情報通信用の高周波信号の周波数帯に対応した磁気結合特性を有するフェライトコアが使用されているので、トランスT1の2個の二次コイルに電圧信号S
Vと同一の周波数を有する低周波信号は誘導されず、各二次コイルには、高周波信号S
H’だけが誘導される(高周波信号S
H’の取り出し)。
【0083】
トランスT1の一方の二次コイル(信号線121の信号取出コイルに相当するコイル)に誘導された高周波信号S
H’は、信号線121を通ってトランスT2の一次コイル(信号線121の信号重畳コイルに相当するコイル)に伝送される。また、トランスT1の他方の二次コイル(信号線122の信号取出コイルに相当するコイル)に誘導された高周波信号S
H’は、信号線122を通ってトランスT3の一次コイル(信号線122の信号重畳コイルに相当するコイル)に伝送される。
【0084】
トランスT2においては、一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。すなわち、信号重畳回路131に高周波信号S
H”が誘導される。信号重畳回路131に誘導された高周波信号S
H”は、電力線3Bの2本の電線31B、33Bを用いてPLCアダプタ4Aに伝送される。電力線3Bの2本の電線31B、33Bには+100[V]の電圧信号+S
V’がPLCアダプタ4A側に伝送されるので、電線31B、33B上では電圧信号+S
V’に高周波信号S
H”が重畳された信号がPLCアダプタ4A側に伝送される。
【0085】
トランスT3においては、一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。すなわち、信号重畳回路132に高周波信号S
H”が誘導される。信号重畳回路132に誘導された高周波信号S
H”は、電力線3Bの2本の電線32B、33Bを用いてPLCアダプタ4Bに伝送される。電力線3Bの2本の電線32B、33Bには−100[V]の電圧信号−S
V’がPLCアダプタ4B側に伝送されるので、電線32B、33B上では電圧信号−S
V’に高周波信号S
H”が重畳された信号がPLCアダプタ4B側に伝送される。
【0086】
例えば、変圧器2Aの入力端子t1−t2間に流れる電流を10[A]とすると、変圧器2Aの出力端子t3−t5間と出力端子t4−t5間には10×(6600/100)=660[A]の大電流がそれぞれ流れることになる。すなわち、電線31Bと電線33Bからなる配電線路と電線32Bと電線33Bからなる配電線路にはそれぞれ660[A]の大電流が流れることになる。
【0087】
電線31Bと電線33Bの接続点b1−b3には信号重畳回路131が接続されているが、信号重畳回路131には変圧器2Aから出力される電力伝送用の低周波電流(660[A]の大電流)は流れず、信号重畳回路131に誘導された高周波信号S
H”だけが流れる。また、電線32Bと電線33Bの接続点b2−b3には信号重畳回路132が接続されているが、信号重畳回路132にも変圧器2Aから出力される電力伝送用の低周波電流(660[A]の大電流)は流れず、信号重畳回路131に誘導された高周波信号S
H”だけが流れる。
【0088】
例えば、トランスT2の回路構成が電線31Bと信号線121の信号重畳コイルに相当する部分とをコアによって磁気結合する構成にすると、電線31Bには660[A]の大電流が流れるので、磁気飽和を起こさないコアを設計しようとすると、そのコアのサイズが大きくなり、コストも高くなる。また、分割型のコアによって既設の変圧器2Aに高周波バイパス装置1を取り付ける場合、コアが大型化するので、コアの取付作業も難しくなる。この問題は、トランスT3の回路構成を電線33Bと信号線122の信号重畳コイルに相当する部分とをコアによって磁気結合する構成にする場合でも同様である。
【0089】
第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1では、信号重畳回路131,132を流れる高周波信号S
H”は、低電流の信号であるので、コアFC2,コアFC3に用いるコアのサイズを小さくすることができる。これにより信号重畳部13の構成の小型化が可能になるので、延いては高周波バイパス装置1の小型化を図ることができる。
【0090】
