(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光導波路の前記外周面が、底面、前記底面に対向する上面、および前記底面と前記上面との間の一対の側面を備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の蛍光体素子。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1、
図2は、本発明の実施形態に係る蛍光体素子1を示す。
本例では、光導波路2は、横断面が四辺形をしており、細長く伸びている。光導波路2の出射側端面2fと対向端面2eとの間に外周面が伸びており、外周面は、細長い底面2a、底面2aに対向する上面2bおよび一対の側面2c、2dを有している。そして、光導波路2の外周面をクラッド層3が被覆しており、クラッド層3を反射膜4が被覆している。
【0017】
クラッド層3は、光導波路2の底面2aを被覆する底面側クラッド層3a、上面2bを被覆する上面側クラッド層3b、各側面2c、2dを被覆する側面側クラッド層3c、3dを備えている。また、反射膜4は、底面側クラッド層3a上の底面側反射膜4a、上面側クラッド層3b上の上面側反射膜4b、および側面上クラッド層3c、3d上の側面側反射膜4c、4dを備えている。反射膜上には、反射膜の劣化を防ぐために、パッシベーション膜を形成していてもよい。パッシベーション膜として酸化膜を例示できる。
【0018】
本発明に従い、出射側端面2fの面積AOを、対向端面2eの面積AIよりも大きくする。なお、励起光は、対向端面2eから入射させてもよく、出射側端面2fから入射させて対向端面2e上の反射膜で全反射させてもよい。
【0019】
本実施形態によれば、光導波路6内で変換された蛍光のうち、光導波路2とクラッド層との境界で反射される蛍光を出射側端面へと伝搬できるだけでなく、光導波路の全反射条件を満足できずにクラッド層内に入射する蛍光も、底面、上面および各側面に設けられた各反射膜によって反射されて光導波路内に再入射するので、出射側端面からの蛍光の出射光量を増加させることができる。
【0020】
その上で、光導波路の中心軸に対して傾斜する傾斜部分を光導波路の外周面に設けていることが重要である。これによる利点について更に述べる。
まず、中心軸に対して傾斜する傾斜部分を光導波路の外周面に設けない場合について述べる。
図5はこの形態に係るものである。
【0021】
図5に示す比較例の蛍光体素子21においては、光導波路12の幅Wが一定であり、厚さも一定である。また光導波路12の出射側端面12fの面積と対向端面12eの面積とが同一である。この場合には、励起光Aが光導波路12内を伝搬し、蛍光体粒子16に当たると、蛍光体粒子16から蛍光が発光する。このとき、蛍光は、蛍光体16から、あらゆる方向に向かって均一に発光する。
【0022】
ここで、蛍光体16から出射側端面12fのほうへと放射された蛍光Fは、入射角θpでクラッド層との界面に達する。ここで、光導波路の屈折率np、クラッド層の屈折率nc、入射角度θpが全反射条件を満足している場合には、蛍光は界面で反射され、光導波路伝搬し、出射側端面12fから出射する。一方、蛍光の入射角θpが全反射条件を満足しない場合には、矢印Gのように屈折し、反射膜4c、4dによって反射され、矢印Hのように反射する。このような反射を反復しながら伝搬する光は、光導波路伝搬でなく、一部は蛍光体内で反射膜の吸収や蛍光体の吸収によって減衰し、一部は出射側端面12fに到達する。しかし、この光は方向性がなく出射端から放射するので、光導波路伝搬する励起光とミキシングできない成分の蛍光成分もあるため、白色光の取出効率を大きく改善することはできない。
【0023】
クラッド層を設けず、各反射膜が蛍光体に直接接触している場合には、光導波路伝搬せずに励起光と蛍光双方とも反射膜で反射を繰り返しながら伝搬するので、前述のように励起光と蛍光の一部は蛍光体内で減衰し、出射側端面12fに到達した双方の光は方向性を持たず端面から出射するので、前面方向に白色光を取り出すことが難しく、取出し効率の改善が難しい。
【0024】
