特許第6660448号(P6660448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660448
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】アクチュエータ限界コントローラ
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   F15B11/00 V
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-207005(P2018-207005)
(22)【出願日】2018年11月2日
(62)【分割の表示】特願2016-572618(P2016-572618)の分割
【原出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2019-52760(P2019-52760A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】62/028,546
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/489,778
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518096722
【氏名又は名称】ボストン ダイナミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ブランケスプール,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】リジー,アルフレッド
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0228323(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00597657(EP,A1)
【文献】 特開2000−337305(JP,A)
【文献】 米国特許第04896582(US,A)
【文献】 特開平09−196004(JP,A)
【文献】 特開2004−293628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャンバおよび第2のチャンバを備える液圧アクチュエータのピストンを指令されたスピードで指令された方向に移動させる指令を、コントローラにおいて受け取ること、
前記コントローラによって、前記指令に基づいて弁アセンブリに指令信号を送出することであって、前記弁アセンブリが、加圧された作動流体の源を、選択的に、前記第1のチャンバに結合するか、または前記第1のチャンバから分離し、前記第2のチャンバを、選択的に、戻り管路に結合するか、または前記戻り管路から分離するように構成され、前記信号が、加圧された作動流体の前記源を前記弁アセンブリに結合し、それによって前記加圧された作動流体を前記第1のチャンバに提供するように構成され、前記信号はまた、前記第2のチャンバを前記戻り管路に結合し、それによって前記第2のチャンバ内の作動流体が前記第2のチャンバから前記戻り管路に流れることを許して、前記ピストンを前記指令されたスピードで前記指令された方向に運動させるように構成されること、
前記コントローラにおいて、前記液圧アクチュエータのエンドストップに対する前記ピストンの位置を示す位置情報を受け取ること、
前記弁アセンブリに送出された前記指令信号を、前記コントローラによって前記位置情報に基づいて変更することであって、前記変更された指令信号が、前記ピストンの前記位置が前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに近づくように移動するにつれて、前記ピストンの実際のスピードを低減させるように構成されること
を含
前記変更された指令信号によって、前記弁アセンブリは、前記第2のチャンバ内の前記作動流体が前記ピストンに対して前記液圧アクチュエータの前記エンドストップから遠ざかる方向の力を加えるようにし、前記ピストンの前記位置が前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに近づくように移動するにつれて、前記ピストンに対する前記力が増大し、前記ピストンに対する前記力が、前記ピストンの前記実際のスピードに基づく、方法。
【請求項2】
前記ピストンが第1の位置から前記液圧アクチュエータの前記エンドストップにより近い第2の位置に移動するにつれて、前記ピストンに対する前記力が増大する、請求項
記載の方法。
【請求項3】
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに対する前記ピストンの前記位置がしきい距離を満たすかどうか決定すること、
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに対する前記ピストンの前記位置が前記しきい距離を満たすとき、前記ピストンに対する前記力をしきい力まで増大させること
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップまでの前記ピストンの前記距離が前記しきい距離を満たすとき、前記しきい距離を満たす、前記液圧アクチュエータの前記エンドストップまでの前記ピストンの前記距離内における前記ピストンの一切の運動について、前記ピストンに対する最大力を維持することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記弁アセンブリがスプールを備え、前記弁アセンブリに送出された前記指令信号によって、前記弁アセンブリが前記スプールを所与の位置に移動させ、前記スプールの前記所与の位置が、前記加圧された作動流体がそこを通って前記第1のチャンバに流れる第1の開口の第1のサイズと、前記第2のチャンバ内の前記作動流体がそこを通って前記第2のチャンバから押し出されて前記戻り管路に流れる第2の開口の第2のサイズとに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記弁アセンブリが、
前記第1のチャンバを加圧された作動流体の前記源に結合する第1の弁と、
前記第2のチャンバを前記戻り管路に結合する第2の弁であり、前記第1の弁から独立して制御される第2の弁と
を備え、前記弁アセンブリに送出される前記指令信号が、前記第1の弁に対する第1の弁信号と、前記第2の弁に対する第2の弁信号とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の弁信号が、前記加圧された作動流体の指令された量の流れを前記第1の弁を通して前記第1のチャンバに流入させるように構成され、前記ピストンの前記実際のスピードが、前記第1の弁を通って前記第1のチャンバに流入する前記加圧された作動流体の前記流れの量に基づく、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の信号が、前記液圧アクチュエータの前記エンドストップから遠ざかる力を前記ピストンに対して加える指令された圧力レベルを、前記第2のチャンバ内に生じさせるように構成される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
加圧された作動流体の源と、
戻り管路と、
液圧アクチュエータと
を備えるシステムであって、前記液圧アクチュエータが、
シリンダキャビティおよび中心軸方向を規定するシリンダであって、エンドストップを有するシリンダと、
前記シリンダの前記シリンダキャビティ内に摺動可能に配置されたピストンであって、前記ピストンが、ピストンヘッド、および前記ピストンヘッドから前記シリンダの前記中心軸方向に沿って伸びるロッドを有し、前記ピストンヘッドが、前記シリンダキャビティを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割する、ピストンと
を備え、前記システムがさらに、
加圧された作動流体の前記源を、選択的に、前記第1のチャンバに結合するか、または前記第1のチャンバから分離し、前記第2のチャンバを、選択的に、前記戻り管路に結合するか、または前記戻り管路から分離するように構成された弁アセンブリと、
前記弁アセンブリと通信するコントローラと
を備え、前記コントローラが、
前記液圧アクチュエータの前記ピストンを指令されたスピードで指令された方向に移動させる指令を受け取ること、
前記指令に基づいて前記弁アセンブリに指令信号を送出することであって、前記指令信号が、加圧された作動流体の前記源を前記弁アセンブリに結合し、それによって前記加圧された作動流体を前記第1のチャンバに提供するように構成され、前記指令信号はまた、前記第2のチャンバを前記戻り管路に結合し、それによって前記第2のチャンバ内の作動流体が前記第2のチャンバから前記戻り管路に流れることを許して、前記ピストンを前記指令されたスピードで前記指令された方向に運動させるように構成されること、
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに対する前記ピストンの位置を示す位置情報を受け取ること、
前記弁アセンブリに送出された前記指令信号を前記位置情報に基づいて変更することであって、前記変更された指令信号が、前記ピストンの前記位置が前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに近づくように移動するにつれて、前記ピストンの実際のスピードを低減させるように構成されること
を含む動作を実行するように構成され、
前記変更された指令信号によって、前記弁アセンブリは、前記第2のチャンバ内の前記作動流体が前記ピストンに対して前記液圧アクチュエータの前記エンドストップから遠ざかる方向の力を加えるようにし、前記ピストンの前記位置が前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに近づくように移動するにつれて、前記ピストンに対する前記力が増大し、前記ピストンに対する前記力が、前記ピストンの前記実際のスピードに基づく、システム。
