(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記カバーが、上記H形鋼の一方のフランジの外面に対して着脱自在に接続される第1のカバー部材と、上記H形鋼の他方のフランジの外面に対して着脱自在に接続される第2のカバー部材とからなることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼を用いた緑化システム。
上記H形鋼が、駐車場建物の各フロアの周囲に設けられた転落防止柵のガードレールであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のH形鋼を用いた緑化システム。
上記ケースの上面近傍に灌水パイプが配設されており、この灌水パイプから上記開口部を介して上記植物に水が供給されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のH形鋼を用いた緑化システム。
上記H形鋼の一方のフランジの外面側に、上記植物の蔓等を絡ませて所定方向に生育させるための生育補助材が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の駐車場緑化システム。
【背景技術】
【0002】
大型のショッピングセンターや遊戯施設等においては、自動車で来訪した利用者のために、複数階に亘る自走式の駐車場が併設されているケースが多い。
一方で、近年では温暖化対策や都市景観向上の一環として、条例により大型駐車場の建設に際し一定の緑化対策を講じることが義務付けられるようになってきている(非特許文献1参照)。
【0003】
駐車場の緑化対策としては、例えば非特許文献2に示すように、駐車場の駐車スペース全面に植物を生育させるものが提案されているが、日光が十分に届かない屋内駐車場に適用するのは難しく、導入コストやランニングコストが嵩むという問題もあった。
【0004】
また、非特許文献3に示すように、駐車場建物の周辺の地面に蔓性の植物を植え、駐車場建物の外壁に設置したワイヤやネット等に蔓等を絡ませることで、壁面緑化を行うことも考えられるが、階数の多い駐車場の場合には上層階まで蔓を登らせることが難しいという問題があった。
【0005】
【非特許文献1】駐車場緑化ガイド インターネットURL:https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/green/attachement/parking_plant.pdf 検索日:平成28年2月22日
【非特許文献2】駐車場緑化用システム Green Techno Parking インターネットURL:http://www.daitoutg.co.jp/prd/prd_gtp.html 検索日:平成28年2月22日
【非特許文献3】ヘデラ登ハンシステム/立体駐車場壁面緑化 インターネットURL:http://www.daitoutg.co.jp/exp/popup/hd_ex_p2.html 検索日:平成28年2月22日
【0006】
自走式の駐車場には一般に、自動車の転落を防止するための柵が設けられているが、この転落防止柵の上に複数の植栽プランターを設置して植物を生育させることも行われている。
【0007】
図11はその一例を示すものであり、複数階を有する駐車場建物66の各階に設けられた転落防止柵62上に、複数の植栽プランター90を載置・固定した構成を備えている。
この転落防止柵62は、H形鋼よりなる梁部63と、この梁部63の上面に垂直に接続されたH形鋼よりなる複数本の支柱64と、各支柱64の上に渡されたH形鋼よりなるガードレール65とを備えている。
【0008】
各植栽プランター90には、ヘデラカナリエンシス等の蔓性または下垂性等の植物54が植えられている。
また、駐車場建物66の外面には、ワイヤーメッシュ57が取り付けられている。
このため、植物54の先端をワイヤーメッシュ57に絡ませて下方等に誘導することにより、比較的容易に建物の壁面緑化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、この発明に係るH形鋼を用いた緑化システム10の主要な構成要素である植栽ユニット12と、これを収納するケース14とを示す部分断面図である。
【0026】
ケース14は、
図2に示すように、H形鋼15と、H形鋼15の外面に装着される一対の延長カバー16, 16と、H形鋼15及び各延長カバー16, 16の両端部分を閉塞する一対の蓋部材17, 17とを備えている。
【0027】
H形鋼15は、一対のフランジ18, 18と、各フランジ18, 18の内面中央部を接続するウェブ19とを備えており、各フランジ18, 18の外面には、複数のネジ穴20が形成されている。
また、ウェブ19の中央部には、一定の間隔をおいて排水口21が複数形成されている。
【0028】
延長カバー16は、側壁板24と、側壁板24の上端側を直角に折り曲げて形成した天井板25と、天井板25の先端側を直角に折り曲げて形成した折返し部26を備えている。
また、各延長カバー16の側壁板24には、H形鋼15との接合用の複数の貫通孔27と、蓋部材17との接合用の複数のネジ穴28が形成されている。
【0029】
各蓋部材17は、矩形状の閉塞板30と、閉塞板30の上辺に対し直角に連結された上板31と、両側辺に対し直角に連結された一対の側板32とを備えている。
