(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660481
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】ビーム生成光学系及びビーム生成光学系を備える撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 17/08 20060101AFI20200227BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20200227BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20200227BHJP
G02B 27/09 20060101ALI20200227BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20200227BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
G02B17/08 Z
A61B5/1171 100
G01C3/06 120S
G02B27/09
G06T1/00 400H
H04N5/225 700
H04N5/225 600
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-547026(P2018-547026)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2016082052
(87)【国際公開番号】WO2018078793
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】山崎 行造
(72)【発明者】
【氏名】岩口 功
【審査官】
森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−60728(JP,A)
【文献】
特開平07−168122(JP,A)
【文献】
特開2002−341246(JP,A)
【文献】
特開昭63−58324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
G01C 3/00 − 3/32
G02B 5/08 − 5/10
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
G02B 27/09
G06T 1/00
H04N 5/222 − 5/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を光学素子に入射させ、入射した前記光を反射させ、前記光学素子から出射させて光ビームを生成するビーム生成光学系であって、
前記光学素子は、
前記光源から出射された前記光を前記光学素子へ入射させる第1の透過部と、
前記第1の透過部に対向する対向部に位置する、前記第1の透過部から入射した光を反射させる第1の反射部と、
前記第1の透過部の周囲に位置する、前記第1の反射部によって反射された前記光を反射させる第2の反射部と、
前記第2の反射部によって反射された前記光を前記光源の光軸方向に沿って前記光学素子から出射させる第2の透過部と、
を備え、
前記光学素子は、複数の部材から構成され、前記複数の部材を組み立てることによって構成され、
前記複数の部材は、前記第1の反射部と前記第1の透過部を備える部材と、前記第2の反射部と前記第2の透過部を備える部材である
ことを特徴とするビーム生成光学系。
【請求項2】
前記第1の反射部及び前記第2の反射部には反射膜が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のビーム生成光学系。
【請求項3】
前記第2の透過部は、前記光源側とは反対側に凸形状を形成している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビーム生成光学系。
【請求項4】
前記第1の反射部は、前記光源の方向に向かって凸形状を形成している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のビーム生成光学系。
【請求項5】
前記第2の反射部は、前記光源側に凸形状を形成している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のビーム生成光学系。
【請求項6】
光源から出射された光を光学素子に入射させ、入射した前記光を反射させ、前記光学素子から出射させて光ビームを生成するビーム生成光学系を備える撮像装置であって、
前記光学素子は、
前記光源から出射された前記光を前記光学素子へ入射させる第1の透過部と、
前記第1の透過部に対向する対向部に位置する、前記第1の透過部から入射した光を反射させる第1の反射部と、
前記第1の透過部の周囲に位置する、前記第1の反射部によって反射された前記光を反射させる第2の反射部と、
前記第2の反射部によって反射された前記光を前記光源の光軸方向に沿って前記光学素子から出射させる第2の透過部と、
を備え、
前記光学素子は、複数の部材から構成され、前記複数の部材を組み立てることによって構成され、