【請求項10】
前記ピストンが第1の位置から前記液圧アクチュエータの前記エンドストップにより近い第2の位置に移動するにつれて、前記ピストンに対する前記力が増大する、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラの前記動作が、
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに対する前記ピストンの前記位置がしきい距離を満たすかどうか決定すること、
前記液圧アクチュエータの前記エンドストップに対する前記ピストンの前記位置が前記しきい距離を満たすとき、前記ピストンに対する前記力をしきい力まで増大させること
をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラの前記動作が、前記液圧アクチュエータの前記エンドストップまでの前記ピストンの前記距離が前記しきい距離を満たすとき、前記しきい距離を満たす、前記液圧アクチュエータの前記エンドストップまでの前記ピストンの前記距離内における前記ピストンの一切の運動について、前記ピストンに対する最大力を維持することをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記弁アセンブリがスプールを備え、前記弁アセンブリに送出された前記指令信号によって、前記弁アセンブリが前記スプールを所与の位置に移動させ、前記スプールの前記所与の位置が、前記加圧された作動流体がそこを通って前記第1のチャンバに流れる第1の開口の第1のサイズと、前記第2のチャンバ内の前記作動流体がそこを通って前記第2のチャンバから押し出されて前記戻り管路に流れる第2の開口の第2のサイズとに関連する、請求項に記載のシステム。
【請求項14】
前記弁アセンブリが、
前記第1のチャンバを加圧された作動流体の前記源に結合する第1の弁と、
前記第2のチャンバを前記戻り管路に結合する第2の弁であり、前記第1の弁から独立して制御される第2の弁と
を備え、前記弁アセンブリに送出される前記指令信号が、前記第1の弁に対する第1の弁信号と、前記第2の弁に対する第2の弁信号とを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の弁信号が、前記加圧された作動流体の指令された量の流れを前記第1の弁を通して前記第1のチャンバに流入させるように構成され、前記ピストンの前記実際のスピードが、前記第1の弁を通って前記第1のチャンバに流入する前記加圧された作動流体の前記流れの量に基づく、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2の信号が、前記液圧アクチュエータの前記エンドストップから遠ざかる力を前記ピストンに対して加える指令された圧力レベルを、前記第2のチャンバ内に生じさせるように構成される、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 関連出願の相互参照
本出願は、2014年9月18日に出願された「Actuator Limit Controller」という名称の米国特許出願第14/489,778号、および2014年7月24日に出願された「Position−Force Control of an Actuator」という名称の米国特許仮出願第62/028,546号の優先権を主張するものである。これらの出願は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
[0002] 政府の権利
本発明は、DARPAによって与えられた契約第HR00011−10−C−0025号の下、米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明に関して一定の権利を有することができる。
【背景技術】
【0003】
[0003] 液圧システムは、ポンプなどの作動流体源から供給された作動流体によって動力が供給されるアクチュエータを含むことがある。アクチュエータへの作動流体の流れおよびアクチュエータからの作動流体の流れを制御するために弁を使用することができる。例えば、この弁は、ポンプからアクチュエータへの流れおよびアクチュエータからタンクまたはリザーバへの流れを制御することができる。この弁は、流れに対する抵抗を変動させてアクチュエータの運動のスピードおよび方向を制御するように制御される。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本開示は、アクチュエータの位置−力制御に関する実施形態を記述する。一態様では、本開示が方法を記述する。この方法は、液圧アクチュエータのピストンを所与のスピードで所与の方向に移動させる指令をコントローラにおいて受け取ることを含む。この液圧アクチュエータは、第1のチャンバおよび第2のチャンバを含む。弁アセンブリが、加圧された作動流体の源を第1のチャンバに結合し、第2のチャンバを戻り管路に結合する。この方法はさらに、加圧された作動流体を第1のチャンバに提供するように、また、第2のチャンバ内の作動流体が第2のチャンバから戻り管路に流れることを許すように弁アセンブリを動作させて、ピストンが前記所与のスピードで前記所与の方向に運動するようにする信号を、前記指令に基づいてコントローラが提供することを含む。この方法はさらに、液圧アクチュエータのエンドストップから第1のしきい距離のところに位置する第1の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および応答して、弁アセンブリへの前記信号を、ピストンのスピードを低減させるように変更することを含む。この方法はさらに、液圧アクチュエータのエンドストップにより近い第2のしきい距離のところに位置する第2の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および応答して、弁アセンブリへの前記信号を、第2のチャンバ内の作動流体が、エンドストップから遠ざかる方向の力を、ピストンに加えるようにさらに変更することを含む。
【0005】
[0005] 他の態様では、本開示が、コントローラによって実行されたときにそのコントローラに機能を実施させる実行可能命令がその上に記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を記述する。これらの機能は、液圧アクチュエータのピストンを所与のスピードで所与の方向に移動させる指令を受け取ることを含む。この液圧アクチュエータは、第1のチャンバおよび第2のチャンバを含む。これらの機能はさらに、第1のチャンバへの作動流体の流れを制御し、第2のチャンバからの作動流体の流れを制御する弁アセンブリを動作させて、ピストンが前記所与のスピードで前記所与の方向に運動するようにする信号を、前記指令に基づいて提供することを含む。これらの機能はさらに、液圧アクチュエータのエンドストップから第1のしきい距離のところに位置する第1の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および、応答して、弁アセンブリへの前記信号を、ピストンのスピードを低減させるように変更する、第1の変更を行うことを含む。これらの機能はさらに、液圧アクチュエータのエンドストップにより近い第2のしきい距離のところに位置する第2の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および、応答して、弁アセンブリへの前記信号を、第2のチャンバ内の作動流体が、エンドストップから遠ざかる方向の力を、ピストンに加えるように変更する、第2の変更を行うことを含む。
【0006】
[0006] 他の態様では、本開示がシステムを記述する。このシステムは、加圧された作動流体の源と、戻り管路と、液圧アクチュエータシリンダとを含む。この液圧アクチュエータシリンダは、液圧アクチュエータシリンダ内に摺動可能に収容されたピストンを有し、このピストンは、ピストンヘッド、およびピストンヘッドから中心軸方向に沿って延びるロッドを含み、このピストンヘッドによって、液圧アクチュエータシリンダの内側は、第1のチャンバと第2のチャンバとに分割されている。このシステムはさらに、加圧された作動流体の源を第1のチャンバに結合し、第2のチャンバを戻り管路に結合する弁アセンブリを含む。このシステムはさらに、少なくとも1つのプロセッサと、この少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときにこの少なくとも1つのプロセッサに機能を実施させる実行可能命令がその上に記憶されたメモリとを含む。これらの機能は、ピストンを所与のスピードで所与の方向に移動させる指令を受け取ることを含む。これらの機能はさらに、加圧された作動流体を第1のチャンバに提供するように、また、第2のチャンバ内の作動流体が第2のチャンバから戻り管路に流れることを許すように弁アセンブリを動作させて、ピストンが前記所与のスピードで前記所与の方向に運動するようにする信号を、前記指令に基づいて提供することを含む。これらの機能はさらに、液圧アクチュエータシリンダのエンドストップから第1のしきい距離のところに位置する第1の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および、応答して、弁アセンブリへの前記信号を、エンドストップから遠ざかる方向の第1の力をピストンに加えてピストンのスピードを低減させるように変更する、第1の変更を行うことを含む。これらの機能はさらに、液圧アクチュエータシリンダのエンドストップにより近い第2のしきい距離のところに位置する第2の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ること、および、応答して、弁アセンブリへの前記信号を、エンドストップから遠ざかる方向の第2の力をピストンに加えてピストンのスピードをさらに低減させるように変更する、第2の変更を行うことを含む。
【0007】