また、各側板32には、延長カバー16との接合用の貫通孔33が複数形成されている。
【0030】
H形鋼15は、そのウェブ19が設置面35と平行する向きに配置され、設置面35に垂直に立設されたH形鋼よりなる複数の脚部36の頂面に載置されている。
また、H形鋼15と各脚部36は、接続板37を介して固定されている。
すなわち、
図3に示すように、接続板37の下部は脚部36のウェブ38に溶接されると共に、上部はH形鋼15のウェブ19に形成された矩形状貫通孔39に挿通され、H形鋼15のフランジ18, 18の内面に溶接されている(
図2)。
【0031】
ケース14の組立は、以下の手順に従う。
(1) 各延長カバー16, 16の側壁板24, 24の下端を、H形鋼15の各フランジ18, 18の下端に合わせる。
(2) 各延長カバー16, 16の貫通孔27にボルト40を挿通し、H形鋼15のフランジ18, 18に形成されたネジ穴20に螺合させる。
(3) 各延長カバー16, 16の両端に蓋部材17, 17を宛がう。
(4)
図4に示すように、各蓋部材17, 17の貫通孔33にネジ41を挿通し、各延長カバー16, 16に形成されたネジ穴28に螺合させる。
組立完了後において、各延長カバー16, 16の天井板25, 25間には、数cm(例えば2〜4cm)程度の長方形状の開口部42が形成される。
【0032】
なお、
図4に示すように、各延長カバー16, 16の天井板25, 25に、上板43及び側板44, 44を備えた断面コ字形状の押え金具45を複数装着した後、押え金具45の側板44, 44に形成された貫通孔46にネジ47を挿通し、延長カバー16, 16側に形成されたネジ穴48に螺合させることにより、ケース14の剛性を高めることもできる。
【0033】
植栽ユニット12は、防根排水シート50と、この防根排水シート50に包まれた基盤材(人工培地)51と、不織布52と、土壌53とを備えている(
図1)。
防根排水シート50は、例えばポリエステル薄地織物等よりなる。
基盤材51は、保水性に優れた素材(例えばロックウールや粒状綿、スポンジ等)よりなる。
上記土壌53中には、ヘデラカナリエンシス等の蔓性または下垂性等の植物54の根茎部55が埋設されている。
植栽ユニット12は、予めプランター56内に配置されており、植物54が所定の大きさになるまで生育される。
【0034】
植栽ユニット12をケース14内に移設する際には、
図5に示すように、前面側の延長カバー16を取り外した上で、防根排水シート50の両端部50a, 50bを手で掴んで上に持ち上げ、植物54ごとH形鋼15のウェブ19上に載置する。
【0035】
その後、前面側の延長カバー16をH形鋼15に取り付けることにより、
図6に示すように、ケース14内に植栽ユニット12が収納される。
図示の通り、防根排水シート50の両端部50a, 50bは内側に折り込まれ、延長カバー16, 16の天井板25, 25の裏側に配置される。
また植物54の先端は、天井板25, 25間の開口部42から外部に導出され、背面側の延長カバー16の背後に配置されたワイヤーメッシュ57の外側に倒しておく。ワイヤーメッシュ57の代わりに、他の生育補助材(パネルやワイヤー等)を用いることもできる。
【0036】
前面側の延長カバー16の天井板25上には、灌水パイプ58が配設されており、この灌水パイプ58からは一定の間隔をおいて複数の支管59が分岐されている。
この支管59は土壌53に深く埋設されており、その先端部は不織布52まで到達している。この結果、不織布52の下に配置された基盤材51には、灌水パイプ58及び支管59を介して定期的に水が供給される。
【0037】
なお、上記のように灌水パイプ58から分岐された複数の支管59を土壌53に深く埋設させて水を供給する代わりに、多数の放水口を備えた給水パイプをケース14の開口部42上に配設し、上記放水口から水を土壌53の表面に供給するようにしてもよい。
【0038】
この緑化システム10は、自走式の屋内駐車場に設置された既存の転落防止柵に容易に適用することができる。
ここで「転落防止柵」とは、自走式駐車場の各階の周囲に設けられる一種のガードレールであり、駐車スペースにバックで進入してきた自動車が、誤って場外に転落することを防止する機能を果たすものである。
図7に示すように、転落防止柵62は、H形鋼よりなる梁部63と、この梁部63の上面に垂直に接続されたH形鋼よりなる複数本の支柱64と、各支柱64の上に渡されたH形鋼よりなるガードレール65とを備えている。
【0039】
この転落防止柵62は、工場において梁部63と各支柱64とが溶接された状態で現場に搬送される。そして、駐車場建物66の柱67に垂直に接合されたブラケット68の端面と、転落防止柵62の梁部63の端面とが突き合わされ、スプライスプレート69及び高力ボルト70を介して両者間が連結される。
つぎに、ガードレール65が各支柱64上に載置され、溶接またはボルトとナットを介して固定される。
このH形鋼よりなるガードレール65のフランジに、一対の延長カバー16及び蓋部材17を取り付けることで、ケース14を容易に形成することができる。
【0040】
