(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1抵抗部の抵抗値の変化及び前記第2抵抗部の抵抗値の変化に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向の位置検出が可能である請求項1又は2に記載の入力装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る入力装置を例示する平面図である。
図2は、第1の実施の形態に係る入力装置を例示する断面図であり、
図1のA−A線に沿う断面を示している。
図1及び
図2を参照するに、入力装置1は、基材10と、抵抗体30(複数の抵抗部31及び32)と、複数の端子部41及び42とを有している。
【0012】
なお、本実施の形態では、便宜上、入力装置1において、基材10の抵抗部31が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗部32が設けられている側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗部31が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗部32が設けられている側の面を他方の面又は下面とする。但し、入力装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm〜500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm〜200μmであると、抵抗部31及び32のひずみ感度誤差を少なくすることができる点で好ましい。
【0014】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0015】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0016】
但し、基材10が可撓性を有する必要がない場合には、基材10に、SiO
2、ZrO
2(YSZも含む)、Si、Si
2N
3、Al
2O
3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO
3、BaTiO
3)等の材料を用いても構わない。
【0017】
抵抗体30は、基材10上に形成されており、押圧力に応じて連続的に抵抗値が変化する受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10a及び下面10bに直接形成されてもよいし、基材10の上面10a及び下面10bに他の層を介して形成されてもよい。
【0018】
抵抗体30は、基材10を介して積層された複数の抵抗部31及び32を含んでいる。すなわち、抵抗体30は、複数の抵抗部31及び32の総称であり、抵抗部31及び32を特に区別する必要がない場合には抵抗体30と称する。なお、
図1では、便宜上、抵抗部31及び32を梨地模様で示している。
【0019】
複数の抵抗部31は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された薄膜である。複数の抵抗部32は、基材10の下面10bに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜である。但し、複数の抵抗部31と複数の抵抗部32とは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
【0020】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu−Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni−Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0021】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr
2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0022】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm〜2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α−Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体30の厚さが1μm以下であると、抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0023】
抵抗体30の幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm〜1000μm(1mm)程度とすることができる。隣接する抵抗体30のピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mm〜100mm程度とすることができる。なお、
図1及び
図2では、抵抗部31を6本、抵抗部32を10本図示しているが、抵抗部31及び32は、実際には数100〜数10000本程度設けられる。
【0024】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα−Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、抵抗体30の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗体30の感度の向上を実現できる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、抵抗体30の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗体30の感度の向上を実現する観点から、抵抗体30はα−Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α−Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0025】
端子部41は、基材10の上面10aにおいて、各々の抵抗部31の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部31よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、押圧力により生じる抵抗部31の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41の上面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0026】
端子部42は、基材10の下面10bにおいて、各々の抵抗部32の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部32よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部42は、押圧力により生じる抵抗部32の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42の上面を、端子部42よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32と端子部42とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0027】
なお、基材10を貫通する貫通配線(スルーホール)を設け、端子部41及び42を基材10の上面10a側又は下面10b側に集約してもよい。
【0028】
抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。又、抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように基材10の下面10bにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗部31及び32に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗部31及び32を湿気等から保護することができる。なお、カバー層は、端子部41及び42を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0029】