[0007] 上記の概要は、例として示しただけであり、いかなる形であれ限定を意図したものではない。図および以下の詳細な説明を参照することによって、上に記載された例示的な態様、実施形態および特徴だけでなく、その他の態様、実施形態および特徴も明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】[0008]直線的に移動するように構成されたスプールを有する弁を含む、例示的な実施形態に基づく液圧回路を示す図である。
図2】[0009]例示的な実施形態に基づく例示的な液圧アクチュエータ制御システムのブロック図である。
図3】[0010]例示的な実施形態に基づく位置−力制御システムを示す図である。
図4】[0011]例示的な実施形態に基づくロボット装置400を示す図である。
図5】[0012]液圧アクチュエータを制御する、例示的な実施形態に基づく方法の流れ図である。
図6】[0013]例示的な実施形態に基づく、液圧アクチュエータのアクチュエータ限界制御を示す図である。
図7】[0014]例示的な実施形態に基づく、図3に示された位置−力制御システムの変更を示す図である。
図8】[0015]例示的な実施形態に基づく、アクチュエータ限界制御を段階的に導入するための重みの変動を示す図である。
図9A】[0016]例示的な実施形態に基づく、スプールの機械的に結合された開口を示す図である。
図9B】[0017]例示的な実施形態に基づく個別調量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0018] 以下の詳細な説明は、添付図を参照して、開示されたシステムおよび方法のさまざまな特徴および機能を説明する。添付図では、そうでないことが文脈から明らかである場合を除いて、類似の記号が類似の構成要素を識別する。本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法の実施形態は、限定を意味するものではない。開示されたシステムおよび方法のある種の態様を、多種多様な異なる構成で配置することおよび組み合わせることができることは容易に理解することができ、それらの配置および組合せは全て、本明細書において企図される。
【0010】
[0019] I.大要
液圧弁は、作動流体が液圧アクチュエータにどのように運ばれるのかを制御する電動式の弁であることがある。そのような弁は、変化するアナログまたはディジタル入力信号を、液圧アクチュエータ内での滑らかな一組の運動に変換することによって動作させることができる。
【0011】
[0020] 図1は、直線的に移動するように構成されたスプール102を有する弁100を含む、例示的な実施形態に基づく液圧回路を示す。図1は、液圧アクチュエータ(またはシリンダ)106への流れおよび液圧アクチュエータ(またはシリンダ)106からの流れを制御して、液圧アクチュエータ106のピストン108の運動を制御する弁100を示す。ピストン108は、液圧アクチュエータ106内に摺動可能に収容されており、このピストンは、ピストンヘッド109A、およびピストンヘッド109Aから中心軸方向に沿って延びるロッド109Bを含む。したがって、ピストンヘッド109Aによって、液圧アクチュエータ106の内側は、第1のチャンバ112と第2のチャンバ114とに分割されている。
【0012】
[0021] スプール102の軸方向位置が、圧力源110から、供給管路を通って、液圧アクチュエータ106の2つのチャンバ112および114のうちの一方のチャンバに流れる流れを制御し、もう一方のチャンバから押し出されて低圧リザーバまたはタンク116に流れる流体の流れを制御する。例えば、図1に示されているように、スプール102は、所与の直線位置まで動かされて、圧力源110から開口118を通ってチャンバ114へ流れる流れを許し、開口120を通してチャンバ112から押し出された流体が、戻り管路を通ってリザーバ116に流れることを許す。スプール102を移動させる目的には、電気ソレノイド、ステッパモータ、液圧アクチュエータまたは任意の他の作動装置を使用することができる。
【0013】
[0022] したがって、スプール102を図1に示された位置に移動させたことに応答して、ピストン108は(左へ)移動することができる。開口118および120の対応するそれぞれのサイズは、スプール102の軸方向位置によって決まる。すなわち、スプール102の軸方向位置が、弁100を通過する流れの量、および弁100を通過している間に流れが受ける絞りの程度を決定する。このようにして、スプール102の軸方向位置は、ピストン108の運動のスピードに影響を与え、ピストン108の運動のスピードを制御する。
【0014】
[0023] 例示的ないくつかの用途では、ピストン108が、ハイスピードで移動するように構成されることがある。ピストン108がハイスピードで動作するときには、ピストン108が突然に止まった場合、例えば、ピストン108が、液圧アクチュエータ106のエンドストップ122に到達した場合、またはピストン108が運動方向を変化させた場合に、大きな力が生み出されることがある。それらの力は大きいことがあり、その結果、機械的構成要素内に大きな応力が生じることがあり、そのことが構成要素の破損もしくは故障、もしくは摩耗の加速につながることがあり、または、その結果、液圧構成要素内の圧力が急変することがあり、そのことが構成要素の破損および故障につながることがある。
【0015】
[0024] いくつかの例では、液圧アクチュエータ106のエンドストップ122に到達する前にピストン108を減速させることによって、液圧システムに対するこれらの応力の影響および負の影響を低減させる。一例として、液圧アクチュエータ106のコントローラは、ピストン108を所与のスピードで所与の方向に移動させる指令を受け取る。この指令に応答して、圧力源110および弁100に信号を送って、指令されたスピードでピストン108を移動させるように、コントローラを構成することができる。コントローラは、閉ループフィードバック速度制御を実現することができる。この閉ループフィードバック速度制御では、センサが、ピストン108のスピードに関連した情報をコントローラに提供し、この速度フィードバックに基づいて、コントローラが、指令されたスピードを維持する信号を弁100に提供する。
【0016】
[0025] 指令されたスピードでの通常動作は、例えば液圧アクチュエータ106のエンドストップ122から第1のしきい距離のところに位置する第1の位置にピストンヘッド109Aが到達するまで続く。第1の位置に到達すると、コントローラは、このスピード指令を、ピストン108の運動を減衰させ、ピストン108を減速させるように変更、補足またはオーバライドすることができる。この第1の位置および第1のしきい距離は、液圧アクチュエータ106のサイズおよびストローク長(例えば液圧アクチュエータ106の一端から他端までピストン108が運行する距離)に基づくことができる。例えば、ストロークが80ミリメートル(mm)である場合には、第1のしきい距離を6mmとして、ピストン108がエンドストップ122から6mm離れているときに、コントローラが、弁100への指令を、ピストン108を減速させるように変更することができるようにすることができる。他の例として、ストロークが45mmである場合には、第1のしきい距離を6mmとすることができる。
【0017】
[0026] この減衰モードでの動作(例えば低減されたスピードでピストン108を動作させること)は、エンドストップ122から第2のしきい距離のところに位置するエンドストップ122により近い第2の位置にピストンヘッド109Aが到達するまで続けることができる。例えば、ストロークが80mmまたは45mmである場合には、第2のしきい距離を4mmとすることができる。これらの数値は、例示だけを目的とした単なる例であり、アクチュエータが使用される用途のタイプおよびストローク長に基づく他のしきい距離も企図される。
【0018】
[0027] ピストンヘッド109Aが第2の位置(例えばエンドストップ122から4mm離れた位置)に到達すると、コントローラはさらに、弁100への信号を、縮小しているチャンバ112内の作動流体が、エンドストップ122から遠ざかる方向の力を、ピストン108に力を加えるように、変更することができる。加える力は、ばねのような力(すなわち、あたかもばねがピストン108を押しているかのような力)とすることができ、この力は、ピストンがエンドストップ122にどれくらい近いのかに基づくことができる。このようにすると、ピストン108をさらに減速させることができ、コントローラは、ピストン108がエンドストップ122に到達したときに任意の衝撃力が生じることを防ぐことができる。
【0019】
[0028] II.例示的な液圧アクチュエータ制御システム
図2は、一実施形態に基づく例示的な液圧アクチュエータ制御システム200のブロック図を示す。システム200は監視コントローラ201を含む。監視コントローラ201は、位置−力制御モジュール202、位置−力制御モジュール202と通信する速度フィードフォワードモジュール204、速度フィードフォワードモジュール204と通信するアクチュエータ限界制御モジュール206、アクチュエータ限界制御モジュール206と通信する圧力解放モジュール208を含む。いくつかの例では、全てのモジュール202、204、206および208が互いに通信することができる。例えば、速度フィードフォワードモジュール204、アクチュエータ限界制御モジュール206および圧力解放モジュール208は、位置−力制御モジュール202と通信することができる。
【0020】
[0029] 液圧アクチュエータ106のピストン108を所与のスピードで所与の方向に移動させる指令210を受け取るように、監視コントローラ201を構成することができる。この指令に基づいて、監視コントローラ201は、弁100を動作させる信号212を提供する。いくつかの例では、監視コントローラ201がさらに、加圧された作動流体を弁100に提供する(例えば特定の量の流れを特定の圧力で提供する)ように圧力源110を動作させる信号216を提供する。弁100は、信号212に基づいて作動して、液圧アクチュエータ106に作動流体の流れを提供する。したがって、弁100は、(例えば開口118を通した)圧力源110から液圧アクチュエータ106への流れ、および(例えば開口120を通した)液圧アクチュエータ106からタンクまたはリザーバ116への流れを制御する。具体的には、弁100へのこの信号は、スプール102の位置を決定することができる。スプールの位置は、開口118および120の対応するそれぞれのサイズを決定する。開口118または120を通したこの流れは、下式によって決定することができる。