また、コアFC2,コアFC3が小型になることにより、既設の変圧器2Aに高周波バイパス装置1を取り付ける場合でもコアFC2,コアFC3の取付作業を容易にすることができる。また、コアFC2,コアFC3の低コスト化を図ることができるので、高周波バイパス装置1の低コスト化に寄与することができる。
【0091】
(実施の形態2)
図4は、高周波バイパス装置1の具体的な構成の第2の実施の形態を示す図である。また、
図5は、
図4に示す高周波バイパス装置1の回路構成の等価回路を示す図である。
【0092】
第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Aは、第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1の信号バイパス部12と信号重畳部13の構成を変形したものである。
【0093】
図2に示す高周波バイパス装置1の信号バイパス部12は、2個の信号線121,122を有し、且つ、信号重畳部13は、2個の信号重畳回路131,132を有していたが、
図4に示す高周波バイパス装置1Aの信号バイパス部12Aは、1個の信号線121を有し、信号重畳部13Aは、1個の信号重畳回路133(
図5参照)を有する点が異なる。信号バイパス部12Aの信号線121の構成は、信号バイパス部12の信号線121の構成と同一であるので、その説明を省略する。
【0094】
また、信号重畳部13Aの信号重畳回路133は、信号重畳部13に対して電線31Bと電線32Bの間に設けている点が異なる。信号重畳回路133は、1個のキャパシタC4と1個のコアFC4を備える。キャパシタC4は、変圧器2Aの出力側の電力線3Aの電線31Bと電線32Bの間に接続される。コアFC4は、信号バイパス部12の信号線121とキャパシタC4を電線31B,32Bの線間に接続するための接続線LC3とを磁気的に結合するための磁気結合素子である。
【0095】
キャパシタC4は、変圧器2Aの出力端の近傍位置に設けられている。キャパシタC4もキャパシタC1と同様に、電力線搬送通信の使用周波数帯域に対して低インピーダンスとなる容量を有する。信号重畳回路133は、電線31Bと電線32Bの間を接続線LC3とキャパシタC4で接続した回路であり、高周波信号だけを流す回路(線路)を構成している。
【0096】
図5に示す等価回路においては、信号重畳部13AのコアFC4によって信号バイパス部12Aの信号線121と接続線LC3とを磁気結合した部分がトランスT4として機能する。
【0097】
第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Aにおける信号取出部11と信号バイパス部12Aの動作は、第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1における信号取出部11と信号バイパス部12の動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0098】
図5に示す等価回路において、トランスT4の一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。すなわち、信号重畳回路133に高周波信号S
H”が誘導される。信号重畳回路133に誘導された高周波信号S
H”は、電力線3Bの2本の電線31B、32Bを用いて需要家側に伝送される。電力線3Bの2本の電線31B、32Bには200[V]の電圧信号(2×S
V’)が需要家側に伝送されるので、電線31B、32B上では電圧信号(2×S
V’)に高周波信号S
H”が重畳された信号が需要家側に伝送される。
【0099】
第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Aでも、信号重畳回路133を流れる高周波信号S
H”は、低電流の信号であるので、コアFC4に用いるコアのサイズを小さくすることができる。これにより信号重畳部13Aの構成の小型化が可能になるので、高周波バイパス装置1Aの小型化を図ることができる。
【0100】
また、コアFC4が小型になることにより、既設の変圧器2Aに高周波バイパス装置1Aを取り付ける場合でもコアFC4の取付作業を容易にすることができる。また、コアFC4の低コスト化を図ることができるので、高周波バイパス装置1の低コスト化に寄与することができる。
【0101】
(実施の形態3)
図6は、高周波バイパス装置1の具体的な構成の第3の実施の形態を示す図である。また、
