特許第6660263号(P6660263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660263
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】硬貨収納繰出機構および硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20200227BHJP
   G07D 1/06 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G07D1/00 Z
   G07D1/06
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-133239(P2016-133239)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-5656(P2018-5656A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠一
(72)【発明者】
【氏名】上原 圭介
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−241005(JP,A)
【文献】 特開2015−153061(JP,A)
【文献】 特開平9−274687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00−3/16,9/00−9/06,
11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硬貨を収納する収納部と、
前記収納部に収納されている硬貨を一層一列状態で1枚ずつ繰り出す繰出部と、
を備え、
前記繰出部は、前記収納部の底面に配置され、硬貨の繰出方向および当該繰出方向とは逆の方向に移動可能となっている搬送部材と、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第1の停止部材と、前記第1の停止部材よりも硬貨の繰出方向における上流側に設けられ、前記搬送部材により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材とを有している、硬貨収納繰出機構。
【請求項2】
前記搬送部材は帯状のベルトであり、前記搬送部材により搬送される硬貨は前記ベルトの上に載置されるようになっている、請求項1記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項3】
前記第2の停止部材は、前記搬送部材により搬送される硬貨を繰出方向にのみ送ることができるような構成となっている、請求項1または2記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項4】
前記第2の停止部材は、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材を通過する際にこの硬貨によって上方に持ち上がるとともに前記搬送部材により繰出方向とは逆方向に搬送される硬貨が前記第2の停止部材に接触すると当該第2の停止部材によりこの硬貨はこれ以上繰出方向とは逆方向に移動することができないような構成となっている、請求項3記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項5】
前記第2の停止部材と前記搬送部材との間の距離が、前記収納部に収納されるべき硬貨の厚さよりも小さくなっている、請求項4記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項6】
前記搬送部材による硬貨の繰出方向における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間の距離は、前記収納部に収納されるべき硬貨の直径の4倍よりも大きいとともに当該直径の5倍よりも小さな大きさとなっている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項7】
前記第1の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間に保留される硬貨を検知する第1保留検知手段を更に備えた、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項8】
前記第2の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間に保留される硬貨を検知する第2保留検知手段を更に備えた、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項9】
前記第1の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨が前記第1の停止部材を通過して繰り出されたことを検知する繰出検知手段を更に備えた、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の硬貨収納繰出機構。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬貨収納繰出機構と、
筐体の内部に硬貨を投入するための投入部と、
前記投入部により前記筐体の内部に投入された硬貨を前記硬貨収納繰出機構の前記収納部に送る入金搬送部と、
前記硬貨収納繰出機構から繰り出された硬貨を前記筐体の外部に投出するための投出部と、
を備えた、硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の硬貨を収納するとともに収納されている硬貨を一層一列状態で1枚ずつ繰り出すことができる硬貨収納繰出機構およびこのような硬貨収納繰出機構を備えた硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の商業施設の店舗において、商品棚が設置されるフロント領域の精算所には貨幣釣銭機がPOSレジスタとともに設置され、また、顧客が立ち入ることができないバックヤード領域には出納機等の入出金機が設置されるようになっている。ここで、フロント領域の精算所に設置される貨幣釣銭機は、商品と引き換えに顧客から店員に手渡された貨幣の入金処理を行うとともに、釣銭としての貨幣の出金処理を行うことができるようになっている。このような貨幣釣銭機としては、例えば特許文献1等に開示されるものが従来から知られている。
【0003】
特許文献1に開示される硬貨入出金装置では、入金された硬貨が収納される硬貨収納部において、硬貨収納部に収納されている硬貨を払出搬送路に沿って硬貨払出口に搬送する払出ベルトが設けられており、当該払出ベルトにより硬貨が一層一列状態で1枚ずつ硬貨収納部から払い出されるようになっている。また、硬貨収納部において、分離ローラよりも硬貨払出方向の下流側の出口部には、所定枚数の硬貨を一層一列状態で待機させる硬貨待機領域が設けられている。このような硬貨待機領域に所定枚数の硬貨を予め待機させておくことにより、硬貨収納部に収納されている硬貨を払出ベルトにより払出搬送路に沿って硬貨払出口に搬送する場合と比較して、硬貨の払い出し動作を短時間で行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−199146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される硬貨入出金装置では、硬貨収納部において分離ローラと払出ベルトとの間に硬貨が詰まってしまった場合には、払出ベルトを硬貨の払出方向にいくら循環移動させても硬貨待機領域に硬貨をこれ以上送ることができなくなるため、払出ベルトを硬貨の払出方向とは逆方向に循環移動させる必要がある。しかしながら、払出ベルトを硬貨の払出方向とは逆方向に循環移動させると、硬貨待機領域に既に待機している硬貨が硬貨収納部に戻されてしまい、分離ローラと払出ベルトとの間における硬貨の詰まり現象が解消された後に、再び払出ベルトを硬貨の払出方向に循環移動させて硬貨を硬貨待機領域に送らなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、繰出部において搬送部材を繰出方向とは逆の方向に移動させる場合でも第1の停止部材と第2の停止部材との間に硬貨を待機させておくことができる硬貨収納繰出機構および硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硬貨収納繰出機構は、複数の硬貨を収納する収納部と、前記収納部に収納されている硬貨を一層一列状態で1枚ずつ繰り出す繰出部と、を備え、前記繰出部は、前記収納部の底面に配置され、硬貨の繰出方向および当該繰出方向とは逆の方向に移動可能となっている搬送部材と、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第1の停止部材と、前記第1の停止部材よりも硬貨の繰出方向における上流側に設けられ、前記搬送部材により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材とを有していることを特徴とする。