【0021】
【数1】

上式で、Qは、所与の開口(すなわち開口118または開口120)を通過する流れ、Kは、所与の開口のサイズによって決まる変数、ΔPは、所与の開口の前後の圧力差(すなわち、所与の開口を通過する前の作動流体の圧力から、その所与の開口を通過した後の作動流体の圧力を引いた値)である。弁100に提供されるこの信号は、スプール102の位置を規定し、それに従って、開口118および120のサイズ、ならびにそれぞれの開口に対する変数Kを規定する。すなわち、弁100に提供されるこの信号と変数Kとの間には直接的な関係がある。したがって、弁100への信号は、開口118および120を横切る流れの量を決定する。一例では、圧力が補償された弁において、所与の開口の前後のΔPを一定に保つことができ、このようにすると、弁100に提供される信号(すなわち変数K)と所与の開口を横切る流れの量との間の関係が直線関係または比例関係になる。したがって、監視コントローラ201は、ピストン108を所与のスピードで所与の方向に移動させる指令を受け取り、それに従って、開口118および120のサイズを規定するために弁100に提供する信号を決定する。
【0022】
[0030] 位置−力制御モジュール202は、ピストン108の位置および速度を制御する閉ループフィードバック制御を実現するように構成することができる。ピストン108が外部環境に加える力を制御する閉ループフィードバック制御を実現するように、位置−力制御モジュール202を構成することもできる。位置−力制御モジュールの詳細については後に図3で説明する。
【0023】
[0031] 速度フィードフォワードモジュール204は、速度フィードフォワード制御構造に基づく弁100への出力を提供するように構成することができる。例えば、アクチュエータが力制御モードで動作している場合、速度フィードフォワードモジュール204は、弁100を開いて、速度推定値および所望の力に基づく抵抗(制動が所望の場合)または助力(正の仕事が所望の場合)を有する流れを可能にする出力信号を提供することができる。他の例では、アクチュエータが位置制御モードで動作している場合に、所望の速度および力ならびに液圧アクチュエータ106のモデルに基づいて、弁100に対するフィードフォワード指令をセットするように、速度フィードフォワードモジュール204を構成することができる。
【0024】
[0032] アクチュエータ限界制御モジュール206は、ピストン108が物理的な限界の近くにあるとき、すなわちピストン108がエンドストップ122の近くにあるときに衝突を低減させまたは防ぐために、他のモジュールからの指令を変更またはオーバライドするように構成することができる。
【0025】
[0033] 圧力解放モジュール208は、液圧アクチュエータ106の一方または両方のチャンバ112および114内の圧力が危険なレベルにまで高まっていることを、例えば圧力センサを介して検出するように構成することができる。応答して、圧力解放モジュール208は、圧力を逃がし、損傷を防ぐために、弁100への指令を変更またはオーバライドすることができる。
【0026】
[0034] したがって、指令210に基づいて弁100を制御する信号を決定するように位置−力制御モジュール202を構成することができ、速度フィードフォワードモジュール204、アクチュエータ限界制御モジュール206および圧力解放モジュール208のうちの1つまたは複数のモジュールによってこの信号を変更して、弁100への信号212を生成することができる。液圧アクチュエータ制御システム200の優先順位を決定し、それぞれのモジュール204、206および208に重みを割り当てるように、監視コントローラ201を構成することができる。一例では、この優先順位付けが、特定の液圧システムの安全要件または性能要件に基づく。例えば、液圧アクチュエータ106のピストン108がハイスピードでエンドストップ122に当たることを防ぐことの方が、チャンバ112と114のうちの一方のチャンバ内の圧力が増大して、所与の時間、しきい値を超えたことに応答することよりも優先順位が高い場合には、位置−力制御モジュール202によって生成された信号を変更する際に、圧力解放モジュール208による変更よりも、アクチュエータ限界制御モジュール206による変更に、より大きな重みを割り当てることができる。
【0027】
[0035] このようにすると、この優先順位付けに基づいて、監視コントローラ201は、液圧アクチュエータ106の動作モード、圧力レベルの突然の増大、エンドストップ122までの近さなどの因子を考慮しつつ、ピストン108を作動させる弁100への信号212(および場合によっては圧力源110への信号216)を提供することができる。
【0028】
[0036] システム200の構成要素は、互いに相互接続され、かつ/または対応するそれぞれのシステムに結合された他の構成要素と相互接続された形で機能するように構成することができる。監視コントローラ201の記載された機能または構成要素のうちの1つまたは複数の機能または構成要素を分割して、追加の機能構成要素または物理構成要素を提供することができ、または、そのような1つまたは複数の機能または構成要素を組み合わせて、より少数の機能構成要素または物理構成要素にすることができる。他のいくつかの例では、図2によって示された例に、追加の機能構成要素および/または物理構成要素を追加することができる。さらに、位置−力制御モジュール202、速度フィードフォワードモジュール204、アクチュエータ限界制御モジュール206および圧力解放モジュール208はいずれも、本明細書に記載された論理機能を実現する1つもしくは複数の命令を含むプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、ディジタル信号処理プロセッサ(DSP)など)を含むことができ、または、これらのモジュールはいずれも、本明細書に記載された論理機能を実現する1つもしくは複数の命令を含むプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、ディジタル信号処理プロセッサ(DSP)など)の形態で提供することができる。監視コントローラ201はさらに、そのプログラムコードを記憶するため、例えばディスクドライブまたはハードドライブを含む記憶装置など、任意のタイプのコンピュータ可読媒体(非一時的媒体)またはメモリを含むことができる。一例では、システム200が、他のシステムに含まれている。
【0029】
[0037] III.例示的な位置−力制御システム
図3は、例示的な実施形態に基づく位置−力制御システム300を示す。位置−力制御システム300は例えば、図2に記載された位置−力制御モジュール202によって実現することができる。図3が示すように、位置−力制御システム300は、3つの制御ループ、すなわち位置制御ループ302、速度制御ループ304および力制御ループ306を含むことができる。
【0030】
[0038] 位置制御ループ302は、液圧アクチュエータ106のピストン108の所望の位置とピストン108の測定された位置との差に基づいて指令を生成するように構成されている。例えば、ピストン108(例えばピストンヘッド109Aまたはロッド109B)に位置センサを結合することができ、その位置センサを、ピストン108の位置を示す情報を監視コントローラ201に提供するように構成することができる。この差は、接合点308で決定され、位置の誤り309を表す。位置の誤り309は、比例ゲイン310によってゲイン調整されて、調整された信号311を形成する。さらに、位置の誤り309は、ブロック312で積分されて、積分された誤り信号313を形成する。誤り信号313は、比例ゲイン314によってゲイン調整されて、調整された信号315を形成する。信号311と信号314は、求和接合点316で求和されて、信号317を形成する。
【0031】
[0039] 速度制御ループ304は、ピストン108の所望の速度とピストン108の測定または推定された速度との差に基づいて指令を生成するように構成されている。一例では、ピストン108(例えばピストンヘッド109Aまたはロッド109B)に速度センサが結合されており、その速度センサが、ピストン108の速度を示す情報を監視コントローラ201に提供するように構成されている。他の例では、ピストン108の結合された位置センサから得られたピストン108の測定された位置を微分することによってピストン108の速度を推定するように、監視コントローラ201が構成されている。この速度差は、接合点318で決定され、速度の誤り319を表す。速度の誤り319は、比例ゲイン320によってゲイン調整されて、調整された信号321を形成する。さらに、所望の速度が、フィードフォワードゲイン322によってゲイン調整されて、信号323を形成する。推定された速度は、比例ゲイン324によってゲイン調整されて、調整された信号325を形成する。信号321、信号323および信号325は、求和接合点326で求和されて、信号327を形成する。
【0032】
[0040] 力制御ループ306は、ピストン108が外部環境に加える所望の力とピストン108の測定された力との差に基づいて指令を生成するように構成されている。一例では、ロッド109Bの一端に力センサ(例えばロードセル)を結合することができ、その力センサは、ピストン108が受けた力を示す情報を監視コントローラ201に提供するように構成することができる。このピストン108が受けた力は、ピストン108が外部環境に加えた力(すなわちピストン108が外部環境に加えた力の反作用)を示す。他の例では、液圧アクチュエータ106のチャンバ112および114に圧力センサが結合されることがある。この圧力センサから受け取った情報に基づいて、ピストン108が加えた力を決定するように、監視コントローラ201または位置−力制御モジュール202を構成することができる。例えば、チャンバ112内の圧力がP、チャンバ114内の圧力がP、ピストンヘッド109Aの面積がA、ロッド109Bの断面積がArodであると仮定し、ピストン108が引っ込んでいる(すなわちチャンバ112が縮小しており、チャンバ114が拡大している)と仮定すると、ピストン108が加える力は、下式によって推定することができる。