図7は、
図6に示す高周波バイパス装置1の回路構成の等価回路を示す図である。
【0102】
第3の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Bは、電力線3の高圧配電線路上に設けられた配電用の遮断器2Bに並列に配設されるものである。遮断器2Bが開放されると、電力線3を用いて伝送される高周波信号は、遮断器2Bから需要家側には伝送できなくなる。高周波バイパス装置1Bは、遮断器2Bが開閉のいずれの状態になっても高周波信号を需要家側に伝送可能にするものである。
【0103】
遮断器2Bの入力側の2個の入力端子t1,t2には、電力線3Aの2本の電線31A,32Aがそれぞれ接続され、出力側の2個の出力端子t3,t4には、電力線3Bの2本の電線31B,32Bがそれぞれ接続されている。遮断器2Bの出力側の電力線3B上には、電線31Bと電線32Bの間にPLCアダプタ4Cが設けられている。
【0104】
高周波バイパス装置1Bの信号取出部11Aは、キャパシタC1と、コアFC1とを備える。高周波バイパス装置1Bの信号取出部11は、第1,第2の高周波バイパス装置1,1Aの信号取出部11に対して、トランスT1の位置が異なる。第1,第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1,1Aの信号取出部11では、電線31A上にトランスT1を設けていたが、高周波バイパス装置1Bの信号取出部11Aでは、キャパシタC1を2本の電線31A,32Aの線間に接続する接続線LC4上にトランスT1を設けている。
【0105】
高周波バイパス装置1Bの信号バイパス部12Aは、第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Bの信号バイパス部12Aと同一の構成であり、高周波バイパス装置1Bの信号重畳部13Aは、第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Bの信号重畳部13Aと同一の構成である。従って、高周波バイパス装置1Bの信号バイパス部12Aと信号重畳部13Aの説明は省略する。
【0106】
高周波バイパス装置1Bの信号取出部11においては、接続点a1−a2のインピーダンスがキャパシタC1によって終端されているので、電圧信号S
Vに重畳して伝送される高周波信号S
Hは、当該キャパシタC1と接続線LC4を通って流れる。
【0107】
接続線LC4は、コアFC1によって信号線121の信号取出コイルに相当する部分と磁気的に結合されているので、接続線LC4に高周波信号S
Hが流れると、信号線121の信号取出コイルに相当する部分に高周波信号S
Hと同一の周波数を有する高周波信号S
H’が誘導される。すなわち、トランスT1の一次コイルに高周波信号S
Hが流れると、トランスT1の二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。そして、その高周波信号S
H’は、信号線121によって信号重畳部13に伝送される。
【0108】
信号重畳部13Aでは、信号線121の信号重畳コイルに相当する部分に高周波信号S
H’が流れると、接続線LC3に高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。すなわち、トランスT4の一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H”が誘導される。接続線LC3に誘導された高周波信号S
H”は、電力線3Bの2本の電線31B、32Bを用いて需要家側に伝送される。
【0109】
第3の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Bでも、第2の実施の形態に係る高周波バイパス装置1Aと同様に、コアFC4に用いるコアのサイズを小さくすることができる。これにより信号重畳部13Aの構成の小型化が可能になるので、高周波バイパス装置1Bの小型化を図ることができる。
【0110】
また、コアFC4が小型になることにより、既設の遮断器2Bに高周波バイパス装置1Aを取り付ける場合でもコアFC4の取付作業を容易にすることができる。また、コアFC4の低コスト化を図ることができるので、高周波バイパス装置1Bの低コスト化に寄与することができる。
【0111】
なお、
