(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660295
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】ピックオフトランスデューサワイヤボンドビット検出
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
G01P21/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-522634(P2016-522634)
(86)(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公表番号】特表2016-523374(P2016-523374A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014064239
(87)【国際公開番号】WO2015001044
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】1311967.2
(32)【優先日】2013年7月4日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512227052
【氏名又は名称】シリコン、センシング、システムズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SILICON SENSING SYSTEMS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ダーストン,マイケル テレンス
(72)【発明者】
【氏名】シッチ,ダグラス ロバート
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/079925(WO,A1)
【文献】
特表2013−521486(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0031950(US,A1)
【文献】
特開平6−324071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−21/02
G01C19/00−19/72
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2対のトランスデューサと、
センサ信号処理回路と、
差動入力と、2つの出力とを有する作動増幅器と、
を備え、
各対のトランスデューサは、ハブワイヤボンドによって互いに直列に接続され、各対のトランスデューサは、ハブワイヤボンドによって接続されると、一緒に負荷容量Cloadを有し、
各対のトランスデューサの出力は、それぞれ1つのボンドワイヤで差動増幅器の差動入力のそれぞれに接続され、2つの出力は、センサ信号処理回路に接続され、差動増幅器の各出力は、容量接続Cfeedbackを介して差動入力のそれぞれに接続し戻されており、負荷容量Cloadは、ハブワイヤボンドが破損した場合、差動入力に接続されているトランスデューサの負荷容量Cloadになり、作動増幅器のゲインが、ゲイン=−(Cfeedback)/Cloadの式によって定義され、トランスデューサの損失が、作動増幅器の出力の損失によって検出されることを特徴とするセンサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの故障を信頼性高く検出するための回路に関し、具体的には、センサの構成要素を接続するボンドワイヤの故障または破損を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
電子センサは、通常、たとえば、ASICとして別に提供され得る、制御回路に接続された1つまたは複数のトランスデューサを含む。センサは、通常、たとえば、MEMSとして、やはりボンドワイヤによって一緒に接続された、いくつかのトランスデューサを含む。そのようなセンサの応用例は、車両ナビゲーションシステムと、ハンドヘルドナビゲーションシステムと、車両ESP(電子安定制御システム)と、車両エアバッグ展開と、モデルヘリコプター安定化と、農業用スプレーブーム安定化と、衛星レシーバ安定化と、UAVナビゲーションおよび安定化システムと、軽飛行機二次計器とを含む。これらの応用のうちのいくつかは、他よりも、故障検出に対するより厳しい要件を有する。
【0003】
センサは、トランスデューサ間のボンドワイヤ、またはトランスデューサと制御回路との間のボンドワイヤが破損または損傷している場合、信頼性のない結果を提供することがある。ワイヤボンド故障は、もっともらしいセンサ出力となることがあり、つまり、規定の動作範囲内であるように見えるが、実際は誤りであることがある。
【0004】