【0008】
このような硬貨収納繰出機構によれば、繰出部において、第1の停止部材よりも硬貨の繰出方向における上流側に、搬送部材により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材が設けられているため、繰出部において搬送部材を繰出方向とは逆の方向に移動させる場合でも第1の停止部材と第2の停止部材との間に硬貨を待機させておくことができる。
【0009】
本発明の硬貨収納繰出機構においては、前記搬送部材は帯状のベルトであり、前記搬送部材により搬送される硬貨は前記ベルトの上に載置されるようになっていてもよい。
【0010】
本発明の硬貨収納繰出機構においては、前記第2の停止部材は、前記搬送部材により搬送される硬貨を繰出方向にのみ送ることができるような構成となっていてもよい。
【0011】
この場合、前記第2の停止部材は、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材を通過する際にこの硬貨によって上方に持ち上がるとともに前記搬送部材により繰出方向とは逆方向に搬送される硬貨が前記第2の停止部材に接触すると当該第2の停止部材によりこの硬貨はこれ以上繰出方向とは逆方向に移動することができないような構成となっていてもよい。
【0012】
また、前記第2の停止部材と前記搬送部材との間の距離が、前記収納部に収納されるべき硬貨の厚さよりも小さくなっていてもよい。
【0013】
本発明の硬貨収納繰出機構においては、前記搬送部材による硬貨の繰出方向における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間の距離は、前記収納部に収納されるべき硬貨の直径の4倍よりも大きいとともに当該直径の5倍よりも小さな大きさとなっていてもよい。
【0014】
本発明の硬貨収納繰出機構は、前記第1の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間に保留される硬貨を検知する第1保留検知手段を更に備えていてもよい。
【0015】
本発明の硬貨収納繰出機構は、前記第2の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材における前記第1の停止部材と前記第2の停止部材との間に保留される硬貨を検知する第2保留検知手段を更に備えていてもよい。
【0016】
本発明の硬貨収納繰出機構は、前記第1の停止部材の近傍に設けられ、前記搬送部材により繰出方向に搬送される硬貨が前記第1の停止部材を通過して繰り出されたことを検知する繰出検知手段を更に備えていてもよい。
【0017】
本発明の硬貨処理装置は、上述した硬貨収納繰出機構と、筐体の内部に硬貨を投入するための投入部と、前記投入部により前記筐体の内部に投入された硬貨を前記硬貨収納繰出機構の前記収納部に送る入金搬送部と、前記硬貨収納繰出機構から繰り出された硬貨を前記筐体の外部に投出するための投出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬貨収納繰出機構および硬貨処理装置によれば、繰出部において搬送部材を繰出方向とは逆の方向に移動させる場合でも第1の停止部材と第2の停止部材との間に硬貨を待機させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による硬貨処理装置の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図である。
図2図1に示す硬貨処理装置におけるリジェクト部および硬貨収納部の構成を示す側面図である。
図3図1に示す硬貨処理装置における硬貨収納部および硬貨払出部の構成を示す縦断面図である。
図4図3に示す硬貨収納部に設けられた繰出部の構成を拡大して示す拡大縦断面図である。
図5図4に示す繰出部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す上面図である。
図6図1に示す硬貨処理装置における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図7】(a)(b)は、それぞれ、図1に示す硬貨処理装置において釣銭としての硬貨の出金処理を行う際に操作表示部に表示される画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図7は、本実施の形態に係る硬貨処理装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による硬貨処理装置の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図であり、図2は、図1に示す硬貨処理装置におけるリジェクト部および硬貨収納部の構成を示す側面図である。また、図3は、図1に示す硬貨処理装置における硬貨収納部および硬貨払出部の構成を示す縦断面図であり、図4は、図3に示す硬貨収納部に設けられた繰出部の構成を拡大して示す拡大縦断面図であり、図5は、図4に示す繰出部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す上面図である。また、図6は、図1に示す硬貨処理装置における制御系の構成を示す機能ブロック図である。また、図7(a)および図7(b)は、それぞれ、図1に示す硬貨処理装置において釣銭としての硬貨の出金処理を行う際に操作表示部に表示される画面を示す図である。なお、図2図4図5等において、本実施の形態による硬貨処理装置により処理される硬貨を参照符合Cで示す。
【0021】
本実施の形態による硬貨処理装置1は、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗における顧客が商品の精算処理を行う精算所(具体的には、レジカウンター)に設置される釣銭機の硬貨処理ユニットとして用いられるものである。このような硬貨処理装置1は、略直方体形状の筐体10と、筐体10の前面側に設けられ、硬貨の入金処理を行う際に操作者によって硬貨が投入される硬貨受入部(投入部)12と、筐体10の前面側に設けられ、硬貨の出金処理を行う際に硬貨が払い出される硬貨払出部(投出部)32と、筐体10の内部で硬貨を金種毎に収納する複数の硬貨収納部30a〜30fとを備えている。ここで、複数の硬貨収納部30a〜30fは筐体10の幅方向(すなわち、図1の左右方向)に沿って並列に並ぶよう配置されており、各硬貨収納部30a〜30fにはそれぞれ50円硬貨、5円硬貨、500円硬貨、100円硬貨、10円硬貨および1円硬貨がこの順で収納されるようになっている。
【0022】
硬貨受入部12は、硬貨投入口を介して受け入れた硬貨を1層1列状態で1枚ずつ筐体10内に取り込むようになっている。より詳細には、硬貨受入部12には図示しない残留検知センサが設けられており、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨は残留検知センサによって検知されるようになっている。また、硬貨受入部12には、図1における左方向に移動する繰出ベルト14a等からなる繰出部14が設けられており、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨が残留検知センサによって検知されるとこの繰出部14が駆動されることにより当該繰出部14によって硬貨が筐体10の内部に1枚ずつ繰り出されるようになっている。また、図1に示すように、硬貨受入部12には、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨を1層1列状態で搬送する入金搬送部16が接続されている。
【0023】
入金搬送部16は、略水平方向に延びる搬送面16cを有しており、この搬送面16c上で硬貨は略水平方向の姿勢で搬送されるようになっている。また、入金搬送部16は、複数のプーリ16bにより張架された循環ベルト16aを有しており、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨は循環ベルト16aとの間で働く摩擦力により筐体10の内部で搬送されるようになっている。具体的には、循環ベルト16aは搬送面16cからわずかな大きさの隙間(具体的には、概ね硬貨1枚分の厚さと略同一の大きさの隙間)を隔てて搬送面16cの上方に配置されている。また、複数のプーリ16bのうちある一つのプーリ16bには駆動モータが接続されており、当該駆動モータによりプーリ16bが回転させられることにより循環ベルト16aは図1における反時計回りの方向に循環移動するようになっている。また、循環ベルト16aの下端部には搬送面16c上の硬貨を押動するためのピンが等間隔で複数設けられており、循環ベルト16aが図1における反時計回りの方向に循環移動すると、搬送面16c上の硬貨がピンにより筐体10の奥行き方向に押動されるようになる。このようにして、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨は筐体10の内部における右側の領域において搬送面16c上で略水平方向の姿勢で当該筐体10の奥行き方向に搬送されるようになる。
