(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660287
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】駐輪装置
(51)【国際特許分類】
B62H 3/08 20060101AFI20200227BHJP
E04H 6/12 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
B62H3/08
E04H6/12 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-257652(P2016-257652)
(22)【出願日】2016年12月31日
(65)【公開番号】特開2018-108780(P2018-108780A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】517004436
【氏名又は名称】株式会社ショウエイテクノ製作
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌佳
(72)【発明者】
【氏名】山田 潔
(72)【発明者】
【氏名】安間 洋子
【審査官】
杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−347362(JP,A)
【文献】
特開2016−159900(JP,A)
【文献】
特開2003−147984(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0022755(KR,A)
【文献】
米国特許第07946432(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/08
E04H 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設定したレールと、前側部の底面に前記レールに摺動自在に嵌合した摺動部材を固着し、後側部の底面に床面を転動するキャスタを配設して成る、自転車を載置する駐輪架台と、を有し、前記レールに沿って前記駐輪架台を水平方向に摺動自在とした駐輪装置において、
前記駐輪架台の後端部に配設され、平坦面を後方に向かって漸次拡幅させると共に後方に向かって傾斜させた後側部と、平坦面を略同一幅に形成した前側部と、円筒状に形成すると共に支持軸を挿通させた支持部と、前記後側部の両側に立設して成る側板部と、から構成され、前記支持部において前記駐輪架台に枢支させることによって傾動自在とした案内板と、
前記駐輪架台の後端部に配設され、前記駐輪架台を貫通し、弾性付勢力に抗して垂直方向に摺動する摺動軸と、前記摺動軸の上端部の周囲に介在させた圧縮バネと、この圧縮バネを押圧する押圧板と、前記摺動軸の下端部に連結し、弾性部材を配設した当接部材と、から構成され、前記案内板の前側部の下方移動によって、前記摺動軸を前記圧縮バネの弾性付勢力に抗して摺動できるようにした制動機構と、
を配設したことを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
前記駐輪架台の後端部に挿通孔を穿設し、この挿通孔から下方に、円筒状を呈する摺動軸案内部材を設置し、前記摺動軸を前記挿通孔及び前記摺動軸案内部材の内側に挿通して、垂直方向に摺動自在としたことを特徴とする請求項1に記載の駐輪装置。
【請求項3】
前記当接部材は、金属板から成る支持部材の下面にゴムから成る弾性部材の上面を融着したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の駐輪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅前、集合住宅、公民館、公園等において、多数の自転車を駐輪するために設置される駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅前、集合住宅、公民館、公園等においては、多数の自転車を駐輪するために種々形態の駐輪装置が設置されている。
【0003】
最近にあっては、限られたスペースに多数の自転車を効率的に駐輪するために、自転車を載置する駐輪架台を水平方向に多数配設し、それら駐輪架台を床面に設置したレールに沿って左右に摺動自在としたスライド式駐輪装置が採用されている。
