(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660274
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】パイプ部材のケース部材への溶接構造
(51)【国際特許分類】
F01N 13/18 20100101AFI20200227BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20200227BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20200227BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20200227BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
F01N13/18
F01N13/08 E
B23K9/00 501C
B23K9/028 N
B23K33/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-171012(P2016-171012)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-35772(P2018-35772A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 高史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−084780(JP,A)
【文献】
特開昭63−005873(JP,A)
【文献】
特開昭51−014850(JP,A)
【文献】
特開昭53−037571(JP,A)
【文献】
特開平10−006016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00−99/00
B23K 9/00−9/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材(11)の側壁(11a)に設けられる取付け孔(13)に、パイプ部材(12)の一端部(12a)が挿入され、前記取付け孔(13)の周囲で前記側壁(11a)に環状の溶接ビード(15)を介して前記パイプ部材(12)が結合されるパイプ部材のケース部材への溶接構造において、
前記パイプ部材(12)に、当該パイプ部材(12)の一部が半径方向外方に張り出して成るフランジ状の拡径部(14)が、当該拡径部(14)の前記側壁(11a)と反対側の面(16b)が前記側壁(11a)に向かうにつれて大径となるテーパ状とされると共に、当該拡径部(14)の内面(16a,17a)が軸方向に密着するようにして形成され、前記拡径部(14)の外周部が前記側壁(11a)に溶接されることを特徴とするパイプ部材のケース部材への溶接構造。
【請求項2】
前記拡径部(14)の前記側壁(11a)と反対側の面(16b)のテーパ角が、5〜30度とされることを特徴とする請求項1に記載のパイプ部材のケース部材への溶接構造。
【請求項3】
前記拡径部(14)の前記側壁(11a)側に臨む面(17b)が、平坦に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のパイプ部材のケース部材への溶接構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース部材の側壁に設けられる取付け孔に、パイプ部材の一端部が挿入され、前記取付け孔の周囲で前記側壁に環状の溶接ビードを介して前記パイプ部材が結合されるパイプ部材のケース部材への溶接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース部材に、そのケース部材よりも薄肉であるパイプ部材が直接溶接される構造では、パイプ部材の熱容量が小さいため、熱溶接によってパイプ部材内面への溶接ビードの溶け込みが生じて、しばしば裏ビードが生じることがある。このような課題を解決するために、ケース部材に熱容量の大きなボス部材が溶接され、そのボス部材の外端に形成したテーパ状の接続部にパイプ部材の端部に形成されたテーパ状の接続端部が嵌合され、その接続端部がボス部材に溶接されるようにしたものが、特許文献1で知られている。
【0003】
ところが、特許文献1で開示されたものでは、部品点数および溶接工数が多くなり、コストの増大を招く。そこで特許文献2で開示されるものでは、パイプ部材に、当該パイプ部材の一部が半径方向外方に張り出して成るフランジ状の拡径部が形成され、その拡径部がケース部材の側壁に溶接されるようにすることで、部品点数および溶接工数の増大を回避し、コストの低減を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291909号公報
【特許文献2】特開2014−84780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献2で開示される溶接構造では、パイプ部材に形成される拡径部の全体肉厚が大きくならず、部分的に肉厚が薄くなっている部分があるので、裏ビードの発生を完全に防止することが難しい。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数および溶接工数の増大を回避してコストの低減を図った上で、裏ビードの発生を確実に防止し得るようにしたパイプ部材のケース部材への溶接構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ケース部材の側壁に設けられる取付け孔に、パイプ部材の一端部が挿入され、前記取付け孔の周囲で前記側壁に環状の溶接ビードを介して前記パイプ部材が結合されるパイプ部材のケース部材への溶接構造において、前記パイプ部材に、当該パイプ部材の一部が半径方向外方に張り出して成るフランジ状の拡径部が、