【0024】
図1に示すように、入金搬送部16の途中には、硬貨の金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別を行う識別部18が設けられている。また、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨を入金搬送部16の搬送面16cから分岐させて後述するリジェクト口26により筐体10の外部に排出するリジェクト部24が設けられている。図2に示すように、リジェクト部24は、硬貨を立位状態で自重により送るリジェクトシュート24aを有している。なお、図2において、入金搬送部16により搬送される硬貨やリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に立位状態で送られる硬貨を参照符合Cで示している。ここで、リジェクトシュート24aは水平方向に対して斜め下方に傾斜しており、このリジェクトシュート24aの下流側の端部には、筐体10の前面側に設けられたリジェクト口26が設けられている。リジェクト口26は筐体10の前面側からアクセス可能となっており、リジェクトシュート24aからリジェクト口26に送られた硬貨(リジェクト硬貨)を操作者は筐体10の前面側から当該筐体10の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。また、リジェクトシュート24aの上流側端部には、入金搬送部16からリジェクトシュート24aへの硬貨の入口が設けられている。また、リジェクト部24は、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨を入金搬送部16の搬送面16cから分岐させるためのゲート部材25を有している。
【0025】
図2に示すように、ゲート部材25は略水平方向に延びる軸25aを有しており、この軸25aを中心として揺動するようになっている。このような軸25aは、入金搬送部16による硬貨の搬送方向の下流側の端部に配置されている。また、ゲート部材25は、図2において実線で示すような、略水平方向の姿勢となる閉止位置と、図2において二点鎖線で示すような、このような閉止位置から上方に突出する分岐位置との間で軸25aを中心として揺動するようになっており、ゲート部材25が閉止位置に位置しているときには、このゲート部材25の上面25bは入金搬送部16の搬送面16cと略同一平面上に位置するようになる。このことにより、ゲート部材25が閉止位置に位置しているときには、入金搬送部16における搬送面16c上で搬送される硬貨は当該ゲート部材25によりリジェクト部24のリジェクトシュート24aに分岐されずにゲート部材25の上面25bを通って各金種別分岐部22に送られるようになる。一方、ゲート部材25が分岐位置に位置しているときには、入金搬送部16における搬送面16c上で搬送される硬貨は当該ゲート部材25によって入金搬送部16からリジェクト部24のリジェクトシュート24aに分岐され、このリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に送られるようになる。
【0026】
図1に示すように、入金搬送部16による硬貨の搬送方向におけるゲート部材25の更に下流側には複数の金種別分岐部22が各硬貨収納部30a〜30eに対応して直列に並ぶよう設けられている。具体的には、識別部18により識別された硬貨の金種が50円である場合には、図1における最も右側に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該50円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30aに送られるようになる。同様に、識別部18により識別された硬貨の金種が5円である場合には、図1における右側から2番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該5円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30bに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が500円である場合には、図1における右側から3番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該500円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30cに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が100円である場合には、図1における右側から4番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該100円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30dに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が10円である場合には、図1における右側から5番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該10円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30eに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が1円である場合には、当該硬貨は各金種別分岐部22により入金搬送部16から分岐させられることなく当該入金搬送部16から直接硬貨収納部30fに送られるようになる。このようにして識別部18により識別された硬貨が各硬貨収納部30a〜30fに金種別に振り分けられてこれらの硬貨収納部30a〜30fに収納されるようになる。
【0027】
図2および図3に示すように、各硬貨収納部30a〜30fは、複数の硬貨が収容される硬貨収容空間31を有している。また、各硬貨収納部30a〜30fには、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を当該硬貨収容空間31から1枚ずつ繰り出す繰出部40が設けられている。これらの各硬貨収納部30a〜30fや繰出部40の構成の詳細については後述する。繰出部40により各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31から繰り出された硬貨は硬貨払出部32に送られ、この硬貨払出部32に集積されるようになっている。より詳細には、図1に示すように、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち右から3つの硬貨収納部30a〜30cの手前側には、硬貨払出部32に向かって斜め下方にわずかに傾斜している硬貨案内溝34が形成されており、繰出部40により硬貨収納部30a〜30cの硬貨収容空間31から繰り出された硬貨はこの硬貨案内溝34に立位状態で入り、硬貨案内溝34において図1における左方向に硬貨が立位状態で転がりながら移動することにより硬貨払出部32に送られるようになる。一方、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30d〜30fの硬貨収容空間31から繰出部40により繰り出された硬貨は硬貨払出部32に直接送られるようになる。また、硬貨払出部32は筐体10の外部に露出しており、操作者はこの硬貨払出部32に集積されている硬貨を手で掴んで筐体10の外部に取り出すことができるようになっている。また、図2および図3に示すように、各硬貨収納部30a〜30fには、硬貨収容空間31に収容された硬貨がフル状態またはニアフル状態となったときにこのことを検知するフル検知センサ31aが設けられている。
【0028】