図2に示す高周波バイパス装置1の信号取出部11と
図4に示す高周波バイパス装置1Aの信号取出部11を
図6に示す高周波バイパス装置1Bの信号取出部11Aに置き換えるように変形しても良い。逆に、
図6に示す高周波バイパス装置1Bの信号取出部11Aを
図2に示す高周波バイパス装置1の信号取出部11に置き換えるように変形しても良い。これらの変形例においても、上述した第1,第2,第3の実施形態に係る高周波バイパス装置1,1A,1Bと同様の効果を奏することができる。
【0112】
上記の実施の形態は、既設の電力機器に外部接続する高周波バイパス装置1について、説明したが、本発明に係る高周波バイパス装置1は、電力機器の内部に内蔵してもよい。
【0113】
図8は、第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1を内蔵した変圧器の基本的な構成の一例を示す構成図である。また、
図9は、
図8に示す変圧器の等価回路を示す図である。
【0114】
図8に示す変圧器2Cは、例えば、電力線3で配電される6600[V]の高圧を100[V]と200[V]の低圧に変換して需要家に供給する配電用変圧器である。変圧器2Cは、変圧器本体21と、タップ端子板22と、高周波バイパス回路23と、タンク24と、2個の高圧ブッシングBS1(+),BS1(−)と、3個の低圧ブッシングBS2(+),BS2(−),BS2(G)と、を備える。
【0115】
変圧器本体21は、6600[V]の高圧を100[V]と200[V]の低圧に変換する主要回路を構成する部分である。変圧器本体21は、高圧が印加される一次コイル(高圧コイル)と、低圧が出力される二次コイル(低圧コイル)と、一次コイルと二次コイルを磁気結合する鉄心とを備える。変圧器本体21の一次コイルからは、
図9に示すように、巻数を調整するために4個のタップ端子が引き出されている。
【0116】
タップ端子板22は、高圧ブッシングBS1(+)に接続する一次コイルのタップ端子を切り換えるための端子板である。タップ端子板22には、
図9に示すように、4つのタップ端子P
1〜P
4と、図示省略の切換片によっていずれかのタップ端子に接続されるコモン端子P
cとが設けられている。コモン端子P
cは、高圧ブッシングBS1(+)に接続されている。変圧器本体21の一次コイルの一方端から引き出された入力端子は、高圧ブッシングBS1(−)に接続され、変圧器本体21の一次コイルの4個のタップ端子は、タップ端子板22のP
1〜P
4に接続されている。
【0117】
また、変圧器本体21の二次コイルの一方端から引き出された出力端子は、
図9に示すように、低圧ブッシングBS2(+)に接続され、同二次コイルの他方端から引き出された出力端子は、低圧ブッシングBS2(−)に接続されている。さらに、二次コイルの中間端子から引き出された出力端子は、低圧ブッシングBS2(G)に接続されている。低圧ブッシングBS2(G)は、接地用のブッシングである。
【0118】
高周波バイパス回路23は、変圧器本体21の入力側の電力線3によって伝送される高周波信号を変圧器本体21とは別の線路で変圧器本体21の出力側の電力線3にバイパスする回路である。高周波バイパス回路23の構成は、第1の実施の形態に係る高周波バイパス装置1と同一の構成を有している。高周波バイパス回路23の構成については、後述する。
【0119】
タンク24は、変圧器本体21、タップ端子板22及び高周波バイパス回路23を収納する容器である。変圧器本体21、タップ端子板22及び高周波バイパス回路23が収納されたタンク24には、電気回路の絶縁と冷却をするための絶縁油が充填されるが、
図8では省略している。また、タンク24の側面には、通常、絶縁油の熱を外気に放出するための放熱器(例えば、タンク側面に突設された複数のフィンからなる放熱器)が設けられているが、
図8では省略している。
【0120】
2個の高圧ブッシングBS1(+),BS1(−)は、電力線3によって伝送される高圧を入力するための端子である。また、3個の低圧ブッシングBS2(+),BS2(−),BS2(G)は、変圧器本体21が高圧を変換した低圧を出力するための端子である。2個の高圧ブッシングBS1(+),BS1(−)と3個の低圧ブッシングBS2(+),BS2(−),BS2(G)に取り付けられている。高圧ブッシングBS1(+),BS1(−)には電力線3Aの電線31Aと電線32Aがそれぞれ接続され、低圧ブッシングBS2(+),BS2(−),BS2(G)には電力線3Bの電線31A、電線32A、電線33Aがそれぞれ接続される。