前記複数の部材は、前記第1の反射部と前記第1の透過部を備える部材と、前記第2の反射部と前記第2の透過部を備える部材である
ことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を光学素子を介して出射させる光ビームを生成するビーム生成光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
手のひら静脈の撮像装置では、
図12や
図13に示すように、四隅の測距用LED光源から出射される測距ビーム(光ビームとも言う)を手のひらに照射(
図11 参照)し、
図15に示す手のひらへの照射によるビームスポット(この例では4つ)を撮像することによって距離を測定している。
図12には従来の撮像装置の外観が示されており、
図13には
図12に示す照明用LED光源と測距用LED光源の平面配置図が示されている。また、
図14A及び
図14Bには、イメージセンサによって撮像されるビームスポットの画像が示されている。
【0003】
図14Aに示すビームスポットのサイズの方が、
図14Bに示すビームスポットのサイズよりも大きい。これは、
図14Aの画像は、手のひらなどの撮像の対象物が撮像装置に対して近い場合に撮像されるビームスポットの画像であり、
図14Bの画像は、撮像の対象物が撮像装置に対して遠い場合に撮像されるビームスポットの画像であるためである。なお、画像の中心点と各ビームスポットとの距離を求めることで撮像の対象物の傾きなどを求めることができる。
【0004】
光源としては小型で低コストの要請から、レーザではなく赤外LEDが用いられている。レーザとは違い、LED光源(単に、光源とも言う)はチップ面が発光するため、光源は有限のサイズを有している。したがって、撮像の対象物上の測距のビームスポットは、
図16に示すように基本的には光源チップの形状が投影されたものとなる。
【0005】
図17Aから
図17Cは、撮像装置へ実装される従来の測距ビーム生成光学系(測距光学系又はビーム生成光学系とも言う)の一例を示す。光源からの近赤外光は、アパチャを通過した後、レンズ(球面レンズ)によって上方に出射される。
図17Aは測距ビーム生成光学系の基本構成を示している。手のひら静脈の撮像装置への実装は、
図17Bのように光学系の取り付け部材にアパチャとレンズを装着し、これをPt板(プリント板)に取り付けたり、
図17Cのように筐体の四隅に測距光学系の取り付け部材を一体化させ、Pt板と分離して取り付けたりする。
【0006】
図18A及び
図18Bはビーム生成光学系の光線(ビーム)の動きの一例を示す。より具体的には、
図18A及び
図18Bは、光源が置かれた平面をXY平面とし、光源から撮像の対象物への方向をZ方向とした場合のXZ平面における光線の様子を示している。後述する
図19A及び
図19Bや、実施の形態で説明する
図2A及び
図2Bや、
図4A及び
図4Bも同様である。
【0007】
図18A及び
図18Bでは光源から5mm離れた位置にレンズがあり、このレンズによって上方にビームが出射されている。
図18Cには光源から100mm離れた位置、
図18Dには光源から10mm離れた位置におけるビームスポットがそれぞれ示されている。これらのビームスポットは、正方形のLEDチップがレンズによって投影されたものである。
【0008】
手のひら静脈の撮像装置はATM(Automated Teller Machine)や入退室装置をはじめ様々な分野で使用されている。近年、手のひら静脈の撮像装置を薄型化して、ノートPCやタブレットPCにも組み込むようになってきた(下記の特許文献1を参照)。ノートPCやタブレットPCの軽量化、薄型化の潮流に乗って、手のひら静脈の撮像装置も薄型化が求められている。手のひら静脈の撮像装置の薄型化には撮像レンズとイメージセンサからなる撮像系の薄型化のみならず、
図17Aから
図17Cに示すような測距ビーム生成光学系の薄型化も重要である。
【0009】
図18Cに示す例では、光源から距離100mm離れたスクリーン上で7mm×7mm程度のビームスポットが得られている。この例は光源からレンズまでの距離が5mmの場合である。これに対して、光源からレンズまでの距離を1/2の2.5mmとしてビーム生成光学系を薄型化した場合の特性が
図19Aから
図19Dに示されている。光源から距離100mm離れたスクリーン上で14mm×14mm程度のビームスポット(
図19C参照)となり、これ以上小さいビームスポットにはならない。なお、
図18Aから
図18Dも
図19Aから
図19Dも利用する光の出射立体角は同一である。
【0010】
ビームスポットサイズと光源レンズ間の距離との関係を
図20A及び
図20Bに示す。ビームと言っても実際には光源のレンズによる投影であることは前述した。
図20Aは1辺aのLEDチップが、光源レンズ間の距離hとレンズ物体間の距離Hとの比率H/hで拡大され、1辺Aの正方形となって物体上に投影されていることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−36226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、光学系の薄型化を図って
図20Bに示すように光源レンズ間の距離をh/2とすると、物体までの距離Hとの比率、すなわち像の倍率が2倍となり、物体に投影される像は1辺が2×Aの正方形となってしまう。