蛍光体16から、光導波路の長手方向に対して垂直な方向へと発生した蛍光Cは、反射膜で矢印Dのように反射され、光導波路内で反射を繰り返し、最終的に減衰することになる。また、蛍光体16から対向端面12e側へと発生された蛍光Eは、上記と同様な反射を繰り返し、最終的に対向端面に到達することになる。
【0025】
一方、
図2の蛍光体素子1においては、光導波路2の上面の幅Wが対向端面2e(WI)から出射側端面2f(WO)へと向かって徐々に大きくなっている。なお、θは、光導波路2の中心軸Kと側面6c、側面6dとの角度である。本例では角度θは一定であり、かつ2〜13°の範囲内である。なお、θは、一定であることが好ましいが、一定である必要はなく、出射側端面と対向端面との間で変化していてもよい。好ましくは、幅Wは、対向端面から出射側端面へと向かって連続的に、滑らかに増大している。
【0026】
ここで、
図6に示すように、励起光Aが光導波路内を伝搬し、蛍光体粒子16に当たると、蛍光体粒子16から蛍光が発光する。このとき、蛍光は蛍光体からあらゆる方向に向かって均一に発光する。ここで、蛍光体16から出射側端面のほうへと放射された蛍光Fは、入射角θpでクラッド層との界面に達する。光導波路の屈折率np、クラッド層の屈折率nc、入射角度θpが全反射条件を満足している場合には、蛍光は界面で反射し光導波路伝搬する。
【0027】
例えば光導波路の側面6dが長手方向Kに対してθ傾斜している場合には、蛍光Fの入射角θpが、
図5の例に比べてθだけ大きくなり、クラッド層との界面で全反射しやすくなる。このため
図5の例で全反射条件を満足できなかった蛍光Fは、クラッド層との界面で全反射するようになり、光導波路伝搬し反射膜による吸収が起こらないので、出射光量は一層増加する。
【0028】
一方、蛍光の入射角θpが全反射条件を満足しない場合として、例えば、蛍光体16から、光導波路の中心軸Kに対して垂直な方向に発生した蛍光Cは、同様にクラッド層への入射角はθとなるが、このときに全反射角を満足できないとする。この場合は、蛍光Cは反射膜4dで反射されることになるが、次に反対側側面2cのクラッド層3cとの界面に入射する角度はさらにθだけ大きくなるので、これらの反射を繰り返すうちに蛍光体とクラッド層との界面で全反射条件を満足できるようになり、ついには光導波路伝搬することになる。光導波路の側面2dに直角に入射する場合においては、反射膜4dで反射することになるが、側面6cの界面に入射する角度はθだけ大きくなるので、出射端面側に向かって進行し、反射膜4cと反射膜4dで反射を繰り返すうちに入射角θpが大きくなり、蛍光体とクラッド層との界面で全反射条件を満足できるようになり、光導波路伝搬するようになる。
【0029】
以上のことから、光導波路2の外周面が中心軸Kに対して傾斜している場合には、蛍光は出射側端面側か対向端面側のどちらかに進行し反射を繰り返し、蛍光体内で減衰してしまう蛍光をなくすことが可能となる。
【0030】
蛍光体16から対向端面2e側へ向かう蛍光Eについては、反射膜によって反射されるごとに、角度θだけ出射側端面側へと方向が変わるので、多重反射を繰り返していくうちに出射側端面側に伝搬方向が変化し、最終的に光導波路伝搬し出射側端面から出射される。それでも対向端面に到達した蛍光は、対向端面に設けた蛍光反射膜によって反射し、この光も最終的に光導波路伝搬し、出射側端面から出射することができる。
【0031】
図3の実施形態では、光導波路2の幅Wが、対向端面2eにおいてはWIであり、出射側端面2fにおいてはWOである。そして、幅Wは、WIからWOに向かって大きくなっている。なお、本例では、光導波路の中心軸と側面2dとの角度θは2〜13°である。本例では、側面2cは励起光の光軸と平行であり、側面2dは励起光の光軸に対して2θ傾斜している。
【0032】
また、好適な実施形態においては、光導波路の厚さが、対向端面から出射側端面へと向かって大きくなっている。例えば、
図4の蛍光体素子51においては、光導波路2の厚さTが、対向端面2eにおいてはTIであり、出射側端面2fにおいてはTOである。そして、厚さTは、TIからTOに向かって大きくなっている。
【0033】