【0121】
高周波バイパス回路23は、信号取出部を構成するキャパシタC1及びコアFC1と、信号バイパス部を構成する2つの環状の信号線231,232と、信号重畳部を構成する2個のキャパシタC2,C3及び2個のコアFC2,FC3とを備える。キャパシタC1,C2,C3は、電力線搬送通信の使用周波数帯域(例えば、2[MHz]〜30[MHz])に対して低インピーダンス(例えば、数[Ω])となる容量を有する。
【0122】
キャパシタC1は、高周波信号の取り出し動作に必須の構成要素ではないので、省略することができる。
【0123】
キャパシタC1は、タップ端子板22のコモン端子と高圧ブッシングBS1(+)を接続する接続線LD1と、変圧器本体21の一次コイルの一方端と高圧ブッシングBS1(−)を接続する接続線LD2との間に接続されている。コアFC1は、例えば、円筒形状の分割型のフェライトコアで構成されている。コアFC1は、2本の信号線231,232の一部分(信号取出コイルとなる部分)を接続線LD1に沿わせるように配置し、信号線231、信号線232及び接続線LD1を挟み込むように(これらの線が円筒内を通るように)に取り付けられている。
【0124】
2本の信号線231,232は、環状の絶縁ケーブルで構成されている。信号線121,122は、変圧器本体21の入力側と出力側とに延びている。信号線121,122の変圧器本体21の入力側に延びた部分は、コアFC1によって接続線LD1に磁気的に結合されている。また、信号線121,122の変圧器2Aの出力側に延びた部分は、コアFC2,FC3によってそれぞれ接続線LC1,LC2に磁気的に結合されている。
【0125】
キャパシタC2は、変圧器本体21の一方の出力端子と低圧ブッシングBS2(+)を接続する接続線LD3と、変圧器本体21の中間端子と低圧ブッシングBS2(G)を接続する接続線LD5の間に接続されている。キャパシタC3は、変圧器本体21の他方の出力端子と低圧ブッシングBS2(−)を接続する接続線LD4と接続線LD5の間に接続されている。
【0126】
コアFC2は、信号線231と、キャパシタC2を接続線LD3,LD5の線間に接続するための接続線LC1とを磁気的に結合するための磁気結合素子である。また、コアFC3は、信号線232とキャパシタC3を接続線LD4,LD5の線間に接続するための接続線LC2とを磁気的に結合するための磁気結合素子である。接続線LD3,LD5の線間を接続線LC1とキャパシタC2で接続した回路は、上述した信号重畳回路131に相当し、接続線LD4,LD5の線間を接続線LC2とキャパシタC3で接続した回路は、上述した信号重畳回路132に相当している。
【0127】
次に、変圧器2Cの作用と効果について、説明する。
【0128】
図9に示すように、信号取出部のコアFC1によって信号バイパス部の信号線231と接続線LD1とを磁気結合した部分と、同コアFC1によって信号バイパス部の信号線232と接続線LD1とを磁気結合した部分は、トランスT1として機能する。また、信号重畳部のコアFC2によって信号線231と接続線LC1とを磁気結合した部分は、トランスT2として機能し、信号重畳部のコアFC3によって信号線232と接続線LC2とを磁気結合した部分は、トランスT3として機能する。
【0129】
トランスT1は、一次コイルに対して2個の二次コイルが磁気結合した回路構成を有している。トランスT1の一次コイルは接続線LD1の磁気結合部分に相当し、トランスT1の一方の二次コイルは、信号線231の磁気結合部分(信号取出コイル)に相当し、トランスT1の他方の二次コイルは、信号線232の磁気結合部分(信号取出コイル)に相当している。
【0130】
また、トランスT2の一次コイルは、接続線LC1の磁気結合部分に相当し、トランスT2の二次コイルは、信号線231の磁気結合部分(信号重畳コイル)に相当している。また、トランスT3の一次コイルは、信号重畳回路の接続線LC2の磁気結合部分に相当し、トランスT2の二次コイルは、信号線231の磁気結合部分(信号重畳コイル)に相当している。
【0131】
トランスT1の一方の二次コイルは、信号線231に相当する線路によってトランスT2の一次コイルに接続され、トランスT1の他方の二次コイルは、信号線232に相当する線路によってトランスT3の一次コイルに接続されている。