当該拡径部の前記側壁と反対側の面が前記側壁に向かうにつれて大径となるテーパ状とされると共に、当該拡径部の内面を軸方向に密着させるようにして形成され、前記拡径部の外周部が前記側壁に溶接されることを第1の特徴とする
。
【0008】
さらに本発明は、第
1の特徴の構成に加えて、前記拡径部の前記側壁側に臨む面が、平坦に形成されることを第
2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、パイプ部材に形成される拡径部の内面が軸方向に密着しているので、拡径部に薄肉の部分が生じないようにして熱容量を高め、ケース部材の側壁への拡径部の外周部の熱溶接時に、拡径部の内面側への溶接ビードの溶け込みが生じることがないようにして裏ビードの発生を確実に抑えることができ、しかも部品点数および溶接工数が増加することがなく、コストの低減に寄与することができる。
【0010】
ま
た、拡径部の側壁と反対側の面
を側壁に向かうにつれて大径となる
テーパ状に形成
することで、拡径部の肉を内周側に集めることができ
て、拡径部の溶接部の実質上の板厚を増加させることができ、大きな入熱で溶接強度の高い溶接構造を得ることができる。
【0011】
また本発明の第2の特徴によれば、拡径部の側壁と反対側の面のテーパ角が5〜30度とされるので、拡径部の内面を軸方向に有効に密着させることができる。
【0012】
さらに本発明の第3の特徴によれば、パイプ部材をケース部材の側壁に溶接する際に、側壁上でのパイプ部材のぐらつきを防止して溶接姿勢を安定化させ、精度よく確実な溶接が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ケース部材にパイプ部材が溶接された状態を示す縦断面図である。
【
図2】パイプ部材に拡径部を形成する過程を順次示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付の
図1および
図2を参照しながら説明すると、先ず
図1において、たとえばディーゼルエンジン用排気浄化装置は、ケース部材11内に図示しない触媒が収容、保持されて成り、前記触媒が、捕捉した粒子状物質によって目詰まり状態となると、前記ケース部材11内の圧力が上昇する。そこでその圧力上昇を検出することで目詰まり状態を検出するために、前記ケース部材11の側壁11aに、パイプ部材である圧力検出パイプ12が接続される。
【0015】
前記側壁11aには取付け孔13が設けられ、前記圧力検出パイプ12はその一端部12aを前記取付け孔13に挿入した状態で、前記側壁11aの外面に溶接される。
【0016】
ところで前記圧力検出パイプ12の肉厚d1は、前記ケース部材11の側壁11aの肉厚d2よりも小さく、薄肉の圧力検出パイプ12が厚肉の前記側壁11aにそのまま溶接されると、パイプ部材12の熱容量が小さいため、熱溶接によってパイプ部材12の内面への溶接ビード15の溶け込みが生じて、しばしば裏ビードが生じることがある。そこで本発明に従えば、前記圧力検出パイプ12に、当該圧力検出パイプ12の一部が半径方向外方に張り出して成るフランジ状の拡径部14が形成され、その拡径部14の外周部が、その全周にわたる溶接によって形成される溶接ビード15を介して前記側壁11aに結合される。
【0017】
しかも前記拡径部14は、その内面16a,17aを軸方向に密着させるようにして形成される。すなわち前記拡径部14は、前記圧力検出パイプ12の半径方向外方に張り出す第1円盤部16と、第1円盤部16および前記側壁11a間で前記圧力検出パイプ12の半径方向外方に張り出す第2円盤部17と、第1および第2円盤部16,17の外周部を連結する湾曲部18とを一体に有しており、第1および第2円盤部16,17の内面16a,17aが軸方向に密着するように形成される。
【0018】
また前記拡径部14の前記側壁11aと反対側の面、すなわち第1円盤部16の外面16bは、前記側壁11aに向かうにつれて大径となるように、たとえばテーパ状に形成される。そのテーパ角度αは、5度〜30度であることが望ましく、そのような角度とすることで第1および第2円盤部16,17の内面16a,17aを軸方向に有効に密着させることができる。
【0019】
また第1円盤部16の外面16bが、外側に膨らみつつ前記側壁11aに向かうにつれて大径となるように形成されていてもよく、また内側に凹みつつ前記側壁11aに向かうにつれて大径となるように形成されていてもよい。
【0020】
さらに前記拡径部14の前記側壁11a側に臨む面、すなわち第2円盤部17の外面17bは、前記側壁11aの外面に形成される平坦な取付け面19に対応して平坦に形成される。
【0021】
ところで前記圧力検出パイプ12に前記拡径部14を形成するにあたっては、
図2で示す金型装置20が用いられる。この金型装置20は、固定の下クランプ型21と、その下クランプ型21の上方で昇降可能な上クランプ型22と、前記下クランプ型21にスライド可能に支持される下スライド型23と、前記上クランプ型22でスライド可能に支持される上スライド型24と、前記下スライド型23および前記上スライド型24を押圧可能なパンチ25とを備える。
【0022】