カバー層は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm〜30μm程度とすることができる。
【0030】
入力装置1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに
図1に示す平面形状の抵抗部31及び端子部41を形成する。抵抗部31及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗部31と端子部41とは、同一材料により一体に形成することができる。
【0031】
抵抗部31及び端子部41は、例えば、抵抗部31及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗部31及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0032】
抵抗部31の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現する観点から、抵抗部31及び端子部41を成膜する前に、下地層として膜厚が1nm〜100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。機能層は、例えば、コンベンショナルスパッタ法により成膜できる。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗部31及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗部31及び端子部41と共に
図1に示す平面形状にパターニングされる。
【0033】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗部の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗部との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0034】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗部がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗部の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0035】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0036】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si
3N
4、TiO
2、Ta
2O
5、SiO
2等が挙げられる。
【0037】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0038】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0039】
機能層の材料と抵抗部31及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗部31及び端子部41としてα−Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0040】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜してもよい。
【0041】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα−Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、抵抗部31の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0042】
なお、抵抗部31がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗部31の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗部31の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗部31との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0043】
このように、抵抗部31の下層に機能層を設けることにより、抵抗部31の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗部31を作製できる。その結果、入力装置1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗部31に拡散することにより、入力装置1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、押圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現することができる。
【0044】
次に、基材10の下面10bに
図1に示す平面形状の抵抗部32及び端子部42を形成する。抵抗部32及び端子部42は、抵抗部31及び端子部41と同様の方法で形成することができる。抵抗部32及び端子部42を成膜する前に、下地層として、基材10の下面10bに機能層を成膜することが好ましい点も同様である。
【0045】
抵抗部31及び端子部41並びに抵抗部32及び端子部42を形成後、必要に応じ、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するカバー層を、基材10の下面10bに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するカバー層を設けてもよい。これにより、入力装置1が完成する。
【0046】
カバー層は、例えば、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。又、カバー層は、例えば、基材10の下面10bに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層は、絶縁樹脂フィルムのラミネートに代えて、液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0047】
図3に示すように、入力装置1及び制御装置2によりタッチパネル3を実現できる。タッチパネル3は、ペンや指で触れることで入力操作が可能なパネルであり、表示装置の表面又は裏面に搭載され、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の各種電子機器や携帯端末等に広く用いることができる。タッチパネル3が搭載される表示装置としては、例えば、液晶表示装置や有機EL(Electro-Luminescence)表示装置が挙げられるが、これらには限定されない。
【0048】
なお、入力装置1は上下対称な構造であるため、抵抗部31側が表示装置側となるように表示装置に搭載されてもよいし、抵抗部32側が表示装置側となるように表示装置に搭載されてもよい。
【0049】
タッチパネル3において、入力装置1の各々の端子部41及び42は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、制御装置2に接続されている。
【0050】
制御装置2は、入力装置1の端子部41及び42を介して得られた情報に基づいて、入力装置1が押圧された位置の座標や押圧力の大きさを検出することができる。例えば、入力装置1の抵抗部31はX座標の検出に用いることができ、抵抗部32はY座標の検出に用いることができる。
【0051】
図4に示すように、制御装置2は、例えば、アナログフロントエンド部21と、信号処理部22とを含む構成とすることができる。