なお、αは、光導波路2の中心軸Kと底面2aおよび上面2bとの傾斜角度である。本例では傾斜角度αは一定であり、2〜13°である。αは、一定であることが好ましいが、一定である必要はなく、出射側端面と対向端面との間で変化していてもよい。好ましくは、厚さTは、対向端面から出射側端面へと向かって連続的に、滑らかに増大している。
【0034】
なお、光導波路の幅を変化させた場合の作用効果は前述したが、厚みを変化させた場合も同様であり、上面、底面によって反射された蛍光は同様なメカニズムによって出射側端面から光導波路伝搬光として出射することができる。
【0035】
また、幅W、および厚みTについて、双方とも対向端面から出射側端面に向かって連続的に大きくする構造とすることによって、蛍光体内で発生する全方向の蛍光に対して、光導波路伝搬光に変換することができ出射側端面に高効率に出射することができ、同じく光導波路伝搬する励起光とミキシングして高効率に白色光を取り出すことが可能となる。
【0036】
上述の実施形態では、光導波路の横断面形状を四辺形とした。しかし、光導波路の横断面形状は四辺形には限定されず、円形、楕円形、六角形等の多角形であってよい。
【0037】
例えば
図7の蛍光体素子31においては、横断面が円形である光導波路32が設けられている。光導波路32は、
図7(b)に示す出射側端面32fと、
図7(c)に示す対向端面32eと、出射側端面と対向端面との間の外周面32aを有している。光導波路32の外周面32a上にはクラッド層33が設けられており、クラッド層33上には反射膜34が設けられている。出射側端面32fの直径DOは対向端面32eの直径DIよりも大きくなっており、外周面32aは中心軸に対して2〜13°の角度で傾斜する傾斜面を形成している。
【0038】
好適な実施形態においては、光導波路の幅が、上面から底面へと向かって変化している。例えば、
図8に示す蛍光体素子41においては、光導波路42は、横断面が台形をしており、細長く伸びている。光導波路42の出射側端面42fと対向端面42eとの間に外周面が伸びており、外周面は、細長い底面42a、底面42aに対向する上面42bおよび一対の側面42c、42dを有する。そして、光導波路42の外周面をクラッド層3が被覆しており、クラッド層3を反射膜4が被覆している。
【0039】
そして、光導波路42の幅が、上面における幅から底面における幅に向かって徐々に大きくなっている。なお、βは、光導波路42の底面42aに対する側面42c(42d)の傾斜角度である。
本構造は、それのみでは蛍光の出射光量が増大する効果は期待できないが、光導波路の厚み方向に傾斜角度αだけ傾斜させた構造と組合せることによって、蛍光の出射光量を一層増大させることができる。つまり、光導波路の幅方向に伝搬する蛍光は、側面が傾斜角度β傾斜している場合、この側面、あるいはこの側面と平行な反射面で反射すると、光導波路の厚み方向に向かって伝搬するようになるので、光導波路の幅方向において角度θの傾斜を設けない場合でも、厚み方向の傾斜だけで光導波路伝搬するようにでき、出射光量を増大できる。
【0040】
本実施形態の作用効果について
図9を参照して述べる。
本例では、蛍光体16から、あらゆる方向へと蛍光が放射されるが、このうち真横に放射された光Gは、側面42c(42d)によって矢印Hのように反射される。このとき、側面42c(42d)が底面の法線Mに対して傾斜していることから、蛍光は底面へと向かって反射され、底面で更に矢印Iのように反射される。このように多重反射を繰り返すうちに、蛍光は、上面、底面、側面で反射されることになり、側面間で反復することはない。ここで、光導波路の幅と厚さとの少なくとも一方を前述のように出射側端面と対向端面との間で変化させていると、蛍光の出射側端面への出射が促進されることになる。このように傾斜した場合、側面で反射した蛍光は、反射した光を上・底面側に反射する光に向きを変えることができる。このことから厚みを変化した構造と組み合わせることによって、蛍光体内で発生する蛍光すべてに対して、出射側端面に光導波路伝搬光として高効率に出射することができ、同じく光導波路伝搬する励起光とミキシングして高効率に白色光を取り出すことが可能となる。