さらに、1台のスペースに2台の自転車を駐輪できるよう、駐輪架台を上下2段に配設し、上段に配設した駐輪架台を昇降自在とすると共に、下段に配設した駐輪架台をレールに沿って左右に摺動自在とした垂直2段式駐輪装置も採用されている。
【0004】
上記スライド式駐輪装置及び垂直2段式駐輪装置にあって、水平方向にレールに沿って摺動する駐輪架台は、前側部の底面にレールに摺動自在に嵌合した摺動部材を固着し、後側部の底面に床面を転動するキャスタを配設してある。
そして、駐輪装置の利用者は、駐輪架台の後端部に配設した案内板に先ず自転車の前輪を載せ、そのまま前輪を前方に移動させて駐輪架台に載せ、さらに、自転車を後輪が駐輪架台に載るまで移動させて、自転車を駐輪架台に完全に載置させる。
【0005】
しかし、上記構成の駐輪架台にあっては、自転車を駐輪架台に進入させる際、又、退出させる際に、駐輪架台が水平方向に極めて移動し易く、利用者が自転車を進入、退出させるのに不便であった。
【0006】
そこで、自転車を駐輪架台に進入、退出させる際に、駐輪架台が水平方向に移動するのを防止するため、駐輪架台の後側部の側面に、傾動する足踏制動板を配置した駐輪装置が開発され、市販されている。
この駐輪装置によれば、自転車を駐輪架台に進入、退出させる際に、利用者が足踏制動板を片足で踏み付け、足踏制動板の下面に固着したゴム部材を床面に当接させることによって、駐輪架台の水平方向移動を防止することができる。
【0007】
しかし、足踏制動板を配置した駐輪装置では、足踏制動板を片足で踏み付けつつ自転車を駐輪架台に進入、退出させる必要があり、不安定な姿勢、動作を強いられることになるため、特に、女性、子供にとっては、転倒する虞等、危険性を有するものであった。
【0008】
そこで、このような危険性を有することなく、自転車を駐輪架台に進入、退出させる際に駐輪架台の水平方向移動を防止するため、キャスタ制動機構を配設した駐輪装置が提案されている(特許文献1参照)。
この駐輪装置によれば、自転車Bの前輪Fが踏板21に載った時に、自動的にキャスタ制動機構24によってキャスタ15が制動され、駐輪架台13の水平方向移動が防止されるので、利用者は不安定な姿勢、動作を強いられることがなく、危険性は小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−100978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に開示された駐輪装置にあっては、キャスタ制動機構24は、前後制動軸25a,25b、圧縮バネ28,29、可動板30、プッシュロック・プッシュオープン型のラッチ31等から構成されている。
そして、踏板21の下方移動によって、前制動軸25aが前方に移動し、その先端の制動端25cが支持金具15eの孔部15fを挿通し、ホイール15bの凹み15cに当接することによって、キャスタ15の水平方向移動を阻止するようになっている。
【0011】
しかし、駐輪装置は屋外の塵埃、汚泥が多く存在する場所に設置されるため、キャスタ制動機構24の圧縮バネ28,29、支持金具15eの孔部15f等に塵埃、汚泥が詰まると、キャスタ制動機構24がうまく動作しなくなる虞がある。
【0012】
又、キャスタ制動機構24は、上記のように多数の構成部品から構成されているから、機構自体が比較的高価なものになると共に、その組立、設置にも時間がかかる。さらに、保守、修理にも時間と費用がかなりの程度かかるものとなる。
【0013】
本発明は、かかる問題点を解決するために為されたものであって、制動機構を極めて簡単な構成とすることによって、機構自体を安価とし、組立、設置も短時間でできるものとし、保守、修理にも時間、費用がそれほどかからず、それでいて、長期に亘って制動動作を実行でき、駐輪架台の水平方向移動を確実に防止することができる駐輪装置を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の駐輪装置は、床面に設定したレールと、前側部の底面に前記レールに摺動自在に嵌合した摺動部材を固着し、後側部の底面に床面を転動するキャスタを配設して成り、自転車を載置する駐輪架台と、を有し、前記レールに沿って前記駐輪架台を水平方向に摺動自在とした駐輪装置において、