【0013】
ビームスポットの1辺が2倍になるとビームスポット面積が4倍となり、同一の出射光量(パワー)に対して輝度は1/4になってしまう。撮像系を通してイメージセンサで得られるビームスポット画像は輝度に比例するため、これは出力が1/4に低下することを意味している。また、距離が遠くなるにつれてビームスポットのサイズが大きくなっていくと、手のひら上の4つのビームスポットの分離度が低下するという問題も生じる。結局、薄型化によって測距機能の感度や精度の低下を招くことになる。このように、従来のビーム生成光学系にとっては、薄型化と測距ビームの特性は相反する関係であり、薄型化に限界があった。
【0014】
図20Aに示すように、ビームスポットのサイズを小さくするためにはレンズと光源の距離を離して投影の倍率を低く抑える必要がある。しかし、レンズと光源の距離を大きく確保することは上述したように撮像装置の薄型化を阻害する。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑み、ビームスポットのサイズを小さく抑え、測距機能の感度や精度を低下させずに、撮像装置の薄型化を実現することができるビーム生成光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、光源から出射された光を光学素子に入射させ、入射した前記光を反射させ、前記光学素子から出射させて光ビームを生成するビーム生成光学系であって、前記光学素子は、前記光源から出射された前記光を前記光学素子へ入射させる第1の透過部と、前記第1の透過部に対向する対向部に位置する、前記第1の透過部から入射した光を反射させる第1の反射部と、前記第1の透過部の周囲に位置する、前記第1の反射部によって反射された前記光を反射させる第2の反射部と、前記第2の反射部によって反射された前記光を前記光源の光軸方向に沿って前記光学素子から出射させる第2の透過部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記第1の反射部及び前記第2の反射部に反射膜が形成されていることは、好ましい態様である。
【0018】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記光学素子が、複数の部材から構成され、前記複数の部材を組み立てることによって構成されることは、好ましい態様である。
【0019】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記複数の部材が、前記第1の反射部と前記第1の透過部を備える部材と、前記第2の反射部と前記第2の透過部を備える部材であることは、好ましい態様である。
【0020】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記複数の部材が、前記第1の反射部を備える部材と、前記第1の透過部と前記第2の反射部を備える部材であることは、好ましい態様である。
【0021】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記第2の透過部が、前記光源側とは反対側に凸形状を形成していることは、好ましい態様である。
【0022】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記第1の反射部が、前記光源の方向に向かって凸形状を形成していることは、好ましい態様である。
【0023】
また、本発明のビーム生成光学系において、前記第2の反射部が、前記光源側に凸形状を形成していることは、好ましい態様である。
【0024】
また、本発明は、光源から出射された光を光学素子に入射させ、入射した前記光を反射させ、前記光学素子から出射させて光ビームを生成するビーム生成光学系を備える撮像装置であって、前記光学素子は、前記光源から出射された前記光を前記光学素子へ入射させる第1の透過部と、前記第1の透過部に対向する対向部に位置する、前記第1の透過部から入射した光を反射させる第1の反射部と、前記第1の透過部の周囲に位置する、前記第1の反射部によって反射された前記光を反射させる第2の反射部と、前記第2の反射部によって反射された前記光を前記光源の光軸方向に沿って前記光学素子から出射させる第2の透過部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ビームスポットのサイズを小さく抑え、測距機能の感度や精度を低下させずに、撮像装置の薄型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】第1の実施の形態における光学素子を側面側から見た側面図である。
【
図1B】第1の実施の形態における光学素子を上部側から見た平面図である。
【