【0052】
アナログフロントエンド部21は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)等を備えている。アナログフロントエンド部21は、温度補償回路を備えていてもよい。
【0053】
アナログフロントエンド部21では、例えば、入力装置1の全ての端子部41及び42が入力信号選択スイッチに接続され、入力信号選択スイッチにより1対の電極が選択される。入力信号選択スイッチで選択された1対の電極は、ブリッジ回路に接続される。
【0054】
すなわち、ブリッジ回路の1辺が入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、入力信号選択スイッチは、信号処理部22から制御可能に構成されている。
【0055】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、信号処理部22に送られる。アナログフロントエンド部21が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が信号処理部22に送られる。入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、入力装置1の全ての端子部41及び42の抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で信号処理部22に送ることができる。
【0056】
信号処理部22は、アナログフロントエンド部21から送られた情報に基づいて、入力装置1が押圧された位置の座標や押圧力の大きさを検出することができる。例えば、
図1の最下部に位置する抵抗部31の抵抗値と、左から2番目に位置する抵抗部32の抵抗値が変化した場合には、
図1に示すB部が押されたことを検出できる。又、最下部に位置する抵抗部31の抵抗値の変化の大小と、左から2番目に位置する抵抗部32の抵抗値の変化の大小とに基づいて、
図1に示すB部における押圧力の大きさを検出できる。
【0057】
又、複数の抵抗部31の抵抗値や複数の抵抗部32の抵抗値が変化した場合には、入力装置1が複数位置で押圧されたことを検出できる。
【0058】
なお、押圧力の大きさが小さい場合等には、抵抗部31及び抵抗部32のうち、押圧される側に近い方の抵抗部のみが押圧され、押圧される側から遠い方の抵抗部は押圧されない場合がある。この場合には、押圧される側に近い方の抵抗部の1対の電極間の抵抗値のみが押圧力の大きさに応じて連続的に変化するが、この場合も、信号処理部22は、押圧される側に近い方の抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、押圧力の大きさを検出することができる。
【0059】
つまり、抵抗部31及び/又は抵抗部32が押圧されると、押圧された抵抗部(抵抗部31及び/又は抵抗部32)の1対の電極間の抵抗値が押圧力の大きさに応じて連続的に変化する。そして、信号処理部22は、抵抗部31と抵抗部32の一方が押圧されたか両方が押圧されたかにかかわらず、押圧された抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、押圧力の大きさを検出することができる。
【0060】
信号処理部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成とすることができる。
【0061】
この場合、信号処理部22の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、信号処理部22の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、信号処理部22は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0062】
このように、入力装置1の抵抗部31及び32が押圧されると、押圧された抵抗部31及び32が押圧力に応じて撓み、押圧された抵抗部31及び32の1対の電極間の抵抗値が押圧力の大きさに応じて連続的に変化する。すなわち、入力装置1では、3次元情報(押圧された位置の座標と、押圧力の大きさ)を得ることができる。
【0063】
タッチパネル3において、入力装置1で得られた3次元情報は制御装置2に送られ、制御装置2は入力装置1で得られた3次元情報に基づいて、入力装置1が押圧された位置の座標と共に、押圧力の大きさを検出することができる。
【0064】
特に、抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗部31及び32がCu−NiやNi−Crから形成されている場合と比べ、押圧力に対する抵抗値の感度(同一の押圧力に対する抵抗部31及び32の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合、押圧力に対する抵抗値の感度は、抵抗部31及び32がCu−NiやNi−Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5〜10倍程度となる。そのため、抵抗部31及び32をCr混相膜から形成することで、押圧された位置の座標の検出精度を向上できると共に、押圧力を高感度で検出できる。
【0065】
又、押圧力に対する抵抗値の感度が高いことで、押圧力が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、押圧力が中であることを検出した場合には他の動作を行い、押圧力が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。或いは、押圧力が小又は中であることを検出した場合には動作を行わず、押圧力が大であることを検出した場合にのみ所定の動作を行うような制御の実現が可能となる。これにより、ミスタッチによる誤動作を防止できる。
【0066】
又、押圧力に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部21のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できるため、入力信号選択スイッチを更に高速で切り替えることが可能となる。その結果、入力装置1に入力される速い動きも検出することができる。
【0067】
又、押圧力に対する抵抗値の感度が高いことで、タッチパネル3を表示装置の裏面側に搭載し、表示装置を介してタッチパネル3を押圧した場合でも押圧の有無や押圧力の大きさを検出できる。そのため、タッチパネル3を表示装置の裏面側に搭載し、表示装置の視認性を落とすことなくタッチパネル3への入力が可能となる。
【0068】
但し、抵抗部31及び32の幅を狭くする(例えば、10μm以下とする)ことにより、表示装置の視認性の低下を抑制できるため、タッチパネル3を表示装置の表面側に搭載することも可能である。
【0069】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、基材の一方の面側又は他方の面側に実装された電子部品を有する入力装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0070】
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係る入力装置を例示する断面図であり、
図2に対応する断面を示している。
図5を参照するに、入力装置1Aは、基材10の下面10bに電子部品200が実装された点が、入力装置1(
図1及び
図2参照)と相違する。
【0071】
電子部品200は、例えば、
図4に示すアナログフロントエンド部21をIC化して外部通信機能(例えば、I
2C等のシリアル通信機能)を持たせたものである。すなわち、電子部品200は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、A/D変換回路、外部通信機能等を備えたICであり、抵抗部31及び32の1対の電極間の抵抗値を電圧に変換してデジタル信号として出力することができる。電子部品200は、温度補償回路を備えていてもよい。電子部品200は、外部通信機能により制御装置2の信号処理部22と情報の送受信を行うことができる。
【0072】