【0041】
上の例では、底面における光導波路幅を上面における光導波路幅よりも大きくしたが、底面における光導波路幅を上面における光導波路幅よりも小さくすることもできる。この観点からはどちらかの光導波路幅を零にする三角形状であってもよい。また、光導波路幅は、滑らかに変化させることが好ましいが、段階的に変化させてもよい。
【0042】
好適な実施形態においては、蛍光を反射する反射部が対向端面に設けられている。この蛍光を反射する反射部は、励起光を反射してもよく、あるいは励起光を透過してもよい。
【0043】
対向端面は、励起光を入射させるための入射面であってよい。この場合には、対向端面側には蛍光に対しては全反射し、励起光に対しては無反射となる膜が形成してあることが好ましい。あるいは、出射側端面が、前記励起光を入射させるための入射面であってよい。この場合には、対向端面側に、励起光を全反射する反射膜を設ける。
【0044】
本発明の導波路型蛍光体素子は、グレーティング(回折格子)を光導波路内に含んでいない無グレーティング型蛍光体素子であってよく、あるいはグレーティング素子であってよい。
【0045】
本発明では、光導波路の外周面が光導波路の中心軸に対して2°以上、13°以下傾斜している傾斜部分を含む。この傾斜角度を2°以上とすることによって、出射側端面から発振する光強度を高くすることができる。この観点からは、傾斜角度を4°以上とすることが更に好ましい。また、この傾斜角度が13°を超えると、出射側端面から出射する白色光の色ムラが大きくなるので、13°以下とするが、10°以下が更に好ましい。
【0046】
また、前記傾斜部分の面積は、光導波路の外周面の面積のうち30%以上を占めていることが好ましく、50%以上を占めていることが更に好ましく、100%を占めていても良い。
【0047】
光導波路の幅Wや直径は、励起光を効率よく結合し出射光量を増加させるという観点からは、20μm以上が好ましく、また50μm以上が好ましい。一方、光導波路伝搬するという観点からは、Wは、900μm以下が好ましく、500μm以下が更に好ましく、300μm以下が更に好ましい。
【0048】
出射側端面の面積AOの対向端面の面積AIに対する比率(AO/AI)は、本発明の観点からは、1.2以上が好ましく、1.4以上が更に好ましい。一方、AO/AIは20以下が好ましく、5.5以下が更に好ましい。
【0049】
光導波路の厚さTは、励起光を効率よく結合し出射光量を増加させるという観点からは、20μm以上が好ましく、また50μm以上が好ましい。一方、本発明の観点からは、Tを900μm以下とすることが好ましく、光導波路形成時の側面での表面粗さによる散乱の影響を小さくするという観点からは、200μm以下が好ましく、150μm以下が更に好ましい。
【0050】
光導波路の底面の法線Mに対する各側面の傾斜角度β(
図8、
図9参照)は、出射光量を増加させるという観点からは、10°以上が好ましく、15°以上が更に好ましい。また、βは、50°以下が好ましく、35°以下が更に好ましい。
【0051】
光導波路の長さ(出射側端面と対向端面との間隔)L(
図2参照)は特に限定されないが、一般的には蛍光を光導波路伝搬させるまで反射を繰り返す必要があるので、200μm以上が好ましく、伝搬に伴う損失を低減するために2mm以下とすることもできる。
【0052】
反射膜の材質としては、金、アルミニウム、銅、銀、等の金属膜、またはこれらの金属成分が含まれる混晶膜、あるいは、誘電体多層膜であってよい。反射膜として金属膜を使用する場合には、クラッド層がはがれないようにするために、Cr、Ni、Ti等の金属層を金属膜のバッファ層として形成することができる。
【0053】
クラッド層の材質は、蛍光体よりも屈折率の小さい材料であればよい。クラッド層と蛍光体との屈折率差は0.05以上であることが好ましい。こうしたクラッド層の材料は、SiO
2、Al
2O
3、MgF
2、CaF
2、MgOなどがよい。
【0054】