図2A】第1の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図2B】第1の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図2C】第1の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系における光源から距離100mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図2D】第1の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系における光源から距離10mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図3A】第2の実施の形態における光学素子を側面側から見た側面図である。
【
図3B】第2の実施の形態における光学素子を上部側から見た平面図である。
【
図4A】第2の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図4B】第2の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図4C】第2の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系における光源から距離100mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図4D】第2の実施の形態における光学素子を備えるビーム生成光学系における光源から距離10mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図5】第2の実施の形態におけるビームスポットサイズが第1の実施の形態のビームスポットサイズに比べてさらに小さいことを説明するための図である。
【
図6】第2の実施の形態の効果を説明するための図である。
【
図7】第2の実施の形態における光学素子の実装の一例を示す図である。
【
図8A】第3の実施の形態における光学素子を斜め上方から見た斜視図である。
【
図8B】第3の実施の形態における光学素子を側面側から見た側面図である。
【
図9A】第4の実施の形態における光学素子を斜め上方から見た斜視図である。
【
図9B】第4の実施の形態における光学素子を側面側から見た側面図である。
【
図10A】本発明の他の効果を説明するための図である。
【
図10B】本発明の他の効果を説明するための図である。
【
図11】従来の撮像装置の測距用LED光源から出射される測距ビームが手のひらに照射される様子を示す図である。
【
図12】従来の撮像装置の外観の一例を示す図である。
【
図13】従来の撮像装置における照明用LED光源と測距用LED光源の平面配置図である。
【
図14A】従来の撮像装置によって撮像されるビームスポットの画像の一例を示す図である。
【
図14B】従来の撮像装置によって撮像されるビームスポットの画像の一例を示す図である。
【
図15】従来の撮像装置における手のひらのビームスポットを示す図である。
【
図16】従来の撮像装置におけるビームスポットの形状を示す図である。
【
図17A】従来のビーム生成光学系の基本構成の一例を示す図である。
【
図17B】従来のビーム生成光学系の実装例を示す図である。
【
図17C】従来のビーム生成光学系の実装例を示す図である。
【
図18A】従来のビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図18B】従来のビーム生成光学系の光線の動きの一例を示す図である。
【
図18C】従来のビーム生成光学系における光源から距離100mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図18D】従来のビーム生成光学系における光源から距離10mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図19A】従来のビーム生成光学系におけるレンズまでの距離を1/2とした場合の光線の動きの一例を示す図である。
【
図19B】従来のビーム生成光学系におけるレンズまでの距離を1/2とした場合の光線の動きの一例を示す図である。
【
図19C】従来のビーム生成光学系におけるレンズまでの距離を1/2とした場合の光源から距離100mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図19D】従来のビーム生成光学系におけるレンズまでの距離を1/2とした場合の光源から距離10mm離れたスクリーン上でのビームスポットを示す図である。
【
図20A】従来のビーム生成光学系におけるビームスポットサイズと光源レンズ間の距離hとの関係を示す図である。
【
図20B】従来のビーム生成光学系におけるビームスポットサイズと光源レンズ間の距離h/2との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明の特徴は光学素子にあり、光学素子以外のビーム生成光学系を含む撮像装置の構成については従来のものと同様であるため説明を省略する。後述する他の実施の形態においても同様である。なお、本発明のビーム生成光学系を含む撮像装置では、従来の撮像装置の構成であったアパチャは不要である。
【0028】
第1の実施の形態における光学素子の外観を
図1A及び
図1Bに示す。
図1Aは光学素子1を側面側から見た側面図を示しており、
図1Bは光学素子1を上部から見た平面図を示している。
図1A及び
図1Bに示す光学素子1は、従来の球面レンズと同様、光源(LED)2から出射される光を受ける。
【0029】