前記下クランプ型21には、前記下スライド型23をスライド可能に支持する下支持部21aが設けられ、前記上クランプ型22には、前記上スライド型24をスライド可能に支持する上支持部22aが設けられる。また前記下クランプ型21および前記上クランプ型22には、前記下スライド型23および前記上スライド型24のスライド方向に延びる前記圧力検出パイプ12の一端部12a側の一部を前記下および上スライド型23,24側に臨ませて
、前記圧力検出パイプ12を協働し
て嵌合、保持する保持溝26,27が形成されるとともに、それらの保持溝26,27内の前記圧力検出パイプ12の他端部12bを当接させる規制面28,29が設けられる。
【0023】
前記下クランプ型21および前記上クランプ型22における前記保持溝26,27の前記規制面28,29とは反対側の端部周縁には、前記圧力検出パイプ12の拡径部14のうち第1円盤部16の外面16bを協働して形成するための受け面31,32がそれぞれ形成されており、それらの受け面31,32は協働してテーパ面を構成する。
【0024】
また前記下スライド型23および前記上スライド型24には、前記圧力検出パイプ12の拡径部14のうち第2円盤部17および前記湾曲部18を協働して形成する凹部33,34がそれぞれ形成されており、それらの凹部33,34の閉塞端は前記圧力検出パイプ12の拡径部14のうち第2円盤部17の外面17bを形成すべく平坦面に形成される。さらに前記下スライド型23および前記上スライド型24には、前記凹部33,34に連なる保持溝35,36が前記圧力検出パイプ12の一端部12a側の一部を嵌合、保持するようにしてそれぞれ形成されるとともに、前記圧力検出パイプ12の一端部12aに当接する押圧面37,38がそれぞれ形成される。
【0025】
このような金型装置20で前記圧力検出パイプ12に前記拡径部14を形成する際には、先ず
図2(a)で示すように、下クランプ型21の保持溝26および下スライド型23の保持溝35に対象となる圧力検出パイプ12を嵌合、保持した状態で、
図2(b)で示すように、上クランプ型22を降下させ、前記圧力検出パイプ12を、下クランプ型21の保持溝26および下スライド型23の保持溝35と、上クランプ型22の保持溝27および上スライド型24の保持溝36とで協働して保持する。この際、圧力検出パイプ12の一端部12aは前記下スライド型23および前記上スライド型24の前記押圧面37,38に近接もしくは当接した状態にあり、圧力検出パイプ12の他端部12bは前記下クランプ型21および前記上クランプ型22の前記規制面28,29に近接もしくは当接した状態にある。
【0026】
次いで
図2(c)で示すように、前記下スライド型23および前記上スライド型24を、パンチ25を前進させることで軸方向に押圧することで、
図2(d)で示すように、下クランプ型21および上クランプ型22と、下スライド型23および上スライド型24との協働によって圧力検出パイプ12に拡径部14が形成されることになり、
図2(e)で示すように、パンチ25と、下スライド型23および上スライド型24とを後退させた後に、
図2(f)で示すように、上クランプ型22を上昇させて圧力検出パイプ12の保持を解除することで前記拡径部14の成形が完了する。
【0027】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、圧力検出パイプ12に、当該圧力検出パイプ12の一部が半径方向外方に張り出して成るフランジ状の拡径部14が、当該拡径部14の内面16a,17aを軸方向に密着させるようにして形成され、前記拡径部14の外周部がケース部材11の側壁11aに溶接されるので、拡径部14に薄肉の部分が生じないようにして熱容量を高め、ケース部材11の側壁11aへの拡径部14の外周部の熱溶接時に、拡径部14の内面側への溶接ビード15の溶け込みが生じることがないようにして裏ビードの発生を確実に抑えることができ、しかも部品点数および溶接工数が増加することがなく、コストの低減に寄与することができる。
【0028】
また前記拡径部14の前記側壁11aと反対側の面16bが、前記側壁11aに向かうにつれて大径となるように形成されるので、拡径部14の肉を内周側に集めることができ、拡径部14の溶接部の実質上の板厚を増加させることができ、大きな入熱で溶接強度の高い溶接構造を得ることができる。
【0029】
さらに前記拡径部14の前記側壁11a側に臨む面17bが、平坦に形成されるので、圧力検出パイプ12をケース部材11の側壁11aに溶接する際に、側壁11a上での圧力検出パイプ12のぐらつきを防止して溶接姿勢を安定化させ、精度よく確実な溶接が可能となる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
たとえば上述の実施の形態では、ディーゼルエンジン用排気浄化装置のケース部材11の側壁11aへの圧力検出パイプ12の溶接構造について説明したが、本発明は、ケース部材の側壁へのパイプ部材の溶接構造として広く適用可能である。
【0032】
また上述の実施の形態ではケース部材11よりも薄肉の圧力検出パイプ12のケース部材11への溶接構造について説明したが、ケース部材11と同等の肉厚もしくはケース部材11よりも厚肉のパイプ部材のケース部材11への溶接構造についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
11・・・ケース部材
11a・・・側壁
12・・・パイプ部材である圧力検出パイプ
12a・・・圧力検出パイプの一端部
13・・・取付け孔
14・・・拡径部
15・・・溶接ビード
16a,17a・・・拡径部の内面
16b・・・拡径部の側壁と反対側の面
17b・・・拡径部の側壁側に臨む面