力=P(A−Arod)−P (2)
上式で、A−Arodは、チャンバ114内のピストン108の環形の面積を表す。ピストン108が突き出ている(すなわちチャンバ112が縮小しており、チャンバ114が拡大している)場合、ピストンが外部環境に加える力は、下式によって推定することができる。
力=P−P(A−Arod) (3)
【0033】
[0041] この力の差は、接合点328で決定され、力の誤り329を表す。力の誤り329は、比例ゲイン330によってゲイン調整されて、調整された信号331を形成する。
【0034】
[0042] 力制御ループ306によって生成された信号331、速度制御ループ304によって生成された信号327および位置制御ループ302によって生成された信号317は、求和接合点332で求和されて、信号333を形成する。信号333の最大変化率を規定するスルーレート制限ブロック334によって、信号333を制限することができる。スルーレート制限ブロック334はしたがって、弁100に送られる信号の突然の変化を防ぐことができる。このようにすると、ピストン108の運動が滑らかになることがあり、ピストン108の運動がぎくしゃくした振舞いを示さないことがある。信号333の変化率が、スルーレート制限ブロック334によって規定された最大変化率を超えていない場合、信号333は、スルーレート制限ブロック334によって変更されない。したがって、指令335は、信号333と同じであることがあり、または、指令335が、スルーレート制限ブロック334による信号333の変更を表すこともある。
【0035】
[0043] 制御ループ302、304および306は、例示だけを目的とした単なる例であり、弁100に信号を提供し、液圧アクチュエータ106を制御する他の制御戦略を実現することもできる。さらに、いくつかの例では、所与の時点において、図3に示された制御構造の全ての構成要素が活動中であるわけでない。液圧アクチュエータ106の条件および液圧アクチュエータ106によって制御されている物体の条件に基づいて、いくつかの構成要素は活動中であることがあり、他のいくつかの構成要素は活動中でないことがある。
【0036】
[0044] 図4は、例示的な実施形態に基づくロボット装置400を示す。ロボット装置400は、四つ足の動物の運動をまねる。ロボット装置400は、ロボット装置400の胴体404に接続された脚402A、脚402B、脚402C、脚402Dを含む。ロボット装置400はさらに、ロボット装置400のコンピューティングシステム(例えば監視コントローラ201)にセンサデータを提供するように構成されたセンサを含むことができる。例示的な他の実施態様では、ロボット装置400が、より多数の、またはより少数の構成要素を含むことができ、図4に示されていない構成要素を含むことができる。
【0037】
[0045] ロボット装置400は、伸ばすことができる4本の脚402A〜402Dを有するように示されている。他の例では、ロボット装置400が、それよりも多数の、またはそれよりも少数の脚を含むことができる。さらに、脚402A〜402Dの構成、位置および/または構造は、例示的な実施態様によって変動することがある。脚402A〜402Dは、ロボット装置400が移動することを可能にする。さまざまな運行技法を実施することを可能にするため、多数の自由度で動作するように脚402A〜402Dを構成することができる。
【0038】
[0046] ロボット装置400は、さまざまなタイプのインタフェースを介して、1人もしくは数人のユーザおよび/または他のロボット装置と通信することができる。例示的な1つの実施態様では、ロボット装置400が、ジョイスティックまたは類似のタイプのインタフェースを介してユーザから入力を受け取ることができる。脚402A〜402Dを制御するアクチュエータへの力指令、位置指令および速度指令を、ジョイスティックインタフェースから受け取った入力を介して受け取るように、コンピューティングシステムを構成することができる。同様に、ロボット装置400は、モバイル装置などの他のタイプのインタフェースを介して入力を受け取り、ユーザと通信することもできる。他の例では、ロボット装置400が自律装置であり、特定の方式で移動し特定の作業を実施するように脚402A〜402Dを制御するようロボット装置400が構成されることがある。
【0039】
[0047] 一例では、ロボット装置400の4本の脚402A〜402Dがそれぞれ、液圧アクチュエータ106などの対応するそれぞれの液圧アクチュエータによって制御されることがある。例えば、所与の液圧アクチュエータは、対応する脚を胴体404に接続する関節を制御することができる。所与の液圧アクチュエータのピストンが突き出たり、引っ込んだりすると、関節が回転し、対応する脚が動く。
【0040】
[0048] 異なる歩行の機構に従って脚402A〜402Dを機械的に制御することによって、脚402A〜402Dは、ロボット装置400がさまざまなスピードで運行することを可能にすることができる。歩行は、動物、ロボット装置または他の機械構造体の肢の移動のパターンである。さまざまな歩行を実施するように脚402A〜402Dを動作させることによって、ロボット装置400は歩き回ることができる。歩行の例には、ウォーク、トロット、ギャロップ、バウンド、ランなどがある。ロボット装置400は、さまざまな歩行を使用して環境内を運行することができ、このことは、スピード、地形、操作の必要性および/またはエネルギー効率に基づいて歩行を選択することを含むことができる。複数の歩行を切り換えるように、ロボット装置400を構成することができる。
【0041】
[0049] 一例では、脚402A〜402Dのうちの1本の脚の状態に基づいて、図3に示された制御システムのいくつかの構成要素が活動中であり、別の構成要素が活動中でない。例えば、ロボット装置400の図4に示された姿勢では、脚402Dが地面に接しており、脚402Dは「スタンス」モードにあると言うことができる。脚402Aは地面に接しておらず、空中でスイングしている。脚402Aは「スイング」モードにあると言うことができる。例示のための一例として、脚402D脚が「スタンス」モードにある間、脚402Aを制御するアクチュエータを制御する制御システムの積分ブロック312、ゲインブロック314、フィードフォワードゲインブロック322およびゲインブロック320は非活動中であり、残りの構成要素は活動中である。脚402A脚が「スイング」モードにある間、積分ブロック312、ゲインブロック314およびゲインブロック324は非活動中であることができ、残りの構成要素は活動中であることができる。これらの例は例示だけが目的であり、本明細書では他の構成も企図される。ロボット装置400が、ウォークしているのか、トロットしているのか、ギャロップしているのか、バウンドしているのか、ランしているのかなどに基づいて、脚402A〜402Dの他のいくつかの動作モードが可能である。これらのそれぞれのモードで、脚402A〜402Dは、異なる動作モードを経ることができる。図3に示された制御システムの構成要素は、所与の時点において所与の脚が経験している特定のモードに基づいて、活動中であること、または非活動中であることがある。
【0042】
[0050] さらに、図2に関して上で説明したとおり、速度フィードフォワードモジュール204、アクチュエータ限界制御モジュール206および圧力解放モジュール208のうちの1つまたは複数のモジュールによって、指令335を変更することができ、変更された信号は弁100に提供される。一例では、速度フィードフォワードモジュール204、アクチュエータ限界制御モジュール206および圧力解放モジュール208のうちの1つまたは複数のモジュールによって指令335を変更することが、図3に示された制御システムに構成要素を追加すること、図3に示された制御システムの構成要素を活動化すること、および/または図3に示された制御システムの構成要素を非活動化することを含む。例えば、ピストン108が物理的な限界の近くにあるときに、次に図5図8で説明するようにして衝突を低減させまたは防ぐために、図3に示された制御システムに構成要素を追加するように、アクチュエータ限界制御モジュール206を構成することができる。
【0043】
[0051] IV.例示的な方法
図5は、液圧アクチュエータを制御する、例示的な実施形態に基づく方法500の流れ図である。方法500は、ブロック502〜512のうちの1つまたは複数のブロックによって示された1つまたは複数の動作、機能または作用を含むことができる。これらのブロックは逐次的な順序で示されているが、いくつかの場合には、これらのブロックを、並行して実施することができ、かつ/または本明細書に記載された順序とは異なる順序で実施することができる。さらに、所望の実施態様に基づいて、これらのさまざまなブロックを組み合わせてより少数のブロックにすること、これらのさまざまなブロックを分割して追加のブロックを提供すること、および/またはこれらのさまざまなブロックを省くこともできる。
【0044】