光学素子1は、光源2から出射された光を光学素子1へ入射させる透過部(第1の透過部)3を光の入射側(光源2側)の中央部に備えている。また、光学素子1は、透過部3から入射した光を反射させる反射部(第1の反射部)4を光の出射側(光源2に対して反対側)の中央部に備えている。透過部3と反射部4は対向するように配置されている。透過部3及び反射部4の上部から見た形状は、
図1Bに示すように、円形となっているが、円形に限定されるものではない。
【0030】
また、光学素子1は、反射部4によって反射された光を更に反射させる反射部(第2の反射部)5を透過部3の周囲(周辺部)に備えている。反射部5は光源2側に凸形状を形成している。また、光学素子1は、反射部5によって反射された光を光軸7に沿って、不図示の撮像対象物(例えば、手のひら)に向けて光学素子1から出射させる透過部(第2の透過部)6を第1の反射部4の周囲(周辺部)に備えている。反射部5と透過部6は対向するように配置されている。
【0031】
以上説明したように、光学素子1は、
図1Aに示すように、光源2の方向に向かって凸形状(下凸形状)を形成するレンズである。なお、光学素子1のレンズはガラス であっても、あるいは他の素材、例えばプラスチックなどであってもよい。光学素子の素材については、後述する他の実施の形態でも同様である。また、透過部3や反射部4は、光源2の方向に向かって凸形状を形成しているが、平らな形状(フラットな面)であってもよい。
【0032】
光源2から出射された光は、光学素子1の透過部3から光学素子1内へ入る。ここで、光を入射させる領域(透過部3)はレンズ面のままであるが、透過部3の周囲(周辺部)の反射部5には反射膜(例えば、アルミ蒸着などの金属蒸着)が光学素子1の外側から形成されている。また、反射部4についても同様に反射膜が光学素子1の外側から形成されている。これにより、従来の測距ビーム生成光学系(ビーム生成光学系)におけるアパチャと同様に、光源2から出射される光の光軸7を中心に、所定の角度領域のみの光をビーム生成に用い、それ以外の光は反射部5の反射膜により遮断される。透過部3を通じて光学素子1内に入射した光は、透過部3の上部に設けられた反射部4に入射する。
【0033】
上述したように、反射部4には、光学素子1の外側から反射膜が形成されており、反射部4は入射した光に対して凸面鏡として働く(機能する)。すなわち、入射した光を拡大させながら光の入射面側(光源2側)に反射させる。入射面側に反射して戻ってきた光は、反射部5に光学素子1の外側から形成された反射膜により再び上方へ反射され、反射部5に対向する透過部6から出射される。反射部5は、凹面鏡として働き、光を収束させながら出射する。
【0034】
上記により、光は光学素子1内で上下に折り返されて光路が延長され、実効的に投影倍率を低く抑えながら撮像対象物へ向けて出射される。その結果、
図2Cに示すように、光源2から距離100mmにあるスクリーン上のビームスポットのサイズは、7.6mm×7.6mm程度となり、
図18Cに示すものとほぼ同一のサイズに収まっている。なお、
図2Dは光源2から距離10mmにあるスクリーン上のビームスポットのサイズを示している。
【0035】
第1の実施の形態のビーム生成光学系の出射面の位置は、
図2Aや
図2Bに示すように、光源2から3mmのところにあり、これは
図19Aに示すレンズの出射面の位置と同一である。すなわち、
図18Aに示す測距ビーム生成光学系に対して、高さを約1/2にして薄型化を実現しながら、ビームスポットのサイズはほぼ同一のままに収まっている。すなわち、スポット画像出力を求めるスポットの輝度が同一のまま薄型化できたことを意味している。
【0036】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態について図面を参照して説明する。第2の実施の形態における光学素子の外観を
図3A及び
図3Bに示す。
図3Aは光学素子21を側面側から見た側面図を示しており、
図3Bは光学素子21を上部から見た平面図を示している。
図3A及び
図3Bに示す光学素子21は、第1の実施の形態における光学素子1と同様、光源(LED)2から出射される光を受ける。
【0037】
第1の実施の形態の光学素子1は、母体を下凸形状としたものであったが、第2の実施の形態の光学素子21は、
図3Aに示すように、母体を両凸形状としたものである。すなわち、第2の反射部25は、光源2側に凸形状を形成し、第2の透過部26は、光源2側とは反対側に凸形状を形成している。
【0038】
光学素子21は、光源2から出射された光を光学素子21内へ入射させる透過部(第1の透過部)23を光の入射側(光源2側)の中央部に備えている。また、光学素子21は、透過部23から入射した光を反射させる反射部(第1の反射部)24を光の出射側(光源2に対して反対側)の中央部に備えている。透過部23と反射部24は対向するように配置されている。透過部23及び反射部24の上部から見た形状は、
図3Bに示すように、円形となっているが、円形に限定されるものではない。また、透過部23や反射部24は、光源2の方向に向かって凸形状を形成しているが、平らな形状(フラットな面)であってもよい。後述する第3の実施の形態でも同様である。
【0039】