前記駐輪架台の後端部に配設され、平坦面を後方に向かって漸次拡幅させると共に後方に向かって傾斜させた後側部と、平坦面を略同一幅に形成した前側部と、円筒状に形成すると共に支持軸を挿通させた支持部と、前記後側部の両側に立設して成る側板部と、から構成され、前記支持部において前記駐輪架台に枢支させることによって傾動自在とした案内板と、
前記駐輪架台の後端部に配設され、前記駐輪架台を貫通し、弾性付勢力に抗して垂直方向に摺動する摺動軸と、前記摺動軸の上端部の周囲に介在させた圧縮バネと、この圧縮バネを押圧する押圧板と、前記摺動軸の下端部に連結し、弾性部材を配設した当接部材と、から構成され、前記案内板の前側部の下方移動によって、前記摺動軸を前記圧縮バネの弾性付勢力に抗して摺動できるようにした制動機構と、
を配設したことを特徴とする。
【0015】
又、前記駐輪架台の後端部に挿通孔を穿設し、この挿通孔から下方に、円筒状を呈する摺動軸案内部材を設置し、前記摺動軸を前記挿通孔及び前記摺動軸案内部材の内側に挿通して、垂直方向に摺動自在としたことを特徴とする。
【0016】
前記当接部材は、金属板から成る支持部材の下面にゴムから成る弾性部材の上面を融着したものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の駐輪装置によれば、制動機構は簡単、安価であって、組立、設置も短時間ででき、保守、修理にも時間、費用がそれほどかからず、それでいて、長期に亘って制動動作を実行でき、駐輪架台の水平方向移動を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の駐輪装置における駐輪架台の後端部の(A)は断面図、(B)は平面図である。
【
図2】
図1に示す駐輪架台の後端部において、設置した制動機構の動作を示す断面図であって、(A)は通常時の状態を示す図、(B)は傾斜案内板を下方移動した状態を示す図である。
【
図3】本発明の駐輪装置において、自転車の前輪を駐輪架台の後端部に載せた状態を示す側面図である。
【
図4】本発明の駐輪装置において、自転車全体を駐輪架台に載置した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の駐輪装置における駐輪架台の前側部のA領域におけるE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の駐輪装置の好適な実施形態について、
図1乃至
図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
本発明の駐輪装置1は、
図3に示すように、自転車Bを載置する駐輪架台2と、床面3に設定部材4を介して設定され、多数の駐輪架台2,2,・・・を水平方向に摺動するレール5と、から構成してある。
【0021】
尚、
図3及び
図4においては、駐輪架台を上下2段に配設し、上段に配設した駐輪架台を昇降自在とすると共に、下段に配設した駐輪架台2をレール5に沿って左右に摺動自在とした垂直2段式駐輪装置を開示してあるが、上段の駐輪架台を配設しない、1段の駐輪架台のみを配設したスライド式駐輪装置であってもよいこと、勿論である。
【0022】
駐輪架台2は、
図1乃至
図4に示すように、前後方向に延びる架台本体6と、架台本体6の前側部に配設された支持枠体7と、前側部の底面に固定され、レール5に摺動自在に嵌合した摺動部材8と、架台本体6の後側部の底面に固定され、床面3を転動するキャスタ9と、後端部に配設された案内板10と、後端部に配設された制動機構11、とから構成してある。
【0023】
架台本体6は、
図1に示すように、水平に設置した基板部6aと、その両側に立設した側板部6b,6bと、から構成される。
【0024】
キャスタ9は、
図1に示すように、架台本体6の後側部の基板部6aの底面に支持部材12を介して車輪13を固定した構成としてあり、これによって、床面3を左右に転動するようになっている。
【0025】
案内板10は、
図1に示すように、平坦面を後方に向かって漸次拡幅させた後側部10aと、平坦面を略同一幅に形成した前側部10bと、巻き回して円筒状に形成した支持部10cと、から構成してある。
尚、自転車Bを駐輪架台2に進入、又、退出させる際に、自転車Bの車輪が脱輪しないように、後側部10aの両側には側板部10d,10dを立設してある。
【0026】
そして、案内板10の支持部10cに支持軸14を挿通させ、その支持軸14の両端部14a,14aを架台本体6の側板部6b,6bに枢支させることによって、案内板10を傾動自在としてある。