[0052] 加えて、方法500ならびに本明細書に開示された他のプロセスおよび方法に関して、この流れ図は、本発明の実施形態の1つの可能な実施態様の機能および動作を示す。この点に関して、それぞれのブロックは、そのプロセスの特定の論理機能または論理工程を実現するためのプロセッサによって実行可能な1つまたは複数の命令を含む、プログラムコードのモジュール、セグメントまたは部分を表すことがある。このプログラムコードは、例えばディスクドライブまたはハードドライブを含む記憶装置などの任意のタイプのコンピュータ可読媒体またはメモリに記憶されていることがある。このコンピュータ可読媒体は例えば、データを短期間記憶する、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュおよびランダムアクセスメモリ(RAM)のようなコンピュータ可読媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。このコンピュータ可読媒体はさらに、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、光学または磁気ディスク、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)のような2次記憶装置または永続的長期記憶装置などの非一時的媒体またはメモリを含むことができる。このコンピュータ可読媒体を、任意の他の揮発性または不揮発性記憶システムとすることもできる。このコンピュータ可読媒体は、例えばコンピュータ可読記憶媒体、有形の記憶装置または他の製品と考えることができる。これらのコンピュータ可読媒体、プロセッサ、プログラムコードは全て、液圧システムまたは弁のコントローラに含めることができる。加えて、方法500ならびに本明細書に開示された他のプロセスおよび方法に関して、図5のそれぞれのブロックは、そのプロセスの特定の論理機能を実施するように配線された回路を表すことがある。
【0045】
[0053] ブロック502で、方法500は、液圧アクチュエータのピストンを所与のスピードで所与の方向に移動させる指令をコントローラにおいて受け取ることを含み、この液圧アクチュエータは、第1のチャンバおよび第2のチャンバを含み、弁アセンブリが、加圧された作動流体の源を第1のチャンバに結合し、第2のチャンバを戻り管路に結合する。
【0046】
[0054] このコントローラは例えば、1つまたは複数のプロセッサを備えるコンピューティングデバイスであって、この1つまたは複数のプロセッサが、コンピューティングデバイス(例えばコンピューティングデバイス内のメモリ)に記憶されたプログラム命令を実行するように構成された、コンピューティングデバイスとすることができる。このコントローラは、ジョイスティックなどの入力装置、または任意の他のタイプの入力装置と通信することができる。
【0047】
[0055] 一例では、液圧機械のユーザが、入力装置を通してコントローラに指令を提供する。このコントローラは、この指令に基づいて、チャンバ112および114を有する液圧アクチュエータ106などの液圧アクチュエータを動かす制御信号を、液圧システム(例えばポンプ、弁、アクチュエータ、タンクなど)に提供する。例えば、この指令は、液圧アクチュエータ106のピストン108を所与の方向に所与のスピードで移動させる命令を含むことができる。いくつかの例では、この指令がさらに、ピストン108の所望の速度、およびピストン108が発揮する所望の力を指定することができる。
【0048】
[0056] 他の例では、ロボット装置400の運動を制御するように構成された液圧システムを含むロボット装置400などの自律ロボット装置が、この指令を生成する。特定の作業を実行する移動指令を自律的に生成するように、ロボット装置400を構成することができる。それらの移動指令は、液圧システムのコントローラに提供することができる。このコントローラは例えば、図2に関して説明した監視コントローラ201を含むことができる。
【0049】
[0057] 弁アセンブリは、例えば弁100などの弁を含むことができるが、(例えばスプール弁、ポペット弁、ロータリ弁など)任意の他の弁構成を含むこともできる。例えば、弁アセンブリは、少なくとも4つの弁、すなわち、チャンバ112にポンプを接続する第1の弁、このポンプをチャンバ114に接続する第2の弁、チャンバ112をタンクまたはリザーバに接続する第3の弁、およびこのタンクにチャンバ114を接続する第4の弁を含むことができる。したがって、弁アセンブリは、圧力源から液圧アクチュエータへの流体の流れを制御し、液圧アクチュエータから戻り管路に押し出された流体の流れを制御する1つまたは複数の弁を含むことができる。
【0050】
[0058] いくつかの例では、圧力源がポンプであり、戻り管路が、リザーバまたはタンクに接続されることがある。しかしながら、液圧アクチュエータ106のチャンバ112とチャンバ114とが供給管路または戻り管路を介して互いに接続された再生モードでは、圧力源を、チャンバ112または114のうちの一方のチャンバとすることができ、戻り管路を、チャンバ112とチャンバ114とを互いに接続する管路とすることができる。例えば、ハイサイド再生モードでは、高圧供給管路(すなわちポンプに接続された管路)によってチャンバ112とチャンバ114とを互いに接続することができる。この場合には、この供給管路から、チャンバ112とチャンバ114のうちの第1のチャンバに流れが供給され、第2のチャンバから押し出された流れが、タンクまたはリザーバにフローバックされる代わりに、第1のチャンバにフィードバックまたは再生されることがある。この場合、戻り管路は、2つのチャンバを互いに接続する管路であり、この管路は、第2のチャンバをタンクに接続する管路とは対照をなす。同様に、他の例では、液圧アクチュエータ106が、ローサイド再生モードで動作し、重力によって助力されている間にピストン108が引っ込むことがある(図1では、チャンバ114が拡大し、チャンバ112が縮小するにつれて左に移動する)。この場合には、ピストン108を移動させるポンプからの高圧流体が必要ないことがある。チャンバ112から押し出された流体は、チャンバ114に送られて再生される。この場合、チャンバ114から見た圧力源はチャンバ112である。チャンバ112からの戻り管路は、チャンバ112をチャンバ114に接続する液圧管路とすることができる。
【0051】
[0059] ブロック504で、方法500は、加圧された作動流体を第1のチャンバに提供するように、また、第2のチャンバ内の作動流体が第2のチャンバから戻り管路に流れることを許すように弁アセンブリを動作させて、ピストンが前記所与のスピードで前記所与の方向に運動するようにする信号を、前記指令に基づいてコントローラが提供することを含む。図1および図2に記載されているように、アクチュエータ106のピストン108を所与の方向に所与のスピードで移動させる指令に基づいて、コントローラ、例えば位置−力制御モジュール202は、弁100への信号を生成することができる。この信号を、弁100を作動させる(例えばスプール102を移動させる)電気アクチュエータ(例えばモータ、ソレノイド、ロータリアクチュエータなど)に提供して、圧力源110から液圧アクチュエータ106へ流れる流れを許し、液圧アクチュエータ106から押し出された流れがリザーバ116に流れることを許す。具体的には、一例として図1を参照すると、弁100の開口118を通ってチャンバ114に流れる流れが許されて、ピストン108を左へ押す。さらに、チャンバ112から流体が押し出され、弁100の開口120を通ってリザーバ116に流れる。しかしながら、上の図2で説明したとおり、位置−力制御モジュール202によって生成された信号は、他のモジュールによって変更されることがある。例えば、ピストン108が液圧アクチュエータ106のエンドストップ122の近くにあるときに衝突を低減させまたは防ぐために、この信号、または位置−力制御モジュール202の制御構造が、アクチュエータ限界制御モジュール206によって変更されることがある。
【0052】
[0060] ブロック506で、方法500は、液圧アクチュエータのエンドストップから第1のしきい距離のところに位置する第1の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ることを含む。
【0053】
[0061] 図6は、例示的な実施形態に基づく、液圧アクチュエータ106のアクチュエータ限界制御を示す。図6に示されているように、ピストン108は左に動いている。したがって、チャンバ114は拡大しており、チャンバ112は縮小している。ピストン108に位置センサを結合し、またはピストン108(例えばピストンヘッド109Aまたはピストンロッド109B)に位置センサを埋め込むことができる。この位置センサを、ピストン108の位置を示す情報をコントローラに提供するように構成することができる。一例では、この位置センサが、チャンバ112内におけるピストンヘッド109Aの表面602の位置をコントローラに知らせることができる。
【0054】
[0062] 一例では、表面602が領域604内にある間は、すなわち液圧アクチュエータ106のエンドストップ122から第1のしきい距離608のところに位置する第1の位置606に表面602が到達する前に、位置−力制御モジュール202によって生成された信号を、アクチュエータ限界制御モジュール206による変更なしで使用して、弁を制御する。いくつかの例では、第1の位置606および第1のしきい距離608が、液圧アクチュエータ106のサイズおよびストローク長(例えば液圧アクチュエータ106の一端から他端までピストン108が運行する距離)に基づいてよい。例えば、ストロークが80mmである場合、第1のしきい距離は約6mmとすることができる。
【0055】
[0063] 図5を再び参照する。ブロック508で、方法500は、応答して、コントローラが、弁アセンブリへの前記信号を、ピストンのスピードを低減させるように変更することを含む。ピストン108(具体的には表面602)が第1の位置606に到達すると、アクチュエータ限界制御モジュール206は、位置−力制御モジュール202によって生成された信号を、ピストン108のスピードを低減させるように変更することができる。例えば、アクチュエータ限界制御モジュール206は、位置−力制御モジュール202によって生成された信号を、ピストン108の運動を「減衰させ」、ピストン108を減速させるように、変更、補足またはオーバライドすることができる。
【0056】