図2および図3に示すように、繰出部40は、硬貨収容空間31の底部に配置され、複数のプーリ44により張架された帯状の繰出ベルト42と、複数のプーリ44のうちある一つのプーリ44に接続され、当該プーリ44を正逆両方向に回転させる駆動モータ44aと、繰出ベルト42との間でわずかな隙間(具体的には、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の厚さよりもわずかに大きな隙間)を隔てて当該繰出ベルト42の上方に配置される逆転ローラ46と、繰出ベルト42との間でわずかな隙間(具体的には、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の厚さよりもわずかに大きな隙間)を隔てて当該繰出ベルト42の上方に配置されるガイド部材43とを有している。ここで、硬貨収容空間31に収容される硬貨は繰出ベルト42上に載置されるようになっている。また、繰出ベルト42は無端状の(言い換えると、環状の)平ベルトからなり、当該繰出ベルト42の幅の大きさは硬貨収容空間31の幅の大きさと略同一となっている。そして、駆動モータ44aによりこの駆動モータ44aに接続されるプーリ44が硬貨の繰出方向に回転させられると繰出ベルト42は図2図3における時計回りの方向に循環移動し、この繰出ベルト42上に載置されている硬貨は略水平姿勢で図2図3における右方向に搬送され、逆転ローラ46と繰出ベルト42との間に形成される隙間を通って硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られるようになる。ここで、逆転ローラ46は繰出ベルト42による硬貨の繰出方向と逆方向(すなわち、図2図3における時計回りの方向)に回転するようになっている。このことにより、繰出ベルト42により繰り出される硬貨が逆転ローラ46と繰出ベルト42との間に形成される隙間を通る際に当該硬貨は1層1列状態に整列されるようになり、整列された硬貨が繰出ベルト42により硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られるようになる。
【0029】
また、繰出ベルト42による硬貨の繰出方向における逆転ローラ46よりも下流側にはガイド部材43が設けられており、当該ガイド部材43と繰出ベルト42との間には、硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られる前の複数(具体的には、最大で4枚)の硬貨が1層1列状態で待機する硬貨待機領域41が形成されている。また、本実施の形態では、駆動モータ44aがプーリ44を硬貨の繰出方向とは逆方向に回転させることにより、繰出ベルト42は硬貨の繰出方向と逆方向にも循環移動することができるようになっている。本実施の形態では、繰出ベルト42は、硬貨の繰出方向および当該繰出方向とは逆の方向に移動可能となっている搬送部材として機能するようになっている。
【0030】
また、図4に示すように、繰出部40は、繰出ベルト42により繰出方向(すなわち、図3図4における右方向)に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第1の停止部材45と、第1の停止部材45よりも硬貨の繰出方向における上流側に設けられ、繰出ベルト42により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を停止させるための第2の停止部材47とを有している。ここで、本実施の形態では、第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に上述した硬貨待機領域41が形成されるようになっている。また、第1の停止部材45はソレノイド45a(図6参照)により繰出ベルト42に接近するような停止位置と繰出ベルト42から上方に離間するような退避位置との間で図4における略上下方向に移動させられるようになっている。そして、第1の停止部材45が停止位置に位置しているときには、繰出ベルト42により硬貨収容空間31から繰り出されて逆転ローラ46と繰出ベルト42との間の隙間を通過した硬貨は第1の停止部材45によって停止させられるようになっている。このことにより、硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られる前の複数の硬貨が硬貨待機領域41において1層1列状態で待機するようになる。一方、第1の停止部材45が退避位置に位置しているときには、繰出ベルト42により硬貨収容空間31から繰り出されて逆転ローラ46と繰出ベルト42との間の隙間を通過した硬貨は第1の停止部材45の下方の領域を通過して硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られるようになっている。
【0031】
また、繰出ベルト42による硬貨の繰出方向における第1の停止部材45と第2の停止部材47との間の距離は、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の直径の4倍よりも大きいとともに当該5倍の直径よりも小さな大きさとなっている。このことにより、最大で4枚の硬貨を硬貨待機領域41に待機させておくことができるようになる。一般的に、硬貨処理装置1から出金される釣銭としての硬貨の金額は最大で999円であり、この場合には、各硬貨収納部30a〜30fに対応するそれぞれの硬貨待機領域41に、1円硬貨を4枚、5円硬貨を1枚、10円硬貨を4枚、50円硬貨を1枚、100円硬貨を4枚および500円硬貨を1枚待機させておけば、釣銭としての硬貨の出金処理が行われる際に各硬貨待機領域41に待機している硬貨を繰出ベルト42により硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送るだけで出金されるべき釣銭としての硬貨が全て硬貨払出部32に集積されるようになるため、硬貨の払い出し動作を短時間で行うことができるようになる。
【0032】
第2の停止部材47は、繰出ベルト42により搬送される硬貨を繰出方向(すなわち、図4における右方向)にのみ送ることができるような構成となっている。具体的には、第2の停止部材47と繰出ベルト42との間の距離は、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の厚さよりも小さくなっている。また、第2の停止部材47は、繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材47を通過する際にこの硬貨によって上方に持ち上がるとともに繰出ベルト42により繰出方向とは逆方向(すなわち、図4における左方向)に搬送される硬貨が第2の停止部材47に接触すると当該第2の停止部材47によりこの硬貨はこれ以上繰出方向とは逆方向に移動することができないような構成となっている。より詳細には、第2の停止部材47は、図4に示すようなその底面が繰出ベルト42の表面に対して傾斜している移動部分と、当該移動部分を図4における略上下方向に案内する案内レールとを有しており、第2の停止部材47の近傍に硬貨が存在しない場合には、第2の停止部材47の移動部分は自重により下方位置に位置するようになっている。このような下方位置に移動部分が位置しているときに、繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材47を通過する場合には、移動部分の底面が繰出ベルト42の表面に対して傾斜しているため、移動部分が硬貨によって案内レールに沿って上方に持ち上げられるようになり、この硬貨は移動部分を通過して硬貨待機領域41に送られる。一方、下方位置に移動部分が位置しているときに、繰出ベルト42により繰出方向とは逆方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材47を通過する場合には、この硬貨は移動部分の側面に当たることにより当該移動部分は硬貨によって上方に持ち上げられることはない。このような構成の第2の停止部材47を用いた場合には、当該第2の停止部材47を移動させる駆動機構を設けなくても、繰出ベルト42により搬送される硬貨を第2の停止部材47によって繰出方向にのみ送ることができるようになる。
【0033】
なお、第2の停止部材47は、上述した移動部分および案内レールを有するものに限定されることはない。第2の停止部材47の他の例として、ソレノイド47a(図6参照)により繰出ベルト42に接近するような停止位置と繰出ベルト42から上方に離間するような退避位置との間で図4における略上下方向に移動させられるものが用いられてもよい。この場合にも、ソレノイド47aが第2の停止部材47を停止位置と退避位置との間で移動させることにより、繰出ベルト42により搬送される硬貨を第2の停止部材47によって選択的に停止させることができるようになる。また、第2の停止部材47がソレノイド47aにより移動させられるようになっている場合には、当該第2の停止部材47は繰出ベルト42から上方に退避するのではなく繰出ベルト42の左右方向または下方向に退避するようになっていてもよい。より詳細には、第2の停止部材47が繰出ベルト42の左方向または右方向に退避する場合には、繰出部40による硬貨の搬送路の側縁(具体的には、第2の停止部材47が設けられていない側の搬送路の側縁)と、停止位置に位置する第2の停止部材47と間の距離が、硬貨の径よりも小さくなる。また、更に他の例として、繰出部40による硬貨の搬送路において左右一対の第2の停止部材47が設けられており、各第2の停止部材47が当該搬送路からそれぞれ左方向および右方向に離間するようになっていてもよい。この場合には、停止位置に位置する各第2の停止部材47の間の距離が硬貨の径よりも小さくなる。