クラッド層と反射膜との間にバッファ層を設けることができる。こうした接合層の材質は特に限定はされないが、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンが好ましい。しかし熱伝導率が蛍光体よりも大きい方が好ましく、このような観点から酸化アルミニウムが最も好ましい。
【0055】
蛍光体は、蛍光体ガラス、単結晶、多結晶であってよい。蛍光体ガラスの場合は、ベースとなるガラス中に希土類元素イオンを分散したものである。
【0056】
ベースとなるガラスとしては、シリカ、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化ランタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化リン、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、塩化バリウムを含む酸化ガラスが例示でき、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)であってもよい。
【0057】
ガラス中に分散される希土類元素イオンとしては、Tb、Eu、Ce、Nd、が好ましいが、La、Pr、Sc、Sm、Er、Tm、Dy、Gd、Luであってもよい。
【0058】
蛍光体単結晶としてはY
3Al
5O
12、Ba
5Si
11A
l7N
25、Tb
3Al
5O
12が好ましい。また、蛍光体中にドープするドープ成分としては、Tb、Eu、Ce、Nd等の希土類元素イオンとする。熱劣化を抑制するという観点では、蛍光体は単結晶が好ましいが、多結晶であっても緻密体であれば粒界部での熱抵抗を下げることができ、かつ透光性をあげることができ、光導波路として機能することができる。
【0059】
光源としては、照明用蛍光体の励起用として高い信頼性を有するGaN材料による半導体レーザーが好適である。また、一次元状に配列したレーザーアレイ等の光源も実現可能である。スーパールミネッセンスダイオードや半導体光アンプ(SOA)であってもよい。
【0060】
半導体レーザーと蛍光体から白色光を発生する方法は、特には限定されないが、以下の方法が考えられる。
青色レーザーと蛍光体により黄色の蛍光を発生し、白色光を得る方法
青色レーザーと蛍光体により赤色と緑色の蛍光を発生し白色光を得る方法
また青色レーザーや紫外レーザーから蛍光体により赤色、青色、緑色の蛍光を発生し白色光を得る方法
青色レーザーや紫外レーザーから蛍光体により青色と黄色の蛍光を発生し白色光を得る方法
【実施例】
【0061】
(実施例A1〜A3および比較例A1〜A3)
図1、
図2に示すような形態の蛍光体素子1を作製した。
CeドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)単結晶からなる厚み300μm、縦15mm、横15mmの蛍光体からなる基板上に、Al
2O
3からなるクラッド層を厚さ0.3μm、反射膜としてアルミニウム合金を1μm成膜した。その後、2インチのサファイア基板に対して、上記の蛍光体基板を、前記アルミニウム合金膜を貼り合せ面として熱可塑性樹脂(ワックス)にて接着した。貼り合せた後の接合体を、蛍光体部分が幅15mm×長さ2mmになるように切断した。
【0062】
次に、ダイシング装置により幅200μm、#6000のブレードにて溝加工を行い、水平方向に傾斜部分2c、2dを形成した。各傾斜部分2c、2dの傾斜角度θは、それぞれ、0°、2°、5°、10°、13°、15°、20°に変更した。蛍光体からなる光導波路の厚さは、出射側端面と対向端面との間で一定とした。
【0063】
次いで、上側クラッド層としてAl
2O
3を2μm、反射膜としてアルミニウム合金を1μm成膜した。蛍光体からなる光導波路の側面には、クラッド層が0.3μm、金属膜0.5μm成膜していることを確認した。
【0064】
その後、光導波路の入力側と出力側を50μm程度の端面研磨を行った。入射側の対向端面については、IBS(Ion-beam Sputter Coater)成膜装置によって、励起光である450nm帯では無反射、蛍光である560nm帯では全反射となるダイクロイック膜を成膜した。最後に、素子幅1mmとなるようにダイシング切断を行い、素子サイズ幅1mm×長さ1.99mmとし、ホットプレート上で加熱することで、サファイア基板から蛍光体素子を分離させ、