[0064] 図7は、例示的な実施形態に基づく、図3に示された位置−力制御システムの変更を示す。ピストン108の運動を減衰させるため、比例ゲイン702を追加しまたは活動化して、誤り信号319を調整する。例示のための一例として、比例ゲイン702は、値(1−w)を有することができる。wは、減衰重みと呼ばれることがある。したがって、ブロック702は、誤り信号319に比例ゲイン702が乗じられて信号703を形成するような態様で、誤り信号319の調整を変更する。信号703は、比例ゲイン320によって調整される。減衰重みwの値が0と1の間である場合、誤り信号319の調整の程度は低減され、したがって速度フィードバックの効果も低減される。速度フィードバックを低減させることは、ピストン108を押してエンドストップ122により近づける弁指令の一部分を減少させ、したがって弁100の開口118を小さくし、ピストン108のスピードを低減させる。したがって、速度フィードバックのこのような低減はピストン018の運動を減衰させる。このようにすると、ピストン108は、エンドストップ122に向かって依然として移動して、エンドストップ122に近い指令された特定の位置に到達するが、エンドストップに近づくスピードは低減する。
【0057】
[0065] いくつかの例では、エンドストップ122に向かって移動しているピストン108のスピードが大きいほど、ピストン108をより迅速に減速させるために、アクチュエータ限界制御モジュール206によって実現される信号の変更の程度も大きくなる。このような変更は、ピストン108に加えられる、エンドストップから離れる方向の力を効果的にシミュレートし、その力は、ピストン108のスピードに基づく。ピストン108の運動のこのような変更または減衰は、図6に示されたチャンバ112の領域610内に表面602がある間、続く。
【0058】
[0066] 図5を再び参照する。ブロック510で、方法500は、液圧アクチュエータのエンドストップにより近い第2のしきい距離のところに位置する第2の位置にピストンが到達したことを示す位置情報を受け取ることを含む。ピストン108に結合された位置センサは、液圧アクチュエータ106のエンドストップ122から第2のしきい距離614のところにある第2の位置612(図6に示されている)にピストンヘッド109Aの表面602が到達したことをコントローラに知らせることができる。例えば、ストローク長が80mm、第1のしきい距離が約6mmである場合、第2のしきい距離は約4mmとすることができる。これらの数値は、例示だけを目的とした単なる例であり、これらの距離は、液圧アクチュエータ106の特性(サイズ、ストローク長など)に基づいて変化することがある。
【0059】
[0067] ブロック512で、方法500は、応答して、コントローラがさらに、弁アセンブリへの前記信号を、第2のチャンバ内の作動流体が、エンドストップから遠ざかる方向の力を、ピストンに加えるように変更することを含む。ブロック508で説明した変更は、第1の変更と考えることができる。ピストン108(具体的には表面602)が第2の位置612に到達したときに、弁100に提供される信号を、ピストン108のスピードをさらに低減させるように変更する第2の変更を行うように、アクチュエータ限界制御モジュール206を構成することができる。ピストン108の運動のこのような変更または減衰は、図6に示されたチャンバ112の領域616内に表面602がある間、続く。一例として、変更された信号は、スプール102の位置を変化させて、ピストン108(具体的には表面602)に力を加えてピストン108の運動に対抗するチャンバ112内の特定の圧力レベルをセットする。一例では、加えられる力が、表面602がエンドストップ122に近いほどピストン108を押すこの加えられる力が大きくなるような態様の、ばねのような力(すなわち、あたかもばねがピストン108の表面602を押しているかのような力)である。このようにすると、加えられる力が、表面602とエンドストップ122との間の距離に反比例することがある。したがって、ピストン108をさらに減速させることができ、コントローラは、ピストン108がエンドストップ122に到達した場合に任意の衝撃力が生じることを防ぐことができる。
【0060】
[0068] 図7を参照する。第2の変更を行うため、アクチュエータ限界制御モジュール206はさらに、図3に示された制御システムに比例ゲイン704を追加し、または比例ゲイン704を活動化することができる。例示のための一例として、比例ゲイン704は、値(1−w)を有することができる。wは、ばね重みと呼ばれることがある。比例ゲイン704は、信号333を変更して信号705を形成する。wの値が0と1の間である場合、信号333の値は小さくなり、したがって3つの制御ループ302、304および306の効果も低減することがある。
【0061】
[0069] アクチュエータ限界制御モジュール206はさらに、図3に示された制御システムに比例ゲイン706を追加し、または比例ゲイン706を活動化することができる。推定された(または測定された)速度が、比例ゲイン706によって調整されて、調整された信号707を形成する。
【0062】
[0070] アクチュエータ限界制御モジュール206はさらに、図3に示された制御システムに比例ゲイン708を追加し、または比例ゲイン708を活動化することができる。一例では、比例ゲイン708の値はwとすることができる。比例ゲイン708には、ピストン108が発揮することができる最大力が乗じられて、信号709を形成する。この最大力は例えば、供給圧力P(圧力源110からの最大圧力)にこの圧力が作用する面積を乗じることによって決定することができる。例えば、図1および図6に示された構成では、供給圧力が、チャンバ114内のピストン108の環形のエリアに作用することになる。したがって、最大力は、下式によって決定することができる。
最大力=P(A−Arod) (4)
式(2)および(3)に関して上で述べたとおり、Aは、チャンバ112内のピストンヘッド109Aの面積、Arodは、ロッド109Bの断面積である。
【0063】
[0071] 他の例において、チャンバ112が拡大しチャンバ114が縮小するような態様で、ピストン108の運動方向が反転された場合、最大力は、下式によって決定することができる。
最大力=P (5)
【0064】
[0072] 測定された力は、接合点710において信号709から引かれて、信号711を形成し、信号711は、比例ゲイン712によってさらに調整されて、信号713を形成する。信号707は、接合点714において信号713から引かれて、信号715を形成し、信号715は、比例ゲイン716によって調整されて、信号717を形成する。比例ゲイン716の値は例えばwとすることができる。信号717と信号705は、求和接合点718において求和されて、信号719を形成する。スルーレート制限ブロック334によって信号719を変更し、または変更せずに、弁への指令である指令720を生成する。指令720は、指令335とは異なる。
【0065】
[0073] 一例では、重みwおよびwが一定の値を有することができる。しかしながら、他の例では、重みwおよびwが変動する。例えば、ピストン108がエンドストップ122に近づくにつれて、ゲインwおよびwを変動させることができる。
【0066】
[0074] 図8は、例示的な実施形態に従ってアクチュエータ限界制御を段階的に導入するための重みwおよびwの変動を示す。図8に示されているように、ピストンヘッド109Aの表面602が第1の位置606に到達する前(すなわち表面602が領域604内にある間)、これらのゲインの値はともにゼロである。表面602が第1の位置606に到達し、さらに位置612まで移動するとき(すなわち表面602が領域610内にある間)、減衰重みwは、線802に沿って値ゼロから値1まで増大し、その間、ばね重みwの値はゼロのままである。このようにすると、減衰重みwがゼロから1まで増大するにつれて、値(1−w)を有する比例ゲイン702は小さくなり、誤り信号319の値も徐々に小さくなり、したがって、速度フィードバックの効果も徐々に小さくなる。このような低下の結果、ピストン108の運動のスピードが減衰または低減することがある。重みwの値が1に到達すると、比例ゲイン702の値(値1−wを有する)はゼロになり、したがって、速度フィードバックは、弁100に提供される信号に対して効果を持つことができない。
【0067】
[0075] 領域610では、wがゼロから1に増大する間、重みwの値はゼロであり、信号717の値はゼロである。これは、比例ゲイン716の値がwであるためである。したがって、比例ゲイン706、708および712は無効である(すなわち弁100への指令を変化させない)。同様に、(w=0のときに1となる値1−wを有する)比例ゲイン704も、信号333に影響を及ぼさない。
【0068】
[0076] 表面602が第2の位置612に到達し、エンドストップ122に向かってさらに移動するとき(すなわち表面602が領域616内にある間)、減衰重みwは値1を維持し、ばね重みwは、線804に沿って値ゼロから値1まで増大する。このようにすると、比例ゲイン702の値はゼロのままであり(速度フィードバックは無効のままでありまたは除去される)、比例ゲイン704、706、708、712および716を追加したことに起因するばねのような力が、ますます効果を発揮し始め、ピストン108を逆方向に押してピストン108をさらに減速させる。
【0069】
[0077] 具体的には、ばね重みwがゼロから1に増大するにつれて、比例ゲイン704は値1から値ゼロに低下し、したがって、制御ループ302、304および306の効果は小さくなる。同時に、比例ゲイン716はゼロから1に増大し、したがって、制御ループ302、304および306の効果が小さくなる一方で、比例ゲイン706、708、712および716が優勢になり(または支配的になり)、弁100への指令720を決定する。その結果、領域616では、弁100への指令が、推定された(または測定された)速度、測定された力およびアクチュエータの最大力に基づく。
【0070】