【0034】
また、本実施の形態では、図4および図5に示すように、繰出部40は、第1の停止部材45の近傍に設けられた第1保留検知センサ49aと、第2の停止部材47の近傍に設けられた第2保留検知センサ49bと、繰出ベルト42による硬貨の繰出方向(すなわち、図4図5の右方向)における第1の停止部材45よりも下流側に設けられた繰出検知センサ49cとを有している。ここで、第1保留検知センサ49aは、繰出ベルト42上で第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に保留される硬貨のうち第1の停止部材45に最も近い硬貨(すなわち、硬貨待機領域41に待機している硬貨のうち先端側の硬貨)を検知するようになっている。また、第2保留検知センサ49bは、繰出ベルト42上で第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に保留される硬貨のうち第2の停止部材47に最も近い硬貨(すなわち、硬貨待機領域41に待機している硬貨のうち後端側の硬貨)を検知するようになっている。また、繰出検知センサ49cは、繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨が第1の停止部材45を通過して繰り出されたことを検知するようになっている。より詳細には、第1保留検知センサ49a、第2保留検知センサ49bおよび繰出検知センサ49cは、それぞれ、繰出ベルト42上に形成される硬貨の搬送路を上下方向から挟むよう設けられた発光素子および受光素子を有する光センサから構成されており、発光素子から発せられた光が繰出ベルト42上の硬貨によって遮られることにより受光素子によって受けられなくなると繰出ベルト42上の硬貨を検知するようになっている。本実施の形態では、第1保留検知センサ49aおよび第2保留検知センサ49bにより、硬貨待機領域41に所定の枚数(例えば、4枚)の硬貨が待機しているか否かを検知することができるようになる。また、繰出検知センサ49cにより、繰出ベルト42によって硬貨待機領域41から繰り出されて第1の停止部材45を通過した硬貨を検知することができるようになる。
【0035】
また、図3に示すように、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31において繰出部40の繰出ベルト42上には鎖48aでつながれた撹拌部材48が載置されており、この鎖48aの基端部分は各硬貨収納部30a〜30fの天井部分に取り付けられている。ここで、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31の後方側において複数の硬貨が重なった状態で繰出ベルト42から浮いてしまうようなブリッジ現象が生じた場合には、繰出ベルト42を逆転させることにより(すなわち、図3における反時計回りの方向に繰出ベルト42を循環移動させることにより)、撹拌部材48を硬貨収容空間31の後方側(すなわち、図3における左側)に移動させ、この撹拌部材48によって硬貨収容空間31の後方側で繰出ベルト42から浮いた状態でブリッジしている硬貨を崩すことができるようになる。
【0036】
本実施の形態では、上述した各硬貨収納部30a〜30fおよび繰出部40等により、硬貨の収納および繰出を行う硬貨収納繰出機構が構成されている。
【0037】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1には、当該硬貨処理装置1の各構成部材の制御を行う制御部50が設けられている。より詳細には、図6に示すように、制御部50には、繰出部14、入金搬送部16、識別部18、金種別分岐部22、リジェクト部24、フル検知センサ31a、繰出部40(具体的には、駆動モータ44a、ソレノイド45a、47a、各保留検知センサ49a、49b、繰出検知センサ49c)等がそれぞれ接続されている。そして、識別部18による硬貨の識別結果に係る信号やフル検知センサ31aによる硬貨の検知結果に係る信号が制御部50に送られるとともに、制御部50は硬貨処理装置1の各構成部材に指令信号を送ることによりこれらの構成部材の動作を制御するようになっている。また、本実施の形態では、繰出部40の各保留検知センサ49a、49bによる硬貨の検知結果に係る信号や繰出検知センサ49cによる硬貨の検知結果に係る信号も制御部50に送られるようになっている。
【0038】
また、図6に示すように、制御部50には操作表示部52、記憶部54、印字部56および通信インターフェース部58がそれぞれ接続されている。操作表示部52は例えば硬貨処理装置1の筐体10の上面に設けられたタッチパネル等からなり、硬貨処理装置1における硬貨の入金処理や出金処理等の処理状況や、各硬貨収納部30a〜30fに収納されている硬貨の在高等に関する情報が操作表示部52に表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部52を操作することにより制御部50に対して様々な指令を与えることができるようになっている。記憶部54には、硬貨処理装置1における硬貨の入金処理や出金処理等の処理履歴や、各硬貨収納部30a〜30fに収納されている硬貨の在高等に関する情報が記憶されるようになっている。また、印字部56は、硬貨処理装置1における硬貨の入金処理や出金処理等の処理履歴や、各硬貨収納部30a〜30fに収納されている硬貨の在高等に関する情報をレシート等に印字するようになっている。また、制御部50は通信インターフェース部58を介して本実施の形態による硬貨処理装置1とは別に設けられた外部装置(具体的には、例えば上位端末)に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。具体的には、制御部50は通信インターフェース部58を介して記憶部54に記憶されている情報を硬貨処理装置1とは別に設けられた外部装置に送信することができるようになっている。
【0039】
次に、このような構成からなる硬貨処理装置1の動作について説明する。なお、以下に示すような硬貨処理装置1の動作は、制御部50が硬貨処理装置1の各構成部材を制御することにより行われるようになっている。
【0040】
まず、硬貨処理装置1において硬貨の入金処理が行われる際の動作について説明する。硬貨処理装置1において硬貨の入金処理が行われる際に、操作者は最初に筐体10の上面手前側に設けられた硬貨投入口に硬貨を投入する。硬貨投入口に投入された硬貨は硬貨受入部12に受け入れられるようになる。また、硬貨受入部12に設けられた図示しない残留検知センサによって硬貨受入部12に受け入れられた硬貨が検知されると、繰出部14が駆動されることにより当該繰出部14によって硬貨が筐体10の内部に1枚ずつ繰り出される。そして、繰出部14によって筐体10の内部に繰り出された硬貨は入金搬送部16により1枚ずつ搬送され、識別部18によりその金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別が行われる。ここで、識別部18により正常であると識別された硬貨はリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられることなく当該入金搬送部16により筐体10の奥側の領域に送られ、各金種別分岐部22により金種毎に入金搬送部16から分岐させられることにより各硬貨収納部30a〜30fに収納されるようになる。一方、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨はリジェクト硬貨としてリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられ、この分岐させられたリジェクト硬貨はリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に送られる。また、上述したように、リジェクト口26は筐体10の前面側からアクセス可能となっているため、リジェクトシュート24aからリジェクト口26に送られたリジェクト硬貨を操作者は筐体10の前面側から当該筐体10の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。