また、光学素子21は、反射部24によって反射された光を更に反射させる反射部(第2の反射部)25を透過部23の周囲(周辺部)に備えている。反射部25は光源2側に凸形状を形成している。後述する第3の実施の形態においても同様である。また、光学素子21は、反射部25によって反射された光を光軸7に沿って、不図示の撮像対象物(例えば、手のひら)に向けて光学素子21から出射させる透過部(第2の透過部)26を第1の反射部24の周囲(周辺部)に備えている。反射部25と透過部26は対向するように配置されている。
【0040】
第1の実施の形態と同様、反射部24には光学素子21の外側から反射膜(例えば、アルミ蒸着などの金属蒸着)が形成されている。また、反射部25にも光学素子21の外側から反射膜が形成されている。反射膜による反射面は金属蒸着面でもよいが、多層膜によって形成された反射面であってもよい。
【0041】
第2の実施の形態の光学素子21(反射光学系)を用いたビーム生成光学系の光線シミュレーション結果の一例を
図4Aから
図4Dに示す。第1の実施の形態の光学素子1が母体を下凸(平凸)形状のレンズとしているのに対して、第2の実施の形態の光学素子21は、両凸レンズで出射面の曲率も設計パラメータに含まれ、設計自由度が高い。その結果、
図4Cに示すように、光源2から距離100mmにおけるビームスポットサイズは6.7mm×6.7mmである。なお、
図4Dは光源2から距離10mmにあるスクリーン上のビームスポットのサイズを示している。第1の実施の形態と同様、第2の実施の形態のビーム生成光学系の出射面の位置は、
図4Aや
図4Bに示すように光源2から3mm離れたところにあり、これは
図19Aに示すレンズの出射面の位置と同一である。
【0042】
また、
図5に示すように、第2の実施の形態のビームスポット(6.7mm×6.7mm)の辺の長さは、第1の実施の形態のビームスポット(7.6mm×7.6mm)の辺の長さの88%(6.7mm/7.6mm)となる。また、第2の実施の形態のビームスポットの面積は、第1の実施の形態のビームスポットの面積の78%(6.7mm×6.7mm/7.6mm×7.6mm)となる。このことから、第2の実施の形態では、さらに小さいビームスポットが実現できるという効果がある。
【0043】
第2の実施の形態と
図19Aに示す従来例とを比較することで、第2の実施の形態の効果を定量的に説明する。第2の実施の形態の構成の特徴は、光源2からの光をレンズ入射、レンズ出射という従来の経路に加えて、出射側の中央部(第1の反射部24)と、入射側の周辺部(第2の反射部25)の反射面によって、2回反射させることである(他の実施の形態も同様)。最終的に出射面から光が出射される際、出射側の中央部(第1の反射部24)は光を透過させないため無効領域となる。
【0044】
したがって、第2の実施の形態では、従来例に比べて有効面積比と反射損失を乗じた分のパワー損失がある。一方、得られるビームスポット面積が小さい、すなわち輝度(照度)が高くなるという効果がある。
図6に示すように、第2の実施の形態によれば、従来例に比べて有効面積率と反射損失を乗じた結果の透過パワー比が0.7271と低い値となるが、ビームスポット面積は1/4でパワー密度は4となり、実質的効果である輝度比はこれらを乗じた値2.91となる。よって、透過パワー比 が低くなっても、輝度比は高くなるため、測距機能の感度や精度を低下させずに、撮像装置の薄型化を実現することができる。
【0045】
ここで、第2の実施の形態における光学素子21の実装の一例を
図7に示す。撮像装置の筐体70の四隅に光学素子21(測距光学系)の取り付け部71を一体形成し、そこに光学素子21を組み込む。光学素子21は、キャップ72 を上から嵌めることによって固定される。光源2を搭載したPt板73は分離して筐体70に取り付け可能である。なお、キャップ72のサイズは、第2の透過部26からの光軸に沿った光ビームの透過に支障のないサイズであればよい。また、この例では、キャップ72の形状が円形であるが、光学素子21を固定でき、光ビームの透過に支障のないものであれば円形に限定されるものではない。なお、他の実施の形態における光学素子でも同様にして実装可能である。
【0046】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態について図面を参照して説明する。上述した実施の形態では、光学素子の母体を下凸(平凸)形状や両凸形状に加工するとともに、光学素子の一部に金属蒸着して反射面とする光学素子について説明した。第3の実施の形態及び後述する第4の実施の形態では、製造性やコストの点から、上述した光学素子以外の光学素子について説明する。
【0047】
第3の実施の形態における光学素子の外観を
図8A及び
図8Bに示す。
図8Aは光学素子31を斜め上方から見た斜視図であり、
図8Bは光学素子31を側面側から側面図である。
図8A及び
図8Bに示す光学素子31は、第2の実施の形態における光学素子21と同様、光源2から出射される光を受ける。
【0048】
第3の実施の形態の光学素子31の形状は、第2の実施の形態の光学素子21の形状と同様である。しかし、第3の実施の形態では、光学素子31が複数の部材(この例では、2つの部材)から構成され、これらの部材を組み立てることにより光学素子31として機能する。すなわち、光学素子31は、中央部分の凸面鏡を形成する部材80と、部材80が組み込まれる中央部がくり抜かれた部材81とから構成されている。部材80は、第2の実施の形態の光学素子21の第1の透過部23及び第1の反射部24の機能を備え、部材81は、第2の実施の形態の光学素子21の第2の反射部25及び第2の透過部26の機能を備える。