[0078] さらに、ピストン108がエンドストップ122に向かって進むにつれて、弁100への指令720を決定する際の最大力および信号715の寄与は増大する。これは、比例ゲイン708および比例ゲイン716(値はともにwである)の対応するそれぞれの値がゼロから1に増大するためである。したがって、ピストン108がエンドストップ122に近づくと、ピストン108に作用する反対向きの力が増大する。例えば、ピストン108がエンドストップ122に近づくにつれて、弁100への指令720は、開口120をより小さくして(チャンバ112からリザーバへの経路を絞って)、チャンバ112内の圧力を増大させ、ピストン108を減速させることができる。この制御構造の結果は、エンドストップ122に向かうピストン108の運動に対抗する力であり、この力は、ピストン108がエンドストップ122に近づくにつれて大きくなる。これは、比例ゲイン708および716が増大するためである。この力は、事実上、エンドストップ122に向かうピストン108の運動に対抗する非線形のばねのような力である。一例では、この制御構造に起因する弁指令への変更によって、圧力源110がチャンバ112に接続され、チャンバ114が戻り管路に接続されるような態様で、スプール102がもう一方の方向に移動する。このようにすると、圧力源110から送られた流体が、エンドストップ122から離れる方向の圧力をピストン108に加えて、ピストン108を減速させる。
【0071】
[0079] 一例では、ピストン108の運動方向を変化させる入力指令をコントローラが受け取った場合、領域610内または領域616内に表面602がある場合でも、コントローラは、弁100に提供される信号に対する一切の変更を停止することができる。この例では、比例ゲイン702、704、706、708、712および716を非活動化することができ、位置−力制御システムは、図3に示された構造に戻る。
【0072】
[0080] いくつかの例では、領域610および領域616に加えて、領域616の終端とエンドストップ122との間に第3の領域(図6および図8には示されていない)を画定することができる。この第3の領域は、「安全」領域と呼ばれることがあり、この領域では、wとwがともに1である。この第3の領域は例えば、エンドストップ122から第3のしきい距離である第3の位置(例えば領域616の終端)によって画定することができる。例えば、液圧アクチュエータ106のストロークが80mmである場合、第3のしきい距離は1mmとすることができる。他の例では、液圧アクチュエータ106のストロークが45mmである場合、第3のしきい距離を2mmとすることができる。
【0073】
[0081]V.個別調量
図1に示された例では、弁100がスプール弁を表し、このスプール弁では、スプール102の直線位置が、そこを通って圧力源110からチャンバ114に流体が流れる開口118と、そこを通ってチャンバ112からリザーバ116に流体が流れる開口120の両方を決定する。
【0074】
[0082] 図9Aは、例示的な実施形態に基づく、スプール102の機械的に結合された開口118および120を示す。スプール102(図1に示されている)が移動すると、開口118および120のサイズが変化し、このことを、図9Aに示されている可変の流れ絞りによって表すことができる。スプール102の所与の位置が、開口118と開口120の両方を画定するため、図9Aは、仮想のリンク900によって機械的に結合された開口118および120を示す。このようなリンクを有することは、開口118と開口120が互いに独立していないことを示している。すなわち、1つの開口のサイズを画定すると、もう一方の開口のサイズも画定される。この場合、弁100は、単一自由度(DOF)システムである。これは、弁100への指令がスプール102の位置を決定し、スプール102の位置が、両方の開口118および120を画定するためである。コントローラは、スプール102の位置を制御して、開口118の特定のサイズを画定し、チャンバ114に流入する流れを調量し、ピストン108のスピードを制御することができる。コントローラは、開口118のサイズを画定して、チャンバ114内の圧力レベルを制御することもできる。例えば、コントローラは、圧力源110から到来する流体の供給圧力Pを示す情報を有することができる。コントローラはさらに、開口118を通過している流れの量を示す情報を有することができる。例えば、ピストンのスピードがVである場合、開口118を通過する流れQは、
Q=V(A−Arod) (6)
として推定することができる。式(1)を再び参照し、チャンバ114の所望の圧力レベルがPであると仮定すると、開口118の変数Kは、
【0075】
【数2】

として決定することができる。開口118のKが決定されると、コントローラは、開口118のKの値に対応する位置までスプール102を作動させる信号を、弁100に提供することができる。
【0076】
[0083] しかしながら、開口118と開口120とは機械的に結合されているため、コントローラは、開口120のサイズを独立して画定することはせず、したがって、コントローラは例えば、ピストン108のスピードまたはチャンバ114内の圧力レベルを制御する間に、チャンバ112内の圧力レベルを制御しないことがある。
【0077】
[0084] あるいは、コントローラは、スプール102の位置を制御して、特定のサイズの開口120を画定し、それによってチャンバ112内の圧力レベルを制御することもできる。例えば、コントローラは、タンクまたはリザーバ116に通じる戻り管路内の圧力Pを示す情報を有することができる。コントローラはさらに、開口120を通過する流れの量を示す情報を有することができる。例えば、ピストンのスピードがVである場合、開口12を通過する流れQは、
Q=VA (8)
として推定することができる。式(1)を再び参照し、チャンバ112の所望の圧力レベルがPであると仮定すると、開口120の変数Kは、
【0078】
【数3】

として決定することができる。
【0079】
[0085] 開口1208のKが決定されると、コントローラは、開口120のKの値に対応する位置までスプール102を作動させる信号を、弁100に提供することができる。
【0080】
[0086] しかしながら、この場合、コントローラは、開口118を独立して画定することはせず、チャンバ114に流入する流れの量(またはチャンバ114内の圧力レベル)を制御しないことがある。このように、コントローラは、(i)ピストン108のスピード、(ii)チャンバ114内の圧力または(iii)チャンバ112内の圧力のうちの1つを制御することができる。仮想のリンク900を破壊するため、1つのスプール弁の代わりに独立した2つの弁を使用することができる。
【0081】
[0087] 図9Bは、例示的な実施形態に基づく個別調量を示す。図9Bは、機械的に結合されていない2つの別個のまたは独立した絞り902および904を示す。これらの独立した絞り902および904を形成するために2つの別個の弁を使用することができる。一方の弁は、圧力源110からチャンバ114への流れを制御する絞り902を形成し、第2の弁は、チャンバ112からリザーバ116への流れを制御する絞り904を形成する。ピストン108がもう一方の方向に移動する場合には、圧力源110からチャンバ112へ流れおよびチャンバ114からリザーバ116への流れを制御するために、第3の弁および第4の弁を使用することができる。一例では、4つの全ての弁を組み合わせてまたは統合して、弁アセンブリとすることができる。
【0082】
[0088] 開口904から独立して開口902を制御するように、コントローラを構成することができる。第1の弁が開口902を制御し、第2の弁が開口904を制御すると仮定すると、第1の弁および第2の弁はそれぞれ、コントローラからの対応するそれぞれの信号によって制御することができる。それらの対応するそれぞれの信号は、対応するそれぞれの制御システムによって生成することができる。例えば、図7に示された制御システムなどの制御システムが、第1の弁に対する信号を生成することができ、別の制御システムが、第2の弁に対する信号を生成することができる。このようにすると、図9Bの構成は2DOFシステムである。コントローラは、チャンバ114に流入する流体を調量し、ピストン108のスピードを制御し、またはチャンバ114内の圧力レベルを決定する信号を、開口902を画定する第1の弁に提供することができる。同様に、コントローラは、チャンバ112内の圧力レベルを決定する信号を、開口904を画定する第2の弁に独立して提供することができる。この配置は、エンドストップにおける圧力衝撃または力衝撃を防ぐ、アクチュエータの運動の強化された制御を提供することができる。例えば、コントローラは、ピストン108のスピードを(特定の量の流体を調量するように開口902を制御することによって)制御し、それと同時に、縮小しているチャンバ112内の圧力レベルを制御することができる。チャンバ112内の圧力を制御することによって、コントローラは、ピストン108のスピードに基づき(方法500のブロック508に記載されている)、かつ/または表面602とエンドストップ122との間の距離に反比例する(方法500のブロック512に記載されている)反対向きの力を加えることにより、ピストン108のスピードを効果的に低減させることができる。
【0083】
[0089] VI.結び
本明細書に記載された配置は、例示だけが目的であることを理解すべきである。そのため、所望の結果に応じて、他の配置および他の要素(例えば機械、インタフェース、機能、順序および機能のグループ化など)を代わりに使用することができること、ならびにいくつかの要素を全体として省略することができることを当業者は理解するであろう。さらに、記載された要素の多くは、離散もしくは分散した構成要素として、または他の構成要素とともに、適当な任意の組合せで、適当な任意の場所に実現することができる機能エンティティである。
【0084】
[0090] さまざまな態様および実施形態を本明細書に開示したが、当業者には、他の態様および実施形態が明白である。本明細書に開示されたさまざまな態様および実施形態は、例示が目的であり、限定を意図したものではなく、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されており、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の完全な範囲も示されている。本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を記述することだけが目的であり、限定することは意図されていないことも理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B