【0041】
また、本実施の形態では、硬貨処理装置1において硬貨の入金処理が行われる際に、各硬貨収納部30a〜30fにおいて繰出部40の繰出ベルト42が硬貨の繰出方向に循環移動させられるとともにソレノイド45aが第1の停止部材45を停止位置に位置させるようになっている。このことにより、後述する硬貨の出金処理に備えて各硬貨収納部30a〜30fの硬貨待機領域41に所定の枚数(具体的には、4枚)の硬貨が1層1列状態で待機させられるようになる。
【0042】
次に、硬貨処理装置1において硬貨の出金処理が行われる際の動作について説明する。硬貨処理装置1において硬貨の出金処理が行われる際に、操作者が操作表示部52によって出金されるべき硬貨の金種毎の枚数や合計金額等の出金処理に係る情報を入力したり、外部装置から通信インターフェース部58を介して制御部50に出金されるべき硬貨の金種毎の枚数や合計金額等の出金処理に係る情報が送られたりすると、出金されるべき硬貨の金種に対応する硬貨収納部30a〜30fにおいて繰出部40の繰出ベルト42が硬貨の繰出方向に循環移動させられるとともに第1の停止部材45がソレノイド45aにより停止位置から退避位置に移動させられるようになる。このことにより、硬貨待機領域41で待機していた硬貨が第1の停止部材45を通過して硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送られるようになる。また、硬貨案内溝34に送られた硬貨は、当該硬貨案内溝34において図1における左方向に立位状態で転がりながら移動することにより硬貨払出部32に送られるようになる。このようにして、出金されるべき硬貨が硬貨払出部32に集積されるようになる。また、上述したように、硬貨払出部32は筐体10の前面側からアクセス可能となっているため、操作者は硬貨払出部32に手を入れることにより出金硬貨を筐体10の前面側から当該筐体10の外部に取り出すことができるようになる。
【0043】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1では、各硬貨収納部30a〜30fにおいて硬貨収容空間31に収容された硬貨がフル状態またはニアフル状態となったことがフル検知センサ31aによって検知されたときに、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向に移動させる動作および繰出ベルト42を繰出方向に移動させる動作を交互に繰り返すことにより、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を撹拌してフル状態またはニアフル状態を解消することができるようになっている。また、この際に、撹拌部材48によって硬貨収容空間31の後方側で繰出ベルト42から浮いた状態でブリッジしている硬貨を崩すことができるようになる。また、繰出部40において繰出ベルト42と逆転ローラ46との間に硬貨が詰まってしまった場合にも、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向に移動させることにより、繰出ベルト42と逆転ローラ46との間で詰まっている硬貨を取り除いて硬貨収容空間31に送ることができるようになる。
【0044】
また、本実施の形態では、第2の停止部材47が設けられていることにより、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向に移動させても、硬貨待機領域41で待機している硬貨が硬貨収容空間31に戻されてしまうことを防止することができるようになる。ここで、第2の停止部材47が設けられておらず、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向に移動させることによって硬貨待機領域41で待機している硬貨が硬貨収容空間31に戻されてしまうと、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を撹拌している間や撹拌動作が終了した直後に硬貨の出金処理が行われる場合、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を繰出ベルト42により繰り出して硬貨払出部32に送る必要があるため、硬貨待機領域41で待機している硬貨を繰出ベルト42により繰り出して硬貨払出部32に送る場合と比較して硬貨の払い出し動作にかかる時間が長くなってしまうという問題がある。これに対し、本実施の形態では、硬貨待機領域41で待機している硬貨が硬貨収容空間31に戻されることがないため、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を撹拌している間や撹拌動作が終了した直後に硬貨の出金処理が行われる場合でも短時間で硬貨の払い出し動作を行うことができるようになる。
【0045】
また、本実施の形態では、各硬貨収納部30a〜30fに対応する硬貨待機領域41に硬貨を待機させる際に、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向にわずかに移動させることにより、硬貨待機領域41で待機している先端側の硬貨を第1の停止部材45から離間させて後端側の硬貨を第2の停止部材47に接触させるようになっている(図5参照)。この場合には、硬貨の出金処理が行われる際に、第1の停止部材45がソレノイド45aによって停止位置から退避位置に移動させられるときに当該第1の停止部材45が硬貨待機領域41で待機している硬貨に接触しないためソレノイド45aに過負荷がかかってしまうことを防止することができるようになる。また、本実施の形態では、繰出ベルト42を繰出方向とは逆方向にわずかに移動させることにより、硬貨待機領域41で待機している先端側の硬貨を第1の停止部材45から離間させて後端側の硬貨を第2の停止部材47に接触させた場合でも、第1保留検知センサ49aが硬貨待機領域41で待機している先端側の硬貨を検知することができるようになっている。なお、本実施の形態はこのような態様に限定されることはなく、他の例として、各硬貨収納部30a〜30fに対応する硬貨待機領域41に硬貨を待機させる際に、硬貨待機領域41で待機している先端側の硬貨を第1の停止部材45に接触させるようにしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1では、装置全体の小型化を図るために、リジェクト部24(具体的には、リジェクトシュート24a)やリジェクト口26の寸法を小さくしている。しかしながら、リジェクト部24やリジェクト口26の寸法を小さくすると、これらのリジェクト部24やリジェクト口26におけるリジェクト硬貨の容量の小さくなるため、リジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられるリジェクト硬貨の枚数が多い場合には、リジェクト口26がリジェクト硬貨であふれてしまうおそれがある。また、識別部18による識別結果に基づいて2枚以上の硬貨が連続で正常な硬貨ではないと判断され、これらの2枚以上の硬貨が連続でリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられる場合には、ゲート部材25の開閉動作が間に合わなくなるおそれがある。
【0047】
このため、本実施の形態の硬貨処理装置1では、硬貨の入金処理が行われる際に、以下に示すような複数の処理モードの中からある一つの処理モードが選択され、この選択された処理モードの内容に沿って硬貨の入金処理が行われるようになっている。具体的には、第1の処理モードでは、入金搬送部16により搬送される硬貨が識別部18により識別されたときに識別部18による識別結果に基づいて当該硬貨が正常な硬貨ではないと判断された場合に、入金搬送部16による硬貨の搬送速度を減少させず、通常の搬送速度で引き続き硬貨の搬送を行う。また、第2の処理モードでは、入金搬送部16により搬送される硬貨が識別部18により識別されたときに識別部18による識別結果に基づいて当該硬貨が正常な硬貨ではないと判断された場合に、入金搬送部16による硬貨の搬送速度を減少させ、低速で引き続き硬貨の搬送を行う。また、第3の処理モードでは、入金搬送部16により搬送される硬貨が識別部18により識別されたときに識別部18による識別結果に基づいて当該硬貨が正常な硬貨ではないと判断された場合に、この硬貨がリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられてリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に送られるまで入金搬送部16による硬貨の搬送を停止させる。
【0048】