図1、
図2に示す蛍光体素子1を作製した。
【0065】
作製した素子について、波長450nmのレーザー光を照射して、出力側から出射する出力光の明るさと色ムラを測定した。ただし、これらは以下のようにして測定した。
【0066】
(明るさ)
平均出力は、全光束の時間平均を表す。全光束測定は,積分球(球形光束計)を使用して、被測定光源と全光束が値付けられた標準光源とを同じ位置で点灯し、その比較によって行う。詳細には、JISC7801にて規定されている方法を用いて測定を行った。
【0067】
(色ムラ)
出力した光を輝度分布測定装置を用いて色度図で評価を行った。そして、色度図において、中央値x:0.3447±0.005、y:0.3553±0.005の範囲にある場合は「色ムラなし」とし、この範囲外の場合には「色ムラあり」とした。
【0068】
【表1】
【0069】
この結果、表1に示すように、傾斜角度を2°以上とすることで、出力光の明るさが著しく向上した。また、傾斜角度が13°を超えると、出力光に色ムラが発生することがわかった。この出力光を観察したところ、中心部では色ムラのない白色光となっていたが、外周部が蛍光のみしか存在していないパターンとなっており、角度を大きくするとこの現象が顕著となっていた。
【0070】
実施例A1〜A3の各蛍光体素子は、入射側端面はレーザー光のスポット形状と実装する際の十分な位置決め公差を含めた大きさの形状にしておくことによって、安価でかつ高効率の白色レーザーを実現でき、例えば4Wクラスのレーザーを使用した場合に、450lm以上の指向性の高い白色レーザー光を得ることができる。
【0071】
(実施例B1〜B3)
実施例1と同様にして蛍光体素子を作製した。ただし、実施例1と異なり、
図4に示すように、厚み方向に光導波路2の側面2aを角度αだけ傾斜させた。そして、実施例1と同様にして蛍光を発生させ、出射光の明るさと色むらとを測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例C1〜C7)
実施例A1〜3と同様にして蛍光体素子を作製した。ただし、実施例A1〜3と異なり、
図8、
図9に示すように、光導波路42の各側面を底面の法線Mに対して角度βだけ傾斜させた。そして、実施例1と同様にして蛍光を発生させ、出射光の明るさと色むらとを測定した。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
(比較例D1〜D3)
引き下げ法によって育成したCeドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)単結晶で直径が150μm、498μm、1000μm、長さ2mmのファイバ状の蛍光体に、Al
2O
3からなるクラッド層を厚さ0.3μm、反射膜としてアルミニウム合金を1μmとなるように蛍光体の外周部に成膜した。
【0076】
その後、基板の入力側と出力側を50μm程度の端面研磨を行い、入射側の端面については、IBS(Ion-beam Sputter Coater)成膜装置にて励起光である450nm帯では無反射、蛍光である560nm帯では全反射となるダイクロイック膜を成膜し、長さ1.99mmの蛍光体素子を作製した。
【0077】
作製した素子について、実施例A1〜3と同様にして出力光の明るさと色ムラを測定した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
この結果、表4に示すように、明るさは800〜900lm程度となり、実施例と比較して出射側に取り出すことができる照明光が小さくなった。これは、全反射できない成分は反射膜にて反射を繰り返すが、全反射膜の反射率が90%以下となるために、反射毎に蛍光が減衰し出射側に到達できる照明光が小さくなると考えられる。色ムラについては、直径498μmでは中心部では色ムラのない白色光となっていたが、外周部が蛍光のみしか存在していないパターンとなっており、直径を大きくすると、この現象が顕著となっていた。