図8はその一例を示すものであり、複数階を有する駐車場建物66に対し、下の階から順番に、転落防止柵62のガードレール(H形鋼)65に延長カバー16及び蓋部材17を取り付けてケース14を形成し、その内部に植物54を植えた複数の植栽ユニット12を収納させると共に、天井板25上に灌水パイプ58が配設されていく様子が示されている。
駐車場建物66の外面には、ワイヤーメッシュ57が取り付けられている。
【0041】
図9は、駐車場建物66中のあるフロア72を天井側より観察した模式図であり、当該フロア72を取り囲む複数の転落防止柵62のガードレール65に延長カバー16及び蓋部材17を取り付けて複数のケース14を形成し、それぞれの内部に植栽ユニット12を配置させた様子が示されている。
灌水パイプ58は、各ケース14の天井板25上に配設されているが、途中に柱67が存在する場合には、屋内側あるいは屋外側に湾曲させることで、これらを回避している。
【0042】
灌水パイプ58の一端には電磁弁73が接続されており、この電磁弁73の開閉によって、水道等の水源から水が供給される。図中の符号74は、水源側の開閉弁を示している。
上記電磁弁73は、コントローラ75からの信号に基づいて開閉制御される。
コントローラ75は、各種センサからの入力に基づいて検知した気温や天候に応じて、一定の時間間隔で電磁弁73を開閉する。
このコントローラ75は、コントロールセンター等に配置されたコンピュータ(図示省略)により、通信ネットワークを介して遠隔制御されている。
【0043】
上記のワイヤーメッシュ57は、その上端辺57aがケース14の開口部42よりもだいぶ高い位置に来るように取り付けられると、植物54の蔓が上方に向かってしまい、壁面緑化が難しくなる可能性がある。
これに対し、その上端辺57aがケース14の開口部42よりも若干高い位置か、開口部42と同じ位置、あるいは開口部42よりも若干低い位置に来るようにワイヤーメッシュ57を取り付けることにより、これに植物54の蔓を絡ませて下方に伸びるように誘導することができる。
【0044】
この緑化システム10の場合、駐車場建物66に不可欠の設備である転落防止柵62のH形鋼(ガードレール65)をケース14の主要構成部材として転用することにより、転落防止柵62自体を植栽プランター化するものであるため、通常は遊んでいるスペースを有効利用して駐車場の緑化を促進することができる。
【0045】
また、当然ながら一般的なプランターを設置する場合に比べて省スペース化が可能であり、特に奥行をほぼH形鋼の横幅寸法にまで短縮化できる。
もちろん、植物54の生育のためには一定量の土壌や培地が必要となるが、延長カバー16の側壁板24の高さを上に伸ばすことでケース14の容量を十分に確保することができる。
【0046】
さらに、植栽プランターを用いた場合のように不自然な凸凹が生じないため、全体としてスタイリッシュな外観となり、デザイン上の違和感を大幅に軽減することができる。
【0047】
ケース14の上面の大部分が天井板25で覆われており、土壌53が露出していないこともデザイン性の向上に寄与している。
また、この天井板25の存在により、風で土壌53が吹き飛ばされることや、余計な雑草が生えることも抑えられている。
ただし、ケース14の上面に天井板25を設けることなく、全面開口とすることもできる。
【0048】
各植物54は、従来の壁面緑化手法のように下(地面側)から上に向けて蔓を這わす代わりに、重力に逆らうことなく上から下に向けて垂らす仕組みであるため、駐車場建物66の壁面緑化が容易かつ確実に実現できる。
ただし、場合によっては植物54の蔓等を上方または側方に向けて生育させることにより、駐車場建物66の壁面緑化を実現してもよい。
【0049】
途中で一部の植物54が枯れてしまった場合であっても、前面側の延長カバー16を取り外し、該当の植栽ユニット12を交換するだけで対応できる。
【0050】
上記においては、H形鋼15の各フランジ18の外面にそれぞれ延長カバー16をネジ止めすることでケース14を形成する例を示したが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、前面側の延長カバー16の下端とH形鋼15のフランジ18との間を蝶番を介して回動自在に連結することもできる。
このように前面側の延長カバー16を開閉式とすることにより、延長カバー16を取り外すことなく、植栽ユニット12を容易に交換することが可能となる。
【0052】
あるいは、H形鋼15の上に1個の箱形延長カバーをすっぽりと被せ、当該箱形延長カバーの側面とH形鋼15のフランジ18間を固定するように構成してもよい。
この場合、植物54は箱形延長カバーの上面に形成された開口より外部に導出される。
【0053】
この緑化システム10は、上記のように駐車場の転落防止柵62に適用する場合に限定されるものではなく、緑化対策が求められるあらゆる場所(例えば住宅のベランダやバルコニー、工場、レストラン、病院、学校、公園等)において実現可能であることはいうまでもない。
【0054】
図10は、H形鋼15のウェブ19に形成された排水口21に対し、導水管80を上から挿通させた後、その先端にL字管81を取り付けた例を示している。
この結果、植栽ユニット12から排出された水を排水路82等の排水設備まで案内することができ、排水が設置面35に無秩序に拡散することを有効に防止できる。
なお、導水管80の上端には、排水口21の口径よりも広い鍔部83が形成されているため、導水管80が脱落することはない。