そして、例えば店員が顧客から預かった売上金としての硬貨の入金処理が行われる場合には、上述した3つの処理モードのうち第1の処理モードが選択され、この第1の処理モードの内容に沿って硬貨の入金処理が行われる。第1の処理モードでは識別部18による識別結果に基づいてリジェクト硬貨をリジェクト口26に送る際にも入金搬送部16による硬貨の搬送速度が減少しないため、顧客を長時間待たせてしまうことを防止することができるようになる。なお、店員が顧客から預かった売上金としての硬貨の入金処理が行われる場合には、硬貨投入口に投入される硬貨の枚数はそれほど多くはないため、識別部18による識別結果に基づいて2枚以上の硬貨が連続で正常な硬貨ではないと判断されるような事態が発生する可能性は低いと考えられる。一方、店員により釣銭としての硬貨の補充処理が行われる場合には、上述した3つの処理モードのうち第2の処理モードが選択され、この第2の処理モードの内容に沿って硬貨の入金処理が行われる。釣銭としての硬貨の補充処理が行われる場合には、大量の硬貨が硬貨投入口に投入されることになるが、入金搬送部16による硬貨の搬送速度を減少させ、低速で引き続き硬貨の搬送を行うことにより、識別部18による識別結果に基づいて2枚以上の硬貨が連続で正常な硬貨ではないと判断されてもリジェクト口26がリジェクト硬貨であふれてしまったりゲート部材25の開閉動作が間に合わなくなってしまったりするというトラブルの発生を抑制することができる。
【0049】
このように、硬貨の入金処理が行われる際に、上述した複数の処理モードの中からある一つの処理モードが選択され、この選択された処理モードの内容に沿って硬貨の入金処理が行われるようにした場合には、硬貨の入金処理を迅速に行いたいというニーズや、リジェクト部24やリジェクト口26で硬貨のあふれ現象や詰まりが発生することを抑制したいというニーズにそれぞれ対応する処理モードで硬貨の入金処理を行うことができる。
【0050】
また、硬貨の入金処理に係る処理モードの他の例として、識別部18による識別結果に基づいて入金搬送部16により搬送される硬貨が正常な硬貨ではないと判断された回数が所定の回数に達したときに、入金搬送部16による硬貨の搬送速度を減少させ、低速で引き続き硬貨の搬送を行うようにしてもよい。また、識別部18による識別結果に基づいて入金搬送部16により搬送される硬貨が正常な硬貨ではないと判断された回数に応じて入金搬送部16による硬貨の搬送速度を段階的に減少させるようにしてもよい。また、識別部18による識別結果に基づいて入金搬送部16により搬送される硬貨が正常な硬貨ではないと連続で所定の回数(例えば、5回)以上判断されたときに、入金搬送部16による硬貨の搬送速度を減少させてもよい。
【0051】
また、従来では店舗のレジカウンター等において、硬貨釣銭機としての硬貨処理装置から出金された釣銭としての硬貨を店員が落としてしまった場合に、当該店員が落とした硬貨を拾わずにキャッシュドロアから硬貨を1枚取り出してこの取り出された硬貨を釣銭として顧客に手渡すことがあった。しかしながら、このような場合には、落とした硬貨を店員が拾い忘れてしまったら、硬貨処理装置において違算が発生するという問題があった。また、従来の硬貨処理装置(具体的には、硬貨釣銭機)では、モニタ等の表示部に硬貨の出金処理の履歴の一覧を表示させ、この履歴の一覧から操作者が選択した履歴と同額の硬貨の再出金処理を行うことができるものがある。しかしながら、このような従来の硬貨処理装置では、モニタ等の表示部に表示された出金処理の履歴の一覧から再出金処理を行いたい履歴を選択する必要があるため、操作に時間がかかってしまうという問題がある。また、取引と関係ない再出金処理が行われた場合に、このような再出金処理の履歴が表示部に表示されないため、不足分の硬貨が分からずに違算になりやすいという問題がある。
【0052】
これに対し、本実施の形態の硬貨処理装置1では、硬貨の出金処理が行われる際に、出金されるべき硬貨が各硬貨収納部30a〜30fや硬貨待機領域41から繰出部40により繰り出されて硬貨払出部32に送られると、図7(a)に示すように、操作表示部52には硬貨払出部32から硬貨を抜き取ることを操作者に促すメッセージや硬貨払出部32に払い出された硬貨の金額(図7(a)における「つり銭金額」)が表示されるとともに、「再出金」ボタンが操作表示部52に表示されるようになっている。そして、操作表示部52の表示画面において操作者により「再出金」ボタンが押下されると、直前に出金処理が行われた際に硬貨払出部32に払い出された硬貨と同じ金種毎の枚数の硬貨が再び各硬貨収納部30a〜30fや硬貨待機領域41から繰出部40により繰り出されて硬貨払出部32に送られるようになる。このことにより、硬貨処理装置1から出金された釣銭としての硬貨を店員が落としてしまった場合でも、当該硬貨処理装置1において硬貨の再出金処理を行うことにより短時間で釣銭としての硬貨を顧客に渡すことができるため、顧客を長時間待たせてしまうことを防止することができる。また、硬貨処理装置1において硬貨の再出金処理を行うにあたり、操作表示部52に表示される「再出金」ボタンを押下するだけで各硬貨収納部30a〜30fや硬貨待機領域41から硬貨が繰出部40により繰り出されて硬貨払出部32に送られるため、モニタ等の表示部に表示された出金処理の履歴の一覧から再出金処理を行いたい履歴を選択する場合と比較して短時間で硬貨の再出金処理を行うことができるようになる。
【0053】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1において上述した硬貨の再出金処理が行われた場合には、図7(b)に示すように、操作表示部52には再出金された硬貨の金額が表示されるとともに「不足金補充」ボタン(具体的には、「500円不足中」と示されるボタン)が表示されるようになる。そして、図7(b)に示すような操作表示部52の表示画面において操作者により「不足金補充」ボタンが押下されると、硬貨処理装置1において再出金処理が行われた際に硬貨払出部32に払い出された硬貨と同じ金種毎の枚数の硬貨の補充処理を行うことができるようになる。このことにより、硬貨処理装置1において違算が発生することを防止することができるようになる。なお、操作表示部52の表示画面において操作者により「不足金補充」ボタンが押下された後に硬貨投入口に投入された硬貨の金種毎の枚数が、再出金処理が行われた際に硬貨払出部32に払い出された金種毎の枚数よりも超過していた場合には、超過分の硬貨がリジェクト部24によりリジェクト口26に送られてこのリジェクト口26から操作者に返却されるようになる。
【0054】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1では、上述した硬貨の再出金処理が行われた後、不足金としての硬貨の補充が行われないと次の処理を当該硬貨処理装置1で行うことができないようなモードを設定することができるようになっていてもよい。また、上述した硬貨の再出金処理が行われた後、不足金額が0でない場合には当該硬貨処理装置1において各硬貨収納部30a〜30fに収納されている硬貨の回収処理を行うことができないようになっていてもよい。具体的には、筐体10の内部に収容されている本体ユニットを当該筐体10の手前側に引き出すことができないようになっていてもよい。また、硬貨の再出金処理が行われたときの担当者の識別番号、時間、金額等の情報が処理履歴として記憶部54に記憶されたり操作表示部52に表示されたりするようになっていてもよい。
【0055】
以上のような構成からなる本実施の形態の硬貨処理装置1やこのような硬貨処理装置1に設けられた硬貨収納繰出機構によれば、硬貨収納部30a〜30fに収納されている硬貨を一層一列状態で1枚ずつ繰り出す繰出部40は、硬貨収納部30a〜30fの底面に配置され、硬貨の繰出方向および当該繰出方向とは逆の方向に移動可能となっている繰出ベルト42(搬送部材)と、繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第1の停止部材45と、第1の停止部材45よりも硬貨の繰出方向における上流側に設けられ、繰出ベルト42により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材47とを有している。このように、繰出部40において、第1の停止部材45よりも硬貨の繰出方向における上流側に、搬送部材としての繰出ベルト42により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材47が設けられているため、硬貨収容空間31に収容された硬貨がフル状態またはニアフル状態となったことがフル検知センサ31aによって検知されたり繰出部40において硬貨が詰まってしまったりすることにより繰出ベルト42を繰出方向とは逆の方向に移動させる場合でも第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に(すなわち、硬貨待機領域41に)硬貨を待機させておくことができ、よって硬貨の出金処理が行われる際に硬貨の払い出し動作を迅速に行うことができるようになる。