【0049】
第3の実施の形態では、部材80の上部80a(第1の反射部34)に金属蒸着の処理を行い、さらに部材81の第2の反射部35に金属蒸着の処理を行う。金属蒸着されたそれぞれの部材を組み合わせる際、部材80と部材81が接する境界面82には、接着剤、例えばレンズボンドなどが塗布される。これにより、それぞれの部材は接着され、光学素子31が形成される。境界面82に塗布される接着剤は、部材80及び部材81と同じ屈折率を有する。
【0050】
なお、部材80及び部材81は、例えば透明プラスチックなどであるが、これに限定されるものではなく、他の素材であってもよい。
【0051】
<第4の実施の形態>
以下、第4の実施の形態について図面を参照して説明する。第4の実施の形態における光学素子の外観を
図9A及び
図9Bに示す。
図9Aは光学素子41を斜め上方から見た斜視図であり、
図9Bは光学素子41を側面側から見た側面図である。
図9A及び
図9Bに示す光学素子41は、第1の実施の形態における光学素子1と同様、光源2から出射される光を受ける。
【0052】
第4の実施の形態の光学素子41も、第3の実施の形態と同様、複数の部材(部材90及び部材91)から構成されているが、レンズ母体ではない。部材90は、第1の実施の形態の光学素子1の第1の反射部4の機能を備え、部材91は、第1の実施の形態の光学素子1の第1の透過部3及び第2の反射部5の機能を備える。第4の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した第2の透過部6は、光学素子41の構成にはなく空気層となっている。
【0053】
部材90は、凸面反射ミラー(凸面鏡)90aと取り付け用リブ90bから構成される。凸面反射ミラー90aには、他の実施の形態で説明した反射膜が形成されている。 これにより、部材90と部材91が組み合わされた際,部材91の光入射孔91aから入射した光を拡大しながら反射させることができる。凸面反射ミラー90aは、第1の実施の形態の第1の反射部4などに相当する。取り付け用リブ90bは、部材90を部材91に取り付けるためのものであって、部材91の支持部91bに取り付けられることによって光学素子41が形成される。
【0054】
部材91は、光源2からの光を入射させる光入射孔91a、部材90を支持するための支持部91b、凹面反射ミラー(凹面鏡)91cから構成される。光入射孔91aは、第1の実施の形態の光学素子1の第1の透過部3のように、凹面反射ミラー(凹面鏡)91cの中央部に配置される。支持部91bは、取り付け用リブ90bを挟むことで部材90を支持する構成であるが、このような構成に限定されるものではない。凹面反射ミラー91cには、他の実施の形態で説明した反射膜が形成されている。 これにより、凸面反射ミラー90aによって反射された光を、不図示の撮像の対象物に向けて光軸に沿って反射させることができる。凹面反射ミラー91cは、第1の実施の形態の第2の反射部5などに相当する。
【0055】
このような構成により、光学素子41の内部は空気層であるため、パワー損失を低く抑えることができる。
【0056】
ここで、本発明の他の効果を
図10A及び
図10Bを用いて説明する。従来のビーム生成光学系は、
図10Bに示すように、レンズと光源2の相対位置がずれる、すなわち光源2の中心とレンズ光軸がずれると、ビームスポットの位置ずれ量(e)もビームスポットサイズと同じ倍率がかかる。すなわち、薄型化すると、光源2とレンズの位置ずれにビームスポットの位置が過敏に影響することになり、測距精度を低下させる問題があった。しかし、本発明によれば、
図10Aに示すように、実効的に組レンズと同等の光路となり、入射部分で外向きに発生したずれを出射側の光学素子が中心方向に戻そうと働く(機能する)ことになる。このため、薄型化してもレンズ位置ずれのビーム位置への影響が大きくなることはない。位置ずれに過敏にならないことも本発明の効果の1つである。
【0057】
上述したようなビーム生成光学系(ビーム生成光学系を含む撮像装置)によれば、ビームスポットのサイズを小さく抑え、スポット輝度の低下を防ぐことができ、測距機能の感度や精度を低下させずに、撮像装置の薄型化を実現することができる。さらにビーム生成光学系を含む撮像装置によれば、手のひらへ照射されるビームスポットの測距画像を精度よく取得する事が可能となるため、例えば該測距画像と手のひらなどの撮像対象物が撮像された全体画像とを、排他的に制御し取得することによって、にじみ無く品質の良い撮像データが取得できる。
【符号の説明】
【0058】
1、21、31、41 光学素子
2 光源
3、23 透過部(第1の透過部)
4、24 反射部(第1の反射部)
5、25 反射部(第2の反射部)
6、26 透過部(第2の透過部)
7 光軸
70 筐体
71 取り付け部
72 キャップ
73 Pt板
80、81、90、91 部材
80a 上部
82 境界面
90a 凸面反射ミラー
90b 取り付け用リブ
91a 光入射孔
91b 支持部
91c 凹面反射ミラー