電子部品200は、例えば、基材10の下面10bに形成されたパッドにフリップチップ実装することができる。或いは、電子部品200は、基材10の下面10bにダイアタッチフィルム等の接着層を介して搭載され、基材10の下面10bに形成されたパッドにワイヤボンディングされてもよい。又、電子部品200と共に、コンデンサ等の受動部品が搭載されてもよい。
【0073】
電子部品200は、図示しない配線パターンや貫通配線(スルーホール)を介して、全ての端子部41及び42と接続されている。又、電子部品200は、入力装置1Aの外部から電源供給可能に構成されている。
【0074】
抵抗部31及び端子部41を被覆するように基材10の上面10aにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。又、抵抗部32、端子部42、及び電子部品200を被覆するように基材10の下面10bにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗部31及び32、端子部41及び42、並びに電子部品200に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗部31及び32、端子部41及び42、並びに電子部品200を湿気等から保護することができる。
【0075】
このように、入力装置1Aでは、基材10に電子部品200が実装されているため、配線パターンや貫通配線(スルーホール)を介して、端子部41及び42と電子部品200とを短距離で接続可能である。そのため、小型の入力装置1Aを実現できる。この構造は、特に、抵抗体と電子部品とをリード線を用いてはんだ等で接続することが困難な小型の入力装置に有効である。
【0076】
又、端子部41及び42から電子部品200までの距離を短くすることにより、ノイズ耐性を向上することができる。
【0077】
なお、
図5では、基材10の下面10bに電子部品200を実装する例を示したが、基材10の上面10aに電子部品200を実装してもよい。又、電子部品200は、アナログフロントエンド部21の機能を有するICには限定されず、例えば、アナログフロントエンド部21及び信号処理部22の機能を有するICとしてもよい。
【0078】
すなわち、制御装置2の一部又は全部が入力装置1Aと一体化されてもよい。ここで、入力装置1Aと一体化するとは、制御装置2に使用される基材や電子部品の一部又は全部と、入力装置1Aに使用される基材や電子部品の一部又は全部とが兼用されることを含む。
【0079】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、基材の一方の面側又は他方の面側に実装された太陽電池を有する入力装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0080】
図6は、第1の実施の形態の変形例2に係る入力装置を例示する断面図であり、
図2に対応する断面を示している。
図6を参照するに、入力装置1Bは、太陽電池300が実装された点が、入力装置1A(
図5参照)と相違する。
【0081】
太陽電池300は、基材10の下面10b側に実装されている。具体的には、基材10の下面10bに抵抗部32、端子部42、及び電子部品200を被覆するようにカバー層60が設けられ、太陽電池300はカバー層60の下面に配置されている。太陽電池300は、図示しない配線パターンや貫通配線(スルーホール)を介して電子部品200と接続されており、電子部品200に給電することができる。
【0082】
太陽電池300は、例えば、アモルファスシリコン系、シリコン結晶系、又は化合物系(例えば、CIGS)のフレキシブル太陽電池をカバー層60上にラミネートしたものである。なお、CIGSとは、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及びセレン(Se)を主成分とする化合物系太陽電池である。
【0083】
このように、入力装置1Bでは、電子部品200に給電する電源である太陽電池300が実装されている。これにより、外部からの給電を不要とした、小型の入力装置1Bを実現できる。
【0084】
入力装置1Bにおいて、抵抗体30を薄膜化することで、入力装置1Bを特に低消費電力化及び小型化することが可能である。
【0085】
すなわち、抵抗体30の材料として例えばCu−NiやNi−Crの箔を用いた場合には抵抗体30の抵抗値が1kΩ程度となるが、抵抗体30の材料として薄膜化したCr混相膜を用いた場合には抵抗体30の抵抗値を5kΩ以上にすることができる。そのため、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合には、抵抗体30に流れる電流が少なくなり、低消費電力化が可能となる。又、低消費電力化により太陽電池300から供給する電流が少なくて済むため、小型の太陽電池300を用いることが可能となり、入力装置1B全体を小型化できる。
【0086】
なお、
図6では、基材10の下面10bに太陽電池300を実装する例を示したが、基材10の上面10aに太陽電池300を実装してもよい。
【0087】
又、太陽電池300は、基材10の上面10aの抵抗部31が形成されていない領域、又は基材10の下面10bの抵抗部32が形成されていない領域に、カバー層を介さずに直接実装してもよい。
【0088】
又、太陽電池300として、フレキシブル太陽電池をラミネートする方法に代えて、カバー層等の上に、例えば、蒸着やスパッタ等により第1電極層、発電層、第2電極層等を順次積層した太陽電池を作製してもよい。
【0089】
又、電源として、太陽電池300に代えて小型バッテリー(リチウムイオン電池等)を用いてもよい。
【0090】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、入力装置の抵抗部をジグザグパターンにする例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0091】
図7は、第1の実施の形態の変形例3に係る入力装置を例示する平面図であり、
図1に対応する平面を示している。
図7を参照するに、入力装置1Cは、抵抗体30が抵抗体30Cに置換された点が、入力装置1(
図1及び
図2参照)と相違する。
【0092】
抵抗体30Cは、抵抗部31C及び32Cを含んでいる。抵抗部31Cは、1対の端子部41の間に形成されたジグザグのパターンである。又、抵抗部32Cは、1対の端子部42の間に形成されたジグザグのパターンである。抵抗部31C及び32Cの材料や厚さは、例えば、抵抗部31及び32の材料や厚さと同様とすることができる。
【0093】
このように、抵抗部31C及び32Cをジグザグパターンにすることで、直線状のパターンにした場合と比べて、1対の端子部41間の抵抗値及び1対の端子部42間の抵抗値を高くできる。その結果、押圧された際の1対の端子部41間の抵抗値の変化量及び1対の端子部42間の抵抗値の変化量が大きくなるため、押圧された位置の座標の検出精度を更に向上できると共に、押圧力を更に高感度で検出できる。
【0094】
又、1対の端子部41間の抵抗値及び1対の端子部42間の抵抗値を高くできるため、入力装置1Cを低消費電力化することが可能である。
【0095】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0096】
例えば、入力装置1では、絶縁層である基材10の上面10aに抵抗部31を設け、下面10bに抵抗部32を設ける例を示したが、絶縁層の一方の側に抵抗部32を設け、他方の側に抵抗部32を設ける構造であれば、これには限定されない。例えば、基材10の上面10aに抵抗部31を設け、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆する絶縁層を設け、絶縁層上に抵抗部32を設けてもよい。又、抵抗部31を設けた第1基材と、抵抗部32を設けた第2基材を作製し、抵抗部31と抵抗部32を内側に向けて、絶縁層を挟んで抵抗部31を設けた第1基材と抵抗部32を設けた第2基材を貼り合わせてもよい。又、抵抗部31を設けた第1基材と、抵抗部32を設けた第2基材を作製し、抵抗部31を設けた第1基材と抵抗部32を設けた第2基材を同一方向に積層してもよい。入力装置1A、1B、及び1Cについても同様である。