【0056】
より詳細に説明すると、従来の硬貨処理装置では、硬貨収納部において硬貨収容空間に収容された硬貨がフル状態またはニアフル状態となったことがフル検知センサによって検知されたり繰出部において硬貨が詰まってしまったりした場合には、繰出ベルトを硬貨の繰出方向にいくら循環移動させても硬貨待機領域に硬貨をこれ以上送ることができなくなるため、繰出ベルトを硬貨の繰出方向とは逆方向に循環移動させる必要があった。しかしながら、繰出ベルトを硬貨の繰出方向とは逆方向に循環移動させると、硬貨待機領域に既に待機している硬貨が硬貨収納部の硬貨収容空間に戻されてしまい、上記のトラブルが解消された後に、再び繰出ベルトを硬貨の繰出方向に循環移動させて硬貨を硬貨待機領域に送らなければならないという問題があった。これに対し、本実施の形態では、繰出ベルト42を繰出方向とは逆の方向に移動させる場合でも第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に(すなわち、硬貨待機領域41に)硬貨を待機させておくことができるため、上述した従来の硬貨処理装置の問題を解消することができるようになる。
【0057】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、搬送部材(具体的には、繰出ベルト42)は帯状のベルトであり、搬送部材としての繰出ベルト42により搬送される硬貨は当該繰出ベルト42の上に載置されるようになっている。
【0058】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、第2の停止部材47は、搬送部材としての繰出ベルト42により搬送される硬貨を繰出方向にのみ送ることができるような構成となっている。具体的には、第2の停止部材47は、搬送部材としての繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨が当該第2の停止部材47を通過する際にこの硬貨によって上方に持ち上がるとともに繰出ベルト42により繰出方向とは逆方向に搬送される硬貨が第2の停止部材47に接触すると当該第2の停止部材47によりこの硬貨はこれ以上繰出方向とは逆方向に移動することができないような構成となっている。また、第2の停止部材47と繰出ベルト42との間の距離が、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき硬貨の厚さよりも小さくなっている。上述した特徴を有する第2の停止部材47によれば、繰出ベルト42により搬送される硬貨を確実に繰出方向にのみ送ることができるようになる。
【0059】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、搬送部材としての繰出ベルト42による硬貨の繰出方向における第1の停止部材45と第2の停止部材47との間の距離は、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき硬貨の直径の4倍よりも大きいとともに当該直径の5倍よりも小さな大きさとなっている。この場合には、繰出ベルト42上において第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に形成される硬貨待機領域41に最大で4枚の硬貨を待機させることができるようになる。ここで、硬貨処理装置1から出金される釣銭としての硬貨の金額は最大で999円であり、この場合には、各硬貨収納部30a〜30fに対応するそれぞれの硬貨待機領域41に、1円硬貨を4枚、5円硬貨を1枚、10円硬貨を4枚、50円硬貨を1枚、100円硬貨を4枚および500円硬貨を1枚待機させておけば、釣銭としての硬貨の出金処理が行われる際に各硬貨待機領域41に待機している硬貨を繰出ベルト42により硬貨案内溝34または硬貨払出部32に送るだけで出金されるべき釣銭としての硬貨が全て硬貨払出部32に集積されるようになるため、硬貨の払い出し動作を短時間で行うことができるようになる。このため、繰出ベルト42上において第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に形成される硬貨待機領域41に最大で4枚の硬貨を待機させることができれば、硬貨処理装置1から釣銭として出金される最大の金額(すなわち、999円)の硬貨を短時間で払い出すことができるようになる。
【0060】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、第1の停止部材45の近傍には、搬送部材としての繰出ベルト42における第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に保留される硬貨を検知する第1保留検知手段として第1保留検知センサ49aが設けられている。この場合には、繰出ベルト42上において第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に形成される硬貨待機領域41で待機している先端側の硬貨を検知することができるようになる。
【0061】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、第2の停止部材47の近傍には、搬送部材としての繰出ベルト42における第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に保留される硬貨を検知する第2保留検知手段として第2保留検知センサ49bが設けられている。この場合には、繰出ベルト42上において第1の停止部材45と第2の停止部材47との間に形成される硬貨待機領域41で待機している後端側の硬貨を検知することができるようになる。
【0062】
また、本実施の形態の硬貨収納繰出機構においては、上述したように、第1の停止部材45の近傍には、搬送部材としての繰出ベルト42により繰出方向に搬送される硬貨が第1の停止部材45を通過して繰り出されたことを検知する繰出検知手段として繰出検知センサ49cが設けられている。この場合には、繰出ベルト42によって硬貨待機領域41から繰り出されて第1の停止部材45を通過した硬貨を検知することができるようになる。
【0063】
なお、本実施の形態による硬貨収納繰出機構やこのような硬貨収納繰出機構を備えた硬貨処理装置1は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0064】
例えば、繰出部40に設けられる搬送部材は、無端状の(言い換えると、環状の)平ベルトに限定されることはない。繰出部40に設けられる搬送部材の他の例として、巻出ロールから巻き出されるとともに巻取ロールにより巻き取られるような帯状の略直線状の平ベルトが用いられてもよい。
【0065】
また、繰出ベルト42により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させるための第2の停止部材は、上述した構成のものに限定されることはない。繰出ベルト42により繰出方向とは逆の方向に搬送される硬貨を選択的に停止させることができるものであれば、第2の停止部材として上述した構成以外のものが用いられてもよい。
【0066】
また、本発明に係る硬貨処理装置は、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗における顧客が商品の精算処理を行う精算所に設置される釣銭機の硬貨処理ユニットとして用いられるものに限定されることはない。本発明に係る硬貨処理装置として、出納機や両替機等の、釣銭機の硬貨処理ユニット以外のものが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 硬貨処理装置
10 筐体
12 硬貨受入部
14 繰出部
14a 繰出ベルト
16 入金搬送部
16a 循環ベルト
16b プーリ
16c 搬送面
18 識別部
22 金種別分岐部
24 リジェクト部
24a リジェクトシュート
25 ゲート部材
25a 軸
25b 上面
26 リジェクト口
30a〜30f 硬貨収納部
31 硬貨収容空間
31a フル検知センサ
32 硬貨払出部
34 硬貨案内溝
40 繰出部
41 硬貨待機領域
42 繰出ベルト
43 ガイド部材
44 プーリ
44a 駆動モータ
45 第1の停止部材
45a ソレノイド
46 逆転ローラ
47 第2の停止部材
47a ソレノイド
48 撹拌部材
48a 鎖
49a 第1保留検知センサ
49b 第2保留検知センサ
49c 繰出検知センサ
50 制御部
52 操作表示部
54 記憶部
56 印字部
58 通信インターフェース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7