たとえば、増幅器に接続された4つのセンストランスデューサを備えるセンサは、1つのトランスデューサが、たとえば、リード故障により失われた場合、その出力信号は1/4(25%)減少することになる。しかしながら、出力信号が、通常の動作下で、温度と公差とで最大32%変化することは可能である。したがって、出力信号の減少が、トランスデューサの損失を示すのか、単に通常の変動のためなのかを判断することは困難である。
【0005】
センサの精度と信頼性とを向上させるが、通常、追加の複雑さを必要とする、デバイスと技術とが提案されており、追加の複雑さには、通常必要とされる信号からの追跡信号を拒絶する復調技術へ追跡信号を投入し、追跡信号を測定して、回路の複雑さを増加させるが故障検出を可能にするものと、ホストシステムのコマンドによる追跡信号の投入であるが、継続的な故障検出を提供せず、応用試験中に無効な信号の周期にさらされるものと、温度に渡って通常レベルの変化を補う、温度で調節される閾値限度を有する故障検出回路で、回路の複雑さを増加させ、温度変化の知識を必要とするものと、信号と基準信号との比較を可能にするためにMEMS上で追加のトランスデューサを使用し、MEMSの複雑さを増加させ、検出トランスデューサのための許容エリアを減少させ、したがって、悪化した信号対ノイズ比と感度とを通してセンサの性能を減少させるものと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
少なくとも2つのトランスデューサと、
センサ信号処理回路と、
それぞれが、トランスデューサのうちの各1つをセンサ信号処理回路に接続する、トランスデューサからセンサ信号処理回路への電気接続と、
2つのボンドワイヤで接続された差動増幅器であって、ボンドワイヤが、差動増幅器の差動入力に接続され、増幅器出力が、センサ信号処理回路に接続されている、差動増幅器と、
を備えるセンサデバイス、を提供する。
【0007】
説明される実施例では、電気接続はワイヤボンドであるが、他の形態、たとえば、フリップチップはんだバンプから成ることができる。
【0008】
差動増幅器の使用が従来技術に対する利点を提供する一方、トランスデューサの各対が差動増幅器に1つのボンドワイヤによって接続されている、少なくとも2対のトランスデューサを備えるシステムでは、検出感度をさらに向上させることができる。
【0009】
トランスデューサに、一般的に使用される値と比較してより高い容量値の部品を使用することによって、故障を検出する能力をさらに向上させることができる。
【0010】
実施例を、単に例として、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】MEMSトランスデューサ構成の実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の
図1は、従来技術のアーキテクチャを示し、そこでは、ピックオフトランスデューサは、それぞれ、結合されて差動信号を提供する前に、別々の反転(または非反転)増幅器に接続されている。
【0013】
このアーキテクチャでは、1つのワイヤボンドの損失は、信号の25%の減少になるのみであり、それは、以下でさらに説明する、温度で発生する変化よりも小さい。
【0014】
また、個々のトランスデューサがわずかな容量のみを有している場合では、トランスデューサが差動増幅器に接続されていたとしても、1つのトランスデューサ(ハブワイヤボンド)の損失は、より小さなゲイン損失となり、それは、ワイヤボンドからの浮遊容量および追跡が考慮された時、容量の変化が比例的に小さく、1つのトランスデューサの損失と合わさった時に、温度での通常の変動を超えるのに十分な信号変化を作り出さないからである。
【0015】
これらの場合では、温度での通常の変動を超えるものを検出するのに十分なレベルを達成するために、1つより多いトランスデューサの切断を必要とする。
【0016】
改良システムの好適な実施例を
図2の回路図に示す。
【0017】
センサは、本実施例では、4つのトランスデューサ2a、2b、2c、2dを有するMEMS1として提供される。これらは、任意の知られている種類、たとえば、圧電トランスデューサの、PZTデバイスまたは容量であることができる。もちろん、より少ない、またはより多いトランスデューサを使用することができる。図示の実施例では、センサは、対に接続されたトランスデューサを有する。
【0018】
回路図に示す通り、各トランスデューサは、ACソースとして示すAC出力信号を提供し、負荷容量を有する。MEMS上のトランスデューサは、図示の実施例では、対に接続され、各対の2つのトランスデューサは、ハブワイヤボンド3a、3bによって互いに接続されている。
【0019】
トランスデューサを、
図3に示すリング構造の中立軸のどちら側にも、リング構造の周りに90°の角度で配置することができる。これは、ある位相の4つのトランスデューサ(SPO
+)と、反対の位相の4つのトランスデューサ(SPO