【0132】
図9の回路構成において、例えば、数[V]の高周波信号S
Hを重畳した6600[V]の電圧信号S
Vが接続線LD1によって変圧器本体21に入力されるとする。変圧器2C内に入力された電圧信号S
Vは変圧器本体21の一次コイルの両端に印加され、変圧器2Cの二次コイルの一方端と中間位置に+100[V]の電圧信号+S
V’が誘導され、二次コイルの他方端と中間位置に−100[V]の電圧信号−S
V’が誘導される。
【0133】
電圧信号S
Vに重畳して入力された高周波信号S
Hは、接続点a1−a2のインピーダンスがキャパシタC1によって終端されているので、当該キャパシタC1を通って流れ、変圧器本体21の一次コイルには殆ど入力されない。従って、高周波信号S
Hは、変圧器本体21を通る経路では当該変圧器本体21の出力端子には出力されない。
【0134】
トランスT1においては、一次コイルに高周波信号S
Hを重畳した電圧信号S
Vが流れ、2個の二次コイルに高周波信号S
Hと同一の周波数を有する高周波信号S
H’がそれぞれ誘導される。コアFC1には、情報通信用の高周波信号の周波数帯に対応した磁気結合特性を有するフェライトコアが使用されているので、トランスT1の2個の二次コイルに電圧信号S
Vと同一の周波数を有する低周波信号は誘導されず、各二次コイルには、高周波信号S
H’だけが誘導される(高周波信号S
H’の取り出し)。
【0135】
トランスT1の一方の二次コイル(信号線231の信号取出コイルに相当するコイル)に誘導された高周波信号S
H’は、信号線231を通ってトランスT2の一次コイル(信号線231の信号重畳コイルに相当するコイル)に伝送される。また、トランスT1の他方の二次コイル(信号線232の信号取出コイルに相当するコイル)に誘導された高周波信号S
H’は、信号線232を通ってトランスT3の一次コイル(信号線232の信号重畳コイルに相当するコイル)に伝送される。
【0136】
トランスT2においては、一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。この高周波信号S
H”は、2本の接続線LD3,LD5によって低圧ブッシングBS2(+),BS2(G)から需要家側に出力される。2本の接続線LD3,LD5には+100[V]の電圧信号+S
V’が出力されるので、低圧ブッシングBS2(+),BS2(G)からは電圧信号+S
V’に高周波信号S
H”が重畳された信号が需要家側に出力される。
【0137】
トランスT3においては、一次コイルに高周波信号S
H’が流れると、二次コイルに高周波信号S
H’と同一の周波数を有する高周波信号S
H”が誘導される。この高周波信号S
H”は、2本の接続線LD3,LD4によって低圧ブッシングBS2(−),BS2(G)から需要家側に出力される。2本の接続線LD3,LD4には−100[V]の電圧信号−S
V’が出力されるので、低圧ブッシングBS2(−),BS2(G)からは電圧信号−S
V’に高周波信号S
H”が重畳された信号が需要家側に出力される。
【0138】
高周波バイパス回路23を備えた変圧器2Cにおいても、コアFC2によって信号線231が磁気結合される接続線LC1と、コアFC3によって信号線232が磁気結合される接続線LC2には大電流が流れないので、コアFC2,コアFC3に用いるコアのサイズを小さくすることができる。これにより高周波バイパス回路23の小型化が可能になるので、延いては変圧器2Cの小型化を図ることができる。
【0139】
また、コアFC2,コアFC3が小型になることにより、コアFC2,コアFC3の低コスト化を図ることができ、変圧器2Cの低コスト化を図ることができる。
【0140】
また、変圧器2Cでは、変圧器2C内の絶縁油により絶縁性の高い高周波バイパス回路23を変圧器2Cに内蔵することができる。
【0141】
また、変圧器2Cには高周波バイパス回路23を内蔵しているので、既設の変圧器のメンテンス時に当該変圧器を変圧器2Cに取り替えることにより、簡単に高周波バイパス装置を電力線3に設置することができる。
【0142】
なお、上記の実施の形態では、電力機器の例として変圧器と遮断器について説明したが、本発明に係る高周波バイパス装置1は、これらの機器以外の電力機器にも適用することができる。