ここで、後側部10aは、前側部10bに対して角度θだけ下方に傾斜させてあるが、角度θは、30〜45°であることが好ましい。
【0027】
又、後側部10a、前側部10bが湾曲又は屈曲しないように、後側部10aと前側部10bとの間にプレスで絞ることによって補強リブ10eを形成してある。
【0028】
制動機構11は、
図1に示すように、垂直方向に摺動する摺動軸15と、この摺動軸15の上端部の周囲に介在させた圧縮バネ16と、この圧縮バネ16を押圧する押圧板17と、前記摺動軸15の下端部に連結した当接部材18と、から構成してある。
【0029】
架台本体6の基板部6aの後端部に挿通孔6cを穿設すると共に、この挿通孔6cから下方に、円筒状を呈する摺動軸案内部材19を設置してある。
そして、摺動軸15を前記挿通孔6c及び摺動軸案内部材19の内側に挿通して、垂直方向に摺動自在としてある。
【0030】
又、摺動軸15の上端部の周囲に圧縮バネ16を配置し、押圧板17をボルト20によって摺動軸15の上端面に固定することによって、架台本体6の基板部6aの上面と押圧板17の下面との間に圧縮バネ16を介在するようにしてある。
【0031】
当接部材18は、円盤状を呈するものであって、金属板等から成る支持部材21の下面にゴム等から成る弾性部材22の上面を融着したものである。
【0032】
さらに、常時、制動機構11の押圧板17の上端には、案内板10の前側部10bの下面が当接するように設定してある。
【0033】
本発明の駐輪装置1は、以上のような構成であるから、
図3に示すように、駐輪架台2の後方から自転車Bの前輪Fを案内板10の後側部10aに載せれば、
図2(B)に示すように、案内板10が下方に傾動し、前側部10bの下面が押圧板17の上端を下方に押圧する。
【0034】
これによって、圧縮バネ16が縮長し、その弾性力に抗して、摺動軸15が下方に摺動する。そして、
図2(B)に示すように、当接部材18の弾性部材22下面が床面3を押圧するから、床面3と弾性部材22との摩擦力によって、駐輪架台2は水平方向移動を阻止されることになる。
【0035】
さらに、駐輪架台2の前方に自転車Bの前輪Fを移動させ、後輪Rをも完全に駐輪架台2に載置させれば、駐輪架台2が水平方向に移動することなく、
図4に示すように、自転車B全体を駐輪架台2に載置させることができる。
【0036】
自転車B全体を駐輪架台2に載置させた場合には、圧縮バネ16が伸長し、その弾性力によって、摺動軸15を上方に摺動する。そして、
図2(A)に示すように、当接部材18の弾性部材22下面は床面3から離反するから、駐輪架台2を水平方向に自由に移動させることができる。
【0037】
以上のように、本発明の駐輪装置1は、制動機構11の構成は簡単で、構成部品も少ないから、安価であって、組立、設置も短時間ででき、保守、修理にも時間、費用がそれほどかからない。
【0038】
又、制動機構11の構成が簡単であるが故に、長期に亘って制動動作を確実に実行することがで、駐輪架台2の水平方向移動を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、本発明の駐輪装置1では、
図3及び
図4に示す駐輪架台2の前側部のA領域、すなわち、自転車B全体を駐輪架台2に載置させた時に、自転車Bの前輪Fが基板部6aに当接する領域に、
図5に示すように、傾倒防止部材23を配設してある。
【0040】
傾倒防止部材23は、
図5に示すように、鉄鋼鈑等の金属板を略台形状に折曲したものであって、底面部23aの幅を自転車Bの前輪FのタイヤTの幅より若干小として、タイヤTに底面部23a及び両側面部23b,23bが当接することによって、前輪Fが左右に揺動又は傾倒しないようになっている。
図5において、Rは前輪Fのリム、Sはスポークである。
【0041】
ここで、自転車Bを駐輪架台2に進入、又、退出させる際に、タイヤTと傾倒防止部材23との摩擦力を低減して移動させ易いように、又、移動時にタイヤTに擦過傷等を与えないように、鉄鋼鈑等の金属板の表面には合成樹脂をコーティングするのが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 駐輪装置
2 駐輪架台
3 床面
5 レール
10 案内板
10a 後側部
10b 前側部
10c 支持部
11 制動機構
15 摺動軸
16 圧縮バネ
17 押圧板
18 当接部材
21 支持部材
22 弾性部材
B 自転車