-)を提供して、差動出力を提供する。リング上での配置により、トランスデューサの対は、金属とPZTとの通常パターニングに、リングのハブ部分を介して接続される。したがって、この構造は、1つの位相の4つのトランスデューサを一緒に接続する、ハブ上の1つのワイヤボンドと、他方の位相の4つのトランスデューサを一緒に接続する、ハブ上の1つのワイヤボンドとを必要とするだけである。その結果、後で、それは、MEMSを電子機器に接続するために、位相当たり1つのワイヤボンドを必要とするだけである。以下の
図3は、MEMS構造の図表示を示している。
【0020】
MEMSは、電子機器に接続されるセンサ出力を提供し、通常、ピックオフ増幅器4と、その後ろの、たとえば、ASIC上の別の回路内の復調およびフィルタ回路5とから構成される。復調され、フィルタにかけられた信号は、次いで、論理故障条件処理を受けて、個別の論理故障信号を提供する。
【0021】
各対のトランスデューサ、本実施例では4つのトランスデューサを接続するハブワイヤボンド3a、3bのうちの1つで故障が発生した場合、これは、MEMSからの出力信号の4分の1、つまり25%の損失になる。
【0022】
従来技術のシステムの問題を克服し、故障検出の精度を向上させるために、この減少は、MEMS1と復調/フィルタリング回路5との間に接続された差動ピックオフ増幅器4によって増幅される。
【0023】
差動増幅器または「ピックオフ」増幅器は、差動入力と、容量接続Cfeedback6を介して差動入力に後で接続し直される2つの出力と、を有する電荷増幅器として構成されている。
【0024】
MEMS上のトランスデューサの各対の出力は、差動増幅器のそれぞれの入力に、ここでもワイヤボンド7a、7bによって接続される。
【0025】
対の各トランスデューサを接続するハブワイヤボンドが損傷を受けておらず、MEMSからの出力信号が完全な信号である場合、MEMSを出力回路に接続するワイヤボンドのうちの1つが損傷を受けている場合には、まだ問題が発生することがある。2対のトランスデューサと2つのワイヤボンドとを用いる本場合では、これらのワイヤのうちの1つが損傷を受けた場合、これは、MEMS出力信号の半分の損失になる。
【0026】
差動増幅器段階のゲインは、帰還コンデンサ(C
feedback)とトランスデューサの負荷容量(C
load)とによって設定される。回路が差動モードで動作すると、ゲインは、以下の方程式:
ゲイン=−(帰還コンデンサ)/負荷容量
すなわち、
ゲイン=−(C
feedback)/C
load
に従って、帰還コンデンサと負荷コンデンサとの両方によって定義される。
【0027】
そのような増幅器段階では、特に、ハブワイヤボンドのうちの1つに対する損傷による1つのトランスデューサの損失は、4つのトランスデューサの場合、通常のピックオフトランスデューサ容量C
loadの4分の1(25%)の切断になる。この方程式によると、負荷容量の変化は、ピックオフ増幅器のゲインを、最初のゲインの68%に変える原因となる。このゲインの変化は、通常のピックオフ信号の4分の1の損失と合わさり、全体的なピックオフ信号ゲインを、最初のレベルの(0.75×0.68)×100=51%に減少させる。
【0028】
加えて、上記で述べた通り、構成には、MEMSトランスデューサを差動増幅器に接続する2つのワイヤボンド7a、7bがあるのみである。これは、MEMSと出力回路との間の故障したワイヤボンド接続が、MEMSトランスデューサからの信号の50%の損失、したがって、ピックオフトランスデューサ容量(C
laod)の半分(50%)の損失になる、という条件を作る。
【0029】
負荷容量の変化は、増幅器のゲインを、最初のゲインの11%に減少させる。このゲインの変化は、通常のピックオフ信号の半分の損失と合わさり、全体的なピックオフ信号ゲインを、最初のレベルの(0.5×0.11)×100=5.5%に減少させる。
【0030】
検出の精度をさらに向上させるために、コンデンサは、比較的高い値を有すべきである。たとえば、トランスデューサの各対の容量は、80pFから250pFの範囲内であることができる。ハブワイヤボンドは、2対のトランスデューサを一緒に接続し、したがって、差動増幅器の各側のトランスデューサ容量は、160pFから500pFの範囲内であることができる。
【0031】
類似のアーキテクチャの従来のセンサは、0.1pFから2pFの範囲内のトランスデューサ容量を有する。したがって、1対のトランスデューサは、0.2pFから4pFの範囲内の容量を有する。同様の方法で接続された場合、差動増幅器の各側のトランスデューサ容量は、0.4pFから8pFの範囲内になる。したがって、より高い容量は検出を大幅に改善する。しかしながら、より多くの通常の容量値を使用しても利点を得ることができる。
【0032】
これらの変化を、ピックオフ増幅器の後の適切な検出回路(従来使用可能な回路が知られており、システムのこの部分をさらには説明しない)を使用して、検出することができる。図示した実施例は、復調およびろ過段階を説明しているが、他の処理段階と検出回路とを使用することができる。
【0033】
最も適切であるとして、回路内の他の場所を使用してゲインの変化を検出することができる。